JPS644600B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の技術分野〕 本発明は配電用変圧器に使用する有底筒状のケ
ースを塗装するに際し使用する塗装方法および塗
装装置に関する。

〔従来技術〕

従来、例えば、配電用変圧器に使用する第１図
に示すような有底筒状のケース１を塗装する場合
は、ケース１の耐食性を向上させる上から、通
常、下塗り塗装と上塗り塗装とによる２重塗装処
理が行なわれている。そして、下塗り塗装処理
は、例えば、ケース１表面をシヨツトブラストお
よび脱脂液による脱脂処理を行つてから、最初に
ケース１内面にスプレー塗装を施し、つづいてケ
ース１外面に流し塗り塗装（これは塗料をケース
１の外面に垂れ流して行う塗装）を行い、次に前
記下塗り塗装の加熱乾燥を行なつて下塗り塗装処
理を終了し、つづいて、前記下塗り塗装の表面
を、例えば、静電塗装処理を施してケース１を塗
装していた。

然るに、前記ケース１の塗装処理において、特
に、下塗り塗装処理は、ケース１内面のスプレー
塗装と、ケース１外面の塗り流し塗装との２工程
で行つていたので、塗装処理および塗膜の乾燥に
時間がかかる欠点があつた。又、ケース１の外面
に波形状の放熱フイン２がある場合、前記の塗り
流し塗装では狭隘な放熱フイン２の内側に塗料を
良好に流し込むことがむつかしく、従つて、放熱
フイン２の内側面に塗装むらが生じやすく、この
ため、上塗り塗装処理を行う前に、放熱フイン２
の内側面をスプレー塗装により補完していたの
で、塗装作業は手間がかかり面倒であつた。更
に、塗り流し塗装においては、塗装後の流下した
塗料を回収して再使用していたので、塗料回収設
備が大掛かりになると共に、スプレー塗装設備も
併設しなければならないので、塗装設備が大型化
し、かつ、設備費用も高額となる欠点があつた。

〔発明の目的〕

本発明は前記の欠点を除去して、変圧器ケース
等有底筒状のケースを、簡単な塗装工程により塗
装むらを生じさせることなく迅速、確実に塗装処
理を行うようにした塗装方法および塗装装置を提
供することにある。

〔発明の概要〕

本発明は耐食性が要求される変圧器等の有底筒
状のケースを脱脂し、これを十分に水洗いを行な
つてから、ケースを高低差のあるコンベア装置に
より所要の傾斜角度で吊下搬送する途中でケース
に付着している水分の水切りを行い、つづいて、
前記ケースの電着槽の電着塗料に全没浸漬させて
電着塗装を施してからこのケースを再度水洗を行
つて加熱乾燥処理を施すことにより、塗装むらを
なくし、しかも耐候性および耐食性に優れた塗装
処理を簡易にかつ確実に行うことができるように
したことを特徴とする。

〔発明の実施例〕

以下本発明の塗装方法および塗装装置について
は第３図の塗装処理工程図を中心にして説明す
る。

先づ、塗装処理を前処理として、例えば、第１
図に示す変圧器のケース１をブラスト装置１０に
よりブラスト加工する。これは鋼粒等を圧縮空気
や遠心投射等により噴射してケース１の内、外両
面のさび落しを行う。次に前記前処理を行つたケ
ース１を第２図に示すようにコンベア装置１１に
吊下げる。ケース１の吊下げに際しては、ケース
１の底部近くに設けたハンガー座３に鋼製棒状の
ハンガー１２を掛止し、ケース１の頭部近くに設
けたハンガー座４には前記ハンガー１２よりやや
寸法を長くした鎖等からなる可撓性の懸吊チエー
ン１３を掛止し、これらハンガー１２および懸吊
チエーン１３はそれぞれコンベア装置１１に吊設
された吊金具１４に掛止される。従つて、ケース
１は第２図に示すよう、底面をやや持ち上げて開
口面を下向きに傾斜（約20゜の傾斜角）させた状
態でコンベア装置１１に吊り下げられて次工程に
底部を進行方向に位置させて搬送する。コンベア
装置１１に吊設したケース１は最初に脱脂装置１
５に移送されて酸あるいはアルカリ液等の脱脂液
を噴射して脱脂洗浄を行つて、ケース１の内、外
両面に付着している汚損物（油脂、金属粉末等）
を除去する。脱脂洗浄後、ケース１は工業用水を
噴射させて脱脂液を洗い落す。前記シヤワー洗浄
を行つたケース１はコンベア装置１１より移動さ
せて純水を満した純水全没浸漬装置１６に全没浸
漬させ、前記シヤワー洗浄により洗浄されなかつ
た汚損物を完全に洗い落すようにする。（全没浸
漬時間は１〜２分程度である）そして、純水によ
る全没浸漬によつてケース１を洗浄するのは、工
業用水に含まれている不純物がケース１に付着し
ていることによつて塗装むらが生じるのを防止す
るためである。全没浸漬を行つたケース１は純水
全没洗浄装置１６から引き上げて再度純水をケー
ス１に噴射させて純水によるシヤワー洗浄を行
う。尚、純水は純水シヤワー洗浄装置１６ａと純
水全没浸漬装置１６に適宜給送され、又、純水シ
ヤワー洗浄で使用された水は純水全没浸漬装置１
６に流入するように配管されている。前記純水に
より洗浄したあとは、ケース１に付着している水
滴およびケース１内に滞留している水を除去す
る。即ち、水切りを行う。この場合、前記純水シ
ヤワー洗浄工程までは、コンベア装置１１により
ケース１はほぼ直線状に搬送されるが、第３図の
ように、ケース１の水切り作業を行う工程では、
コンベア装置１１と一連のコンベア装置１１ａが
大きな傾斜角度で上下方向に波形状に配置されて
ケース１を次工程に吊下搬送するように設けられ
ている。即ち、純水による洗浄を終えたケース１
は、このケース１に付着している水滴やケース１
内に残つている水を除去しやすいように傾斜角度
が、例えば、30〜40゜の範囲で波形状に設けられ
たコンベア装置１１ａにより次工程に搬送され
る。その際、ケース１は大きな傾斜角度に設定さ
れたコンベア装置１１ａより、ケース１の開口面
と底面とが交互に上向きおよび下向きとなつた状
態で搬送されるので、ケース１の表面に付着して
いる水滴やケース１の底部に滞留している水は、
ケース１が次工程に搬送される間に排出除去され
る。このように、ケース１の水切り工程ａが終了
すると、ケース１は電着塗料を満した電着塗装装
置１７に全没浸漬されて電着塗装を行う。ケース
１の電着塗装については第４図によつて説明す
る。図中、１７ａは内面に絶縁ライニングを施し
て電着塗料１７ｂを満した電着槽で、この電着槽
１７ａの上方には水切工程ａに配設されているコ
ンベア装置１１ａと一連のコンベア装置１１ｂ，
１１ｃ，１１ｄが形成されていると共に、前記コ
ンベア装置１１ｂ乃至１１ｄに沿つて給電レール
１８が張設されており、ハンガー１２、懸吊チエ
ーン１３を掛止する吊金具１４に付設した電刷子
１９が給電レール１８と摺動接触することによ
り、ケース１に給電が行なわれる。一方、電着槽
１７ａ内には電極２０がケース１の移動方向に沿
つて配設されており、この電極２０とケース１に
は直流電源装置２１の出力端から電気ケーブル２
２，２３を介して給電が行なわれる。又、電着槽
１７ａの上方に配設された各コンベア装置１１ｂ
乃至１１ｄのうち、ケース１が電着槽１７ａに進
入する側に配設したコンベア装置１１ｂは、ケー
ス１が電着塗料１７ｂ内に余り抵抗を受けること
なく、しかも、電着塗料１７ｂが泡立つのを抑制
しながら進入させることができる角度（約30゜）
で電着槽１７ａ側に傾斜しており、次に、前記コ
ンベア装置１１ｂと一連のコンベア装置１１ｃ
は、ケース１を電着塗料１７ｂ内で全没させて水
平移動できるよう塗料面と平行に設けられてお
り、更に、コンベア装置１１ｃと一連のコンベア
装置１１ｄは、コンベア装置１１ｂと逆方向、即
ち、ケース１を電着槽１７ａから引き上げる方向
に設けられており、その傾斜角度は、コンベア装
置１１ｂとほぼ同角度で設置されている。そし
て、ケース１を電着塗装する場合、コンベア装置
１１ｂにより搬送されたケース１は、コンベア装
置１１ｂの傾斜角度（30゜）からケース１の傾斜
吊下角度（20゜）を差し引いたゆるやかな角度
（10゜）により、傾斜した状態で底面側を電着塗料
１７ｂ面に向けて第４図のように、斜めに傾いて
電着塗料１７ｂ内に進入する。この際、ケース１
は電着塗料１７ｂ内に進入する際に生ずる浮力に
よつて浮き上ろうとするが、棒状のハンガー１２
のケース１との掛止位置がケース１の重心近くに
あるため、ケース１はハンガー１２に受け止めら
れて浮き上りが阻止される。そして、ケース１外
面のほぼ半分の面積が電着塗料１７ｂ内に没入す
ると、ケース１の開口端からその内部に電着塗料
１７ｂが急速に流入し、このケース１がコンベア
装置１１ｃにより水平移動する時点で前記ケース
１は電着塗料１７ｂ内に完全に没入する。する
と、直流電源装置２１の陽極側からケーブル２２
→給電レール１８→電刷子１９→ハンガー１２・
懸吊チエーン１３→ケース１→電着塗料１７ｂ→
電極２０→ケーブル２３→直流電源装置２１の陰
極側に直流電流が流れ、ケース１が全没浸漬され
て電着塗料１７ｂ内を水平移動する間に帯電され
た電着塗料がケース１の内、外両面に電気的に付
着され電着塗装を行う。この結果、ケース１には
放熱フイン２の内側面を含めて電着塗料１７ｂと
接する部分は、ほぼ均一な厚さで塗膜が形成され
る。尚、ケース１の電着塗装時間は約３分間であ
る。電着塗装が終了すると、ケース１はコンベア
装置１１ｃと一体的に形成したコンベア装置１１
ｄにより電着塗料１７ｂ内から引き上げられる。
この際、ケース１はその開口面が下向きの状態で
引き上げられるので、ケース１内の塗料は、コン
ベア装置１１ｄの角度にケース１の傾斜吊下角度
を加えた約50゜の急な傾斜角度でもつてケース１
を引き上げるので、前記塗料を急速に排出する。
電着槽１７ａから急角度で引き上げたケース１は
コンベア装置１１ｄと一連のコンベア装置１１ｅ
により水平移動して、純水シヤワー洗浄装置２４
により純水を噴射させて、塗膜に付着している電
着塗装されない流動性の塗料を洗い流す。純水に
よるシヤワー洗浄を行つてから第２の純水全没浸
漬装置２５に全没浸漬（約１〜２分）させてケー
ス１内、外両面に残存する塗料を除去する。この
あと、再度純水シヤワー洗浄装置２６によりケー
ス１をシヤワー洗浄する。尚、電着塗装後のシヤ
ワー洗浄等に使用される純水は、シヤワー洗浄装
置２６および第２の純水全没浸漬装置２５に直接
給水され、この第２の純水全没浸漬装置２５から
は、電着塗装直後のケース１をシヤワー洗浄する
ためのシヤワー洗浄装置２４に給水される。更
に、電着塗料１７ｂは適宜過装置２７に送られ
て過され、過された塗料は電着槽１７ａに送
られ、塗料と分離された水は第２の純水全没浸漬
装置２５と電着槽１７ａに給送される。又、電着
塗料が不足するようなときは塗料槽２８から適宜
電着槽１７ａに電着塗料が供給される。電着塗装
後の純水による洗浄が終了したあとは、再びケー
ス１に付着している水の水切りを行う。この第２
の水切り工程ｂは、最初の水切り工程ａと同様
に、コンベア装置１１ｅ一連のコンベア装置１１
ｆを高さ方向に30〜40゜の範囲で波形状に配置し、
このコンベア装置１１ｆによりケース１を搬送さ
せて水を排出させる。前記第２の水切り工程ｂの
あと、ケース１を加熱乾燥装置２９により所要温
度（約180℃）で加熱乾燥を行つてケース１の下
塗り塗装処理を終了する。このあと、上塗り塗装
処理として、電着塗装を施したケース１の外面
に、例えば、静電塗装装置やスプレー塗装装置等
からなる上塗り塗装装置３０により上塗り塗装を
施してケース１の塗装処理を完了する。

尚、第３図に２点鎖線で示す部分は洗浄水およ
び電着塗料の流通経路を示す。

又、本発明は変圧器のケースを塗装する実施例
について説明したが、これに類する有底筒状のケ
ースも利用することができる。更に、電着塗装を
行なつたあとの水切り工程ｂは、次工程で行う乾
燥処理の時間を考慮することにより省略しても本
発明は成立する。

〔発明の効果〕

本発明は以上説明したように構成されているの
で、次に示す効果を有する。

(1) 本発明の塗装方法においては、前処理を施し
たケースを工業用水と純水との組合せによつて
ケース表面の不純物を除去した後、ケースに残
存する水分を高低差を利用したケース搬送装置
により搬送して完全に除去してから電着塗装を
行なつてケースの下塗り処理を行うため、ケー
スの下塗り塗装は電着塗装だけの１工程で行う
ことができるので、下塗り塗装を従来に比べて
短時間で行うことができる。しかも、電着塗料
に際し、ケースに残つている水分はその前工程
で完全に除去されているので、残存水分や脱脂
液等によつて塗料が悪影響を受けることは全く
ない。

(2) 又、本発明の塗装装置は、ケースの塗装に先
立つて、洗浄を行なつたケースを傾斜角度を大
きくして波形状に設けられたコンベア装置によ
り、開口面や底面を交互に上下方向に位置させ
て搬送することによつて水切りを行う構造を採
用しているので、本発明装置による水切り工程
は熱源を必要とせず搬送時に行うことができる
ため、ケースの下塗り塗装工程が短縮化でき、
しかも、コンベア装置は、その搬送路を建屋内
の高さ方向の空間を有効利用することができる
ので、塗装装置の設置面積を低減することが可
能となる。その上、ケースの電着塗装に際して
は、ケースを電着塗料内に進入させたり、引き
上げたりするためのコンベア装置の傾斜角度は
いづれもほぼ同角度であるが、ケースはあらか
じめ所定の角度傾斜させてコンベア装置に吊設
されているため、塗料内にケースを進入させる
ときは塗料の泡立ちおよび浮力が生ずるのを極
力抑制してケースの浸漬が可能となり、塗装後
は逆にケースを急角度で引き上げて塗料の排出
を急速に行うことができるので、下塗り塗装工
程で塗装むらが生じるのを防止すると共に、電
着塗装装置上に設けるコンベア装置は、ケース
の進入、引き上げ角度に応じて設ける必要がな
いため、コンベア装置を簡易に製作することが
できる。

以上に説明したように、本発明はケースの下塗
り塗装に電着塗装を施し、この電着塗膜の表面に
上塗り塗装を行う方式を採用しているので、変圧
器ケースの塗装は塗装むらがなく美れいに、しか
も、長寿命となり、かつ経済的に行うことができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に使用する変圧器ケースの斜視
図、第２図はケースをコンベアに吊下げた状態を
示す斜視図、第３図は本発明を実施するための概
略を示す工程図、第４図は電着塗装装置の構成を
説明する説明図である。 １…ケース、１１ａ乃至１１ｆ…ケース搬送用
のコンベア装置、１６，２５…純水全没浸漬装
置、１６ａ，２６…純水シヤワー洗浄装置、１７
…電着塗装装置、ａ，ｂ…水切り工程。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ブラスト加工および脱脂等の前処理を施した
   ケースを、コンベア装置に開口面を所定の角度下
   向きに傾斜させて吊下げた状態で洗浄水により洗
   浄する工程と、前記洗浄を行つたケースを、大き
   な角度で傾斜させ、しかも、その開口面と底面と
   を交互に上下方向に位置させて一定の距離搬送す
   る過程で前記ケースに付着している水分を除去す
   るための水切り工程と、前記水切りを行つたケー
   スを、電着塗料内に底面側からゆるやかな傾斜角
   度で没入させ、引上げ時は開口面を下向きにして
   急角度で電着塗料内から引出して電着塗装を行う
   工程と、電着塗装を行なつたケースを洗浄水によ
   り洗浄する工程と、このあとケースを加熱乾燥さ
   せて上塗り塗装処理を行う工程とからなる変圧器
   ケースの塗装方法。 ２ ケースを、その開口面を所定の角度下向きに
   傾斜させて吊下搬送するコンベア装置を、前記ケ
   ースの洗浄水による洗浄工程と、水切り工程と、
   電着塗装工程と、洗浄水による洗浄工程と、加熱
   乾燥および上塗り塗装工程とにまたがつて連続的
   に配設し、前記水切工程においては、コンベア装
   置を上下方向に大きな傾斜角度で波形状に形成
   し、更に、電着塗装工程においては、コンベア装
   置を、その傾斜角度がケースの電着塗料への没入
   時はゆるやかに、かつ、引上げ時は急角度となる
   ように形成して成る変圧器ケースの塗装装置。