JP6927065B2 - 電着塗装方法及び電着塗装装置 - Google Patents

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本発明は、電着塗装方法及び電着塗装装置に関するものである。
自動車ボディ等に代表される金属部材は、電着塗装される場合があるが、この電着塗装を施す前に、この金属部材を脱脂洗浄した後に化成皮膜(化成処理層)を形成するいわゆる前処理が行われる。
従来の電着塗装の前処理は、金属部材に付着した油分、鉄粉、塵埃などを除去する脱脂洗浄工程と、洗浄された金属部材の表面にリン酸亜鉛系の化成皮膜を形成する化成処理工程とで構成されている。このリン酸亜鉛系化成処理は、熱延鋼板や冷延鋼板等の鋼、亜鉛メッキ鋼板及び一部のアルミニウム合金の表面に耐食性に優れる皮膜を析出させることができる。
ところが、リン酸亜鉛系化成処理は化学的反応によって化成皮膜を形成するため、湖沼や湾などで富栄養化の原因となるリンを含む化成スラッジが必然的に生じてしまい、環境負荷が大きいという問題があった。
そこで、例えば特許文献1に示すように、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の、並びにフッ素を含有し、実質的にリン酸イオンを含有しない化成処理液を化成処理に用いることで、スラッジの発生を抑制し、環境への負荷を少なくすることができる。
特開2004−218073号公報
ところで、特許文献1にあるようなジルコニウム系化成処理液によって形成される化成皮膜は、非結晶質の皮膜であり、リン酸系化成処理液によって形成される化成皮膜と比べて膜厚が薄い。この結果、電着塗装のつきまわり性(被塗物の隅々まで塗膜が形成される能力及び塗膜が均一の厚さに付く能力)が低下し、薄膜の化成皮膜上に形成される電着塗膜層にムラが生じやすくなる。
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、非結晶質の薄膜の化成処理層が形成された被塗物の表面に生じる電着塗膜層のムラを抑制することにある。
上記の目的を達成するために、の発明では、被塗物の表面に化成処理層を形成する化成処理手段と、上記化成処理層が形成された被塗物の表面に電着塗膜層を形成する電着塗装手段とを備える電着塗装装置であって、上記化成処理手段は、化成溶液が貯留された化成槽を有し、被塗物を該化成溶液に浸漬させて該被塗物の表面に非結晶質の薄膜の化成処理層を形成する化成手段を備え、上記電着塗装手段は、第1電着槽を有し、上記化成処理層が形成された被塗物と対極との間に直流電圧を印加して該被塗物に第1電着塗膜を形成する第1電着手段と、上記第1電着塗膜が形成された被塗物の上記対極に近い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗が、上記対極から遠い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗よりも高くなるように、該第1電着塗膜の熱フローを行う熱フロー手段と、第2電着槽を有し、上記第1電着塗膜に熱フローが施された被塗物と対極との間に直流電圧を印加して該被塗物に第2電着塗膜を形成する第2電着手段と、上記第1電着塗膜及び第2電着塗膜を加熱硬化させる硬化手段とを備え、上記電着塗装手段は、上記第1電着手段と上記熱フロー手段との間に、上記第1電着塗膜が形成された被塗物を水洗する水洗手段と、上記水洗手段における水洗用の洗浄水が停滞する、被塗物の略水平になった洗浄水停滞面上の洗浄水を除去又は低減させる洗浄水除去低減手段とをさらに備え、上記洗浄水除去低減手段は、上記洗浄水停滞面から洗浄水が排除されるように該洗浄水停滞面に気体を吹き付けるブローノズルを備え、上記被塗物は、自動車ボディであり、上記洗浄水停滞面は該自動車ボディのルーフであり、上記水洗手段から上記熱フロー手段にわたって延びるガイドレールと、上記ガイドレールに吊り下げられ、上記自動車ボディを搭載して上記水洗手段から上記熱フロー手段に搬送するハンガーとをさらに備え、上記ブローノズルは、上記気体が上記自動車ボディのルーフに吹き付けられるように気体吹出口を下向きにして、上記自動車ボディが上記ハンガーに搭載されて通る場所の上方に配置されており、上記ブローノズルへの気体の供給及びその停止を制御する電磁弁と、上記自動車ボディのルーフが上記ブローノズルの気体吹出口の前方を通過する間に気体が上記ブローノズルに供給され、且つ上記ハンガーを構成するフレームが上記ブローノズルの気体吹出口の前方を横切るときには上記気体の供給が停止するように、上記自動車ボディの搬送位置に応じて、上記電磁弁の動作を制御する制御装置とをさらに備えることを特徴とする。
上記の構成によれば、第1電着槽において、非結晶質の薄膜化成処理層が形成された被塗物と対極との間に直流電圧を印加することで、被塗物の表面に第1電着塗膜が形成される。第1電着塗膜は、対極に近く電流密度が高くなる部位に厚く形成され、対極から遠く電流密度が低くなる部位には薄く形成される。
次いで、第1電着塗膜が形成された被塗物の対極に近い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗が、対極から遠い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗よりも高くなるように、第1電着塗膜の熱フロー行うことで、続く第2電着手段において、対極に近い部位に形成された第1電着塗膜上に比べて、対極から遠い部位に形成された第1電着塗膜上に第2電着塗膜が厚く形成される。
そして、第1電着塗膜に熱フローが施された被塗物と対極との間に直流電圧を印加することで、被塗物に上記のように第2電着塗膜が形成される。この結果、対極に近い部位と対極から遠い部位それぞれの、第1電着塗膜と第2電着塗膜とを合わせた電着塗膜の厚さを所望の厚さにコントロールすることが容易になる。
よって、被塗物の対極に近い部位と対極から遠い部位それぞれの電着塗膜の厚さを容易に所望の厚さにコントロールできるので、非結晶質の薄膜化成処理層が形成された被塗物の表面に生じる電着塗膜層のムラを抑制することができる。
また、上記構成によれば、電着塗装手段が、第1電着手段と熱フロー手段との間に、第1電着塗膜が形成された被塗物を水洗する水洗手段を備えることで、第1電着塗料を第1電着手段の外へ持ち出すことを最小限に抑えることができる。
ここで、第1電着塗膜が形成された被塗物を水洗した後に、その水洗用の洗浄水が一部残ったまま、第1電着塗膜に熱フローを行うと、第1電着塗膜の洗浄水で濡れた部分と洗浄水が付着していない乾いた部分との境界に凹部が生じる。このような凹部を生じた状態で2回目の電着塗装が行なわれると、凹部になった部分は電気抵抗がその周囲よりも低いため、電着塗料が付着しやすくなる。このため、上記濡れた部分と乾いた部分との境界に対応する部分の第2電着塗膜が局部的に厚くなり、凸部を生ずる。このようになると、下塗りである電着塗膜の上に中塗り塗装及び上塗り塗装が行なわれても、塗装面に平滑性が得られず、或いは、下塗りである電着塗膜の凹凸が中塗り塗膜及び上塗り塗膜を通して外観に現れ、見映えが悪くなる。
上記構成によれば、第1電着塗膜が形成された被塗物を水洗した後、水洗用の洗浄水が停滞する、被塗物の略水平になった洗浄水停滞面上の洗浄水を除去又は低減させることで、続く熱フローにおいて、第1電着塗膜の表面に凹部が生ずることを抑制することができる。また、洗浄水停滞面上の洗浄水が完全に除去されずに、一部残る状態であっても、その洗浄水の残存量が少ないから、続く熱フローでは、該熱フローのための加熱によって、その洗浄水が速やかに蒸発する。すなわち、熱フロー時において、第1電着塗膜の濡れた部分と乾いた部分との間の体積収縮差が大きい状態が長く続くことはないので、該濡れた部分と乾いた部分との境界に凹部を生ずることが避けられる。仮に凹部が生じたとしても、その凹部は浅いので、熱フロー後に第2電着塗膜が形成されても第2電着塗膜上に大きな凹凸部が生じることを抑制することができる。よって、第1電着塗膜の表面に凹部が生じることを抑制することができるので、電着塗膜層のムラをより一層抑制することができる。
また、上記の構成によれば、被塗物の洗浄水停滞面への気体の吹付けによって洗浄水停滞面の洗浄水を除去又は低減させることができるので、電着塗膜層のムラをより一層抑制することができる。
また、上記の構成によれば、自動車ボディをハンガーに搭載した状態で水洗手段から熱フロー手段に搬送する間に洗浄水停滞面であるルーフ上の洗浄水を気体の吹付けによって除去又は低減させることができる。ハンガーを構成するフレームがブローノズルの気体吹出口の前方を横切るときには上記気体の供給が停止するので、フレームに付着している可能性がある塵芥や油等の異物が上記気体で吹き飛ばされて被塗物に付着することが避けられる。よって、電着塗膜層のムラをより一層抑制することができる。
ブローノズルは、ハンガーの上方に1つだけ配置してもよく、或いは複数のブローノズルをハンガーの上方に配置してもよい。
の発明では、第の発明において、上記水洗手段は、上記第1電着塗膜が形成された被塗物を浸漬する洗浄水を貯留したディップ水洗槽と、上記ディップ水洗槽の前又は後に、上記第1電着塗膜が形成された被塗物に対して洗浄水を吹き付けるスプレーノズルとを備えることを特徴とする。
上記の構成によれば、ディップ水洗及びスプレーノズルにより第1電着塗膜が形成された被塗物を十分に洗浄するので、次の洗浄水除去低減手段の効果を高め、電着塗膜層のムラをより一層抑制することができる。
の発明では、第1又は第2の発明において、上記熱フロー手段は、上記洗浄水が除去又は低減された被塗物に上記第1電着塗膜の焼付け温度よりも低い温度の温風を吹き付ける熱フロー装置を備えることを特徴とする。
上記の構成によれば、熱フロー装置は、第1電着塗膜の焼付け温度よりも低い温度の温風を被塗物に吹き付けるので、輻射による加熱ではなく、温風による加熱であるから、第1電着塗膜の表面に洗浄水が残っていたとしても、その洗浄水が速やかに除去される。よって、第1電着塗膜の表面に凹部が生ずることを抑制でき、電着塗膜層のムラをより一層抑制することができる。
の発明では、第〜第の発明のいずれか1つにおいて、上記化成槽には、上記化成溶液として酸化ジルコニウム処理液が貯留されていることを特徴とする。
上記の構成によれば、化成処理手段において、酸化ジルコニウム処理液を用いるので、非結晶質の薄膜化成処理層上の電着塗膜層のムラを抑制しつつ、環境への負荷が少ない化成処理を被塗物に施すことができる。
の発明では、第〜第の発明のいずれか1つにおいて、上記化成処理手段の前に、被塗物の表面の汚れ又は油脂分を除去する脱脂洗浄手段をさらに備え、上記脱脂洗浄手段は、脱脂溶液が貯留された脱脂槽を有し、表面の汚れ又は油脂分を除去する前の被塗物を該脱脂溶液に浸漬させ、該脱脂槽の下部に配置された超音波振動子によって該脱脂溶液を超音波振動させることで該被塗物を脱脂洗浄する脱脂手段を備えることを特徴とする。
ところで、化成処理層が薄膜であるため、脱脂洗浄手段での被塗物の洗浄状態が化成処理層の形成に顕著に影響する。つまり、被塗物に油分や鉄粉等が多く残留した状態では、薄膜の化成塗膜層が形成されにくく、電着塗膜層のムラも生じやすくなる。
上記の構成によれば、脱脂槽の下部に配置した超音波振動子によって脱脂溶液を超音波振動させることで被塗物を脱脂洗浄するので、スプレーによる水圧等を用いた洗浄に比べ、例えば被塗物の袋状になった部分の内側等の外部に露出していない部分も十分に脱脂洗浄することができる。これによって、後の電着塗装手段において、電着塗膜層のムラをより一層抑制することができる。
以上のように、本発明によれば、非結晶質の薄膜化成処理層が形成された被塗物の表面に生じる電着塗膜層のムラを抑制できる。
本発明の実施形態に係る電着塗装方法を用いた工程の流れを示す図である。 電着塗装ラインの脱脂洗浄エリアに設けられた脱脂槽を模式的に示す断面図である。 電着塗装ラインの電着塗装エリアを示す図である。 電着塗装ラインの電着塗装エリアに設けられた第1電着槽を模式的に示す断面図である。 電着塗装ラインの電着塗装エリアに設けられた洗浄水除去促進装置(エアブロー装置)を示す一部断面にした正面図である。 同装置の側面図である。 同装置の平面図である。 電着塗装ラインの電着塗装エリアに設けられた塗膜熱フロー装置の横断面図である。 同装置の縦断面図である。
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る電着塗装方法を用いた工程の流れを示す図である。電着塗装装置Eにより電着塗装される被塗物は自動車ボディ1(図2等参照)である。この電着塗装装置Eは、電着塗装ラインLを備える。この電着塗装ラインLは、上流側から順に、脱脂洗浄エリアAと、化成処理エリアBと、電着塗装エリアCとを含む。自動車ボディ1は、後述するハンガー式搬送装置で搬送される。具体的には、自動車ボディ1は、ハンガー45(図6,図8及び図9参照)に搭載されて各エリアA,B,Cの順に送られる。
<脱脂洗浄エリアA>
脱脂洗浄エリアAは、自動車ボディ1の表面の汚れ又は油脂分を除去するためのエリアである。脱脂洗浄エリアAには、電着塗装ラインLの上流側から順に、第1水洗ステーションA1、脱脂洗浄ステーションA2、第2水洗ステーションA3が配置されている。第1水洗ステーションA1では、表面の汚れ又は油脂分を除去する前の自動車ボディ1の水洗が行われる。そのために、第1水洗ステーションA1には、ディップ水洗槽又はスプレーノズル(スプレー水洗装置)が設けられている。自動車ボディ1は、ディップ水洗槽に貯留された洗浄水に浸漬することや、スプレーノズルを用いて洗浄水を吹き付けることによって洗浄される。ディップ水洗槽内又はスプレーノズルから放出される洗浄水の温度は、40℃〜50℃である。このように、常温よりも高い水温で水洗することで、自動車ボディ1の表面に付着した油脂分が除去されやすくなる。
脱脂洗浄ステーションA2には、図2に示すように、第1水洗ステーションA1で水洗された自動車ボディ1が浸漬される、脱脂溶液A12を貯留した脱脂槽A13が設けられている。脱脂槽A13の下部には、複数の超音波振動子A14が配設されている。この超音波振動子A14の超音波振動によって、脱脂溶液A12が振動する。このとき、脱脂溶液A12中に小さな気泡が無数に発生し、この発生した気泡が自動車ボディ1に衝突して破裂する。この際に生じる衝撃波によって自動車ボディ1の表面に付着した汚れや油脂分が引きはがされることで脱脂洗浄が行われる。脱脂槽A13内の脱脂溶液A12の温度は、40℃〜50℃である。超音波振動子A14による脱脂洗浄処理は、1〜2分程度行われる。これにより、自動車ボディ1全体の面積の90%以上の部分の汚れ又は油脂分が洗浄される。なお、本実施形態では、脱脂槽A13及び脱脂槽A13の下部に配設された超音波振動子A14が本発明の脱脂手段に相当する。
脱脂溶液A12としては、脱脂槽A13のろ過装置A15で得られるろ液が使用される。そのため、脱脂槽A13には、上流側から順に、ろ過装置A15と、ポンプA16と、スプレーノズルA17とが連結されていて、スプレーノズルA17は、脱脂槽A13内に設けられている。ろ過装置A15では、脱脂溶液A12を遠心分離し、さらにフィルターを通過させて溶液中の油分や鉄粉等を除去している。つまり、脱脂溶液A12の無駄を減らすべく、脱脂洗浄に使用された脱脂溶液A12は、ろ過装置A15を通過し油分や鉄粉等が除去され、油分等が除去されたろ液はポンプA16により、スプレーノズルA17を介して脱脂槽A13に供給される。
脱脂槽A13の下流側には、脱脂槽A13で脱脂洗浄された自動車ボディ1に残留する油脂分や鉄粉等をさらに除去するための傾斜部A18が設けられている。傾斜部A18は、上流側から下流側に向かって上方に傾斜している。傾斜部A18における自動車ボディ1の両側側方には、スプレーノズルA19が配置されている。スプレーノズルA19からは、脱脂溶液A12が供給され、自動車ボディ1に吹き付けられる。なお、自動車ボディ1は、ハンガー45と共に脱脂溶液中に浸漬されるが、図2では、搬送装置の図示を省略している。
第2水洗ステーションA3では、後述する第5水洗ステーション7と同様に、脱脂洗浄ステーションA2で脱脂洗浄された自動車ボディ1のディップ水洗、スプレー水洗、ディップ水洗、スプレー水洗が順に行われる。そのために、第1ディップ水洗槽、第1スプレーノズル、第2ディップ水洗槽、第2スプレーノズルが設けられている。
<化成処理エリアB>
化成処理エリアBは、汚れ又は油脂分が除去された自動車ボディ1の表面に化成処理層を形成するためのエリアである。化成処理エリアBには、電着塗装ラインの上流側から順に、化成処理ステーションB1、第3水洗ステーションB2が配置されている。化成処理ステーションB1には、脱脂洗浄によって汚れ又は油脂分が除去された自動車ボディ1が浸漬される化成溶液を貯留した化成槽(化成手段)が設けられている。化成槽には、化成溶液として非結晶質の薄膜を形成する酸化ジルコニウム処理液が貯留されている。化成溶液の温度は、約40℃である。自動車ボディ1を化成槽に浸漬してから化成処理層を形成するまでの処理時間は、2〜3分程度である。この化成処理により、自動車ボディ1の表面には、0.02μm程度の化成処理層が形成される。
化成槽には、上流側から順に、ろ過装置と、ポンプとスプレーノズルが連結されていて、スプレーノズルは化成槽内に設けられている。ろ過装置では、重力による沈降又は、化成溶液を遠心分離し、さらにフィルターを通過させて溶液中の化成スラッジを除去している。つまり、化成溶液を効率的に利用するべく、化成処理に使用された化成溶液は、ろ過装置を通過し化成スラッジが除去され、化成スラッジが除去されたろ液はポンプにより、スプレーノズルを介して化成槽に供給される。
第3水洗ステーションB2には、化成処理層が形成された自動車ボディ1のディップ水洗とこれに続くスプレー水洗とが行われる。そのために、ディップ水洗槽及びスプレーノズルが設けられている。自動車ボディ1は、ディップ水洗槽に貯留された洗浄水に浸漬されることによって洗浄され、次いで、スプレーノズルによって洗浄水が吹き付けられて洗浄される。
<電着塗装エリアC>
電着塗装エリアCは、化成処理層が形成された自動車ボディ1の表面に電着塗膜層を形成するためのエリアである。図3に示す電着塗装エリアCには、電着塗装ラインLの上流側から順に、第1電着ステーション2、第4水洗ステーション3、洗浄水除去ステーション4、熱フローステーション5、第2電着ステーション6及び第5水洗ステーション7が配置されている。図示は省略しているが、第5水洗ステーション7の次に電着塗膜の焼付けステーションが設けられる。
第1電着ステーション2には、化成処理された自動車ボディ1が浸漬される電着塗料9を貯留した第1電着槽11が設けられている。第1電着ステーション2において、図4に示すように、第1電着槽11内に浸漬された自動車ボディ1を陰極とし、第1電着槽11内において自動車ボディ1の両側側方及び下側に設けられた対極10を陽極としてカチオン電着塗装が行なわれる。なお、自動車ボディ1は、ハンガー45と共に電着塗料9中に浸漬されるが、図4では、搬送装置の図示を省略している。また、本実施形態では、自動車ボディ1を陰極とし、対極10を陽極とする第1電着槽11が本発明の第1電着手段に相当する。
第4水洗ステーション3では、第1電着槽11の塗料が電着した自動車ボディ1のディップ水洗とこれに続くスプレー水洗が行なわれる。そのために、ディップ水洗槽12及びスプレーノズル13が設けられている。自動車ボディ1は、ディップ水洗槽12に貯留された洗浄水に浸漬することによって洗浄され、次いで、スプレーノズル13によって洗浄水が吹き付けられて洗浄される。なお、本実施形態では、ディップ水洗槽12及びスプレーノズル13が本発明の水洗手段に相当する。
上記ディップ水洗及びスプレー水洗の洗浄水としては、第1電着槽11の電着塗料の限外ろ過(以下、「UF」という場合がある。)で得られるUFろ液が使用される。そのために、UF装置14及び該UF装置14で得られるUFろ液を貯留するろ液タンク15が設けられている。電着塗料の損失を減らすべく、ろ液タンク15のUFろ液がスプレーノズル13に供給され、スプレー済みの洗浄液がディップ水洗槽12に回収され、ディップ水洗槽12からのオーバーフロー水が第1電着槽11に回収される。
洗浄水除去ステーション4では、自動車ボディ1の水洗用の洗浄水が停滞する略水平になった洗浄水停滞面であるルーフ1a(図5〜図9参照)の洗浄水が非加熱で強制的に除去又は低減される。この洗浄水の除去又低減のために洗浄水除去促進装置8(洗浄水除去低減手段)が設けられている。当該ステーションについては後に詳述する。
熱フローステーション5では、自動車ボディ1の外表面における第1電着槽11の対極10に近い部位に形成された第1電着塗膜が熱フローし、該近い部位の第1電着塗膜の電気抵抗が、自動車ボディ1の内板部など第1電着槽11の対極10から遠い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗よりも高くなるように、自動車ボディ1を加熱する。そのために、塗膜熱フロー装置16(熱フロー手段)が設けられている。塗膜熱フロー装置16は、ヒーター18による温風が供給される温風加熱炉17を備えている。自動車ボディ1が温風加熱炉17を通過する間に、第1電着塗膜を熱フローさせる。塗膜熱フロー装置16の具体的な構成は後に詳述する。
第2電着ステーション6には、熱フローステーション5を経た自動車ボディ1が浸漬される電着塗料を貯留した、第1電着槽11と同様の第2電着槽21が設けられている。第2電着ステーション6においても、第1電着ステーション2と同様に、第2電着槽21内に浸漬された自動車ボディ1を陰極とし、第2電着槽21内に設けられた対極(図示省略)を陽極とするカチオン電着塗装が行なわれる。本実施形態の第2電着槽21の電着塗料は、その成分構成が第1電着槽11の電着塗料と同じであるが、両電着槽11,21の塗料成分が異なるものであってもよい。なお、本実施形態では、自動車ボディ1を陰極とし、対極を陽極とする第2電着槽21が第2電着手段に相当する。
第5水洗ステーション7では、第2電着槽21の塗料が電着した自動車ボディ1に対してスプレー水洗、ディップ水洗、スプレー水洗、ディップ水洗及びスプレー水洗が順に行なわれる。そのために、電着塗装ラインLの上流側から順に、第1〜第3のスプレーノズル22〜24、第1ディップ水洗槽25、第4スプレーノズル26、第2ディップ水洗槽27及び第5スプレーノズル28が設けられている。
第1〜第4のスプレーノズル22〜24,26によるスプレー水洗及び第1ディップ水洗槽25によるディップ水洗では、洗浄水として、第2電着槽21の電着塗料の限外ろ過で得られるUFろ液が使用される。そのために、UF装置31及び該UF装置31で得られるUFろ液を貯留するろ液タンク32が設けられている。また、第2スプレーノズル23及び第3スプレーノズル24各々によるスプレー済みの洗浄液を回収する洗浄液回収タンク33,34が設けられている。一方、第2ディップ水洗槽27によるディップ水洗及び第5スプレーノズル28によるスプレー水洗には工業用水が使用される。
電着塗料の損失を減らすべく、ろ液タンク32のUFろ液が第1及び第4の各スプレーノズル22,26に供給される。第4スプレーノズル26によるスプレー済みの洗浄液が第1ディップ水洗槽25に回収される。第1ディップ水洗槽25からのオーバーフロー水は第3スプレーノズル24用の洗浄液回収タンク34に回収される。第3スプレーノズル24には洗浄液回収タンク34の洗浄液が供給され、洗浄液回収タンク34からのオーバーフロー水が第2スプレーノズル23用の洗浄液回収タンク33に回収される。第2スプレーノズル23には洗浄液回収タンク33の洗浄液が供給され、洗浄液回収タンク33からのオーバーフロー水が第2電着槽21に回収される。
第5水洗ステーション7の後の焼付けステーション(図示省略)では、自動車ボディ1の表面に形成された第1電着塗膜及び第2電着塗膜に対して加熱が行われる。そのために、加熱硬化炉(硬化手段)が設けられている。
<洗浄水除去ステーション4>
自動車ボディ1は、洗浄水除去ステーション4を含めて全電着塗装装置E内を電着塗装ラインLに沿ってオーバーヘッドコンベア(ハンガー式搬送装置)によって搬送される。この搬送装置は、図5及び図6に簡略化して示すように、電着塗装装置Eに沿って延びるガイドレール41と、このガイドレール41にローラ42によって係合し該ガイドレール41に沿って移動する前後のトロリー43,44と、トロリー43,44に吊り下げられ、自動車ボディ1が搭載されるハンガー45とを備えている。図5において、49はオイルパンである。
ハンガー45は、自動車ボディ1を両側から支持するための、前後のトロリー43,44各々にCネック46を介して吊り下げられた前後の門型フレーム47,48を備えている。前後の門型フレーム47,48は連結バー51,52によって連結されている。前後の門型フレーム47,48の下端部には自動車ボディ1を受ける受け部53,54が設けられている。
本実施形態では、洗浄水除去ステーション4の洗浄水除去促進装置8は、気体としてのエアをルーフ1aに向かって吹き付けるエアブロー装置によって構成されている。図7に示すように、このエアブロー装置は、2つが1組となった3組の、すなわち、計6つのノズル取付管55を備えている。すなわち、自動車ボディ1の搬送方向と直交する水平方向に間隔をおいて配置された左右2つのノズル取付管55が1組となっており、その3組が互いに該搬送方向の前側、中間及び後側に間隔をおいて並んでいる。左右のノズル取付管55に取り付けたノズル(ブローノズル)60がルーフ1aの左部及び右部の洗浄水の除去をそれぞれ担う。
ノズル取付管55は、自動車ボディ1がハンガー45の受け部53,54に搭載されて通る場所の上方に配置されている。各ノズル取付管55は、3つのノズル取付部を備え、本実施形態では、図5に示すように、そのうちの1つのノズル取付部に銅管60aを介してノズル60が取付けられている。各ノズル60は、エアが自動車ボディ1のルーフ1aに吹き付けられるように、エア吹出口が下向きに開口している。図6に矢符で示すように、本実施形態では、ノズル60が吹き出すエアが、ハンガー45の門型フレーム47,48よりも上側からエアがルーフ1aに向かって吹き付けられる。ルーフ1aに対するエアの吹付け速度はおよそ20m/秒〜25m/秒である。なお、この場合の吹付け速度は、自動車ボディ1を設けない状態で気体を送ったときの、自動車ボディ1が設けられている場合にルーフ1aが存すると想定される位置の気体の流速である。
次に、ノズル60にエアを供給するエア配管について説明する。エア源としてのエアコンプレッサー(図示省略)から、洗浄水除去ステーション4における自動車ボディ搬送路の傍らに第1エア供給管56が延びている。第1エア供給管56は、上記3組のノズル取付管55にエアを供給すべく、3本の第2エア供給管57〜59に分岐している。各第2エア供給管57〜59は、左右のノズル取付管55にエアを供給すべく、第3エア供給管57a〜59a,57b〜59bに分岐している。
第1エア供給管56には、手動開閉弁61及び空圧メーター62が設けられている。3本の第2エア供給管57〜59各々には、当該管路の手動開閉弁63、ノズル60へのエアの供給及びその停止を制御する電磁弁64及び空圧メーター65が設けられている。
そうして、洗浄水除去促進装置としてのエアブロー装置は、自動車ボディ1のルーフ1aがノズル60のエア吹出口の前方を通過する間にエアがノズル60に供給され、且つハンガー45の門型フレーム47,48がノズル60のエア吹出口の前方を横切るときにはエアの供給が停止するように、自動車ボディ1の搬送位置に応じて、電磁弁64の作動を制御する制御装置66を備えている。この制御のために、ノズル60のエア吹出口の前方を自動車ボディ1のルーフ1aが通過しているか否かを検出する光学センサ(図示省略)が設けられ、該光学センサの検出信号が上記制御装置66に与えられる。
<熱フローステーション5>
図8に示すように、温風加熱炉17の相対する側壁は、内側壁71と外側壁72とよりなる二重壁構造になっている。内側壁71と天井壁73と底壁74とで囲まれたトンネル炉が形成され、該トンネル炉の上部をハンガー式搬送装置のガイドレール41がトンネル炉長手方向に通っている。自動車ボディ1はハンガー45に搭載されてトンネル炉を通過する。
トンネル炉の内側壁71と外側壁72との間にヒーター、ブロアモーター及び送風ファンを備えた温風吹出手段76が設けられている。そうして、相対する内側壁71には、ハンガー45に搭載された自動車ボディ1に向けて温風を吹き出すための上段、中段及び下段の各ノズルボックス77,78,79が設けられている。
図9に示すように、中段及び下段の各ノズルボックス78,79は、自動車ボディ1の側面に向かって温風を吹き出す複数の縦長スロット状の第1温風吹出口81をトンネル炉長手方向に間隔をおいて備えている。上段のノズルボックス77は、自動車ボディ1の洗浄水停滞面であるルーフ1aを指向して温風を吹き出す筒孔状の第2温風吹出口82を備えている。
ここに、第2温風吹出口82からルーフ1aまでの距離は、第1温風吹出口81から自動車ボディ1の側面までの距離よりも遠い。そこで、温風がルーフ1aに確実に到達するように、第2温風吹出口82の温風吹出速度は第1温風吹出口81の温風吹出速度よりも大きくされている。また、温風の指向性を高めるべく、第2温風吹出口82は筒孔状に形成されている。第1温風吹出口81及び第2温風吹出口82各々のボディ側面及びルーフ1aに対する温風の吹付け速度は、およそ5m/秒〜15m/秒程度である。
内側壁71の上部には、トンネル炉内の加熱されたエアを吸い込んで温風吹出手段76に循環させるためのエア吸込口83が開口している。
<電着塗装方法>
第1水洗ステーションA1において、表面の汚れ又は油脂分を除去する前の自動車ボディ1は、ディップ水洗槽の洗浄水中に浸漬された後引き上げられることによりディップ水洗が行われる又は、スプレーノズルから放出するスプレー水を吹き付けられることによりスプレー水洗が行われる。
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で第1水洗ステーションA1から脱脂洗浄ステーションA2に搬送される。脱脂洗浄ステーションA2において、水洗された自動車ボディ1が脱脂槽A13の脱脂溶液A12中に浸漬される。脱脂槽A13の下部に配置した超音波振動子A14の超音波によって脱脂溶液A12が振動し、この振動で生じた気泡が自動車ボディ1に衝突して破裂することで、自動車ボディ1を脱脂洗浄する(脱脂工程)。超音波の振動によって自動車ボディ1を脱脂洗浄するので、スプレーによる水圧等を用いた洗浄に比べ、自動車ボディ1の外部に露出していない部分も十分に脱脂洗浄することができる。
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で脱脂洗浄ステーションA2から第2水洗ステーションA3に搬送される。第2水洗ステーションA3において、脱脂された自動車ボディ1は、第1ディップ水洗槽の洗浄水中に浸漬して引き上げられることにより、ディップ水洗が行われ、次いで第1スプレーノズルによる洗浄水の吹付けによってスプレー水洗が行われ、次いで第2ディップ水洗槽によるディップ水洗、第2スプレーノズルによるスプレー水洗が順に行われる。
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で第2水洗ステーションA3から化成処理ステーションB1に搬送される。化成処理ステーションB1において、洗浄された自動車ボディ1は、化成槽の酸化ジルコニウム処理液中に浸漬される(化成工程)。これによって、自動車ボディ1の表面に非結晶質の薄膜化成処理層が形成される。従って、化成処理で生じる化成スラッジを抑制することができ、環境への負荷を減らすことができる。
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で化成処理ステーションB1から第3水洗ステーションB2に搬送される。第3水洗ステーションB2において、化成処理層が形成された自動車ボディ1は、ディップ水洗槽の洗浄水中に浸漬して引き上げられることにより、ディップ水洗が行われ、次いでスプレーノズルによる洗浄水の吹付けによってスプレー水洗が行われる。
第1電着ステーション2において、図4に示すように、洗浄された自動車ボディ1が第1電着槽11の電着塗料9中に浸漬され、自動車ボディ1と対極10との間に直流電圧が印加される(第1電着工程)。これにより、自動車ボディ1の外板部及び内板部に第1電着塗膜が形成される。第1電着塗膜は、外板部のように対極10に近く電流密度が高くなる部位に厚く形成され、内板部のように対極10から遠く電流密度が低くなる部位には薄く形成される。
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で第1電着ステーション2から第4水洗ステーション3に搬送される。第4水洗ステーション3において、第1電着塗膜が形成された自動車ボディ1は、ディップ水洗槽12の洗浄水中に浸漬して引き上げられることにより、ディップ水洗(ディップ水洗工程)が行なわれ、次いでスプレーノズル13による洗浄水の吹付けによってスプレー水洗(スプレー水洗工程)が行なわれる(水洗工程)。
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で第4水洗ステーション3から洗浄水除去ステーション4に搬送される。洗浄水除去ステーション4では、洗浄された自動車ボディ1のルーフ1aが各ノズル60のエア吹出口の前方を通過するときに、当該ノズル60に係る電磁弁64が開となってエアがルーフ1aに吹き付けられる(洗浄水除去低減工程)。このエア吹付けによって、ルーフ1aに停滞している洗浄水の殆どが吹き飛ばされて除去される。従って、続く熱フロー工程において第1電着塗膜に凹部を生ずることを防止する上で有利になる。洗浄水の除去又は低減は、第1電着塗膜の意図しない熱フローを招くことがないように、非加熱で又は低雰囲気で行うことが好ましい。また、ハンガー45のフレーム47,48がノズル60のエア吹出口の前方を通過するときは、エアの吹出が停止する。従って、ハンガー45に付着している油やごみがエアで飛ばされて第1電着塗膜に付着することは避けられる。
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で洗浄水除去ステーション4から熱フローステーション5に搬送され、温風加熱炉17に、すなわち、トンネル炉に搬入される。自動車ボディ1の外板部の第1電着塗膜は、トンネル炉を通過する間に、第1温風吹出口81及び第2温風吹出口82から吹き出される温風によって加熱されて熱フローされる(熱フロー工程)。
第1電着塗膜の熱フローは、該第1電着塗膜の焼付け温度(150℃〜180℃)よりも低い温度の温風を自動車ボディ1に吹き付けることによって行う。輻射による加熱ではなく、温風による加熱であるから、第1電着塗膜の表面に洗浄水が残っていたとしても、その洗浄水が速やかに除去されるため、第1電着塗膜の表面に凹部を生じることを防止する上で有利になる。
また、第1電着塗膜の熱フローは、例えば、第1電着槽11における自動車ボディ1の対極10に近い部位に形成された第1電着塗膜が70℃から110℃の温度に数分間加熱された状態となるように行うことが好ましい。加熱温度が低い場合、或いは加熱時間が短い場合には、自動車ボディ1の対極10に近い部位の第1電着塗膜の熱フローが不十分になって、その電気抵抗が十分に上昇しないため、自動車ボディ1の対極10から遠い部位に所望の厚さの第2電着塗膜を形成する上で不利になる。一方、上記加熱温度が高い場合、或いは加熱時間が長い場合は、自動車ボディ1の対極10から遠い部位に薄く形成されている第1電着塗膜が熱フローして緻密な塗膜となり、すなわち、電気抵抗が高くなり、この遠い部位への第2電着塗膜の形成に不利になる。
第2温風吹出口82の温風はルーフ1aを指向するから、ルーフ1aに洗浄水が残っていても、その洗浄水は速やかに蒸発する。すなわち、ルーフ1aの洗浄水で濡れた部分と乾いた部分との境界が速やかに消失する。従って、ルーフ1aの全面にわたって第1電着塗膜の温度が略均一に上昇していく。そのため、第1電着塗膜に部分的に体積収縮量が異なる部分を生じて局部的な凹部を生ずることが避けられる。
第1及び第2温風吹出口81,82の温風は自動車ボディ1の外板部に当てられるから、外板部の第1電着塗膜は熱フローするものの、内板部の第1電着塗膜が受ける熱量は少ない。そのため、内板部の第1電着塗膜は、外板部の第1電着塗膜に比べて、熱フローの程度が軽くなる。外板部からみて内板部の奥まった箇所では殆ど熱フローしない。従って、外板部の第1電着塗膜の電気抵抗が内板部の第1電着塗膜の電気抵抗に比べて高くなる。
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で熱フローステーション5から第2電着ステーション6に搬送される。第2電着ステーション6では、第1電着塗膜に熱フローが施された自動車ボディ1が第2電着槽21の電着塗料中に浸漬され、自動車ボディ1と対極との間に直流電圧が印加される(第2電着工程)。これにより、自動車ボディ1の外板部及び内板部に第2電着塗膜が形成される。この場合、先の熱フローによって、外板部の第1電着塗膜は内板部の第1電着塗膜に比べて電気抵抗が高くなっているから、外板部に比べて内板部の方に第2電着槽21の電着塗料が多く付着する。従って、第2電着槽21の電着塗料中への自動車ボディ1の浸漬時間の調整等により、外板部及び内板部の電着塗膜の厚さ(第1電着塗膜と第2電着塗膜とを合わせた厚さ)を所望の膜厚にコントロールすることが容易になる。
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で第2電着ステーション6から第5水洗ステーション7に搬送される。第5水洗ステーション7において、第2電着塗膜が形成された自動車ボディ1に対して、第1〜第3のスプレーノズル22〜24によるスプレー水洗、第1ディップ水洗槽25によるディップ水洗、第4スプレーノズル26によるスプレー水洗、第2ディップ水洗槽27によるディップ水洗、及び第5スプレーノズル28によるスプレー水洗が順に行なわれる。
自動車ボディ1は、ハンガー45に搭載された状態で第5水洗ステーション7から電着塗膜の焼付けステーションに搬送され、自動車ボディ1表面に形成された第1電着塗膜及び第2電着塗膜の焼付け硬化が行なわれる(硬化工程)。
<その他の実施形態>
自動車ボディ搬送用のハンガーとしては、自動車ボディ1をその片側から支持するC型ハンガーを採用することもできる。この場合、洗浄水除去ステーション4では、自動車ボディ1を挟んでC型ハンガーの反対側に第2エア供給管57〜59を配置し、該第2エア供給管57〜59から、C型ハンガーの上部フレームが通過する位置と自動車ボディ1のルーフ1aが通過する位置との間の中間位置に向けてエア供給管を延ばし、該中間位置にノズル60を配置することができる。これにより、ノズル60の下をハンガーの上部フレームが通過することがないため、ノズル60の下をルーフ1aが通過するときに、エアをルーフ1aに対して連続的に吹き付けることができる。
C型ハンガーを採用するときは、熱フローステーションにおいても、自動車ボディ1を挟んでC型ハンガーの反対側から、C型ハンガーの上部フレームが通過する位置と自動車ボディ1のルーフ1aが通過する位置との間の中間位置に温風吹出管を延設することができる。これにより、ルーフ1aが通過する位置の直上に第2温風吹出口82を下方へ向けて配置することができるから、ルーフ1aに残る洗浄水を速やかに蒸発除去する上で有利になる。
また、上記実施形態では、第1電着塗料及び第2電着塗料はその組成が同じであるが、第2電着塗料として第1電着塗料とは異なる組成の電着塗料を採用することもできる。
また、上記実施形態では、脱脂洗浄ステーションA2において、複数の超音波振動子A14が配設された脱脂槽A13を用いて脱脂洗浄が行われるが、超音波振動子を備えない脱脂槽を採用することもできる。
また、第4水洗ステーション3において、ディップ水洗の後にスプレー水洗が行われるが、スプレー水洗の後にディップ水洗を行うこともできる。なお、ディップ水洗の後にスプレー水洗を行う方が、電着塗料9を効率よく洗浄することができる。
また、上記実施形態では、洗浄水除去ステーション4において、エアがルーフ1aに吹き付けられるが、ルーフ1aから洗浄水が除去されればよく、エアを吹き付ける以外の方法を採用することもできる。
また、上記実施形態では、洗浄水除去促進装置8における各ノズル取付管55のノズル取付部の1つにノズル60が取り付けられるが、複数のノズル取付部にノズルを取り付けることもできる。
また、上記実施形態では、化成処理ステーションB1において、化成溶液として酸化ジルコニウム処理液を用いたが、自動車ボディ1に非結晶質の薄膜の化成処理層が形成される化成溶液であればよく、酸化ジルコニウム処理液以外の溶液を採用することもできる。
E 電着塗装装置
L 電着塗装ライン
A 脱脂洗浄エリア
B 化成処理エリア
C 電着塗装エリア
1 自動車ボディ(被塗物)
1a ルーフ(洗浄水停滞面)
A12 脱脂溶液
A13 脱脂槽
A14 超音波振動子
8 洗浄水除去促進装置
10 対極
12 ディップ水洗槽
13 スプレーノズル
16 塗膜熱フロー装置
41 ガイドレール
45 ハンガー
60 ノズル
64 電磁弁
66 制御装置

Claims (5)

  1. 被塗物の表面に化成処理層を形成する化成処理手段と、
    上記化成処理層が形成された被塗物の表面に電着塗膜層を形成する電着塗装手段とを備える電着塗装装置であって、
    上記化成処理手段は、
    化成溶液が貯留された化成槽を有し、被塗物を該化成溶液に浸漬させて該被塗物の表面に非結晶質の薄膜の化成処理層を形成する化成手段を備え、
    上記電着塗装手段は、
    第1電着槽を有し、上記化成処理層が形成された被塗物と対極との間に直流電圧を印加して該被塗物に第1電着塗膜を形成する第1電着手段と、
    上記第1電着塗膜が形成された被塗物の上記対極に近い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗が、上記対極から遠い部位に形成された第1電着塗膜の電気抵抗よりも高くなるように、該第1電着塗膜の熱フローを行う熱フロー手段と、
    第2電着槽を有し、上記第1電着塗膜に熱フローが施された被塗物と対極との間に直流電圧を印加して該被塗物に第2電着塗膜を形成する第2電着手段と、
    上記第1電着塗膜及び第2電着塗膜を加熱硬化させる硬化手段とを備え
    上記電着塗装手段は、上記第1電着手段と上記熱フロー手段との間に、
    上記第1電着塗膜が形成された被塗物を水洗する水洗手段と、
    上記水洗手段における水洗用の洗浄水が停滞する、被塗物の略水平になった洗浄水停滞面上の洗浄水を除去又は低減させる洗浄水除去低減手段とをさらに備え、
    上記洗浄水除去低減手段は、上記洗浄水停滞面から洗浄水が排除されるように該洗浄水停滞面に気体を吹き付けるブローノズルを備え、
    上記被塗物は、自動車ボディであり、上記洗浄水停滞面は該自動車ボディのルーフであり、
    上記水洗手段から上記熱フロー手段にわたって延びるガイドレールと、
    上記ガイドレールに吊り下げられ、上記自動車ボディを搭載して上記水洗手段から上記熱フロー手段に搬送するハンガーとをさらに備え、
    上記ブローノズルは、上記気体が上記自動車ボディのルーフに吹き付けられるように気体吹出口を下向きにして、上記自動車ボディが上記ハンガーに搭載されて通る場所の上方に配置されており、
    上記ブローノズルへの気体の供給及びその停止を制御する電磁弁と、
    上記自動車ボディのルーフが上記ブローノズルの気体吹出口の前方を通過する間に気体が上記ブローノズルに供給され、且つ上記ハンガーを構成するフレームが上記ブローノズルの気体吹出口の前方を横切るときには上記気体の供給が停止するように、上記自動車ボディの搬送位置に応じて、上記電磁弁の動作を制御する制御装置とをさらに備えることを特徴とする電着塗装装置。
  2. 請求項に記載の電着塗装装置であって、
    上記水洗手段は、
    上記第1電着塗膜が形成された被塗物を浸漬する洗浄水を貯留したディップ水洗槽と、
    上記ディップ水洗槽の前又は後に、上記第1電着塗膜が形成された被塗物に対して洗浄水を吹き付けるスプレーノズルとを備えることを特徴とする電着塗装装置。
  3. 請求項1又は2に記載の電着塗装装置において、
    上記熱フロー手段は、上記洗浄水が除去又は低減された被塗物に上記第1電着塗膜の焼付け温度よりも低い温度の温風を吹き付ける熱フロー装置を備えることを特徴とする電着塗装装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載の電着塗装装置において、
    上記化成槽には、上記化成溶液として酸化ジルコニウム処理液が貯留されていることを特徴とする電着塗装装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の電着塗装装置において、
    上記化成処理手段の前に、被塗物の表面の汚れ又は油脂分を除去する脱脂洗浄手段をさらに備え、
    上記脱脂洗浄手段は、
    脱脂溶液が貯留された脱脂槽を有し、表面の汚れ又は油脂分を除去する前の被塗物を該脱脂溶液に浸漬させ、該脱脂槽の下部に配置された超音波振動子によって該脱脂溶液を超音波振動させることで該被塗物を脱脂洗浄する脱脂手段を備えることを特徴とする電着塗装装置。
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