JP4031218B2 - 油脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のグリセリド組成、脂肪酸組成を有する自動酸化安定性が良好で、健康上非常に有用な内臓脂肪燃焼性、体脂肪燃焼性等に優れた油脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
脂質(油脂)は、蛋白質、糖質とともに重要な栄養素で、特にエネルギー源として有用である。しかし、これは高カロリー(9Kcal/g)であり、肥満を助長し生活習慣病などの問題を引き起こす原因となる。脂質を多く使用した食事はおいしく、しかも現代人はこのような食事に慣れてしまっている。そのため、飽食状態にある先進諸国においては、医療費の増大とあいまって、国家的な問題となっている。このような背景から、近年、特に健康の維持増進、疾病の予防治療に対する関心が高まり、脂質と肥満や生活習慣病との関連についての研究が数多く行われるようになってきた。
【0003】
従来から行われてきている主な研究は、脂質の主成分であるトリグリセリドを構成する脂肪酸に関するものである。例えば、栄養学的に必須なものは、リノール酸、アラキドン酸及びリノレン酸であり、これらの脂肪酸は生体膜の構成成分或いはエイコサノイド(プロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエン等)の原料として生体内で利用されることが明らかとなっている。また、食餌中の飽和脂肪酸が血清コレステロール上昇作用を有し、ひいてはアテローム性動脈硬化或いは心疾患につながる可能性が高いこと(Lancet 2,959(1950))、食餌中の高レベルの高リノール酸油が、実験動物の腫瘍発生率を増大させ、腫瘍サイズを上昇させること(J. National Cancer Institute, 66,517(1971))が報告されている。高オレイン酸低飽和脂肪酸食が、HDL−コレステロールを維持しつつLDL−コレステロールを低下させて心疾患をのリスクを低減させることが示されている(J. Lipid Res., 26,194(1985)、New England J. Medicine, 314,745(1988))。魚油に含まれるエイコサペンタエン酸の血栓予防効果をはじめ、各種ω3系不飽和脂肪酸の生理活性にも注目が集まっている(Ann. Rev. Nutr.,8,517(1988))。しかし、生理活性の高いエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸には、他の脂肪酸に比べ多数の2重結合が存在し、加熱安定性は勿論のこと自動酸化安定性にも重大な問題があると指摘されている。このため、現状では、ごく一部の製品で実用化されているにすぎない。また、これら脂肪酸の摂取バランスについても検討が行われ、飽和脂肪酸:モノ不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸比やω6系不飽和脂肪酸:ω3系不飽和脂肪酸比について推奨比率が提唱されるなど、数多くの研究報告が見られ、現在もなお研究が行われている(「油脂の栄養と疾病」幸書房、「第6次栄養所要量」厚生省)。このほか、トランス型不飽和脂肪酸がLDL−コレステロールを増加させ、心臓病のリスクが増す等、健康に悪影響を及ぼすことが示されている。これに対し、FDAは1999年11月、トランス型不飽和脂肪酸の量をラベル表示に加えること、健康に関する表示をしている、食品や栄養に関する表示をしている製品には、トランス型不飽和脂肪酸の量を制限することを提案した(FDAホームページ)。
【0004】
抗肥満という観点から、油脂代替物、非吸収性油脂の開発がなされてきており、なかでも代表的なものとして、ショ糖脂肪酸ポリエステル(米国特許第3600186号)が挙げられる。これは体内で吸収されずに排泄されるため油脂由来のカロリーはOkcal/gである。しかしながら、肛門漏洩や脂溶性ビタミン吸収阻害等の問題が懸念されると共に、必須脂肪酸の供給源にはなりえない。この物質は、1996年、FDAより、一定量のビタミンA、D、E、Kを添加した融点37.8℃〜71.1℃の半固体もしくは固体の脂肪酸ショ糖ポリエステルを塩味スナック菓子のみに使用するという条件付きで、許可されている。これは、肛門漏洩防止及び、脂溶性ビタミン吸収阻害防止のためである。このほか、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)が、体内で非蓄積性であるとして知られているが、加熱安定性に乏しい。共役リノール酸、魚油及びシソ油にも、類似の効果が開示されている(Lipids, 32, 853(1997)、J. Agric. Food Chem., 46, 1225(1998))。
【0005】
グリセリド構造に着目した、食用油組成物(日本特許第2010558号)、コレステロール低下剤(日本特許第2035495号)、血清トリグリセリド濃度低下剤(特開平4−300825号公報)、体重増加抑制剤(特開平4−300826号公報)、脂肪肝予防治療剤(特開平4−300828号公報)、液状汎用型油脂組成物(特開平10−176181号公報)等が開示されている。これらはジグリセリドの構造に由来する効果に着目したもので、ジグリセリドの所有する効果を最大限に発揮するものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、肛門漏洩や脂溶性ビタミンの吸収阻害等の副作用がなく安全で、肥満になりやすいという油脂の欠点を解消するだけでなく、今までにない顕著な体脂肪・内臓脂肪燃焼作用を有し、しかも自動酸化安定性に優れた、時代の要請にふさわしい健康に十分配慮された非常に有用な油脂組成物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、特定の不飽和脂肪酸構成を有するジグリセリドが、内臓脂肪燃焼性(即ち、内臓脂肪低下)、体脂肪燃焼性等に優れていることを見出した。
本発明は、構成脂肪酸の15〜90重量%が炭素数20未満のω3系不飽和脂肪酸であり、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の重量比が1〜6であるジグリセリドを60〜100重量%含有する油脂組成物を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するジグリセリドは、その構成脂肪酸の15〜90重量%(以下単に%と記載する)が炭素数20未満のω3系不飽和脂肪酸であることを要する。ここでω3系不飽和脂肪酸は、ω位から3番目の炭素原子に最初の不飽和結合が位置し、かつ不飽和結合を2個以上有する脂肪酸である。具体的には、α−リノレン酸(all cis-9,12,15-オクタデカトリエン酸)、ステアリドン酸(all cis-6,9,12,15-オクタデカテトラエン酸)等が挙げられ、α−リノレン酸が特に好ましい。
炭素数20未満のω3系不飽和脂肪酸は、ジグリセリド中に好ましくは20〜80%、更に30〜70%、特に40〜65%含有するのが、種々の生理活性効果発現の点で好ましい。
【0009】
生理活性効果発現、自動酸化安定性、脂肪酸バランスの点から、ジグリセリドの構成脂肪酸の中で、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の重量比が1〜6であることを要するが、好ましくは1.2〜5、更に1.4〜4、特に1.5〜3であるのが好ましい。
トランス型不飽和脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の分子内の二重結合の1つ以上がトランス型であるもので、赤外線吸収スペクトル法(日本油化学協会、基準油脂分析試験法2.4.4.2)やガスクロマトグラフィー法(JAOCS, 70, 425(1993)など)で測定することができる。健康上の理由から、トランス型不飽和脂肪酸は5%以下が特に好ましい。
【0010】
ジグリセリドの他の構成脂肪酸としては、脂肪酸の摂取バランス、ω3系不飽和脂肪酸の生理活性効果発現の点から、リノール酸、γ−リノレン酸等の炭素数18〜22のω6系不飽和脂肪酸を、2〜50%、好ましくは5〜40%、特に10〜30%含有するのが良い。ジグリセリドの構成脂肪酸のうち不飽和脂肪酸が70〜100%、好ましくは80〜100%、特に90〜100%であることが生理活性効果発現の点で好ましい。
ジグリセリドの構成脂肪酸の10〜60%がω9系不飽和脂肪酸であることが好ましく、脂肪酸の摂取バランス、生理活性発現、酸化安定性の点から更に10〜50%、特に12〜30%含有するのが好ましい。ω9系不飽和脂肪酸としては、炭素数10〜24、好ましくは16〜22のオレイン酸、エイコサモノエン酸、ドコサモノエン酸等が挙げられ、オレイン酸が特に好ましい。例えば、具体的な例を挙げると、生理活性発現の観点から、オレイン−オレインジグリセリドは45%未満、より好ましくは40%以下がよい。
【0011】
このような構成脂肪酸を含有するジグリセリドは、油脂組成物中に60〜100%含有されるが、生理活性効果発現、工業的生産性の点で、好ましくは65〜99%、更に70〜95%、特に75〜92%であるのが好ましい。油脂組成物中の残余の成分は、モノグリセリド、トリグリセリド、遊離脂肪酸等である。モノグリセリドは、風味マスキング効果、加熱時の発煙防止、工業的生産性等の点から、油脂組成物中に0〜40%、好ましくは0.1〜10%、更には0.1〜4%、特に0.1〜2%含有されるが、最も好ましくは0.1〜1.5%含有するのがよい。モノグリセリドの構成脂肪酸は、ジグリセリドの構成脂肪酸と同じであることが好ましい。遊離脂肪酸(塩)は、異味があり風味の点から3.5%以下に低減されるのがよく、好ましくは2.5%以下、更に1.5%以下、特に1%以下、最も好ましくは0.5%以下とするのがよい。残りは、トリグリセリドで油脂組成物が構成され、0〜40%、好ましくは0.1〜34.9%、更に好ましくは2〜29.9%、特に6〜24.9%とするのがよい。トリグリセリドの構成脂肪酸としては、生理活性効果発現の点で、炭素数8〜24、特に16〜22の不飽和脂肪酸が55〜100%、好ましくは70〜100%、更に80〜100%、特に90〜100%であることが好ましい。
【0012】
本発明の油脂組成物中の全構成脂肪酸のうちでエイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸等の炭素−炭素二重結合を4個以上有する高度不飽和脂肪酸は、全構成脂肪酸中の15%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下とするのが酸化安定性の点で好ましく、実質的に0%とするのが最良である。
本発明の油脂組成物は、例えば目的の構成脂肪酸を有する油脂とグリセリンとをエステル交換反応に付すか、あるいは目的の構成脂肪酸又はそのエステルとグリセリンとの混合物にリパーゼを作用させてエステル化反応を行うことにより製造される。反応中の異性化を防止するうえで、リパーゼを用いたエステル化反応がより好ましい。また、リパーゼを用いたエステル化反応によっても、反応終了後精製手段における異性化を防止するため、精製手段も脂肪酸の異性化が生起しないような穏和な条件で行うのが好ましい。更に、トランス酸含量の少ない原料油脂を使用することが好ましい。
上記ジグリセリドは、ω3系不飽和アシル基、ω6系不飽和アシル基等を含有するアマニ油、エゴマ油、シソ油、トウハゼ核油、大豆油、ナタネ油等の加水分解反応、これら各種油脂とグリセリンとのエステル交換反応、かかる油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応等任意の方法により得ることができる。反応方法は、アルカリ触媒等を用いた化学反応法、リパーゼ等の酵素を用いた生化学反応法のいずれでもよい。トリグリセリドは、大豆油、ナタネ油、パーム油、米油、コーン油等の植物油、牛脂、魚油等の動物油、あるいはそれらの硬化油、分別油、ランダムエステル交換油等から得ることができる。
【0013】
本発明の油脂組成物は、脱ガム、脱酸、脱色、水洗、脱臭等の精製を施して使用するのが酸化安定性、風味の点で好ましい。過酸化物価(POV;日本油化学協会、基準油脂分析試験法2.5.2.1)が10以下、好ましくは7以下、更に好ましくは5以下、特に好ましくは3以下、最も好ましくは1以下とするのがよい。また、ロビボンド法(日本油化学協会、基準油脂分析試験法2.2.1.1、5 1/4インチガラスセル使用)による色(10R+Y)が35以下、好ましくは30以下、更に好ましくは25以下、特に20以下とするのが好ましい。
【0014】
本発明の油脂組成物として、好ましい構成は、ジグリセリド65〜99%、モノグリセリド0.1〜4%、トリグリセリド0.1〜34.9%、遊離脂肪酸(塩)1.5%以下であってジグリセリド中の構成脂肪酸の20〜80%がα−リノレン酸、10〜60%がオレイン酸、2〜50%がω6系不飽和脂肪酸、70〜100%不飽和脂肪酸、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の重量比が1.2〜5であって、更にトリグリセリドの構成脂肪酸の70〜100%が不飽和脂肪酸、油脂組成物中の全構成脂肪酸のうち炭素−炭素二重結合を4個以上有する高度不飽和脂肪酸が5%以下である。
【0015】
更に好ましくは、ジグリセリド70〜95%、モノグリセリド0.1〜2%、トリグリセリド2〜29.9%、遊離脂肪酸(塩)1%以下であって、ジグリセリド中の構成脂肪酸の30〜70%がα−リノレン酸、10〜50%がオレイン酸、5〜40%がω6系不飽和脂肪酸、80〜100%が不飽和脂肪酸、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の重量比が1.4〜4であって、更にトリグリセドの構成脂肪酸の80〜100%が不飽和脂肪酸、油脂組成物中の全構成脂肪酸のうち炭素−炭素二重結合を4個以上有する高度不飽和脂肪酸が2%以下である。
【0016】
特に好ましくは、ジグリセリド75〜92%、モノグリセリド0.1〜1.5%、トリグリセリド6〜24.9%、遊離脂肪酸(塩)0.5%以下であって、ジグリセリドの構成脂肪酸の40〜65%がα−リノレン酸、12〜30%がオレイン酸、ω6系不飽和脂肪酸が10〜30%、90〜100%が不飽和脂肪酸、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の重量比が1.5〜3であって、トリグリセリドの構成脂肪酸の90〜100%が不飽和脂肪酸、油脂組成物中の全構成脂肪酸のうち炭素−炭素二重結合を4個以上有する高度不飽和脂肪酸を含有しないものである。
【0017】
本発明の油脂組成物には、抗酸化剤も添加してもよく、抗酸化剤は通常、食品、医薬品に使用されるものであればいずれでもよいが、カテキン、トコフェロール、ビタミンC脂肪酸エステル、リン脂質、天然抗酸化成分の1種又は2種以上の組合せが好ましく、特にカテキンが好ましい。ビタミンC脂肪酸エステルとしては、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステルが、天然抗酸化成分としては、ローズマリー等のハーブ、桃の葉や根塊からの抽出物等が挙げられる。抗酸化剤は本発明の油脂組成物に、0.01〜5%、特に0.05〜1%添加することが好ましい。
【0018】
本発明の油脂組成物には、コレステロール低下効果の点で、植物ステロールを0.05%以上、特に0.3%以上含有するのが好ましい。油脂組成物中の植物ステロール含有量は、その原料油脂や製造法によって異なる。例えば、一般に市販されている蒸留して得られた脂肪酸を原料として用いた場合には、油脂組成物中の植物ステロール含有量は低くなる。このような場合には植物ステロールを0.05%以上になるように添加するのが好ましい。また植物ステロール含量の上限は特に限定されないが、0.05〜1.2%の範囲であればよい。更なるコレステロール低下を目的とする場合には1.2〜20%添加してもよい。ここで植物ステロールとしては、例えばα−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、シクロアルテノール等のフリー体、及びこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、桂皮酸エステル等のエステル体が挙げられる。
【0019】
本発明の油脂組成物には、更に結晶抑制剤を添加するのが好ましい。
本発明で使用する結晶抑制剤としては、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等のポリオール脂肪酸エステルが挙げられる。
またポリオール脂肪酸エステルは、HLB(Griffinの計算式)が4以下、特に3以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルが好ましい。
本発明の油脂組成物には、結晶抑制剤を0.02〜0.5%、特に0.05〜0.2%含有するのが好ましい。
【0020】
かくして得られた油脂組成物は、内臓脂肪燃焼促進、体脂肪燃焼促進、安静時代謝増加、脂質代謝亢進等の優れた生理活性を有する他、血中脂肪燃焼、肝機能改善、レプチン低下、PAI−1低下、血糖値低下、インスリン抵抗性改善、血圧降下等の生理活性を奏する。更に自動酸化安定性に優れているため長期保存が可能であるとともに、風味も優れている。特にω3系不飽和アシル基が、ジグリセリドを構成するアシル基として存在しているため、遊離脂肪酸として存在する場合よりも、低濃度で作用し、速効性でかつ風味良好で安全である。かかる優れた特性を有するため、本発明の油脂組成物は食品、飼料及び医薬品に利用することができる。
【0021】
食品としては、該油脂組成物を食品の一部として含有する油脂含有食品に用いることができる。かかる油脂含有食品としては、例えば特定の機能を発揮して健康増進を図る健康食品が挙げられる。具体的には、かかる油脂組成物を配合したカプセル剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、パン、ケーキ、クッキー、パイ、ピザクラスト、ベーカリーミックス等のベーカリー食品類、スープ類、ドレッシング、マヨネーズ、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム、ホイップクリーム等の水中油型油脂含有食品、マーガリン、スプレッド、バタークリーム等の油中水型油脂含有食品、ポテトチップス等のスナック菓子、チョコレート、キャラメル、キャンデー、デザート等の菓子、飲料、ソース、焼肉のたれ、ピーナツバター、フライショートニング、ベーキングショートニング、ドウ、エンローバー用油脂、フィリング用油脂、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の肉加工食品、麺、冷凍食品、レトルト食品、ルー等が挙げられる。かかる油脂含有食品は、上記油脂組成物の他に、油脂含有食品の種類に応じて一般に用いられる食品原料を添加して製造することができる。本発明の油脂組成物の食品への配合量は、食品の種類によっても異なるが、一般に0.1〜100%、更に1〜80%、特に2〜80%が好ましい。投与量は、油脂組成物として、1日当たり0.1〜50g、更に0.5〜10g、特に1〜7.5gを、1〜数回に分けて投与することが好ましい。
【0022】
なお、製剤調製の関係から、食品原料由来の油脂が含まれている場合は、食品原料由来の油脂と本発明の油脂組成物との比は、95:5〜1:99が好ましく、95:5〜5:95がより好ましく、更に85:15〜5:95が、特に40:60〜5:95が好ましい。
【0023】
本発明の油脂組成物を、他の食品原料と配合し、加工した油脂含有食品として使用する場合の食品原料としては、次のものが挙げられる。食用油脂としては、天然の動植物油脂の他、それらにエステル交換、水素添加、分別等を施した加工油脂が挙げられる。好ましくは、大豆油、ナタネ油、米糠油、コーン油、パーム油、アマニ油、シソ油、魚油及びそれらの加工油脂が挙げられる。乳化剤としては卵蛋白質、大豆蛋白質、乳蛋白質、これらの蛋白質より分離される蛋白質、これら蛋白質の(部分)分解物等の各種蛋白質類、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンあるいはその酵素分解物が挙げられる。安定剤としては、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、トラガントガム、コンニャクマンナン等の増粘多糖類や澱粉類が挙げられる。また、食塩、糖、食酢、調味料等の呈味料、スパイス、フレーバー等の香味料、着色料、トコフェロール、天然抗酸化成分等の抗酸化剤等が挙げられる。
【0024】
本発明の油脂含有食品として好ましいものとして、次のものが挙げられる。
(1)水中油型油脂含有食品
油相と水相の重量比は、油相/水相=1/99〜90/10、好ましくは10/90〜80/20、特に30/70〜75/25が好ましい。油相中のジグリセリドの含有量は、60〜100%、好ましくは65〜99%、特に75〜92%が好ましく、ジグリセリドの構成脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量は、20〜80%、好ましくは30〜70%、特に40〜65%が好ましく、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の含有量比は1〜6、好ましくは1.2〜5、特に1.5〜3が好ましい。植物ステロールは、0〜10%、好ましくは1〜7%、特に2〜5%が好ましい。乳化剤は、0.01〜5%、特に0.05〜3%が好ましい。安定化剤は0〜5%、特に0.01〜2%が好ましい。pHは、1.0〜7.0、好ましくは2.0〜6.0、特に3.0〜5.0が好ましく、食酢、クエン酸等の有機酸(又はその塩)、レモン果汁、燐酸(塩)等の無機酸(塩)等で調整することができる。
これらの材料を用いて、常法によりドレッシング、マヨネーズ、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム、ソース、スープ、飲料等の水中油型油脂含有食品を調製することができる。
【0025】
(2)油中水型油脂含有食品
水相と油相の重量比は、水相/油相=90/10〜1/99、好ましくは80/20〜10/90、特に70/30〜35/65が好ましい。油相中のジグリセリドの含有量は、60〜100%、好ましくは65〜99%、特に75〜92%が好ましく、ジグリセリドの構成脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量は、20〜80%、好ましくは30〜70%、特に40〜65%が好ましく、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の含有量比は、1〜6、好ましくは1.2〜5、特に1.5〜3が好ましい。植物ステロールは、0〜10%、好ましくは1〜7%、特に2〜5%が好ましい。また乳化剤は0.01〜5%、特に0.05〜3%が好ましい。
これらの材料を用いて、常法によりマーガリン、スプレッド等の油中水型油脂含有食品を調製することができる。
【0026】
(3)携帯性のある油脂含有食品
油脂含有量は、1〜30%、特に1〜20%が好ましく、該油脂中のジグリセリドの含有量は、60〜100%、好ましくは65〜99%、特に40〜65%が好ましく、また、ジグリセリドの構成脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量は20〜80%、好ましくは30〜70%、特に40〜65%が好ましく、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の含有量比は、1〜6、好ましくは1.2〜5、特に1.5〜3が好ましい。植物ステロールは、0〜20%、好ましくは1〜20%、特に2〜15%が好ましい。蔗糖、グルコース、フルクトース、マルトース、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、澱粉等の糖質は40〜99%、また炭酸水素ナトリウム等の膨張剤と酒石酸、フマル酸、クエン酸等の酸性剤からなる炭酸発泡剤は、0〜20%、特に1〜10%が好ましい。
これらの材料を用いて、常法により錠菓、キャンデー、キャラメル、グミ等の携帯性のある油脂含有食品を調製することができる。特に炭酸発泡剤の使用により、口溶け性が改善される。
【0027】
(4)ベーカリー食品
油脂含有量は、1〜40%、特に5〜35%が好ましく、該油脂中のジグリセリドの含有量は、60〜100%、好ましくは65〜99%、特に75〜92%が好ましく、また、ジグリセリドの構成脂肪酸中のα−リノレン酸の含有量は、20〜80%、好ましくは30〜70%、特に40〜65%が好ましく、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の含有量比は、1〜6、好ましくは1.2〜5、特に1.5〜3が好ましい。植物ステロールは、0〜20%、好ましくは1〜20%、特に1〜15%が好ましい。小麦粉は、10〜70%、特に20〜60%が好ましい。鶏卵の全卵、卵黄、卵白、これらの分離物、これらの分解物のいずれか1種以上を0〜30%、特に5〜25%を含有するのが好ましい。食塩は、0〜2%、特に0.1〜1%が好ましい。また糖質は0〜25%、ベーキングパウダーは0〜1%含有するのが好ましい。
これらの材料を用いて、常法によりパン、ケーキ、クッキー等のベーカリー食品を調製することができる。
【0028】
医薬品としては、例えば散剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、錠剤等の固形製剤、水剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、ゲル剤等の経口投与剤が挙げられる。この経口投与剤は、上記油脂組成物の他、経口投与剤の形態に応じて一般に用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、界面活性剤、アルコール類、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等を添加して製造することができる。本発明の油脂組成物の経口投与用医薬品への配合量は、医薬品の用途及び形態によっても異なるが、一般に0.1〜100%、更に1〜80%、特に5〜80%が好ましい。また投与量は、油脂組成物として、1日当たり0.1〜50g、更に0.5〜10g、特に1〜7.5gを、1〜数回に分けて投与することが好ましい。
【0029】
飼料としては、例えば、牛、豚、鶏、羊等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、ウナギ、タイ、ハマチ、エビ等に用いる魚介類用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフードが挙げられる。本発明の油脂組成物の飼料への配合量は、飼料の用途によっても異なるが、一般に1〜30%、特に1〜20%が好ましい。
【0030】
【実施例】
実施例1
次の油脂組成物を製造した。分析結果を表1に示す。
油脂組成物1
エゴマ油脂肪酸650重量部とグリセリン107重量部の混合物にリポザイムIM(ノボ・ノルディスクバイオインダストリー社製)を加えて、40℃、5時間、0.07hPaでエステル化反応を行った。その後、分子蒸留(215℃、0.07hPa)を行った。次いで脱色、水洗し、215℃で2時間脱臭し油脂組成物1を得た。
【0031】
油脂組成物2
アマニ油400重量部、ナタネ油200重量部、グリセリン120重量部及び水酸化カルシウム2重量部の混合物を窒素ガス雰囲気下で230℃で0.5時間反応を行った。その後、12時間静置し、グリセリン相を除去した。油相(油脂組成物)に対して2倍重量の50%クエン酸水溶液で水洗した後に、遠心分離法で油脂混合物を取り出した。次いで分子蒸留(215℃、0.07hPa)し、脱色、水洗し、215℃で2時間脱臭して油脂組成物2を得た。
【0032】
油脂組成物3
ナタネ油脂肪酸650重量部とグリセリン107重量部の混合物を、油脂組成物1の製造と同方法でエステル化した。その後、分子蒸留(235℃、0.07hPa)し、水洗し、235℃で1時間脱臭して油脂組成物3を得た。
【0033】
油脂組成物4
アマニ油375重量部、サフラワー油375重量部、グリセリン250重量部及び水酸化カルシウム2重量部の混合物を、油脂組成物2と同一方法で反応・精製を行い油脂組成物4を得た。
【0034】
油脂組成物5
エゴマ油1286重量部と水514重量部の混合物を、オートクレーブで230℃、10時間加熱することにより加水分解し、冷却後、遠心分離法で分解脂肪酸(油相)を取り出した。該分解脂肪酸650重量部とグリセリン107重量部の混合物を、油脂組成物1の製造と同一方法で反応・精製を行い、油脂組成物5を得た。
【0035】
油脂組成物1a
油脂組成物1を100重量部、トコフェロール(ミックスビタミンE、MDE−6000:八代(株))を0.04重量部、カテキン(サントカールNo.1:太陽化学(株))を0.2重量部、ローズマリー(ハーバロックスタイプHT−O抽出物:カルセック(株))を0.25重量部、植物ステロール(タマ生化学)を0.05重量部及びTHL−3(ポリグリセリン脂肪酸エステル、HLB=1:阪本薬品工業(株))を0.1重量部混合し油脂組成物1aを製造した。
【0036】
油脂組成物1b
油脂組成物1を100重量部、トコフェロールを0.04重量部及びカテキンを0.1重量部混合し、油脂組成物1bを製造した。
【0037】
油脂組成物1c
油脂組成物1を100重量部、トコフェロールを0.04重量部、カテキンを0.1重量部、VCP(ビタミンCパルミテート:ロッシュ社)を0.02重量部及び植物ステロールを2.0重量部混合し、油脂組成物1cを製造した。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例2
次の組成の高脂肪高蔗糖食餌(コントロール食餌)のうちスターチ4%相当分を油脂組成物又は油脂に代えた食餌を7週齢雄性C57BL/6J(食餌性II型糖尿病マウス)に通常の食餌投与と同じように4週間連続投与した。その後解剖し、腎周囲、副睾丸、腸間膜及び後腹膜の合計脂肪重量(内臓脂肪量)及び体重増加量を測定した。結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
本発明の油脂組成物を含有した食餌を投与したラットは、コントロール食餌群と有意差が認められ、いずれも内臓脂肪及び体重の顕著な低下を認めた。
【0042】
実施例3
健常成人男性8名、2群に、油脂組成物1又は大豆油を2g/日、ソフトカプセルに充填したものを2ケ月間連続服用した。その後、体重、ウエスト周囲長、内臓脂肪面積(CT)、皮下脂肪面積(CT)、血中トリグリセリド及び血中プラスミノーゲンアクチベータインヒビタータイプ1(PAI−1)を測定した。
【0043】
【表3】
【0044】
本発明の油脂組成物1を含有するソフトカプセルを服用することにより、いずれの項目において低下を認めた。
【0045】
実施例4 自動酸化安定性
50mLサンプル瓶に油脂組成物又は油脂を20g入れ、開栓状態で、40℃恒温槽に5日間静置した後の過酸化物価(POV)を測定した(日本油化学協会基準油脂分析試験法2.5.2.1)。結果を表4に示すが、本発明の油脂組成物はいずれも自動酸化安定性が良好であった。
【0046】
【表4】
【0047】
実施例5
精製エゴマ油(太田油脂社製)を用い、Birgitte等の方法(JAOCS, 65, 905(1988))に従って固定化リパーゼを用いて合成したALA−DGをカプセルに封入し、その量は、400mg/個とした。グリセリド組成、構成脂肪酸組成の測定結果を表5に示す。
1日当たりの摂取量はカプセル5個(2g/日)とした。
【0048】
34〜51歳までの肥満気味(BMI>22.0)で血中中性脂肪の高めな健常男子
13名を被験者とした。6週間のALA−DG摂取による脂質代謝への変化を調べるために、ALA−DG摂取前後空腹時の採血を行った。更に、その中から同意の得られた7名について採決の他に空腹時における酸素摂取量測定を行った。試験の前日の夕食は1300Kcal、脂質30gの同じ食事内容とし、12時間の絶食の後、酸素摂取量測定を行った。
【0049】
試験開始時における被験者13名の年齢は40.1±1.7歳、BMI(body mass index)は25.0±0.7であった。また、酸素摂取量測定の被験者7名の年齢は43.4±2.4歳、BMIは24.1±0.5であった。
【0050】
試験期間中、被験者に対して被験物質の摂取以外は、本試験開始前と同様の食事及び生活を行うように指導した。また、これらの試験は社内臨床試験倫理委員会の了承を得た上で、ヘルシンキ宣言の精神に則り、十分な説明の後、文書による同意を得、医師による観察下にて実施した。
【0051】
【表5】
【0052】
身体計測方法
身体計測に関しては身長、体重、ウエスト周囲長、ヒップ周囲長、皮下脂肪厚、体脂肪率につき実施した。ウエスト及びヒップ周囲長計測部位は日本肥満学会基準に従い、立位の臍周囲径、最大周囲径を採用した。皮下脂肪厚は竹井機器工業(株)社製ファット・オー・メーターにて上腕伸展側中間部及び背部肩甲骨下端部の2点をキャリパー法により測定した。体脂肪率は(株)タニタ社製BODY FAT ANALYZER TBF-410により下肢部を、オムロン(株)社製体脂肪計HBF-302により腕部を測定した。
なお、データは平均±標準誤差で示した。ALA−DGを摂取する前後の比率はpaired t-検定を用いた。いずれもp<0.05を有意差とした。
【0053】
測定:
酸素摂取量測定による安静時代謝量の算出
被験者は10分間の安静を保った後、株式会社ヴァイン社製のMETAVINEを用いて、3分間の安静時酵素摂取量を測定し、安静時代謝量を算出した。
採血及び血清、血漿試料の分析
採血は上腕屈側部の静脈より行い、採取血液は血清及び血漿として各種生化学検査に供した。検査項目のうち、血清−トリグリセリド、リン脂質(PL)、遊離脂肪酸(NEFA)、総コレステロール(T-cho)、LDL−cho、HDL−cho、レムナント様リポ蛋白コレステロール(RLP-cho)、レムナント様リポ蛋白中性脂肪(RLP-TG)、アセト酢酸、3−ヒドロキシ酪酸、総ケトン体、肝機能値(GOT,GPT,γ-GTP)を分析した。また、VLDL画分中のトリグリセリド(TG)、コレステロール(cho)、リン脂質(PL)も測定した。
【0054】
・ALA−DG摂取の空腹時血清成分に及ぼす影響
ALA−DG摂取前後の空腹時の血清成分の測定結果を表6に示す。
【0055】
【表6】
【0056】
脂質代謝に関わる項目について分析を行った結果、血清−トリグリセリドは低値を示し、特に、VLDL−トリグリセリドは有意に減少した。
VLDL画分については他に有意差はないものの、VLDL−cho、VLDL−PLについて減少が見られた。また、RLP−cho、リン脂質についてもそれぞれ有意に減少を示した。総ケトン体は増加傾向であったが、有意な差はなかったものの、アセト酢酸については有意な増加を示した。また、肝機能値のうち、GPTについて有意な減少が見られた。
なお、6週間のALA−DG摂取によって、体重、ウエスト、ヒップ、皮下脂肪厚、体脂肪率については有意な変化は認められなかった。
【0057】
・ALA−DG摂取の安静時代謝量に及ぼす影響
3分間の酸素摂取量より安静時代謝量を算出した結果、6週間のALA−DG摂取後の安静時代謝量は摂取試験開始前に比較し2.9±0.8Kcal/kg/day(117.3±4.6%)(P<0.05)の有意な増加が認められた。
【0058】
実施例6
日本肥満学会基準(肥満研究 6(1), 18-28(2000))により、BMIから判断して普通体重〜肥満(1度)に属する25〜40歳までの健常男子16名を被験者とした。BMIについて初期に差が無いように試験群(ALA-DG群8名)と対照群(LA-TG群8名)に群分けした。
【0059】
実施例5と同じALA−DG用いた。LA−TGは大豆油を用いた。各々の組成を表7に示す。
【0060】
【表7】
【0061】
測定:
測定は2群それぞれに行った。摂取開始前及び摂取開始後12週間後に身体測定及び、腹部CTスキャン撮影を行った。
【0062】
身体計測方法
身体計測は、実施例5と同様に行った。
【0063】
腹部CTスキャン撮影
臍部横断面及び脾臓と肝臓が同一断面となる位置にてCTスキャン撮影を行った。Tokunaga等の方法(Int. J. Obes., 7, 437(1983))に従いCT像より全脂肪面積、内臓脂肪面積及び皮下脂肪面積を求めた。また、加藤等の方法(肝臓、25, 1097(1984))に従い、肝臓及び脾臓のCT値比を求めた。CT撮影では東芝XビジョンRIALを使用した。
【0064】
食事の解析
被験者が記入した食事日誌より、カロリー、蛋白質、脂質、糖質の摂取量、及び第5次改訂日本人の栄養摂取に従ったカロリー所要量に対する充足率について解析した。
【0065】
なお、データは平均±標準誤差で示した。摂取試験における各群の初期値と摂取開始後12週目との比較にはpaired t-検定を用いた。変化率の群間差の検定にはt-検定を用い有意性を判定した。いずれもp<0.05を有意差とした。
【0066】
試験期間中、被験者に対して被験物質の摂取以外は本試験開始前と同様の食事及び生活を行うように指導した。なお、これらの試験は社内臨床試験倫理委員会の了承を得た上で、ヘルシンキ宣言の精神に則り、十分な説明の後、文書による同意を得、医師による観察下にて実施した。
【0067】
試験開始前に測定した身体データを表8に示す。
【0068】
【表8】
【0069】
試験開始前と試験中の2回における3日間の食事内用調査を行い、カロリー、蛋白質、脂質、糖質、カロリー所要量に対するそれぞれの充足率を算出した。試験期間中の1日当たりの平均摂取量を表9に示す。摂取量及び、表には示していないが充足率に群間差が無いことを確認した。
【0070】
【表9】
【0071】
体重、BMI、ウエスト周囲長、ウエストヒップ比につき、各被験者の初期値を100とした際の12週間後に測定、変化を相対値で示す(表10)。
【0072】
【表10】
【0073】
ALA−DG群におけるウエスト、ウエストヒップ比は12週間後において、LA−TG群に比較して、明らかな減少を示した。
LA−TG群においては摂取開始12週間後の全脂肪面積、内臓脂肪面積、皮下脂肪面積、CT値比の変化については、何れの項目にも有意差を認めなかった。これに対し、ALA−DG群では全脂肪面積、内臓脂肪面積それぞれの初期値に対して有意に低下が認められた。また、肝臓及び脾臓のCT値比が上昇したことから、肝脂肪の低下も認められた。特に、内臓脂肪の変化について、ALA−DG群は、LA−TG群に比較して有意な減少が認められた。
【0074】
実施例7
ラットによる体重、内臓脂肪重量、肝臓重量を次の方法で測定した。
動物及び飼育方法
本試験は、花王株式会社動物管理委員会及び動物倫理委員会の承認・管理の下に実施した。動物はC57BL/6Jマウス(7週齢,♂,日本クレア(株);東京)を用い、室温23±2℃,湿度55±10%,照明時間7:00〜19:00の環境下で飼育した。搬入後7日間の馴化の後に体重測定を行い、各試験群の平均体重がほぼ同一となるように分けた(n=5/群)。飼料は自由摂食、水は自由摂水とした。給餌にはローデンカフェ(オリエンタル酵母工業(株):東京)を用い、2日毎に新しい飼料に交換した。なお、1週間に1回、試験群(n=5/cage/群)ごとに24時間当たりの摂餌量の測定を行い、摂取エネルギー量を求めた。本条件下で、4週間飼育した。
被験物質及び飼料原料
ALA−DGは、シソ油からBirgitte等の方法(JAOCS, 65, 905(1988))により固定化リパーゼの存在下で調製した。ALA−DG及びサフラワー油、ナタネ油混合油(SR-oil)の組成を表11に示す。
【0075】
【表11】
【0076】
SR−oilでは、オレイン酸、リノール酸がそれぞれ29.1%、57.8%と構成脂肪酸の主体を占めたのに対し、ALA−DGでは構成脂肪酸中α−リノレン酸が60.8%を占めた。ALA−DGの油脂中に占めるDG及びTG含量は、それぞれ85.2%、14.1%であり、DGにおける1,3−型と1,2−型の比率は約7:3であった。ラード、蔗糖、カゼイン、セルロース、ミネラル、ビタミン、α−ポテト澱粉はオリエンタル酵母工業(株)より、サフラワー油、ナタネ油は日清製油(株)より購入した。
【0077】
飼料の組成及びエネルギー量を表12に示す。
【0078】
【表12】
【0079】
低脂肪食(LF)は飼料中に脂質5%を含有するのに対し、高脂肪食(HF)は脂質30%及び蔗糖13%を含有する。飼料100g当たりのエネルギー量は、LFが399.7Kcal、HFが522.2Kcalであり、HFはLFに比較し約30%高いエネルギー量を有する。ALA−DG添加飼料はHFに対し1%、2%、4%のALA−DGを添加して作製した。脂質添加分に関してはα−ポテト澱粉により調整を行った。なお、各飼料は2日分ずつ遮光袋に分包し、窒素封入後、4℃にて保存した。
【0080】
測定:
試験期間中、毎週体重測定を行った。試験終了後に12時間絶食条件下で動物をエーテル麻酔後、放血殺した。次いで解剖し、各部の内臓脂肪重量(副睾丸周囲脂肪、腸間膜脂肪、後腹膜脂肪、腎周囲脂肪)及び肝臓重量を測定した。
【0081】
・体重(表13)
初期値において、各試験群間に有意差は認められなかった。各試験群とも4週目に体重増加を認めた。体重増加はALA−DG添加群ではHF群に対する体重増加抑制が見られ、何れの添加濃度群も4週目において体重、体重増加量ともHF群との間に有意差を認め、最終体重はLF群とほぼ同等であった(LF群との有意差なし)。また、4週目体重、体重増加量ともALA−DG4%添加群が最も低い値を示した。なお、試験期間中の摂取エネルギー量は、何れの群間においても有意差は認めなかった。
【0082】
【表13】
【0083】
・内臓脂肪重量及び肝臓重量(表13)
ALA−DG添加群においては、内臓脂肪合計重量(1%添加群p<0.05, 2%, 4% 添加群p<0.01)、副睾丸周囲脂肪重量(1%添加群p<0.05, 2%, 4% 添加群p<0.01)、腸間膜脂肪重量(1%, 2%添加群p<0.05, 4% 添加群p<0.01)、後腹膜脂肪重量(1%添加群p<0.05, 2%, 4% 添加群p<0.001)はHF群に比較して有意な低値を示した。内臓脂肪重量は、ALA−DGの添加量の増加に従い濃度依存的に低くなる傾向が認められ、ALA−DG4%添加群が最も低い値を示した。
肝臓重量に関しては、ALA−DG1%及びALA−DG4%添加群においてHF群に比較して有意な低値(p<0.05)を示したが、LF群との有意差は認められなかった。
【0084】
実施例8 分離液状ドレッシング
ワインビネガーと食塩、胡椒、マスタードとの混合液に、本発明の油脂組成物1aを添加し攪拌して分離液状ドレッシングを製造した。
本発明の油脂組成物1a 45.0重量部
ワインビネガー(中埜酢店製造) 25.0
食塩 1.25
胡椒 0.3
マスタード 0.25
【0085】
実施例9 キャンデー
上白糖200重量部に水70重量部を加え、加熱溶解後、148℃まで煮沸を続けた。得られたアメ90重量部に油脂組成物1bを10重量部加えて、混合、成形、切断してキャンデーを製造した。
【0086】
実施例10 錠剤
コーンスターチ44重量部、結晶セルロース40重量部、カルボキシメチルセルロースカルシウム5重量部、無水ケイ酸0.5重量部、ステアリン酸マグネシウム0.5重量部及び油脂組成物1c 10重量部を混合し、打錠機で200mg/個の錠剤を製造した。
【0087】
実施例11 マヨネーズ
本発明の油脂組成物1b 65.0%
卵黄 15.0
食酢(酸度10%) 7.0
上白糖 1.0
グルタミン酸Na 0.4
食塩 0.3
マスタード(粉末) 0.3
増粘剤(キサンタンガム) 0.2
水 10.8
ホモミキサーで本発明の油脂組成物1b以外の成分を撹拌混合した後、油脂組成物1bを滴下して予備乳化した。得られた予備乳化物をホモミキサーで更に均質化して、マヨネーズを製造した(pH=4.0)。
【0088】
実施例12 スプレッド
(油相)
本発明の油脂組成物1b 33.4重量部
パーム硬化油(IV=2) 4.0
大豆硬化油(IV=43) 2.0
モノグリセリド 0.5
フレーバー 0.1
(水相)
蒸留水 58.4重量部
脱脂粉乳 0.3
食塩 1.3
上記油相と水相を調製し、次いでホモミキサーにより混合・乳化した。得られた乳化物を常法により急冷して可塑化することにより、スプレッドを得た。
【0089】
実施例13 錠菓(タブレット)
キシリトール 28.4重量部
ソルビトール 56.9
本発明の油脂組成物1b 2.5
植物ステロール(タマ生化学(株)) 2.5
フレーバー(ジンジャーオイル) 1.2
クエン酸 3.0
炭酸水素ナトリウム 5.0
着色料(ウコン粉末) 0.5
原料を混合した後、乳鉢にてすりつぶした。これを常法に従い、2gずつ打錠機にて打錠し(24.5MPa、4秒)、錠菓(タブレット)を製造した。
【0090】
実施例14 ショートブレッド
薄力粉 350重量部
強力粉 150
上白糖 150
全卵 125
本発明の油脂組成物1b 200
食塩 2.5
上白糖、食塩、本発明の油脂組成物1bをボールに入れ、ホバートミキサーにて撹拌した。これに全卵を徐々に加え、ホバートミキサーで再度撹拌した。予め混合しておいた薄力粉と強力粉を3回に分けて加え、更にホバートミキサーで撹拌した。調製した生地を25gずつ小分けし、金属製型枠に詰めた。これをオーブンで焼成(160℃、50分)後、型枠から外し、放冷してショートブレッドを製造した。
【0091】
実施例15 ブリオッシュ
強力粉 100重量部
全卵 50
本発明の油脂組成物1b 30
上白糖 15
水 15
イースト 5
イーストフード 0.1
脱脂粉乳 4
食塩 2
本発明の油脂組成物1b以外の原料を混合し、ミキサーにて低速30秒間ミキシングを行った。次いで油脂組成物1bを加え、ミキシングを行った(低速5分間、中速22分間)。得られた生地を27℃で30分間発酵させ、更に5℃にて15分間低温発酵を行った。この生地を37gずつに分割し、丸型に成型した。これを33℃で60分間発酵させた後、オーブンで焼成して(190℃、9分間)、ブリオッシュを製造した。
【0092】
【発明の効果】
本発明の油脂組成物は、内臓脂肪燃焼性、体脂肪燃焼性、自動酸化安定性に優れる。
Claims (13)
- 構成脂肪酸の20〜80重量%が炭素数20未満のω3系不飽和脂肪酸10〜60重量%がω9系不飽和脂肪酸であり、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の重量比が1〜6であるジグリセリドを60〜100重量%含有する油脂組成物。
- ω3系不飽和脂肪酸がα−リノレン酸である請求項1記載の油脂組成物。
- 油脂組成物が、ジグリセリド65〜99重量%、モノグリセリド0.1〜4重量%、トリグリセリド0.1〜34.9重量%、遊離脂肪酸(塩)1.5重量%以下であってジグリセリド中の構成脂肪酸の20〜80重量%がα−リノレン酸、10〜60重量%がオレイン酸、2〜50重量%がω6系不飽和脂肪酸、70〜100重量%が不飽和脂肪酸、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の重量比が1.2〜5であって、更にトリグリセリドの構成脂肪酸の70〜100重量%が不飽和脂肪酸、油脂組成物中の全構成脂肪酸のうち炭素−炭素二重結合を4個以上有する高度不飽和脂肪酸が5重量%以下である請求項1又は2記載の油脂組成物。
- 油脂組成物が、ジグリセリド70〜95重量%、モノグリセリド0.1〜2重量%、トリグリセリド2〜29.9重量%、遊離脂肪酸(塩)1重量%以下であって、ジグリセリド中の構成脂肪酸の30〜70重量%がα−リノレン酸、10〜50重量%がオレイン酸、5〜40重量%がω6系不飽和脂肪酸、80〜100重量%が不飽和脂肪酸、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の重量比が1.4〜4であって、更にトリグリセリドの構成脂肪酸の80〜100重量%が不飽和脂肪酸、油脂組成物中の全構成脂肪酸のうち炭素−炭素二重結合を4個以上有する高度不飽和脂肪酸が2重量%以下である請求項1又は2記載の油脂組成物。
- 油脂組成物が、ジグリセリド75〜92重量%、モノグリセリド0.1〜1.5重量%、トリグリセリド6〜24.9重量%、遊離脂肪酸(塩)0.5重量%以下であって、ジグリセリド中の構成脂肪酸の40〜65重量%がα−リノレン酸、12〜30重量%がオレイン酸、ω6系不飽和脂肪酸が10〜30重量%、90〜100重量%が不飽和脂肪酸、シス型ω3系不飽和脂肪酸/(シス型ω6系不飽和脂肪酸+飽和脂肪酸+トランス型不飽和脂肪酸)の重量比が1.5〜3であって、トリグリセリドの構成脂肪酸の90〜100重量%が不飽和脂肪酸、油脂組成物中の全構成脂肪酸のうち炭素−炭素二重結合を4個以上有する高度不飽和脂肪酸を含有しないものである請求項1又は2記載の油脂組成物。
- 植物ステロールを0.05重量%以上含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の油脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の油脂組成物を含有する食品。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の油脂組成物を含有する飼料。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載の油脂組成物を含有する医薬品。
- 食品が、水中油型油脂含有食品である請求項7記載の食品。
- 食品が、油中水型油脂含有食品である請求項7記載の食品。
- 食品が、携帯性のある油脂含有食品である請求項7記載の食品。
- 食品が、ベーカリー食品である請求項7記載の食品。
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