JPS633485Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、自動車等車両または一般産業機械に
使用される防振ゴムに関し、特に自動車のストラ
ツト型懸架装置に使用するのに適した防振ゴムの
改良に関する。

例えば、従来、汎用のストラツト型懸架装置の
上部支持部に使用される防振ゴムは、ストラツト
型懸架装置側の一方の部材と、車体側の他方の部
材との間に、単一のゴム弾性体が通常の方法によ
り取付けられた構成となつている。そのため、従
来の防振ゴムの剛性は設定された単一の剛性した
得ることができなかつた。

ところで、この防振ゴムの受け持つ機能として
は、車両重量を支持することと、車両走行時に生
ずる上下、前後、左右の各変動荷重を緩衝、吸収
することとがある。そして、車両の騒音、乗心地
のためには、この防振ゴムの剛性は低い方が望ま
しいが、このために剛性を低くすると、従来では
この低い剛性で車両重量を支持することになるた
め、車両搭載時に防振ゴムの撓み量が大きくな
り、耐久性が低下するとともに、車輪のアライメ
ントも重量による影響を受けやすいという不都合
を生ずることがあつた。

また、そのため、車両重量を支持するのと、車
両走行時の変動荷重を緩衝、吸収するのを分離し
た防振ゴムも提案されているが、この場合には構
造が複雑となり、製造コストも高くなるという不
都合があつた。

しかして、本考案の目的は、取付け使用状態の
常用作動荷重範囲では騒音低下、乗心地向上に適
した低い剛性とするが、それより小荷重範囲では
剛性を高くして取付時の撓み量を小さくでき、か
つ、簡単な構造とすることにある。

上記目的を達成する本考案の構成は、相対荷重
を生ずる一方の部材と他方の部材間に配設され、
取付け使用状態でこの両部材間に働く一定の荷重
が常時負荷される防振ゴムにおいて、前記一方の
部材と他方の部材間に２個のゴム弾性体を直列的
に配設し、いずれか一方のゴム弾性体を取付時の
荷重作用方向に予圧縮を付与して取付けたことに
ある。

本考案の防振ゴムは上記のような構成であるこ
とにより、次のように作用する。

防振ゴムに荷重が負荷されるとき、一方のゴム
弾性体に予圧縮された荷重域までは、予圧縮され
ていない他方のゴム弾性体のみが撓み、この他方
のゴム弾性体の剛性がそのまま防振ゴムの剛性と
して働く。次に、防振ゴムに予圧縮荷重以上の荷
重が負荷された場合には、一方と他方の両ゴム弾
性体が同時に撓むようになり、この両ゴム弾性体
は直列ばねを形成して、この両ゴム弾性体による
剛性が、防振ゴムの剛性となる。そして、この状
態における防振ゴムの剛性は、前述の予圧縮され
た荷重域までの剛性より低くなる。

すなわち、それぞれのゴム弾性体のばね定数を
K₁，K₂とし、K₂にW₀なる予圧縮荷重を負荷して
取付けたとすれば、防振ゴムに対する荷重がW₀
までは、ばね定数は予圧縮荷重が付与されていな
いゴム弾性体のばね定数K₁となり、W₀以上の荷
重となるとばね定数は（１／K₁＋１／K₂）^-1とな
り、ばね定数は低下する。

ところで、本考案の防振ゴムは、取付け使用状
態では一方の部材と他方の部材の両部材間に働く
一定の荷重が常時負荷された状態にあるが、この
取付け使用状態の常用作動荷重範囲は、防振ゴム
を形成する一方と他方の両ゴム弾性体が撓んで作
用する比較的剛性の低い状態にあるため、一方の
部材と他方の部材間に生ずる各種変動荷重を有効
に緩衝、吸収することができる。従つて、ストラ
ツト型懸架装置にこの防振ゴムを使用した場合に
は、騒音低下を図るとともに、乗心地を向上させ
ることができる。

また、一方の部材と他方の部材間への防振ゴム
の取付時には、一方のゴム弾性体は取付時の荷重
作用方向に予圧縮を付与して取付けられているた
め、この一方のゴム弾性体の予圧縮荷重域までは
予圧縮されていない他方のゴム弾性体が撓むのみ
であり、全体的にみてこの取付時における防振ゴ
ムの剛性は高く、従つて、防振ゴムの撓み量も少
なく、その結果、防振ゴムの耐久性を向上させる
ことができる。

また、本考案の防振ゴムは、直列的に配設する
ゴム弾性体のいずれか一方のゴム弾性体を、取付
時の荷重作用方向に予圧縮して取付けるのみであ
るため、極めて簡単な構造とすることができる。

以下、本考案の実施例を図面に基づいて説明す
る。なお、以下に示す各実施例は、すべて自動車
のストラツト型懸架装置の上部支持部に用いられ
る防振ゴムを示す。

第１図は本考案の第１の実施例を示す。

第１図において、１は防振ゴムを全体的に示し
たものである。そして、２は内筒であつて、スト
ラツト型懸架装置側の一方の部材を形成し、下方
部にはストラツト型懸架装置の上部軸部を回転自
在に支承するベアリング３が固定されている。４
は取付板であつて、車体側の他方の部材を形成
し、ボルト５により車体（図示せず）に取付けら
れている。

内筒２と取付板４との間には、一方と他方のゴ
ム弾性体としての第１のゴム弾性体６と第２のゴ
ム弾性体７が直列的に配設されて取付けられてい
る。図示の例では第１のゴム弾性体６は内筒２側
に設けられ、第２のゴム弾性体７は取付板４側に
設けられている。この第１のゴム弾性体６と第２
のゴム弾性体７との間には筒部８が設けられてお
り、第１のゴム弾性体６は内筒２の外面と筒部８
の内面に加硫接着により取付けられている。第２
のゴム弾性体７は筒部８の外面と取付板４との間
にあつて、取付板４の上下面に接着されており、
筒部８の下方部から延設したフランジ部８ａと、
筒部８の上方部にかしめにより固定された挾持板
９との間で図示で上下方向の予圧縮が付与されて
取付けられている。この第２のゴム弾性体７の予
圧縮方向はストラツト型懸架装置の荷重作用方向
Ｘと同方向とされている。

上述した構成から成る第１の実施例の作用は、
次のとおりである。

ストラツト型懸架装置を車体に取付けるときに
は、矢印Ｘ方向から防振ゴム１に車体の重量荷重
が作用する。ここで、第２のゴム弾性体７に付与
された予圧縮荷重がW₀とすれば、まず、W₀の荷
重までは第１のゴム弾性体６が撓み、次いで、荷
重が第２のゴム弾性体７の予圧縮荷重W₀以上と
なると、第１のゴム弾性体６と第２のゴム弾性体
７の両方が撓む。このときの防振ゴム１のばね特
性は第５図のＡで示す線図となる。この線図から
も分るように、第２のゴム弾性体７に付与された
予圧縮荷重W₀までは剛性が高く、荷重に対する
撓み量は少ない。W₀を越えると剛性は低くなり、
荷重に対する撓み量も多くなる。そして、車両搭
載時（取付時）の荷重はW₀よりやや大きいW₁と
なつており、このW₁の近傍荷重が常用作動荷重
範囲とされるが、この範囲の防振ゴム１の剛性は
上述したように低いため、ロードノイズ等の騒音
の改善、およびゴツゴツとした乗心地の改善を図
ることができる。また、取付荷重W₁までの防振
ゴム１の撓み量は第５図に示すようにδ₁であり、
この撓み量δ₁は、Ｃで示す従来の防振ゴム１によ
る場合の撓み量δ₃よりはるかに少ない。そのた
め、車両の積載条件による車輪のアライメント変
化が小さくなるとともに、防振ゴム１の耐久性を
向上させることができる。

第２図は第２の実施例を示す。

この第２の実施例は、上述の第１の実施例の構
成に追加して、内筒２の上方部に第３のゴム弾性
体２０を配設して取付けたものである。第３のゴ
ム弾性体２０は取付部材２１に加硫接着により取
付けられており、この第３のゴム弾性体２０に対
応して内筒２の上部にはフランジ部２ａが延設し
て形成されている。このフランジ部２ａと第３の
ゴム弾性体２０との間には取付状態において所定
の隙間が形成される。

上述の第２の実施例は、防振ゴム１にＸ方向か
ら過大な力が作用した場合、および車輪側へ過大
に引張られる場合を考慮して、前述した第１の実
施例の防振ゴム１の特性よりも高荷重域のばね定
数を大きくしたものであり、第１の実施例の作用
に追加して、次のような作用をなす。

矢印Ｘ方向から荷重が負荷され、その荷重が大
きい場合には、内筒２のフランジ部２ａの上面が
第３のゴム弾性体２０に当接し、防振ゴム１全体
のばね定数を急激に高くする。この時のばね特性
は第５図のＢで示され、撓み量δ₂の点がフランジ
部２ａに当接した点を示す。また、Ｘ方向と逆方
向に過大な荷重が作用した時には、内筒２のフラ
ンジ部２ａの下面が第１のゴム弾性体６に当接
し、荷重が急激に増加する特性となる。

第３図は本考案の第３の実施例を示す。

この第３の実施例は、第２のゴム弾性体７に付
与する予圧縮荷重の大きさを調整可能としたもの
である。その構成は、筒部８の外面にねじ３０を
刻設し、このねじ３０にナツト３１を螺合させ
て、このナツト３１と筒部８のフランジ部８ａと
の間に介挿される第２のゴム弾性体７の予圧縮荷
重を調整可能としたものである。なお、筒部８の
外面と第２のゴム弾性体７との間にはカラー３２
が介在されており、このカラー３２の取付け長さ
を適宜選定することにより、第２のゴム弾性体７
の予圧縮荷重が調整される。また、この例におい
ては第２のゴム弾性体７は特に接着式にする必要
はない。取付板４の上面に配設される弾性板３３
はゴムあるいは樹脂等から成り、ナツト３１と取
付板４との間で金属接触することによる異音の発
生を防止する。

第４図は本考案の第４の実施例を示す。

この第４の実施例は、騒音、乗心地の改善を図
る他に、操向安定性の向上を図るために、第１図
に示す第１の実施例における第１のゴム弾性体６
の中間部にリング状の環状挿入板４０を挿入し
て、第１のゴム弾性体６の上下方向のばね定数を
変えずに、左右方向のばね定数を大きくしたもの
である。

以上、本考案を図示した特性の実施例について
説明したが、本考案はかかる実施例に限定される
ものではなく、本考案の範囲内にてその他種々の
実施例が可能なものである。

例えば、前述の各実施例は防振ゴム１を自動車
のストラツト型懸架装置に使用された場合につい
て説明したが、本考案の防振ゴム１は、相対荷重
を生ずる一方の部材と他方の部材との間に、取付
け使用状態で一定の荷重が常時負荷される状態に
取付けられる箇所に使用することができるもので
あり、一般産業機械等には汎用に使用することが
できる。

また、前述の各実施例では、第２のゴム弾性体
７に予圧縮荷重を付与した場合について説明した
が、第１のゴム弾性体６に予圧縮荷重を付与して
もよい。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案にかかる防振ゴムの第１の実施
例を示す縦断面図、第２図は同第２の実施例を示
す縦断面図、第３図は同第３の実施例を示す縦断
面図、第４図は同第４の実施例を示す縦断面図、
第５図は防振ゴムの荷重と撓みの関係を示す線図
である。 符号の説明、１……防振ゴム、２……内筒（一
方の部材）、４……取付板（他方の部材）、６……
第１のゴム弾性体（他方のゴム弾性体）、７……
第２のゴム弾性体（一方のゴム弾性体）。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 相対荷重を生ずる一方の部材と他方の部材間に
   配設され、取付け使用状態でこの両部材間に働く
   一定の荷重が常時負荷される防振ゴムにおいて、
   前記一方の部材と他方の部材間に２個のゴム弾性
   体を直列的に配設し、いずれか一方のゴム弾性体
   を取付時の荷重作用方向に予圧縮を付与して取付
   けて、取付け使用状態の常用作動荷重範囲では剛
   性を低くするが、それより小荷重範囲では剛性を
   高くし、取付時の撓み量を小さくしたことを特徴
   とする防振ゴム。