JP4031219B2 - 油脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のグリセリド、脂肪酸組成を有する加熱安定性に優れ、体脂肪難蓄積作用を有し健康上非常に有用な油脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
脂質(油脂)は、蛋白質、糖質とともに重要な栄養素で、特にエネルギー源として有用である。しかし、これは高カロリー(9Kcal/g)であり、肥満を助長し生活習慣病などの問題を引き起こす原因となる。脂質を多く使用した食事はおいしく、しかも現代人はこのような食事に慣れてしまっている。そのため飽食状態にある先進諸国においては、医療費の増大とあいまって、国家的な問題となっている。このような背景から、近年、特に健康の維持増進、疾病の予防治療に対する関心が高まり、脂質と肥満や生活習慣病との関連についての研究が数多く行われるようになってきた。
【0003】
従来から行われてきている主な研究は、脂質の主成分であるトリグリセリドを構成する脂肪酸に関するものである。例えば、栄養学的に必須なものは、リノール酸、アラキドン酸及びリノレン酸であり、これらの脂肪酸は生体膜の構成成分或いはエイコサノイド(プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン等)の原料として生体内で利用されることが明らかとなっている。また、食餌中の飽和脂肪酸が血清コレステロール上昇作用を有し、ひいてはアテローム性動脈硬化或いは心疾患につながる可能性が高いこと(Lancet 2,959(1950))、食餌中の高レベルの高リノール酸油が、実験動物の腫瘍発生率を増大させ、腫瘍サイズを上昇させること(J. National Cancer Institute, 66,517(1971))が報告されている。高オレイン酸低飽和脂肪酸食が、HDL−コレステロールを維持しつつLDL−コレステロールを低下させて心疾患をのリスクを低減させることが示されている(J. Lipid Res., 26,194(1985)、New England J. Medicine, 314,745(1988))。魚油に含まれるエイコサペンタエン酸の血栓予防効果をはじめ、各種ω3系不飽和脂肪酸の生理活性にも注目が集まっている(Ann. Rev. Nutr., 8,517(1988))。一方で、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸には2重結合が多く酸化安定性に問題があること、エイコサペンタエン酸に抗凝血作用があることが指摘されている。また、これら脂肪酸の摂取バランスについても検討が行われ、飽和脂肪酸:モノ不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸比やω6系不飽和脂肪酸:ω3系不飽和脂肪酸比について推奨比率が提唱されるなど、数多くの研究報告が見られ、現在もなお研究が行われている(「油脂の栄養と疾病」幸書房、「第6次栄養所要量」厚生省)。
【0004】
抗肥満という観点から、油脂代替物、非吸収性油脂の開発がなされてきており、なかでも代表的なものとして、脂肪酸ショ糖ポリエステル(米国特許第3600186号)が挙げられる。これは体内で吸収されずに排泄されるため油脂由来のカロリーは0kcal/gである。しかしながら、肛門漏洩や脂溶性ビタミン吸収阻害等の問題が懸念されると共に、必須脂肪酸の供給源にはなりえない。この物質は、1996年、FDAより、一定量のビタミンA、D、E、Kを添加した融点37.8℃〜71.1℃の半固体もしくは固体の脂肪酸ショ糖ポリエステルを塩味スナック菓子のみに使用するという条件付きで、許可されている。これは、肛門漏洩防止及び、脂溶性ビタミン吸収阻害防止のためである。このほか、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)が、体内で非蓄積性であるとして知られているが、加熱安定性に乏しい。共役リノール酸、魚油及びシソ油にも、類似の効果が開示されている(Lipids, 32, 853(1997)、J. Agric. Food Chem., 46, 1225(1998))。
【0005】
グリセリド構造に着目した、食用油組成物(日本特許第2010558号)、コレステロール低下剤(日本特許第2035495号)、血清トリグリセリド濃度低下剤(特開平4−300825号公報)、体重増加抑制剤(特開平4−300826号公報)、脂肪肝予防治療剤(特開平4−300828号公報)、液状汎用型油脂組成物(特開平10−176181号公報)等が開示されている。これらはジグリセリドの構造に由来する効果に着目したもので、肛門漏洩や脂溶性ビタミンの吸収阻害等がなく安全性には問題ないが、ジグリセリドの所有する効果を最大限に発揮したものではなかった。また、加工用食用油のように高温で長時間加熱する過酷な条件において、酸価(AV)がやや上昇しやすい傾向がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、加熱安定性が良好で応用範囲が広く、しかも油脂による肥満を防止できる健康に十分配慮された非常に有用な油脂を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特定の不飽和脂肪酸構成を有するジグリセリドを含有する特定の油脂組成物が、加熱安定性に優れ、体脂肪難蓄積作用、内臓脂肪難蓄積作用、インスリン抵抗性改善作用、血糖値低下作用、レプチン低下作用を有することを見い出した。
本発明は、トリグリセリド10.1〜94.9重量%、モノグリセリド0.1〜30重量%及び、構成脂肪酸の15〜90重量%が炭素数20未満のω3系不飽和脂肪酸であるジグリセリド5〜59.9重量%を含有する油脂組成物を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するジグリセリドの構成脂肪酸の15〜90重量%(以下単に%と記載する)、好ましくは20〜80%、更に好ましくは30〜70%、特に好ましくは40〜65%が炭素数20未満のω3系不飽和脂肪酸であることを要する。ここでω3系不飽和脂肪酸は、ω位から3番目の炭素原子に最初の不飽和結合が位置し、且つ不飽和結合を2個以上有する不飽和脂肪酸である。具体的には、α−リノレン酸(all cis-9,12,15-オクタデカトリエン酸)、ステアリドン酸(all cis-6,9,12,15-オクタデカテトラエン酸)等が挙げられ、α−リノレン酸が特に好ましい。
ジグリセリドの残余の構成脂肪酸は、ω9系不飽和脂肪酸を10〜60%、好ましくは10〜50%、特に12〜30%含有すると、生理効果の発現が顕著で酸化安定性、脂肪酸の摂取バランスの点でよい。ω9系不飽和脂肪酸としては、炭素数10〜24、好ましくは16〜22のオレイン酸、エイコサモノエン酸、ドコサモノエン酸等が挙げられ、特にオレイン酸が好ましい。具体的な例を挙げると、生理活性発現の観点から、オレイン−オレインジグリセリドは45%未満、より好ましくは40%以下がよい。
【0009】
更にジグリセリドの構成脂肪酸として、脂肪酸の摂取バランス、ω3系不飽和脂肪酸の生理活性効果発現の点から、リノール酸、γ−リノレン酸等の炭素数18〜22のω6系脂肪酸を2〜50%、好ましくは5〜40%、更に好ましくは10〜30%含有するのがよい。更に、酸化安定性、生理活性効果発現の点から、炭素−炭素2重結合を2個以上有する脂肪酸/(ω9系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸)の含有重量比が0.7〜7.5、好ましくは1〜6、更に好ましくは1.2〜5、特に1.5〜4であることが好ましい。
【0010】
ジグリセリドの構成脂肪酸の70〜100%、好ましくは80〜100%、更に好ましくは90〜100%が炭素数10〜24、好ましくは16〜22の不飽和脂肪酸であるのが生理活性発現の点でよい。
【0011】
本発明の油脂組成物には、このようなジグリセリドが5〜59.9%含有されるが、加熱安定性、生理活性発現の点で、好ましくは7〜55%、更に好ましくは10〜50%、特に好ましくは15〜45%含有するのがよい。
【0012】
本発明で使用するモノグリセリドの構成脂肪酸は、ジグリセリドと同じ構成脂肪酸であることが好ましい。
【0013】
本発明の油脂組成物には、このようなモノグリセリドが0.1〜30%含有されるが、風味マスキング効果、発煙、加熱安定性の点で、好ましくは0.1〜10%、更に好ましくは0.1〜4%、特に好ましくは0.1〜2%、最も好ましくは0.1〜1.5%含有するのがよい。
【0014】
ジグリセリドとモノグリセリドは、相対含有重量比がジグリセリド/モノグリセリド≧1、好ましくは1.5〜500、特に好ましくは2〜250であるのが加熱安定性、発煙の点でよい。
【0015】
トリグリセリドの構成脂肪酸として、生理活性発現の点で不飽和脂肪酸が55〜100%、好ましくは70〜100%、更に好ましくは80〜100%、特に好ましくは90〜100%であるのがよく、また酸化安定性、脂肪酸の摂取バランスの点から、ω3系不飽和脂肪酸を0〜40%、好ましくは0〜30%、更に好ましくは0〜25%、特に好ましくは0〜20%含有するのがよい。
【0016】
本発明の油脂組成物には、このようなトリグリセリドが10.1〜94.9%含有されるが、風味マスキング効果、加熱安定性の点で、好ましくは20〜92.9%、特に好ましくは47〜89.9%、最も好ましくは53〜84.9%含有するのがよい。
【0017】
油脂組成物の全構成脂肪酸中に、炭素−炭素2重結合を4個以上有する脂肪酸は15%以下、好ましくは5%以下、特に2%以下が好ましく、実質的に含まないのが最良である。
【0018】
上記ジグリセリドは、ω3系不飽和アシル基、モノエンアシル基等を含有するアマニ油、エゴマ油、シソ油、大豆油、ナタネ油等の加水分解反応、これら各種油脂とグリセリンとのエステル交換反応、かかる油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応等任意の方法により得ることができる。反応方法は、アルカリ触媒等を用いた化学反応法、リパーゼ等の酵素を用いた生化学反応法のいずれでもよい。トリグリセリドは、大豆油、ナタネ油、パーム油、米油、コーン油、ヒマワリ油、紅花油、オリーブ油、ゴマ油等の植物油、ラード、牛脂、魚油等の動物油、あるいはそれらの硬化油、分別油、ランダムエステル交換油、エステル交換油等から得ることができる。
【0019】
本発明の油脂組成物は、脱ガム、脱酸、脱色、水洗、脱臭等の精製を施して使用するのが加熱安定性、風味の点で好ましい。遊離脂肪酸(塩)が3.5%以下、好ましくは2.5%以下、更に好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1%以下、最も好ましくは0.5%以下とするのがよい。また、過酸化物価(POV;日本油化学協会、基準油脂分析試験法2.5.2.1.)が10以下、好ましくは7以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは3以下、最も好ましくは1以下とするのがよい。更に、ロビボンド法(日本油化学協会、基準油脂分析試験法2.2.1.1、5 1/4インチガラスセル使用)による色(10R+Y)が35以下、好ましくは30以下、更に25以下、特に20以下とするのがよい。
【0020】
本発明の油脂組成物として、好ましい構成は、POV3以下、色(10R+Y)25以下、トリグリセリド47〜89.9%、モノグリセリド0.1〜2%、ジグリセリド10〜50%及び遊離脂肪酸(塩)1%以下であって、ジグリセリドの構成脂肪酸がα−リノレン酸30〜70%、オレイン酸10〜50%及びω6系不飽和脂肪酸5〜40%で、かつ炭素−炭素2重結合を2個以上有する脂肪酸/(ω9系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸)の含有重量比が1.2〜5、不飽和脂肪酸80〜100%であり、トリグリセリドの構成脂肪酸がω3系不飽和脂肪酸25%以下、不飽和脂肪酸80〜100%で、全構成脂肪酸中炭素−炭素2重結合を4個以上有する脂肪酸2%以下である。
【0021】
更に好ましくは、POV1以下、色(10R+Y)20以下、トリグリセリド53〜84.9%、モノグリセリド0.1〜1.5%、ジグリセリド15〜45%及び遊離脂肪酸(塩)0.5%以下であって、ジグリセリドの構成脂肪酸がα−リノレン酸40〜65%、オレイン酸12〜30%、ω6系不飽和脂肪酸10〜30%で、かつ炭素−炭素2重結合を2個以上有する脂肪酸/(ω9系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸)の含有重量比が1.5〜4、不飽和脂肪酸90〜100%であり、トリグリセリドの構成脂肪酸がω3系不飽和脂肪酸20%以下、不飽和脂肪酸が90〜100%で、全構成脂肪酸中、炭素−炭素2重結合を4個以上有する脂肪酸を含有しないものである。
【0022】
本発明の油脂組成物において、更に植物ステロールを含有するのが好ましい。植物ステロールはコレステロール低下効果を有する成分であり、本発明の油脂組成物中の植物ステロールの含量は0.05%以上、特に0.3%以上が好ましい。一般に市販されている蒸留して得られた脂肪酸を原料として製造した油脂組成物中の植物ステロール量は低下してしまう。このような場合には植物ステロールを0.05%以上になるように添加するのが好ましく、0.05〜1.2%の範囲にあればよい。通常の植物油以上のコレステロール低下を目的とする場合には1.2%以上適宜添加してもよい。ここで植物ステロールとしては、例えばα−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、シクロアルテノール等のフリー体、及びこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、桂皮酸エステル等のエステル体が挙げられる。
【0023】
本発明の油脂組成物には、抗酸化剤も添加してもよく、抗酸化剤は通常、食品、医薬品に使用されるものであればいずれでもよいが、カテキン、トコフェロール、ビタミンC脂肪酸エステル、リン脂質、天然抗酸化成分の1種又は2種以上の組合せが好ましく、特にトコフェロール、カテキンが好ましい。ビタミンC脂肪酸エステルとしては、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルが、天然抗酸化成分としては、ローズマリー等のハーブ、桃の葉や根塊からの抽出物等が挙げられる。抗酸化剤は本発明の油脂組成物に、0.01〜5%、特に0.05〜1%含有することが好ましい。
【0024】
本発明の油脂組成物には、更に結晶抑制剤を添加するのが好ましい。
本発明で使用する結晶抑制剤としては、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等のポリオール脂肪酸エステルが挙げられる。
またポリオール脂肪酸エステルは、HLB(Griffinの計算式)が4以下、特に3以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
【0025】
本発明の油脂組成物に、結晶抑制剤は0.02〜0.5%、特に0.05〜0.2%含有するのが低温での安定性改善の点で好ましい。
かくして得られた油脂組成物は、体脂肪難蓄積作用、血清トリグリセリド増加抑制作用、内臓脂肪難蓄積作用、体重増加抑制作用、肝機能改善作用、血糖値上昇抑制作用、インスリン抵抗性改善作用、レプチン増加抑制作用等の優れた生理活性を有し、更に加熱安定性に優れているため応用範囲が広く、風味も優れている。特にω3系不飽和アシル基が、ジグリセリドを構成するアシル基として存在しているため、遊離脂肪酸として存在する場合よりも、低濃度で作用し、速効性でかつ風味良好で安全である。かかる優れた特性を有するため、本発明の油脂組成物は食品、飼料及び医薬品に利用することができる。
【0026】
食品としては、該油脂組成物を食品の一部として含有する油脂含有食品に用いることができる。かかる油脂含有食品としては、例えば特定の機能を発揮して健康増進を図る健康食品が挙げられる。具体的には、かかる油脂組成物を配合したカプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉末剤、パン、ケーキ、クッキー、パイ、ピザクラスト、ベーカリーミックス等のベーカリー食品類、スープ類、ドレッシング、マヨネーズ、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム、ホイップクリーム等の水中油型油脂含有食品、マーガリン、スプレット、バタークリーム等の油中水型油脂含有食品、ポテトチップス等のスナック菓子、チョコレート、キャラメル、キャンデー、デザート等の菓子、飲料、ソース、焼肉のたれ、ピーナツバター、フライショートニング、ベーキングショートニング、ドウ、エンローバー用油脂、フィリング用油脂、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の肉加工食品、麺、冷凍食品、レトルト食品、ルー、チーズ等が挙げられる。かかる油脂含有食品は、上記油脂組成物の他に、油脂含有食品の種類に応じて一般に用いられる食品原料を添加し製造することができる。本発明の油脂組成物の食品への配合量は、食品の種類によっても異なるが、一般に0.1〜100%、更に1〜80%、特に2〜80%が好ましい。投与量は、油脂組成物として、1日当り0.2〜50g、更に1〜25g、特に2〜15gを1〜数回に分けて投与することが好ましい。また天ぷらやフライ等の揚げ物用油、あるいは炒め物用油といった調理油等の食品素材として用いることができる。
【0027】
なお、製剤調製の関係から、食品原料由来の油脂が含まれている場合は、食品原料由来の油脂と本発明の油脂組成物との比は、95:5〜1:99が好ましく、95:5〜5:95がより好ましく、更に85:15〜5:95が、特に40:60〜5:95が好ましい。
【0028】
本発明の油脂組成物を、他の食品原料と配合し、加工した油脂含有食品として使用する場合の食品原料としては、次のものが挙げられる。食用油脂としては、天然の動植物油脂の他、それらにエステル交換、水素添加、分別等を施した加工油脂が挙げられる。好ましくは、大豆油、ナタネ油、米糠油、コーン油、パーム油、ヒマワリ油、紅花油、オリーブ油、ゴマ油、アマニ油、シソ油、魚油及びそれらの加工油脂が挙げられる。乳化剤としては卵蛋白質、大豆蛋白質、乳蛋白質、これらの蛋白質より分離される蛋白質、これら蛋白質の(部分)分解物等の各種蛋白質類、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンあるいはその酵素分解物が挙げられる。安定剤としては、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、トラガントガム、コンニャクマンナン等の増粘多糖類や澱粉類が挙げられる。また、食塩、糖、食酢、調味料等の呈味料、スパイス、フレーバー等の香味料、着色料、トコフェロール、天然抗酸化成分等の抗酸化剤等が挙げられる。
【0029】
本発明の油脂含有食品として好ましいものとして、次のものが挙げられる。
(1)水中油型油脂含有食品
油相と水相の重量比は、油相/水相=1/99〜90/10、好ましくは10/90〜80/20、特に30/70〜75/25が好ましい。また油相のPOVは10以下、好ましくは3以下、特に1以下が好ましい。油相中のジグリセリドの含有量は、5〜59.9%、好ましくは10〜50%、特に15〜45%が好ましく、トリグリセリドの含有量は、10.1〜94.9%、好ましくは47〜89.9%、特に53〜84.9%が好ましく、ジグリセリドとモノグリセリドの含有量比は、ジグリセリド/モノグリセリドの比が1以上が好ましい。ジグリセリドの構成脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量は、20〜80%、好ましくは30〜70%、特に40〜65%が好ましく、炭素−炭素2重結合を2個以上有する脂肪酸/(ω9系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸)の含有量比は0.7〜7.5、好ましくは1.2〜5、特に1.5〜4が好ましい。トリグリセリドの構成脂肪酸中のω3系不飽和脂肪酸含有量は、40%以下、好ましくは25%以下、特に20%以下が好ましい。植物ステロールは、0〜10%、好ましくは1〜7%、特に2〜5%が好ましい。乳化剤は、0.01〜5%、特に0.05〜3%が好ましい。安定化剤は0〜5%、特に0.01〜2%が好ましい。pHは、1.0〜7.0、好ましくは2.0〜6.0、特に3.0〜5.0が好ましく、食酢、クエン酸等の有機酸(又はその塩)、レモン果汁、燐酸(塩)等の無機酸(塩)等で調整することができる。
【0030】
これらの材料を用いて、常法によりドレッシング、マヨネーズ、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム、ソース、スープ、飲料等の水中油型油脂含有食品を調製することができる。
【0031】
(2)油中水型油脂含有食品
水相と油相の重量比は、水相/油相=90/10〜1/99、好ましくは80/20〜10/90、特に70/30〜35/65が好ましい。油相のPOVは10以下、好ましくは3以下、特に1以下が好ましい。油相中のジグリセリドの含有量は、5〜59.9%、好ましくは10〜50%、特に15〜45%が好ましく、トリグリセリドの含有量は、10.1〜94.9%、好ましくは、47〜89.9%、特に53〜84.9%が好ましく、ジグリセリドとモノグリセリドの含有量比は、ジグリセリド/モノグリセリドの比が1以上が好ましい。ジグリセリドの構成脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量は、20〜80%、好ましくは30〜70%、特に40〜65%が好ましく、炭素−炭素2重結合を2個以上有する脂肪酸/(ω9系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸)の含有量比は、0.7〜7.5、好ましくは1.2〜5、特に1.5〜4が好ましい。トリグリセリドの構成脂肪酸中のω3系不飽和脂肪酸の含有量は、40%以下、好ましくは25%以下、特に20%以下が好ましい。植物ステロールは、0〜10%、好ましくは1〜7%、特に2〜5%が好ましい。また乳化剤は0.01〜5%、特に0.05〜3%が好ましい。
これらの材料を用いて、常法によりマーガリン、スプレッド等の油中水型油脂含有食品を調製することができる。
【0032】
(3)携帯性のある油脂含有食品
油脂含有量は1〜30%、特に1〜20%が好ましく、油脂のPOVは10以下、好ましくは3以下、特に1以下が好ましい。該油脂中のジグリセリドの含有量は5〜59.9%、好ましくは10〜50%、特に15〜45%が好ましく、トリグリセリドの含有量は10.1〜94.9%、好ましくは47〜89.9%、特に53〜84.9%が好ましく、ジグリセリドとモノグリセリドの含有量比は、ジグリセリド/モノグリセリド比が1以上が好ましい。また、ジグリセリドの構成脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量は20〜80%、好ましくは30〜70%、特に40〜65%が好ましく、炭素−炭素2重結合を2個以上有する脂肪酸/(ω9系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸)の含有量比は、0.7〜7.5、好ましくは1.2〜5、特に1.5〜4が好ましい。トリグリセリドの構成脂肪酸中のω3系不飽和脂肪酸の含有量は40%以下、好ましくは25%以下、特に20%以下が好ましい。植物ステロールは0〜20%、好ましくは1〜20%、特に2〜15%が好ましい。蔗糖、グルコース、フルクトース、マルトース、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、澱粉等の糖質は40〜99%、また炭酸水素ナトリウム等の膨張剤と酒石酸、フマル酸、クエン酸等の酸性剤からなる炭酸発泡剤は0〜20%、特に1〜10%が好ましい。
これらの材料を用いて、常法により錠菓、キャンデー、キャラメル、グミ等の携帯性のある油脂含有食品を調製することができる。特に炭酸発泡剤の使用により、口溶け性が改善される。
【0033】
(4)ベーカリー食品
油脂含有量は1〜40%、特に5〜35%が好ましく、油脂のPOVは10以下、好ましくは3以下、特に1以下が好ましい。該油脂中のジグリセリドの含有量は5〜59.9%、好ましくは10〜50%、特に15〜45%が好ましく、トリグリセリドの含有量は10.1〜94.9%、好ましくは47〜89.9%、特に53〜84.9%が好ましく、ジグリセリドとモノグリセリドの含有量比は、ジグリセリド/モノグリセリド比が1以上が好ましい。また、ジグリセリドの構成脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量は20〜80%、好ましくは30〜70%、特に40〜65%が好ましく、炭素−炭素2重結合を2個以上有する脂肪酸/(ω9系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸)の含有量比は0.7〜7.5、好ましくは1.2〜5、特に1.5〜4が好ましい。トリグリセリドの構成脂肪酸中のω3系不飽和脂肪酸の含有量は40%以下、好ましくは25%以下、特に20%以下が好ましい。植物ステロールは0〜20%、好ましくは1〜20%、特に1〜15%が好ましい。小麦粉は10〜70%、特に20〜60%が好ましい。鶏卵の全卵、卵黄、卵白、これらの分離物、これらの分解物のいずれか1種以上を0〜30%、特に5〜25%を含有するのが好ましい。食塩は0〜2%、特に0.1〜1%が好ましい。また糖質は0〜25%、ベーキングパウダーは0〜1%含有するのが好ましい。
これらの材料を用いて、常法によりパン、ケーキ、クッキー等のベーカリー食品を調製することができる。
【0034】
医薬品としては、例えば散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤等の固形製剤、水剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、ゲル剤等の経口投与剤が挙げられる。この経口投与剤は、上記油脂組成物の他、経口投与剤の形態に応じて一般に用いられる、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール類、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等を添加し製造することができる。経口投与用医薬品としては、血小板凝集抑制剤等が挙げられる。本発明の油脂組成物の経口投与用医薬品への配合量は、医薬品の用途及び形態によっても異なるが、一般に0.1〜100%、更に1〜80%、特に5〜80%が好ましい。また、投与量は、油脂組成物として、1日当たり0.2〜50g、更に1〜25g、特に2〜15gを、1〜数回に分けて投与することが好ましい。
【0035】
飼料としては、例えば牛、豚、鶏、羊等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、ウナギ、タイ、ハマチ、エビ等に用いる魚介類用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフードが挙げられる。本発明の油脂組成物の飼料への配合量は飼料の用途等によっても異なるが、一般に1〜30%、特に1〜20%が好ましい。
【0036】
【実施例】
実施例1
次の油脂組成物を製造した。分析結果を表1に示す。
油脂組成物1
エゴマ油(太田油脂(株))400重量部、グリセリン84重量部及びナトリウムメチラート0.2重量部を窒素ガス雰囲気下で、220℃、1.5時間反応を行った。その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画を行った(溶出溶媒:ヘキサン−酢酸エチル混合液(最初100:0、次に90:10、その次80:20、最後70:30))。次いで、溶媒を留去後、各画分を再混合して油脂組成物1を得た。
【0037】
油脂組成物2
エゴマ油脂肪酸650重量部とグリセリン107重量部をリポザイムIM(ノボ・ノルディスクバイオインダストリー社)を使用して、0.07hPaで40℃、6時間エステル化を行った。その後、215℃で分子蒸留し、次いで脱色、水洗し215℃2時間脱臭した。得られた油脂組成物20重量部に、ナタネ白絞油80重量部を加えて油脂組成物2を得た。
【0038】
油脂組成物3
エゴマ油脂肪酸325重量部、ハイオレイックサフラワー油脂肪酸325重量部、及びグリセリン107重量部を、油脂組成物2の製造と同様にエステル化を行った(但し、反応時間5時間)。次いで、分子蒸留及び水洗をした後に、215℃で2時間脱臭して油脂組成物3を得た。
【0039】
油脂組成物4
ナタネ油脂肪酸650重量部とグリセリン107重量部をリポザイムIMを使用して、0.067hPaで40℃、5時間エステル化を行った。次いで235℃で分子蒸留し、水洗した後235℃1時間脱臭して油脂組成物4を得た。
【0040】
油脂組成物2a
油脂組成物2を100重量部、トコフェロール(ミックスビタミンE、MDE−6000:八代(株))を0.02重量部、カテキン(サンカトールNo.1:太陽化学(株))を0.1重量部、ローズマリー抽出物(ハーバロックスタイプHT−O抽出物:カルセック(株))を0.25重量部、植物ステロール(タマ生化学)を0.05重量部及びTHL−3(ポリグリセリン脂肪酸エステル、HLB=1:阪本薬品工業(株))を0.1重量部を混合し油脂組成物2aを製造した。
【0041】
油脂組成物2b
油脂組成物2を100重量部、トコフェロールを0.02重量部、カテキンを0.1重量部、THL−3を0.1重量部混合し、油脂組成物2bを製造した。
【0042】
油脂組成物2c
油脂組成物2を100重量部、トコフェロールを0.02重量部、カテキンを0.1重量部、VCP(ビタミンCパルミテート:ロッシュ社)を0.02重量部、植物ステロールを0.3重量部及びTHL−3を0.1重量部を混合し、油脂組成物2cを製造した。
【0043】
油脂組成物2d
油脂組成物2を100重量部、トコフェロールを0.02重量部、VCPを0.02重量部及び植物ステロールを2重量部を混合して、油脂組成物2dを製造した。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例2
調製した油脂組成物(油脂組成物100重量部にトコフェロール0.02重量部を溶解したもの)20gを直径20mmの試験管に入れた。これを180℃に加熱し、ステンレス管を通して蒸留水を0.1mL/分の速度で強制的に添加し、6時間後の酸価上昇値を測定した。酸化(AV)は、日本油化学協会、基準油脂分析試験法2.3.1の方法で測定した。その結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
本発明の油脂組成物1〜3はいずれも加熱安定性に優れていた。
【0048】
実施例3
C57BL/6J雄性マウス7週齢を7群に分け、組成の食餌(表3)を5ヶ月間連続投与した後、体重を測定した。次いで、エーテル麻酔下で腹部大動脈から採血し、血糖値、インスリン、レプチンを測定した。その結果を比較1を100とした値で表3に示す。
【0049】
血糖値測定法:グルコーステストワコー(和光純薬製)
インスリン測定法:インスリン測定キット(森永生科学研究所製)
レプチン測定法:マウスレプチン測定キット(森永生科学研究所製)
【0050】
【表3】
【0051】
本発明の油脂組成物はいずれも血糖値低下作用、インスリン抵抗性改善作用、レプチン低下作用が優れていた。
【0052】
実施例4
成人男子2名が、食用油として油脂組成物2を食用油(調理油)として通常の料理に用いて、12ヶ月間摂取した。油脂組成物2の摂取量は、日本人成人の食用油平均摂取量と同程度の12.3g/人/日であった。試験前後のBMI、体脂肪率等の測定結果を表4に示す。いずれの項目にも、低下傾向が認められた。
体脂肪率測定法:インピーダンス法
内臓脂肪測定法:CTスキャン法
皮下脂肪測定法:CTスキャン法
【0053】
【表4】
【0054】
実施例5
ALA−DAGを種々の量配合した食用油で実施した。被験物質はα−リノレン酸を49%含有するALA−DGを用いた(表5)。ALA−DGはアマニ油(吉原製油)を用いBirgitte等(JAOCS,65,905(1988))の方法により固定化リパーゼの存在下で調製した。平成10年国民栄養調査による食用油の平均摂取量を考慮し、食用油として1日に摂取する10gの中にALA−DGを混合した。摂取1群では、試験油10g中にALA−DG2.5gとナタネ油7.5gを混合した食用油(2.5g 油)を使用し、摂取2群ではALA−DG3.75gとナタネ油6.25gを混合した食用油(3.75g 油)を使用した。コントロール群ではナタネ油(日清製油)とエゴマ油(太田油脂)を混合して摂取1群で使用した油と脂肪酸組成をそろえたトリグリセリドのみの食用油(コントロール油)を使用した(表6)。被験物質の摂取は、各食用油を用いて調製したショートブレッド、マヨネーズ、ドレッシング、スープの形態で行った。コントロール群(TG)、摂取1群(ALA-DG 2.5g)及び摂取2群(ALA-DG 3.75g)の3群で試験を行った。
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
本試験は医師の監督のもと、社内臨床試験倫理委員会の了承を得た上で、ヘルシンキ宣言の精神に則り十分な配慮の下に実施した。
被験者は、平均年齢35.7歳、平均BMI 23.3(kg/m2)の健常成人の男子66名(花王従業員)を対象とした。
【0058】
BMIがほぼ同一となるように3群に分け、ナタネ油(10g/日)を含むコントロール試験食を4週間摂取した後、12週間の二重盲検法(double blind test)摂取試験を行った。被験物質を摂取する時間は指定しなかった。平成10年国民栄養調査(国民栄養の現状、第一出版、平成12年)による平均総摂取量を考慮し、渡辺らの方法(J. Jpn Oil Chem.Soc.47,47-54(1998))に従って全期間を通じて、試験食を含めた1日当たりの総摂取油量を50±5gにした。試験開始前の各群の身体データを表7に示した。
【0059】
試験の開始前に全被験者に対して四訂日本食品標準成分表(女子栄養大学出版部、平成12年)に基づき、エネルギー及び脂質の摂取量を把握できるように教育を行った。また管理栄養士指導のもと、平日の昼食では全食事メニューにエネルギー及び脂質量の明示を行い、平日の夕食にはエネルギー及び脂質量を明示した定食を提供した。休日の食事は四訂日本食品標準成分表によって食事中の脂質量、エネルギーを把握した素材を被験者が検討して摂取するよう指導した。試験期間中の酒類はアルコール量としてビール大瓶1本(633mL)相当以下に制限した。被験者には毎日の食事及び間食の内容を食事日誌に記録させた。食事内容は四訂日本食品標準成分表を用いて解析した。また試験期間中は運動量を試験前と同様に保つように指導した。
【0060】
【表7】
【0061】
測定:
皮下脂肪厚、体脂肪率測定
皮下脂肪厚は竹井機器工業(株)社製ファット・オー・メーターにて上腕伸展側中間部及び背部肩甲骨下端部の2点をキャリパー法により測定した(健康・栄養情報研究会編、(1995)国民栄養の現状(平成5年国民栄養調査結果)、第一出版)。
【0062】
腹部CTスキャン撮影
臍部横断及び脾臓と肝臓が同一断面となる位置にてCTスキャン撮影を行った。
Tokunaga等の方法(I. Obes., 7, 437(1983))に従いCT像より全脂肪面積、内臓脂肪面積及び皮下脂肪面積を求めた。両面積よりV/S比(内臓脂肪面積/皮下脂肪面積)を算出した(ホルモンと臨床、夏季増刊号、35(1990);体力研究,77, 131(1991))。また、加藤等の方法(肝臓,25, 1097(1984))に従い肝臓及び脾臓のCT値比を求めた。CT撮影では東芝メディカル(株)TCT-300、東芝XビジョンRIAL、日立メディコPRATICOを使用した。
なお、データは平均±SEで表した。身体データは試験開始時の値を100とし相対値にて示した。各群における試験開始時の値と各測定時での値との比較にはpaired t-検定を用い、群間比較には、t-検定を用いた。
【0063】
身体測定(表8)では、全試験食群において試験開始初期値に対しウエスト、ヒップ周囲長、皮下脂肪厚、皮下脂肪面積の有意な減少及び肝臓CT値/脾臓CT値(CT比)の有意な増加、すなわち肝脂肪の低下を認めた。更に摂取1及び摂取2では、試験開始初期値に対し内臓脂肪面積及び皮下脂肪面積の明らかな減少が認められ、この減少は対照群に対し有意な差が認められた。
【0064】
【表8】
【0065】
実施例6
動物及び飼育方法
本試験は、花王株式会社動物管理委員会及び動物倫理委員会の承認・管理の下に実施した。動物はC57BL/6Jマウス(7週齢、♂、日本クレア(株):東京)を用い、室温23±2℃、湿度55±10%、照明時間7:00〜19:00の環境下で飼育した。搬入後7日間の馴化の後に体重測定を行い、各試験群の平均体重がほぼ同一となるように分けた(n=5/群)。試料は自由摂食、水は自由摂水とした。給餌にはローデンカフェ(オリエンタル酵母工業(株):東京)用い、2日毎に新しい飼料に交換した。なお、4週間に1回、試験群(n=5/cage/群)ごとに24時間当たりの摂餌量の測定を行い、摂取エネルギー量を求めた。本条件下で、20週間飼育した。
【0066】
被験物質及び飼料原料
ALA−DGは、シソ油からBrgitteらの方法(JAOCS, 65, 905(1998))により固定化リパーゼの存在下で調製した。ALA−DG及びサフラワー油、ナタネ油混合油(SR-oil)の組成を表9に示す。SR−oilでは、オレイン酸、リノール酸がそれぞれ29.1%、57.8%と構成脂肪酸の主体を占めるのに対し、ALA−DGでは構成脂肪酸中α−リノレン酸が60.8%を占める。ALA−DGのグリセリド中に占めるDG及びTG含量は、それぞれ85.2%、14.1%であり、DGにおける1,3−型と1,2−型の比率は約7:3であった。ラード、蔗糖、カゼイン、セルロース、ミネラル、ビタミン、α−ポテト澱粉はオリエンタル酵母工業(株)より、サフラワー油、ナタネ油は日清製油(株)より購入した。
【0067】
【表9】
【0068】
測定:
体重測定及び内臓脂肪重量・肝臓重量測定
試験期間中、毎週体重測定を行った。試験終了時に12時間絶食条件下で動物をエーテル麻酔後、放血殺した。次いで解剖し、各部の内臓脂肪重量(副睾丸周囲脂肪、腸間膜脂肪、後腹膜脂肪、腎周囲脂肪)及び肝臓重量を測定した。
【0069】
飼料の組成及びエネルギー量を表10に示す。
【0070】
【表10】
【0071】
低脂肪食(LF)は飼料中に脂質5%を含有するのに対し、高脂肪食 (HF)は脂質30%及びSucrose13%を含有する。飼料100g当たりのエネルギー量は、LFが399.7Kcal、HFが522.2Kcalであり、HFはLFに比較し約30%高いエネルギー量を有する。ALA−DG置換飼料はHFのSR−oil3%を3%のALA−DGで置換して作製した(全脂肪の10%置換)。なお、各飼料は2日分ずつ遮光袋に分包し、窒素封入後、4℃にて保存した。
【0072】
体重は、初期値において、各試験群間に有意差は認められなかった
(表11)。各試験群とも20週目に体重増加を認めた。ALA−DG置換群では、HF群に対する体重増加抑制が見られ、20週目の体重、体重増加量においてHF群との間に有意差を認めた。なお、試験期間中の摂取エネルギー量は、LF群との間にHF群及びALA−DG置換群で有意差を認めたものの、HF群とALA−DG置換群との間には有意差を認めなかった。
【0073】
内臓脂肪重量に関してはALA−DG置換群においては、腸間膜脂肪重量、後腹膜脂肪重量及び腎周囲脂肪重量でHF群に比較して有意な低値を認めた(表11)。
肝臓重量に関しては、HF群及びALA−DG置換群においてLF群に比較して有意な高値を認めたが、HF群とALA−DG置換群との間には有意差を認めなかった(表11)。
【0074】
【表11】
【0075】
実施例7 スクランブルエッグ
全卵100gに食塩0.5gと胡椒0.1gを入れ、はしで良くときほぐし、フライパン(24cm)に本発明の油脂組成物2aを5g入れて火にかけた(都市ガス流量2.2L/分)。30秒後に、先にときほぐした卵をフライパンに入れ、はしでかき回しながら20秒間加熱しスクランブルエッグを調理した。
【0076】
実施例8 ソフトカプセル
300mgの本発明の油脂組成物2cを、オーバル型のソフトカプセルに封入し、ソフトカプセル剤を調製した。
【0077】
実施例9 錠剤
下記の組成の成分を混合し、200mg/個の錠剤を打錠して製造した。
錠剤組成:本発明の油脂組成物2d 10.0%
コーンスターチ 44.0
結晶セルロース 40.0
カルボキシメチルセルロースカルシウム 5.0
無水ケイ酸 0.5
ステアリン酸マグネシウム 0.5
【0078】
実施例10 分離状ドレッシング
ワインビネガー(中埜酢店製造)25重量部に、食塩1.25重量部、胡椒0.3重量部、マスタード0.25重量部を混合し、更に本発明の油脂組成物2bを45重量部添加して分離液状ドレッシングを調製した。
【0079】
実施例11 マヨネーズ
組成:
本発明の油脂組成物2b 65.0%
卵黄 15.0
食酢(酸度10%) 7.0
上白糖 1.0
グルタミン酸ナトリウム 0.4
食塩 0.3
マスタード(粉末) 0.3
増粘剤(キサンタンガム) 0.2
水 10.8
ホモミキサーで本発明の油脂組成物2b以外の成分を撹拌混合した後、油脂組成物2bを滴下して予備乳化した。得られた予備乳化物をホモミキサーで更に均質化して、マヨネーズを調製した(pH4.0)。
【0080】
実施例12 スプレッド
(油相)
本発明の油脂組成物1 33.38重量部
パーム硬化油(IV=2) 4.0
大豆硬化油(IV=43) 2.0
モノグリセリド 0.5
フレーバー 0.1
ビタミンE 0.02
(水相)
蒸留水 58.4重量部
脱脂粉乳 0.3
食塩 1.3
上記油相と水相を調製し、次いでホモミキサーにより混合・乳化後、得られた乳化物を常法により急冷して可塑化することにより、スプレッドを調製した。
【0081】
実施例13 錠菓(タブレット)
キシリトール 28.4重量部
ソルビトール 56.9
本発明の油脂組成物2b 2.5
植物ステロール(タマ生化学) 2.5
フレーバー(ジンジャーオイル) 1.2
クエン酸 3.0
炭酸水素ナトリウム 5.0
着色料(ウコン粉末) 0.5
原料を混合した後、乳鉢にてすりつぶした。これを常法に従い、2gずつ打錠機にて打錠し(24.5MPa、4秒)、錠菓(タブレット)を製造した。
【0082】
実施例14 ショートブレッド
薄力粉 350重量部
強力粉 150
上白糖 150
全卵 125
本発明の油脂組成物2b 200
食塩 2.5
上白糖、食塩、本発明の油脂組成物2bをボールに入れ、ホバートミキサーにて撹拌した。これに全卵を徐々に加え、ホバートミキサーで再度撹拌した。予め混合しておいた薄力粉と強力粉を3回に分けて加え、更にホバートミキサーで撹拌した。調製した生地を25gずつ小分けし、金属製型枠に詰めた。これをオーブンで焼成(160℃、50分)後、型枠から外し、放冷してショートブレッドを製造した。
【0083】
実施例15 ブリオッシュ
強力粉 100重量部
全卵 50
本発明の油脂組成物2b 30
上白糖 15
水 15
イースト 5
イーストフード 0.1
脱脂粉乳 4
食塩 2
本発明の油脂組成物2b以外の原料を混合し、ミキサーにて低速30秒間ミキシングを行った。次いで油脂組成物2bを加え、ミキシングを行った(低速5分間、中速22分間)。得られた生地を27℃で30分間発酵させ、更に5℃にて15分間低温発酵を行った。この生地を37gずつに分割し、丸型に成型した。これを33℃で60分間発酵させた後、オーブンで焼成して(190℃、9分間)、ブリオッシュを製造した。
【0084】
【発明の効果】
加熱安定性に優れ、体脂肪難蓄積作用、内臓脂肪難蓄積作用、血糖値低下作用、インスリン、抵抗性改善作用、レプチン低下作用を有し、医薬用途の他に、糖尿病、肥満の予防、治療用食品、飼料としても有用である。
Claims (14)
- 構成脂肪酸としてω3系不飽和脂肪酸を0〜40重量%含有するトリグリセリド20〜92.9重量%、モノグリセリド0.1〜30重量%及び構成脂肪酸の15〜90重量%が炭素数20未満のω3系不飽和脂肪酸であるジグリセリド5〜59.9重量%を含有する油脂組成物。
- 炭素数20以下のω3系不飽和脂肪酸がα−リノレン酸である請求項1記載の油脂組成物。
- (ジグリセリド/モノグリセリド)≧1(重量比)であって、POVが10以下である請求項1又は2記載の油脂組成物。
- 油脂組成物が、POV3以下、色(10R+Y)25以下、トリグリセリド47〜89.9重量%、モノグリセリド0.1〜2重量%、ジグリセリド10〜50重量%及び遊離脂肪酸(塩)1重量%以下であって、ジグリセリドの構成脂肪酸がα−リノレン酸30〜70重量%、オレイン酸10〜50重量%及びω6系不飽和脂肪酸5〜40重量%で、かつ炭素−炭素2重結合を2個以上有する脂肪酸/(ω9系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸)の含有重量比が1.2〜5、不飽和脂肪酸80〜100重量%であり、トリグリセリドの構成脂肪酸がω3系不飽和脂肪酸25重量%以下、不飽和脂肪酸55〜100重量%で、全構成脂肪酸中炭素−炭素2重結合を4個以上有する脂肪酸が2重量%以下である請求項1〜3のいずれか1項記載の油脂組成物。
- 油脂組成物が、POV1以下、色(10R+Y)20以下、トリグリセリド53〜84.9重量%、モノグリセリド0.1〜1.5重量%、ジグリセリド15〜45重量%及び遊離脂肪酸(塩)0.5重量%以下であって、ジグリセリドの構成脂肪酸がα−リノレン酸40〜65重量%、オレイン酸12〜30重量%、ω6系不飽和脂肪酸10〜30重量%で、かつ炭素−炭素2重結合を2個以上有する脂肪酸/(ω9系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸)の含有重量比が1.5〜4、不飽和脂肪酸90〜100重量%であり、トリグリセリドの構成脂肪酸がω3系不飽和脂肪酸20重量%以下、不飽和脂肪酸70〜100重量%で、全構成脂肪酸中、炭素−炭素2重結合を4個以上有する脂肪酸を含有しない請求項1〜3のいずれか1項記載の油脂組成物。
- 植物ステロールを0.05重量%以上含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の油脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の油脂組成物を含有する食品。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の油脂組成物を含有する飼料。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の油脂組成物を含有する医薬品。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の油脂組成物からなる調理油。
- 食品が、水中油型油脂含有食品である請求項7記載の食品。
- 食品が、油中水型油脂含有食品である請求項7記載の食品。
- 食品が、携帯性のある油脂含有食品である請求項7記載の食品。
- 食品が、ベーカリー食品である請求項7記載の食品。
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