JPS6329674B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は、キヤビンを車体フレームに弾性的に
支持して車輛の受ける衝撃を緩和するキヤビンマ
ウントに関する。

従来技術 従来から、トラツク等の車体構造では、路面不
整等の種々の原因に基づく車輛の受ける衝撃を緩
和するために、キヤビンを弾性部材すなわちキヤ
ビンマウントを介して車体フレームに取付けるこ
とが知られている。しかし、この従来の構造は、
単にキヤビンと車体フレームの間に弾性部材を介
在せしめるだけであるので、車輛の前後方向及び
左右方向の力については弾性係数の小さいせん断
弾性により、上下方向の力については弾性係数の
大きい圧縮弾性により受け持つことになる。従つ
て、左右方向の揺れが大きく乗心地が悪くなると
ともに走行安定性に欠けるという問題がある。

実公昭52−27461号公報には、弾性部材を拘束
する部材を設けて、車輌の前後方向、左右方向及
び上下方向のいずれの力に対しても圧縮弾性で受
け持つようにし、さらに上下方向の力に対して
は、圧縮変形量の変化に応じて拘束部材との接触
面積を変化させることにより弾性特性を非線型に
したキヤビンマウントが開示されている。この公
報に記載されたものでは、上記いずれの方向にも
比較的硬い弾性特性を有することになるので車輛
の左右方向の揺れは小さくすることができるが、
前後方向についても一様に硬くなるのでこの方向
の衝撃の緩和効果が弱まり却つて乗心地が悪くな
るという問題が生じる。また、実開昭57−184241
号には、上下方向に入れ子状に延びる内筒部材と
外筒部材とを備え、この間に弾性部材を配置した
マウント装置の構造が開示されている。この開示
された構造によれば、鉛直方向の荷重は、弾性部
材の剪断変形によつて緩衝し、水平方向の荷重は
弾性部材の圧縮変形によつて緩衝するように構成
されている。そして、弾性部材は、前後方向の位
置に穴が形成されており、したがつて前後方向に
は柔らかい構成になつている。この装置におい
て、キヤビンと車体との鉛直方向の変位量が所定
以上となつた場合、車体側部材は、上方において
キヤビンにまた下方において、ストツパに直接当
接する。したがつて、この開示された装置では、
鉛直方向の変位量が所定量に達するとマウント装
置による緩衝効果が全く無くなるので、乗り心地
が悪いという問題がある。

また、この構造では、弾性部材は所望の弾性特
性を得るためには、上下において、キヤビン側部
材及びストツパとの間に所定の間隔を有するよう
に位置決めして、車体側部材に支持させるように
取りつけなければならず作業性が極めて悪いとい
う問題もある。

また、実開昭54−156085号には、エンジンマウ
ント装置が開示されているがこのマウント装置は
構造が極めて複雑になるという問題があるととも
に、マウント装置の取り付け方法が不明であるの
で、またエンジンマウント構造は、エンジン振動
を吸収するのが主目的であつて、キヤビンマウン
ト装置のように乗り心地を向上させるように弾性
特性を設定しなければならないといつた制約がな
いので、そのままキヤビンマウント装置に適用す
ることはできない。

発明の目的 本発明は上記事情に鑑みて構成されたもので、
本発明は、車輛の前後方向及び上下方向の振動衝
撃に対しては、比較的柔軟な弾性特性を与え、車
輌の巾方向の振動に対しては、比較的硬い弾性特
性を与え、これによつて、良好な乗り心地と安定
度を確保することができるとともに、組み付け作
業性の良いキヤビンマウント構造を提供すること
を目的としている。

発明の構成 本発明は、キヤビンを車体フレームに弾性支持
するキヤビンマウントであつて、ほぼ水平に延び
るキヤビンのフロア部材の下面に取り付けられ、
下方に凸のほぼ皿状のブラケツトと、上記ブラケ
ツトに対応するように該ブラケツト外側に同軸に
設けられ、下方に凸のほぼ皿状の内筒部材と、上
記キヤビンのフロア側部材にほぼ平行な車体側部
材に下端が固定される外筒部材と、上記内筒部材
と外筒部材との間に介装されるほぼドーナツ状の
第１の弾性部材と、上記ブラケツトおよび内筒部
材に固定部材を介して共締めされるストツパ部材
とを備え、上記内筒部材は少なくとも上記第１の
弾性部材の上方を覆うように延びる水平支持面と
この水平支持面の内側に連続してほぼ上下方向に
延びる垂直支持面とを有し、上記外筒部材は内筒
部材の垂直にほぼ平行でかつ該垂直支持面よりも
下方にずれた関係に位置する垂直支持面を有して
おり、上記第１の弾性部材は無負荷状態で上記内
筒部材及び外筒部材のそれぞれの垂直支持面の略
全面に結合するようにかつ上端及び下端において
上記水平支持面と車体側部材との間に所定の間隔
を有するように配置されるとともに上記内筒部材
を挟む車両の前後方向に対応した位置に一対の巾
方向に延びる長穴を有しており、上記車体側部材
の外筒部材取り付け部内側には、開口部が設けら
れており、上記ストツパは、この開口部を貫通し
て下方にかつ半径方向に広がるように上記車体側
部材を挟んで外筒部材に対向する位置まで延びて
おり、上記ストツパの周縁部の上記車体側部材に
対面する側には車体側部材と所定の間隔を有して
ドーナツ状の第２の弾性部材が配置されたことを
特徴とする。

発明の作用及び効果 本発明の上記構成によれば、このキヤビンマウ
ント構造に水平面内での力とくに、前後方向の力
が作用した場合には、第１の弾性部材の前後部に
は車輛の巾方向に延びる長穴が設けられているの
で、この力は、弾性部材の主として剪断弾性によ
つて吸収されることとなる。したがつて、この方
向の作用力に対しては、本発明のキヤビンマウン
トは、比較的柔軟な弾性特性を有する。また、車
輛の巾方向の作用力に対しては、キヤビンマウン
トは、この方向には上記のような長穴を有しない
ので、圧縮変形する。この場合、剪断弾性係数よ
りも圧縮弾性係数の方が大きいので、本発明のキ
ヤビンマウントは、巾方向の力に対しては、比較
的硬い弾性特性を有し、したがつて左右方向の振
動振幅が不当に大きくなることを防止でき、安定
性を向上させることができる。

また、上下方向の力が作用した場合において、
キヤビンと車体が相対的に遠ざけるような力がキ
ヤビンマウントに作用する場合には、本発明のキ
ヤビンマウントは剪断変形する。したがつて、比
較的柔軟な弾性特性を得ることができる。

この場合、変位量が所定量を越えた場合には、
ストツパ上の第２の弾性部材が車体側部材に下方
から当接して圧縮変形し、キヤビン側と車体側が
さらに離れようとする動きに抵抗する。したがつ
て、キヤビンと車体が相対的に所定量だけ離れた
後においては比較的硬い弾性特性により、変位の
不当増大を抑える。

この構成により、キヤビンと車体が所定以上離
れた場合において、ストツパが直接車体側部材に
当接する場合に比し、キヤビンマウントの弾性特
性の急激な変化を防止することができ良好な乗り
心地を維持することができる。

また、車輛が路上のマウンド部分を通過する場
合のようにキヤビンと車体が相対的に接近するよ
うな場合においては、キヤビンマウントは、先ず
剪断変形する。したがつて、柔軟な弾性特性を得
ることができる。そして、変位量が所定以上にな
ると第１の弾性部材の上端は、内筒部材の水平支
持面にまた、下端は車体側部材の上面当接し、さ
らに変位量が増大する場合には、第１の弾性部材
は、圧縮変形して両者の不当な変位量の増大を抑
制する。そして、この場合の弾性特性は変位量が
所定以下の場合に比べて硬いものとなる。したが
つて、この場合にも上記キヤビンと車体とが相対
的に離れる場合と同様に、弾性特性を変位量に応
じて徐々に変化させることができ、良好な乗り心
地を確保することができる。

また、本発明のキヤビンマウント構造では、車
体側部材の所定位置に外筒部材を溶接等で固着し
これによつて形成された凹部に第１の弾性部材を
嵌め込むだけで、所定位置に配置することができ
るので、作業性が良い。以上のように、各方向の
弾性特性を変えて制御することにより、乗心地を
向上させることができ、しかも走行安定性を増加
させることができる。また、本発明のキヤビンマ
ウントの構造は実公昭52−27461号公報に記載さ
れたものより簡単である。

実施例 以下、図面を参照しつつ本発明の実施例につき
説明する。

第１図を参照すれば、本発明に従がう車輛用キ
ヤビンマウント１０が平面図で示されている。該
キヤビンマウント１０は、内筒部材１２とこれを
同軸になるように配置される外筒部材１４を備え
ており、内筒部材１２と外筒部材１４との間に
は、ラバー等の弾性部材１６が間挿されそれぞれ
内筒部材１２と外筒部材１４とに接着される。第
２図を併わせて参照すれば内筒部材１２は、弾性
部材１６が接着される筒状部１２ｂの上端から外
向きに延びる上部フランジ１２ａと、筒状部１２
ｂの下端に連続する底部１２ｃとを有する皿形
で、その底部１２ｃの中心にはボルト穴１８が設
けられる。第１図に示すように、上部フランジ１
２ａは車体左右方向（第１図のＹ−Ｙ断面の方
向）に延び、マウント１０の上下方向変形に対す
るストツパーを構成する。第３図に示されるよう
に外筒部材１４は弾性部材１６が取付けられる筒
状部１４ａと、車体前後方向位置で該筒状部１４
ａの下端から内向きに延びる底部１４ｂとを有
し、該底部１４ｂがボルト２２によつて車体フレ
ームに固定されるようになつている。弾性部材１
６には内筒部材１２の筒状部１２ｂを挟んで前後
部に左右方向に延びる一対の長穴２４が設けられ
るとともに、この長穴２４より車体前後方向外側
では、弾性部材１６は上面が内側部材より段状に
低くなつている。

以上の構造を有するキヤビンマウント１０を車
輛に取付ける場合の１例について述べる。

第４図を参照すれば、キヤビンのフロア部材２
６の下面には底部中央にボルト穴２８を有する皿
形のブラケツト３０が取付けられており、これと
対向して車体フレーム３２に取付けられたブラケ
ツト３４に穴３６があけられている。キヤビンマ
ウント１０を取付けるに当つては、内筒部材１２
の底部をブラケツト３４の底部に合わせて重ね
る。

さらに、中央が突出し、その中心にボルト穴３
８を備えるとともに、周縁部上面に弾性部材３９
を配したストツパー部材４０を車体側ブラケツト
３４の穴３６の下側から挿入して、内筒部材１２
底部の下側に重ね、ボルト穴１８，２８，３８を
整合させる。この場合、ストツパー部材４０の突
起４１が内筒部材１２の左右方向に設けられた穴
２０（穴２０は水抜き穴を兼用するもの）に係合
するように上記ボルト穴を位置決めして整合させ
る。次にボルト４２を通しストツパー部材４０の
下側にワツシヤ４４を重ねてナツト４６，４８，
５０を締め付けてキヤビンマウント１０を固定す
る。また、外筒部材１４はボルト２２によりブラ
ケツト３４に固定する。

このように取付けられたキヤビンマウント１０
が前後方向の力を受ける場合には、長穴２４があ
るため、弾性部材１６はほとんど圧縮されず両側
部において主としてせん断変形する。また、上下
方向の力を受けた場合には、内筒部材１２と外筒
部材１４とが互いに上下方向に平行移動するので
弾性部材１６は同様にせん断変形する。また、左
右方向の力を受けた場合には内筒部材１２及び外
筒部材１４の半径方向の移動により弾性部材は両
側部で圧縮変形する。

従つて、本例のキヤビンマウント１０は、前後
上下方向の力に対しては柔かい弾性特性を有し、
左右方向の力に対しては硬い弾性特性を有する。
これによつて、前後、上下方向の衝撃力を緩和で
きるとともに左右方向の揺れを減少させることが
できるので、乗心地を向上させることができ、し
かも走行安定性を増すことができる。

なお上下の分離方向の揺れが大きい場合には、
ストツパー部材４０が弾性的に支持して揺れを抑
制することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の１実施例に従うキヤビンマ
ウントの平面図、第２図は第１図のＹ−Ｙ断面
図、第３図は第１図のＸ−Ｘ断面図、第４図は第
１図のキヤビンマウントの取付状態を示す断面図
である。 符号の説明、１０……車輛用キヤビンマウン
ト、１２……内筒部材、１４……外筒部材、１６
……弾性部材、２４……長穴、４０……ストツパ
ー部材。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ キヤビンを車体フレームに弾性支持するキヤ
   ビンマウントであつて、ほぼ水平に延びるキヤビ
   ンのフロア部材の下面に取り付けられ、下方に凸
   のほぼ皿状のブラケツトと、上記ブラケツトに対
   応するように該ブラケツト外側に同軸に設けら
   れ、下方に凸のほぼ皿状の内筒部材と、上記キヤ
   ビンのフロア側部材にほぼ平行な車体側部材に下
   端が固定される外筒部材と、上記内筒部材と外筒
   部材との間に介装されるほぼドーナツ状の第１の
   弾性部材と、上記ブラケツトおよび内筒部材に固
   定部材を介して共締めされるストツパ部材とを備
   え、上記内筒部材は少なくとも上記第１の弾性部
   材の上方を覆うように延びる水平支持面とこの水
   平支持面の内側に連続してほぼ上下方向に延びる
   垂直支持面とを有し、上記外筒部材は内筒部材の
   垂直にほぼ平行でかつ該垂直支持面よりも下方に
   ずれた関係に位置する垂直支持面を有しており、
   上記第１の弾性部材は無負荷状態で上記内筒部材
   及び外筒部材のそれぞれの垂直支持面の略全面に
   結合するようにかつ上端及び下端において上記水
   平支持面と車体側部材との間に所定の間隔を有す
   るように配置されるとともに上記内筒部材を挟む
   車両の前後方向に対応した位置に一対の巾方向に
   延びる長穴を有しており、上記車体側部材の外筒
   部材取り付け部内側には、開口部が設けられてお
   り、上記ストツパは、この開口部を貫通して下方
   にかつ半径方向に広がるように上記車体側部材を
   挟んで外筒部材に対向する位置まで延びており、
   上記ストツパの周縁部の上記車体側部材に対面す
   る側には車体側部材と所定の間隔を有してドーナ
   ツ状の第２の弾性部材が配置されたことを特徴と
   する車両用キヤビンマウント。