JP4312489B2 - 粗面化鋼板の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機高分子樹脂被覆との密着性を高めた普通鋼または特殊鋼の粗面化鋼板の製造方法であって、特に鋼板表面を選択的にエッチングして得られる粗面化鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に鋼板素材の表面には、防錆や塗膜密着性の観点からめっきを施すことが多いが、用途によってはめっき層を介さずに直接鋼板素地の上に塗料や接着剤を塗布する必要が生じることがある。
【0003】
近年では接着剤の性能向上もあり、各種構造物を製作する際に、接着剤により鋼板同士あるいは鋼板と異種材料を接合する工法が多用されるようになってきた。このような接着工法には、溶接歪みがない,シール性が向上する,軽量化が図れる,作業性が向上するなどの利点があり、例えば、工業用計算機や各種制御盤等の重要機器を収容する筐体,鉄道車両用ドア,屋根・エクステリア等の建材,エレベーター用壁パネル,ダクト,システムキッチンなど、広範な用途に利用されている。また、3次元データをもとに鋼板を所定形状に打ち抜き、積層、接着して「積層部品」や「積層金型」が製作されている。
【0004】
鋼板と異種材料を接着する用途として、例えば自動車のオートマチック・トランスミッションの構成部品であるフリクションプレートが挙げられる。これはコア材(鋼板)の表面に摩擦材(例えば、繊維基材に充填材や樹脂結合材などを含浸させて加熱硬化させた複合体)を貼り付けたものであり、トランスミッション内の湿式クラッチ板を構成するものである。また、免震構造の建築物を支える積層ゴムアイソレーターが挙げられる。これは、天然ゴムと鋼板を積層、接着したものであり、建築物と地面の間に介在して免震機構を担う。
【0005】
鋼板素地は一般に有機高分子樹脂等の塗膜や接着剤との密着性があまり良好ではない。このため、鋼板素地に直接塗料や接着剤を塗布した場合、曲げ加工や絞り加工で塗膜が剥離したり、接着剤を介して接合された材料が外部応力によって剥離したりする問題が生じやすい。そこで、前処理として、鋼板表面の粗面化が行われることがある。その代表的手段として、ブラスト処理およびダルロール圧延が挙げられる。
【0006】
ブラスト処理は、シュートやグリッドなどの研磨粒子を高圧の空気で送り出して粗面化すべき鋼板の表面に衝突させ、その衝突によって鋼板表面を削り取って凹凸形状にする粗面化手段である。しかし、削り取られた鋼粉の処理により連続生産性が低下し、また特に薄ゲージ鋼板の場合は板が反り返る等の形状不良が生じやすい。さらに研磨粒子の種類や空気圧等の条件によって表面粗さが変動しやすいという欠点もある。
【0007】
ダルロール圧延は、圧延ロール表面に形成した凹凸形状を鋼板表面に転写する粗面化手段であり、表面粗さの制御はある程度可能である。しかし、有機高分子樹脂皮膜との密着性を大幅に向上させるような粗面化は困難である。
【0008】
一方、ステンレス鋼を対象とした粗面化技術として、電解粗面化方法が開発されている。例えば、下記特許文献1には、硝酸または硝酸を主成分とする水溶液中でステンレス鋼の陽極電解または陽極電解+陰極電解を行う粗面化方法が開示されている。また特許文献2には、塩化第二鉄水溶液中でステンレス鋼板を交番電解することによりアンカー効果の高い特異な形状のピットを高密度に形成する方法が開示されている。これらはいずれも、ステンレス鋼が不動態皮膜を形成し易いという性質を利用したものである。すなわち、ステンレス鋼は本来、腐食形態が孔食状になりやすいため、この性質を巧みに利用すればアンカー効果の高い粗面化表面が比較的容易に作れる。
【0009】
これに対し、ステンレス鋼ではない普通鋼や特殊鋼を電解やエッチングによって粗面化することは必ずしも容易でない。これらの鋼種はCr含有量が低く、孔食よりも全面溶解の傾向が強いため、本来的にピットを高密度に形成させることが難しい。このため、電解やエッチングで工業的にアンカー効果の高い粗面化鋼板を製造するには多大なコストを要する。
【0010】
【特許文献1】
特開平6−136600号公報
【特許文献2】
特開平10−259499号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ステンレス鋼ではない普通鋼や特殊鋼の鋼板においても、接着剤や塗料との密着性に優れた粗面化鋼板であって、一般的な鋼板製造設備を利用して低コストで生産性よく製造できる粗面化鋼板を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明者らは種々研究を重ねた結果、塩酸などの電解質水溶液中においてFeよりも電位的に「貴」になるNiによって鋼板表面の大部分をマスキングすると、電解質水溶液中で鋼板素地の露出部を選択的にエッチングすることが可能になり、ステンレス鋼ではない普通鋼や特殊鋼の表面にも樹脂被覆との密着性に優れた複雑形状の粗面化表面が形成できることを見出した。そのようなNiによるマスキングは、ピンホール状のめっき欠陥が多数散在するような薄いNiめっき、すなわち「不完全なNiめっき」を施すことによって実現できる。エッチングは塩酸浸漬が好適に利用できる。また、予めダルロール圧延により粗面化した鋼板を素材に用いると一層効果的である。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0014】
すなわち本発明では、Cr:3.5質量%以下,Ni:5.0質量%以下,Mo:1.0質量%以下の鋼種からなる鋼板表面にピンホール状欠陥が散在する片面当たり0.05〜1.0g/m2の電気Niめっきを施した後、電解質水溶液中、例えば塩酸水溶液中で、、接触しているFe(鋼板素地)とNiのうち標準電極電位が「貴」であるNiをカソード、「卑」であるFe(鋼板素地)をアノードとして、鋼板素地を前記ピンホール状欠陥部において優先的に溶解させて表面凹凸を形成することにより、圧延方向の中心線平均粗さRaが0.3〜2.0μm、最大高さRyが2.5〜15.0μmの粗面化表面とする粗面化鋼板の製造方法が提供される。そのNiめっきを施す鋼板にはダルロール圧延材を用いることができる。
ここでいう「ピンホール状欠陥」は、Niめっき層を厚さ方向に貫通する孔あるいは隙間であり、電解質水溶液中において鋼素地表面と水溶液との間でイオンの授受ができる部分を意味する。必ずしも表面から鋼素地露出部が観察されるような欠陥である必要はない。
【0016】
また、Cr:3.5質量%以下,Ni:5.0質量%以下,Mo:1.0質量%以下の鋼種の鋼板にピンホール状欠陥が散在する片面当たり0.05〜1.0g/m2電気Niめっきを施した後、この鋼板を塩酸濃度50〜150g/L(リットル),温度60〜95℃の塩酸水溶液に合計25〜300秒浸漬することにより、圧延方向の中心線平均粗さRaが0.3〜2.0μm、最大高さRyが2.5〜15.0μm粗面化表面とする粗面化鋼板の製造方法が提供される。特に、そのNiめっきを施す鋼板にダルロール圧延材を用いたものが提供される。前記ピンホール状欠陥は、例えば鋼板の圧延方向と板厚方向を含む断面において、圧延方向1mm当たり平均15〜100箇所の割合で鋼素地露出部が存在するものである。
【0017】
前記粗面化鋼板は、例えば表面に有機高分子樹脂系接着剤を塗布して接着接合の用途に使用されるものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明は、基本的に電解質水溶液中で溶解し得る種々の鋼種に適用できるが、特にCr含有量が3.5質量%以下(0%を含む),Ni含有量が5.0質量%以下(0%を含む),かつMo含有量が1.0質量%以下(0%を含む)の鋼種、すなわち、普通鋼や一般的な特殊鋼に適用することが望ましい。これらはステンレス鋼のように強固な不動態皮膜を形成せず、全面溶解の傾向が強いため、粗面化を電解質水溶液中で行うことが本来困難な鋼種である。
【0019】
具体的には、例えば以下のような鋼種に適用することができる。
i) 質量%で、C:0.32〜0.38%,Si:0.15〜0.35%,Mn:0.60〜0.90%,P:0.030%以下,S:0.035%以下,残部Feおよび不可避的不純物。
ii) 質量%で、C:0.52〜0.58%,Si:0.15〜0.35%,Mn:0.60〜0.90%,P:0.030%以下,S:0.035%以下,残部Feおよび不可避的不純物。
iii) 質量%で、C:0.17〜0.20%,Si:0.04%以下,Mn:0.60〜0.90%,P:0.030%以下,S:0.025%以下,残部Feおよび不可避的不純物。
iv) 質量%で、C:0.10〜0.15%,Si:0.04%以下,Mn:0.30〜0.50%,P:0.025%以下,S:0.025%以下,残部Feおよび不可避的不純物。
【0020】
図1(a)は、質量%で、C:0.11%,Si:0.01%,Mn:0.31%,P:0.018%,S:0.008%を含有し残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼の冷延焼鈍鋼板(板厚1.0mm)に、約6%のダルロール圧延を施した後の表面について、圧延方向に測定した粗さ曲線(JIS B 0601)の例である。
【0021】
図1(b)は、そのダルロール圧延材を用いて製造した本発明の粗面化鋼板について、圧延方向に測定した粗さ曲線の例である。この粗面化鋼板は以下の手順で得たものである。すなわち、上記ダルロール圧延材に、硫酸ニッケル240g/L,塩化ニッケル50g/L,ホウ酸35g/Lを含むpH=4.1,60℃の水溶液中で電流密度5A/dm2にて電気Niめっきを施した。その際、通電時間を調整してNiめっき付着量を0.5g/m2とした。次いで、これを塩酸濃度100g/L,温度90℃の塩酸水溶液に60秒浸漬してエッチングして、粗面化した。
【0022】
これらの図からわかるように、粗面化エッチングの前後で中心線平均粗さRaの値そのものにはあまり大きな変化はないものの、エッチング後には、ピッチが細かい割に山と谷の高さ変化が大きい凹凸が形成されている。このような急峻かつ細かい凹凸からなる複雑形状の粗面化表面は、後述のように、樹脂被覆との密着性を顕著に向上させるのである。この例ではダルロール圧延材を素材に用いているので、ダルロール圧延による表面凹凸と、エッチングによる表面凹凸が重畳した粗面化形態を呈している。
【0023】
本発明に係る粗面化表面は、大部分がNiめっきに覆われているが、細かい凹部を形成している箇所には鋼板素地の露出が認められる。すなわち、鋼板表面にはNiめっき被覆部と鋼素地露出部が混在している。その鋼素地露出部は周囲のNiめっき被覆部よりも優先的にエッチングされており、その結果、複雑形状の粗面化表面が形成されている。
【0024】
種々検討の結果、このような粗面化表面においては、鋼板の圧延方向と板厚方向を含む断面において、圧延方向1mm当たり平均15〜100箇所の鋼素地露出部(凹部)が存在するとき、有機高分子樹脂系接着剤との密着性が特に優れたものとなることがわかった。図1(b)の例では、圧延方向1mm当たり平均約32箇所の鋼素地露出部が存在する。
【0025】
本発明の粗面化鋼板は以下のような方法で製造することができる。
まず、鋼板表面にNiめっきを施す。その際、ピンホール状欠陥が多数散在するようなNiめっき層を形成することが重要である。後述するように、ピンホール状欠陥の部分はエッチングによって凹部となる。したがって、エッチング後に鋼素地露出部(凹部)が鋼板断面の圧延方向1mm当たり平均15〜100箇所の割合で生成するのに必要な数だけピンホール状欠陥が散在したNiめっき層を形成することが望ましい。ピンホール状欠陥の生成数をコントロールするには、鋼板表面が完全にNiめっき層で覆われるまでの段階でめっき時間を調整すればよい。その段階では、めっき付着量の増加とともにピンホール状欠陥の数が減少するので、めっき付着量によってピンホール状欠陥の生成数をコントロールすることも有効である。電気めっきの場合、鋼板片面当たり0.05〜1.0g/m2のNiめっき付着量とすれば良好な結果が得られることが明らかになった。
【0026】
Niめっきは、電気めっき法による。電気めっき法ではWatt浴,Wood浴など、公知の電解浴が使用できる。Watt浴を用いた電気めっき条件の一例として、硫酸ニッケル240g/L,塩化ニッケル50g/L,ホウ酸35g/Lを含み、pH=3.8〜4.5,浴温40〜65℃の電解液中で電流密度2〜10A/dm2で実施する方法が挙げられる。
【0027】
次に、鋼板を電解質水溶液中でエッチングする。このとき、Niめっき層のピンホール状欠陥部を通して鋼板素地を優先的に溶解させるのである。そのメカニズムは以下のように考えられる。すなわち、金属の化学溶解速度の序列は一般に電気化学列で示されている。電気化学列とは1気圧の水素で飽和した白金黒で作られた標準水素電極の電位を基準として、各金属をその標準電極電位の順に並べたものである。この標準電極電位が低いほど「卑」あるいはイオン化傾向が大きく、標準電極電位が高いほど「貴」あるいはイオン化傾向が小さい。つまり、標準電極電位により金属の基本的な腐食傾向がわかる。ここで、Fe、Niの金属対を考えると、標準電極電位は、
Fe2++2e-=Fe ; −0.44V
Ni2++2e-=Ni ; −0.25V
2H++2e-=H2 ; 0.00V
である。塩酸,硝酸,硫酸等の水溶液中においても(不動態皮膜を形成するような特殊な状況を除き)この序列は変わらず、NiよりFeの方が溶解(腐食)しやすい。これらの液中でFeとNiが接触しているとき、Niがカソード極となって水素発生反応が起こり、他方のFeがアノード極となって鉄の溶解反応が起こる。
【0028】
鋼板表面をピンホール状欠陥の散在したNiめっき層で被覆し、これを電解質水溶液(例えば塩酸)中に浸漬すると、ピンホール欠陥部分において鋼板素地のFeが優先的に溶解して、孔食状の凹部が形成される。前述のようにNiめっき付着量を鋼板片面当たり0.05〜1.0g/m2の範囲に調整してピンホール状欠陥の分散状態を適正化したとき、鋼板表面に孔食状の凹部を多数形成することができ、樹脂被覆に対して優れたアンカー効果を呈する複雑形状の粗面化表面が得られる。Niめっき付着量が0.05g/m2未満では鋼素地露出部で全面溶解の傾向が大きくなり、アンカー効果の高い粗面化が難しい。逆に1.0g/m2を超えるとピンホール状欠陥の数が少なくなり、孔食状の凹部が多数形成された複雑形状の粗面化は達成し難い。
【0029】
Feとの金属対を考えた場合、Niと同様にFeの溶解反応を生じさせる金属種は多くある。溶解環境にもよるが、例を挙げるとAu,Pt,Ag,Hg,Cu,Pb,Sn,Co,Cdなどである。ここで、現実的な前提条件として、i) 工業的に安価に鋼板へのめっきが可能なこと、ii) めっき廃液が水質汚濁の原因にならないこと、を考慮すると、めっき金属としてはCu,Ni,Snやこれらの合金に限定される。しかしながら、CuやSnの単独めっき、あるいはCu,Sn,Niのうち2種以上からなる合金めっきについて検討したが、樹脂被覆との密着性を顕著に改善する複雑形状の凹凸表面を実現することは難しいことがわかった。
【0030】
エッチングの方法として、塩酸,硫酸,硝酸などの無機酸水溶液に浸漬する方法が採用できる。特に塩酸によるエッチングは鉄鋼メーカーの連続酸洗ラインが利用できるというメリットがある。例として、塩酸濃度50〜150g/L,温度60〜95℃の塩酸水溶液に25〜300秒浸漬する方法が好適である。この場合、浸漬回数は1回でもよいが、複数回に分けて浸漬してもよい。浸漬時間の合計が25〜300秒の範囲になるようにすればよい。
【0031】
以上の処理により、圧延方向に測定した中心線平均粗さRa(JIS B 0601)が0.3〜2.0μmの粗面化鋼板を得る。Ra値がこの範囲にあるとき、被覆層(特に有機高分子樹脂系接着剤)との密着性向上効果と製造コストのバランスが非常に良好である。また、圧延方向に測定した最大高さRy(JIS B 0601)2.5〜15.0μmの範囲とする。ただし、本発明の粗面化鋼板は、多数の細かい孔食状の凹部で構成される特異な凹凸形態を特徴とするものであり、単にRaあるいはRyの値が上記の範囲にあるだけで被覆層に対する優れたアンカー効果が得られるわけではない。
【0032】
本発明では、Niめっきを施す前の鋼板素材としてダルロール圧延材を使用すると一層効果がある。この場合、図1(b)に示したように、ダルロール圧延による凹凸とエッチングによる凹凸の重畳した粗面化表面が得られ、樹脂被覆との密着性能は向上する。ダルロール圧延率は概ね1〜10%程度が良く、ダルロール圧延後の表面粗さは圧延方向に測定した中心線平均粗さRaが0.3〜2.0μm、最大高さRyが2.5〜15.0μmに調整する。特に、Raは0.5〜2.0μm、Ryは3.0〜15.0μmに調整するのが一層好ましい。
【0033】
【実施例】
素材鋼板として、質量%で、C:0.18%,Si:0.01%,Mn:0.63%,P:0.018%,S:0.003%を含有し残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼の冷延焼鈍鋼帯(板厚0.9mm)を用いた。この鋼帯の一部には約5%のダルロール圧延を施した。めっき原板として、ダルロール圧延を施さない冷延焼鈍材、およびダルロール圧延材の2種類を用意した。それぞれめっき前の表面粗さは以下のとおりである。
〔冷延焼鈍材〕 Ra:0.3μm,Ry:2.2μm
〔ダルロール圧延材〕 Ra:0.6μm,Ry:3.8μm
【0034】
これら2本の鋼帯を脱脂した後、片面電気Niめっきを施した。めっき浴として硫酸ニッケル240g/L,塩化ニッケル50g/L,ホウ酸35g/Lを含み、pH=4.1,液温60℃のWatt浴を用い、電流密度5A/dm2として、通電時間を調整することによりNiめっき付着量が0.03g/m2,0.08g/m2,0.5g/m2,0.9g/m2,2.0g/m2の5水準のNiめっき鋼帯を作製した。これらの鋼帯からエッチング用鋼板を切り出し、塩酸濃度100g/L,温度90℃の塩酸水溶液に60秒浸漬することによりエッチングを行った。
表1に、各鋼板のNiめっき付着量,塩酸浸漬後の表面粗さRa,Ryの値を示す。表面粗さはNiめっきを施した面について圧延方向に測定した値である。
【0035】
【表1】
Figure 0004312489
【0036】
各鋼板A〜Jについて複数のサンプルを切り出し、Niめっきを施してエッチングした面に有機高分子樹脂系接着剤(田岡化学工業(株)製「テクノダインAH」)を平均厚さが10μmとなるようにほぼ均一に塗布し、以下の2通りの条件で焼付硬化処理を行った。
〔焼付条件1〕 80℃×60分
〔焼付条件2〕 100℃×65分
ここで、温度は雰囲気(大気)の温度を意味する。
【0037】
焼付硬化処理後の一部のサンプルは沸騰水中に1時間浸漬した。
各サンプルから曲げ試験片を切り出し、接着剤被覆面が外側になるように3.5R−90°V曲げ試験を行い、「セロハンテープ剥離試験」を実施した。
セロハンテープ剥離試験は、JIS Z 1522で定めるセロハン粘着テープを曲げ加工部の外周部に貼付した後、剥ぎ取って、接着剤皮膜の剥離状況を観察し、以下の基準で密着性を評価した。○以上が密着性「良好」と判断される。
〔密着性評価基準〕
◎:剥離は認められない
○:点状の剥離が認められる
△:線状に連なった剥離が認められる
×:全面剥離またはそれに近い著しい剥離が認められる
結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
Figure 0004312489
【0039】
表1,2から判るように、ダルロール圧延の有無にかかわらず、Niめっき付着量が0.05〜1.0g/m2の本発明例のものは接着剤との良好な密着性が得られた。特にダルロール圧延材では、焼付条件2の場合、沸騰浸漬後においても非常に優れた密着性(◎評価)が維持されるものが得られた(鋼板G,H)。
【0040】
これに対し、ダルロール圧延なしの場合、Niめっき付着量が0.05g/m2未満の鋼板Aおよび1.0g/m2を超える鋼板Eは、いずれも全てのサンプルで接着剤との良好な密着性が得られなかった。
また、ダルロール圧延なしの場合、Niめっき付着量が0.05g/m2未満の鋼板Aは焼付条件1の沸騰浸漬後において良好な接着剤密着性が維持されなかった。Niめっき付着量が1.0g/m2を超える鋼板Jでは全てのサンプルで良好な接着剤密着性は得られなかった。
【0041】
【発明の効果】
以上のように、本発明では電解粗面化が難しい普通鋼や特殊鋼において、意図的に形成したピンホール状欠陥の多いNiめっき層を巧みに利用することで、特異な凹凸形態を有するエッチング表面の形成を可能にした。この粗面化鋼板は特に有機高分子樹脂皮膜との密着性が従来のダルロール仕上材などに比べ顕著に向上した。しかも、その製造は、一般的な鋼板製造ラインを利用して比較的簡単に実施することができる。したがって、本発明は、鋼板表面への各種樹脂コーティングの適用性を高め、特に接着接合の用途においては接合力の向上をもたらすものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)はダルロール圧延後の鋼板表面を圧延方向に測定した粗さ曲線の例であり、(b)は(a)の鋼板表面にNiめっきおよび塩酸浸漬処理を施して得た本発明に係る粗面化鋼板の表面を圧延方向に測定した粗さ曲線の例である。

Claims (5)

  1. Cr:3.5質量%以下,Ni:5.0質量%以下,Mo:1.0質量%以下の鋼種からなる鋼板表面にピンホール状欠陥が散在する片面当たり0.05〜1.0g/m2の電気Niめっきを施した後、電解質水溶液中で、接触しているFe(鋼板素地)とNiのうち標準電極電位が「貴」であるNiをカソード、「卑」であるFe(鋼板素地)をアノードとして、鋼板素地を前記ピンホール状欠陥部において優先的に溶解させて表面凹凸を形成することにより、圧延方向の中心線平均粗さRaが0.3〜2.0μm、最大高さRyが2.5〜15.0μmの粗面化表面とする粗面化鋼板の製造方法。
  2. Cr:3.5質量%以下,Ni:5.0質量%以下,Mo:1.0質量%以下の鋼種の鋼板にピンホール状欠陥が散在する片面当たり0.05〜1.0g/m2の電気Niめっきを施した後、この鋼板を塩酸濃度50〜150g/L,温度60〜95℃の塩酸水溶液に合計25〜300秒浸漬することにより、圧延方向の中心線平均粗さRaが0.3〜2.0μm、最大高さRyが2.5〜15.0μmの粗面化表面とする粗面化鋼板の製造方法。
  3. Niめっきを施す鋼板がダルロール圧延材である請求項1または2に記載の粗面化鋼板の製造方法。
  4. 前記ピンホール状欠陥は、鋼板の圧延方向と板厚方向を含む断面において、圧延方向1mm当たり平均15〜100箇所の割合で鋼素地露出部が存在するものである請求項1〜のいずれかに記載の粗面化鋼板の製造方法。
  5. 前記粗面化鋼板は、表面に有機高分子樹脂系接着剤を塗布して接着接合の用途に使用されるものである請求項1〜のいずれかに記載の粗面化鋼板の製造方法。
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