JPH1161440A - 緑錆の早期発生性・密着性に優れるCuめっきステンレス鋼板およびその原板ならびに製造方法 - Google Patents

緑錆の早期発生性・密着性に優れるCuめっきステンレス鋼板およびその原板ならびに製造方法

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JPH1161440A
JPH1161440A JP23047397A JP23047397A JPH1161440A JP H1161440 A JPH1161440 A JP H1161440A JP 23047397 A JP23047397 A JP 23047397A JP 23047397 A JP23047397 A JP 23047397A JP H1161440 A JPH1161440 A JP H1161440A
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stainless steel
steel sheet
green rust
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JP23047397A
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Takeshi Shimizu
剛 清水
Masaji Hiraoka
正司 平岡
Masao Nagao
雅央 長尾
Masayoshi Tadano
政義 多々納
Yukio Uchida
幸夫 内田
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Nippon Steel Nisshin Co Ltd
Original Assignee
Nisshin Steel Co Ltd
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    • C23COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; CHEMICAL SURFACE TREATMENT; DIFFUSION TREATMENT OF METALLIC MATERIAL; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL; INHIBITING CORROSION OF METALLIC MATERIAL OR INCRUSTATION IN GENERAL
    • C23CCOATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
    • C23C28/00Coating for obtaining at least two superposed coatings either by methods not provided for in a single one of groups C23C2/00 - C23C26/00 or by combinations of methods provided for in subclasses C23C and C25C or C25D
    • C23C28/02Coating for obtaining at least two superposed coatings either by methods not provided for in a single one of groups C23C2/00 - C23C26/00 or by combinations of methods provided for in subclasses C23C and C25C or C25D only coatings only including layers of metallic material
    • C23C28/023Coating for obtaining at least two superposed coatings either by methods not provided for in a single one of groups C23C2/00 - C23C26/00 or by combinations of methods provided for in subclasses C23C and C25C or C25D only coatings only including layers of metallic material only coatings of metal elements only

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自然環境下で緑錆が早期に生成する安価なC
uめっきステンレス鋼板を提供する。 【解決手段】 0.3〜9g/m2のNiめっきとその上層の5
〜90g/m2のCuめっきからなる複層めっき層が、素地金
属の下に潜り込んだアンカー部を形成して素地のステン
レス鋼にタイトに密着しているCuめっきステンレス鋼
板。めっき原板には、フェライト系鋼種ではFe3+濃度
1〜50g/Lの塩化第二鉄水溶液中でアノード電流密度1.0
〜10.0kA/m2,カソード電流密度0.1〜3.0kA/m2とした0.
5〜5Hzの交番電解を、オーステナイト系鋼種ではFe3+
濃度30〜120g/Lの塩化第二鉄水溶液中でアノード電流密
度1.0〜10.0kA/m2,カソード電流密度0.3〜3.0kA/m2
した0.5〜5Hzの交番電解をそれぞれ10〜120秒間施して
形成した特異な表面凹凸形態を有する粗面化ステンレス
鋼板を用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、緑錆(みどりさ
び)の早期発生性・密着性に優れるCuめっきステンレ
ス鋼板およびその原板、ならびにそのめっき鋼板の製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】銅板は、ある腐食環境下に曝された場合
に銅特有の青緑色の腐食生成物を生じ、この腐食生成物
が銅板表面を均一に覆うと独特の美麗で重厚な外観を呈
するようになる。このため、例えば神社や仏閣の屋根
等、特有の用途における外装材料として、銅板は古くか
ら使用されている。銅板に生じる青緑色の腐食生成物は
一般に緑青(ろくしょう)と呼ばれることが多いが、そ
の腐食生成物の化学組成や外観上の色合いは曝される環
境等によって微妙に変化し、必ずしも一様ではない。そ
こで、銅を主体とした材料表面に生じる青緑色あるいは
緑色の腐食生成物を、ここでは「緑錆(みどりさび)」
と呼ぶことにする。
【0003】一般に、自然環境下で銅板の表面が緑錆で
均一に覆われるようになるまでには十数年と長い年月を
要するとされる。これは、もともとCuは耐食性の高
い材料であり、腐食生成物の生成速度が遅いこと、生
じた腐食生成物の多くは雨水によって流されてしまうこ
となどが原因と考えられる。また、銅板は高価な材料で
もある。そこで近年、銅板に替わる安価な耐食材料であ
って、より早期に均一な緑錆が生成する外装用板材のニ
ーズが高まっている。
【0004】銅板とよく似た外観を呈する材料として、
Cuめっきステンレス鋼板がある。Cuめっきステンレ
ス鋼板は銅板に比べ安価であり、また、銅板よりも緑錆
の生成・被覆が早いとも言われている。その理由とし
て、Cuめっき層の下地として形成させるNiめっき層
の存在が考えられる。すなわち、ステンレス鋼表面に直
接Cuめっきを付着させることは困難であるため、市販
のCuめっきステンレス鋼板では通常、ステンレス鋼表
面にまず下地のNiめっきを施し、その上にCuめっき
を施すことによってステンレス鋼素地とCuめっき層の
密着性を確保している。このような材料を自然環境に曝
すと、表面のCuが腐食し、その腐食が下地のNiまで
達したときその周辺でCuとNiの局部電池が形成さ
れ、その箇所を中心にCuの腐食が促進されて、結果的
に早期に緑錆に覆われるものと推測される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このようなC
uめっきステンレス鋼板といえども、自然環境下での緑
錆の均一発生までには数年かかると言われており、緑錆
の早期発生性に関しては未だ満足できるレベルではな
い。これは、外装用のCuめっきステンレス鋼板の場
合、Cuめっきの付着量は片面90g/m2以上と、電
気めっきにしてはかなり多い付着量にせざるを得ないか
らである。なぜならば、銅板と同様に、屋根などで雨が
強く吹き付ける箇所、あるいは雨水の通り道となる箇所
では、生成した緑錆が雨水とともに流失しやすく、その
ような部分ではCuの消耗が著しくなる傾向にある。C
uめっきステンレス鋼板の場合は銅板と異なり、Cuめ
っき層の厚みをできるだけ厚くしておかないとCuの消
耗が著しい部分で素地のステンレス鋼が露出して意匠性
を損なう恐れがあるからである。したがって、電気めっ
きでは付着量を多くするほどコスト的に不利になるにも
かかわらず、そうせざるを得なかった。一方、銅板ある
いはCuめっき鋼板の表面に予め人工的に緑錆を生成さ
せた、いわゆる人工緑青銅板/鋼板も種々開発されてい
る。しかし、これらも高価であり、一般的な建築物に広
く普及するには至っていない。
【0006】そこで本発明は、Cuめっきステンレス鋼
板において、従来よりもCuめっきの付着量を少なく
し、かつ生成した緑錆が流失しにくくすることによっ
て、自然環境下でより一層早く緑錆による被覆に覆われ
る安価な材料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は、薄いNiめ
っきとその上層のCuめっきからなる複層めっき層が、
素地金属の下に潜り込んだアンカー部を形成して素地の
ステンレス鋼にタイトに密着している、緑錆の早期発生
性・密着性に優れるCuめっきステンレス鋼板によって
達成される。そのアンカー部は、下記(1)で定義するア
ンカー密度Aが0.05〜1.5の範囲となる密度で存在
していることが望ましい。 (1)アンカー密度A:鋼板断面の顕微鏡観察像におい
て、50μm以上の長さの測定範囲を定め、当該測定範
囲内でめっき層が素地金属の下に潜り込んでいる部分の
個数nを測定し、その個数nを測定範囲の長さ(μm)
で除した値をAとする。複層めっき層は鋼板の少なくと
も片面に形成されるが、本発明では特に片面あたりの付
着量として、Niめっきを0.3〜9g/m2、その上層
のCuめっきを5〜90g/m2の範囲に規定したCu
めっきステンレス鋼板を提供する。
【0008】また本発明では、鋼板表面にピット未発生
部分の面積率が60%以下であるように高密度に、また
は必要に応じて実質上隙間なくピットが形成しており、
下記(2)で定義するオーバーハング密度Kが0.05〜
1.5の範囲となる粗面化表面を有する、緑錆の早期発
生性・密着性に優れるCuめっき用ステンレス鋼原板を
提供する。 (2)オーバーハング密度K:めっき原板断面の顕微鏡観
察像において、50μm以上の長さの測定範囲を定め、
当該測定範囲内でピット内壁面が断面曲線の平均線の方
向より下側に向いている部分(=オーバーハング部)の
個数nを測定し、その個数nを測定範囲の長さ(μm)
で除した値をKとする。ここで断面曲線とは当該断面に
現れるめっき原板最表面の輪郭をいい、断面曲線の平均
線とは定めた測定範囲において、その断面曲線までの偏
差の二乗和が最小になるように設定した直線または曲線
をいい、下側とは板厚中央部側をいう。ここで定義した
断面曲線およびその平均線は、表面粗さの定義と表示に
関するJIS B 0601において定義されている「断面曲線」
および「断面曲線又は粗さ曲線の平均線」と同様の概念
である。なお、ピット未発生部分の面積率とは、めっき
原板表面の垂直投影面積に占めるピット未発生部分の面
積の割合(%)をいう。
【0009】また本発明では、Fe3+濃度:1〜50g
/L(リットル)の塩化第二鉄水溶液中で、アノード電
解時の電流密度:1.0〜10.0kA/m2,カソード
電解時の電流密度:0.1〜3.0kA/m2とした0.5
〜5Hzの交番電解をフェライト系ステンレス鋼板に1
0〜120秒間施して形成させた粗面化表面上、または
Fe3+濃度:30〜120g/Lの塩化第二鉄水溶液中
で、アノード電解時の電流密度:1.0〜10.0kA/
2,カソード電解時の電流密度:0.3〜3.0kA/
2とした0.5〜5Hzの交番電解をオーステナイト系
ステンレス鋼板に10〜120秒間施して形成させた粗
面化表面上に、付着量0.3〜9g/m2の電気Niめっ
きを施し、次いで付着量5〜90g/m2の電気Cuめ
っきを施す、緑錆の早期発生性・密着性に優れるCuめ
っきステンレス鋼板の製造方法を提供する。ここで、電
流密度,交番電解を施す時間,およびNiめっきとCu
めっきの付着量はそれぞれ鋼板片面あたりの規定値であ
り、本発明ではこの規定に従う処理を鋼板の片面または
両面に施す。
【0010】さらに本発明では、鋼板が特に板厚0.2
〜1.0mmの薄鋼帯である場合の、上記Cuめっきス
テンレス鋼板もしくはCuめっき用ステンレス鋼原板、
または上記Cuめっきステンレス鋼板の製造方法を提供
する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らは、Cuめっきステン
レス鋼板に関して、表層に生成した緑錆をできるだけ流
出しにくくする方法について種々検討し、表面を粗面化
したステンレス鋼板にめっきを施すことを考えた。そこ
でまず、ダルロールによって表面凹凸を形成したステン
レス鋼板を準備し、これにNiめっきおよびその上層に
Cuめっきを施した。そして、腐食促進試験にかけて緑
錆の保持性を調べた。しかし、粗面化処理を施していな
いめっき原板を用いた従来からのCuめっきステンレス
鋼板と比較しても、緑錆の保持性はあまり改善されてお
らず、早期に鋼板表面を均一な緑錆で被覆することは困
難であった。つまり、表面に凹凸を形成した鋼板をめっ
き原板として使用したからといって、緑錆の流出は簡単
に抑制できるものではないことがわかった。そこでさら
に研究を重ねた結果、薄いNiめっきとその上層のCu
めっきからなる複層めっき層が、特定の形態を有しなが
らステンレス鋼板表面の凹凸に食い込んで存在している
とき、そのCuの腐食生成物は流出しにくくなり、早期
に均一な緑錆被覆を形成することが可能であることを本
発明者らは見出した。
【0012】図1に、本発明のCuめっきステンレス鋼
板の断面の電子顕微鏡(SEM)写真の一例を示す。白
く見える部分がめっき原板(SUS304)である素地金属、
グレーに見える部分がめっき層である。この例は、1g
/m2のNiめっきと、その上層に18g/m2のCuめ
っきを施したものである。Niめっき層は素地金属との
境界近傍に存在するが、薄いためこの写真からは識別で
きない。したがって、この写真でグレーに見える部分の
ほとんどはCuめっき層からなる部分であると考えてよ
い。
【0013】図2は、図1の断面写真の拡大スケッチで
ある。図2中に、測定範囲として定めた長さ75μmの
範囲を示すとともに、その測定範囲内で、薄いNiめっ
きとその上層のCuめっきからなる複層めっき層が、素
地金属の下に潜り込んだ「アンカー部」を形成している
箇所を矢印で示した。この例では測定範囲75μmあた
りアンカー部の個数は22個である。したがって、前述
の(1)の定義に従うとアンカー密度Aは22/75によ
り、0.29(個/μm)と求められる。
【0014】この例のように、めっき層がアンカー部を
形成しながらステンレス鋼板表面の凹凸に食い込んで存
在しているCuめっきステンレス鋼板では、そのめっき
層を構成しているCuが緑錆に変わったとき、その緑錆
は素地金属あるいは未だ腐食されずに残留しているめっ
き金属にタイトに固着して雨水等による流失が顕著に抑
制されることがわかった。その結果、生成した緑錆の堆
積が促進されて鋼板表面は早期に緑錆に覆われるように
なる。
【0015】本発明者らの研究によると、前記(1)で定
義したアンカー密度Aが0.05〜1.5の範囲となると
き、建築物の外装材として特に優れた緑錆の早期発生性
を示す。アンカー密度Aが0.05未満の場合、特にC
uめっきステンレス鋼に曲げ加工を施した部分におい
て、生成した緑錆の固着作用が弱まるため、緑錆の剥離
やステンレス鋼素地の露出が比較的早期から生じるよう
になる。外装用鋼板は曲げ加工を施して施工されるのが
ほとんどであるため、本発明においてはアンカー密度A
は0.05以上であることが望ましい。一方、アンカー
密度Aが1.5を超えるような場合には素地金属の凹凸
サイズ(開口径および深さ)が小さくなりすぎており、
アンカー部の数は多いにもかかわらず緑錆を拘束する力
が十分に得られないため、却って緑錆の堆積を阻害する
ことになる。このため、アンカー密度Aは1.5以下で
あることが望ましい。
【0016】なお、上記(1)で定義したとおり、アンカ
ー密度Aを求める際には少なくとも50μm以上の長さ
の測定範囲を確保する必要がある。鋼板断面に観察され
る隣り合ったアンカー部同士の間隔には局所的に多少の
バラツキが見られるが、連続した50μm以上の測定範
囲においてアンカー密度Aが0.05〜1.5の値になっ
ていれば、そのCuめっきステンレス鋼板は加工部にお
いても緑錆の保持性に優れることが経験的に確認でき
た。
【0017】本発明のCuめっきステンレス鋼板では、
Cuめっき層の下に薄いNiめっき層を有している。先
述のように、このNiめっき層は、ステンレス鋼とCu
めっきとの密着性を確保するとともに、腐食箇所周辺で
CuとNiの局部電池を形成してCuの腐食生成物の生
成を促進させるという重要な役割を果たす。
【0018】また、本発明のCuめっきステンレス鋼板
では生成した緑錆の保持性が極めて高いため、緑錆が流
失する箇所で局部的にCuの消耗が激しくなって意匠性
を損なうといった従来のCuめっきステンレス鋼が抱え
ていた問題も回避される。このため、従来と比べ飛躍的
にCuめっきの付着量を少なくすることができる。つま
り本発明では、Cuめっき層を薄くすることによりNi
との局部電池の形成を早めることが可能になり、緑錆の
流失抑制による堆積促進効果と相まって、結果的に均一
な緑錆の被覆を早期に達成することができるのである。
具体的には、Cuめっきの付着量は鋼板片面当たり5〜
90g/m2と、外装用としてはかなり薄目付けにする
ことができる。Cu付着量が5g/m2未満では緑錆の
成分となるCuの絶対量が不足することから鋼板全面を
緑錆で均一に覆うことが難しくなる。一方、90g/m
2を超える付着量では、Cuの腐食がNiめっき層に達
するまでの時間が従来と同様長くなり、緑錆の早期発生
性は劣ってしまう。したがって、Cuめっきの付着量は
5〜90g/m2とすることが望ましい。なお、Cuめ
っきの付着量を5〜90g/m2とするとき、Niめっ
きの付着量は0.3〜9g/m2とすることによって、C
uめっきの密着性と局部電池の形成能を十分確保するこ
とができる。
【0019】次に、めっき原板について説明する。図3
に、本発明に係るCuめっき用ステンレス鋼原板(SUS4
44)の粗面化表面を真上から観察した電子顕微鏡(SE
M)写真を示す。鋼板表面に実質上隙間なく形成したピ
ットの開口部の形態が蜂の巣状に表れている。図4に、
このステンレス鋼原板の断面の電子顕微鏡(SEM)写
真を示す。半球状のピットや、開口部が内部よりも狭く
なったピットが多数観察され、本発明のめっき原板の特
徴的な粗面化形態を呈している。また、この例ではピッ
トは実質上隙間なく形成しており、隣り合ったピット同
士の境界が鋭く切り立っている様子がわかる。
【0020】図5は、図4の断面写真の拡大スケッチで
ある。図5中に、測定範囲として定めた長さ75μmの
範囲を示すとともに、その測定範囲内でピット内壁面が
断面曲線の平均線の方向より下を向いている部分(=オ
ーバーハング部)を矢印で示した。この例では測定範囲
75μmあたりオーバーハング部の個数は25個であ
る。したがって、前述の(2)の定義に従うとオーバーハ
ング密度Kは25/75により、0.33(個/μm)
と求められる。
【0021】本発明のCuめっき用ステンレス鋼原板
は、鋼板表面に形成した特殊な形態の凹凸によって、め
っき層、およびそのめっき金属が腐食して生成した腐食
生成物を鋼板表面にタイトに固着させるものである。本
発明者ら研究の結果、前記(2)で定義したオーバーハン
グ密度Kが0.05〜1.5の範囲となるような粗面化表
面を形成しているめっき原板上に、電気めっき法で薄い
Niめっきとその上層にCuめっきを施したとき、その
めっき層は原板にタイトに密着するとともに、生成した
緑錆は鋼板表面から流失しにくくなることがわかった。
その結果、緑錆の鋼板表面への堆積が促進され、早期に
均一な緑錆に覆われるようになる。オーバーハング密度
Kが0.05未満の場合、めっき後の鋼板において先述
のアンカー密度Aの値が0.05以上のものが得られ
ず、加工部での緑錆の剥離やステンレス鋼素地の露出が
生じやすい。一方、オーバーハング密度Kが1.5を超
えるような場合には、ピット開口部の径が小さくなりす
ぎており、かつピット内面の曲率もかなり小さくなって
いるため、ピット内面へのめっきの付き廻り性が低下す
る恐れがある。このため、タイトに密着しためっき層が
得られない場合もあり、却って緑錆は流失しやすくな
る。したがって、本発明のCuめっき用ステンレス鋼原
板はオーバーハング密度Kが0.05〜1.5のものに限
定する。
【0022】また、めっき原板の粗面化表面において、
ピットはできるだけ高密度に存在していることが望まし
い。ピット未発生部分の面積率が60%以下となるよう
にピットが高密度に存在する状態でオーバーハング密度
Kが上記の所定範囲にあるとき、緑錆の堆積促進効果が
大きくなり、緑錆の早期発生性に優れるCuめっきステ
ンレス鋼板が得られる。特に、鋼板表面に実質上隙間な
くピットが存在しているとき、各ピットの開口部は隣り
合ったピットとの間に鋭く切り立った境界を形成し、め
っき層および腐食生成物に対して最も大きな固着力を発
揮する。
【0023】次に、緑錆の早期発生性・密着性に優れる
Cuめっきステンレス鋼板の製造方法について説明す
る。めっき原板としては塩化第二鉄中での交番電解によ
って表面を粗面化したステンレス鋼板を用いる。以下
に、交番電解処理の条件について述べる。
【0024】〔電解液〕本発明では、Fe3+を含む電解
液を使用することが必須要件である。これは、本発明の
交番電解では、ピット内でFe3++3OH-→Fe(O
H)3の反応を起こしてピット内壁をFe(OH)3で保
護し、フラットな部分に新たなピットを形成させるとい
うメカニズムを利用するからである。したがって、Fe
3+を含まない塩化第一鉄,硝酸,塩酸,硫酸等の電解液
中での交番電解では、上記メカニズムを利用した電解粗
面化が行えない。さらに、本発明ではステンレス鋼を対
象とするので、電解液中にはステンレスの酸化作用を促
進するNO3 -,SO4 2-といったイオンが含まれていな
いことも、孔食、すなわちピット形成を容易にさせ、短
時間での粗面化処理を可能にするための重要な条件とな
る。このような観点から、本発明ではFe3+を含む塩化
第二鉄水溶液を使用する。
【0025】電解液のエッチング力と形成されるピット
の形状との間には密接な関係がある。電解液のエッチン
グ力が弱いと浅めのピットが形成されやすく、エッチン
グ力が増すにつれて半球状あるいは鍵穴状といったピッ
ト開口部の大きさの割には深さのあるピットが形成され
るようになる。このような現象が起こる理由については
現時点では不明な点も多いが、恐らく、電解液のエッチ
ング力を強めるとステンレス鋼板の不動態化作用が低下
し、その結果、深さ方向へのピット成長が促進されるも
のと考えられる。したがって、アンカー効果の高い粗面
化表面を形成させるためには、電解液の濃度および液温
を管理する必要がある。
【0026】エッチング力に及ぼす塩化第二鉄の濃度お
よび液温の影響は、ステンレス鋼に含まれる化学成分に
よって多少異なる。工業的に管理しやすい30〜70℃
の液温範囲において、フェライト系ステンレス鋼では電
解液中に含まれるFe3+濃度が1〜50g/L、オース
テナイト系ステンレス鋼では30〜120g/Lとなる
ように塩化第二鉄濃度をコントロールすることが望まし
い。
【0027】しかし、本発明の電解処理では、カソード
電解時にH2発生とともにFe3++e-→Fe2+なる還元
反応が起こる。一方、アノード電解時にステンレス鋼か
ら溶出するFeはFe2+であることから、処理時間の経
過とともに電解液中では粗面化処理に必要なFe3+の濃
度が低下する。したがって、工業的規模での連続生産に
対応するためには、Fe3+濃度を常に適正範囲に保つよ
うな操作が必要である。例えば、Fe3+の消費に合わせ
て新液を添加する、あるいは電解液中に生成したFe2+
をFe3+に酸化する周知の方法を用いてFe3+濃度を調
整すればよい。
【0028】〔アノード電解〕アノード電解の目的は、
ステンレス鋼板表面にピットを形成させることである。
アノード電流密度が1.0kA/m2未満では活性溶解が
起こるだけでステンレス鋼板表面にピットを形成するこ
とができない。一方、10.0kA/m2を超えるとCl
-イオンの分解反応をともなうようになり、作業効率と
作業環境がともに悪化する。したがって、アノード電流
密度は1.0〜10.0kA/m2の範囲とする。また、
交番電解1サイクルあたりのアノード通電時間は、ステ
ンレス鋼板表面に形成される球面状のピットの開口径と
直接関係し、1サイクルあたりのアノード通電時間が長
くなるほどピットの開口径はアノード電流密度とは無関
係に増大する。オーバーハング密度Kが0.05〜1.5
の範囲のアンカー効果の高い粗面化表面を得るために、
1サイクルあたりのアノード通電時間を0.05〜1s
ecとすることが望ましい。
【0029】〔カソード電解〕カソード電解の目的は、
ステンレス鋼板表面でH2を発生させ、ピット内壁にF
e(OH)3の保護皮膜を形成させること、およびピッ
ト未発生部分を活性化させることである。そのためカソ
ード電流密度の下限は、電解液中のFe3+の還元反応の
限界電流密度より高くしてH2発生領域の値となるよう
に設定しなければならず、塩化第二鉄濃度,液温あるい
は流速等によって多少変動するが、フェライト系ステン
レス鋼に適用する電解液であればほぼ0.1kA/m2
上、オーステナイト系ステンレス鋼の適用電解液であれ
ばほぼ0.3kA/m2以上あればよい。一方、過剰なH
2発生はピット内壁に形成したFe(OH)3の保護皮膜
をも取り去る恐れがあり、その場合にはステンレス鋼板
表面に良好な形状のピットを高密度に形成することが難
しい。このためカソード電流密度の上限は3.0kA/
2とし、H2発生量が過剰にならない程度にとどめる必
要がある。したがって、カソード電流密度は、フェライ
ト系ステンレス鋼では0.1〜3.0kA/m2、オース
テナイト系ステンレス鋼であれば0.3〜3.0kA/m
2とする。また、カソード電解の目的を達成するための
交番電解1サイクルあたりのカソード通電時間は0.0
1sec以上とすることが望ましい。
【0030】〔交番電解サイクル〕交番電解1サイクル
あたりの適正通電時間は、アノード電解で0.05〜1
sec、カソード電解では0.01sec以上とするの
がよいことを述べたが、工業的規模での交番電源を考慮
した場合、アノードとカソードの通電時間は1:1とす
ることがコスト的な面から望ましい。このことから、交
番電解のサイクルは0.5〜5Hzの範囲とするのがよ
い。
【0031】〔電解処理時間〕交番電解に要する処理時
間が10secに満たないと、ステンレス鋼板表面にピ
ット未発生箇所が多く残り、めっき層や生成した緑錆に
対するアンカー効果が十分に得られない。一方、120
secを超えて電解しても粗面化形態に大きな差はな
く、それ以上の処理は経済上不利になる。したがって、
本発明の交番電解に要する処理時間は10〜120se
cとする。これは、工業的規模での連続生産に十分対応
できる処理時間といえる。
【0032】以上のような交番電解によって粗面化した
ステンレス鋼板の粗面化表面上に、電気めっき法により
Niめっき、およびCuめっきを施す。 〔Niめっき浴〕Cuめっきの下地として形成させるN
iめっきには、緑錆の発生を促す他、ステンレス鋼板と
Cuめっき層の密着性を確保する目的がある。そのた
め、Niめっき層自体にステンレス鋼板との良好な密着
力を必要とする。Ni析出時の電析効率を50%以下に
下げたNiめっき浴を用いるのがよく、その浴の種類と
しては、全塩化物塩Niめっき浴,全硫酸塩Niめっき
浴,ワット浴等を用いることができる。
【0033】〔Cuめっき浴〕Cuめっき浴としては、
ピロリン酸銅めっき浴,シアン化銅めっき浴,硫酸銅め
っき浴,あるいは光沢剤を添加した光沢硫酸銅めっき浴
等を用いることができる。
【0034】本発明に係るCuめっきステンレス鋼板、
またはそのめっき原板は、外装用途における施工時の取
り扱い性や耐久性を考慮して、板厚0.2〜1.0mmの
薄板とすることが望ましい。そして、上記製造方法に従
えば連続生産が可能であり、特に長尺が必要とされる屋
根材などへの適用を考慮した場合、板厚0.2〜1.0m
mの薄鋼帯として提供することが好ましい。また、めっ
き原板としては、使用される環境や用途に応じて種々の
ステンレス鋼種が採用できる。
【0035】
【実施例】
〔実施例1〕各ステンレス鋼種において、適正な電解液
の条件を調べた。板厚0.4mmのSUS430,SU
S444,SUS304,SUS316の各種2D仕上
げ材のステンレス鋼板に通常の電解脱脂・酸洗を施した
材料について、塩化第二鉄水溶液の温度および電解液中
に含まれるFe3+の濃度を塩化第二鉄により種々変えた
条件の電解液を使用して、アノード電流密度を5.0k
A/m2,カソード電流密度を0.1〜3.0kA/m2
交番電解サイクルを2.5Hz,処理時間を30sec
とした条件で電解処理を行い、それぞれの鋼種について
適正な電解液の条件範囲を調査した。
【0036】図6にその結果を示す。図6中、各鋼種ご
とに枠で囲まれた領域が、その鋼種について前記(2)で
定義したオーバーハング密度Kが0.05〜1.5となる
粗面化表面を安定して形成できる電解条件の範囲を表
す。一般的に不動態化作用が強いとされる鋼種ほど適正
範囲は高濃度・高温度側となる。このことからわかるよ
うに、本発明で規定するアンカー効果の高い粗面化表面
を形成するには、その鋼種の不動態化力と液のエッチン
グ力のバランスが適正になるように、電解液の濃度・液
温を調整することが重要である。本発明者らの調査の結
果、主要なステンレス鋼種においては工業上管理しやす
い30〜70℃の液温範囲において適正な塩化第二鉄濃
度を設定することが可能であり、具体的にはフェライト
系鋼種では1〜50g/Lの範囲に、オーステナイト系
鋼種では30〜120g/Lの範囲に塩化第二鉄濃度を
それぞれ調整することが望ましい。
【0037】〔実施例2〕Cuめっきステンレス鋼板の
アンカー密度Aの値と、緑錆被覆の生成状況の関係につ
いて調べた。まず、板厚0.35mmのSUS304の
2B仕上げ材に通常の電解脱脂・酸洗を施した材料につ
いて、Fe3+を50g/L含み、液温が40℃の塩化第
二鉄水溶液を用いて、アノード電流密度を3.0kA/
2,カソード電流密度を0.5kA/m2,処理時間を
60secと一定にして、交番電解サイクルを0.15
〜10Hzの範囲内で変えた条件で電解処理を行い、ピ
ット平均径が種々の段階にあるめっき原板を作製した。
いずれのめっき原板も鋼板表面にピットが実質上隙間な
く形成しており、半球状、あるいは開口部が内径よりも
狭い鍵穴状のピットが多く存在していた。次に、各原板
につき、粗面化表面上に以下の条件で電気Niめっきと
その上層に電気Cuめっきを施した。
【0038】(Niめっき) ・めっき浴:全塩化物塩Niめっき浴 塩化ニッケル(NiCl2・6H2O):150g/L 塩酸(HCl):30g/L ・Ni電析効率:20% ・液温:60℃ ・電流密度:1.0kA/m2 ・付着量(片面):1g/m2 (Cuめっき) ・めっき浴:硫酸銅めっき浴 硫酸銅(CuSO4・5H2O):220g/L 硫酸(H2SO4):50g/L ・液温:30℃ ・電流密度:1.0kA/m2 ・付着量(片面):25g/m2
【0039】得られたCuめっきステンレス鋼板につい
て、その断面を電子顕微鏡(SEM)で観察して、前記
(1)で定義したアンカー密度Aの値を求めた。また、各
めっき鋼板について、緑錆の発生しやすさを以下の方法
で評価した。まず、得られた鋼板にロールフォーミング
加工を施し、平坦部と、90°曲げ加工部(曲げコーナ
ー部;1R,凸側を評価する)を有する試験片を作製し
た。そして各試験片について、「JIS S 2371に従った塩
水噴霧:120hr」→「自然乾燥:24hr」→「JI
S D 0203 S1に準ずる降雨量を連続噴水:24hr」を
1サイクルとしたサイクル腐食試験を10サイクル実施
した。試験後のサンプルについて、平坦部における緑錆
被覆面積率(%)、および曲げ加工部(凸側)における
緑錆の残存状況を調べた。
【0040】表1に、アンカー密度Aの値と、上記腐食
試験による評価結果を示す。A値が0.05未満のサン
プルaでは、原板に形成しているピットは内径,深さと
もにサイズの大きいものが主体であり、この場合、平坦
部は完全に緑錆で覆われていたが、加工部においてはピ
ット径が大きいために加工時のピットの広がりも大き
く、アンカー効果が薄れるため、緑錆の剥離が見られ
た。A値が0.05〜1.5の範囲内にあるサンプルb,
c,d,eでは平坦部での緑錆被覆面積率が高く、かつ
加工部においても緑錆の剥離やステンレス鋼素地の露出
は見られなかった。A値が1.5を超えるサンプルf,
gでは、アンカー部の数は多いものの、平坦部,加工部
とも生成した緑錆が流されて素地のステンレス鋼が露出
している箇所があった。これは、原板に形成しているピ
ットの開口部が小さくなっているため、ピット内部への
めっきの付き廻り性(ひいてはピット内部への緑錆の食
い込み性)が悪くなるとともに、アンカー部のサイズ自
体が小さいために十分なアンカー効果が発揮できなかっ
たものと考えられる。
【0041】〔実施例3〕Cuめっきの付着量と、緑錆
被覆の生成状況の関係について調べた。まず、板厚0.
3mm,幅300mmのSUS304の2B仕上げ材の
鋼帯に、通常の電解脱脂・酸洗を施した後、液温50
℃,Fe3+濃度70g/Lの塩化第二鉄水溶液中で、ア
ノード電流密度5.0kA/m2,カソード電流密度1.
0kA/m2,処理時間45sec,交番電解サイクル
2.5Hzと一定にして電解粗面化処理を施した。得ら
れた粗面化表面にはピットが実質上隙間なく形成してい
た。そして、半球状,あるいは鍵穴状のピットが多数存
在しており、前記(2)で定義したオーバーハング密度K
の値は0.2前後に収まっていた。次に、これらの鋼帯
を連続電気めっきラインに通板し、下地のNiめっきと
上層のCuめっきを連続的に施した。その際、Cuめっ
き付着量はライン速度を変えることで調整し、下地のN
iめっき付着量は電流密度を変えることで常に1g/m
2となるようにした。めっき条件は以下のとおりであ
る。
【0042】(Niめっき) ・めっき浴:全硫酸塩Niめっき浴 硫酸ニッケル(NiSO4・6H2O):300g/L 硫酸ナトリウム(Na2SO4):100g/L 硫酸(H2SO4):30g/L ・Ni電析効率:10% ・液温:60℃ ・電流密度:可変 ・付着量(片面):1g/m2 (Cuめっき) ・めっき浴:硫酸銅めっき浴 硫酸銅(CuSO4・5H2O):220g/L 硫酸(H2SO4):50g/L ・液温:30℃ ・電流密度:1.5kA/m2 ・付着量(片面):2〜180g/m2
【0043】Cuめっき付着量の異なる部分から採取し
た各サンプルにつき、実施例2と同様のサイクル腐食試
験を行い、平坦部の緑錆被覆面積率(%)を評価した。
また、比較として、SUS304の2B仕上げ材の鋼帯
に電解処理を行わず直接NiめっきとCuめっきを施し
たもの、およびJIS C 1020Pの銅板も用意して同様の試
験に供した。その結果を表2に示す。No.1はCuめっき
の付着量が少なすぎたため、試験面全体を緑錆で被覆す
るにはCuの絶対量が足りなかったものである。No.2〜
6は従来の外装用Cuめっきステンレス鋼板と比べかな
りCu付着量を低減したものであり、非常に高い緑錆被
覆面積率を示している。これは、Cu付着量が少ない
(Cuめっき層が薄い)ため表面のCuの腐食が早期に
下地のNiに到達し、その周辺での緑錆の生成が促進さ
れるとともに、アンカー効果を高めた表面凹凸により緑
錆の流失が抑制され、その結果、早期に緑錆が表面に堆
積したものと考えられる。No.7,8は従来の外装用Cu
めっきステンレス鋼板と同程度あるいはそれ以上の厚い
Cuめっきを施したものであるため、アンカー効果を高
めた表面凹凸による緑錆の流失抑制が効かず、さらには
Cuの腐食もほとんど下地のNiにまでは達しないた
め、緑錆の生成は遅かった。一方、No.9は原板の電解処
理を行っていないものであり、原板に緑錆の保持力がな
いため生成した緑錆が降雨試験時に流失して試験面の大
部分で素地のステンレス鋼が露出してしまったものであ
る。
【0044】〔実施例4〕めっき用ステンレス鋼原板の
電解処理条件と、その原板を用いたCuめっきステンレ
ス鋼板における緑錆被覆の生成状況の関係について調べ
た。板厚0.3mmのSUS444およびSUS304
の2D仕上げ材に通常の電解脱脂・酸洗を施した鋼板に
ついて種々の条件で液温50℃の塩化第二鉄水溶中で液
電解処理を行い、表面を粗面化した。これら各鋼板をめ
っき原板として、粗面化表面上にNiめっき,Cuめっ
きを順次施した後、ロールフォーミング加工を行い、サ
イクル腐食試験に供した。そして、90°曲げ加工部
(凸部)における緑錆の残存状況を調査した。めっき条
件,加工条件,腐食試験条件,緑錆の残存状況の評価方
法は実施例2と同じである。これらの結果を表3,表4
に示す。また、比較のために、塩化第二鉄以外の電解液
を用いて電解処理したサンプルについても同様の調査を
行った。その結果を表5に示す。
【0045】表3に示す本発明の電解条件で処理を行っ
たNo.11〜20のサンプルは、いずれも表面にピットが実
質上隙間なく形成しており、前記(2)で定義したオーバ
ーハング密度Kの値は0.05〜1.5の範囲にあった。
そして、いずれも90°曲げ加工部(凸部)において緑
錆がきれいに残存していた。交番電源波形は矩形波,台
形波,正弦波(交流波)等の各種交番波形が利用できる
ことがわかる。
【0046】これに対し、表4,表5に示すように、本
発明の規定範囲を外れる条件で電解処理を行ったサンプ
ルでは90°曲げ加工部(凸部)で緑錆の剥離が見ら
れ、サンプルによっては一部素地のステンレス鋼が露出
しているものもあった。なお、これらのうち、No.21,2
4は浅いお椀型状のピットしか得られず、K値が0とな
ったもの、No.26はピットのサイズが大きくなってK値
が0.05未満となったもの、No.28はピットのサイズが
小さくなってK値が1.5を超えたもの、No.22,23,2
5,27は鋼板表面にピット未発生部分(未電解部分)が
面積率60%を超えて残存したものである。また、No.2
9,30は電解処理を行わず直接、電気Niめっき,電気
Cuめっきを施したものである。
【0047】〔実施例5〕Cuめっき用ステンレス鋼原
板の表面仕上げと、その原板を用いたCuめっきステン
レス鋼板における緑錆被覆の生成状況の関係について調
べた。板厚0.35mmのSUS304について、2D
R(ダルロール圧延)仕上げ材に通常の電解脱脂・酸洗
を施した鋼板を、液温40℃,Fe3+濃度55g/Lの
塩化第二鉄水溶液を用いてアノード電流密度5.0kA
/m2,カソード電流密度0.75kA/m2,交番電解
サイクル5.0Hzと一定にし、処理時間を変えた条件
で電解処理した原板、No.4仕上げ(粗面化処理せ
ず)の原板、2DR仕上げ(粗面化処理せず)の原板を
準備し、以下の条件でNiめっき,Cuめっきを順次施
した。
【0048】(Niめっき) ・めっき浴:ワット浴 硫酸ニッケル(NiSO4・6H2O):150g/L 塩化ニッケル(NiCl2・6H2O):45g/L ほう酸(H3BO4):30g/L 塩酸(HCl):20g/L ・Ni電析効率:30% ・液温:60℃ ・電流密度:0.6kA/m2 ・付着量(片面):2g/m2 (Cuめっき) ・めっき浴:ピロリン酸銅めっき浴 ピロリン酸銅(Cu2P2O7・3H2O):45g/L ピロリン酸カリウム(K4P2O7):250g/L ・液温:60℃ ・電流密度:0.8kA/m2 ・付着量(片面):20g/m2
【0049】これらのサンプルを、平坦部が水平45°
の角度になるように屋外に設置して、2年間の暴露試験
を行った。また、比較のためにサンドブラスト加工で粗
面化した鋼板、液体ホーニング加工で粗面化した鋼板も
準備した。さらにCu板も準備した。表6に試験結果を
示す。No.51〜55の本発明で規定する電解処理によって
粗面化した原板を用いたものは、2年間という短期間で
既に鋼板の大部分が緑錆に覆われており、No.56,57の
粗面化していない原板を用いたものやNo.60のCu板と
比較して、早期に緑錆被覆が形成されることが確かめら
れた。なお、No.58のサンドブラスト加工材、およびNo.
59の液体ホーニング加工材は、0.35mmの薄鋼板を
使用したため鋼板の「そりかえり」が大きく生じ、電気
めっきを行うまでには至らなかった。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
【発明の効果】本発明によれば、ステンレス鋼板表面の
Cuめっきが腐食して生じた緑錆は、めっき原板表面に
形成されたアンカー効果の高い特殊な凹凸形態によって
強固に保持される。このため、生成した緑錆は雨水等に
よって流失しにくく、早期に鋼板表面に堆積する。加え
て本発明ではCu付着量が5〜90g/m2という、外
装用Cuめっきステンレス鋼板としては非常に薄いCu
めっきを施すことができるため、Cuの腐食がより早く
下地のNiめっきにまで達し、局部電池の形成による腐
食促進作用をも早期に享受することができる。このよう
にして本発明によるCuめっきステンレス鋼板は、早期
に均一な緑錆で覆われるという優れた特性を示す。ま
た、Cuめっき付着量を少なくすることによって電気め
っきのコストが低減されるとともに、素材面でも銅板や
人工緑青銅板より低コストである。したがって、本発明
は、緑錆に覆われた美麗な建築物外観を従来より低コス
トで早期に実現し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のCuめっきステンレス鋼板の断面の電
子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】図1の電子顕微鏡(SEM)写真の拡大スケッ
チである。
【図3】本発明のCuめっき用ステンレス鋼原板の粗面
化表面を真上から見た電子顕微鏡(SEM)写真であ
る。
【図4】本発明のCuめっき用ステンレス鋼原板の断面
の電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】図4の電子顕微鏡(SEM)写真の拡大スケッ
チである。
【図6】各種ステンレス鋼についての、交番電解液とし
て使用する塩化第二鉄水溶液の温度と濃度の適正範囲を
表すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 多々納 政義 大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株式 会社技術研究所内 (72)発明者 内田 幸夫 大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株式 会社技術研究所内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 薄いNiめっきとその上層のCuめっき
    からなる複層めっき層が、素地金属の下に潜り込んだア
    ンカー部を形成して素地のステンレス鋼にタイトに密着
    している、緑錆の早期発生性・密着性に優れるCuめっ
    きステンレス鋼板。
  2. 【請求項2】 めっき層が素地金属の下に潜り込んだア
    ンカー部は、下記(1)で定義するアンカー密度Aが0.0
    5〜1.5の範囲となる密度で存在する、請求項1に記
    載のCuめっきステンレス鋼板。 (1)アンカー密度A:鋼板断面の顕微鏡観察像におい
    て、50μm以上の長さの測定範囲を定め、当該測定範
    囲内でめっき層が素地金属の下に潜り込んでいる部分の
    個数nを測定し、その個数nを測定範囲の長さ(μm)
    で除した値をAとする。
  3. 【請求項3】 複層めっき層は、付着量0.3〜9g/
    2のNiめっきと、その上層の付着量5〜90g/m2
    のCuめっきからなる、請求項1または2に記載のCu
    めっきステンレス鋼板。
  4. 【請求項4】 鋼板表面にピット未発生部分の面積率が
    60%以下であるように高密度にピットが形成してお
    り、下記(2)で定義するオーバーハング密度Kが0.05
    〜1.5の範囲となる粗面化表面を有する、緑錆の早期
    発生性・密着性に優れるCuめっき用ステンレス鋼原
    板。 (2)オーバーハング密度K:めっき原板断面の顕微鏡観
    察像において、50μm以上の長さの測定範囲を定め、
    当該測定範囲内でピット内壁面が断面曲線の平均線の方
    向より下側に向いている部分(=オーバーハング部)の
    個数nを測定し、その個数nを測定範囲の長さ(μm)
    で除した値をKとする。ここで断面曲線とは当該断面に
    現れるめっき原板最表面の輪郭をいい、断面曲線の平均
    線とは定めた測定範囲において、その断面曲線までの偏
    差の二乗和が最小になるように設定した直線または曲線
    をいい、下側とは板厚中央部側をいう。
  5. 【請求項5】 鋼板表面にピットが実質上隙間なく形成
    しており、請求項4の(2)で定義するオーバーハング密
    度Kが0.05〜1.5の範囲となる粗面化表面を有す
    る、緑錆の早期発生性・密着性に優れるCuめっき用ス
    テンレス鋼原板。
  6. 【請求項6】 Fe3+濃度:1〜50g/Lの塩化第二
    鉄水溶液中で、アノード電解時の電流密度:1.0〜1
    0.0kA/m2,カソード電解時の電流密度:0.1〜
    3.0kA/m2とした0.5〜5Hzの交番電解をフェ
    ライト系ステンレス鋼板に10〜120秒間施して形成
    させた粗面化表面上に、付着量0.3〜9g/m2の電気
    Niめっきを施し、次いで付着量5〜90g/m2の電
    気Cuめっきを施す、緑錆の早期発生性・密着性に優れ
    るCuめっきステンレス鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 Fe3+濃度:30〜120g/Lの塩化
    第二鉄水溶液中で、アノード電解時の電流密度:1.0
    〜10.0kA/m2,カソード電解時の電流密度:0.
    3〜3.0kA/m2とした0.5〜5Hzの交番電解を
    オーステナイト系ステンレス鋼板に10〜120秒間施
    して形成させた粗面化表面上に、付着量0.3〜9g/
    2の電気Niめっきを施し、次いで付着量5〜90g
    /m2の電気Cuめっきを施す、緑錆の早期発生性・密
    着性に優れるCuめっきステンレス鋼板の製造方法。
  8. 【請求項8】 鋼板は板厚0.2〜1.0mmの薄鋼帯で
    ある、請求項1,2または3に記載のCuめっきステン
    レス鋼板。
  9. 【請求項9】 鋼板は板厚0.2〜1.0mmの薄鋼帯で
    ある、請求項4または5に記載のCuめっき用ステンレ
    ス鋼原板。
  10. 【請求項10】 鋼板は板厚0.2〜1.0mmの薄鋼帯
    である、請求項6または7に記載のCuめっきステンレ
    ス鋼板の製造方法。
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