JPWO2002021517A1 - 磁気ディスク基板及び磁気ディスク - Google Patents
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Abstract
本発明は、熱可塑性樹脂から形成された磁気ディスク基板及び該磁気ディスク基板上に磁気記録層を形成して成る磁気ディスクに関する。本発明の磁気ディスク基板は、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下であり、浮上ヘッドにより走査した時情報の記録・再生エラーの発生が顕著に抑制され、走査性に優れた磁気ディスクを与えることができる。また、本発明は、このような磁気ディスクの製造方法に関する。
Description
技術分野
本発明は、熱可塑性樹脂から形成された磁気ディスク基板、及び該磁気ディスク基板上に磁性層(磁気記録膜)が形成された磁気ディスクに関する。また、本発明は、熱可塑性樹脂から磁気ディスク基板を製造する方法に関する。
背景技術
コンピュータの外部記憶装置として、ハードディスクやリムーバブル・ハードディスク(例えば、フロッピーディスク、MOディスク)などの磁気ディスクが使用されている。磁気ディスクは、磁性材料を表面に塗布した円盤であって、磁気ヘッドを用いてデータの書き込み、読み取りを行うものである。
コンピュータのハードディスクは、一般に、硬いアルミニウム基板の表面に磁性材料を塗布したものである。ハードディスクは、通常、1枚乃至複数枚が密閉されたケースに収納され、該ケースの中で高速回転させられる。磁気ヘッドは、ハードディスクの表面から僅かに浮いた状態でデータを読み書きする。
このように、ハードディスクは、通常、その表面に近接して浮上している磁気ヘッドにより情報の記録及び再生が行われるものである。このような磁気ヘッドは、「浮上ヘッド」と呼ばれている。磁気ヘッドとハードディスク表面との間の距離は、非常に小さく、通常、数ミクロン以下である。しかも、ハードディスクは、高速回転しているため、ごみの侵入、外部からの衝撃、突然の停電などによって、磁気ヘッドがハードディスク表面に衝突すると、データが消えたり、磁気ヘッドが壊れることがある。当然のことながら、ハードディスクの表面に突起があると、それが微小なものであっても、磁気ヘッドが接触して、エラー発生の原因となる。また、ハードディスク表面の突起の大きさや数によっては、衝突の際の衝撃によって、磁気ヘッドが壊れることがある。
一方、磁気ヘッドは、浮上スライダに搭載され、ハードディスクの表面から僅かに浮揚した状態でデータを記録・再生している。記録・再生時における磁気ヘッドのスペーシング損失を可能な限り抑えるために、磁気ヘッドの浮揚量(ハードディスク表面からの距離)を極限にまで小さくすることが求められており、現在では、浮揚量を従来の数ミクロン程度から50〜70nm程度にまで小さくしたものも知られている。
ハードディスク表面の微小な突起を防止するため、ハードディスクのアルミニウム基板は、平面性及び平滑性が高度に優れていることが要求されている。そのため、アルミニウム基板の製造に際しては、先ず、アルミニウム基板に旋盤加工や加圧焼鈍を施して主面のうねりを取り除いた後、その上に無電解メッキ層を形成し、さらに、メッキ層を研磨して鏡面仕上げを施している。
しかし、このようなアルミニウム基板の加工方法は、煩雑であって、生産性に劣り、コスト低減を困難にしている。しかも、このようなアルミニウム基板は、高記録密度化に対応して、予めサーボマーク形成部に必要な凹凸を設けることができない。
そこで、近年、熱可塑性樹脂材料を用いてハードディスク基板などの磁気ディスク基板を作製することが提案されている。熱可塑性樹脂は、射出成形などの溶融成形加工法により、容易に所望の形状の成形品に成形することができる。しかも、射出成形時に使用する金型やスタンパの表面粗さを小さくしておくことにより、平滑性に優れた成形品を得ることができる。
しかし、熱可塑性樹脂を用いて射出成形しても、実際には、高度の信頼性を有する磁気ディスク基板を得ることは極めて困難であった。
特開平4−170425号公報には、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物であって、揮発成分の含有量が0.3重量%以下、かつ、0.5μm以上の異物の含有量が1×105以下である成形材料を用いてディスク基板を成形することが提案されている。このディスク基板は、揮発成分に起因するボイドやシルバーストリークの発生が抑制されており、異物の含有量も少ないため、光ディスク基板として有用である。ボイドやシルバーストリークは、レーザー光線による光ディスクの信号読取り時のエラーの原因となるが、揮発成分の含有量を低減させることにより、ボイドやシルバーストリークなどの成形不良がなくなり、光ディスクのエラーを低減することができる。
しかし、本発明者らの検討結果によれば、該公報に記載のディスク基板は、光ディスク基板としては有用であるものの、ハードディスクのような磁気ヘッドを近接させて使用する磁気ディスクの基板としては信頼性に問題のあることが判明した。
その理由としては、(1)該公報に具体的に示されている開環重合体水素添加物を260℃で真空乾燥させるという乾燥条件では、低分子量成分を充分に除去することができないこと、(2)該公報の実施例に示されている6×104〜9×104個/gという異物含有量の水準では、ディスク基板表面の微小な突起の発生を充分に防ぐことができないことが挙げられる。
国際公開WO98/08217号公報には、樹脂製のディスク基板であって、浮上ヘッドが走査する面上に高さ50nm以上の突起が形成されていないことを特徴とするディスク基板が提案されている。該公報には、樹脂溶液をフィルターで濾過して、粒径0.5μm以上の粒子の含有量が1×104個/g以下の樹脂を調製し、そして、該樹脂を用いてディスク基板を射出成形する方法が開示されている。
上記公報に記載のディスク基板を用いて製造した磁気ディスクは、浮上ヘッドが走査する面上に微小な突起がないため、従来品に比べて、情報の記録・再生時のエラーが大幅に減少する。しかし、本発明者らの検討結果によれば、該磁気ディスクのエラー発生の抑制効果は未だ不充分であり、さらには、ディスク基板と磁性層との間の密着性が不充分となりやすいことが判明した。
発明の開示
本発明の目的は、熱可塑性樹脂から成形された磁気ディスク基板であって、浮上ヘッドにより走査した時、情報の記録・再生エラーの発生が顕著に抑制され、走査性に優れた磁気ディスクを与えることができる磁気ディスク基板を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記磁気ディスク基板の表面に磁気記録膜を形成してなる走査性に優れた磁気ディスクを提供することにある。
さらに、本発明の目的は、このような優れた特性を有する磁気ディスク基板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、磁気ディスク基板の表面から高さ50nm以上の突起をなくしても、磁気ディスクのエラーの発生をなくすことができない原因は、成形後の磁気ディスク基板から微量に発生するガスにあることを突き止めた。
磁気ディスク基板がガスを発生しやすいものであると、浮上ヘッドの磁気ディスク表面に最も接近する部分に、磁気ディスク基板から発生したガスが付着して固まり、今度は、その固まりが磁気ディスク表面と接触して、浮上ヘッドが振動し、エラーが発生する。
また、磁気ディスク基板から発生したガスが原因となって、磁気ディスク基板と磁気記録膜との間の密着性が低下し、磁気ディスク表面と浮上ヘッドとの衝突時に磁気記録膜が剥がれてエラーとなる。
そこで、本発明者らは、磁気ディスク基板の原料として使用する熱可塑性樹脂から、乾燥条件を工夫するなどして、ガスとなり得る分子量1,000以下の低分子量成分を徹底的に除去することを試みた。その結果、熱可塑性樹脂から形成され、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下の磁気ディスク基板に想到した。このように、一定温度で一定時間保持したときの単位面積当たりのガス発生量が特定量以下となるように制御した磁気ディスク基板を用いてハードディスクなどの磁気ディスクを製造すると、浮上ヘッドを磁気ディスク表面に近接させて走査させても、エラーの発生を顕著に抑制することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成されるに至ったものである。
かくして、本発明よれば、熱可塑性樹脂から形成され、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板が提供される。
また、本発明によれば、前記磁気ディスク基板の上に磁気記録膜を形成して成る磁気ディスクが提供される。
さらに、本発明によれば、熱可塑性樹脂からなる磁気ディスク基板の製造方法において、
(1)熱可塑性樹脂として脂環式構造含有重合体樹脂を使用し、該脂環式構造含有重合体樹脂の有機溶媒溶液を減圧下に加熱することにより、乾燥するとともに分子量1,000以下の低分子量物を除去する工程、
(2)得られたペレットを加熱、減圧、または減圧下の加熱により乾燥する工程、及び
(3)乾燥ペレットを用いて磁気ディスク基板を成形する工程
を含む一連の工程により、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板を得ることを特徴とする磁気ディスク基板の製造方法が提供される。
発明を実施するための最良の形態
1.磁気ディスク基板
(I)ガス発生量
本発明の磁気ディスク基板は、熱可塑性樹脂から形成され、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板である。磁気ディスク基板のガス発生量は、好ましくは80μg/cm2以下、より好ましくは60μg/cm2以下である。ガス発生量は、多くの場合50μg/cm2以下、さらには30μg/cm2以下にまで低減させることができる。ガス発生量が20μg/cm2以下の場合に、基板の平滑性の点で、特に優れた結果を得ることができる。
磁気ディスク基板の単位面積当たりのガス発生量が上記範囲にあるときに、該磁気ディスク基板に磁気記録膜を形成して磁気ディスクを製造した場合、磁気記録膜の剥離が生じたり、浮上ヘッドと磁気ディスク表面とが接触することがなく、磁気ディスクのエラーの発生をなくすことができる。ガス発生量が多すぎると、磁気ディスク基板から発生したガスが浮上ヘッドの先端部に付着して固化し、固化物が浮上ヘッドの走査時に磁気ディスク表面と接触するおそれが生じる。また、ガス発生量が多すぎると、磁気ディスク基板と磁気記録膜との間の密着性が低下する。
磁気ディスク基板からのガス発生量の測定は、ダイナミック・ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィ・マススペクトロメトリー法(DHS−GC−MS法)にて行うことができる。この方法を適用する場合、磁気ディスク基板から発生するガスは、固体吸着剤で捕集した後、濃縮してからDHS−GC−MS装置の試料注入口に注入する。
(II)低分子量成分
磁気ディスク基板から発生するガスは、熱可塑性樹脂中に含まれる各種低分子量成分である。このような低分子量成分としては、未反応モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、樹脂分解物、添加剤、添加剤の分解物、有機溶媒、水、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。低分子量成分としては、分子量が1,000以下であって、温度90℃、常圧にて気体となるものが代表的なものである。
より具体的に、分子量1,000以下の低分子量成分としては、(i)樹脂を製造する際に残留する未反応のモノマー成分、(ii)オリゴマー成分(例えば、重合度が10以下のもの)、(iii)分子量1,000以下の低分子量ポリマー成分、(iv)樹脂の分解物、(v)樹脂の合成時に使用する有機溶媒、(vi)樹脂製造時や保存時に混入する水分、(vii)添加剤とその分解物などが挙げられる。
低分子量成分の分子量は、通常、シクロヘキサンを溶剤とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリイソプレン換算値として測定した重量平均分子量(Mw)である。
熱可塑性樹脂中に含まれる低分子量成分は、熱可塑性樹脂の種類(モノマーの種類)、添加剤の種類、有機溶媒の種類などによって異なる。低分子量成分には、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンのようなアルカン;エタノール、プロパノール、ブタノールのようなアルコール;エーテル;ジオクチルフタレートなどのエステル;ギ酸、酢酸などの有機酸;メチルクロライド、ジクロロベンゼンのようなハロゲン化有機合物;ジメチルシロキサンのようなシリコーン;ノルボルネン系化合物及びその酸化物;シクロヘキシル基含有化合物;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン;などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
熱可塑性樹脂は、分子量1,000以下の低分子量成分の含有量が2重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。多くの場合、低分子量成分の含有量が0.5重量%以下の熱可塑性樹脂を用いることにより、極めて良好な結果を得ることができる。
(III)形状
本発明の磁気ディスク基板は、センターホールを有する円盤形状である。本発明の磁気ディスク基板の直径は、通常10〜500mm、好ましくは30〜200mmであり、その厚みは、通常0.1〜50mm、好ましくは0.2〜5mmである。
(IV)その他の特性
本発明の磁気ディスク基板は、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下であることに加えて、少なくとも浮上ヘッドが走査する面上に、高さ50nm以上の突起が存在しないものであることが好ましい。
そのためには、粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下に制御した熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。このように、粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下に制御した熱可塑性樹脂を用いて磁気ディスク基板を成形すると、磁気ディスク基板中に含有される粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下とすることができ、それによって、高さ50nm以上の突起が実質的に形成されていない磁気ディスク基板を得ることができる。
本発明の磁気ディスク基板は、磁気記録膜との密着性に優れているだけではなく、浮上ヘッドの走査面上に、信号の記録及び/または再生のエラーとなる凹みが極めて少ないものでもある。エラーの原因となる凹みは、上方から観察したときの最大幅が1μm以上であり、深さが20nm以上である凹状の表面欠陥である。該凹みが走査面上に存在すると、浮上ヘッドと基板表面との距離が変化するため、エラーの原因となる。
深さ20nm以上の凹みの数は、磁気ディスク基板の表面に磁気記録膜を形成してから測定することにより、より正確に測定することができる。即ち、磁気ディスクの磁気記録膜の表面を浮上ヘッドで走査し、エラー発生箇所をビットエラー解析器で調べる。次いで、エラー発生箇所を走査型プローブ顕微鏡にて解析し、深さが20nm以上の凹み数をカウントする。この凹み数は、浮上ヘッドの走査面全面についてカウントした値である。磁気ディスク基板表面の深さ20nm以上の凹み数は、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下、特に好ましくは10個以下である。本発明によれば、深さ20nm以上の凹み数を8個以下、さらには5個以下にまで低減することができる。
2.熱可塑性樹脂
(I)熱可塑性樹脂の種類
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、磁気ディスク基板を成形できるものであれば特に限定はなく、その具体例としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート樹脂(PC);ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンなどの芳香族系エンジニアリング樹脂;ポリメチル−1−ペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂;ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、モノ環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体などの脂環式構造含有重合体樹脂;等を挙げることができる。
これらの中でも、磁気ディスク基板の寸法精度の観点から、PMMA、PC、及び脂環式構造含有重合体樹脂が好ましく、さらに、耐熱性及び低吸水性の観点から、脂環式構造含有重合体樹脂がより好ましい。
(II)脂環式構造含有重合体樹脂
本発明において好ましく使用される脂環式構造含有重合体樹脂は、主鎖及び/または側鎖に脂環式構造を有するポリマーである。機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。
環は、単環であっても縮合環であってもよい。環を構成する炭素原子数は、機械強度、耐熱性、成形加工性の観点から、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。
脂環式構造含有重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が上記範囲内にあることが、得られる磁気ディスク基板の透明性及び耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有重合体樹脂の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体などが挙げられる。
これらの中でも、ノルボルネン系重合体及びビニル脂環式炭化水素重合体が好ましく、さらに、耐熱性及び機械強度の観点から、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
ノルボルネン系重合体として、例えば、特開平3−14882号公報や、特開平3−122137号公報などに開示されている公知の重合体を使用することができる。より具体的には、(i)ノルボルネン系モノマーの開環重合体、(ii)ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物、(iii)ノルボルネン系モノマーの付加重合体、(iv)ノルボルネン系モノマーとビニル化合物の付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐光性、耐候性などの観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとビニル化合物の付加共重合体などの熱可塑性飽和ノルボルネン系重合体が好ましく、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物が特に好ましい。
ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、トリメタノドデカヒドロアントラセン、及びこれらの置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、ジメタノオクタヒドロベンゾインデン、ジメタノデカヒドロベンゾインデン、ジメタノデカヒドロフルオレン、及びこれらの置換体;などを挙げることができる。置換基としては、アルキル基、アルキリデン基、アリール基などの炭化水素基;シアノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、カルボキシル基、水酸基などが挙げられる。ノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセンやビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素単量体の重合体及びその水素添加物;スチレンやα−メチルスチレンなどのビニル芳香族単量体の単独重合体の水素添加物(芳香環部分も水素化する);α−オレフィンや共役ジエン等とビニル芳香族単量体との共重合体の水素添加物(芳香環部分も水素化する)などが挙げられる。共重合体としては、ランダム共重合体、擬似ランダム共重合体、ブロック共重合体、傾斜ブロック共重合体など何れも用いることができる。
(III)分子量及びガラス転移温度
本発明で使用される熱可塑性樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択される。脂環式構造含有重合体樹脂の分子量は、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)で測定したポリイソプレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000である。重量平均分子量が上記範囲内であると、得られる磁気ディスク基板の機械強度と成形性が優れる。
本発明で使用される熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、耐熱性の観点から、通常50〜300℃、好ましくは60〜200℃、より好ましくは70〜150℃である。
3.磁気ディスク基板の製造方法
本発明の磁気ディスク基板は、熱可塑性樹脂を用いて成形することにより得ることができる。成形方法としては、一般に、射出成形法が好適に採用される。
(I)低分子量成分の除去法
90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板を得るには、熱可塑性樹脂として、合成により得られた熱可塑性樹脂から低分子量成分を可能な限り除去したものを使用することが好ましい。しかし、低分子量成分を除去することは、容易ではなく、様々工夫を加えることが必要である。
具体的には、以下のような方法を適宜組み合わせて、合成後の熱可塑性樹脂を処理してから使用する方法が挙げられる。
(i)熱可塑性樹脂の有機溶媒溶液を減圧下に加熱して、乾燥するとともに、低分子量成分を除去する方法。
この方法では、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液を、減圧下(常圧以下の圧力)で加熱して、溶媒及び熱可塑性樹脂中に含まれる低分子量成分を蒸発除去することが好ましい(以下、この方法を「直接乾燥法」という)。
(ii)所望により添加される酸化防止剤などの添加剤として、比較的高分子量のものを使用し、その添加量も少なくする方法。
この方法では、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液に、分子量700以上の酸化防止剤を少量添加してから、該反応溶液を減圧下に加熱して、乾燥するとともに、熱可塑性樹脂中に含有される低分子量成分を除去することが好ましい。酸化防止剤を添加することにより、高温での加熱によっても、熱可塑性樹脂の分解を抑制することができる。
(iii)磁気ディスク基板を成形する前に、使用する熱可塑性樹脂からなる成形用材料(典型的には、ペレット)を加熱及び/または減圧して乾燥する方法。
直接乾燥法(i)において、反応溶液などの有機溶媒溶液の加熱温度は、通常270〜340℃、好ましくは275〜330℃の範囲である。加熱温度が低すぎると、熱可塑性樹脂中の低分子量成分や残留溶媒の除去効率が低下する。加熱温度が高すぎると、熱による熱可塑性樹脂の分解を生じるおそれがある。
上記の加熱温度の範囲は、一般に、光ディスク基板用の熱可塑性樹脂を調製する場合よりも高い温度範囲である。加熱温度が高くなると、熱による樹脂の着色が生じるため、光ディスク基板用の熱可塑性樹脂としては、光線透過率の低下の原因となって好ましくない。ところが、磁気ディスク基板用として用いる場合には、加熱時に生じる程度の樹脂の着色は、エラーに全く影響しない。
直接乾燥法において、減圧時の圧力は、通常26.7kPa以下、好ましくは13.4kPa以下、より好ましくは6.7kPa以下である。
直接乾燥法を適用するに際して、加熱温度及び減圧時の圧力を段階的または連続的に変化させて乾燥させることができる。特に、2段階で加熱温度及び/または減圧時の圧力を変化させることが好ましい。2段階での乾燥は、加熱及び減圧可能な溶媒除去装置を2基以上用いることにより容易に実施することができる。溶媒除去装置としては、掻き取り式薄膜蒸発器及び遠心式薄膜蒸発器を用いるのが好ましい。
好ましい2段階乾燥法としては、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液などの有機溶媒溶液を、第1段目として、270〜340℃の温度で、6.7〜26.7kPaの減圧下に加熱することにより、有機溶媒とともに、その他の低分子量物を除去し、次いで、第2段目として、270〜340℃の温度で、6.7kPa未満の減圧下に加熱することにより、残りの低分子量物をさらに除去する乾燥方法を挙げることができる。
直接乾燥法において、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液などの有機溶媒溶液に、分子量700以上の酸化防止剤を添加してから、減圧下に加熱乾燥することが熱可塑性樹脂の分解を抑制する上で好ましい。酸化防止剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.8重量部、より好ましくは0.03〜0.5重量部である。酸化防止剤の添加量が多すぎると、それ自体またはその分解物が低分子量成分となって、ガス発生の原因となるおそれがある。
熱可塑性樹脂中の粒径0.5μm以上の異物粒子の数を低減させるには、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液などの有機溶媒溶液をフィルターで濾過してから、減圧下に加熱して乾燥させることが好ましい。具体的には、合成後の熱可塑性樹脂の反応溶液を、口径1〜5μm程度の口径の大きいフィルターから、口径0.5〜1μmのフィルター、さらには、口径0.2μm程度のフィルターを順次使用して多段階で濾過したり、あるいは、それらの方法と組み合わせるか、または単独でゼータ電位による吸着能を有するフィルターにより濾過する。
濾過後、外部環境から異物が混入しないように密閉系で樹脂溶液を減圧下に加熱して揮発成分の除去を行う。次いで、クリーンルーム内などのクリーン度の高い環境下で、樹脂のペレット化を行う。クリーン度は、クラス1000程度以下、好ましくはクラス100程度以下に厳重に管理することが望ましい。
熱可塑性樹脂からなるペレットなどの成形用材料を成形前に乾燥する方法(iii)が、低分子量成分を除去し、ガス発生量を低減する上で好ましい。ペレットを乾燥するには、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgより低い温度で、26.7kPa以下の減圧下に、0.5時間以上保持して乾燥させることが望ましい。ペレットの加熱温度は、好ましくは(Tg−100℃)〜(Tg−2℃)、より好ましくは(Tg−50℃)〜(Tg−5℃)の範囲である。減圧時の圧力は、好ましくは13.4kPa以下、より好ましくは6.7kPa以下である。ペレットの乾燥は、クリーン度クラス1000程度のクリーンルーム内で行なうことが望ましい。
上記方法によって、分子量1,000以下の低分子量成分の含有量が顕著に低減されたペレットを得ることができる。また、前記各方法を組み合わせることにより、粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下に制御したペレットを得ることができる。
(II)添加剤
熱可塑性樹脂には、各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、酸化防止剤、離型剤、滑剤、耐候安定剤、着色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、軟質重合体、該熱可塑性樹脂以外の樹脂などを挙げることができる。
添加剤は、磁気ディスク基板の表面にブリードしたり、低分子量成分を多量に含むものは好ましくない。添加剤としては、分子量の大きいものを用い、その配合量を少なくすることが好ましい。添加剤の分子量は、好ましくは700以上であり、より好ましくは1,000以上である。添加剤の添加量は、添加剤の種類によっても異なるが、熱可塑性樹脂100重量部に対して、通常0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.8重量部、より好ましくは0.03〜0.5重量部である。
添加剤は、成形時にペレットなどの成形用材料と混合して用いることができるが、低分子量成分を除去する上で、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液などの有機溶媒溶液に添加することが望ましい。
(III)成形方法
熱可塑性樹脂を用いて磁気ディスク基板を成形する方法には、限定はなく、加熱溶融成形法、溶液キャスト法、溶液流延法のいずれを用いてもよいが、大量生産のためには、加熱溶融成形を採用することが好ましい。加熱溶融成形法としては、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などが挙げられるが、基板の寸法精度、反りの防止、表面精度等の観点から、射出成形法を用いることが好ましい。磁気ディスク基板を加熱溶融成形により成形するためには、熱可塑性樹脂をペレット形状にした後に成形するのが好ましい。
磁気ディスク基板のガス発生量は、磁気ディスク基板の成形条件も影響する。射出成形機の種類としては、従来の光ディスク基板用成形機であれば特に制限はない。具体的には、磁気ディスク用スタンパを取り付けた金型を使用して射出成形することが好ましい。
射出成形時の成形温度(樹脂温度)は、熱可塑性樹脂の種類によっても異なるが、脂環式構造含有重合体樹脂を用いる場合には、通常200〜400℃、好ましくは250〜390℃、より好ましくは300〜380℃である。成形温度が上記範囲であると、基板の表面粗度、転写性、機械特性などに優れ、さらには、剪断力や加熱による樹脂の分解が抑えられて、磁気ディスク基板からのガスの発生量を少なくすることができる。金型温度は、通常70〜140℃、好ましくは90〜140℃、より好ましくは90〜130℃である。金型温度が上記範囲であると、磁気ディスク基板の転写性に優れる。
磁気ディスクの成形は、クリーンルーム内等のクリーン度の高い環境下で行うことが望ましい。成形時のクリーン度は、クラス1000程度以下、好ましくはクラス100程度以下に厳重に管理することが好ましい。
上記方法により、熱可塑性樹脂を用いて、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板を得ることができる。また、粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下に制御した熱可塑性樹脂を用いて磁気ディスク基板を成形することにより、磁気ディスク基板中に含有される粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下とすることができる。
本発明の磁気ディスク基板は、ガス発生量が顕著に抑制されていることに加えて、表面の深さ20nm以上の凹み数が少なく、かつ、表面に高さ50nm以上の突起が実質的に形成されていないものであることが好ましい。
4.磁気ディスク
本発明の磁気ディスクは、コンピュータなどの上方処理装置のデータを保存するための磁気記録媒体として使用されるディスクのことである。その具体例として、ハードディスクが挙げられる。
ハードディスクの記録密度は、通常、100メガバイト(MB)以上であり、近年で、1ギガバイト(GB)以上のものも開発されている。ハードディスクの回転速度は、通常3,000〜8,000rpmであり、磁気記録信号の検出は、磁気ディスクの表面に近接して浮上する磁気ヘッドにて行う。
磁気ディスクは、本発明の磁気ディスク基板上に磁気記録膜が設けられているものである。磁気記録膜は、一般に、下地層、磁性層、潤滑剤塗布層で構成されている。
以下に、本発明の磁気ディスク基板とそれを用いた磁気ディスクの具体例を示す。
磁気ディスク基板は、直径が30〜200mm、厚みが0.2〜5mmであることが好ましい。ハードディスクとしては、直径65mm、厚さ1.2mmの円盤状のものが代表的である。磁気ディスク基板は、例えば、記録領域形成部、該記録領域形成部の内周側及び外周側に位置するクランプ部及びランディング部よりなるが、これの構造のものに限定されない。
記録領域形成部は、磁気ディスクとされたとき記録領域となる部分であり、実際にデータを記録する領域が形成されるデータ領域形成部と、アドレス及び記録トラック内位置を制御する(トレッキングする)ためのサーボマークが形成されるサーボマーク形成部とからなっている。
磁気ディスク基板上には、下地層が形成され、さらにその上に、磁性層が形成されている。磁性層が形成された上には、保護膜と潤滑剤塗布層とが形成されている。より具体的に、磁気ディスク基板には、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)などからなる下地層(平均100nm程度の厚み)、CoCrPt、CoPt、CoPd、Co、Pt、Pdなどからなる磁性層(平均60nm程度の厚み)、C、SiO2などからなる保護膜(平均18nm程度の厚み)を順次スパッタ法によって形成する。
スパッタ法としては、例えば、インライン式の静止対向型DCマグネトロンスパッタ装置を用い、磁性層には合金ターゲットを用いて、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中で成膜する。保護膜上には、ディッピングにより、潤滑剤(例えば、モンテカチーニ社製、商品名「Fomblin Z−DOL」)を塗布することができるが、これらの方法に限定されるものではない。
磁気ディスク層構成の具体例を図1に示す。図1は、磁気ディスクの層構成の一例を示す断面図である。磁気ディスク基板1上に、Cr下地層2、CoPtCr層3、Cr中間層4、CoPtCr層5、カーボン(C)からなる保護層6がこの順に形成されている。磁気記録膜の厚みは、通常、約100nm以下である。
実施例
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。これらの実施例及び比較例において、特に断りのない限り「部」及び「%」は、重量基準である。各種物性及び特性の測定法は、次のとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw):
重量平均分子量(Mw)は、シクロヘキサンを溶剤とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、ポリイソプレン換算値として測定した。
(2)水素添加率(%):
ノルボルネン系重合体の主鎖及び芳香環の水素添加率は、1H−NMRにより測定した。
(3)ガラス転移温度:
ガラス転移温度(Tg)は、JIS−K7121に従って測定した。
(4)低分子量成分の分子量
シクロヘキサンを溶剤とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、ポリイソプレン換算値としてノルボルネン系重合体の重量平均分子量(Mw)を測定した。その中で、分子量1,000以下の低分子量成分の含有量は、得られたチャートのポリマーピーク面積を(A)、分子量1,000以下の成分のピーク面積を(B)としたときに、〔(A)+(B)〕に対する(B)の割合(%)として計算により求めた。
(5)ガス発生量:
磁気ディスク基板のガス発生量は、以下の方法により測定した。磁気ディスクを、表面積が一定となるようにカットして試料を作成した。該試料を純度99.999%以上の窒素ガス気流中で90℃で1時間加熱し、試料から発生したガスを固体吸着剤(活性炭チューブ)で捕集濃縮し、ダイナミック・ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィ・マススペクトロメトリー法(DHS−GC−MS法)にて、その吸着量を測定した。
(6)基板上の凹み数:
磁気ディスク基板上の凹みの数は、以下の方法により測定した。磁気ディスク基板上に磁気記録膜を形成して磁気ディスクを得た後、該磁気ディスクを走査する磁気ヘッドの走査面全面のエラー発生箇所をビットエラー解析器(SyntheSye Research社製:BitAlyzer622)を用いて調べた。エラー発生箇所のそれぞれを走査型プローブ顕微鏡(Digital Instrument社製:NanoscopeIIIa)にて解析し、深さが20nm以上の凹みとなっていれば、その数を凹み数としてカウントした。
(7)膜剥離残存率:
磁気ディスク基板表面に磁気記録膜を形成した後、磁気記録膜上に5mm×5mmサイズのメンディングテープを10個所貼り付け、それぞれのテープを剥離したときの膜残存面積を測定し、膜剥離残存率=(膜残存面積/メンディングテープの全接触面積)×100として計算した。
(8)走査性:
記録用磁気ヘッドには、ギャップ長0.6μm、トラック幅3.5μmの誘導型磁気ヘッドを用い、再生用磁気ヘッドには、ギャップ長0.36μm、トラック幅2.5μmのMRヘッドを用い、磁気ヘッド浮上量70nmで磁気ディスクの信号記録・再生を行って信号読取り性(S/N値)を測定し、周速7m/秒で周波数14MHzの信号のS/Nが25dB以上得られればAと評価し、S/N25dB未満はBと評価した。
[実施例1]
I.樹脂の合成
6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン(以下、「MTD」と略記)90%と5−メチル−2−ノルボルネン10%とを含有するノルボルネン系モノマー混合物を、公知の方法により開環重合し、ノルボルネン系開環共重合体を得た。
得られた開環共重合体100部をシクロヘキサン400部に溶解し、得られた溶液に、水素化触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加えた。水素圧力50kg/cm2にて、溶液を攪拌しながら温度200℃まで加熱した後、4時間反応させて、開環共重合体水素添加物(以下、「水素化ポリマー」と呼ぶ)を含む反応溶液を得た。該反応溶液を、ラジオライト#500を濾過床として、圧力2.5kg/cm2で加圧濾過(フンダフイルター、石川島播磨重工社製)を行い、水素化触媒を除去して無色透明な反応溶液を得た。
II.樹脂の処理
上記反応溶液に、酸化防止剤(3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール(分子量=775)を、水素化ポリマー100部に対して、0.05部となる割合で添加した。その後、該反応溶液を金属ファイバー製フィルター(口径3μm、ニチダイ社製)、及びゼータープラスフィルター30H(口径0.5〜1μm、キュノ製)にて順次濾過し、さらに、金属ファイバー製フィルター(口径0.2μm、ニチダイ社製)にて濾過して異物を除去した。
異物除去後の溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びガスの原因となるその他の低分子量成分を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて除去して、水素化ポリマーを回収した。溶媒及び低分子量成分の除去は、2段階に分けて行った。
円筒型濃縮乾燥器の運転条件は、
第1ステップ:温度280℃、圧力13.3kPa(100Torr)、
第2ステップ:温度280℃、圧力0.7kPa(5Torr)
とした。
III.ペレット化
水素化ポリマーは、クラス1000のクリーンルーム内で、濃縮乾燥器に直結したダイから溶融状態で押出し、水冷した後、ペレタイザー(OSP−2、長田製作所製)でペレット化してから回収した。
このペレットを10%のトルエン溶液にして、ガスクロマトグラフィで分析した結果、ペレット中の残留シクロヘキサン量は、測定限界以下であった。
TG/DTA分析による水素化ポリマーの熱分解温度は、442℃であった。水素化ポリマーのGPC分析によるポリスチレン換算分子量は、数平均分子量(Mn)が27,000、重量平均分子量(Mw)が56,000であった。水素化ポリマーのDSC分析により測定したガラス転移温度(Tg)は、140℃であった。ペレットを重クロロホルム溶液として1H−NMRスペクトルにより測定した水素添加率は、ほぼ100%であった。
回収したペレットは、表面を研磨したステンレス製密閉容器に充填して保管した。
IV.ペレットの乾燥
ステンレス製密閉容器に充填して保管したペレットを、クリーン度クラス1000のクリーンルーム内で、真空乾燥器により、圧力5kPa、温度100℃にて4時間予備乾燥した。
V.磁気ディスク基板の成形
ペレットを乾燥器から取り出し、30分以内に、同クリーンルーム内に設置された射出成形機(DISK3、住友重機械工業社製)により、樹脂温度320℃、金型温度120℃にて、直径65mm、厚さ1.2mmの磁気ディスク基板を成形した。金型部分は、クリーン度クラス100の環境に保持され、金型には、平滑な表面(中心線平均粗さRa=1nm)を有するNi製スタンパーを装填した。
このようにして得られた磁気ディスク基板の中心線平均粗さRaは、1.0〜1.1nmであり、スタンパーの表面粗さと実質的に同じであった。この磁気ディスク基板を磁気ディスク装置に組み込み、浮上ヘッドが浮遊量50nmで浮上するように磁気ディスク基板の回転数を制御し、スライダーに取付けたピエゾ素子により、衝突時の加速信号を検出した。その結果、この磁気ディスク基板の表面には、高さ50nm以上の突起のないことが確認された。
また、この磁気ディスク基板から1.5gの試料を切り取り、口径0.2μmカートリッジフィルターにて濾過精製したトルエンに1.5%濃度で溶解し、光散乱式微粒子検出器(KS−58、リオン社製)を用いて該溶液中の粒径0.5μm以上の異物個数を測定した結果、2.3×103個/gであった。
VI.磁気記録膜の形成
ディスクスパッタリング装置C−3010(アネルバ社製)を使用して、上記で得られた磁気ディスク基板上に、クロム(Cr)下地層、コバルト(Co)/白金(Pt)/Crからなる層(CoPtCr層)、Cr中間層、CoPtCr層、カーボンからなる保護膜を順次形成して磁気記録膜とした。磁気記録膜の合計厚さは、90nmであった。
この磁気ディスクを用いて測定した磁気ディスク基板のガス発生量は、10μg/cm2であった。この磁気ディスクを用いて各種物性及び特性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
円筒形濃縮乾燥器の運転条件を、
第1ステップ:温度280℃、圧力13.3kPa、
第2ステップ:温度280℃、圧力0.0kPa(真空状態)
にしたこと以外は、実施例1と同様にして磁気ディスク基板及び磁気ディスクを作製した。この磁気ディスク基板には、高さ50nm以上の突起がなかった。磁気ディスク基板のガス発生量は、2μg/cm2であった。結果を表1に示す。
[実施例3]
円筒型濃縮乾燥器の運転条件を、
第1ステップ:温度270℃、圧力13.3kPa、
第2ステップ:温度270℃、圧力0.0kPa(真空状態)
にしたこと以外は、実施例1と同様に磁気ディスク基板及び磁気ディスクを作製した。この磁気ディスク基板には、高さ50nm以上の突起がなかった。磁気ディスク基板のガス発生量は、60μg/cm2であった。結果を表1に示す。
[比較例1]
円筒形濃縮乾燥器の運転条件を、
第1ステップ:温度260℃、圧力13.3kPa、
第2ステップ:温度265℃、圧力1.3kPa(10Torr)
とし、酸化防止剤として、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量=531)を使用し、その後、ペレットの加熱減圧を行わなかったこと以外は、実施例1同様に磁気ディスク基板及び磁気ディスクを作製した。この磁気ディスク基板には、高さ50nm以上の突起がなかった。磁気ディスク基板のガス発生量は、150μg/cm2であった。結果を表1に示す。
産業上の利用分野
本発明によれば、磁気記録膜の密着性に優れ、データの記録・再生時のエラーの発生がなく、走査性に優れた磁気ディスク基板及び該磁気ディスク基板を用いて得られる磁気ディスクが提供される。また、本発明によれば、このように優れた諸特性を示す磁気ディスク基盤の製造方法が提供される。本発明の磁気ディスク基板及び磁気ディスクは、コンピュータの外部記憶装置であるハードディスクなどとして有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の磁気ディスクの層構成の一例を示す断面略図である。
本発明は、熱可塑性樹脂から形成された磁気ディスク基板、及び該磁気ディスク基板上に磁性層(磁気記録膜)が形成された磁気ディスクに関する。また、本発明は、熱可塑性樹脂から磁気ディスク基板を製造する方法に関する。
背景技術
コンピュータの外部記憶装置として、ハードディスクやリムーバブル・ハードディスク(例えば、フロッピーディスク、MOディスク)などの磁気ディスクが使用されている。磁気ディスクは、磁性材料を表面に塗布した円盤であって、磁気ヘッドを用いてデータの書き込み、読み取りを行うものである。
コンピュータのハードディスクは、一般に、硬いアルミニウム基板の表面に磁性材料を塗布したものである。ハードディスクは、通常、1枚乃至複数枚が密閉されたケースに収納され、該ケースの中で高速回転させられる。磁気ヘッドは、ハードディスクの表面から僅かに浮いた状態でデータを読み書きする。
このように、ハードディスクは、通常、その表面に近接して浮上している磁気ヘッドにより情報の記録及び再生が行われるものである。このような磁気ヘッドは、「浮上ヘッド」と呼ばれている。磁気ヘッドとハードディスク表面との間の距離は、非常に小さく、通常、数ミクロン以下である。しかも、ハードディスクは、高速回転しているため、ごみの侵入、外部からの衝撃、突然の停電などによって、磁気ヘッドがハードディスク表面に衝突すると、データが消えたり、磁気ヘッドが壊れることがある。当然のことながら、ハードディスクの表面に突起があると、それが微小なものであっても、磁気ヘッドが接触して、エラー発生の原因となる。また、ハードディスク表面の突起の大きさや数によっては、衝突の際の衝撃によって、磁気ヘッドが壊れることがある。
一方、磁気ヘッドは、浮上スライダに搭載され、ハードディスクの表面から僅かに浮揚した状態でデータを記録・再生している。記録・再生時における磁気ヘッドのスペーシング損失を可能な限り抑えるために、磁気ヘッドの浮揚量(ハードディスク表面からの距離)を極限にまで小さくすることが求められており、現在では、浮揚量を従来の数ミクロン程度から50〜70nm程度にまで小さくしたものも知られている。
ハードディスク表面の微小な突起を防止するため、ハードディスクのアルミニウム基板は、平面性及び平滑性が高度に優れていることが要求されている。そのため、アルミニウム基板の製造に際しては、先ず、アルミニウム基板に旋盤加工や加圧焼鈍を施して主面のうねりを取り除いた後、その上に無電解メッキ層を形成し、さらに、メッキ層を研磨して鏡面仕上げを施している。
しかし、このようなアルミニウム基板の加工方法は、煩雑であって、生産性に劣り、コスト低減を困難にしている。しかも、このようなアルミニウム基板は、高記録密度化に対応して、予めサーボマーク形成部に必要な凹凸を設けることができない。
そこで、近年、熱可塑性樹脂材料を用いてハードディスク基板などの磁気ディスク基板を作製することが提案されている。熱可塑性樹脂は、射出成形などの溶融成形加工法により、容易に所望の形状の成形品に成形することができる。しかも、射出成形時に使用する金型やスタンパの表面粗さを小さくしておくことにより、平滑性に優れた成形品を得ることができる。
しかし、熱可塑性樹脂を用いて射出成形しても、実際には、高度の信頼性を有する磁気ディスク基板を得ることは極めて困難であった。
特開平4−170425号公報には、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物であって、揮発成分の含有量が0.3重量%以下、かつ、0.5μm以上の異物の含有量が1×105以下である成形材料を用いてディスク基板を成形することが提案されている。このディスク基板は、揮発成分に起因するボイドやシルバーストリークの発生が抑制されており、異物の含有量も少ないため、光ディスク基板として有用である。ボイドやシルバーストリークは、レーザー光線による光ディスクの信号読取り時のエラーの原因となるが、揮発成分の含有量を低減させることにより、ボイドやシルバーストリークなどの成形不良がなくなり、光ディスクのエラーを低減することができる。
しかし、本発明者らの検討結果によれば、該公報に記載のディスク基板は、光ディスク基板としては有用であるものの、ハードディスクのような磁気ヘッドを近接させて使用する磁気ディスクの基板としては信頼性に問題のあることが判明した。
その理由としては、(1)該公報に具体的に示されている開環重合体水素添加物を260℃で真空乾燥させるという乾燥条件では、低分子量成分を充分に除去することができないこと、(2)該公報の実施例に示されている6×104〜9×104個/gという異物含有量の水準では、ディスク基板表面の微小な突起の発生を充分に防ぐことができないことが挙げられる。
国際公開WO98/08217号公報には、樹脂製のディスク基板であって、浮上ヘッドが走査する面上に高さ50nm以上の突起が形成されていないことを特徴とするディスク基板が提案されている。該公報には、樹脂溶液をフィルターで濾過して、粒径0.5μm以上の粒子の含有量が1×104個/g以下の樹脂を調製し、そして、該樹脂を用いてディスク基板を射出成形する方法が開示されている。
上記公報に記載のディスク基板を用いて製造した磁気ディスクは、浮上ヘッドが走査する面上に微小な突起がないため、従来品に比べて、情報の記録・再生時のエラーが大幅に減少する。しかし、本発明者らの検討結果によれば、該磁気ディスクのエラー発生の抑制効果は未だ不充分であり、さらには、ディスク基板と磁性層との間の密着性が不充分となりやすいことが判明した。
発明の開示
本発明の目的は、熱可塑性樹脂から成形された磁気ディスク基板であって、浮上ヘッドにより走査した時、情報の記録・再生エラーの発生が顕著に抑制され、走査性に優れた磁気ディスクを与えることができる磁気ディスク基板を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記磁気ディスク基板の表面に磁気記録膜を形成してなる走査性に優れた磁気ディスクを提供することにある。
さらに、本発明の目的は、このような優れた特性を有する磁気ディスク基板の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、磁気ディスク基板の表面から高さ50nm以上の突起をなくしても、磁気ディスクのエラーの発生をなくすことができない原因は、成形後の磁気ディスク基板から微量に発生するガスにあることを突き止めた。
磁気ディスク基板がガスを発生しやすいものであると、浮上ヘッドの磁気ディスク表面に最も接近する部分に、磁気ディスク基板から発生したガスが付着して固まり、今度は、その固まりが磁気ディスク表面と接触して、浮上ヘッドが振動し、エラーが発生する。
また、磁気ディスク基板から発生したガスが原因となって、磁気ディスク基板と磁気記録膜との間の密着性が低下し、磁気ディスク表面と浮上ヘッドとの衝突時に磁気記録膜が剥がれてエラーとなる。
そこで、本発明者らは、磁気ディスク基板の原料として使用する熱可塑性樹脂から、乾燥条件を工夫するなどして、ガスとなり得る分子量1,000以下の低分子量成分を徹底的に除去することを試みた。その結果、熱可塑性樹脂から形成され、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下の磁気ディスク基板に想到した。このように、一定温度で一定時間保持したときの単位面積当たりのガス発生量が特定量以下となるように制御した磁気ディスク基板を用いてハードディスクなどの磁気ディスクを製造すると、浮上ヘッドを磁気ディスク表面に近接させて走査させても、エラーの発生を顕著に抑制することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成されるに至ったものである。
かくして、本発明よれば、熱可塑性樹脂から形成され、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板が提供される。
また、本発明によれば、前記磁気ディスク基板の上に磁気記録膜を形成して成る磁気ディスクが提供される。
さらに、本発明によれば、熱可塑性樹脂からなる磁気ディスク基板の製造方法において、
(1)熱可塑性樹脂として脂環式構造含有重合体樹脂を使用し、該脂環式構造含有重合体樹脂の有機溶媒溶液を減圧下に加熱することにより、乾燥するとともに分子量1,000以下の低分子量物を除去する工程、
(2)得られたペレットを加熱、減圧、または減圧下の加熱により乾燥する工程、及び
(3)乾燥ペレットを用いて磁気ディスク基板を成形する工程
を含む一連の工程により、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板を得ることを特徴とする磁気ディスク基板の製造方法が提供される。
発明を実施するための最良の形態
1.磁気ディスク基板
(I)ガス発生量
本発明の磁気ディスク基板は、熱可塑性樹脂から形成され、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板である。磁気ディスク基板のガス発生量は、好ましくは80μg/cm2以下、より好ましくは60μg/cm2以下である。ガス発生量は、多くの場合50μg/cm2以下、さらには30μg/cm2以下にまで低減させることができる。ガス発生量が20μg/cm2以下の場合に、基板の平滑性の点で、特に優れた結果を得ることができる。
磁気ディスク基板の単位面積当たりのガス発生量が上記範囲にあるときに、該磁気ディスク基板に磁気記録膜を形成して磁気ディスクを製造した場合、磁気記録膜の剥離が生じたり、浮上ヘッドと磁気ディスク表面とが接触することがなく、磁気ディスクのエラーの発生をなくすことができる。ガス発生量が多すぎると、磁気ディスク基板から発生したガスが浮上ヘッドの先端部に付着して固化し、固化物が浮上ヘッドの走査時に磁気ディスク表面と接触するおそれが生じる。また、ガス発生量が多すぎると、磁気ディスク基板と磁気記録膜との間の密着性が低下する。
磁気ディスク基板からのガス発生量の測定は、ダイナミック・ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィ・マススペクトロメトリー法(DHS−GC−MS法)にて行うことができる。この方法を適用する場合、磁気ディスク基板から発生するガスは、固体吸着剤で捕集した後、濃縮してからDHS−GC−MS装置の試料注入口に注入する。
(II)低分子量成分
磁気ディスク基板から発生するガスは、熱可塑性樹脂中に含まれる各種低分子量成分である。このような低分子量成分としては、未反応モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、樹脂分解物、添加剤、添加剤の分解物、有機溶媒、水、これらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。低分子量成分としては、分子量が1,000以下であって、温度90℃、常圧にて気体となるものが代表的なものである。
より具体的に、分子量1,000以下の低分子量成分としては、(i)樹脂を製造する際に残留する未反応のモノマー成分、(ii)オリゴマー成分(例えば、重合度が10以下のもの)、(iii)分子量1,000以下の低分子量ポリマー成分、(iv)樹脂の分解物、(v)樹脂の合成時に使用する有機溶媒、(vi)樹脂製造時や保存時に混入する水分、(vii)添加剤とその分解物などが挙げられる。
低分子量成分の分子量は、通常、シクロヘキサンを溶剤とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリイソプレン換算値として測定した重量平均分子量(Mw)である。
熱可塑性樹脂中に含まれる低分子量成分は、熱可塑性樹脂の種類(モノマーの種類)、添加剤の種類、有機溶媒の種類などによって異なる。低分子量成分には、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンのようなアルカン;エタノール、プロパノール、ブタノールのようなアルコール;エーテル;ジオクチルフタレートなどのエステル;ギ酸、酢酸などの有機酸;メチルクロライド、ジクロロベンゼンのようなハロゲン化有機合物;ジメチルシロキサンのようなシリコーン;ノルボルネン系化合物及びその酸化物;シクロヘキシル基含有化合物;ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン;などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
熱可塑性樹脂は、分子量1,000以下の低分子量成分の含有量が2重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。多くの場合、低分子量成分の含有量が0.5重量%以下の熱可塑性樹脂を用いることにより、極めて良好な結果を得ることができる。
(III)形状
本発明の磁気ディスク基板は、センターホールを有する円盤形状である。本発明の磁気ディスク基板の直径は、通常10〜500mm、好ましくは30〜200mmであり、その厚みは、通常0.1〜50mm、好ましくは0.2〜5mmである。
(IV)その他の特性
本発明の磁気ディスク基板は、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下であることに加えて、少なくとも浮上ヘッドが走査する面上に、高さ50nm以上の突起が存在しないものであることが好ましい。
そのためには、粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下に制御した熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。このように、粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下に制御した熱可塑性樹脂を用いて磁気ディスク基板を成形すると、磁気ディスク基板中に含有される粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下とすることができ、それによって、高さ50nm以上の突起が実質的に形成されていない磁気ディスク基板を得ることができる。
本発明の磁気ディスク基板は、磁気記録膜との密着性に優れているだけではなく、浮上ヘッドの走査面上に、信号の記録及び/または再生のエラーとなる凹みが極めて少ないものでもある。エラーの原因となる凹みは、上方から観察したときの最大幅が1μm以上であり、深さが20nm以上である凹状の表面欠陥である。該凹みが走査面上に存在すると、浮上ヘッドと基板表面との距離が変化するため、エラーの原因となる。
深さ20nm以上の凹みの数は、磁気ディスク基板の表面に磁気記録膜を形成してから測定することにより、より正確に測定することができる。即ち、磁気ディスクの磁気記録膜の表面を浮上ヘッドで走査し、エラー発生箇所をビットエラー解析器で調べる。次いで、エラー発生箇所を走査型プローブ顕微鏡にて解析し、深さが20nm以上の凹み数をカウントする。この凹み数は、浮上ヘッドの走査面全面についてカウントした値である。磁気ディスク基板表面の深さ20nm以上の凹み数は、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下、特に好ましくは10個以下である。本発明によれば、深さ20nm以上の凹み数を8個以下、さらには5個以下にまで低減することができる。
2.熱可塑性樹脂
(I)熱可塑性樹脂の種類
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、磁気ディスク基板を成形できるものであれば特に限定はなく、その具体例としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、液晶ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート樹脂(PC);ナイロンなどのポリアミド系樹脂;ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンなどの芳香族系エンジニアリング樹脂;ポリメチル−1−ペンテン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂;ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、モノ環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体などの脂環式構造含有重合体樹脂;等を挙げることができる。
これらの中でも、磁気ディスク基板の寸法精度の観点から、PMMA、PC、及び脂環式構造含有重合体樹脂が好ましく、さらに、耐熱性及び低吸水性の観点から、脂環式構造含有重合体樹脂がより好ましい。
(II)脂環式構造含有重合体樹脂
本発明において好ましく使用される脂環式構造含有重合体樹脂は、主鎖及び/または側鎖に脂環式構造を有するポリマーである。機械強度、耐熱性などの観点から、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
脂環式構造としては、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造などが挙げられるが、機械強度、耐熱性などの観点から、シクロアルカン構造が好ましい。
環は、単環であっても縮合環であってもよい。環を構成する炭素原子数は、機械強度、耐熱性、成形加工性の観点から、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲である。
脂環式構造含有重合体樹脂中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が上記範囲内にあることが、得られる磁気ディスク基板の透明性及び耐熱性の観点から好ましい。
脂環式構造含有重合体樹脂の具体例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィンの重合体、(3)環状共役ジエンの重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体などが挙げられる。
これらの中でも、ノルボルネン系重合体及びビニル脂環式炭化水素重合体が好ましく、さらに、耐熱性及び機械強度の観点から、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
ノルボルネン系重合体として、例えば、特開平3−14882号公報や、特開平3−122137号公報などに開示されている公知の重合体を使用することができる。より具体的には、(i)ノルボルネン系モノマーの開環重合体、(ii)ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物、(iii)ノルボルネン系モノマーの付加重合体、(iv)ノルボルネン系モノマーとビニル化合物の付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性、耐光性、耐候性などの観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとビニル化合物の付加共重合体などの熱可塑性飽和ノルボルネン系重合体が好ましく、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物が特に好ましい。
ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ジメタノオクタヒドロナフタレン、トリメタノドデカヒドロアントラセン、及びこれらの置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン、ジメタノオクタヒドロベンゾインデン、ジメタノデカヒドロベンゾインデン、ジメタノデカヒドロフルオレン、及びこれらの置換体;などを挙げることができる。置換基としては、アルキル基、アルキリデン基、アリール基などの炭化水素基;シアノ基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基、ピリジル基、カルボキシル基、水酸基などが挙げられる。ノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ビニル脂環式炭化水素重合体としては、例えば、ビニルシクロヘキセンやビニルシクロヘキサンなどのビニル脂環式炭化水素単量体の重合体及びその水素添加物;スチレンやα−メチルスチレンなどのビニル芳香族単量体の単独重合体の水素添加物(芳香環部分も水素化する);α−オレフィンや共役ジエン等とビニル芳香族単量体との共重合体の水素添加物(芳香環部分も水素化する)などが挙げられる。共重合体としては、ランダム共重合体、擬似ランダム共重合体、ブロック共重合体、傾斜ブロック共重合体など何れも用いることができる。
(III)分子量及びガラス転移温度
本発明で使用される熱可塑性樹脂の分子量は、使用目的に応じて適宜選択される。脂環式構造含有重合体樹脂の分子量は、シクロヘキサン溶液(重合体樹脂が溶解しない場合はトルエン溶液)のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)で測定したポリイソプレン換算の重量平均分子量で、通常5,000〜500,000、好ましくは8,000〜200,000、より好ましくは10,000〜100,000である。重量平均分子量が上記範囲内であると、得られる磁気ディスク基板の機械強度と成形性が優れる。
本発明で使用される熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgは、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、耐熱性の観点から、通常50〜300℃、好ましくは60〜200℃、より好ましくは70〜150℃である。
3.磁気ディスク基板の製造方法
本発明の磁気ディスク基板は、熱可塑性樹脂を用いて成形することにより得ることができる。成形方法としては、一般に、射出成形法が好適に採用される。
(I)低分子量成分の除去法
90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板を得るには、熱可塑性樹脂として、合成により得られた熱可塑性樹脂から低分子量成分を可能な限り除去したものを使用することが好ましい。しかし、低分子量成分を除去することは、容易ではなく、様々工夫を加えることが必要である。
具体的には、以下のような方法を適宜組み合わせて、合成後の熱可塑性樹脂を処理してから使用する方法が挙げられる。
(i)熱可塑性樹脂の有機溶媒溶液を減圧下に加熱して、乾燥するとともに、低分子量成分を除去する方法。
この方法では、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液を、減圧下(常圧以下の圧力)で加熱して、溶媒及び熱可塑性樹脂中に含まれる低分子量成分を蒸発除去することが好ましい(以下、この方法を「直接乾燥法」という)。
(ii)所望により添加される酸化防止剤などの添加剤として、比較的高分子量のものを使用し、その添加量も少なくする方法。
この方法では、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液に、分子量700以上の酸化防止剤を少量添加してから、該反応溶液を減圧下に加熱して、乾燥するとともに、熱可塑性樹脂中に含有される低分子量成分を除去することが好ましい。酸化防止剤を添加することにより、高温での加熱によっても、熱可塑性樹脂の分解を抑制することができる。
(iii)磁気ディスク基板を成形する前に、使用する熱可塑性樹脂からなる成形用材料(典型的には、ペレット)を加熱及び/または減圧して乾燥する方法。
直接乾燥法(i)において、反応溶液などの有機溶媒溶液の加熱温度は、通常270〜340℃、好ましくは275〜330℃の範囲である。加熱温度が低すぎると、熱可塑性樹脂中の低分子量成分や残留溶媒の除去効率が低下する。加熱温度が高すぎると、熱による熱可塑性樹脂の分解を生じるおそれがある。
上記の加熱温度の範囲は、一般に、光ディスク基板用の熱可塑性樹脂を調製する場合よりも高い温度範囲である。加熱温度が高くなると、熱による樹脂の着色が生じるため、光ディスク基板用の熱可塑性樹脂としては、光線透過率の低下の原因となって好ましくない。ところが、磁気ディスク基板用として用いる場合には、加熱時に生じる程度の樹脂の着色は、エラーに全く影響しない。
直接乾燥法において、減圧時の圧力は、通常26.7kPa以下、好ましくは13.4kPa以下、より好ましくは6.7kPa以下である。
直接乾燥法を適用するに際して、加熱温度及び減圧時の圧力を段階的または連続的に変化させて乾燥させることができる。特に、2段階で加熱温度及び/または減圧時の圧力を変化させることが好ましい。2段階での乾燥は、加熱及び減圧可能な溶媒除去装置を2基以上用いることにより容易に実施することができる。溶媒除去装置としては、掻き取り式薄膜蒸発器及び遠心式薄膜蒸発器を用いるのが好ましい。
好ましい2段階乾燥法としては、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液などの有機溶媒溶液を、第1段目として、270〜340℃の温度で、6.7〜26.7kPaの減圧下に加熱することにより、有機溶媒とともに、その他の低分子量物を除去し、次いで、第2段目として、270〜340℃の温度で、6.7kPa未満の減圧下に加熱することにより、残りの低分子量物をさらに除去する乾燥方法を挙げることができる。
直接乾燥法において、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液などの有機溶媒溶液に、分子量700以上の酸化防止剤を添加してから、減圧下に加熱乾燥することが熱可塑性樹脂の分解を抑制する上で好ましい。酸化防止剤の添加量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、通常0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.8重量部、より好ましくは0.03〜0.5重量部である。酸化防止剤の添加量が多すぎると、それ自体またはその分解物が低分子量成分となって、ガス発生の原因となるおそれがある。
熱可塑性樹脂中の粒径0.5μm以上の異物粒子の数を低減させるには、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液などの有機溶媒溶液をフィルターで濾過してから、減圧下に加熱して乾燥させることが好ましい。具体的には、合成後の熱可塑性樹脂の反応溶液を、口径1〜5μm程度の口径の大きいフィルターから、口径0.5〜1μmのフィルター、さらには、口径0.2μm程度のフィルターを順次使用して多段階で濾過したり、あるいは、それらの方法と組み合わせるか、または単独でゼータ電位による吸着能を有するフィルターにより濾過する。
濾過後、外部環境から異物が混入しないように密閉系で樹脂溶液を減圧下に加熱して揮発成分の除去を行う。次いで、クリーンルーム内などのクリーン度の高い環境下で、樹脂のペレット化を行う。クリーン度は、クラス1000程度以下、好ましくはクラス100程度以下に厳重に管理することが望ましい。
熱可塑性樹脂からなるペレットなどの成形用材料を成形前に乾燥する方法(iii)が、低分子量成分を除去し、ガス発生量を低減する上で好ましい。ペレットを乾燥するには、熱可塑性樹脂のガラス転移温度Tgより低い温度で、26.7kPa以下の減圧下に、0.5時間以上保持して乾燥させることが望ましい。ペレットの加熱温度は、好ましくは(Tg−100℃)〜(Tg−2℃)、より好ましくは(Tg−50℃)〜(Tg−5℃)の範囲である。減圧時の圧力は、好ましくは13.4kPa以下、より好ましくは6.7kPa以下である。ペレットの乾燥は、クリーン度クラス1000程度のクリーンルーム内で行なうことが望ましい。
上記方法によって、分子量1,000以下の低分子量成分の含有量が顕著に低減されたペレットを得ることができる。また、前記各方法を組み合わせることにより、粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下に制御したペレットを得ることができる。
(II)添加剤
熱可塑性樹脂には、各種添加剤を含有させることができる。添加剤としては、酸化防止剤、離型剤、滑剤、耐候安定剤、着色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、軟質重合体、該熱可塑性樹脂以外の樹脂などを挙げることができる。
添加剤は、磁気ディスク基板の表面にブリードしたり、低分子量成分を多量に含むものは好ましくない。添加剤としては、分子量の大きいものを用い、その配合量を少なくすることが好ましい。添加剤の分子量は、好ましくは700以上であり、より好ましくは1,000以上である。添加剤の添加量は、添加剤の種類によっても異なるが、熱可塑性樹脂100重量部に対して、通常0.01〜1.0重量部、好ましくは0.02〜0.8重量部、より好ましくは0.03〜0.5重量部である。
添加剤は、成形時にペレットなどの成形用材料と混合して用いることができるが、低分子量成分を除去する上で、熱可塑性樹脂の合成後の反応溶液などの有機溶媒溶液に添加することが望ましい。
(III)成形方法
熱可塑性樹脂を用いて磁気ディスク基板を成形する方法には、限定はなく、加熱溶融成形法、溶液キャスト法、溶液流延法のいずれを用いてもよいが、大量生産のためには、加熱溶融成形を採用することが好ましい。加熱溶融成形法としては、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法などが挙げられるが、基板の寸法精度、反りの防止、表面精度等の観点から、射出成形法を用いることが好ましい。磁気ディスク基板を加熱溶融成形により成形するためには、熱可塑性樹脂をペレット形状にした後に成形するのが好ましい。
磁気ディスク基板のガス発生量は、磁気ディスク基板の成形条件も影響する。射出成形機の種類としては、従来の光ディスク基板用成形機であれば特に制限はない。具体的には、磁気ディスク用スタンパを取り付けた金型を使用して射出成形することが好ましい。
射出成形時の成形温度(樹脂温度)は、熱可塑性樹脂の種類によっても異なるが、脂環式構造含有重合体樹脂を用いる場合には、通常200〜400℃、好ましくは250〜390℃、より好ましくは300〜380℃である。成形温度が上記範囲であると、基板の表面粗度、転写性、機械特性などに優れ、さらには、剪断力や加熱による樹脂の分解が抑えられて、磁気ディスク基板からのガスの発生量を少なくすることができる。金型温度は、通常70〜140℃、好ましくは90〜140℃、より好ましくは90〜130℃である。金型温度が上記範囲であると、磁気ディスク基板の転写性に優れる。
磁気ディスクの成形は、クリーンルーム内等のクリーン度の高い環境下で行うことが望ましい。成形時のクリーン度は、クラス1000程度以下、好ましくはクラス100程度以下に厳重に管理することが好ましい。
上記方法により、熱可塑性樹脂を用いて、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板を得ることができる。また、粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下に制御した熱可塑性樹脂を用いて磁気ディスク基板を成形することにより、磁気ディスク基板中に含有される粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下とすることができる。
本発明の磁気ディスク基板は、ガス発生量が顕著に抑制されていることに加えて、表面の深さ20nm以上の凹み数が少なく、かつ、表面に高さ50nm以上の突起が実質的に形成されていないものであることが好ましい。
4.磁気ディスク
本発明の磁気ディスクは、コンピュータなどの上方処理装置のデータを保存するための磁気記録媒体として使用されるディスクのことである。その具体例として、ハードディスクが挙げられる。
ハードディスクの記録密度は、通常、100メガバイト(MB)以上であり、近年で、1ギガバイト(GB)以上のものも開発されている。ハードディスクの回転速度は、通常3,000〜8,000rpmであり、磁気記録信号の検出は、磁気ディスクの表面に近接して浮上する磁気ヘッドにて行う。
磁気ディスクは、本発明の磁気ディスク基板上に磁気記録膜が設けられているものである。磁気記録膜は、一般に、下地層、磁性層、潤滑剤塗布層で構成されている。
以下に、本発明の磁気ディスク基板とそれを用いた磁気ディスクの具体例を示す。
磁気ディスク基板は、直径が30〜200mm、厚みが0.2〜5mmであることが好ましい。ハードディスクとしては、直径65mm、厚さ1.2mmの円盤状のものが代表的である。磁気ディスク基板は、例えば、記録領域形成部、該記録領域形成部の内周側及び外周側に位置するクランプ部及びランディング部よりなるが、これの構造のものに限定されない。
記録領域形成部は、磁気ディスクとされたとき記録領域となる部分であり、実際にデータを記録する領域が形成されるデータ領域形成部と、アドレス及び記録トラック内位置を制御する(トレッキングする)ためのサーボマークが形成されるサーボマーク形成部とからなっている。
磁気ディスク基板上には、下地層が形成され、さらにその上に、磁性層が形成されている。磁性層が形成された上には、保護膜と潤滑剤塗布層とが形成されている。より具体的に、磁気ディスク基板には、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)などからなる下地層(平均100nm程度の厚み)、CoCrPt、CoPt、CoPd、Co、Pt、Pdなどからなる磁性層(平均60nm程度の厚み)、C、SiO2などからなる保護膜(平均18nm程度の厚み)を順次スパッタ法によって形成する。
スパッタ法としては、例えば、インライン式の静止対向型DCマグネトロンスパッタ装置を用い、磁性層には合金ターゲットを用いて、アルゴン(Ar)ガス雰囲気中で成膜する。保護膜上には、ディッピングにより、潤滑剤(例えば、モンテカチーニ社製、商品名「Fomblin Z−DOL」)を塗布することができるが、これらの方法に限定されるものではない。
磁気ディスク層構成の具体例を図1に示す。図1は、磁気ディスクの層構成の一例を示す断面図である。磁気ディスク基板1上に、Cr下地層2、CoPtCr層3、Cr中間層4、CoPtCr層5、カーボン(C)からなる保護層6がこの順に形成されている。磁気記録膜の厚みは、通常、約100nm以下である。
実施例
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。これらの実施例及び比較例において、特に断りのない限り「部」及び「%」は、重量基準である。各種物性及び特性の測定法は、次のとおりである。
(1)重量平均分子量(Mw):
重量平均分子量(Mw)は、シクロヘキサンを溶剤とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、ポリイソプレン換算値として測定した。
(2)水素添加率(%):
ノルボルネン系重合体の主鎖及び芳香環の水素添加率は、1H−NMRにより測定した。
(3)ガラス転移温度:
ガラス転移温度(Tg)は、JIS−K7121に従って測定した。
(4)低分子量成分の分子量
シクロヘキサンを溶剤とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、ポリイソプレン換算値としてノルボルネン系重合体の重量平均分子量(Mw)を測定した。その中で、分子量1,000以下の低分子量成分の含有量は、得られたチャートのポリマーピーク面積を(A)、分子量1,000以下の成分のピーク面積を(B)としたときに、〔(A)+(B)〕に対する(B)の割合(%)として計算により求めた。
(5)ガス発生量:
磁気ディスク基板のガス発生量は、以下の方法により測定した。磁気ディスクを、表面積が一定となるようにカットして試料を作成した。該試料を純度99.999%以上の窒素ガス気流中で90℃で1時間加熱し、試料から発生したガスを固体吸着剤(活性炭チューブ)で捕集濃縮し、ダイナミック・ヘッドスペース・ガスクロマトグラフィ・マススペクトロメトリー法(DHS−GC−MS法)にて、その吸着量を測定した。
(6)基板上の凹み数:
磁気ディスク基板上の凹みの数は、以下の方法により測定した。磁気ディスク基板上に磁気記録膜を形成して磁気ディスクを得た後、該磁気ディスクを走査する磁気ヘッドの走査面全面のエラー発生箇所をビットエラー解析器(SyntheSye Research社製:BitAlyzer622)を用いて調べた。エラー発生箇所のそれぞれを走査型プローブ顕微鏡(Digital Instrument社製:NanoscopeIIIa)にて解析し、深さが20nm以上の凹みとなっていれば、その数を凹み数としてカウントした。
(7)膜剥離残存率:
磁気ディスク基板表面に磁気記録膜を形成した後、磁気記録膜上に5mm×5mmサイズのメンディングテープを10個所貼り付け、それぞれのテープを剥離したときの膜残存面積を測定し、膜剥離残存率=(膜残存面積/メンディングテープの全接触面積)×100として計算した。
(8)走査性:
記録用磁気ヘッドには、ギャップ長0.6μm、トラック幅3.5μmの誘導型磁気ヘッドを用い、再生用磁気ヘッドには、ギャップ長0.36μm、トラック幅2.5μmのMRヘッドを用い、磁気ヘッド浮上量70nmで磁気ディスクの信号記録・再生を行って信号読取り性(S/N値)を測定し、周速7m/秒で周波数14MHzの信号のS/Nが25dB以上得られればAと評価し、S/N25dB未満はBと評価した。
[実施例1]
I.樹脂の合成
6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン(以下、「MTD」と略記)90%と5−メチル−2−ノルボルネン10%とを含有するノルボルネン系モノマー混合物を、公知の方法により開環重合し、ノルボルネン系開環共重合体を得た。
得られた開環共重合体100部をシクロヘキサン400部に溶解し、得られた溶液に、水素化触媒としてニッケル−アルミナ触媒(日揮化学社製)5部を加えた。水素圧力50kg/cm2にて、溶液を攪拌しながら温度200℃まで加熱した後、4時間反応させて、開環共重合体水素添加物(以下、「水素化ポリマー」と呼ぶ)を含む反応溶液を得た。該反応溶液を、ラジオライト#500を濾過床として、圧力2.5kg/cm2で加圧濾過(フンダフイルター、石川島播磨重工社製)を行い、水素化触媒を除去して無色透明な反応溶液を得た。
II.樹脂の処理
上記反応溶液に、酸化防止剤(3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール(分子量=775)を、水素化ポリマー100部に対して、0.05部となる割合で添加した。その後、該反応溶液を金属ファイバー製フィルター(口径3μm、ニチダイ社製)、及びゼータープラスフィルター30H(口径0.5〜1μm、キュノ製)にて順次濾過し、さらに、金属ファイバー製フィルター(口径0.2μm、ニチダイ社製)にて濾過して異物を除去した。
異物除去後の溶液から、溶媒であるシクロヘキサン及びガスの原因となるその他の低分子量成分を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所製)を用いて除去して、水素化ポリマーを回収した。溶媒及び低分子量成分の除去は、2段階に分けて行った。
円筒型濃縮乾燥器の運転条件は、
第1ステップ:温度280℃、圧力13.3kPa(100Torr)、
第2ステップ:温度280℃、圧力0.7kPa(5Torr)
とした。
III.ペレット化
水素化ポリマーは、クラス1000のクリーンルーム内で、濃縮乾燥器に直結したダイから溶融状態で押出し、水冷した後、ペレタイザー(OSP−2、長田製作所製)でペレット化してから回収した。
このペレットを10%のトルエン溶液にして、ガスクロマトグラフィで分析した結果、ペレット中の残留シクロヘキサン量は、測定限界以下であった。
TG/DTA分析による水素化ポリマーの熱分解温度は、442℃であった。水素化ポリマーのGPC分析によるポリスチレン換算分子量は、数平均分子量(Mn)が27,000、重量平均分子量(Mw)が56,000であった。水素化ポリマーのDSC分析により測定したガラス転移温度(Tg)は、140℃であった。ペレットを重クロロホルム溶液として1H−NMRスペクトルにより測定した水素添加率は、ほぼ100%であった。
回収したペレットは、表面を研磨したステンレス製密閉容器に充填して保管した。
IV.ペレットの乾燥
ステンレス製密閉容器に充填して保管したペレットを、クリーン度クラス1000のクリーンルーム内で、真空乾燥器により、圧力5kPa、温度100℃にて4時間予備乾燥した。
V.磁気ディスク基板の成形
ペレットを乾燥器から取り出し、30分以内に、同クリーンルーム内に設置された射出成形機(DISK3、住友重機械工業社製)により、樹脂温度320℃、金型温度120℃にて、直径65mm、厚さ1.2mmの磁気ディスク基板を成形した。金型部分は、クリーン度クラス100の環境に保持され、金型には、平滑な表面(中心線平均粗さRa=1nm)を有するNi製スタンパーを装填した。
このようにして得られた磁気ディスク基板の中心線平均粗さRaは、1.0〜1.1nmであり、スタンパーの表面粗さと実質的に同じであった。この磁気ディスク基板を磁気ディスク装置に組み込み、浮上ヘッドが浮遊量50nmで浮上するように磁気ディスク基板の回転数を制御し、スライダーに取付けたピエゾ素子により、衝突時の加速信号を検出した。その結果、この磁気ディスク基板の表面には、高さ50nm以上の突起のないことが確認された。
また、この磁気ディスク基板から1.5gの試料を切り取り、口径0.2μmカートリッジフィルターにて濾過精製したトルエンに1.5%濃度で溶解し、光散乱式微粒子検出器(KS−58、リオン社製)を用いて該溶液中の粒径0.5μm以上の異物個数を測定した結果、2.3×103個/gであった。
VI.磁気記録膜の形成
ディスクスパッタリング装置C−3010(アネルバ社製)を使用して、上記で得られた磁気ディスク基板上に、クロム(Cr)下地層、コバルト(Co)/白金(Pt)/Crからなる層(CoPtCr層)、Cr中間層、CoPtCr層、カーボンからなる保護膜を順次形成して磁気記録膜とした。磁気記録膜の合計厚さは、90nmであった。
この磁気ディスクを用いて測定した磁気ディスク基板のガス発生量は、10μg/cm2であった。この磁気ディスクを用いて各種物性及び特性の評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
円筒形濃縮乾燥器の運転条件を、
第1ステップ:温度280℃、圧力13.3kPa、
第2ステップ:温度280℃、圧力0.0kPa(真空状態)
にしたこと以外は、実施例1と同様にして磁気ディスク基板及び磁気ディスクを作製した。この磁気ディスク基板には、高さ50nm以上の突起がなかった。磁気ディスク基板のガス発生量は、2μg/cm2であった。結果を表1に示す。
[実施例3]
円筒型濃縮乾燥器の運転条件を、
第1ステップ:温度270℃、圧力13.3kPa、
第2ステップ:温度270℃、圧力0.0kPa(真空状態)
にしたこと以外は、実施例1と同様に磁気ディスク基板及び磁気ディスクを作製した。この磁気ディスク基板には、高さ50nm以上の突起がなかった。磁気ディスク基板のガス発生量は、60μg/cm2であった。結果を表1に示す。
[比較例1]
円筒形濃縮乾燥器の運転条件を、
第1ステップ:温度260℃、圧力13.3kPa、
第2ステップ:温度265℃、圧力1.3kPa(10Torr)
とし、酸化防止剤として、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(分子量=531)を使用し、その後、ペレットの加熱減圧を行わなかったこと以外は、実施例1同様に磁気ディスク基板及び磁気ディスクを作製した。この磁気ディスク基板には、高さ50nm以上の突起がなかった。磁気ディスク基板のガス発生量は、150μg/cm2であった。結果を表1に示す。
産業上の利用分野
本発明によれば、磁気記録膜の密着性に優れ、データの記録・再生時のエラーの発生がなく、走査性に優れた磁気ディスク基板及び該磁気ディスク基板を用いて得られる磁気ディスクが提供される。また、本発明によれば、このように優れた諸特性を示す磁気ディスク基盤の製造方法が提供される。本発明の磁気ディスク基板及び磁気ディスクは、コンピュータの外部記憶装置であるハードディスクなどとして有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の磁気ディスクの層構成の一例を示す断面略図である。
Claims (20)
- 熱可塑性樹脂から形成され、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板。
- 熱可塑性樹脂が、分子量1,000以下の低分子量成分の含有量が2重量%以下の熱可塑性樹脂である請求項1記載の磁気ディスク基板。
- 低分子量成分が、未反応モノマー、オリゴマー、低分子量ポリマー、樹脂分解物、添加剤、添加剤分解物、水、有機溶媒、またはこれらの混合物を含むものである請求項2記載の磁気ディスク基板。
- 熱可塑性樹脂が、粒径0.5μm以上の粒子の数を1×104個/g以下に制御した熱可塑性樹脂である請求項1記載の磁気ディスク基板。
- 熱可塑性樹脂が、脂環式構造含有重合体樹脂である請求項1記載の磁気ディスク基板。
- 脂環式構造含有重合体樹脂が、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィンの重合体、環状共役ジエン重合体、及びビニル脂環式炭化水素重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂である請求項5記載の磁気ディスク基板。
- ノルボルネン系重合体が、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、及びノルボルネン系モノマーとビニル化合物との付加共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性ノルボルネン系重合体である請求項6記載の磁気ディスク基板。
- ノルボルネン系重合体が、ノルボルネン系モノマーの開環重合体の水素添加物である請求項7記載の磁気ディスク基板。
- 脂環式構造含有重合体樹脂が、10,000〜100,000の範囲の重量平均分子量を有するものである請求項5記載の磁気ディスク。
- 直径30〜200mmで、厚みが0.2〜5mmの円盤である請求項1記載の磁気ディスク基板。
- 磁気ディスク基板中に含有される粒径0.5μm以上の粒子の数が1×104個/g以下である請求項1記載の磁気ディスク基板。
- 浮上ヘッドが走査する面上に存在する深さ20nm以上の凹み数が20個以下である請求項1記載の磁気ディスク基板。
- 請求項1乃至12のいずれか1項に記載の磁気ディスク基板の上に磁気記録膜を形成して成る磁気ディスク。
- 熱可塑性樹脂からなる磁気ディスク基板の製造方法において、
(1)熱可塑性樹脂として脂環式構造含有重合体樹脂を使用し、該脂環式構造含有重合体樹脂の有機溶媒溶液を減圧下に加熱することにより、乾燥するとともに分子量1,000以下の低分子量物を除去する工程、
(2)得られたペレットを加熱、減圧、または減圧下の加熱により乾燥する工程、及び
(3)乾燥ペレットを用いて磁気ディスク基板を成形する工程
を含む一連の工程により、90℃にて1時間保持したときのガス発生量が100μg/cm2以下である磁気ディスク基板を得ることを特徴とする磁気ディスク基板の製造方法。 - 工程(1)において、脂環式構造含有重合体樹脂の有機溶媒溶液として、脂環式構造含有重合体樹脂の合成の反応溶液を用いる請求項14記載の製造方法。
- 工程(1)において、脂環式構造含有重合体樹脂の有機溶媒溶液として、該溶液中に、分子量700以上の酸化防止剤を、該脂環式構造含有重合体樹脂100重量部に対して、0.01〜1重量部の割合で添加した溶液を用いる請求項14記載の製造方法。
- 工程(1)において、脂環式構造含有重合体樹脂の有機溶媒溶液を、270〜340℃の温度で、26.7kPa以下の減圧下に加熱して乾燥させる請求項14記載の製造方法。
- 工程(1)において、脂環式構造含有重合体樹脂の有機溶媒溶液を、第1段目として、270〜340℃の温度で、6.7〜26.7kPaの減圧下に加熱することにより、有機溶媒とともに、その他の低分子量物を除去し、次いで、第2段目として、270〜340℃の温度で、6.7kPa未満の減圧下に加熱することにより、残りの低分子量物をさらに除去する請求項17記載の製造方法。
- 工程(2)において、ペレットを、脂環式構造含有重合体樹脂のガラス転移温度Tgより低い温度で、26.7kPa以下の減圧下に、0.5時間以上保持して乾燥させる請求項14記載の製造方法。
- 工程(3)において、乾燥ペレットを、樹脂温度200〜400℃、金型温度70〜140℃で射出成形して磁気ディスク基板を成形する請求項14記載の製造方法。
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