JP2003213459A - 耐食性及びスポット溶接性に優れた表面処理鋼板及びその製造方法 - Google Patents
耐食性及びスポット溶接性に優れた表面処理鋼板及びその製造方法Info
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- JP2003213459A JP2003213459A JP2002017858A JP2002017858A JP2003213459A JP 2003213459 A JP2003213459 A JP 2003213459A JP 2002017858 A JP2002017858 A JP 2002017858A JP 2002017858 A JP2002017858 A JP 2002017858A JP 2003213459 A JP2003213459 A JP 2003213459A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 クロムフリーで、耐食性,皮膜密着性,スポ
ット溶接性に優れた表面処理鋼板を提供する。 【構成】 この表面処理鋼板は、カソード電解処理で形
成されたAl,Ti,Zr,La,Mg,Moの1種又
は2種以上を含む金属酸化物皮膜を介し、非クロム系の
無機質化成処理皮膜が設けられている。金属酸化物皮膜
は、Al,Ti,Zr,La,Mg,Moの1種又は2
種以上を10〜1000mモル/lの金属イオン濃度で
含むpH1〜5の処理液に鋼板を浸漬し、カソード電解
処理によって形成される。金属酸化物皮膜の形成後、非
クロム系化成処理液を鋼板表面に塗布し、水洗工程を経
ずに乾燥させることにより製造される。カソード電解に
使用される処理液には、0.5〜5g/lの濃度でリン
酸を添加してもよい。
ット溶接性に優れた表面処理鋼板を提供する。 【構成】 この表面処理鋼板は、カソード電解処理で形
成されたAl,Ti,Zr,La,Mg,Moの1種又
は2種以上を含む金属酸化物皮膜を介し、非クロム系の
無機質化成処理皮膜が設けられている。金属酸化物皮膜
は、Al,Ti,Zr,La,Mg,Moの1種又は2
種以上を10〜1000mモル/lの金属イオン濃度で
含むpH1〜5の処理液に鋼板を浸漬し、カソード電解
処理によって形成される。金属酸化物皮膜の形成後、非
クロム系化成処理液を鋼板表面に塗布し、水洗工程を経
ずに乾燥させることにより製造される。カソード電解に
使用される処理液には、0.5〜5g/lの濃度でリン
酸を添加してもよい。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、環境負荷が大きなクロ
メート処理鋼板に代わる耐食性,スポット溶接性に優れ
た表面処理鋼板及びその製造方法に関する。
メート処理鋼板に代わる耐食性,スポット溶接性に優れ
た表面処理鋼板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】六価クロムを含む反応型,塗布型クロメ
ート処理は、代表的な鋼板の防錆処理方法である。しか
し、クロメート処理では、クロムイオンを含む廃液の処
理に多大な負担がかかる。クロメート処理鋼板製の部材
を土壌に埋設された状態で長期間使用する用途では、湿
潤雰囲気に曝される条件下でクロメート皮膜からクロム
が土壌に溶出する虞がある。そこで、クロメート処理の
代替として、薄い有機系皮膜を形成する方法,クロム以
外の金属酸化物皮膜を形成するクロムフリー化成処理等
が開発されている。
ート処理は、代表的な鋼板の防錆処理方法である。しか
し、クロメート処理では、クロムイオンを含む廃液の処
理に多大な負担がかかる。クロメート処理鋼板製の部材
を土壌に埋設された状態で長期間使用する用途では、湿
潤雰囲気に曝される条件下でクロメート皮膜からクロム
が土壌に溶出する虞がある。そこで、クロメート処理の
代替として、薄い有機系皮膜を形成する方法,クロム以
外の金属酸化物皮膜を形成するクロムフリー化成処理等
が開発されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】有機系化成処理では、
目標とする耐食性は付与されるものの、処理コストが高
く、溶接時の熱分解で異臭が発生しやすくスポット溶接
性に劣ることも欠点である。また、アース性に劣るた
め、アース設置が要求される部位に適用する場合、ビス
止め等によってリード線を鋼板の一部に取り付ける煩雑
な工程が必要となる。更に有機系化成処理皮膜は、めっ
き鋼板に適用可能であるが、冷延普通鋼板やステンレス
鋼板に対する密着性に乏しい。そのため、汎用性のある
防錆処理として採用されていない。クロムフリー処理で
は、可溶性のフッ化物を金属酸化物又は水酸化物と共存
させることにより、皮膜疵付き部,切断端面等において
自己修復作用を呈する化成処理皮膜を形成することも知
られているが、下地鋼に対する密着性に乏しいものが多
く、長期耐食性に改善の余地がある。
目標とする耐食性は付与されるものの、処理コストが高
く、溶接時の熱分解で異臭が発生しやすくスポット溶接
性に劣ることも欠点である。また、アース性に劣るた
め、アース設置が要求される部位に適用する場合、ビス
止め等によってリード線を鋼板の一部に取り付ける煩雑
な工程が必要となる。更に有機系化成処理皮膜は、めっ
き鋼板に適用可能であるが、冷延普通鋼板やステンレス
鋼板に対する密着性に乏しい。そのため、汎用性のある
防錆処理として採用されていない。クロムフリー処理で
は、可溶性のフッ化物を金属酸化物又は水酸化物と共存
させることにより、皮膜疵付き部,切断端面等において
自己修復作用を呈する化成処理皮膜を形成することも知
られているが、下地鋼に対する密着性に乏しいものが多
く、長期耐食性に改善の余地がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題を解消すべく案出されたものであり、カソード電解処
理によって金属酸化物皮膜を表面に形成した鋼板を非ク
ロム系化成処理皮膜の下地として使用することにより、
非クロム系化成処理皮膜の密着性を高め、非クロム系化
成処理皮膜本来の優れた耐食性を発現させると共に、ス
ポット溶接性,アース性も良好な表面処理鋼板を提供す
ることを目的とする。
題を解消すべく案出されたものであり、カソード電解処
理によって金属酸化物皮膜を表面に形成した鋼板を非ク
ロム系化成処理皮膜の下地として使用することにより、
非クロム系化成処理皮膜の密着性を高め、非クロム系化
成処理皮膜本来の優れた耐食性を発現させると共に、ス
ポット溶接性,アース性も良好な表面処理鋼板を提供す
ることを目的とする。
【0005】本発明の表面処理鋼板は、その目的を達成
するため、カソード電解処理で下地鋼表面に形成された
Al,Ti,Zr,La,Mg,Moの1種又は2種以
上を含む金属酸化物皮膜を介し、非クロム系の無機質化
成処理皮膜が設けられていることを特徴とする。カソー
ド電解処理で形成される金属酸化物皮膜は、リン酸塩を
含むこともできる。
するため、カソード電解処理で下地鋼表面に形成された
Al,Ti,Zr,La,Mg,Moの1種又は2種以
上を含む金属酸化物皮膜を介し、非クロム系の無機質化
成処理皮膜が設けられていることを特徴とする。カソー
ド電解処理で形成される金属酸化物皮膜は、リン酸塩を
含むこともできる。
【0006】この表面処理鋼板は、Al,Ti,Zr,
La,Mg,Moの1種又は2種以上を10〜1000
mモル/lの金属イオン濃度で含むpH1〜5の処理液
に鋼板を浸漬し、カソード電解処理によってAl,T
i,Zr,La,Mg,Moの1種又は2種以上を含む
金属酸化物皮膜を形成した後、非クロム系化成処理液を
鋼板表面に塗布し、水洗工程を経ずに乾燥させることに
より製造される。カソード電解に使用される処理液に
は、0.5〜5g/lの濃度でリン酸を添加してもよ
い。
La,Mg,Moの1種又は2種以上を10〜1000
mモル/lの金属イオン濃度で含むpH1〜5の処理液
に鋼板を浸漬し、カソード電解処理によってAl,T
i,Zr,La,Mg,Moの1種又は2種以上を含む
金属酸化物皮膜を形成した後、非クロム系化成処理液を
鋼板表面に塗布し、水洗工程を経ずに乾燥させることに
より製造される。カソード電解に使用される処理液に
は、0.5〜5g/lの濃度でリン酸を添加してもよ
い。
【0007】
【作用】非クロム系化成処理皮膜を形成する際、電気め
っき製造ラインにおけるめっき後の乾燥工程や溶融めっ
き鋼板製造ラインにおける溶融めっき後の冷却工程等で
生成した酸化皮膜は,化成処理液のエッチング作用によ
って除去される。しかし、焼鈍工程で鋼板表面にMn等
が濃化している普通鋼板や強固な不動態皮膜が形成され
ているステンレス鋼板ではエッチング作用が不足し、活
性な鋼板表面が得られ難い。不活性な鋼板表面に非クロ
ム系化成処理皮膜が形成されると、下地と非クロム系化
成処理皮膜の結合力が弱いため、非クロム系化成処理皮
膜本来の性能が発揮されないことがある。
っき製造ラインにおけるめっき後の乾燥工程や溶融めっ
き鋼板製造ラインにおける溶融めっき後の冷却工程等で
生成した酸化皮膜は,化成処理液のエッチング作用によ
って除去される。しかし、焼鈍工程で鋼板表面にMn等
が濃化している普通鋼板や強固な不動態皮膜が形成され
ているステンレス鋼板ではエッチング作用が不足し、活
性な鋼板表面が得られ難い。不活性な鋼板表面に非クロ
ム系化成処理皮膜が形成されると、下地と非クロム系化
成処理皮膜の結合力が弱いため、非クロム系化成処理皮
膜本来の性能が発揮されないことがある。
【0008】そこで、本発明においては、非クロム系化
成処理皮膜の形成に先立って鋼板表面をカソード電解処
理することによって、もともと鋼板表面に存在し皮膜密
着性に有害な酸化物,水酸化物を除去し、Al,Ti,
Zr,La,Mg,Mo等を含む金属酸化物皮膜を形成
している。Al,Ti,Zr,La,Mg,Mo等は、
電気化学的には極めて陽性でイオン化傾向が大きく、水
溶液から金属としての電解析出が困難な元素であり、カ
ソード電解時に発生した水素ガスに起因した電極近傍の
pH上昇に応じ水酸化物又は水和酸化物の皮膜となって
鋼板表面に析出する。このとき、カソード電解時に発生
した水素ガスで下地鋼板の表面を活性化しながら水酸化
物や水和酸化物が析出するため、密着性に優れた皮膜の
形成が可能となる。しかも、Al,Ti,Zr,La,
Mg,Mo等は、腐食環境下において化学的に安定な酸
化物になる。
成処理皮膜の形成に先立って鋼板表面をカソード電解処
理することによって、もともと鋼板表面に存在し皮膜密
着性に有害な酸化物,水酸化物を除去し、Al,Ti,
Zr,La,Mg,Mo等を含む金属酸化物皮膜を形成
している。Al,Ti,Zr,La,Mg,Mo等は、
電気化学的には極めて陽性でイオン化傾向が大きく、水
溶液から金属としての電解析出が困難な元素であり、カ
ソード電解時に発生した水素ガスに起因した電極近傍の
pH上昇に応じ水酸化物又は水和酸化物の皮膜となって
鋼板表面に析出する。このとき、カソード電解時に発生
した水素ガスで下地鋼板の表面を活性化しながら水酸化
物や水和酸化物が析出するため、密着性に優れた皮膜の
形成が可能となる。しかも、Al,Ti,Zr,La,
Mg,Mo等は、腐食環境下において化学的に安定な酸
化物になる。
【0009】カソード電解処理で形成された金属酸化物
皮膜は、表面に配向している水酸基によって非クロム系
化成処理皮膜と強固に結合し、非クロム系化成処理皮膜
の密着性を向上させる。その結果、皮膜の環境遮断能が
向上し、非クロム系化成処理皮膜本来の優れた耐食性が
発現される。また、Al,Ti,Zr,La,Mg,M
o等を含む金属酸化物皮膜は0.1μm以下の非常に薄
い皮膜であっても良いので、有機質の化成処理皮膜のよ
うに溶接抵抗を高めることなく、未処理のめっき鋼板と
同等な溶接条件下で適正なナゲットを維持しながら連続
スポット溶接が可能である。しかも、電極チップのピッ
クアップを抑制するバリア効果も呈するので電極チップ
の寿命低下も防止できる。
皮膜は、表面に配向している水酸基によって非クロム系
化成処理皮膜と強固に結合し、非クロム系化成処理皮膜
の密着性を向上させる。その結果、皮膜の環境遮断能が
向上し、非クロム系化成処理皮膜本来の優れた耐食性が
発現される。また、Al,Ti,Zr,La,Mg,M
o等を含む金属酸化物皮膜は0.1μm以下の非常に薄
い皮膜であっても良いので、有機質の化成処理皮膜のよ
うに溶接抵抗を高めることなく、未処理のめっき鋼板と
同等な溶接条件下で適正なナゲットを維持しながら連続
スポット溶接が可能である。しかも、電極チップのピッ
クアップを抑制するバリア効果も呈するので電極チップ
の寿命低下も防止できる。
【0010】因みに亜鉛めっき鋼板等の耐食性を向上さ
せるために数μmの膜厚で有機質の化成処理皮膜を形成
することが採用されているが、有機質化成処理皮膜が非
導電性であるため未処理の亜鉛めっき鋼板に比較すると
溶接時の抵抗が上昇してチリの発生を招く。そのため、
非常に狭い溶接電流範囲でスポット溶接することにより
チリ発生を防止している現状であり、溶接条件の厳格な
管理が必要になる。また、未処理の亜鉛又はアルミニウ
ムめっき鋼板を連続スポット溶接すると、溶接を繰り返
していく過程でめっき層からZnやAlが銅製電極チッ
プにピックアップされる。そのまま溶接を継続すると、
ピックアップされたZnやAlが電極に次第に拡散して
合金化することにより電極を脆化し、電極寿命が低下す
る。
せるために数μmの膜厚で有機質の化成処理皮膜を形成
することが採用されているが、有機質化成処理皮膜が非
導電性であるため未処理の亜鉛めっき鋼板に比較すると
溶接時の抵抗が上昇してチリの発生を招く。そのため、
非常に狭い溶接電流範囲でスポット溶接することにより
チリ発生を防止している現状であり、溶接条件の厳格な
管理が必要になる。また、未処理の亜鉛又はアルミニウ
ムめっき鋼板を連続スポット溶接すると、溶接を繰り返
していく過程でめっき層からZnやAlが銅製電極チッ
プにピックアップされる。そのまま溶接を継続すると、
ピックアップされたZnやAlが電極に次第に拡散して
合金化することにより電極を脆化し、電極寿命が低下す
る。
【0011】
【実施の形態】表面処理鋼板の原板には、亜鉛めっき,
亜鉛合金めっき,アルミニウムめっき,アルミニウム合
金めっき,ニッケルめっき,銅めっき等の各種めっき鋼
板も使用されるが、冷延普通鋼板,熱延普通鋼板,ステ
ンレス鋼板等を原板とするときカソード電解処理で形成
される金属酸化物皮膜の効果が顕著に現れる。洗浄,脱
脂,酸洗等によって原板表面を清浄化した後、カソード
電解処理によってAl,Ti,Zr,La,Mg,Mo
等を含む金属酸化物皮膜を原板表面に形成する。
亜鉛合金めっき,アルミニウムめっき,アルミニウム合
金めっき,ニッケルめっき,銅めっき等の各種めっき鋼
板も使用されるが、冷延普通鋼板,熱延普通鋼板,ステ
ンレス鋼板等を原板とするときカソード電解処理で形成
される金属酸化物皮膜の効果が顕著に現れる。洗浄,脱
脂,酸洗等によって原板表面を清浄化した後、カソード
電解処理によってAl,Ti,Zr,La,Mg,Mo
等を含む金属酸化物皮膜を原板表面に形成する。
【0012】カソード電解処理に使用する処理液は、好
ましくは10〜1000mモル/lの金属イオン濃度で
Al,Ti,Zr,La,Mg,Moの1種又は2種以
上を含み、pH1〜5の処理液が使用される。Al,T
i,Zr,La,Mg,Mo等は、酸化物,炭酸塩,水
酸化物等として処理液に添加され、10mモル/l以上
の金属イオン濃度で目標金属酸化物皮膜の電着効率が向
上するが、1000mモル/lで添加効果が飽和する。
ましくは10〜1000mモル/lの金属イオン濃度で
Al,Ti,Zr,La,Mg,Moの1種又は2種以
上を含み、pH1〜5の処理液が使用される。Al,T
i,Zr,La,Mg,Mo等は、酸化物,炭酸塩,水
酸化物等として処理液に添加され、10mモル/l以上
の金属イオン濃度で目標金属酸化物皮膜の電着効率が向
上するが、1000mモル/lで添加効果が飽和する。
【0013】Al,Ti,Zr,La,Mg,Mo等を
イオンとして溶存させる上では、処理液のpHを5以下
にすることが必要である。5を超えるpHでは、処理液
中に存在できない金属イオンが沈殿物となって、処理液
の安定性が低下する。逆に、1未満のpHは、処理液の
酸濃度が高すぎ、電解析出した金属酸化物皮膜の再溶解
やカソード電解処理の効率低下の原因となる。処理液
は、連続操業を想定するとき70℃以下に保持すること
が好ましい。70℃を超える高温では、水が盛んに蒸発
して処理液の安定性を低下させ、原板の鋼板表面にスケ
ールを発生させやすくもなる。
イオンとして溶存させる上では、処理液のpHを5以下
にすることが必要である。5を超えるpHでは、処理液
中に存在できない金属イオンが沈殿物となって、処理液
の安定性が低下する。逆に、1未満のpHは、処理液の
酸濃度が高すぎ、電解析出した金属酸化物皮膜の再溶解
やカソード電解処理の効率低下の原因となる。処理液
は、連続操業を想定するとき70℃以下に保持すること
が好ましい。70℃を超える高温では、水が盛んに蒸発
して処理液の安定性を低下させ、原板の鋼板表面にスケ
ールを発生させやすくもなる。
【0014】Al,Ti,Zr,La,Mg,Mo等を
含む処理液に浸漬された原板は、好ましくは0.3〜2
0A/dm2の電流密度でカソード電解処理される。0.
3A/dm2の電流密度では目標とする金属酸化物皮膜
の生成に長時間を要し、逆に20A/dm2を超える電
流密度では多量の水素ガス発生によって金属酸化物皮膜
が破壊され粗雑な皮膜となり、要求特性を満足する皮膜
が得られない。処理液には、リン酸も添加できる。リン
酸を含む処理液を用いてカソード電解処理すると、難溶
性リン酸塩を含む金属酸化物皮膜が生成され、耐食性が
一層向上する。リン酸の添加効果は0.5g/l以上の
濃度で顕著になるが、5g/lを超える過剰量のリン酸
を添加すると処理液のpHが低下し、電解析出した金属
酸化物皮膜の再溶解や電着効率の低下を引き起こす。
含む処理液に浸漬された原板は、好ましくは0.3〜2
0A/dm2の電流密度でカソード電解処理される。0.
3A/dm2の電流密度では目標とする金属酸化物皮膜
の生成に長時間を要し、逆に20A/dm2を超える電
流密度では多量の水素ガス発生によって金属酸化物皮膜
が破壊され粗雑な皮膜となり、要求特性を満足する皮膜
が得られない。処理液には、リン酸も添加できる。リン
酸を含む処理液を用いてカソード電解処理すると、難溶
性リン酸塩を含む金属酸化物皮膜が生成され、耐食性が
一層向上する。リン酸の添加効果は0.5g/l以上の
濃度で顕著になるが、5g/lを超える過剰量のリン酸
を添加すると処理液のpHが低下し、電解析出した金属
酸化物皮膜の再溶解や電着効率の低下を引き起こす。
【0015】カソード電解処理によって形成された金属
酸化物皮膜の上に、非クロム系化成処理皮膜が形成され
る。非クロム系化成処理皮膜は、マンガン化合物,チタ
ン化合物,リン酸又はリン酸塩,フッ化物及び有機酸を
含む化成処理液(特願2000−342938号参照)
をカソード電解処理後の鋼板表面に塗布し、乾燥させる
ことにより形成される。リン酸又はリン酸塩を添加した
化成処理液では、リン酸濃度に応じてpHが低下し鋼板
表面に対するエッチング作用が活発化するため、密着性
に優れた金属酸化物皮膜が形成される。化成処理液に添
加したリン酸又はリン酸塩は各種金属と安定な錯体を形
成し、更に電解還元処理で得られる皮膜にも取り込まれ
るため、金属酸化物皮膜を安定化する。その結果、金属
酸化物皮膜のバリア効果、ひいては耐食性が向上する。
酸化物皮膜の上に、非クロム系化成処理皮膜が形成され
る。非クロム系化成処理皮膜は、マンガン化合物,チタ
ン化合物,リン酸又はリン酸塩,フッ化物及び有機酸を
含む化成処理液(特願2000−342938号参照)
をカソード電解処理後の鋼板表面に塗布し、乾燥させる
ことにより形成される。リン酸又はリン酸塩を添加した
化成処理液では、リン酸濃度に応じてpHが低下し鋼板
表面に対するエッチング作用が活発化するため、密着性
に優れた金属酸化物皮膜が形成される。化成処理液に添
加したリン酸又はリン酸塩は各種金属と安定な錯体を形
成し、更に電解還元処理で得られる皮膜にも取り込まれ
るため、金属酸化物皮膜を安定化する。その結果、金属
酸化物皮膜のバリア効果、ひいては耐食性が向上する。
【0016】その他、適用可能なクロムフリー処理や非
クロム化成処理としては、Mo,W等、ポリ金属の酸化
物を単体,混合物又は複合物にリチウムシリケート,コ
ロイダルシリカ,アルミナゾル,ジルコニアゾル等の1
種又は2種以上を配合した処理液がある。当該処理液を
塗布し乾燥することにより生成した無機質皮膜も、同等
な作用を呈する。
クロム化成処理としては、Mo,W等、ポリ金属の酸化
物を単体,混合物又は複合物にリチウムシリケート,コ
ロイダルシリカ,アルミナゾル,ジルコニアゾル等の1
種又は2種以上を配合した処理液がある。当該処理液を
塗布し乾燥することにより生成した無機質皮膜も、同等
な作用を呈する。
【0017】
【実施例1】冷延鋼板を電解脱脂,水洗し、更に10g
/lの硫酸溶液で酸洗した後、水洗することにより原板
を用意した。カソード電解用処理液には、各種金属イオ
ン濃度を5〜1000mモル/lの範囲に調節したpH
0.5〜5の溶液を用いた。電解処理液に浸漬した原板
を表1に示す電解条件でカソード電解処理することによ
り、鋼板表面に金属酸化物皮膜を形成した。金属酸化物
皮膜をESCA及びAESで分析したところ、各処理液
に含まれていたAl,Ti,Zr,La,Mg,Mo,
Ti等が酸化物又は水酸化物となって金属酸化物皮膜に
取り込まれていることが確認された。リン酸を添加した
処理液では、リン酸濃度に伴ってpHが1未満に低下し
て金属酸化物皮膜の再溶解やカソード電解処理の析出効
率低下を招くので、炭酸ナトリウム等の添加によってp
Hを0.5〜5の範囲に調整した。この溶液から得られ
た金属酸化物皮膜をGDS分析したところ、Pが含まれ
ていた。
/lの硫酸溶液で酸洗した後、水洗することにより原板
を用意した。カソード電解用処理液には、各種金属イオ
ン濃度を5〜1000mモル/lの範囲に調節したpH
0.5〜5の溶液を用いた。電解処理液に浸漬した原板
を表1に示す電解条件でカソード電解処理することによ
り、鋼板表面に金属酸化物皮膜を形成した。金属酸化物
皮膜をESCA及びAESで分析したところ、各処理液
に含まれていたAl,Ti,Zr,La,Mg,Mo,
Ti等が酸化物又は水酸化物となって金属酸化物皮膜に
取り込まれていることが確認された。リン酸を添加した
処理液では、リン酸濃度に伴ってpHが1未満に低下し
て金属酸化物皮膜の再溶解やカソード電解処理の析出効
率低下を招くので、炭酸ナトリウム等の添加によってp
Hを0.5〜5の範囲に調整した。この溶液から得られ
た金属酸化物皮膜をGDS分析したところ、Pが含まれ
ていた。
【0018】金属酸化物皮膜が形成された原板に化成処
理液を塗布し、水洗することなく熱風乾燥炉に装入し、
150℃で加熱乾燥することにより化成処理皮膜を形成
した。化成処理皮膜の付着量が50mg/m2となるよ
うに塗布量を調整した。試験No.1〜8では、Mn濃
度:15g/l,Ti/Mnモル比:1,P/Mnモル
比:2,有機酸/Mnモル比:0.3,F/Mnモル
比:6でMn(H2PO4)2,(NH4)2TiF6,酒石酸を
含むpH3の処理液を使用した。試験No.9では、濃
度100ml/lのモリブデン系化成処理液(MolyPhos
66:ユケン工業株式会社製)を使用し、液温50℃の
化成処理液に亜鉛めっき鋼板を60秒浸漬した後、乾燥
温度60℃で熱風乾燥することにより化成処理皮膜を形
成した。
理液を塗布し、水洗することなく熱風乾燥炉に装入し、
150℃で加熱乾燥することにより化成処理皮膜を形成
した。化成処理皮膜の付着量が50mg/m2となるよ
うに塗布量を調整した。試験No.1〜8では、Mn濃
度:15g/l,Ti/Mnモル比:1,P/Mnモル
比:2,有機酸/Mnモル比:0.3,F/Mnモル
比:6でMn(H2PO4)2,(NH4)2TiF6,酒石酸を
含むpH3の処理液を使用した。試験No.9では、濃
度100ml/lのモリブデン系化成処理液(MolyPhos
66:ユケン工業株式会社製)を使用し、液温50℃の
化成処理液に亜鉛めっき鋼板を60秒浸漬した後、乾燥
温度60℃で熱風乾燥することにより化成処理皮膜を形
成した。
【0019】比較のため、pHが低すぎる電解処理液
(試験番号10)又は適正範囲から外れた電流密度でカ
ソード電解(試験番号11)した後、同様な条件下で化
成処理皮膜を形成した。更に、金属酸化物皮膜を設ける
ことなく冷延鋼板に化成処理皮膜を直接形成した表面処
理鋼板を用意した(試験番号12)。
(試験番号10)又は適正範囲から外れた電流密度でカ
ソード電解(試験番号11)した後、同様な条件下で化
成処理皮膜を形成した。更に、金属酸化物皮膜を設ける
ことなく冷延鋼板に化成処理皮膜を直接形成した表面処
理鋼板を用意した(試験番号12)。
【0020】得られた各表面処理鋼板から切り出された
試験片を曲げ試験及び塩水噴霧試験に供した。曲げ試験
では、曲げ角度180度で2t曲げした試験片の曲げ外
側に粘着テープを貼り付け、引き剥がした後で非クロム
系化成処理皮膜の付着状況を調査した。剥離が検出され
なかった皮膜を○,一部でも剥離した皮膜を×として密
着性を評価した。塩水噴霧試験では、切断端面をシール
した試験片にJIS Z2371に準拠して5%NaCl水溶液
を24時間噴霧した後、試験片の表面を目視観察して赤
錆発生面積率を求めた。赤錆発生面積率が5%未満を
◎,5〜10%を○,10%以上を×として耐食性を評
価した。
試験片を曲げ試験及び塩水噴霧試験に供した。曲げ試験
では、曲げ角度180度で2t曲げした試験片の曲げ外
側に粘着テープを貼り付け、引き剥がした後で非クロム
系化成処理皮膜の付着状況を調査した。剥離が検出され
なかった皮膜を○,一部でも剥離した皮膜を×として密
着性を評価した。塩水噴霧試験では、切断端面をシール
した試験片にJIS Z2371に準拠して5%NaCl水溶液
を24時間噴霧した後、試験片の表面を目視観察して赤
錆発生面積率を求めた。赤錆発生面積率が5%未満を
◎,5〜10%を○,10%以上を×として耐食性を評
価した。
【0021】表1の試験結果にみられるように、金属酸
化物皮膜を介して非クロム系化成処理皮膜を設けた試験
番号1〜9では、金属酸化物皮膜、化成処理皮膜の何れ
も密着性に優れ、赤錆発生面積率が10%以下と耐食性
も良好であった。なかでも、リン酸塩を含む金属酸化物
皮膜を形成した皮膜では、赤錆発生面積率5%以下と耐
食性が更に改善されていた。他方、pHが低すぎる電解
処理液を用いたカソード電解処理(試験番号10)や過
剰な電流密度でカソード電解処理した(試験番号11)
場合、金属酸化物皮膜が析出せず、試験番号12と同様
に冷延鋼板の表面に化成処理皮膜が直接形成された。そ
のため、何れの表面処理鋼板にあっても赤錆発生面積率
が10%以上と高く、耐食性に劣っていた。
化物皮膜を介して非クロム系化成処理皮膜を設けた試験
番号1〜9では、金属酸化物皮膜、化成処理皮膜の何れ
も密着性に優れ、赤錆発生面積率が10%以下と耐食性
も良好であった。なかでも、リン酸塩を含む金属酸化物
皮膜を形成した皮膜では、赤錆発生面積率5%以下と耐
食性が更に改善されていた。他方、pHが低すぎる電解
処理液を用いたカソード電解処理(試験番号10)や過
剰な電流密度でカソード電解処理した(試験番号11)
場合、金属酸化物皮膜が析出せず、試験番号12と同様
に冷延鋼板の表面に化成処理皮膜が直接形成された。そ
のため、何れの表面処理鋼板にあっても赤錆発生面積率
が10%以上と高く、耐食性に劣っていた。
【0022】
【0023】
【実施例2】SUS430ステンレス鋼板を原板に使用
し、実施例1と同じ条件下で金属酸化物皮膜,非クロム
系化成処理皮膜を形成した。比較のため、pHが低すぎ
る電解処理液(試験番号9)又は適正範囲から外れた電
流密度でカソード電解(試験番号10)した後、同様な
条件下で化成処理皮膜を形成した。更に、金属酸化物皮
膜を設けることなく冷延鋼板に化成処理皮膜を直接形成
した表面処理鋼板を用意した(試験番号11)。
し、実施例1と同じ条件下で金属酸化物皮膜,非クロム
系化成処理皮膜を形成した。比較のため、pHが低すぎ
る電解処理液(試験番号9)又は適正範囲から外れた電
流密度でカソード電解(試験番号10)した後、同様な
条件下で化成処理皮膜を形成した。更に、金属酸化物皮
膜を設けることなく冷延鋼板に化成処理皮膜を直接形成
した表面処理鋼板を用意した(試験番号11)。
【0024】得られた各表面処理鋼板について実施例1
と同じテープ剥離試験で非クロム系化成処理皮膜に対す
る金属酸化物皮膜の密着性を調査すると共に、複合サイ
クル腐食試験により耐食性を調査した。複合サイクル腐
食試験では、35℃の5%塩水を2時間噴霧した後、6
0℃で4時間乾燥し、50度,95%RHの湿潤雰囲気
に放置することを1サイクルとし,塩水噴霧→乾燥→湿
潤を50サイクル繰り返した。複合サイクル腐食試験後
の試験片表面を目視観察し、実施例1と同じ判定基準で
耐食性を評価した。
と同じテープ剥離試験で非クロム系化成処理皮膜に対す
る金属酸化物皮膜の密着性を調査すると共に、複合サイ
クル腐食試験により耐食性を調査した。複合サイクル腐
食試験では、35℃の5%塩水を2時間噴霧した後、6
0℃で4時間乾燥し、50度,95%RHの湿潤雰囲気
に放置することを1サイクルとし,塩水噴霧→乾燥→湿
潤を50サイクル繰り返した。複合サイクル腐食試験後
の試験片表面を目視観察し、実施例1と同じ判定基準で
耐食性を評価した。
【0025】表2の試験結果にみられるように、金属酸
化物皮膜を介して非クロム系化成処理皮膜を設けた試験
番号1〜8では、金属酸化物皮膜、化成処理皮膜の何れ
も密着性に優れ、赤錆発生面積率が10%以下と耐食性
も良好であった。なかでも、リン酸塩を含む金属酸化物
皮膜を形成した皮膜では、赤錆発生面積率5%以下と耐
食性が更に改善されていた。他方、pHが低すぎる電解
処理液を用いたカソード電解処理(試験番号10)や過
剰な電流密度でカソード電解処理した(試験番号11)
場合、金属酸化物皮膜が析出せず、試験番号12と同様
にステンレス鋼板の表面に化成処理皮膜が直接形成され
た。そのため、何れの表面処理鋼板にあっても赤錆発生
面積率が10%以上と高く、耐食性に劣っていた。
化物皮膜を介して非クロム系化成処理皮膜を設けた試験
番号1〜8では、金属酸化物皮膜、化成処理皮膜の何れ
も密着性に優れ、赤錆発生面積率が10%以下と耐食性
も良好であった。なかでも、リン酸塩を含む金属酸化物
皮膜を形成した皮膜では、赤錆発生面積率5%以下と耐
食性が更に改善されていた。他方、pHが低すぎる電解
処理液を用いたカソード電解処理(試験番号10)や過
剰な電流密度でカソード電解処理した(試験番号11)
場合、金属酸化物皮膜が析出せず、試験番号12と同様
にステンレス鋼板の表面に化成処理皮膜が直接形成され
た。そのため、何れの表面処理鋼板にあっても赤錆発生
面積率が10%以上と高く、耐食性に劣っていた。
【0026】
【0027】
【実施例3】片面当り20g/m2の付着量で電気亜鉛
めっきした板厚0.5mmの電気亜鉛めっき鋼板を原板
に使用した。脱脂剤(SD270:日本ペイント株式会社
製)の2質量%溶液に電気亜鉛めっき鋼板を浸漬し、表
面をガーゼで拭った後、十分水洗し、実施例1と同じ条
件下で金属酸化物皮膜,非クロム系化成処理皮膜を形成
した。比較のため、付着量50mg/m2の非クロム系
化成処理皮膜を直接設けた表面処理鋼板(試験番号
4),未処理の電気亜鉛めっき鋼板(試験番号5),塗
布型クロメート処理でCr換算付着量10mg/m2の
クロメート皮膜を設けた後で膜厚2μmのアクリル系樹
脂皮膜を設け有機系化成処理を施した表面処理鋼板(試
験番号6)を用意した。
めっきした板厚0.5mmの電気亜鉛めっき鋼板を原板
に使用した。脱脂剤(SD270:日本ペイント株式会社
製)の2質量%溶液に電気亜鉛めっき鋼板を浸漬し、表
面をガーゼで拭った後、十分水洗し、実施例1と同じ条
件下で金属酸化物皮膜,非クロム系化成処理皮膜を形成
した。比較のため、付着量50mg/m2の非クロム系
化成処理皮膜を直接設けた表面処理鋼板(試験番号
4),未処理の電気亜鉛めっき鋼板(試験番号5),塗
布型クロメート処理でCr換算付着量10mg/m2の
クロメート皮膜を設けた後で膜厚2μmのアクリル系樹
脂皮膜を設け有機系化成処理を施した表面処理鋼板(試
験番号6)を用意した。
【0028】各表面処理鋼板から試験片を切り出し、ア
ース試験,スポット溶接試験,腐食試験に供した。アー
ス試験では、表面抵抗測定装置(MCP-T400:三菱油化株
式会社製)を使用し、四端子電極で試験片の表面抵抗を
測定した。スポット溶接試験では、試験片を2枚重ね合
わせ、先端径6mmのドーム型電極チップで試験片を両
側から挟み、加圧力250kgf,溶接時間0.2秒,
溶接速度1秒/点の条件下で連続打点しながらスポット
溶接した。そして、重ね合わせた接合部に生じたナゲッ
トの径が4×t1/2(t:試験片1枚の板厚)になったと
きの打点数でスポット溶接性を評価した。腐食試験で
は、試験片表面に塩水を噴霧しながら24時間ごとに試
験片表面を観察した。そして、面積率で5%の白錆が発
生するまでの塩水噴霧時間を計測し、当該塩水噴霧時間
によって耐食性を評価した。
ース試験,スポット溶接試験,腐食試験に供した。アー
ス試験では、表面抵抗測定装置(MCP-T400:三菱油化株
式会社製)を使用し、四端子電極で試験片の表面抵抗を
測定した。スポット溶接試験では、試験片を2枚重ね合
わせ、先端径6mmのドーム型電極チップで試験片を両
側から挟み、加圧力250kgf,溶接時間0.2秒,
溶接速度1秒/点の条件下で連続打点しながらスポット
溶接した。そして、重ね合わせた接合部に生じたナゲッ
トの径が4×t1/2(t:試験片1枚の板厚)になったと
きの打点数でスポット溶接性を評価した。腐食試験で
は、試験片表面に塩水を噴霧しながら24時間ごとに試
験片表面を観察した。そして、面積率で5%の白錆が発
生するまでの塩水噴霧時間を計測し、当該塩水噴霧時間
によって耐食性を評価した。
【0029】表3の調査結果にみられるように、本発明
に従った試験番号1〜3の表面処理鋼板は、未処理の電
気亜鉛めっき鋼板(試験番号5)に匹敵する優れたアー
ス性を示した。また、薄い非クロム系化成処理皮膜と下
層の金属酸化物皮膜が亜鉛めっき層表面を保護すること
から、電極チップへの焼付きが防止され、何れも連続打
点数が3500を超える優れたスポット溶接性を呈し
た。5%白錆発生までの時間も480時間と長く、有機
系化成処理皮膜を設けた試験番号6よりも耐食性に優れ
ていた。
に従った試験番号1〜3の表面処理鋼板は、未処理の電
気亜鉛めっき鋼板(試験番号5)に匹敵する優れたアー
ス性を示した。また、薄い非クロム系化成処理皮膜と下
層の金属酸化物皮膜が亜鉛めっき層表面を保護すること
から、電極チップへの焼付きが防止され、何れも連続打
点数が3500を超える優れたスポット溶接性を呈し
た。5%白錆発生までの時間も480時間と長く、有機
系化成処理皮膜を設けた試験番号6よりも耐食性に優れ
ていた。
【0030】これに対し、未処理の電気亜鉛めっき鋼板
では、スポット溶接の打点数増加に従って電極チップへ
の亜鉛のピックアップが多くなるため、次第にナゲット
径が小さくなり、連続打点数3000で2.82mm
(=4×0.51/2)を下回るようになった。有機系化成
処理皮膜を設けた電気亜鉛めっき鋼板(試験番号6)で
は、連続打点数1500でナゲット径が2.82mmを
下回り、著しくスポット溶接性に劣っていた。有機系化
成処理皮膜を設けた電気亜鉛めっき鋼板(試験番号6)
では、測定個所による抵抗値のバラツキが大きく、アー
ス性も安定しなかった。
では、スポット溶接の打点数増加に従って電極チップへ
の亜鉛のピックアップが多くなるため、次第にナゲット
径が小さくなり、連続打点数3000で2.82mm
(=4×0.51/2)を下回るようになった。有機系化成
処理皮膜を設けた電気亜鉛めっき鋼板(試験番号6)で
は、連続打点数1500でナゲット径が2.82mmを
下回り、著しくスポット溶接性に劣っていた。有機系化
成処理皮膜を設けた電気亜鉛めっき鋼板(試験番号6)
では、測定個所による抵抗値のバラツキが大きく、アー
ス性も安定しなかった。
【0031】
【0032】
【実施例4】種々のめっき鋼板を原板に使用し、実施例
1と同じ条件下で付着量50mg/m2の金属酸化物皮
膜を形成した後、金属酸化物皮膜の上に付着量50mg
/m2の非クロム系化成処理皮膜を設けた。比較のた
め、付着量50mg/m2の非クロム系化成処理皮膜を
めっき鋼板に直接形成した表面処理鋼板(試験番号4〜
6)、Cr換算付着量50mg/m2のクロメート皮膜
をめっき鋼板に直接形成した表面処理鋼板(試験番号7
〜9)を用意した。各表面処理鋼板の耐食性を実施例3
と同様に5%白錆発生までの塩水噴霧時間で評価した。
1と同じ条件下で付着量50mg/m2の金属酸化物皮
膜を形成した後、金属酸化物皮膜の上に付着量50mg
/m2の非クロム系化成処理皮膜を設けた。比較のた
め、付着量50mg/m2の非クロム系化成処理皮膜を
めっき鋼板に直接形成した表面処理鋼板(試験番号4〜
6)、Cr換算付着量50mg/m2のクロメート皮膜
をめっき鋼板に直接形成した表面処理鋼板(試験番号7
〜9)を用意した。各表面処理鋼板の耐食性を実施例3
と同様に5%白錆発生までの塩水噴霧時間で評価した。
【0033】表4の調査結果にみらるように、金属酸化
物皮膜を介して非クロム系化成処理皮膜を設けた本発明
の表面処理鋼板(試験番号1〜3)では、5%白錆発生
までの塩水噴霧時間が480時間以上になっており、ク
ロメート処理鋼板(試験番号7〜9)に比較して2倍以
上の耐食性を呈した。
物皮膜を介して非クロム系化成処理皮膜を設けた本発明
の表面処理鋼板(試験番号1〜3)では、5%白錆発生
までの塩水噴霧時間が480時間以上になっており、ク
ロメート処理鋼板(試験番号7〜9)に比較して2倍以
上の耐食性を呈した。
【0034】
【0035】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の表面処
理鋼板は、カソード電解処理で形成した金属酸化物皮膜
を介して非クロム系の化成処理皮膜を設けている。金属
酸化物皮膜は、鋼板表面に対する化成処理皮膜の密着性
を向上させ、加工後にも化成処理皮膜の損傷を抑えて優
れた耐食性を維持する。また、有機系の化成処理皮膜に
比較してスポット溶接性に優れ、溶接時に異臭が発生す
ることもない。このような長所を活用し、環境に悪影響
を及ぼすCrを含まないことと相俟って、腐食性雰囲気
に曝される建築用資材,機械構造用部材等の広範な用途
に使用される表面処理鋼板が提供される。
理鋼板は、カソード電解処理で形成した金属酸化物皮膜
を介して非クロム系の化成処理皮膜を設けている。金属
酸化物皮膜は、鋼板表面に対する化成処理皮膜の密着性
を向上させ、加工後にも化成処理皮膜の損傷を抑えて優
れた耐食性を維持する。また、有機系の化成処理皮膜に
比較してスポット溶接性に優れ、溶接時に異臭が発生す
ることもない。このような長所を活用し、環境に悪影響
を及ぼすCrを含まないことと相俟って、腐食性雰囲気
に曝される建築用資材,機械構造用部材等の広範な用途
に使用される表面処理鋼板が提供される。
フロントページの続き
(72)発明者 宮野 勉
大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株式
会社技術研究所内
(72)発明者 和泉 圭二
大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株式
会社技術研究所内
Fターム(参考) 4K026 AA02 AA22 BA03 BA08 BA12
BB08 BB10 CA18 CA23 CA26
CA28 CA29 CA31 CA38 DA02
DA11
4K044 AA02 AB02 BA12 BA17 BA20
BA21 BB03 BC02 CA16 CA17
CA53 CA62
Claims (4)
- 【請求項1】 カソード電解処理で下地鋼表面に形成さ
れたAl,Ti,Zr,La,Mg,Moの1種又は2
種以上を含む金属酸化物皮膜を介し、非クロム系の無機
質化成処理皮膜が設けられていることを特徴とする耐食
性及びスポット溶接性に優れた表面処理鋼板。 - 【請求項2】 金属酸化物皮膜がリン酸塩を含む請求項
1記載の表面処理鋼板。 - 【請求項3】 Al,Ti,Zr,La,Mg,Moの
1種又は2種以上を10〜1000mモル/lの金属イ
オン濃度で含むpH1〜5の処理液に鋼板を浸漬し、カ
ソード電解処理によってAl,Ti,Zr,La,M
g,Moの1種又は2種以上を含む金属酸化物皮膜を形
成した後、非クロム系化成処理液を鋼板表面に塗布し、
水洗工程を経ずに乾燥させることを特徴とする耐食性及
びスポット溶接性に優れた表面処理鋼板の製造方法。 - 【請求項4】 0.5〜5g/lの割合でリン酸を添加
した電解処理液を使用する請求項3記載の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002017858A JP2003213459A (ja) | 2002-01-28 | 2002-01-28 | 耐食性及びスポット溶接性に優れた表面処理鋼板及びその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002017858A JP2003213459A (ja) | 2002-01-28 | 2002-01-28 | 耐食性及びスポット溶接性に優れた表面処理鋼板及びその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003213459A true JP2003213459A (ja) | 2003-07-30 |
Family
ID=27653407
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002017858A Withdrawn JP2003213459A (ja) | 2002-01-28 | 2002-01-28 | 耐食性及びスポット溶接性に優れた表面処理鋼板及びその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003213459A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007119866A (ja) * | 2005-10-28 | 2007-05-17 | Jfe Steel Kk | 表面処理金属板およびその製造方法、ならびに樹脂被覆金属板、金属缶および缶蓋 |
JP2007182595A (ja) * | 2006-01-05 | 2007-07-19 | Jfe Steel Kk | 表面処理金属板およびその製造方法、ならびに樹脂被覆金属板、金属缶および缶蓋 |
JP2007224334A (ja) * | 2006-02-21 | 2007-09-06 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 表面処理亜鉛系めっき金属材及びその製造方法 |
JP2009136785A (ja) * | 2007-12-06 | 2009-06-25 | Neos Co Ltd | 亜鉛金属表面の耐食性皮膜形成方法 |
-
2002
- 2002-01-28 JP JP2002017858A patent/JP2003213459A/ja not_active Withdrawn
Cited By (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007119866A (ja) * | 2005-10-28 | 2007-05-17 | Jfe Steel Kk | 表面処理金属板およびその製造方法、ならびに樹脂被覆金属板、金属缶および缶蓋 |
JP2007182595A (ja) * | 2006-01-05 | 2007-07-19 | Jfe Steel Kk | 表面処理金属板およびその製造方法、ならびに樹脂被覆金属板、金属缶および缶蓋 |
JP4626518B2 (ja) * | 2006-01-05 | 2011-02-09 | Jfeスチール株式会社 | 表面処理金属板およびその製造方法、ならびに樹脂被覆金属板、金属缶および缶蓋 |
JP2007224334A (ja) * | 2006-02-21 | 2007-09-06 | Sumitomo Metal Ind Ltd | 表面処理亜鉛系めっき金属材及びその製造方法 |
JP4661627B2 (ja) * | 2006-02-21 | 2011-03-30 | 住友金属工業株式会社 | 表面処理亜鉛系めっき金属材及びその製造方法 |
JP2009136785A (ja) * | 2007-12-06 | 2009-06-25 | Neos Co Ltd | 亜鉛金属表面の耐食性皮膜形成方法 |
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Legal Events
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---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
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