JPWO2002052956A1 - 抗腫瘍用飲食物 - Google Patents
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Abstract
本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を有効成分として含有する抗腫瘍用飲食物に関する。
Description
発明の背景
本発明は、特定の五環性トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を含有する抗腫瘍用飲食物に関する。
近年のガン死亡率をみると、日本(1997年)においては上昇基調が続いており、また米国(1995年)においてはようやく下降基調に転じてきたものの死亡原因としては依然として第2位を占めている。
現在までのところ、ガンの治療法としては、手術療法、化学療法等を中心として様々な方法が挙げられ、また、近年の多大な研究努力による技術的進歩や治療法の合理的な組合せにより、治療成績は確実に向上している。しかしながら、高齢化社会の進行に伴い、現状のままでは、ガン死亡数は今後も増加し、2015年には40万人を突破すると推計されている。
これに対して、人生におけるQOL(Quality of Life:生活の質)を考えると、健康を増進させるような生活習慣により、ガンの予防を推進していくことが望ましい。この様な対策の中心となるのが食生活の改善であり、これについてはこれまでにも様々な方面からの提言がなされている。ガンの予防効果や早期治療効果を明言した抗腫瘍用飲食物に関する特許も多数公開されている。しかしながら、これまでに提案されてきたガンに対する機能性食品や健康食品は、効果、価格、安定供給等の何れかの問題点を抱えていた。
一方、近年大学の研究所、公私立の研究機関、民間の研究所等で薬草を含め各種植物中の薬理機能物質の検索が盛んに進められており、植物中に含まれる五環性トリテルペン類のうち、特に、オレアノール酸、ウルソール酸、ベツリン酸等に関しては、発癌プロモーター抑制効果について、学会・文献での報告、新聞・雑誌等での紹介及び特許による提案等がなされている。特に発癌プロモーター抑制効果を訴求した飲食物に関しては、オレアノール酸、ウルソール酸に関して、発癌プロモーター抑制効果を有する飲料組成物(特開昭64−39973)が公開されている。
しかしながら、これらの五環性トリテルペン類が既に発生した腫瘍細胞に対して、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果および腫瘍細胞転移抑制効果を有し、飲食物等の形態を通じて経口摂取することで、その効果を十分に享受できることはこれまでに知られていなかった。
発明の開示
本発明は、腫瘍の増殖や転移等を予防または治療させることができる非常に優れた抗腫瘍効果を有する抗腫瘍用飲食物を提供することを課題とし、また、その優れた抗腫瘍効果を、手軽に、かつ、安全性に優れた形で享受することができる抗腫瘍用飲食物を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を達成する為に鋭意検討した結果、特定の五環性トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体が、優れた腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果および腫瘍細胞転移抑制効果を有することを見出し、また、これらを飲食物等の形態で経口摂取することにより、その抗腫瘍効果を十分に享受できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を有効成分として含有する抗腫瘍用飲食物を提供する。
本発明はまた、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制用飲食物を提供する。
本発明はまた、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を有効成分として含有する腫瘍細胞死滅用飲食物を提供する。
ここで、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンとしては、天然原料から抽出したものを使用することも、人工の合成品等を使用することもできる。また、これらの生理的に許容される塩や誘導体等についても同様に天然原料から抽出したものや、これらを原料として合成反応を行った合成品等を使用することができる。
飲食物としては、菓子、加工食品、調合油脂類、油脂加工品、乳製品、飲料等の各種飲食物が挙げられる。本発明の飲食物の形状・性状は特に制限されず、固体状、半固体状、ゲル状、液体状、粉末状等何れでもよい。前記五環性トリテルペン類および/またはその特定の誘導体は概して脂溶性であることから、飲食物が調合油脂または油脂加工品である場合は、特に好ましい形態といえる。さらには、該調合油脂または油脂加工品を原料として使用、若しくは揚げ物や炒め物用として使用することで得られる飲食物も好ましい。
また、本発明の飲食物として、飲料等の水系飲食物も得ることができる。特に、前記特定の五環性トリテルペン類の一部または全部がその生理的に許容される塩および/またはその特定の誘導体の状態とすることで、脂溶性の五環性トリテルペン類を水溶性にすることができるため好適である。
本発明はまた、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する前記腫瘍予防用飲食物及び腫瘍予防用飲食物としての使用を提供する。
本発明はまた、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する前記腫瘍治療用飲食物及び前記腫瘍治療用飲食物としての使用を提供する。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する抗腫瘍用飲食物に関し、特に腫瘍細胞増殖抑制用飲食物、腫瘍細胞死滅用飲食物、腫瘍細胞転移抑制用飲食物に関する。マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、天然には植物体から抽出して得ることができ、また、その中のいくつかは人工的に合成することもでき、何れも好適に使用することができる。抗腫瘍成分として含有するとは、その目的とする腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果および腫瘍細胞転移抑制効果等を得ることができる程度含有するということである。
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ベツリン酸、ベツリンは抗発癌プロモーター活性を有し、発癌を抑制することが知られており、癌細胞の発生を抑制することが期待されている。本発明の飲食物は、既に発生してしまっている検出できないレベルでの腫瘍細胞の増殖を抑制し、死滅させ、転移を抑制すること、つまり日常的な摂取により、目に見えないレベルでの腫瘍を消滅させる効果も有することから、腫瘍増殖抑制等の腫瘍予防用飲食物として使用することができる。また、腫瘍細胞が発生した直後にその腫瘍細胞の増殖を抑制し、死滅させ、転移を抑制すること、つまり腫瘍の進行を止め、腫瘍を消滅させる腫瘍治療用飲食物として使用することができる。
本発明の飲食物は、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果を有するが、これらの抗腫瘍効果は、継続的な摂取によりその効果を評価することができ、また、培養癌細胞による試験法でもその効果を評価することができる。これらの評価方法によれば、発癌プロモーター抑制活性物質として知られているオレアノール酸等と比較しても、非常に優れた抗腫瘍効果を有する。
本発明で対象とする腫瘍は、腫脹と、良性腫瘍及び悪性腫瘍を含む真性腫瘍とを含む。具体的には、星細胞腫・膠芽腫・髄芽腫・乏突起膠腫・上衣腫・脈絡乳頭腫等の神経膠腫・髄膜腫・下垂体腺腫・神経鞘腫・先天性腫瘍・転移性脳腫瘍等の脳腫瘍、扁平上皮がん・リンパ腫・各種腺腫およびこれらに起因する上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がん等の咽頭がん、喉頭がん、胸腺腫、胸膜中皮腫・腹膜中皮腫・心膜中皮腫等の中皮腫、胸管がん・小葉がん・乳頭腫等の乳がん、小細胞がん・腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん・腺扁平上皮がん等の肺がん、胃がん、頸部食道がん・胸部食道がん・腹部食道がん等の食道がん、直腸がん・S状結腸がん・上行結腸がん・横行結腸がん・盲腸がん・下行結腸がん等の大腸がん、肝細胞がん・肝内肝管がん・肝細胞芽腫・肝管嚢胞腺がん等の肝がん、膵がん、インスリノーマ・ガストリノーマ・VIP産生腺腫等の膵内分泌腫瘍、肝外肝管がん、肝嚢がん、陰茎がん、腎盂・尿管がん、尿道がん、腎細胞がん・ウィルムス腫瘍・腎血管筋脂肪腫等の腎がん、セミノーマ・胎児性がん・卵黄嚢腫・絨毛がん・奇形腫等の精巣(睾丸)腫瘍あるいは胚細胞腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、外陰がん、子宮頸部がん・子宮体部がん・子宮内膜がん等の子宮がん、子宮肉腫、子宮筋腫、絨毛性疾患、膣がん、未分化胚細胞腫・卵黄嚢腫瘍・未熟奇形腫・類皮嚢胞がん等の卵巣胚細胞腫瘍・卵巣がん等の卵巣腫瘍、母斑細胞・メラノーマ等の黒色腫、菌状息肉症等の皮膚リンパ腫、皮膚がん前駆症等に起因する表皮内がん・有棘細胞がん等の皮膚がん、線維性組織球腫・脂肪肉腫・横紋筋肉腫・平滑筋肉腫・滑膜肉腫・線維肉腫・神経鞘腫・血管肉腫・線維肉腫・神経線維肉腫・血管外皮腫・胞巣状軟部肉腫等の軟部肉腫、ホジキンリンパ腫・非ホジキンリンパ腫等のリンパ腫、骨髄腫、形質細胞腫瘍、急逝骨髄性白血病・慢性骨髄性白血病、成人T細胞白血病リンパ腫・慢性リンパ性白血病等の白血病、真性多血症・本態性血小板血症・特発性骨髄線維症等の慢性骨髄増殖性疾患、リンパ節腫大、胸水腫、腹水腫、その他、各種の、腺腫、脂肪腫、繊維腫、血管腫、筋腫、繊維筋腫、内皮腫等が挙げられる。
本発明の飲食物に関し、五環性トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる1種または2種以上の含量は、その飲食物の摂取の頻度や摂取量、その他の条件によって異なるため、適宜調整すれば良く、特に制限されないが、例えば、0.0001〜80質量%の範囲に調整することができる。
本発明の飲食物は、飲食物という形態であるため、容易に、かつ、継続的な摂取が可能であり、好適な効果が期待できる。ここで、飲食物としては、前述の通り、菓子、加工食品、調合油脂類、油脂加工品、乳製品、飲料等の各種飲食物が挙げられ、形状・性状も特に制限されず、固体状、半固体状、ゲル状、液体状、粉末状等何れでもよい。前記五環性トリテルペン類および/またはその特定の誘導体は概して脂溶性であることから、飲食物が調合油脂および/または油脂加工品である場合は、特に好ましい形態といえる。特に限定されないが、例えば、マスリン酸高含有調合油脂等が挙げられる。さらには、該調合油脂および/または油脂加工品を原料として使用、若しくは揚げ物や炒め物として使用することで得られる飲食物も好ましい。
更には、本発明の飲食物として、飲料等の水系飲食物、例えば清涼飲料も得ることができる。特に、前記五環性トリテルペン類の一部または全部をその生理的に許容される塩および/またはその特定の誘導体の状態とすることで、本来、概して脂溶性を示す五環性トリテルペン類の水溶性を向上させることができるため好適である。特に限定されないが、例えば、本来脂溶性であるマスリン酸の生理的に許容される塩や誘導体を配合した清涼飲料等の水系飲料等が挙げられる。
本発明は、上述の様な効果を利用し、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する腫瘍細胞増殖予防用飲食物又は腫瘍細胞転移予防用飲食物として利用することができ、また、同様にマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する腫瘍治療用飲食物として利用することができる。
五環性トリテルペンとは、トリテルペン類の1種であり、イソプレン単位6個から成る五環性の化合物で、炭素数は30個を基本とするが、生合成過程で転移、酸化、脱離あるいはアルキル化され炭素数が前後するものも含まれ、一般に、その骨格により分類されている。例えば、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類、ルパン系トリテルペン類、ホパン系トリテルペン類、セラタン系トリテルペン類、フリーデラン系トリテルペン類、タラキセラン系トリテルペン類、タラキサスタン系トリテルペン類、マルチフロラン系トリテルペン類、ジャーマニカン系トリテルペン類等が挙げられ、これらは、天然には、植物界において広く分布している。
本発者らは、これらのうち、特定の五環性トリテルペン類、すなわち、オレアナン系トリテルペンのマスリン酸、エリトロジオール、ウルサン系トリテルペンのウルソール酸、ウバオール、ルパン系トリテルペンのベツリン酸、ベツリンが、優れた腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果および腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果を有し、また、飲食物の形態で摂取することによりこれらの効果を享受することができることを見出し、本発明を完成した。また同時に、これらと骨格が類似する五環性トリテルペン類である、オレアナン系トリテルペンのオレアノール酸、β−アミリン、ウルサン系トリテルペンのα−アミリン、ルパン系トリテルペンのルペオールは、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果を全く有さず、飲食物の形態で摂取しても効果が無いことを見出している。つまり、五環性トリテルペン類のうち、特定の物質が本発明における抗腫瘍効果を有するということであり、また、本発明において見出された抗腫瘍効果を有する物質に、単に構造が類似するだけでは抗腫瘍効果を有しないということである。たとえば、オレアノール酸とマスリン酸は極めて構造が類似しているが、抗腫瘍効果は比較にならない程差異がある。本発明において、そのランダムに存在する抗腫瘍効果を有する物質を見出したものである。
本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する抗腫瘍用飲食物に関し、好ましくは腫瘍細胞増殖抑制用飲食物に関し、好ましくは腫瘍細胞死滅用飲食物に関し、好ましくは腫瘍細胞転移抑制用飲食物に関する。
ここで、生理的に許容される塩とは、特に特定の五環性トリテルペン酸のカルボキシル基からから誘導される塩であり(部分構造:−COOX;Xは任意の陽イオン性物質)、本発明における天然物からの単離物に本来的に含まれるものも含む。本発明においては、通常飲食物等で用いられるものであれば特に限定はされず、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛等のアルカリ土類金属塩、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、テトラブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン等のアルキルアミン塩、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩、ピペラジン、ピペリジン等のその他の有機アミン塩、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン等の塩基性アミノ酸塩等の塩が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩及び塩基性アミノ酸塩が好ましい。一概にこれらの塩類は、その元となる特定の五環性トリテルペン類に比べて、より水溶性を示すため、本発明においては、特に水系にて適用する場合に好ましい。
また、誘導体とは、生化学的あるいは人工的に形成可能な誘導体であり、本発明においては、可能な誘導体であれば特に限定はされないが、例えば、アルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体、あるいは配糖体等が挙げられる。これらのうち、特にアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体は、その元となる特定の五環性トリテルペン類に比べて、より脂溶性を示すため、本発明においては、特に油系にて適用する場合に好ましく、配糖体は、その元となる特定の五環性トリテルペン類に比べて、より水溶性を示すため、本発明においては、特に水系にて適用する場合に好ましい。
これらの誘導体は、一部は天然にも存在し、それらを単離することで得ることができ、また、人工的に形成させることで得ることができる。また、本発明の誘導体を再度誘導体化して、それらの塩を使用することもできる。
このように、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸及びベツリンを、生理的に許容される適当な塩や誘導体の形態にすることにより、水溶性又は油溶性を向上させることができ、従って、ハンドリング性・品質・抗腫瘍効果を向上させた製品を設定することができる。
アルコールエステル基とは、一般的なカルボキシル基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−COOR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコールエステル基を有する誘導体とは、特に、そのカルボキシル基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコールに特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、トリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
脂肪酸エステル基とは、一般的な水酸基と脂肪酸類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−OCOR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、脂肪酸エステル基を有する誘導体とは、特に、その水酸基と脂肪酸類から形成可能な誘導体を示す。この際の脂肪酸に特に制限は無いが、例えば、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。このうち、酢酸、無水酢酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸から形成される誘導体が好ましい。
アルコキシ基とは、一般的な水酸基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−OR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコキシ基を有する誘導体とは、特に、その水酸基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコールに特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、トリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
アルコキシメチル基とは、一般的なヒドロキシメチル基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−CH20R;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコキシメチル基を有する誘導体とは、特に、そのヒドロキシメチル基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコール類に特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、トリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
また、本発明における配糖体とは、上記のアルコールエステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体のうち、特に、五環性トリテルペン類のカルボキシル基、水酸基、ヒドロキシメチル基と糖類から形成可能な誘導体を示す(部分構造:−COOR、−OR、−CH2OR;Rは任意の糖類を示す。)。この際の糖類に特に制限は無いが、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、アラビノース、フコース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸等が挙げられ、何れもα体、β体どちらでもよい。またこれらの配糖体は、単糖でもよいし、二糖以上の様々な組合せのオリゴ糖でもよい。これらの中には、通常天然に存在し、サポニンという総称で知られているものも有るが、本発明においては、これらの何れを用いてもよい。
本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を含有する抗腫瘍用飲食物である。抗腫瘍成分として含有するとは、その目的とする抗腫瘍効果、すなわち腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果を得ることができる程度含有するということである。つまり、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の投与量が、腫瘍の予防および/または治療に効果を発現する量である。
オレアナン系トリテルペンのマスリン酸、エリトロジオール、ウルサン系トリテルペンのウルソール酸、ウバオール、ルパン系トリテルペンのベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体について、その由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができる。
マスリン酸、エリトロジオールは、何れもオレアナン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが既に知られている物質である。本発明の飲食物において、マスリン酸、エリトロジオール、それらの生理的に許容される塩および/またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができる。
マスリン酸(maslinic acid)は、オレアナン系トリテルペンの一種で、化学式(1)で示される構造の化合物である。作用としては、抗炎症作用や抗ヒスタミン作用を有することが知られている。天然には、オリーブ、ホップ、ハッカ、ザクロ、チョウジ、セージ、ナツメ等に存在することが知られている。本発明の飲食物において、マスリン酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、オリーブ、ホップ、ハッカ、ザクロ、チョウジ、セージ、ナツメ等の天然から得られるものが好ましく、特に安定的な供給源としては、油脂原料として栽培されているオリーブ植物等が挙げられる。オリーブ植物は安定的かつ継続的に栽培されていることに加え、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が高濃度に含まれている点からも好ましい。
尚、本明細書において、「オリーブ」は、オリーブ植物及び/又はオリーブ油及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物を意味する。
本発明において、マスリン酸の生理的に許容される塩および誘導体については前述と同様である。すなわち、その生理的に許容される塩とは化学式(1)における−COOHから誘導されるものであり、その塩の種類は通常飲食物または医薬組成物で用いられるものであれば特に限定はされない。具体的には、例えば、マスリン酸の塩として、マスリン酸ナトリウム、マスリン酸カリウム、マスリン酸アンモニウム、マスリン酸ジメチルアンモニウム、マスリン酸カルシウム、マスリン酸マグネシウム等が挙げられる。このうち、マスリン酸ナトリウム及びマスリン酸カリウムが好ましい。
マスリン酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、マスリン酸メチルエステル、マスリン酸エチルエステル、マスリン酸n−プロピルエステル、マスリン酸イソプロピルエステル、マスリン酸n−ブチルエステル、マスリン酸トリメチルシリルエステル、マスリン酸トリエチルシリルエステル、マスリン酸−β−D−グルコピラノシルエステル、マスリン酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−マスリン酸、3−O−プロピオニル−マスリン酸、3−O−ブチリル−マスリン酸、3−O−バレリル−マスリン酸、3−O−カプリル−マスリン酸、3−O−ラウリル−マスリン酸、3−O−ミリスチル−マスリン酸、3−O−パルミチル−マスリン酸、3−O−パルミトオレイル−マスリン酸、3−O−ステアリル−マスリン酸、3−O−ステアロイル−マスリン酸、3−O−オレイル−マスリン酸、3−O−バクセニル−マスリン酸、3−O−リノレイル−マスリン酸、3−O−リノレニル−マスリン酸、3−O−アラキジル−マスリン酸、3−O−アラキドニル−マスリン酸、3−O−ベヘニル−マスリン酸、2−O−アセチル−マスリン酸、2−O−プロピオニル−マスリン酸、2−O−ブチリル−マスリン酸、2−O−バレリル−マスリン酸、2−O−カプリル−マスリン酸、2−O−ラウリル−マスリン酸、2−O−ミリスチル−マスリン酸、2−O−パルミチル−マスリン酸、2−O−パルミトオレイル−マスリン酸、2−O−ステアリル−マスリン酸、2−O−オレイル−マスリン酸、2−O−バクセニル−マスリン酸、2−O−リノレイル−マスリン酸、2−O−リノレニル−マスリン酸、2−O−アラキジル−マスリン酸、2−O−アラキドニル−マスリン酸、2−O−ベヘニル−マスリン酸、3−O−メチル−マスリン酸、3−O−エチル−マスリン酸、3−O−t−ブチル−マスリン酸、3−O−トリメチルシリル−マスリン酸、3−O−トリエチルシリル−マスリン酸、3−O−ベンジル−マスリン酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−マスリン酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−マスリン酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−マスリン酸、2−O−メチル−マスリン酸、2−O−エチル−マスリン酸、2−O−t−ブチル−マスリン酸、2−O−トリメチルシリル−マスリン酸、2−O−トリエチルシリル−マスリン酸、2−O−ベンジル−マスリン酸2−O−β−D−グルコピラノシル−マスリン酸、2−O−β−D−ガラクトピラノシル−マスリン酸、2−O−β−D−グルクロノピラノシル−マスリン酸等が挙げられる。このうち、マスリン酸エチルエステル、マスリン酸トリエチルシリルエステル、3−O−アセチル−マスリン酸、2−O−アセチル−マスリン酸、2−O−トリエチルシリル−マスリン酸、3−O−ステアロイル−マスリン酸、2−O−ステアロイル−マスリン酸が好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、マスリン酸又は上述の好ましいマスリン酸エステルの2,3−O−ジアセチル体、2,3−O−ジトリエチルシリル体、2,3−ジステアロイル体が好ましいものとしてあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
エリトロジオール(erythrodiol)は、オレアナン系トリテルペンの一種で、化学式(2)の様な構造であり、作用としてはこれまでに、抗炎症作用(Planta.Med. VOL.61,No.2,182−185 1995)等を有することが知られている。天然には、オリーブ、ヒマワリ、キンセンカ、アラビアゴムノキ、コウキシタン、ナガバカコノキ等に存在することが知られている。本発明の飲食物において、エリトロジオールまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、オリーブ、ヒマワリ、キンセンカ、アラビアゴムノキ、コウキシタン、ナガバカコノキ等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブが好ましく、具体的にはオリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
エリトロジオールについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−エリトロジオール、3−O−プロピオニル−エリトロジオール、3−O−ブチリル−エリトロジオール、3−O−バレリル−エリトロジオール、3−O−カプリル−エリトロジオール、3−O−ラウリル−エリトロジオール、3−O−ミリスチル−エリトロジオール、3−O−パルミチル−エリトロジオール、3−O−パルミトオレイル−エリトロジオール、3−O−ステアリル−エリトロジオール、3−O−オレイル−エリトロジオール、3−O−バクセニル−エリトロジオール、3−O−リノレイル−エリトロジオール、3−O−リノレニル−エリトロジオール、3−O−アラキジル−エリトロジオール、3−O−アラキドニル−エリトロジオール、3−O−ベヘニル−エリトロジオール、28−O−アセチル−エリトロジオール、28−O−プロピオニル−エリトロジオール、28−O−ブチリル−エリトロジオール、28−O−バレリル−エリトロジオール、28−O−カプリル−エリトロジオール、28−O−ラウリル−エリトロジオール、28−O−ミリスチル−エリトロジオール、28−O−パルミチル−エリトロジオール、28−O−パルミトオレイル−エリトロジオール、28−O−ステアリル−エリトロジオール、28−O−オレイル−エリトロジオール、28−O−バクセニル−エリトロジオール、28−O−リノレイル−エリトロジオール、28−O−リノレニル−エリトロジオール、28−O−アラキジル−エリトロジオール、28−O−アラキドニル−エリトロジオール、28−O−ベヘニル−エリトロジオール、3−O−メチル−エリトロジオール、3−O−エチル−エリトロジオール、3−O−t−ブチル−エリトロジオール、3−O−トリメチルシリル−エリトロジオール、3−O−トリエチルシリル−エリトロジオール、3−O−ベンジル−エリトロジオール、28−O−メチル−エリトロジオール、28−O−エチル−エリトロジオール、28−O−t−ブチル−エリトロジオール、28−O−トリメチルシリル−エリトロジオール、28−O−トリエチルシリル−エリトロジオール、28−O−ベンジル−エリトロジオール、3−O−β−D−グルコピラノシル−エリトロジオール、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−エリトロジオール、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−グルコピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−エリトロジオール等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−エリトロジオール、28−O−アセチル−エリトロジオールが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−エリトロジオールがあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ウルソール酸、ウバオールは、何れもウルサン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが知られている物質である。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。本発明の飲食物において、ウルソール酸、ウバオール、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、天然物を用いることが好ましい。
ウルソール酸、(ursolic acid)は、ウルサン系トリテルペンの一種で、化学式(3)で示される構造の化合物である。作用としてはこれまでに、抗炎症作用、抗動脈硬化作用、抗糖尿病作用、抗高脂血症作用(Jie Liu,Journal of Ethnopharmacology,49,57−68,1995)等を有することが知られている。天然には、リンゴ、サクランボ、ウワウルシ等の果実や葉に広く分布することが知られている。本発明の飲食物において、ウルソール酸、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、リンゴ、サクランボ、ウワウルシ等の天然から得られるものが好ましい。
ウルソール酸について、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、その生理的に許容される塩について以下に制限されないが、例えば、ウルソール酸の塩として、ウルソール酸ナトリウム、ウルソール酸カリウム、ウルソール酸アンモニウム、ウルソール酸ジメチルアンモニウム、ウルソール酸カルシウム、ウルソール酸マグネシウム等が挙げられる。
ウルソール酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、ウルソール酸メチルエステル、ウルソール酸エチルエステル、ウルソール酸n−プロピルエステル、ウルソール酸イソプロピルエステル、ウルソール酸n−ブチルエステル、ウルソール酸トリメチルシリルエステル、ウルソール酸トリエチルシリルエステル、ウルソール酸−β−D−グルコピラノシルエステル、ウルソール酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−ウルソール酸、3−O−プロピオニル−ウルソール酸、3−O−ブチリル−ウルソール酸、3−O−バレリル−ウルソール酸、3−O−カプリル−ウルソール酸、3−O−ラウリル−ウルソール酸、3−O−ミリスチル−ウルソール酸、3−O−パルミチル−ウルソール酸、3−O−パルミトオレイル−ウルソール酸、3−O−ステアリル−ウルソール酸、3−O−オレイル−ウルソール酸、3−O−バクセニル−ウルソール酸、3−O−リノレイル−ウルソール酸、3−O−リノレニル−ウルソール酸、3−O−アラキジル−ウルソール酸、3−O−アラキドニル−ウルソール酸、3−O−ベヘニル−ウルソール酸、3−O−メチル−ウルソール酸、3−O−エチル−ウルソール酸、3−O−t−ブチル−ウルソール酸、3−O−トリメチルシリル−ウルソール酸、3−O−トリエチルシリル−ウルソール酸、3−O−ベンジル−ウルソール酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−ウルソール酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウルソール酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウルソール酸等が挙げられる。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ウバオール(uvaol)は、ウルサン系トリテルペンの一種で、化学式(4)の様な構造であり、作用としてはこれまでに、抗炎症作用(Planta.Med. VOL.61,No.2,182−185 1995)、グリセロリン酸脱水素酵素阻害作用(特開平9−67249)等を有することが知られている。天然には、オリーブ、ウワウルシ、セージ、アラビアゴムノキ、カユプテ等に存在することが知られている。本発明の飲食物において、ウバオールまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、オリーブ、ウワウルシ、セージ、アラビアゴムノキ、カユプテ等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブが好ましく、具体的にはオリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
ウバオールについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−ウバオール、3−O−プロピオニル−ウバオール、3−O−ブチリル−ウバオール、3−O−バレリル−ウバオール、3−O−カプリル−ウバオール、3−O−ラウリル−ウバオール、3−O−ミリスチル−ウバオール、3−O−パルミチル−ウバオール、3−O−パルミトオレイル−ウバオール、3−O−ステアリル−ウバオール、3−O−オレイル−ウバオール、3−O−バクセニル−ウバオール、3−O−リノレイル−ウバオール、3−O−リノレニル−ウバオール、3−O−アラキジル−ウバオール、3−O−アラキドニル−ウバオール、3−O−ベヘニル−ウバオール、28−O−アセチル−ウバオール、28−O−プロピオニル−ウバオール、28−O−ブチリル−ウバオール、28−O−バレリル−ウバオール、28−O−カプリル−ウバオール、28−O−ラウリル−ウバオール、28−O−ミリスチル−ウバオール、28−O−パルミチル−ウバオール、28−O−パルミトオレイル−ウバオール、28−O−ステアリル−ウバオール、28−O−オレイル−ウバオール、28−O−バクセニル−ウバオール、28−O−リノレイル−ウバオール、28−O−リノレニル−ウバオール、28−O−アラキジル−ウバオール、28−O−アラキドニル−ウバオール、28−O−ベヘニル−ウバオール、3−O−メチル−ウバオール、3−O−エチル−ウバオール、3−O−t−ブチル−ウバオール、3−O−トリメチルシリル−ウバオール、3−O−トリエチルシリル−ウバオール、3−O−ベンジル−ウバオール、28−O−メチル−ウバオール、28−O−エチル−ウバオール、28−O−t−ブチル−ウバオール、28−O−トリメチルシリル−ウバオール、28−O−トリエチルシリル−ウバオール、28−O−ベンジル−ウバオール、3−O−β−D−グルコピラノシル−ウバオール、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウバオール、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−グルコピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウバオール等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−ウバオール、28−O−アセチル−ウバオールが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−ウバオールがあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ベツリン酸、ベツリンは、何れもルパン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが知られている物質である。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。本発明の飲食物において、ベツリン酸、ベツリン、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、天然物を用いることが好ましい。
ベツリン酸(betulinic acid)は、ルパン系トリテルペンの一種で、化学式(5)の様な構造であり、作用としてはこれまでに、制癌作用、抗炎症作用、創傷治療促進作用(特公平4−26623)、アルコール吸収抑制作用(特開平7−53385)、発毛促進作用(特開平9−157139)等を有することが知られている。天然には、センブリ、チョウジ、ブドウ果皮、オリーブ等に遊離状態で、チクセツニンジン、ニンジン、サトウダイコン等にはサポニンとして存在することが知られている。本発明の飲食物において、ベツリン酸、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、センブリ、チョウジ、ブドウ、オリーブ、チクセツニンジン、ニンジン、サトウダイコン等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブから得られるものが好ましく、具体的には、オリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
ベツリン酸について、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、生理的に許容される塩について以下に制限されないが、例えば、ベツリン酸ナトリウム、ベツリン酸カリウム、ベツリン酸アンモニウム、ベツリン酸ジメチルアンモニウム、ベツリン酸カルシウム、ベツリン酸マグネシウム等が挙げらる。このうち、ベツリン酸ナトリウム、ベツリン酸カリウムが好ましい。
ベツリン酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、ベツリン酸メチルエステル、ベツリン酸エチルエステル、ベツリン酸n−プロピルエステル、ベツリン酸イソプロピルエステル、ベツリン酸n−ブチルエステル、ベツリン酸トリメチルシリルエステル、ベツリン酸トリエチルシリルエステル、ベツリン酸−β−D−グルコピラノシルエステル、ベツリン酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−ベツリン酸、3−O−プロピオニル−ベツリン酸、3−O−ブチリル−ベツリン酸、3−O−バレリル−ベツリン酸、3−O−カプリル−ベツリン酸、3−O−ラウリル−ベツリン酸、3−O−ミリスチル−ベツリン酸、3−O−パルミチル−ベツリン酸、3−O−パルミトオレイル−ベツリン酸、3−O−ステアリル−ベツリン酸、3−O−オレイル−ベツリン酸、3−O−バクセニル−ベツリン酸、3−O−リノレイル−ベツリン酸、3−O−リノレニル−ベツリン酸、3−O−アラキジル−ベツリン酸、3−O−アラキドニル−ベツリン酸、3−O−ベヘニル−ベツリン酸、3−O−メチル−ベツリン酸、3−O−エチル−ベツリン酸、3−O−t−ブチル−ベツリン酸、3−O−トリメチルシリル−ベツリン酸、3−O−トリエチルシリル−ベツリン酸、3−O−ベンジル−ベツリン酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン酸等が挙げられる。このうち、ベツリン酸エチルエステルが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ベツリン(betulin)は、ルパン系トリテルペンの一種で、化学式(6)の様な構造であり、作用としてはこれまでに、生体タンパク質変性抑制作用(特開平9−67253)、グリセロリン酸脱水素酵素阻害作用(特開平9−67249)、リパーゼ阻害作用(特開平10−265328)、肝疾患予防作用(特開平11−209275)等を有することが知られている。天然には、シラカバの樹皮等に存在することが知られている。本発明の本発明の飲食物において、ベツリンまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、シラカバの樹皮等の天然から得られるものが好ましい。
ベツリンについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−ベツリン、3−O−プロピオニル−ベツリン、3−O−ブチリル−ベツリン、3−O−バレリル−ベツリン、3−O−カプリル−ベツリン、3−O−ラウリル−ベツリン、3−O−ミリスチル−ベツリン、3−O−パルミチル−ベツリン、3−O−パルミトオレイル−ベツリン、3−O−ステアリル−ベツリン、3−O−オレイル−ベツリン、3−O−バクセニル−ベツリン、3−O−リノレイル−ベツリン、3−O−リノレニル−ベツリン、3−O−アラキジル−ベツリン、3−O−アラキドニル−ベツリン、3−O−ベヘニル−ベツリン、28−O−アセチル−ベツリン、28−O−プロピオニル−ベツリン、28−O−ブチリル−ベツリン、28−O−バレリル−ベツリン、28−O−カプリル−ベツリン、28−O−ラウリル−ベツリン、28−O−ミリスチル−ベツリン、28−O−パルミチル−ベツリン、28−O−パルミトオレイル−ベツリン、28−O−ステアリル−ベツリン、28−O−オレイル−ベツリン、28−O−バクセニル−ベツリン、28−O−リノレイル−ベツリン、28−O−リノレニル−ベツリン、28−O−アラキジル−ベツリン、28−O−アラキドニル−ベツリン、28−O−ベヘニル−ベツリン、3−O−メチル−ベツリン、3−O−エチル−ベツリン、3−O−t−ブチル−ベツリン、3−O−トリメチルシリル−ベツリン、3−O−トリエチルシリル−ベツリン、3−O−ベンジル−ベツリン、28−O−メチル−ベツリン、28−O−エチル−ベツリン、28−O−t−ブチル−ベツリン、28−O−トリメチルシリル−ベツリン、28−O−トリエチルシリル−ベツリン、28−O−ベンジル−ベツリン、3−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−ベツリン、28−O−アセチル−ベツリンが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−ベツリンが好ましい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
これらの五環性トリテルペン類は、天然には、それぞれに記載した植物体から抽出することにより、詳しくは、水および/または有機溶媒で抽出処理し、さらに濃縮処理および/または分画・精製処理することにより得ることができる。すなわち、各植物体から、水および/または有機溶媒で抽出でき、さらにその抽出物から、溶媒抽出法、不純物との溶解度差を利用する方法、分別沈殿法、再結晶法、イオン交換樹脂法、液体クロマトグラフ法等を単独または適宜組み合わせて、あるいは反復使用することによって分離精製することができる。
特に、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩については、オリーブ植物から、水および/または有機溶媒で抽出でき、さらにその抽出物から、溶媒抽出法、不純物との溶解度差を利用する方法、分別沈殿法、再結晶法、イオン交換樹脂法、液体クロマトグラフ法等を単独または適宜組み合わせて、あるいは反復使用することによって分離精製することができる。
オリーブ植物(Olea europaea L.)は、国産、欧州産などの産地、食用あるいは搾油用を問わず使用できる。本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、天然植物であるオリーブ植物の主に、実または種子から得ることができ、さらに、その種皮、葉、茎、芽から得ることができる。また、これらの乾燥物、粉砕物、脱脂物からも好適に得ることができる。このうち、脱脂された実(果皮含む)や果皮の乾燥物、粉砕物が好ましい。さらに、オリーブ油の製造工程で生じる生成物、例えば圧搾残査、抽出残査、搾油残査、圧搾油、抽出油、脱ガム油滓、脱酸油滓、ダーク油、廃脱色剤、脱臭スカム、搾油ジュース、排水、廃濾過材から得ることができる。このうち、搾油残査が好ましい。
また、上記オリーブ植物の果実やその脱脂物等に、添水する等により加水した場合、あるいは蒸気により蒸す等の加湿処理を行った場合、これらオリーブ植物の果実やその脱脂物等が適度に膨潤するので、抽出効率が良くなり好ましい。
特に、オリーブ植物の脱脂物には、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が高濃度で存在し、かつ、得られたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩から油分を除去する必要がないため好ましい。
当該脱脂物は、食油精製工程中に産出するオリーブ搾油残査、またはヘキサン等による抽出残査を原料とすることができる。
また、オリーブ植物または当該脱脂物に含まれる脂質成分をペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、酢酸エチルエステル等の低級脂肪酸アルキルエステル、ジエチルエーテル等の公知の非水溶性の有機溶媒の1種又は2種以上で抽出除去し、更に必要に応じてこの洗浄処理を繰り返した脱脂物も好適に利用できる。
上記オリーブ植物から水および/または有機溶媒で抽出することにより、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
オリーブ植物からマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得るために用いる有機溶媒としては、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒の何れでもよい。具体的には、親水性有機溶媒として、メチルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸等の公知の有機溶媒が挙げられ、疎水性有機溶媒として、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン等の公知の有機溶媒が挙げられる。また、これらの有機溶媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
工業的には、例えば植物組織への浸透性、抽出効率等からは、親水性有機溶媒を用いることが好ましく、また含水親水性有機溶媒を用いることが好ましい。具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の有機溶媒およびこれらの含水溶媒が挙げられる。これらの中から選ばれる、1種または2種以上により、オリーブ植物から、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
抽出条件は、特に限定されないが、例えば、温度は5℃〜95℃、好ましくは10℃〜90℃、さらに好ましくは15℃〜85℃で、常温でも好適に抽出することができる。温度が高いほうが、抽出効率が高くなる傾向はある。圧力は、常圧でも、加圧でも、吸引等による減圧でも好適に抽出することができる。また、抽出効率を向上させるため、振とう抽出や、攪拌機等のついた抽出機でも抽出することができる。抽出時間は、他の抽出条件によるが、数分〜数時間であり、長時間なほど十分な抽出がなされるが、生産設備、収率等の生産条件によって適宜決めれば良い。
また、抽出に使用する溶媒は、水を単独で使用する場合、有機溶媒を単独で使用する場合、水と有機溶媒とを混合して使用する場合のいずれの場合にも、原料に対し1〜100倍量(「質量/質量」。以下同様。)、好ましくは1〜20倍量を使用することができる。
また、人体等への安全性等を考えれば、特に、水、含水低級アルコール、無水低級アルコールの何れかにより抽出することが好ましい。
さらに、得られるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の収率や、抗腫瘍効果の強さをも考慮に入れた場合、低級アルコール含量が10質量%以上である含水低級アルコールで抽出することが好ましい。さらには低級アルコール含量が10質量%〜95質量%の含水アルコールを使用することが好ましく、最も好ましくは低級アルコール含量が30質量%〜95質量%に調節された含水低級アルコールが好ましい。
ここで、本発明で使用するアルコールは、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロパノール、1−ブタノール等の1級アルコール、2−プロパノール、2−ブタノール等の2級アルコール、2−メチル−2−プロパノール等の3級アルコールさらにエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール等の公知の溶媒が挙げられ、これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
低級アルコールとは、炭素数が1〜4である公知のアルコール、例えば、前述の1、2、3級、もしくは、液状多価のアルコール等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
このようにして得られた粗抽出物及び/又は粗抽出液から、溶媒、水分を除去することで、本発明におけるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
溶媒、水分の除去は減圧蒸留、減圧・真空乾燥、凍結乾燥、スプレードライ等の公知の方法で行うことができる。
もちろん、溶媒、水分を含んだままでも良く特に状態は制限されない。
脱脂物からの抽出物は、トリグリセライドやステロール、トコフェロール等の脂溶性成分は含有していないので、これらを除去、精製する必要がないため、好ましい。加えて、脱脂物とは、搾油後の残査を含むので、オリーブ油を搾油した圧搾粕および抽出粕を使用できることから、オリーブの極めて優れた有効利用方法であり、通常は廃棄または飼料等に使用されるものを利用するため、生産コストの面から見ても優れた方法といえる。
さらに、オリーブ植物から抽出されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の抗腫瘍効果をより一層引き出すためには、本発明の飲食物に含有させるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を濃縮処理等することが好ましい。
濃縮条件は、特に限定されないが、例えば、水への溶解性を利用した方法が挙げられる。本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、比較的極性が低く、難水溶性の化合物である。この性質を利用して、オリーブ植物からの粗抽出物を水に溶解しにくい成分および/または水に溶解しない成分、つまり難水溶性等の成分と水に容易に溶ける成分とに分けることで、大幅に濃縮することができる。オリーブ植物からの粗抽出物に含まれる難水溶性等の成分は、オリーブ植物からの粗抽出物全体と比べても、大幅に抗腫瘍効果に優れており、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が濃縮されていることが確認できる。
難水溶性等の成分は、オリーブ植物からの粗抽出物を水に添加・攪拌した後、析出している部分をろ過等により採取することで簡易に得ることができる。
また、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、必要に応じて、一般的な溶剤の組み合わせによる液−液分配により濃縮することができる。溶剤の組み合わせは一概に規定し難いが、例えば、水−疎水性有機溶媒の組み合わせが挙げられ、疎水性有機溶媒としては、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、n−ブタノール、ベンゼン、トルエン等の公知の有機溶媒が挙げられる。このうち、ヘキサン、酢酸エチル、n−ブタノールが好ましい。
マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は難水溶性であるため、疎水性有機溶媒相を分取することで、不要な水溶性成分を除去することができる。溶媒を除去することで、容易にマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を濃縮することができる。
さらに、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、上述した抽出物および/または濃縮物から分画・精製処理することが好ましい。これにより上記濃縮以上に濃縮することができ、目的とする成分を単離することができる。
分画・精製処理することの利点としては、抗腫瘍効果等を非常に向上させることができることに加え、不純物を除去することができること等が挙げられる。すなわち、該分画・精製処理した場合、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を白色結晶として得ることができるため、本発明の飲食物に余計な色をつけることなく好適に配合することができる等のメリットがあり、好ましい。
分画・精製処理の方法については一概に規定し難いが、例えば、再結晶法、分別沈殿法、クロマトグラフィーを利用する方法などが挙げられる。特にクロマトグラフィーの中でも液体クロマトグラフィーを利用する方法は、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を分解することなく、収率良く分画・精製出来るので、好ましい。液体クロマトグラフィーとしては、具体的に、順相液体クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等が挙げられるが、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を分画・精製処理する際には、何れの方法を用いることができる。とりわけ、分離能、処理量、工程数等を考慮に入れると、順相液体クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が好ましい。
ここで、順相液体クロマトグラフィーとは、例えば以下のような方法を指す。すなわち、例えばシリカゲルを固定相、ヘキサン−酢酸エチル混液、クロロホルム−メタノール混液等を移動相としたカラムを作成し、オリーブ植物からの粗抽出物あるいはその濃縮物を負荷率0.1〜5%(wt(質量)/v(体積))で供し、単一移動相による連続的溶出法あるいは溶媒極性を順次増加させる段階的溶出法により、所定の画分を溶出させる方法である。
逆相液体クロマトグラフィーとは、例えば以下のような方法を指す。すなわち、例えばオクタデシルシランを結合させたシリカ(ODS)を固定相、水−メタノール混液、水−アセトニトリル混液、水−アセトン混液等を移動相としたカラムを作成し、オリーブ植物からの粗抽出物あるいはその濃縮物を負荷率0.1〜5%(wt(質量)/v(体積))で供し、単一溶媒による連続的溶出法あるいは溶媒極性を順次低下させる段階的溶出法により、所定の画分を溶出させる方法である。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とは、原理的には、上記順相液体クロマトグラフィーあるいは逆相液体クロマトグラフィーと同様のものであり、より迅速かつ高分離能での分画・精製を行うためのものである。
上記手法を1種または2種以上組み合わせることで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を非常に濃縮でき、かつ、不純物が除去された状態で得ることができるため好ましい。
さらに、上記手法を1種または2種以上組み合わせることで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の純度を調整することができ、必要に応じた抗腫瘍効果の強さ、特性等を設計することもできる。すなわち、抗腫瘍効果の強さと作用機序とを適宜調整することにより抗腫瘍効果を設計できる。抗腫瘍効果の強さは、例えば、より強力な効果が必要な場合は濃縮し、弱い効果でよい場合は希釈して配合することにより調整することができる。あるいはまた、本発明で対象とするマスリン酸等以外のその他の抗腫瘍用飲食物とマスリン酸等とを組み合わせることによっても、抗腫瘍効果の強さを調整することができる。抗腫瘍効果の作用機序としては、腫瘍細胞増殖抑制、腫瘍細胞死滅及び腫瘍細胞転移抑制があげられる。このような作用は、本発明以外のその他の抗腫瘍用飲食物とマスリン酸等とを組み合わせることによって調整することができる。
前述した濃縮処理について、好ましくは繰り返し濃縮処理することができ、さらには異なる濃縮処理を組み合わせることができる。同様に、分画・精製処理について、好ましくは繰り返し分画・精製処理することができ、さらには異なる分画・精製処理を組み合わせることができる。さらに、濃縮処理を行った後に分画・精製処理しても良く、分画・精製処理を行った後に分画・精製処理しても良く、濃縮処理した後に分画・精製処理を行い更に濃縮処理することもできる。当然、前述の組み合わせ以外の組み合わせでも良い。
上述した抽出処理、濃縮処理、分画および/または精製処理等を様々に組み合わせることによって、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を好適に得ることができる。その組み合わせについては特に限定されないが、一連の処理の具体例としては以下のような方法が挙げられる。
例えば、オリーブ植物を水および/または親水性有機溶媒で抽出処理した後、得られた抽出液について親水性有機溶媒の一部または全部を除去し、必要により水を加えて撹拌し、水層部に析出した水不溶分を回収することで濃縮する。析出した水不溶分は、ろ過や遠心分離等のよって回収することができるが、この回収効率の向上のため、必要に応じ水溶液に対して水の添加・攪拌等の処理を行うことができる。また、オリーブ植物から得られる抽出液の水および/または親水性有機溶媒を除去した乾固状態の抽出物についても、上記同様に水の添加・攪拌等の処理を行い、ろ過等によりその水不溶分を回収することで濃縮処理することができる。この濃縮方法によれば、水系での処理であるので、溶剤を用いた濃縮よりも安全性に優れ、また、使用できる機器の範囲も広いため好ましい。また、油分がほとんど含まれていないため、濃縮・精製の効率にも優れており、好ましい。
これらの濃縮物を順相および/または逆相クロマトグラフィーおよび/または再結晶にて分画・精製処理することにより、高純度に精製されたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を好適に得ることができる。
また、オリーブ植物から得られる抽出液について親水性有機溶媒を除去し、残った水溶液に対して、必要に応じて水を添加し、更に疎水性有機溶媒を添加することで、水−疎水性有機溶媒での液−液分配により濃縮処理することができる。また、乾固状態の抽出物についても、上記同様に水を添加し、更に疎水性有機溶媒を添加することで、水−疎水性有機溶媒での液−液分配により濃縮処理することができる。これらの濃縮物を順相および/または逆相クロマトグラフィーおよび/または再結晶にて分画・精製処理することにより、高純度に精製されたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
ここで、液−液分配の際に添加する水の量は分配処理し得る量を用いれば特に限定されないが、乾固された抽出物の質量当り1〜100倍量が好ましく、より好ましくは5〜50倍量、さらに好ましくは10〜30倍量程度である。
また、水−疎水性有機溶媒での液−液分配において、水と疎水性有機溶媒とは、水:疎水性有機溶媒=9:1〜1:9(体積比)で使用するのが好ましく、8:2〜2:8で使用するのがより好ましい。
また、オリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるマスリン酸と生理的に許容されるその塩との混合物中のマスリン酸及び生理的に許容されるそれらの塩の合計の含有率が、95%以上であるのが好ましく、より好ましくは95%〜99.99%である。当該含有率は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
本発明の飲食物は、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を含有させるが、前記抽出物及び濃縮物を含有させることでも本発明の飲食物を得ることもできる。また、濃縮、精製等の度合いを調整することで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の濃度等を調整することができ、本発明の飲食物へ好適に配合することができる。つまり、より強力な効果が必要な場合は濃縮し、弱い効果で良い場合は希釈した配合もでき、使用目的に応じた濃度での使用に好適な形態とすることができる。
オリーブ油にはマスリン酸等が含有されていることから、本発明の飲食物について、油性成分としてさらにオリーブ油を使用することで、さらに好適な抗腫瘍効果等が得られるため好ましい。
また、オリーブ植物からマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を抽出した場合には、同時にオレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩が抽出されるが、このオレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩は発癌プロモーター阻害活性を有すること、また、マスリン酸との相溶性に優れている点から、これらの混合物を本発明の飲食物に直接配合することができる。また、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の本発明における抗腫瘍効果についても相乗効果が期待できるため好ましい。マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩をオリーブ植物から抽出、分離精製等するに際し、その条件を調整することで、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩との混合物として得ることもでき、オリーブ植物からそれぞれ別々にマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩を単離し、後に混合することでも得ることができる。また、それぞれ異なる原料から得られたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩と、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩を混合した物でも良い。
なお、本発明で対象とするマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩以外の五環性トリテルペン類についても、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩について記載した原料及び方法に準じて天然物から単離することができる。
天然物からの単離物を使用して飲食物とした場合、天然物由来の夾雑物の影響が排除され、無色〜淡色および/または無臭〜無臭に近い状態になるので好ましい。従って、天然物から、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類及びそれらの生理的に許容できる塩又はそれらの誘導体を単離することにより、供する料理の風味等に影響を与えることなく調理できる。特に、オリーブ等の原料とする天然物の風味を必要としない料理にも配合できる。従って、本発明の飲食物は、原料として用いられる天然物の種類に影響されることなく調理又は配合可能な飲食物を含む。
さらに、オリーブやオリーブ油をそのままの形態で摂取した場合、本発明で対象とする五環性トリテルペン類を少量しか摂取できないが、天然物から単離した五環性トリテルペン類を配合した飲食物を摂取すれば、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類を比較的容易に多量に摂取することができる。
また、オリーブ等に含まれる五環性トリテルペン類は概して脂溶性物質であるため、通常は油脂中に存在することが多く、このため、水系の飲食物に配合するのは困難であるが、天然物から単離した五環性トリテルペン類であれば、油系の飲食物にでも水系の飲食物にでも配合することができる。清涼飲料等の水系飲食物にすることにより、本発明で対象とする五環性トリテルペン類の例えば数g〜数10gを容易に摂取することが可能となる。
さらにまた、天然物から単離した特定の五環性トリテルペン類を含有する本発明の飲食物は、本発明の体内への吸収を阻害する不純物又は夾雑物が除去されていることから、好適な本発明の効果、すなわち抗腫瘍効果、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果及び腫瘍細胞転移抑制効果を得ることが可能となるので好ましい。
本発明の飲食物に含有されるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は抗腫瘍効果を有するが、その効果としては腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果が挙げられる。
腫瘍細胞増殖抑制効果とは、既に体内に発生してしまった腫瘍細胞、特には癌細胞が、それ以上増殖し生体に悪影響を及ぼすことが出来ないようにすることを意図しており、日常的な摂取では予防的に、すなわち目に見えないレベルでの癌の進行を抑えることに大きく寄与することができる。
腫瘍細胞死滅効果とは、既に体内に発生してしまった腫瘍細胞、特には癌細胞が、細胞活動をしていくことが出来ないようにすることを意図しており、日常的な摂取では、目に見えないレベルで発生した癌細胞を死滅させることに大きく寄与することができる。
腫瘍細胞転移抑制効果とは、体内に発生した腫瘍細胞、特には癌細胞が血流等に乗って他部位に到達し増殖する過程において、血流等に乗っている間に死滅させたり、他部位に辿り着いてすぐに増殖抑制あるいは死滅させることを意図しており、日常的な摂取では、目に見えないレベルでの癌細胞の転移を防止あるいは抑制することに大きく寄与することができる。
腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果については、以下に示すようなB−16メラノーマ細胞を用いた方法で示される。
すなわち、6穴プレートにB−16メラノーマ細胞を所定量播種し、37℃、二酸化炭素濃度5%にて静置、培養したものに、翌日および培養5日目に検体(マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体)調製液を所定濃度になるように添加し、培養6日目に生存細胞数をカウントし、これから細胞増殖率を求め、腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果を評価する。検体試料無添加での細胞増殖率(コントロール)と比較する。
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体では、非常に低濃度の添加でも、濃度依存的にB−16メラノーマ細胞の増殖を抑制、あるいはB−16メラノーマ細胞を死滅させる。すなわち、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に強力な腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果を有する。発癌プロモーター阻害剤として公知であるオレアノール酸では、B−16メラノーマ細胞の増殖を全く抑制しないが、本発明におけるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に優れた腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果を有する。
また、低濃度でも効果を発揮することから、期待する腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果を発揮するための添加量が比較的少なくて済み、より副作用の無い範囲での効果が期待できる。また、濃度依存的に有効であるため、添加量の増減により、使用の目的や必要とする効果に応ずることができる。
腫瘍細胞転移抑制効果の評価としては悪性黒色腫転移抑制試験等により行うことができる。すなわち、C57BL16雌マウスに、あらかじめ調製したB16メラノーマ細胞の懸濁液を静脈注射し、注射後2日目から1日おきに、所定濃度の検体を溶解させた綿実油を、注射により腹空内投与あるいはゾンデを用いて経口投与する。なお、コントロール群には綿実油のみを投与する。B16メラノーマ細胞注射後15日目に肺を摘出し、肺に転移した転移癌病巣数をカウントした結果から転移抑制率を算出する。この転移抑制率から腫瘍細胞転移抑制効果の評価を行う。
この評価においては、発癌プロモーター阻害剤として公知であるオレアノール酸の投与では、コントロール(無投与)群との有意差が無く、腫瘍細胞転移抑制効果が見られないが、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の投与では、コントロール(無投与)群に対して有意に差があり、明らかに悪性黒色腫の転移を抑制する。すなわち、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に強力な腫瘍細胞転移抑制効果を有する。
比較的少ない投与量でも効果を発揮することから、期待する腫瘍細胞転移抑制効果を発揮するための添加量が少なくて済み、安全性の高い範囲での効果が期待できる。また、濃度依存的に有効であるため、添加量の増減により、使用の目的や必要とする効果に応ずることができる。
本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を含有する抗腫瘍用飲食物に関する。抗腫瘍成分として含有するとは、その腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果を発現する程度含有すること、および、抗腫瘍効果を生じさせることを期待して配合するということである。
本発明の飲食物において、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の含量は特に制限されず、含有する五環性トリテルペン類の種類、飲食物の種類、摂取量、摂取の頻度、摂取する者の体重、性別等によって適宜調整すれば良く、特に制限されないが、例えば0.0001〜80質量%、好ましくは0.001〜50質量%、さらに好ましくは0.01〜30質量%、特に好ましくは0.1〜15質量%、最も好ましくは0.1〜10質量%である。特に、主に腫瘍細胞増殖抑制効果や転移抑制効果による予防用飲食物としては、例えば0.0001〜30質量%、さらに好ましくは0.001〜20質量%、さらに好ましくは0.01〜15質量%、さらに好ましくは0.01〜15質量%、さらに好ましくは0.1〜15質量%、さらに特に好ましくは0.5〜15質量%、最も好ましくは1〜10質量%であり、また、主に腫瘍細胞死滅効果による治療用飲食物としては、例えば0.001〜80質量%、好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%、さらに特に好ましくは0.5〜15質量%、最も好ましくは1〜15質量%である。
また、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の含量については、特に制限されないが、例えば0.0001〜80質量%、好ましくは0.001〜50質量%、さらに好ましくは0.01〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%、さらに特に好ましくは0.5〜15質量%、最も好ましくは1〜15質量%である。
本発明における五環性トリテルペン類、およびそれらのアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体は、概して脂溶性なので、油系、あるいは乳化系の飲食物に好適に配合することができる。また、特に油脂あるいは油脂加工品としての摂取においては、油とともに吸収されることが期待されるため、吸収性の面で好ましい。
また、本発明における五環性トリテルペン類の生理的に許容される塩あるいは配糖体は、概して水溶性を示すので、水系あるいは乳化系等の飲食物に、均一に溶解ないしは分散させて含有させることで好適に配合することができる。特に飲料等は水系あるいは乳化系での製品化が多いので、この場合、必要に応じて五環性トリテルペン類を、その生理的に許容される塩あるいは配糖体とすることで好適に配合することができる。
当然、本発明における五環性トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の配合量を増やすことで、更に優れた抗腫瘍効果等を有する飲食物の製造が、本発明により可能である。
また本発明の飲食物には、機能の向上、特に、抗腫瘍効果の相乗的な向上、抗腫瘍効果の補助、吸収性の向上等を目的として、その他の生理活性成分等を配合することができる。特に制限は無いが、例えば、相乗的な効果が期待できるその他の経口抗腫瘍成分、間接的に抗腫瘍効果への寄与があるとされる抗酸化成分、体内での吸収性を向上させ効果の効率を上げるための油性成分、栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等が挙げられる。
その他の経口抗腫瘍成分としては、ジンゲロール、クルクミン、ベルガモティン、ACA等のフェニルプロパノイド類、フラボン、カテキン、ケルセチン、ロイコアントシアニジン、ルテオリン、カルダモニン、ノビレチン等のフラボノイド類、β−カロチン、アスタキサンチン等のカロテノイド類及びその誘導体、ペクチン等の食物繊維類、アリキシン、フェルラ酸、等が挙げられる。これらの経口抗腫瘍成分は、本発明における五環性トリテルペン類との相乗効果が期待できるため、好ましい。
抗酸化成分としては、通常飲食物等に使用されているものであれば特に制限は無いが、例えば、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩、トコフェロールやトコトリエノールおよびそれらの誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、没食子酸やエラグ酸等のタンニン類及びそれらの誘導体、亜硫酸ナトリウムや次亜硫酸ナトリウムや二硫化硫黄等の硫酸系化合物、γ−オリザノール等のフェルラ酸誘導体、ルチン及びその誘導体、セサミン、エピセサミン、セサミノール、セサモリン、セサモール等のリグナン類およびそれらの配糖体、β−カロチン等のカロテノイド類及びその誘導体、フラボン、カテキン、ケルセチン、イソケルセチン、ロイコアントシアニジン、ゲニスチン、ゲニステイン、6“−O−アセチルゲニスチン、6“−O−マロニルゲニスチン、ダイズイン、ダイゼイン、6“−O−アセチルダイズイン、6“−O−マロニルダイズイン、グリシチン、グリシテイン、6“−O−アセチルグリシチン、6“−O−マロニルグリニチン、プエラリン、ケルセチン、ケンフェロー、ミロエステロール等のフラボノイド類、ユビキノンやビタミンK等のキノン類、スーパーオキシドディムスターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ等の酵素類、アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、甘草油性抽出物、グローブ抽出物、グアヤク脂、生コーヒー豆抽出物、米ぬか油抽出物、カンナ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、テンペ抽出物、菜種油抽出物、ピメンタ抽出物、ブルーベリー抽出物、プロポリス抽出物、ペパー抽出物、メラロイカ抽出物、ユーカリ抽出物、リンドウ抽出物、ソバ抽出物、アズキ抽出物、ローズマリー抽出物、オリーブ粕抽出物や大豆粕抽出物等の油粕抽出物、大豆胚芽抽出物、チアミン類及びその塩、リボフラビン、酢酸リボフラビン等のリボフラビン類、塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等のピリドキシン類、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸類、ビリルビン、マンニトール、トリプトファン、ヒスチジン、ノルジヒドログアイアレチン酸等があげられる。これらの抗酸化剤は、間接的に抗腫瘍効果があるとされており、また、本来の抗酸化作用による生活習慣病予防効果や抗老化効果等により、人体等に対する総合的な相乗効果も期待できるため、好ましい。
油性成分としては、大豆油、菜種油、ゴマ油、オリーブ油等の植物油脂、ラード、牛脂、魚油等の動物油脂の他、特に制限は無いが、例えば、天然および化学反応や酵素反応により得られた、MCT、MLCT、ジグリセライド、モノグリセライドや、脂肪酸の構造を設計した構造油脂等が挙げられる。
栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等については、特に制限はないが、食品添加物公定書に定められるものが望ましい。
その他、本発明の飲食物には、通常の飲食物に使用されている原材料を配合・使用することができる。特に制限は無いが、例えば、みそ、醤油、ソース、ケチャップ、ブイヨン、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素等の各種調味料、豚脂、牛脂、乳脂等の動物性油脂、鯨油、イワシ油、ニシン油等の海産物性油脂、大豆油、菜種油、綿実油、米油、コーン油、胡麻油、落花生油、ヒマワリ油、紅花油、椿油、オリーブ油、亜麻仁油、桐油、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、カカオ脂等の植物性油脂、キサンタンガム等の増粘剤、砂糖、グラニュー糖、乳糖、果糖、ブドウ糖、ソルビトール、ハチミツ等の甘味剤、MSG(モノソディウムグルタミン)等のうまみ調味料、米酢、リンゴ酢、酒精酢等の食酢、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸等の酸味剤、安息香酸ナトリウム等の合成保存料、小麦粉、脱脂大豆、小麦ふすま、小麦胚芽等のシリアル原料、食塩、こしょう、フレーバー等が挙げられる。特にオリーブ油は、本発明におけるマスリン酸等を含有するため、非常に好ましい。マスリン酸、その生理的に許容される塩等を高度に含有するように製造されたオリーブ油等が好ましい。
上記各成分は使用目的によって適宜設計、配合することができる。吸収性や作用効果の種類によって抗腫瘍効果を相乗、補完することや使用形態として好ましい態様とすることができる。また、例えばイソフラボン類及びその誘導体は水溶性に優れ、概して油溶性物質である本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類と同時に生体に作用させることで、抗エストロゲン阻害効果を含め、水及び脂質媒介性の様々な代謝経路を経た、同時作用による効果が発揮され、その効果は相乗的になることが期待できる。さらには、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類とイソフラボノイド等を同時に配合した抗腫瘍用飲食物等はイソフラボノイドの抗酸化性や抗エストロゲン様作用等の生理活性が同時にかつ相乗的に活性化されることが期待できる。
本発明の抗腫瘍用飲食物について、下記に具体例を列記するが、本発明はこれらに制限されるものではない。本発明の抗腫瘍用飲食物とは、その形態等について特に制限はないが、例えば、通常の形態の他、流動食品、経腸栄養食品、健康食品、乳幼児用食品等の形態をとることができる。具体的には、おかき、煎餅、おこし、饅頭、飴等の和菓子、クッキー、ビスケット、クラッカー、シリアル食品、パイ、カステラ、ドーナッツ、プリン、スポンジケーキ、ワッフル、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンデー、キューインガム、ゼリー、ホットケーキ、パン、菓子パン等の各種洋菓子、ポテトチップ等のスナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等の氷菓、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、果肉飲料、機能性飲料、炭酸飲料等の清涼飲料水、緑茶、紅茶、コーヒー、ココア等の嗜好品及びこれらの飲料、日本酒、ワイン、ブランディー、ウイスキー、薬用酒などの酒類、牛乳、発酵乳、加工乳、チーズ等の乳製品、豆乳、豆腐等の大豆加工食品、ジャム、果実のシロップ漬、フラワーペースト、ピーナツペースト、フルーツペースト等のペースト類、漬物類、うどんの麺、パスタ等の穀物製品類、ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセイジ、ビーフジャーキー、ハンバーグ等の畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん等の魚貝類製品、魚、貝等の干物、鰹、鯖、鰺等の各種節、ウニ、イカ等の塩辛、スルメ、魚等のみりん干、鮭等の燻製品、のり、小魚、貝、山菜、椎茸、昆布等の佃煮、カレー、シチュー等のレトルト食品、みそ、醤油、ソース、ケチャップ、ブイヨン、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素等の各種調味料、米飯類、調合油脂やマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工品や、調合油脂を含有する各種レンジ及び冷凍食品等が挙げられる。特に、継続的な摂取という面からは、米飯や各種調味料や、調合油脂やマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工品が好ましいといえる。また、形状・性状も特に制限されず、固体状、半固体状、ゲル状、液体状、粉末状等何れでも良い。
本発明の飲食物におけるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン等の五環性トリテルペン類は、元来、概して脂溶性の物質であるので、溶解性の面からも本発明の飲食物として調合油脂や調合油脂加工食品等は好ましい。この様な調合油脂として、特に制限はないが、例えば、天然あるいは人工的に得たマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン等を通常の油脂に溶かし込んで含有させた調合油脂が挙げられ、また、植物種子の圧搾・抽出条件を調整し種子中の五環性トリテルペン類を圧搾・抽出油に高濃度に含有させた調合油脂や、精製条件を調整することで油中に存在するマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン等を残存させた調合油脂等が挙げられる。また、該五環性トリテルペン類高含有油脂と他の油脂を混合することもでき、この場合、該他の油脂に含まれる微量成分の生理活性効果との相乗効果を期待することができる。
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンは油糧原料である植物からも得られることから、製造の点からも調合油脂は好ましいといえ、更にこの調合油脂の加工品であるマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の調合油脂加工品は好ましいといえる。
同様に、本発明の上記調合油脂等を使用した製品も良好である。ここで、使用とは原料として使用することと、揚げ物や炒め物等に使用するいわゆる調合油脂としての使用の双方を示す。
ここで、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン等の飲食物への使用に関して特に制限は無いが、油系の飲食物に対しては、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、あるいはアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体が好ましい。これらは、比較的脂溶性であるため、好適に油系の飲食物へ適用することができる。また当然、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンの生理的に許容される塩あるいは配糖体を配合することも可能であるが、この場合には、乳化剤を用いることが好ましい。
また、概して、水系の飲食物に対しては、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンの生理的に許容された塩、あるいは配糖体が好ましい。これらは、比較的水溶性であるため、好適に水系の飲食物へ適用することができる。また当然、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、あるいはその誘導体を配合することも可能であるが、この場合には、乳化剤を用いることが好ましい。
本発明の飲食物を飲食することで、抗腫瘍効果を有するマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を体内に吸収することにより効果を奏する。飲食物という形態であるため、医薬品のような労力も必要なく、継続的に摂取することができるため好ましい。
本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を含有する抗腫瘍用飲食物に関する。これらの五環性トリテルペン類は、特に、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果に優れているため、本発明の飲食物により、時間や労力等の負担を必要とせず、簡易に、かつ、継続的に上記抗腫瘍効果を好適に享受することができるので好ましい。また、本発明におけるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン等は、天然植物から得ることができるため、日常的な使用において安心して使用することができ、また、使用者に対して、精神的な爽快感を与えるため、好ましい。
また、本発明の飲食物のマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を摂取することにより、好適に抗腫瘍効果を得るための所用量は、摂取の形態、対象者の性別、体重、体調等により異なり、特に制限されないが、例えば、0.0001g/日以上、好ましくは0.001g/日以上、さらに好ましくは0.01g/日以上、特に好ましくは0.1g/日以上、さらに特に好ましくは0.5g/日以上、さらに特に好ましくは1g/日以上、最も好ましくは2g/日以上である。
実施例
以下に、実施例を挙げ、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例に使用した五環性トリテルペンとして、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンについては、試薬として購入した。HPLCグレードのものはそのまま用い、そうでないものは、沸点まで加熱したエタノールに飽和になるまで溶解した後、冷却して再結晶させたものを濾過、乾固して用いた。マスリン酸については、以下に実例を挙げて説明するが、オリーブ植物から抽出、精製し、純度95%であることを確認したものを用いた。
<製造例1>
国内産のオリーブ(Olea europaea L.)の乾燥果実(種子を含む)1kgを破砕し、3Lのヘキサンを加え3時間抽出した。これを4度繰り返した脱脂果実(脱脂粕)について、種子を除去した後、粉砕し、再度5倍量のヘキサンで3時間抽出することで、完全に油分を除去した脱脂粕229gを得た。この脱脂粕に10倍量のエタノール含量が60質量%の含水エタノール水溶液を加え、室温で激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固して抽出物112.7gを得た。
この抽出物100gに、水2Lを加え、室温で1時間、激しく攪拌した。全量を遠心分離で処理した後、上澄みはデカンテーションにより除去し、残った沈殿を乾燥して濃縮物10.0gを得た。
次にこの濃縮物を、約40倍量(400g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画した。まず、充填したゲルの10倍量(4000mL)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(1000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの10倍量(4000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物を1.96g得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を、約30倍量(60g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(600mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(1800mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールを除去後、真空乾燥し精製マスリン酸1を1.51g得た。
ここで、NMR、MS及びGCでの解析から、この精製マスリン酸1は、その一部がナトリウム塩およびカリウム塩の状態で、残りの大部分が遊離酸の状態であり、マスリン酸としての純度が95%以上であることを確認した。
<製造例2>
イタリア産のオリーブ(Olea europaea L.)を搾油し得られた搾油残査(搾油粕)500gに、10倍量のエタノール含量が65質量%の含水エタノール水溶液を加え、室温で激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固し抽出物を20.2g得た。
この抽出物に、n−ブタノール1L、水1Lを加えて10分間攪拌した後、n−ブタノール相と水相に分けた。n−ブタノール相のn−ブタノールを除去後、真空乾燥し濃縮物を13.3g得た。
次にこの濃縮物を、約40倍量(500g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画した。まず、充填したシリカゲルの10倍量(5000mL)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(1250mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したシリカゲルの10倍量(5000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物を2.66g得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を、約30倍量(80g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(800mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(2400mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールを除去後、真空乾燥し精製マスリン酸2を2.06g得た。
ここで、NMR、MS及びGCでの解析から、この精製マスリン酸2は、その一部が遊離酸の状態で、残りの大部分がナトリウムやカリウム等の塩の状態であり、マスリン酸としての純度が97%以上であることを確認した。
<製造例3>
オリーブ油製造工程で得られるイタリア産のオリーブの抽出残渣(搾油残渣をさらに抽出工程で処理した脱脂粕)1kgに、10倍量のエタノールを加え、55℃に加温して激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固して、抽出物35gを得た。
次にこの抽出物を、約40倍量(1400g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した。まず、充填したシリカゲルの約10倍量(14L)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で、雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(3500mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で、雑多な不要分を溶出させ、さらに、充填したシリカゲルの10倍量(14L)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で、目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物5.90gを得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を焼く30倍量(180g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(1800ml)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(5400ml)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールおよび水を除去後、真空乾燥し精製マスリン酸3を5.36g得た。
ここで、NMR、MS等の解析から、この精製マスリン酸3は、この精製マスリン酸1は、その一部がナトリウム塩およびカリウム塩の状態で、残りの大部分が遊離酸の状態であることを確認した。また、これらの純度をGCで測定し、マスリン酸としての純度が97%以上であることを確認した。
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンの誘導体としては、以下のようにして得た。
<合成例1> マスリン酸エチル
マスリン酸4.5gとトリエチルアミン1.0gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.2gを加え、トリエチルアミン1.0gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、マスリン酸エチルエステルを3.5g得た。
<合成例2> 2,3−O−ジ−アセチル−マスリン酸
マスリン酸2.0gをピリジン100mLに溶解し、無水酢酸50mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−アセチル−マスリン酸を2.2g得た。
<合成例3> 2,3−O−ジ−トリエチルシリル−マスリン酸トリエチルシリルエステル
マスリン酸1.0gを無水ジメチルフォルムアミド200mLに溶解し、イミダゾール144.0mgおよびトリエチルシリルクロライド350μLを0℃で加え、密栓して2時間攪拌した。ジメチルフォルムアミドを溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−トリエチルシリル−マスリン酸トリエチルシリルエステルを1.5g得た。
<合成例4> 2,3−O−ジ−ステアロイル−マスリン酸エチル
合成例1で得たマスリン酸エチル1.0gを無水トルエン50mLに溶解し、トリエチルアミン5.0gを加え、さらにステアリン酸クロライド6.0gを氷冷下で徐々に添加しながら、1時間攪拌し、徐々に室温に戻しながら9時間攪拌した。1N塩酸水溶液を適量加え、エーテルで抽出し、エーテル相はさらに飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−ステアロイル−マスリン酸エチルを1.2g得た。
<合成例5> 3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオール
エリトロジオール5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオールを5.4g得た。
<合成例6> ウルソール酸エチル
ウルソール酸5.0gとトリエチルアミン1.1gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.2gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.5gを加え、トリエチルアミン1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ウルソール酸エチルエステルを3.8g得た。
<合成例7> 3,28−O−ジ−アセチル−ウバオール
ウバオール5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−ウバオールを5.1g得た。
<合成例8> ベツリン酸エチル
ベツリン酸5.0gとトリエチルアミン1.1gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.2gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.5gを加え、トリエチルアミン1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ベツリン酸エチルエステルを3.4g得た。
<合成例9>
3,28−O−ジ−アセチル−ベツリン
ベツリン5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−ベツリンを5.7g得た。
実施例1 腫瘍細胞増殖抑制試験および腫瘍細胞死滅試験
腫瘍細胞増殖抑制試験および腫瘍細胞死滅試験は以下の方法で行った。6穴プレートに培地を2ml/well取り、B−16メラノーマ細胞を所定量播種し、37℃、二酸化炭素濃度5%にて静置、培養した。翌日、所定濃度になる様に検体試料調製液を添加混和し、培養を継続した。培養5日目に培地を交換し、再度検体調製液を添加した。翌日、培地を除き、細胞を回収しPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄後、生存細胞数をカウントし、細胞増殖率を下記式1から算出した。この細胞増殖率から腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果の評価を行った。検体試料無添加での細胞増殖率(コントロール)と比較した。
細胞増殖率(%)=(A÷B)×100 (1)
A:各検体添加における生存細胞数
B:コントロールの生存細胞数
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を表1の記載の各濃度になるように添加し、細胞培養を行った時の細胞増殖率から評価を行った。また、比較としてオレアノール酸、β−アミリン、α−アミリン、ルペオールを添加した場合の細胞増殖率を同様に算出し評価を行った。結果を下表1に示す。
表1から、比較としたβ−アミリン、α−アミリン、ルペオールには全く腫瘍細胞増殖抑制効果はなかった。また、発癌プロモーター抑制活性を有するオレアノール酸は高濃度においてようやく非常に弱い腫瘍細胞増殖抑制効果を発現するのみであった。これに対して、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の腫瘍細胞増殖抑制効果は非常に強いことが分かった。また、特にマスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体においては、腫瘍細胞増殖抑制効果を発揮する濃度の2倍以上で、非常に強い腫瘍細胞死滅効果を発揮した。これは、オレアノール酸、β−アミリン、α−アミリン、ルペオールには全く見られない効果であった。
これにより、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に優れた腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果を有することが明らかになった。
実施例2 悪性黒色腫転移抑制試験
悪性黒色腫転移抑制試験は以下の方法で行った。C57BL16雌マウス(6週齢、平均体重25g)をAIN−93組成の粉末調製飼料で1週間予備飼育した後、平均体重が均等になるように5群(1群8匹)に分け、あらかじめ調製してあったB16メラノーマ細胞の懸濁液を、各マウスに静脈注射した。この日を0日目として、各群のマウスには、表2および表3に示した飼料を自由摂取させた。ただし、全量が100に満たない場合、不足分はコーンスターチで補った。B16メラノーマ細胞注射後29日目に肺を摘出し、肺に転移した転移癌病巣数をカウントした結果から、転移抑制率を下記式2から算出した。この転移抑制率から腫瘍細胞転移抑制効果の評価を行った。
転移抑制率(%)=(D−C)÷D×100 (2)
C:各群における転移癌病巣数平均
D:コントロール群での転移癌病巣数平均
綿実油をコントロールとしてマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体について、表3に記載の投与量により転移抑制率の評価を行った。また、比較としてオレアノール酸を添加した場合の転移抑制率の評価を同様に行った。評価結果を下表3に示す。
表3から明らかなように、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、コントロール群と比較して、有意に(P<0.05)肺への癌の転移を抑制した。オレアノール酸の投与では顕著な効果が見られなかった。
この結果から、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を経口摂取することにより、非常に有効な腫瘍細胞転移抑制効果を享受できることが明らかとなった。
以下に、本発明における飲食物の例を記載する。飲食物の種類、それらに含まれるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の含量等は、以下に限定されるものではない。
実施例3 食用調合油脂
精製マスリン酸1 5.0g
EXV.オリーブ油 1000.0g
上記配合比率にて、EXV.(エキストラバージン)オリーブ油に精製マスリン酸1を添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例4 ドレッシング
水 46.6g
キサンタンガム 0.1g
果糖ぶどう糖液糖 5.0g
食塩 5.0g
MSG 0.3g
米酢(酸度10%) 10.0g
こしょう 適量
製造例2の精製マスリン酸2 1.0g
大豆サラダ油 32.0g
上記配合比率にて、まず大豆サラダ油を除く原材料を、攪拌機付きの加温可能な容器に投入し、プロペラ攪拌機を用いて100rpmで攪拌しながら品温が90℃になるまで加熱し、品温を90℃に保持しながら25分間攪拌を行った。その後、品温が20℃になるまで冷却して大豆サラダ油と合わせてドレッシングを得た。
実施例5 清涼飲料
合成例5の3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオール 0.5g
ハチミツ 15.0g
クエン酸 0.1g
dl−リンゴ酸 0.1g
D−ソルビトール液(70%) 10.0g
安息香酸ナトリウム 0.1g
香料 適量
精製水 全量100gとする残余
上記原料を均一に混合し、健康用飲料を得た。
実施例6 シリアル食品
合成例7の3,28−O−ジ−アセチル−ウバオール 15.0g
小麦粉 30.0g
脱脂大豆 18.5g
小麦ふすま 15.0g
小麦胚芽 11.5g
グラニュー糖 10.0g
上記配合比率にて混合したものを、加水、成型し、オーブンで加熱乾燥して、球形状のシリアル食品を得た。
実施例7 食用調合油脂
製造例3の精製マスリン酸3 10.0g
EXV.オリーブ油 1000.0g
上記配合比率にて、EXV.(エキストラバージン)オリーブ油に精製マスリン酸3を添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例8 食用調合油脂
製造例1の精製マスリン酸1 5.0g
大豆油 1000.0g
上記配合比率にて、大豆油に精製マスリン酸1を添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例9 マーガリン
菜種油 42.0g
菜種硬化油 42.0g
水 14.0g
食塩 0.5g
レシチン 0.5g
モノグリセリド 0.4g
製造例1の精製マスリン酸1 0.6g
香料 適量
カロチン 微量
上記原料を常法により混合し、コンビネーターを用い急冷混捏処理してマーガリンを得た。
実施例10 マヨネーズ
大豆サラダ油 74.0g
水 8.4g
砂糖 1.0g
グルタミン酸ナトリウム 0.3g
粉末マスタード 0.3g
食塩 1.0g
米酢 4.0g
製造例2の精製マスリン酸2 1.0g
加塩卵黄 10.0g
上記配合比率にて、まず大豆サラダ油、加塩卵黄を除く原材料を、混合攪拌しながら90℃まで加熱し、90℃に保持しながら25分間攪拌を行った。20℃まで冷却した後、大豆サラダ油、加塩卵黄を合わせて減圧下で撹拌し、マヨネーズを得た。
本発明の飲食物によれば、時間や労力等の負担を必要とせず、簡易に、かつ、継続的に、特定の五環性トリテルペン類であるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を摂取することができるため、その結果として、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果を好適に享受することができる。また、本発明における特定の五環性トリテルペン類は、天然から得ることができるため、それらの使用は、安心感があるといえる。
本発明は、特定の五環性トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を含有する抗腫瘍用飲食物に関する。
近年のガン死亡率をみると、日本(1997年)においては上昇基調が続いており、また米国(1995年)においてはようやく下降基調に転じてきたものの死亡原因としては依然として第2位を占めている。
現在までのところ、ガンの治療法としては、手術療法、化学療法等を中心として様々な方法が挙げられ、また、近年の多大な研究努力による技術的進歩や治療法の合理的な組合せにより、治療成績は確実に向上している。しかしながら、高齢化社会の進行に伴い、現状のままでは、ガン死亡数は今後も増加し、2015年には40万人を突破すると推計されている。
これに対して、人生におけるQOL(Quality of Life:生活の質)を考えると、健康を増進させるような生活習慣により、ガンの予防を推進していくことが望ましい。この様な対策の中心となるのが食生活の改善であり、これについてはこれまでにも様々な方面からの提言がなされている。ガンの予防効果や早期治療効果を明言した抗腫瘍用飲食物に関する特許も多数公開されている。しかしながら、これまでに提案されてきたガンに対する機能性食品や健康食品は、効果、価格、安定供給等の何れかの問題点を抱えていた。
一方、近年大学の研究所、公私立の研究機関、民間の研究所等で薬草を含め各種植物中の薬理機能物質の検索が盛んに進められており、植物中に含まれる五環性トリテルペン類のうち、特に、オレアノール酸、ウルソール酸、ベツリン酸等に関しては、発癌プロモーター抑制効果について、学会・文献での報告、新聞・雑誌等での紹介及び特許による提案等がなされている。特に発癌プロモーター抑制効果を訴求した飲食物に関しては、オレアノール酸、ウルソール酸に関して、発癌プロモーター抑制効果を有する飲料組成物(特開昭64−39973)が公開されている。
しかしながら、これらの五環性トリテルペン類が既に発生した腫瘍細胞に対して、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果および腫瘍細胞転移抑制効果を有し、飲食物等の形態を通じて経口摂取することで、その効果を十分に享受できることはこれまでに知られていなかった。
発明の開示
本発明は、腫瘍の増殖や転移等を予防または治療させることができる非常に優れた抗腫瘍効果を有する抗腫瘍用飲食物を提供することを課題とし、また、その優れた抗腫瘍効果を、手軽に、かつ、安全性に優れた形で享受することができる抗腫瘍用飲食物を提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を達成する為に鋭意検討した結果、特定の五環性トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体が、優れた腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果および腫瘍細胞転移抑制効果を有することを見出し、また、これらを飲食物等の形態で経口摂取することにより、その抗腫瘍効果を十分に享受できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を有効成分として含有する抗腫瘍用飲食物を提供する。
本発明はまた、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制用飲食物を提供する。
本発明はまた、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を有効成分として含有する腫瘍細胞死滅用飲食物を提供する。
ここで、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンとしては、天然原料から抽出したものを使用することも、人工の合成品等を使用することもできる。また、これらの生理的に許容される塩や誘導体等についても同様に天然原料から抽出したものや、これらを原料として合成反応を行った合成品等を使用することができる。
飲食物としては、菓子、加工食品、調合油脂類、油脂加工品、乳製品、飲料等の各種飲食物が挙げられる。本発明の飲食物の形状・性状は特に制限されず、固体状、半固体状、ゲル状、液体状、粉末状等何れでもよい。前記五環性トリテルペン類および/またはその特定の誘導体は概して脂溶性であることから、飲食物が調合油脂または油脂加工品である場合は、特に好ましい形態といえる。さらには、該調合油脂または油脂加工品を原料として使用、若しくは揚げ物や炒め物用として使用することで得られる飲食物も好ましい。
また、本発明の飲食物として、飲料等の水系飲食物も得ることができる。特に、前記特定の五環性トリテルペン類の一部または全部がその生理的に許容される塩および/またはその特定の誘導体の状態とすることで、脂溶性の五環性トリテルペン類を水溶性にすることができるため好適である。
本発明はまた、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する前記腫瘍予防用飲食物及び腫瘍予防用飲食物としての使用を提供する。
本発明はまた、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する前記腫瘍治療用飲食物及び前記腫瘍治療用飲食物としての使用を提供する。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する抗腫瘍用飲食物に関し、特に腫瘍細胞増殖抑制用飲食物、腫瘍細胞死滅用飲食物、腫瘍細胞転移抑制用飲食物に関する。マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、天然には植物体から抽出して得ることができ、また、その中のいくつかは人工的に合成することもでき、何れも好適に使用することができる。抗腫瘍成分として含有するとは、その目的とする腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果および腫瘍細胞転移抑制効果等を得ることができる程度含有するということである。
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ベツリン酸、ベツリンは抗発癌プロモーター活性を有し、発癌を抑制することが知られており、癌細胞の発生を抑制することが期待されている。本発明の飲食物は、既に発生してしまっている検出できないレベルでの腫瘍細胞の増殖を抑制し、死滅させ、転移を抑制すること、つまり日常的な摂取により、目に見えないレベルでの腫瘍を消滅させる効果も有することから、腫瘍増殖抑制等の腫瘍予防用飲食物として使用することができる。また、腫瘍細胞が発生した直後にその腫瘍細胞の増殖を抑制し、死滅させ、転移を抑制すること、つまり腫瘍の進行を止め、腫瘍を消滅させる腫瘍治療用飲食物として使用することができる。
本発明の飲食物は、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果を有するが、これらの抗腫瘍効果は、継続的な摂取によりその効果を評価することができ、また、培養癌細胞による試験法でもその効果を評価することができる。これらの評価方法によれば、発癌プロモーター抑制活性物質として知られているオレアノール酸等と比較しても、非常に優れた抗腫瘍効果を有する。
本発明で対象とする腫瘍は、腫脹と、良性腫瘍及び悪性腫瘍を含む真性腫瘍とを含む。具体的には、星細胞腫・膠芽腫・髄芽腫・乏突起膠腫・上衣腫・脈絡乳頭腫等の神経膠腫・髄膜腫・下垂体腺腫・神経鞘腫・先天性腫瘍・転移性脳腫瘍等の脳腫瘍、扁平上皮がん・リンパ腫・各種腺腫およびこれらに起因する上咽頭がん・中咽頭がん・下咽頭がん等の咽頭がん、喉頭がん、胸腺腫、胸膜中皮腫・腹膜中皮腫・心膜中皮腫等の中皮腫、胸管がん・小葉がん・乳頭腫等の乳がん、小細胞がん・腺がん・扁平上皮がん・大細胞がん・腺扁平上皮がん等の肺がん、胃がん、頸部食道がん・胸部食道がん・腹部食道がん等の食道がん、直腸がん・S状結腸がん・上行結腸がん・横行結腸がん・盲腸がん・下行結腸がん等の大腸がん、肝細胞がん・肝内肝管がん・肝細胞芽腫・肝管嚢胞腺がん等の肝がん、膵がん、インスリノーマ・ガストリノーマ・VIP産生腺腫等の膵内分泌腫瘍、肝外肝管がん、肝嚢がん、陰茎がん、腎盂・尿管がん、尿道がん、腎細胞がん・ウィルムス腫瘍・腎血管筋脂肪腫等の腎がん、セミノーマ・胎児性がん・卵黄嚢腫・絨毛がん・奇形腫等の精巣(睾丸)腫瘍あるいは胚細胞腫瘍、前立腺がん、膀胱がん、外陰がん、子宮頸部がん・子宮体部がん・子宮内膜がん等の子宮がん、子宮肉腫、子宮筋腫、絨毛性疾患、膣がん、未分化胚細胞腫・卵黄嚢腫瘍・未熟奇形腫・類皮嚢胞がん等の卵巣胚細胞腫瘍・卵巣がん等の卵巣腫瘍、母斑細胞・メラノーマ等の黒色腫、菌状息肉症等の皮膚リンパ腫、皮膚がん前駆症等に起因する表皮内がん・有棘細胞がん等の皮膚がん、線維性組織球腫・脂肪肉腫・横紋筋肉腫・平滑筋肉腫・滑膜肉腫・線維肉腫・神経鞘腫・血管肉腫・線維肉腫・神経線維肉腫・血管外皮腫・胞巣状軟部肉腫等の軟部肉腫、ホジキンリンパ腫・非ホジキンリンパ腫等のリンパ腫、骨髄腫、形質細胞腫瘍、急逝骨髄性白血病・慢性骨髄性白血病、成人T細胞白血病リンパ腫・慢性リンパ性白血病等の白血病、真性多血症・本態性血小板血症・特発性骨髄線維症等の慢性骨髄増殖性疾患、リンパ節腫大、胸水腫、腹水腫、その他、各種の、腺腫、脂肪腫、繊維腫、血管腫、筋腫、繊維筋腫、内皮腫等が挙げられる。
本発明の飲食物に関し、五環性トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる1種または2種以上の含量は、その飲食物の摂取の頻度や摂取量、その他の条件によって異なるため、適宜調整すれば良く、特に制限されないが、例えば、0.0001〜80質量%の範囲に調整することができる。
本発明の飲食物は、飲食物という形態であるため、容易に、かつ、継続的な摂取が可能であり、好適な効果が期待できる。ここで、飲食物としては、前述の通り、菓子、加工食品、調合油脂類、油脂加工品、乳製品、飲料等の各種飲食物が挙げられ、形状・性状も特に制限されず、固体状、半固体状、ゲル状、液体状、粉末状等何れでもよい。前記五環性トリテルペン類および/またはその特定の誘導体は概して脂溶性であることから、飲食物が調合油脂および/または油脂加工品である場合は、特に好ましい形態といえる。特に限定されないが、例えば、マスリン酸高含有調合油脂等が挙げられる。さらには、該調合油脂および/または油脂加工品を原料として使用、若しくは揚げ物や炒め物として使用することで得られる飲食物も好ましい。
更には、本発明の飲食物として、飲料等の水系飲食物、例えば清涼飲料も得ることができる。特に、前記五環性トリテルペン類の一部または全部をその生理的に許容される塩および/またはその特定の誘導体の状態とすることで、本来、概して脂溶性を示す五環性トリテルペン類の水溶性を向上させることができるため好適である。特に限定されないが、例えば、本来脂溶性であるマスリン酸の生理的に許容される塩や誘導体を配合した清涼飲料等の水系飲料等が挙げられる。
本発明は、上述の様な効果を利用し、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する腫瘍細胞増殖予防用飲食物又は腫瘍細胞転移予防用飲食物として利用することができ、また、同様にマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する腫瘍治療用飲食物として利用することができる。
五環性トリテルペンとは、トリテルペン類の1種であり、イソプレン単位6個から成る五環性の化合物で、炭素数は30個を基本とするが、生合成過程で転移、酸化、脱離あるいはアルキル化され炭素数が前後するものも含まれ、一般に、その骨格により分類されている。例えば、オレアナン系トリテルペン類、ウルサン系トリテルペン類、ルパン系トリテルペン類、ホパン系トリテルペン類、セラタン系トリテルペン類、フリーデラン系トリテルペン類、タラキセラン系トリテルペン類、タラキサスタン系トリテルペン類、マルチフロラン系トリテルペン類、ジャーマニカン系トリテルペン類等が挙げられ、これらは、天然には、植物界において広く分布している。
本発者らは、これらのうち、特定の五環性トリテルペン類、すなわち、オレアナン系トリテルペンのマスリン酸、エリトロジオール、ウルサン系トリテルペンのウルソール酸、ウバオール、ルパン系トリテルペンのベツリン酸、ベツリンが、優れた腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果および腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果を有し、また、飲食物の形態で摂取することによりこれらの効果を享受することができることを見出し、本発明を完成した。また同時に、これらと骨格が類似する五環性トリテルペン類である、オレアナン系トリテルペンのオレアノール酸、β−アミリン、ウルサン系トリテルペンのα−アミリン、ルパン系トリテルペンのルペオールは、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果を全く有さず、飲食物の形態で摂取しても効果が無いことを見出している。つまり、五環性トリテルペン類のうち、特定の物質が本発明における抗腫瘍効果を有するということであり、また、本発明において見出された抗腫瘍効果を有する物質に、単に構造が類似するだけでは抗腫瘍効果を有しないということである。たとえば、オレアノール酸とマスリン酸は極めて構造が類似しているが、抗腫瘍効果は比較にならない程差異がある。本発明において、そのランダムに存在する抗腫瘍効果を有する物質を見出したものである。
本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する抗腫瘍用飲食物に関し、好ましくは腫瘍細胞増殖抑制用飲食物に関し、好ましくは腫瘍細胞死滅用飲食物に関し、好ましくは腫瘍細胞転移抑制用飲食物に関する。
ここで、生理的に許容される塩とは、特に特定の五環性トリテルペン酸のカルボキシル基からから誘導される塩であり(部分構造:−COOX;Xは任意の陽イオン性物質)、本発明における天然物からの単離物に本来的に含まれるものも含む。本発明においては、通常飲食物等で用いられるものであれば特に限定はされず、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛等のアルカリ土類金属塩、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、テトラブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン等のアルキルアミン塩、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジプロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩、ピペラジン、ピペリジン等のその他の有機アミン塩、リジン、アルギニン、ヒスチジン、トリプトファン等の塩基性アミノ酸塩等の塩が挙げられる。これらのうち、アルカリ金属塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩及び塩基性アミノ酸塩が好ましい。一概にこれらの塩類は、その元となる特定の五環性トリテルペン類に比べて、より水溶性を示すため、本発明においては、特に水系にて適用する場合に好ましい。
また、誘導体とは、生化学的あるいは人工的に形成可能な誘導体であり、本発明においては、可能な誘導体であれば特に限定はされないが、例えば、アルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体、あるいは配糖体等が挙げられる。これらのうち、特にアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体は、その元となる特定の五環性トリテルペン類に比べて、より脂溶性を示すため、本発明においては、特に油系にて適用する場合に好ましく、配糖体は、その元となる特定の五環性トリテルペン類に比べて、より水溶性を示すため、本発明においては、特に水系にて適用する場合に好ましい。
これらの誘導体は、一部は天然にも存在し、それらを単離することで得ることができ、また、人工的に形成させることで得ることができる。また、本発明の誘導体を再度誘導体化して、それらの塩を使用することもできる。
このように、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸及びベツリンを、生理的に許容される適当な塩や誘導体の形態にすることにより、水溶性又は油溶性を向上させることができ、従って、ハンドリング性・品質・抗腫瘍効果を向上させた製品を設定することができる。
アルコールエステル基とは、一般的なカルボキシル基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−COOR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコールエステル基を有する誘導体とは、特に、そのカルボキシル基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコールに特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、トリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
脂肪酸エステル基とは、一般的な水酸基と脂肪酸類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−OCOR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、脂肪酸エステル基を有する誘導体とは、特に、その水酸基と脂肪酸類から形成可能な誘導体を示す。この際の脂肪酸に特に制限は無いが、例えば、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸等が挙げられる。このうち、酢酸、無水酢酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、γ−リノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸から形成される誘導体が好ましい。
アルコキシ基とは、一般的な水酸基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−OR;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコキシ基を有する誘導体とは、特に、その水酸基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコールに特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、トリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
アルコキシメチル基とは、一般的なヒドロキシメチル基とアルコール類との脱水反応の結果として形成される官能基を示す(部分構造:−CH20R;Rは任意の炭化水素系官能基を示す。)。すなわち、本発明における五環性トリテルペン類の、アルコキシメチル基を有する誘導体とは、特に、そのヒドロキシメチル基とアルコール類から形成可能な誘導体を示す。この際のアルコール類に特に制限は無いが、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、エチレングリコール、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、糖類等が挙げられる。このうち、エタノール、トリエチルシリルアルコール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、トリメチルシリルアルコールから形成される誘導体が好ましい。
また、本発明における配糖体とは、上記のアルコールエステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体のうち、特に、五環性トリテルペン類のカルボキシル基、水酸基、ヒドロキシメチル基と糖類から形成可能な誘導体を示す(部分構造:−COOR、−OR、−CH2OR;Rは任意の糖類を示す。)。この際の糖類に特に制限は無いが、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、アラビノース、フコース、ラムノース、グルコサミン、ガラクトサミン、グルクロン酸等が挙げられ、何れもα体、β体どちらでもよい。またこれらの配糖体は、単糖でもよいし、二糖以上の様々な組合せのオリゴ糖でもよい。これらの中には、通常天然に存在し、サポニンという総称で知られているものも有るが、本発明においては、これらの何れを用いてもよい。
本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を含有する抗腫瘍用飲食物である。抗腫瘍成分として含有するとは、その目的とする抗腫瘍効果、すなわち腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果を得ることができる程度含有するということである。つまり、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の投与量が、腫瘍の予防および/または治療に効果を発現する量である。
オレアナン系トリテルペンのマスリン酸、エリトロジオール、ウルサン系トリテルペンのウルソール酸、ウバオール、ルパン系トリテルペンのベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体について、その由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができる。
マスリン酸、エリトロジオールは、何れもオレアナン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが既に知られている物質である。本発明の飲食物において、マスリン酸、エリトロジオール、それらの生理的に許容される塩および/またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができる。
マスリン酸(maslinic acid)は、オレアナン系トリテルペンの一種で、化学式(1)で示される構造の化合物である。作用としては、抗炎症作用や抗ヒスタミン作用を有することが知られている。天然には、オリーブ、ホップ、ハッカ、ザクロ、チョウジ、セージ、ナツメ等に存在することが知られている。本発明の飲食物において、マスリン酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、オリーブ、ホップ、ハッカ、ザクロ、チョウジ、セージ、ナツメ等の天然から得られるものが好ましく、特に安定的な供給源としては、油脂原料として栽培されているオリーブ植物等が挙げられる。オリーブ植物は安定的かつ継続的に栽培されていることに加え、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が高濃度に含まれている点からも好ましい。
尚、本明細書において、「オリーブ」は、オリーブ植物及び/又はオリーブ油及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物を意味する。
本発明において、マスリン酸の生理的に許容される塩および誘導体については前述と同様である。すなわち、その生理的に許容される塩とは化学式(1)における−COOHから誘導されるものであり、その塩の種類は通常飲食物または医薬組成物で用いられるものであれば特に限定はされない。具体的には、例えば、マスリン酸の塩として、マスリン酸ナトリウム、マスリン酸カリウム、マスリン酸アンモニウム、マスリン酸ジメチルアンモニウム、マスリン酸カルシウム、マスリン酸マグネシウム等が挙げられる。このうち、マスリン酸ナトリウム及びマスリン酸カリウムが好ましい。
マスリン酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、マスリン酸メチルエステル、マスリン酸エチルエステル、マスリン酸n−プロピルエステル、マスリン酸イソプロピルエステル、マスリン酸n−ブチルエステル、マスリン酸トリメチルシリルエステル、マスリン酸トリエチルシリルエステル、マスリン酸−β−D−グルコピラノシルエステル、マスリン酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−マスリン酸、3−O−プロピオニル−マスリン酸、3−O−ブチリル−マスリン酸、3−O−バレリル−マスリン酸、3−O−カプリル−マスリン酸、3−O−ラウリル−マスリン酸、3−O−ミリスチル−マスリン酸、3−O−パルミチル−マスリン酸、3−O−パルミトオレイル−マスリン酸、3−O−ステアリル−マスリン酸、3−O−ステアロイル−マスリン酸、3−O−オレイル−マスリン酸、3−O−バクセニル−マスリン酸、3−O−リノレイル−マスリン酸、3−O−リノレニル−マスリン酸、3−O−アラキジル−マスリン酸、3−O−アラキドニル−マスリン酸、3−O−ベヘニル−マスリン酸、2−O−アセチル−マスリン酸、2−O−プロピオニル−マスリン酸、2−O−ブチリル−マスリン酸、2−O−バレリル−マスリン酸、2−O−カプリル−マスリン酸、2−O−ラウリル−マスリン酸、2−O−ミリスチル−マスリン酸、2−O−パルミチル−マスリン酸、2−O−パルミトオレイル−マスリン酸、2−O−ステアリル−マスリン酸、2−O−オレイル−マスリン酸、2−O−バクセニル−マスリン酸、2−O−リノレイル−マスリン酸、2−O−リノレニル−マスリン酸、2−O−アラキジル−マスリン酸、2−O−アラキドニル−マスリン酸、2−O−ベヘニル−マスリン酸、3−O−メチル−マスリン酸、3−O−エチル−マスリン酸、3−O−t−ブチル−マスリン酸、3−O−トリメチルシリル−マスリン酸、3−O−トリエチルシリル−マスリン酸、3−O−ベンジル−マスリン酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−マスリン酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−マスリン酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−マスリン酸、2−O−メチル−マスリン酸、2−O−エチル−マスリン酸、2−O−t−ブチル−マスリン酸、2−O−トリメチルシリル−マスリン酸、2−O−トリエチルシリル−マスリン酸、2−O−ベンジル−マスリン酸2−O−β−D−グルコピラノシル−マスリン酸、2−O−β−D−ガラクトピラノシル−マスリン酸、2−O−β−D−グルクロノピラノシル−マスリン酸等が挙げられる。このうち、マスリン酸エチルエステル、マスリン酸トリエチルシリルエステル、3−O−アセチル−マスリン酸、2−O−アセチル−マスリン酸、2−O−トリエチルシリル−マスリン酸、3−O−ステアロイル−マスリン酸、2−O−ステアロイル−マスリン酸が好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、マスリン酸又は上述の好ましいマスリン酸エステルの2,3−O−ジアセチル体、2,3−O−ジトリエチルシリル体、2,3−ジステアロイル体が好ましいものとしてあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
エリトロジオール(erythrodiol)は、オレアナン系トリテルペンの一種で、化学式(2)の様な構造であり、作用としてはこれまでに、抗炎症作用(Planta.Med. VOL.61,No.2,182−185 1995)等を有することが知られている。天然には、オリーブ、ヒマワリ、キンセンカ、アラビアゴムノキ、コウキシタン、ナガバカコノキ等に存在することが知られている。本発明の飲食物において、エリトロジオールまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、オリーブ、ヒマワリ、キンセンカ、アラビアゴムノキ、コウキシタン、ナガバカコノキ等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブが好ましく、具体的にはオリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
エリトロジオールについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−エリトロジオール、3−O−プロピオニル−エリトロジオール、3−O−ブチリル−エリトロジオール、3−O−バレリル−エリトロジオール、3−O−カプリル−エリトロジオール、3−O−ラウリル−エリトロジオール、3−O−ミリスチル−エリトロジオール、3−O−パルミチル−エリトロジオール、3−O−パルミトオレイル−エリトロジオール、3−O−ステアリル−エリトロジオール、3−O−オレイル−エリトロジオール、3−O−バクセニル−エリトロジオール、3−O−リノレイル−エリトロジオール、3−O−リノレニル−エリトロジオール、3−O−アラキジル−エリトロジオール、3−O−アラキドニル−エリトロジオール、3−O−ベヘニル−エリトロジオール、28−O−アセチル−エリトロジオール、28−O−プロピオニル−エリトロジオール、28−O−ブチリル−エリトロジオール、28−O−バレリル−エリトロジオール、28−O−カプリル−エリトロジオール、28−O−ラウリル−エリトロジオール、28−O−ミリスチル−エリトロジオール、28−O−パルミチル−エリトロジオール、28−O−パルミトオレイル−エリトロジオール、28−O−ステアリル−エリトロジオール、28−O−オレイル−エリトロジオール、28−O−バクセニル−エリトロジオール、28−O−リノレイル−エリトロジオール、28−O−リノレニル−エリトロジオール、28−O−アラキジル−エリトロジオール、28−O−アラキドニル−エリトロジオール、28−O−ベヘニル−エリトロジオール、3−O−メチル−エリトロジオール、3−O−エチル−エリトロジオール、3−O−t−ブチル−エリトロジオール、3−O−トリメチルシリル−エリトロジオール、3−O−トリエチルシリル−エリトロジオール、3−O−ベンジル−エリトロジオール、28−O−メチル−エリトロジオール、28−O−エチル−エリトロジオール、28−O−t−ブチル−エリトロジオール、28−O−トリメチルシリル−エリトロジオール、28−O−トリエチルシリル−エリトロジオール、28−O−ベンジル−エリトロジオール、3−O−β−D−グルコピラノシル−エリトロジオール、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−エリトロジオール、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−グルコピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−エリトロジオール、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−エリトロジオール等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−エリトロジオール、28−O−アセチル−エリトロジオールが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−エリトロジオールがあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ウルソール酸、ウバオールは、何れもウルサン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが知られている物質である。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。本発明の飲食物において、ウルソール酸、ウバオール、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、天然物を用いることが好ましい。
ウルソール酸、(ursolic acid)は、ウルサン系トリテルペンの一種で、化学式(3)で示される構造の化合物である。作用としてはこれまでに、抗炎症作用、抗動脈硬化作用、抗糖尿病作用、抗高脂血症作用(Jie Liu,Journal of Ethnopharmacology,49,57−68,1995)等を有することが知られている。天然には、リンゴ、サクランボ、ウワウルシ等の果実や葉に広く分布することが知られている。本発明の飲食物において、ウルソール酸、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、リンゴ、サクランボ、ウワウルシ等の天然から得られるものが好ましい。
ウルソール酸について、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、その生理的に許容される塩について以下に制限されないが、例えば、ウルソール酸の塩として、ウルソール酸ナトリウム、ウルソール酸カリウム、ウルソール酸アンモニウム、ウルソール酸ジメチルアンモニウム、ウルソール酸カルシウム、ウルソール酸マグネシウム等が挙げられる。
ウルソール酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、ウルソール酸メチルエステル、ウルソール酸エチルエステル、ウルソール酸n−プロピルエステル、ウルソール酸イソプロピルエステル、ウルソール酸n−ブチルエステル、ウルソール酸トリメチルシリルエステル、ウルソール酸トリエチルシリルエステル、ウルソール酸−β−D−グルコピラノシルエステル、ウルソール酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−ウルソール酸、3−O−プロピオニル−ウルソール酸、3−O−ブチリル−ウルソール酸、3−O−バレリル−ウルソール酸、3−O−カプリル−ウルソール酸、3−O−ラウリル−ウルソール酸、3−O−ミリスチル−ウルソール酸、3−O−パルミチル−ウルソール酸、3−O−パルミトオレイル−ウルソール酸、3−O−ステアリル−ウルソール酸、3−O−オレイル−ウルソール酸、3−O−バクセニル−ウルソール酸、3−O−リノレイル−ウルソール酸、3−O−リノレニル−ウルソール酸、3−O−アラキジル−ウルソール酸、3−O−アラキドニル−ウルソール酸、3−O−ベヘニル−ウルソール酸、3−O−メチル−ウルソール酸、3−O−エチル−ウルソール酸、3−O−t−ブチル−ウルソール酸、3−O−トリメチルシリル−ウルソール酸、3−O−トリエチルシリル−ウルソール酸、3−O−ベンジル−ウルソール酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−ウルソール酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウルソール酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウルソール酸等が挙げられる。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ウバオール(uvaol)は、ウルサン系トリテルペンの一種で、化学式(4)の様な構造であり、作用としてはこれまでに、抗炎症作用(Planta.Med. VOL.61,No.2,182−185 1995)、グリセロリン酸脱水素酵素阻害作用(特開平9−67249)等を有することが知られている。天然には、オリーブ、ウワウルシ、セージ、アラビアゴムノキ、カユプテ等に存在することが知られている。本発明の飲食物において、ウバオールまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、オリーブ、ウワウルシ、セージ、アラビアゴムノキ、カユプテ等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブが好ましく、具体的にはオリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
ウバオールについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−ウバオール、3−O−プロピオニル−ウバオール、3−O−ブチリル−ウバオール、3−O−バレリル−ウバオール、3−O−カプリル−ウバオール、3−O−ラウリル−ウバオール、3−O−ミリスチル−ウバオール、3−O−パルミチル−ウバオール、3−O−パルミトオレイル−ウバオール、3−O−ステアリル−ウバオール、3−O−オレイル−ウバオール、3−O−バクセニル−ウバオール、3−O−リノレイル−ウバオール、3−O−リノレニル−ウバオール、3−O−アラキジル−ウバオール、3−O−アラキドニル−ウバオール、3−O−ベヘニル−ウバオール、28−O−アセチル−ウバオール、28−O−プロピオニル−ウバオール、28−O−ブチリル−ウバオール、28−O−バレリル−ウバオール、28−O−カプリル−ウバオール、28−O−ラウリル−ウバオール、28−O−ミリスチル−ウバオール、28−O−パルミチル−ウバオール、28−O−パルミトオレイル−ウバオール、28−O−ステアリル−ウバオール、28−O−オレイル−ウバオール、28−O−バクセニル−ウバオール、28−O−リノレイル−ウバオール、28−O−リノレニル−ウバオール、28−O−アラキジル−ウバオール、28−O−アラキドニル−ウバオール、28−O−ベヘニル−ウバオール、3−O−メチル−ウバオール、3−O−エチル−ウバオール、3−O−t−ブチル−ウバオール、3−O−トリメチルシリル−ウバオール、3−O−トリエチルシリル−ウバオール、3−O−ベンジル−ウバオール、28−O−メチル−ウバオール、28−O−エチル−ウバオール、28−O−t−ブチル−ウバオール、28−O−トリメチルシリル−ウバオール、28−O−トリエチルシリル−ウバオール、28−O−ベンジル−ウバオール、3−O−β−D−グルコピラノシル−ウバオール、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウバオール、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−グルコピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−ウバオール、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−ウバオール等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−ウバオール、28−O−アセチル−ウバオールが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−ウバオールがあげられる。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ベツリン酸、ベツリンは、何れもルパン系トリテルペン類の一種であり、各種植物中に存在することが知られている物質である。また、これらの生理的に許容される塩および誘導体については、前述と同様である。本発明の飲食物において、ベツリン酸、ベツリン、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を使用する場合には、これらの物質の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、天然物を用いることが好ましい。
ベツリン酸(betulinic acid)は、ルパン系トリテルペンの一種で、化学式(5)の様な構造であり、作用としてはこれまでに、制癌作用、抗炎症作用、創傷治療促進作用(特公平4−26623)、アルコール吸収抑制作用(特開平7−53385)、発毛促進作用(特開平9−157139)等を有することが知られている。天然には、センブリ、チョウジ、ブドウ果皮、オリーブ等に遊離状態で、チクセツニンジン、ニンジン、サトウダイコン等にはサポニンとして存在することが知られている。本発明の飲食物において、ベツリン酸、それらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、センブリ、チョウジ、ブドウ、オリーブ、チクセツニンジン、ニンジン、サトウダイコン等の天然から得られるものが好ましい。特に、オリーブから得られるものが好ましく、具体的には、オリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるものが好ましい。
ベツリン酸について、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、生理的に許容される塩について以下に制限されないが、例えば、ベツリン酸ナトリウム、ベツリン酸カリウム、ベツリン酸アンモニウム、ベツリン酸ジメチルアンモニウム、ベツリン酸カルシウム、ベツリン酸マグネシウム等が挙げらる。このうち、ベツリン酸ナトリウム、ベツリン酸カリウムが好ましい。
ベツリン酸の誘導体としては、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、ベツリン酸メチルエステル、ベツリン酸エチルエステル、ベツリン酸n−プロピルエステル、ベツリン酸イソプロピルエステル、ベツリン酸n−ブチルエステル、ベツリン酸トリメチルシリルエステル、ベツリン酸トリエチルシリルエステル、ベツリン酸−β−D−グルコピラノシルエステル、ベツリン酸−β−D−ガラクトピラノシルエステル、3−O−アセチル−ベツリン酸、3−O−プロピオニル−ベツリン酸、3−O−ブチリル−ベツリン酸、3−O−バレリル−ベツリン酸、3−O−カプリル−ベツリン酸、3−O−ラウリル−ベツリン酸、3−O−ミリスチル−ベツリン酸、3−O−パルミチル−ベツリン酸、3−O−パルミトオレイル−ベツリン酸、3−O−ステアリル−ベツリン酸、3−O−オレイル−ベツリン酸、3−O−バクセニル−ベツリン酸、3−O−リノレイル−ベツリン酸、3−O−リノレニル−ベツリン酸、3−O−アラキジル−ベツリン酸、3−O−アラキドニル−ベツリン酸、3−O−ベヘニル−ベツリン酸、3−O−メチル−ベツリン酸、3−O−エチル−ベツリン酸、3−O−t−ブチル−ベツリン酸、3−O−トリメチルシリル−ベツリン酸、3−O−トリエチルシリル−ベツリン酸、3−O−ベンジル−ベツリン酸、3−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン酸、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン酸、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン酸等が挙げられる。このうち、ベツリン酸エチルエステルが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
ベツリン(betulin)は、ルパン系トリテルペンの一種で、化学式(6)の様な構造であり、作用としてはこれまでに、生体タンパク質変性抑制作用(特開平9−67253)、グリセロリン酸脱水素酵素阻害作用(特開平9−67249)、リパーゼ阻害作用(特開平10−265328)、肝疾患予防作用(特開平11−209275)等を有することが知られている。天然には、シラカバの樹皮等に存在することが知られている。本発明の本発明の飲食物において、ベツリンまたはそれらの誘導体の由来は制限されず、天然から得られるもの、人工的に合成されたもの、市販品等何れも使用することができるが、例えば、シラカバの樹皮等の天然から得られるものが好ましい。
ベツリンについて、その生理的に許容される塩や誘導体については前述と同様である。
ここで、誘導体について以下に制限されないが、例えば、何れか一個所が誘導体化されているものとして、3−O−アセチル−ベツリン、3−O−プロピオニル−ベツリン、3−O−ブチリル−ベツリン、3−O−バレリル−ベツリン、3−O−カプリル−ベツリン、3−O−ラウリル−ベツリン、3−O−ミリスチル−ベツリン、3−O−パルミチル−ベツリン、3−O−パルミトオレイル−ベツリン、3−O−ステアリル−ベツリン、3−O−オレイル−ベツリン、3−O−バクセニル−ベツリン、3−O−リノレイル−ベツリン、3−O−リノレニル−ベツリン、3−O−アラキジル−ベツリン、3−O−アラキドニル−ベツリン、3−O−ベヘニル−ベツリン、28−O−アセチル−ベツリン、28−O−プロピオニル−ベツリン、28−O−ブチリル−ベツリン、28−O−バレリル−ベツリン、28−O−カプリル−ベツリン、28−O−ラウリル−ベツリン、28−O−ミリスチル−ベツリン、28−O−パルミチル−ベツリン、28−O−パルミトオレイル−ベツリン、28−O−ステアリル−ベツリン、28−O−オレイル−ベツリン、28−O−バクセニル−ベツリン、28−O−リノレイル−ベツリン、28−O−リノレニル−ベツリン、28−O−アラキジル−ベツリン、28−O−アラキドニル−ベツリン、28−O−ベヘニル−ベツリン、3−O−メチル−ベツリン、3−O−エチル−ベツリン、3−O−t−ブチル−ベツリン、3−O−トリメチルシリル−ベツリン、3−O−トリエチルシリル−ベツリン、3−O−ベンジル−ベツリン、28−O−メチル−ベツリン、28−O−エチル−ベツリン、28−O−t−ブチル−ベツリン、28−O−トリメチルシリル−ベツリン、28−O−トリエチルシリル−ベツリン、28−O−ベンジル−ベツリン、3−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン、3−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン、3−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−グルコピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−ガラクトピラノシル−ベツリン、28−O−β−D−グルクロノピラノシル−ベツリン等が挙げられる。このうち、3−O−アセチル−ベツリン、28−O−アセチル−ベツリンが好ましい。以上には、誘導体として1基のみ誘導体化されているものを挙げたが、当然、これらのうち誘導される位置および種類が可能な2基以上が誘導体化されたものでもよい。例えば、3,28−O−ジアセチル−ベツリンが好ましい。また、配糖体については単糖のもののみ挙げたが、当然、様々な糖類から選ばれる二糖以上のオリゴ糖でもよい。
これらの五環性トリテルペン類は、天然には、それぞれに記載した植物体から抽出することにより、詳しくは、水および/または有機溶媒で抽出処理し、さらに濃縮処理および/または分画・精製処理することにより得ることができる。すなわち、各植物体から、水および/または有機溶媒で抽出でき、さらにその抽出物から、溶媒抽出法、不純物との溶解度差を利用する方法、分別沈殿法、再結晶法、イオン交換樹脂法、液体クロマトグラフ法等を単独または適宜組み合わせて、あるいは反復使用することによって分離精製することができる。
特に、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩については、オリーブ植物から、水および/または有機溶媒で抽出でき、さらにその抽出物から、溶媒抽出法、不純物との溶解度差を利用する方法、分別沈殿法、再結晶法、イオン交換樹脂法、液体クロマトグラフ法等を単独または適宜組み合わせて、あるいは反復使用することによって分離精製することができる。
オリーブ植物(Olea europaea L.)は、国産、欧州産などの産地、食用あるいは搾油用を問わず使用できる。本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、天然植物であるオリーブ植物の主に、実または種子から得ることができ、さらに、その種皮、葉、茎、芽から得ることができる。また、これらの乾燥物、粉砕物、脱脂物からも好適に得ることができる。このうち、脱脂された実(果皮含む)や果皮の乾燥物、粉砕物が好ましい。さらに、オリーブ油の製造工程で生じる生成物、例えば圧搾残査、抽出残査、搾油残査、圧搾油、抽出油、脱ガム油滓、脱酸油滓、ダーク油、廃脱色剤、脱臭スカム、搾油ジュース、排水、廃濾過材から得ることができる。このうち、搾油残査が好ましい。
また、上記オリーブ植物の果実やその脱脂物等に、添水する等により加水した場合、あるいは蒸気により蒸す等の加湿処理を行った場合、これらオリーブ植物の果実やその脱脂物等が適度に膨潤するので、抽出効率が良くなり好ましい。
特に、オリーブ植物の脱脂物には、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が高濃度で存在し、かつ、得られたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩から油分を除去する必要がないため好ましい。
当該脱脂物は、食油精製工程中に産出するオリーブ搾油残査、またはヘキサン等による抽出残査を原料とすることができる。
また、オリーブ植物または当該脱脂物に含まれる脂質成分をペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素、酢酸エチルエステル等の低級脂肪酸アルキルエステル、ジエチルエーテル等の公知の非水溶性の有機溶媒の1種又は2種以上で抽出除去し、更に必要に応じてこの洗浄処理を繰り返した脱脂物も好適に利用できる。
上記オリーブ植物から水および/または有機溶媒で抽出することにより、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
オリーブ植物からマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得るために用いる有機溶媒としては、親水性有機溶媒、疎水性有機溶媒の何れでもよい。具体的には、親水性有機溶媒として、メチルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸等の公知の有機溶媒が挙げられ、疎水性有機溶媒として、ヘキサン、シクロヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン等の公知の有機溶媒が挙げられる。また、これらの有機溶媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
工業的には、例えば植物組織への浸透性、抽出効率等からは、親水性有機溶媒を用いることが好ましく、また含水親水性有機溶媒を用いることが好ましい。具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の有機溶媒およびこれらの含水溶媒が挙げられる。これらの中から選ばれる、1種または2種以上により、オリーブ植物から、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
抽出条件は、特に限定されないが、例えば、温度は5℃〜95℃、好ましくは10℃〜90℃、さらに好ましくは15℃〜85℃で、常温でも好適に抽出することができる。温度が高いほうが、抽出効率が高くなる傾向はある。圧力は、常圧でも、加圧でも、吸引等による減圧でも好適に抽出することができる。また、抽出効率を向上させるため、振とう抽出や、攪拌機等のついた抽出機でも抽出することができる。抽出時間は、他の抽出条件によるが、数分〜数時間であり、長時間なほど十分な抽出がなされるが、生産設備、収率等の生産条件によって適宜決めれば良い。
また、抽出に使用する溶媒は、水を単独で使用する場合、有機溶媒を単独で使用する場合、水と有機溶媒とを混合して使用する場合のいずれの場合にも、原料に対し1〜100倍量(「質量/質量」。以下同様。)、好ましくは1〜20倍量を使用することができる。
また、人体等への安全性等を考えれば、特に、水、含水低級アルコール、無水低級アルコールの何れかにより抽出することが好ましい。
さらに、得られるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の収率や、抗腫瘍効果の強さをも考慮に入れた場合、低級アルコール含量が10質量%以上である含水低級アルコールで抽出することが好ましい。さらには低級アルコール含量が10質量%〜95質量%の含水アルコールを使用することが好ましく、最も好ましくは低級アルコール含量が30質量%〜95質量%に調節された含水低級アルコールが好ましい。
ここで、本発明で使用するアルコールは、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロパノール、1−ブタノール等の1級アルコール、2−プロパノール、2−ブタノール等の2級アルコール、2−メチル−2−プロパノール等の3級アルコールさらにエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール等の公知の溶媒が挙げられ、これらの溶媒は1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
低級アルコールとは、炭素数が1〜4である公知のアルコール、例えば、前述の1、2、3級、もしくは、液状多価のアルコール等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
このようにして得られた粗抽出物及び/又は粗抽出液から、溶媒、水分を除去することで、本発明におけるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
溶媒、水分の除去は減圧蒸留、減圧・真空乾燥、凍結乾燥、スプレードライ等の公知の方法で行うことができる。
もちろん、溶媒、水分を含んだままでも良く特に状態は制限されない。
脱脂物からの抽出物は、トリグリセライドやステロール、トコフェロール等の脂溶性成分は含有していないので、これらを除去、精製する必要がないため、好ましい。加えて、脱脂物とは、搾油後の残査を含むので、オリーブ油を搾油した圧搾粕および抽出粕を使用できることから、オリーブの極めて優れた有効利用方法であり、通常は廃棄または飼料等に使用されるものを利用するため、生産コストの面から見ても優れた方法といえる。
さらに、オリーブ植物から抽出されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の抗腫瘍効果をより一層引き出すためには、本発明の飲食物に含有させるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を濃縮処理等することが好ましい。
濃縮条件は、特に限定されないが、例えば、水への溶解性を利用した方法が挙げられる。本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、比較的極性が低く、難水溶性の化合物である。この性質を利用して、オリーブ植物からの粗抽出物を水に溶解しにくい成分および/または水に溶解しない成分、つまり難水溶性等の成分と水に容易に溶ける成分とに分けることで、大幅に濃縮することができる。オリーブ植物からの粗抽出物に含まれる難水溶性等の成分は、オリーブ植物からの粗抽出物全体と比べても、大幅に抗腫瘍効果に優れており、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩が濃縮されていることが確認できる。
難水溶性等の成分は、オリーブ植物からの粗抽出物を水に添加・攪拌した後、析出している部分をろ過等により採取することで簡易に得ることができる。
また、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、必要に応じて、一般的な溶剤の組み合わせによる液−液分配により濃縮することができる。溶剤の組み合わせは一概に規定し難いが、例えば、水−疎水性有機溶媒の組み合わせが挙げられ、疎水性有機溶媒としては、ヘキサン、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、n−ブタノール、ベンゼン、トルエン等の公知の有機溶媒が挙げられる。このうち、ヘキサン、酢酸エチル、n−ブタノールが好ましい。
マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は難水溶性であるため、疎水性有機溶媒相を分取することで、不要な水溶性成分を除去することができる。溶媒を除去することで、容易にマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を濃縮することができる。
さらに、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩は、上述した抽出物および/または濃縮物から分画・精製処理することが好ましい。これにより上記濃縮以上に濃縮することができ、目的とする成分を単離することができる。
分画・精製処理することの利点としては、抗腫瘍効果等を非常に向上させることができることに加え、不純物を除去することができること等が挙げられる。すなわち、該分画・精製処理した場合、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を白色結晶として得ることができるため、本発明の飲食物に余計な色をつけることなく好適に配合することができる等のメリットがあり、好ましい。
分画・精製処理の方法については一概に規定し難いが、例えば、再結晶法、分別沈殿法、クロマトグラフィーを利用する方法などが挙げられる。特にクロマトグラフィーの中でも液体クロマトグラフィーを利用する方法は、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を分解することなく、収率良く分画・精製出来るので、好ましい。液体クロマトグラフィーとしては、具体的に、順相液体クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等が挙げられるが、本発明の飲食物に含有されるマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を分画・精製処理する際には、何れの方法を用いることができる。とりわけ、分離能、処理量、工程数等を考慮に入れると、順相液体クロマトグラフィー、逆相液体クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が好ましい。
ここで、順相液体クロマトグラフィーとは、例えば以下のような方法を指す。すなわち、例えばシリカゲルを固定相、ヘキサン−酢酸エチル混液、クロロホルム−メタノール混液等を移動相としたカラムを作成し、オリーブ植物からの粗抽出物あるいはその濃縮物を負荷率0.1〜5%(wt(質量)/v(体積))で供し、単一移動相による連続的溶出法あるいは溶媒極性を順次増加させる段階的溶出法により、所定の画分を溶出させる方法である。
逆相液体クロマトグラフィーとは、例えば以下のような方法を指す。すなわち、例えばオクタデシルシランを結合させたシリカ(ODS)を固定相、水−メタノール混液、水−アセトニトリル混液、水−アセトン混液等を移動相としたカラムを作成し、オリーブ植物からの粗抽出物あるいはその濃縮物を負荷率0.1〜5%(wt(質量)/v(体積))で供し、単一溶媒による連続的溶出法あるいは溶媒極性を順次低下させる段階的溶出法により、所定の画分を溶出させる方法である。
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とは、原理的には、上記順相液体クロマトグラフィーあるいは逆相液体クロマトグラフィーと同様のものであり、より迅速かつ高分離能での分画・精製を行うためのものである。
上記手法を1種または2種以上組み合わせることで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を非常に濃縮でき、かつ、不純物が除去された状態で得ることができるため好ましい。
さらに、上記手法を1種または2種以上組み合わせることで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の純度を調整することができ、必要に応じた抗腫瘍効果の強さ、特性等を設計することもできる。すなわち、抗腫瘍効果の強さと作用機序とを適宜調整することにより抗腫瘍効果を設計できる。抗腫瘍効果の強さは、例えば、より強力な効果が必要な場合は濃縮し、弱い効果でよい場合は希釈して配合することにより調整することができる。あるいはまた、本発明で対象とするマスリン酸等以外のその他の抗腫瘍用飲食物とマスリン酸等とを組み合わせることによっても、抗腫瘍効果の強さを調整することができる。抗腫瘍効果の作用機序としては、腫瘍細胞増殖抑制、腫瘍細胞死滅及び腫瘍細胞転移抑制があげられる。このような作用は、本発明以外のその他の抗腫瘍用飲食物とマスリン酸等とを組み合わせることによって調整することができる。
前述した濃縮処理について、好ましくは繰り返し濃縮処理することができ、さらには異なる濃縮処理を組み合わせることができる。同様に、分画・精製処理について、好ましくは繰り返し分画・精製処理することができ、さらには異なる分画・精製処理を組み合わせることができる。さらに、濃縮処理を行った後に分画・精製処理しても良く、分画・精製処理を行った後に分画・精製処理しても良く、濃縮処理した後に分画・精製処理を行い更に濃縮処理することもできる。当然、前述の組み合わせ以外の組み合わせでも良い。
上述した抽出処理、濃縮処理、分画および/または精製処理等を様々に組み合わせることによって、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を好適に得ることができる。その組み合わせについては特に限定されないが、一連の処理の具体例としては以下のような方法が挙げられる。
例えば、オリーブ植物を水および/または親水性有機溶媒で抽出処理した後、得られた抽出液について親水性有機溶媒の一部または全部を除去し、必要により水を加えて撹拌し、水層部に析出した水不溶分を回収することで濃縮する。析出した水不溶分は、ろ過や遠心分離等のよって回収することができるが、この回収効率の向上のため、必要に応じ水溶液に対して水の添加・攪拌等の処理を行うことができる。また、オリーブ植物から得られる抽出液の水および/または親水性有機溶媒を除去した乾固状態の抽出物についても、上記同様に水の添加・攪拌等の処理を行い、ろ過等によりその水不溶分を回収することで濃縮処理することができる。この濃縮方法によれば、水系での処理であるので、溶剤を用いた濃縮よりも安全性に優れ、また、使用できる機器の範囲も広いため好ましい。また、油分がほとんど含まれていないため、濃縮・精製の効率にも優れており、好ましい。
これらの濃縮物を順相および/または逆相クロマトグラフィーおよび/または再結晶にて分画・精製処理することにより、高純度に精製されたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を好適に得ることができる。
また、オリーブ植物から得られる抽出液について親水性有機溶媒を除去し、残った水溶液に対して、必要に応じて水を添加し、更に疎水性有機溶媒を添加することで、水−疎水性有機溶媒での液−液分配により濃縮処理することができる。また、乾固状態の抽出物についても、上記同様に水を添加し、更に疎水性有機溶媒を添加することで、水−疎水性有機溶媒での液−液分配により濃縮処理することができる。これらの濃縮物を順相および/または逆相クロマトグラフィーおよび/または再結晶にて分画・精製処理することにより、高純度に精製されたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を得ることができる。
ここで、液−液分配の際に添加する水の量は分配処理し得る量を用いれば特に限定されないが、乾固された抽出物の質量当り1〜100倍量が好ましく、より好ましくは5〜50倍量、さらに好ましくは10〜30倍量程度である。
また、水−疎水性有機溶媒での液−液分配において、水と疎水性有機溶媒とは、水:疎水性有機溶媒=9:1〜1:9(体積比)で使用するのが好ましく、8:2〜2:8で使用するのがより好ましい。
また、オリーブ植物及び/又はオリーブ油製造工程で得られる生成物から得られるマスリン酸と生理的に許容されるその塩との混合物中のマスリン酸及び生理的に許容されるそれらの塩の合計の含有率が、95%以上であるのが好ましく、より好ましくは95%〜99.99%である。当該含有率は、例えば、ガスクロマトグラフィーにより測定することができる。
本発明の飲食物は、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を含有させるが、前記抽出物及び濃縮物を含有させることでも本発明の飲食物を得ることもできる。また、濃縮、精製等の度合いを調整することで、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の濃度等を調整することができ、本発明の飲食物へ好適に配合することができる。つまり、より強力な効果が必要な場合は濃縮し、弱い効果で良い場合は希釈した配合もでき、使用目的に応じた濃度での使用に好適な形態とすることができる。
オリーブ油にはマスリン酸等が含有されていることから、本発明の飲食物について、油性成分としてさらにオリーブ油を使用することで、さらに好適な抗腫瘍効果等が得られるため好ましい。
また、オリーブ植物からマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩を抽出した場合には、同時にオレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩が抽出されるが、このオレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩は発癌プロモーター阻害活性を有すること、また、マスリン酸との相溶性に優れている点から、これらの混合物を本発明の飲食物に直接配合することができる。また、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の本発明における抗腫瘍効果についても相乗効果が期待できるため好ましい。マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩をオリーブ植物から抽出、分離精製等するに際し、その条件を調整することで、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩との混合物として得ることもでき、オリーブ植物からそれぞれ別々にマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩を単離し、後に混合することでも得ることができる。また、それぞれ異なる原料から得られたマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩と、オレアノール酸および/またはその生理的に許容される塩を混合した物でも良い。
なお、本発明で対象とするマスリン酸および/またはその生理的に許容される塩以外の五環性トリテルペン類についても、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩について記載した原料及び方法に準じて天然物から単離することができる。
天然物からの単離物を使用して飲食物とした場合、天然物由来の夾雑物の影響が排除され、無色〜淡色および/または無臭〜無臭に近い状態になるので好ましい。従って、天然物から、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類及びそれらの生理的に許容できる塩又はそれらの誘導体を単離することにより、供する料理の風味等に影響を与えることなく調理できる。特に、オリーブ等の原料とする天然物の風味を必要としない料理にも配合できる。従って、本発明の飲食物は、原料として用いられる天然物の種類に影響されることなく調理又は配合可能な飲食物を含む。
さらに、オリーブやオリーブ油をそのままの形態で摂取した場合、本発明で対象とする五環性トリテルペン類を少量しか摂取できないが、天然物から単離した五環性トリテルペン類を配合した飲食物を摂取すれば、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類を比較的容易に多量に摂取することができる。
また、オリーブ等に含まれる五環性トリテルペン類は概して脂溶性物質であるため、通常は油脂中に存在することが多く、このため、水系の飲食物に配合するのは困難であるが、天然物から単離した五環性トリテルペン類であれば、油系の飲食物にでも水系の飲食物にでも配合することができる。清涼飲料等の水系飲食物にすることにより、本発明で対象とする五環性トリテルペン類の例えば数g〜数10gを容易に摂取することが可能となる。
さらにまた、天然物から単離した特定の五環性トリテルペン類を含有する本発明の飲食物は、本発明の体内への吸収を阻害する不純物又は夾雑物が除去されていることから、好適な本発明の効果、すなわち抗腫瘍効果、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果及び腫瘍細胞転移抑制効果を得ることが可能となるので好ましい。
本発明の飲食物に含有されるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は抗腫瘍効果を有するが、その効果としては腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果が挙げられる。
腫瘍細胞増殖抑制効果とは、既に体内に発生してしまった腫瘍細胞、特には癌細胞が、それ以上増殖し生体に悪影響を及ぼすことが出来ないようにすることを意図しており、日常的な摂取では予防的に、すなわち目に見えないレベルでの癌の進行を抑えることに大きく寄与することができる。
腫瘍細胞死滅効果とは、既に体内に発生してしまった腫瘍細胞、特には癌細胞が、細胞活動をしていくことが出来ないようにすることを意図しており、日常的な摂取では、目に見えないレベルで発生した癌細胞を死滅させることに大きく寄与することができる。
腫瘍細胞転移抑制効果とは、体内に発生した腫瘍細胞、特には癌細胞が血流等に乗って他部位に到達し増殖する過程において、血流等に乗っている間に死滅させたり、他部位に辿り着いてすぐに増殖抑制あるいは死滅させることを意図しており、日常的な摂取では、目に見えないレベルでの癌細胞の転移を防止あるいは抑制することに大きく寄与することができる。
腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果については、以下に示すようなB−16メラノーマ細胞を用いた方法で示される。
すなわち、6穴プレートにB−16メラノーマ細胞を所定量播種し、37℃、二酸化炭素濃度5%にて静置、培養したものに、翌日および培養5日目に検体(マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体)調製液を所定濃度になるように添加し、培養6日目に生存細胞数をカウントし、これから細胞増殖率を求め、腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果を評価する。検体試料無添加での細胞増殖率(コントロール)と比較する。
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体では、非常に低濃度の添加でも、濃度依存的にB−16メラノーマ細胞の増殖を抑制、あるいはB−16メラノーマ細胞を死滅させる。すなわち、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に強力な腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果を有する。発癌プロモーター阻害剤として公知であるオレアノール酸では、B−16メラノーマ細胞の増殖を全く抑制しないが、本発明におけるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に優れた腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果を有する。
また、低濃度でも効果を発揮することから、期待する腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果を発揮するための添加量が比較的少なくて済み、より副作用の無い範囲での効果が期待できる。また、濃度依存的に有効であるため、添加量の増減により、使用の目的や必要とする効果に応ずることができる。
腫瘍細胞転移抑制効果の評価としては悪性黒色腫転移抑制試験等により行うことができる。すなわち、C57BL16雌マウスに、あらかじめ調製したB16メラノーマ細胞の懸濁液を静脈注射し、注射後2日目から1日おきに、所定濃度の検体を溶解させた綿実油を、注射により腹空内投与あるいはゾンデを用いて経口投与する。なお、コントロール群には綿実油のみを投与する。B16メラノーマ細胞注射後15日目に肺を摘出し、肺に転移した転移癌病巣数をカウントした結果から転移抑制率を算出する。この転移抑制率から腫瘍細胞転移抑制効果の評価を行う。
この評価においては、発癌プロモーター阻害剤として公知であるオレアノール酸の投与では、コントロール(無投与)群との有意差が無く、腫瘍細胞転移抑制効果が見られないが、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の投与では、コントロール(無投与)群に対して有意に差があり、明らかに悪性黒色腫の転移を抑制する。すなわち、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に強力な腫瘍細胞転移抑制効果を有する。
比較的少ない投与量でも効果を発揮することから、期待する腫瘍細胞転移抑制効果を発揮するための添加量が少なくて済み、安全性の高い範囲での効果が期待できる。また、濃度依存的に有効であるため、添加量の増減により、使用の目的や必要とする効果に応ずることができる。
本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を含有する抗腫瘍用飲食物に関する。抗腫瘍成分として含有するとは、その腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果を発現する程度含有すること、および、抗腫瘍効果を生じさせることを期待して配合するということである。
本発明の飲食物において、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の含量は特に制限されず、含有する五環性トリテルペン類の種類、飲食物の種類、摂取量、摂取の頻度、摂取する者の体重、性別等によって適宜調整すれば良く、特に制限されないが、例えば0.0001〜80質量%、好ましくは0.001〜50質量%、さらに好ましくは0.01〜30質量%、特に好ましくは0.1〜15質量%、最も好ましくは0.1〜10質量%である。特に、主に腫瘍細胞増殖抑制効果や転移抑制効果による予防用飲食物としては、例えば0.0001〜30質量%、さらに好ましくは0.001〜20質量%、さらに好ましくは0.01〜15質量%、さらに好ましくは0.01〜15質量%、さらに好ましくは0.1〜15質量%、さらに特に好ましくは0.5〜15質量%、最も好ましくは1〜10質量%であり、また、主に腫瘍細胞死滅効果による治療用飲食物としては、例えば0.001〜80質量%、好ましくは0.01〜50質量%、さらに好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%、さらに特に好ましくは0.5〜15質量%、最も好ましくは1〜15質量%である。
また、マスリン酸および/またはその生理的に許容される塩の含量については、特に制限されないが、例えば0.0001〜80質量%、好ましくは0.001〜50質量%、さらに好ましくは0.01〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜20質量%、さらに特に好ましくは0.5〜15質量%、最も好ましくは1〜15質量%である。
本発明における五環性トリテルペン類、およびそれらのアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体は、概して脂溶性なので、油系、あるいは乳化系の飲食物に好適に配合することができる。また、特に油脂あるいは油脂加工品としての摂取においては、油とともに吸収されることが期待されるため、吸収性の面で好ましい。
また、本発明における五環性トリテルペン類の生理的に許容される塩あるいは配糖体は、概して水溶性を示すので、水系あるいは乳化系等の飲食物に、均一に溶解ないしは分散させて含有させることで好適に配合することができる。特に飲料等は水系あるいは乳化系での製品化が多いので、この場合、必要に応じて五環性トリテルペン類を、その生理的に許容される塩あるいは配糖体とすることで好適に配合することができる。
当然、本発明における五環性トリテルペン類およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の配合量を増やすことで、更に優れた抗腫瘍効果等を有する飲食物の製造が、本発明により可能である。
また本発明の飲食物には、機能の向上、特に、抗腫瘍効果の相乗的な向上、抗腫瘍効果の補助、吸収性の向上等を目的として、その他の生理活性成分等を配合することができる。特に制限は無いが、例えば、相乗的な効果が期待できるその他の経口抗腫瘍成分、間接的に抗腫瘍効果への寄与があるとされる抗酸化成分、体内での吸収性を向上させ効果の効率を上げるための油性成分、栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等が挙げられる。
その他の経口抗腫瘍成分としては、ジンゲロール、クルクミン、ベルガモティン、ACA等のフェニルプロパノイド類、フラボン、カテキン、ケルセチン、ロイコアントシアニジン、ルテオリン、カルダモニン、ノビレチン等のフラボノイド類、β−カロチン、アスタキサンチン等のカロテノイド類及びその誘導体、ペクチン等の食物繊維類、アリキシン、フェルラ酸、等が挙げられる。これらの経口抗腫瘍成分は、本発明における五環性トリテルペン類との相乗効果が期待できるため、好ましい。
抗酸化成分としては、通常飲食物等に使用されているものであれば特に制限は無いが、例えば、ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩、トコフェロールやトコトリエノールおよびそれらの誘導体、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、没食子酸やエラグ酸等のタンニン類及びそれらの誘導体、亜硫酸ナトリウムや次亜硫酸ナトリウムや二硫化硫黄等の硫酸系化合物、γ−オリザノール等のフェルラ酸誘導体、ルチン及びその誘導体、セサミン、エピセサミン、セサミノール、セサモリン、セサモール等のリグナン類およびそれらの配糖体、β−カロチン等のカロテノイド類及びその誘導体、フラボン、カテキン、ケルセチン、イソケルセチン、ロイコアントシアニジン、ゲニスチン、ゲニステイン、6“−O−アセチルゲニスチン、6“−O−マロニルゲニスチン、ダイズイン、ダイゼイン、6“−O−アセチルダイズイン、6“−O−マロニルダイズイン、グリシチン、グリシテイン、6“−O−アセチルグリシチン、6“−O−マロニルグリニチン、プエラリン、ケルセチン、ケンフェロー、ミロエステロール等のフラボノイド類、ユビキノンやビタミンK等のキノン類、スーパーオキシドディムスターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ等の酵素類、アオイ花抽出物、アスペルギルステレウス抽出物、甘草油性抽出物、グローブ抽出物、グアヤク脂、生コーヒー豆抽出物、米ぬか油抽出物、カンナ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、テンペ抽出物、菜種油抽出物、ピメンタ抽出物、ブルーベリー抽出物、プロポリス抽出物、ペパー抽出物、メラロイカ抽出物、ユーカリ抽出物、リンドウ抽出物、ソバ抽出物、アズキ抽出物、ローズマリー抽出物、オリーブ粕抽出物や大豆粕抽出物等の油粕抽出物、大豆胚芽抽出物、チアミン類及びその塩、リボフラビン、酢酸リボフラビン等のリボフラビン類、塩酸ピリドキシン、ピリドキシンジオクタノエート等のピリドキシン類、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル等のニコチン酸類、ビリルビン、マンニトール、トリプトファン、ヒスチジン、ノルジヒドログアイアレチン酸等があげられる。これらの抗酸化剤は、間接的に抗腫瘍効果があるとされており、また、本来の抗酸化作用による生活習慣病予防効果や抗老化効果等により、人体等に対する総合的な相乗効果も期待できるため、好ましい。
油性成分としては、大豆油、菜種油、ゴマ油、オリーブ油等の植物油脂、ラード、牛脂、魚油等の動物油脂の他、特に制限は無いが、例えば、天然および化学反応や酵素反応により得られた、MCT、MLCT、ジグリセライド、モノグリセライドや、脂肪酸の構造を設計した構造油脂等が挙げられる。
栄養強化のための各種ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類等については、特に制限はないが、食品添加物公定書に定められるものが望ましい。
その他、本発明の飲食物には、通常の飲食物に使用されている原材料を配合・使用することができる。特に制限は無いが、例えば、みそ、醤油、ソース、ケチャップ、ブイヨン、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素等の各種調味料、豚脂、牛脂、乳脂等の動物性油脂、鯨油、イワシ油、ニシン油等の海産物性油脂、大豆油、菜種油、綿実油、米油、コーン油、胡麻油、落花生油、ヒマワリ油、紅花油、椿油、オリーブ油、亜麻仁油、桐油、ヒマシ油、ヤシ油、パーム油、カカオ脂等の植物性油脂、キサンタンガム等の増粘剤、砂糖、グラニュー糖、乳糖、果糖、ブドウ糖、ソルビトール、ハチミツ等の甘味剤、MSG(モノソディウムグルタミン)等のうまみ調味料、米酢、リンゴ酢、酒精酢等の食酢、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸等の酸味剤、安息香酸ナトリウム等の合成保存料、小麦粉、脱脂大豆、小麦ふすま、小麦胚芽等のシリアル原料、食塩、こしょう、フレーバー等が挙げられる。特にオリーブ油は、本発明におけるマスリン酸等を含有するため、非常に好ましい。マスリン酸、その生理的に許容される塩等を高度に含有するように製造されたオリーブ油等が好ましい。
上記各成分は使用目的によって適宜設計、配合することができる。吸収性や作用効果の種類によって抗腫瘍効果を相乗、補完することや使用形態として好ましい態様とすることができる。また、例えばイソフラボン類及びその誘導体は水溶性に優れ、概して油溶性物質である本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類と同時に生体に作用させることで、抗エストロゲン阻害効果を含め、水及び脂質媒介性の様々な代謝経路を経た、同時作用による効果が発揮され、その効果は相乗的になることが期待できる。さらには、本発明で対象とする特定の五環性トリテルペン類とイソフラボノイド等を同時に配合した抗腫瘍用飲食物等はイソフラボノイドの抗酸化性や抗エストロゲン様作用等の生理活性が同時にかつ相乗的に活性化されることが期待できる。
本発明の抗腫瘍用飲食物について、下記に具体例を列記するが、本発明はこれらに制限されるものではない。本発明の抗腫瘍用飲食物とは、その形態等について特に制限はないが、例えば、通常の形態の他、流動食品、経腸栄養食品、健康食品、乳幼児用食品等の形態をとることができる。具体的には、おかき、煎餅、おこし、饅頭、飴等の和菓子、クッキー、ビスケット、クラッカー、シリアル食品、パイ、カステラ、ドーナッツ、プリン、スポンジケーキ、ワッフル、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンデー、キューインガム、ゼリー、ホットケーキ、パン、菓子パン等の各種洋菓子、ポテトチップ等のスナック菓子、アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等の氷菓、乳酸飲料、乳酸菌飲料、濃厚乳性飲料、果汁飲料、果肉飲料、機能性飲料、炭酸飲料等の清涼飲料水、緑茶、紅茶、コーヒー、ココア等の嗜好品及びこれらの飲料、日本酒、ワイン、ブランディー、ウイスキー、薬用酒などの酒類、牛乳、発酵乳、加工乳、チーズ等の乳製品、豆乳、豆腐等の大豆加工食品、ジャム、果実のシロップ漬、フラワーペースト、ピーナツペースト、フルーツペースト等のペースト類、漬物類、うどんの麺、パスタ等の穀物製品類、ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセイジ、ビーフジャーキー、ハンバーグ等の畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、はんぺん等の魚貝類製品、魚、貝等の干物、鰹、鯖、鰺等の各種節、ウニ、イカ等の塩辛、スルメ、魚等のみりん干、鮭等の燻製品、のり、小魚、貝、山菜、椎茸、昆布等の佃煮、カレー、シチュー等のレトルト食品、みそ、醤油、ソース、ケチャップ、ブイヨン、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、だしの素等の各種調味料、米飯類、調合油脂やマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工品や、調合油脂を含有する各種レンジ及び冷凍食品等が挙げられる。特に、継続的な摂取という面からは、米飯や各種調味料や、調合油脂やマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の油脂加工品が好ましいといえる。また、形状・性状も特に制限されず、固体状、半固体状、ゲル状、液体状、粉末状等何れでも良い。
本発明の飲食物におけるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン等の五環性トリテルペン類は、元来、概して脂溶性の物質であるので、溶解性の面からも本発明の飲食物として調合油脂や調合油脂加工食品等は好ましい。この様な調合油脂として、特に制限はないが、例えば、天然あるいは人工的に得たマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン等を通常の油脂に溶かし込んで含有させた調合油脂が挙げられ、また、植物種子の圧搾・抽出条件を調整し種子中の五環性トリテルペン類を圧搾・抽出油に高濃度に含有させた調合油脂や、精製条件を調整することで油中に存在するマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン等を残存させた調合油脂等が挙げられる。また、該五環性トリテルペン類高含有油脂と他の油脂を混合することもでき、この場合、該他の油脂に含まれる微量成分の生理活性効果との相乗効果を期待することができる。
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンは油糧原料である植物からも得られることから、製造の点からも調合油脂は好ましいといえ、更にこの調合油脂の加工品であるマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシング等の調合油脂加工品は好ましいといえる。
同様に、本発明の上記調合油脂等を使用した製品も良好である。ここで、使用とは原料として使用することと、揚げ物や炒め物等に使用するいわゆる調合油脂としての使用の双方を示す。
ここで、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン等の飲食物への使用に関して特に制限は無いが、油系の飲食物に対しては、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、あるいはアルコールエステル基を有する誘導体、脂肪酸エステル基を有する誘導体、アルコキシ基を有する誘導体、アルコキシメチル基を有する誘導体が好ましい。これらは、比較的脂溶性であるため、好適に油系の飲食物へ適用することができる。また当然、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンの生理的に許容される塩あるいは配糖体を配合することも可能であるが、この場合には、乳化剤を用いることが好ましい。
また、概して、水系の飲食物に対しては、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンの生理的に許容された塩、あるいは配糖体が好ましい。これらは、比較的水溶性であるため、好適に水系の飲食物へ適用することができる。また当然、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、あるいはその誘導体を配合することも可能であるが、この場合には、乳化剤を用いることが好ましい。
本発明の飲食物を飲食することで、抗腫瘍効果を有するマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を体内に吸収することにより効果を奏する。飲食物という形態であるため、医薬品のような労力も必要なく、継続的に摂取することができるため好ましい。
本発明は、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン、およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を含有する抗腫瘍用飲食物に関する。これらの五環性トリテルペン類は、特に、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果に優れているため、本発明の飲食物により、時間や労力等の負担を必要とせず、簡易に、かつ、継続的に上記抗腫瘍効果を好適に享受することができるので好ましい。また、本発明におけるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリン等は、天然植物から得ることができるため、日常的な使用において安心して使用することができ、また、使用者に対して、精神的な爽快感を与えるため、好ましい。
また、本発明の飲食物のマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を摂取することにより、好適に抗腫瘍効果を得るための所用量は、摂取の形態、対象者の性別、体重、体調等により異なり、特に制限されないが、例えば、0.0001g/日以上、好ましくは0.001g/日以上、さらに好ましくは0.01g/日以上、特に好ましくは0.1g/日以上、さらに特に好ましくは0.5g/日以上、さらに特に好ましくは1g/日以上、最も好ましくは2g/日以上である。
実施例
以下に、実施例を挙げ、本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例に使用した五環性トリテルペンとして、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンについては、試薬として購入した。HPLCグレードのものはそのまま用い、そうでないものは、沸点まで加熱したエタノールに飽和になるまで溶解した後、冷却して再結晶させたものを濾過、乾固して用いた。マスリン酸については、以下に実例を挙げて説明するが、オリーブ植物から抽出、精製し、純度95%であることを確認したものを用いた。
<製造例1>
国内産のオリーブ(Olea europaea L.)の乾燥果実(種子を含む)1kgを破砕し、3Lのヘキサンを加え3時間抽出した。これを4度繰り返した脱脂果実(脱脂粕)について、種子を除去した後、粉砕し、再度5倍量のヘキサンで3時間抽出することで、完全に油分を除去した脱脂粕229gを得た。この脱脂粕に10倍量のエタノール含量が60質量%の含水エタノール水溶液を加え、室温で激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固して抽出物112.7gを得た。
この抽出物100gに、水2Lを加え、室温で1時間、激しく攪拌した。全量を遠心分離で処理した後、上澄みはデカンテーションにより除去し、残った沈殿を乾燥して濃縮物10.0gを得た。
次にこの濃縮物を、約40倍量(400g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画した。まず、充填したゲルの10倍量(4000mL)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(1000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの10倍量(4000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物を1.96g得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を、約30倍量(60g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(600mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(1800mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールを除去後、真空乾燥し精製マスリン酸1を1.51g得た。
ここで、NMR、MS及びGCでの解析から、この精製マスリン酸1は、その一部がナトリウム塩およびカリウム塩の状態で、残りの大部分が遊離酸の状態であり、マスリン酸としての純度が95%以上であることを確認した。
<製造例2>
イタリア産のオリーブ(Olea europaea L.)を搾油し得られた搾油残査(搾油粕)500gに、10倍量のエタノール含量が65質量%の含水エタノール水溶液を加え、室温で激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固し抽出物を20.2g得た。
この抽出物に、n−ブタノール1L、水1Lを加えて10分間攪拌した後、n−ブタノール相と水相に分けた。n−ブタノール相のn−ブタノールを除去後、真空乾燥し濃縮物を13.3g得た。
次にこの濃縮物を、約40倍量(500g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分画した。まず、充填したシリカゲルの10倍量(5000mL)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(1250mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したシリカゲルの10倍量(5000mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物を2.66g得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を、約30倍量(80g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(800mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(2400mL)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールを除去後、真空乾燥し精製マスリン酸2を2.06g得た。
ここで、NMR、MS及びGCでの解析から、この精製マスリン酸2は、その一部が遊離酸の状態で、残りの大部分がナトリウムやカリウム等の塩の状態であり、マスリン酸としての純度が97%以上であることを確認した。
<製造例3>
オリーブ油製造工程で得られるイタリア産のオリーブの抽出残渣(搾油残渣をさらに抽出工程で処理した脱脂粕)1kgに、10倍量のエタノールを加え、55℃に加温して激しく攪拌しながら3時間抽出した。全量をろ過後、ろ液を濃縮乾固して、抽出物35gを得た。
次にこの抽出物を、約40倍量(1400g)のシリカゲルを充填したカラムを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供した。まず、充填したシリカゲルの約10倍量(14L)のヘキサン:酢酸エチル=3:1の溶離液で、雑多な不要分を溶出させた後、さらに2.5倍量(3500mL)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で、雑多な不要分を溶出させ、さらに、充填したシリカゲルの10倍量(14L)のヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液で、目的とするマスリン酸を溶出させて、粗マスリン酸画分を得た。この画分からヘキサンおよび酢酸エチルを除去後、真空乾燥し粗マスリン酸分画物5.90gを得た。
さらにこの粗マスリン酸分画物を焼く30倍量(180g)のオクタデシルシリカゲルを充填したカラムを用いたODSカラムクロマトグラフィーで精製した。まず、充填したゲルの10倍量(1800ml)のメタノール:水=8:2の溶離液で雑多な不要分を溶出させた。続いて充填したゲルの30倍量(5400ml)のメタノール:水=8:2の溶離液で目的とするマスリン酸を溶出させて、精製マスリン酸画分を得た。この画分からメタノールおよび水を除去後、真空乾燥し精製マスリン酸3を5.36g得た。
ここで、NMR、MS等の解析から、この精製マスリン酸3は、この精製マスリン酸1は、その一部がナトリウム塩およびカリウム塩の状態で、残りの大部分が遊離酸の状態であることを確認した。また、これらの純度をGCで測定し、マスリン酸としての純度が97%以上であることを確認した。
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンの誘導体としては、以下のようにして得た。
<合成例1> マスリン酸エチル
マスリン酸4.5gとトリエチルアミン1.0gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.2gを加え、トリエチルアミン1.0gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、マスリン酸エチルエステルを3.5g得た。
<合成例2> 2,3−O−ジ−アセチル−マスリン酸
マスリン酸2.0gをピリジン100mLに溶解し、無水酢酸50mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−アセチル−マスリン酸を2.2g得た。
<合成例3> 2,3−O−ジ−トリエチルシリル−マスリン酸トリエチルシリルエステル
マスリン酸1.0gを無水ジメチルフォルムアミド200mLに溶解し、イミダゾール144.0mgおよびトリエチルシリルクロライド350μLを0℃で加え、密栓して2時間攪拌した。ジメチルフォルムアミドを溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−トリエチルシリル−マスリン酸トリエチルシリルエステルを1.5g得た。
<合成例4> 2,3−O−ジ−ステアロイル−マスリン酸エチル
合成例1で得たマスリン酸エチル1.0gを無水トルエン50mLに溶解し、トリエチルアミン5.0gを加え、さらにステアリン酸クロライド6.0gを氷冷下で徐々に添加しながら、1時間攪拌し、徐々に室温に戻しながら9時間攪拌した。1N塩酸水溶液を適量加え、エーテルで抽出し、エーテル相はさらに飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、2,3−O−ジ−ステアロイル−マスリン酸エチルを1.2g得た。
<合成例5> 3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオール
エリトロジオール5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオールを5.4g得た。
<合成例6> ウルソール酸エチル
ウルソール酸5.0gとトリエチルアミン1.1gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.2gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.5gを加え、トリエチルアミン1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ウルソール酸エチルエステルを3.8g得た。
<合成例7> 3,28−O−ジ−アセチル−ウバオール
ウバオール5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−ウバオールを5.1g得た。
<合成例8> ベツリン酸エチル
ベツリン酸5.0gとトリエチルアミン1.1gをクロロホルム50mLに溶解し、塩化チオニル1.2gをクロロホルム10mLに溶解したものを、氷冷下、滴下しながら、1時間攪拌した。続いて、エタノール3.5gを加え、トリエチルアミン1.1gをクロロホルム10mLに溶解したものを氷冷下、滴下しながら、3時間攪拌した。反応終了後、クロロホルム溶解分を抽出し、クロロホルムを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、ベツリン酸エチルエステルを3.4g得た。
<合成例9>
3,28−O−ジ−アセチル−ベツリン
ベツリン5.0gをピリジン250mLに溶解し、無水酢酸100mLを加え、一晩攪拌した。ピリジン及び無水酢酸を溜去した後、残留物をエーテルに溶かし、このエーテル相を1N塩酸水溶液で一回、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で一回、純水で3回洗浄した後、硫酸マグネシウムを加えて一晩放置した。濾過により硫酸マグネシウムを除去し、エーテルを溜去して得た粗反応物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、3,28−O−ジ−アセチル−ベツリンを5.7g得た。
実施例1 腫瘍細胞増殖抑制試験および腫瘍細胞死滅試験
腫瘍細胞増殖抑制試験および腫瘍細胞死滅試験は以下の方法で行った。6穴プレートに培地を2ml/well取り、B−16メラノーマ細胞を所定量播種し、37℃、二酸化炭素濃度5%にて静置、培養した。翌日、所定濃度になる様に検体試料調製液を添加混和し、培養を継続した。培養5日目に培地を交換し、再度検体調製液を添加した。翌日、培地を除き、細胞を回収しPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄後、生存細胞数をカウントし、細胞増殖率を下記式1から算出した。この細胞増殖率から腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果の評価を行った。検体試料無添加での細胞増殖率(コントロール)と比較した。
細胞増殖率(%)=(A÷B)×100 (1)
A:各検体添加における生存細胞数
B:コントロールの生存細胞数
マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を表1の記載の各濃度になるように添加し、細胞培養を行った時の細胞増殖率から評価を行った。また、比較としてオレアノール酸、β−アミリン、α−アミリン、ルペオールを添加した場合の細胞増殖率を同様に算出し評価を行った。結果を下表1に示す。
表1から、比較としたβ−アミリン、α−アミリン、ルペオールには全く腫瘍細胞増殖抑制効果はなかった。また、発癌プロモーター抑制活性を有するオレアノール酸は高濃度においてようやく非常に弱い腫瘍細胞増殖抑制効果を発現するのみであった。これに対して、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の腫瘍細胞増殖抑制効果は非常に強いことが分かった。また、特にマスリン酸、ウルソール酸およびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体においては、腫瘍細胞増殖抑制効果を発揮する濃度の2倍以上で、非常に強い腫瘍細胞死滅効果を発揮した。これは、オレアノール酸、β−アミリン、α−アミリン、ルペオールには全く見られない効果であった。
これにより、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、非常に優れた腫瘍細胞増殖抑制効果および腫瘍細胞死滅効果を有することが明らかになった。
実施例2 悪性黒色腫転移抑制試験
悪性黒色腫転移抑制試験は以下の方法で行った。C57BL16雌マウス(6週齢、平均体重25g)をAIN−93組成の粉末調製飼料で1週間予備飼育した後、平均体重が均等になるように5群(1群8匹)に分け、あらかじめ調製してあったB16メラノーマ細胞の懸濁液を、各マウスに静脈注射した。この日を0日目として、各群のマウスには、表2および表3に示した飼料を自由摂取させた。ただし、全量が100に満たない場合、不足分はコーンスターチで補った。B16メラノーマ細胞注射後29日目に肺を摘出し、肺に転移した転移癌病巣数をカウントした結果から、転移抑制率を下記式2から算出した。この転移抑制率から腫瘍細胞転移抑制効果の評価を行った。
転移抑制率(%)=(D−C)÷D×100 (2)
C:各群における転移癌病巣数平均
D:コントロール群での転移癌病巣数平均
綿実油をコントロールとしてマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体について、表3に記載の投与量により転移抑制率の評価を行った。また、比較としてオレアノール酸を添加した場合の転移抑制率の評価を同様に行った。評価結果を下表3に示す。
表3から明らかなように、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体は、コントロール群と比較して、有意に(P<0.05)肺への癌の転移を抑制した。オレアノール酸の投与では顕著な効果が見られなかった。
この結果から、マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を経口摂取することにより、非常に有効な腫瘍細胞転移抑制効果を享受できることが明らかとなった。
以下に、本発明における飲食物の例を記載する。飲食物の種類、それらに含まれるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体の含量等は、以下に限定されるものではない。
実施例3 食用調合油脂
精製マスリン酸1 5.0g
EXV.オリーブ油 1000.0g
上記配合比率にて、EXV.(エキストラバージン)オリーブ油に精製マスリン酸1を添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例4 ドレッシング
水 46.6g
キサンタンガム 0.1g
果糖ぶどう糖液糖 5.0g
食塩 5.0g
MSG 0.3g
米酢(酸度10%) 10.0g
こしょう 適量
製造例2の精製マスリン酸2 1.0g
大豆サラダ油 32.0g
上記配合比率にて、まず大豆サラダ油を除く原材料を、攪拌機付きの加温可能な容器に投入し、プロペラ攪拌機を用いて100rpmで攪拌しながら品温が90℃になるまで加熱し、品温を90℃に保持しながら25分間攪拌を行った。その後、品温が20℃になるまで冷却して大豆サラダ油と合わせてドレッシングを得た。
実施例5 清涼飲料
合成例5の3,28−O−ジ−アセチル−エリトロジオール 0.5g
ハチミツ 15.0g
クエン酸 0.1g
dl−リンゴ酸 0.1g
D−ソルビトール液(70%) 10.0g
安息香酸ナトリウム 0.1g
香料 適量
精製水 全量100gとする残余
上記原料を均一に混合し、健康用飲料を得た。
実施例6 シリアル食品
合成例7の3,28−O−ジ−アセチル−ウバオール 15.0g
小麦粉 30.0g
脱脂大豆 18.5g
小麦ふすま 15.0g
小麦胚芽 11.5g
グラニュー糖 10.0g
上記配合比率にて混合したものを、加水、成型し、オーブンで加熱乾燥して、球形状のシリアル食品を得た。
実施例7 食用調合油脂
製造例3の精製マスリン酸3 10.0g
EXV.オリーブ油 1000.0g
上記配合比率にて、EXV.(エキストラバージン)オリーブ油に精製マスリン酸3を添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例8 食用調合油脂
製造例1の精製マスリン酸1 5.0g
大豆油 1000.0g
上記配合比率にて、大豆油に精製マスリン酸1を添加し、60℃の温度を保ちながら、攪拌機を用いて全体が清澄になるまで十分に混合、溶解を行い、食用調合油脂を製造した。
実施例9 マーガリン
菜種油 42.0g
菜種硬化油 42.0g
水 14.0g
食塩 0.5g
レシチン 0.5g
モノグリセリド 0.4g
製造例1の精製マスリン酸1 0.6g
香料 適量
カロチン 微量
上記原料を常法により混合し、コンビネーターを用い急冷混捏処理してマーガリンを得た。
実施例10 マヨネーズ
大豆サラダ油 74.0g
水 8.4g
砂糖 1.0g
グルタミン酸ナトリウム 0.3g
粉末マスタード 0.3g
食塩 1.0g
米酢 4.0g
製造例2の精製マスリン酸2 1.0g
加塩卵黄 10.0g
上記配合比率にて、まず大豆サラダ油、加塩卵黄を除く原材料を、混合攪拌しながら90℃まで加熱し、90℃に保持しながら25分間攪拌を行った。20℃まで冷却した後、大豆サラダ油、加塩卵黄を合わせて減圧下で撹拌し、マヨネーズを得た。
本発明の飲食物によれば、時間や労力等の負担を必要とせず、簡易に、かつ、継続的に、特定の五環性トリテルペン類であるマスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体を摂取することができるため、その結果として、腫瘍細胞増殖抑制効果、腫瘍細胞死滅効果、腫瘍細胞転移抑制効果等の抗腫瘍効果を好適に享受することができる。また、本発明における特定の五環性トリテルペン類は、天然から得ることができるため、それらの使用は、安心感があるといえる。
Claims (18)
- マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を有効成分として含有する抗腫瘍用飲食物。
- マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を有効成分として含有する腫瘍細胞増殖抑制用飲食物。
- マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を有効成分として含有する腫瘍細胞死滅用飲食物。
- マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物を有効成分として含有する腫瘍細胞転移抑制用飲食物。
- マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩が天然物から単離されたものである請求項1〜4のいずれか1項記載の飲食物。
- マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体から選ばれる化合物の含有量が、飲食物の全質量を基準として0.5質量%以上である請求項1〜4のいずれか1項記載の飲食物。
- マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンの誘導体が、アルコールエステル基又は脂肪酸エステル基を有する誘導体である請求項1〜4のいずれか1項記載の飲食物。
- 飲食物が加工食品である請求項1〜4のいずれか1項記載の飲食物。
- 加工食品が調合油脂または油脂加工品である請求項8に記載の飲食物。
- 油脂加工品がマーガリン、ショートニング、マヨネーズ又はドレッシングである請求項9記載の飲食物。
- 飲食物が清涼飲料である請求項1〜4のいずれか1項に記載の飲食物。
- 前記マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸又はベツリンの一部または全部がその生理的に許容される塩および/またはその誘導体の状態で存在する請求項1〜4のいずれか1項記載の飲食物。
- オリーブの脱脂粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を1質量%以上の量で含有する食用調合油脂。
- オリーブの搾油粕をエタノール溶液で抽出処理し、乾燥することにより濃縮し、次いでクロマトグラフィーにかけて精製したマスリン酸を1質量%以上含有するドレッシング。
- マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する腫瘍予防用飲食物。
- マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する腫瘍予防用飲食物としての使用。
- マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する腫瘍治療用飲食物。
- マスリン酸、エリトロジオール、ウルソール酸、ウバオール、ベツリン酸、ベツリンおよびそれらの生理的に許容される塩、またはそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有する腫瘍治療用飲食物としての使用。
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