JP3898122B2 - 耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する技術分野に属するものであり、特には、クロム化合物を用いることなしに、優れた耐食性を有することのできる電気亜鉛めっき鋼板の製造方法に関する技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
クロム化合物を含まない耐食性亜鉛めっき鋼板に関しては、下記(1) 〜(5) のようなものが知られている。
【0003】
(1) 特開平8−13154号公報に記載されたもの。即ち、亜鉛含有金属めっき鋼板の表面に、亜鉛/りん重量比=2.204 :1〜3.166 :1で亜鉛とりんとを含み、更にFe,Co,Ni,Ca、Mg,Mnの1種以上を0.06〜9.0 重量%で含むりん酸亜鉛複合皮膜を、電解法または化成処理により形成し、その上に、微小な結晶サイズを有するリン酸塩化成皮膜を形成するというもの。
【0004】
(2) 特開平9−49086号公報に記載されたもの。即ち、冷延鋼板に電気亜鉛めっきを施した後に、めっき上にりん酸イオンを10〜20g/Lと、硝酸イオンを1〜15g/Lと、亜鉛イオンを0.5 〜1.5 g/Lと、フッ化物イオン及び錯フッ化物イオンの1種をフッ素換算で0.1 〜1.0 g/Lと、マグネシウムイオンとニッケルイオンとの合計量で2.1 〜4.2 g/L含有し、且つ、マグネシウムイオンとニッケルイオンとの重量比(Mg/Ni比)が0.05:1〜0.25:1の範囲で、全酸度/遊離酸度の比が10〜20である化成処理液中に50〜70℃の温度で1〜10秒間接触させて、皮膜重量が0.1 〜2.0 g/m2 で白色度(L値)が55以上の化成皮膜を形成させることを特徴とする高白色度で塗装性に優れた電気亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0005】
(3) 特開2000−313965号公報に記載されたもの。即ち、少なくとも一方の表面に付着量20g/m2 以上80g/m2 以下の亜鉛系めっき層を有する母材鋼板の、少なくとも亜鉛系めっき層面に、下記式(1) で規定されるリン酸亜鉛塩系化成処理皮膜層を有し、さらにその上に下記式(2) で規定される付着量のリン酸マグネシウム化合物層からなる封孔処理層を有することを特徴とする高耐食性表面処理鋼板。
0.3≦(リン酸亜鉛系化成処理皮膜付着量)≦ 3 ---------- 式(1)
(開孔率)× 0.3≦ (封孔処理付着量) ≦(開孔率)×3 ---- 式(2)
ただし、上記不等式(1) 、(2) 中の付着量の単位は、g/m2 である。開孔率は、開孔率=1−(リン酸亜鉛系化成処理による被覆面積)/(観察面積)である。
【0006】
(4) 特開2000−265281号公報に記載されたもの。即ち、鋼板の少なくとも片面に形成されたリン酸亜鉛を主成分とするリン酸亜鉛皮膜層と、該皮膜の上層に形成されたMg、Al、Co、Mn及びCaの中から選択される1種又は2種以上の金属よりなるリン酸塩を主成分とするリン酸塩皮膜層とを有することを特徴とする耐食性、潤滑性、塗料密着性に優れたリン酸塩複合被覆鋼板。
【0007】
(5) 特開2001−11647号公報に記載されたもの。即ち、亜鉛又は亜鉛系合金メッキ鋼板の表面上に、リン酸亜鉛皮膜と、Alを含有するリン酸塩皮膜との複合リン酸塩皮膜が形成されており、該複合皮膜の重量が1g/m2 以上で、かつ該複合皮膜中のAlが2wt%(重量%)以上であることを特徴とするリン酸塩処理亜鉛系メッキ鋼板。
【0008】
【特許文献1】
特開平8−13154号公報
【特許文献2】
特開平9−49086号公報
【特許文献3】
特開2000−313965号公報
【特許文献4】
特開2000−265281号公報
【特許文献5】
特開2001−11647号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
前記公報に記載の技術(1) 〜(5) は、クロム化合物を含まない耐食性亜鉛めっき鋼板に関する従来技術である。これらの技術(1) 〜(5) には、それぞれ下記のような問題点もしくは欠点がある。
【0010】
(1) 特開平8−13154号公報に記載されたものにおいては、形成される皮膜は、亜鉛めっき鋼板/リン酸(亜鉛+マグネシウム等)皮膜/りん酸塩(亜鉛)皮膜となる。第1層〔リン酸(亜鉛+マグネシウム等)皮膜〕が微細であるため、皮膜表面の凹凸も微細となり、塗膜密着性が劣る。
(2) 特開平9−49086号公報公報に記載されたものにおいては、形成される皮膜は、亜鉛めっき鋼板/リン酸(亜鉛+マグネシウム等)皮膜/無し(前記リン酸皮膜上には無し)となる。このリン酸皮膜(第1層)は均一に形成されずに多数の欠陥部が存在するが、シーリングのための第2層がないため、欠陥部がそのまま残り、腐食の起点となる。
(3) 特開2000−313965号公報に記載されたものにおいては、形成される皮膜は、亜鉛めっき鋼板/リン酸亜鉛皮膜/リン酸マグネシウム皮膜となる。この上層のリン酸マグネシウムの溶解性が比較的高いため、耐食性が不十分である。
(4) 特開2000−265281号公報に記載されたものにおいては、形成される皮膜は、亜鉛めっき鋼板/リン酸亜鉛皮膜/リン酸アルミ(またはマグネシウムあるいはカルシウム等)皮膜となる。この上層のリン酸アルミ、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム等はいずれも溶解性が比較的高いため、耐食性が不十分である。また、リン酸アルミの場合には、リン酸二水素アルミニウム溶液塗布時に下層のリン酸塩が溶解するため、クロメート同等以上の耐食性は得られない。
(5) 特開2001−11647号公報に記載されたものにおいては、形成される皮膜は、亜鉛めっき鋼板/リン酸亜鉛皮膜/リン酸アルミ皮膜となる。この上層のリン酸アルミ皮膜の形成のためにリン酸アルミニウム溶液を塗布する時に下層のリン酸塩が溶解するため、耐食性に劣る。
【0011】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、前記従来技術の場合のような問題点を解消し、クロム化合物を用いることなしに、クロメート処理した耐食性亜鉛めっき鋼板と同等もしくはそれ以上の優れた耐食性を有することのできる耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法は、請求項1記載の耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法(第1発明に係る耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法)としており、それは次のような構成としたものである。
【0013】
即ち、請求項1記載の耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法は、亜鉛めっき鋼板にりん酸亜鉛処理を施した後、Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩溶液を塗布し、乾燥することにより、前記亜鉛めっき鋼板上に、りん酸亜鉛皮膜、および、Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩皮膜を、この順に形成する耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、前記りん酸塩溶液中でのMgの数とCaの数との総和に対するZnの数の比が1.7以上であり、前記りん酸塩皮膜の最表面のX線回折による結晶構造がホパイトを示し、走査型電子顕微鏡観察による結晶形態が鱗片状であり、前記りん酸塩皮膜に含有されるMg,Caの1種以上を、Mgの場合は前記りん酸塩皮膜中のMg含有量:1.7 〜30mg/m2とし、Caの場合は前記りん酸塩皮膜中のCa含有量:2.6 〜20mg/m2とする耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法である〔第1発明〕。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は例えば次のような形態で実施する。
Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩溶液を用意する。電気亜鉛めっき鋼板にりん酸亜鉛処理を施し、これにより、りん酸塩処理皮膜を形成させる。この後、上記Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩溶液を塗布し、乾燥させる。
【0018】
そうすると、電気亜鉛めっき鋼板上に、りん酸亜鉛皮膜、および、Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩皮膜が、この順に形成された耐食性亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
【0019】
以下、本発明について主にその作用効果等を説明する。
【0020】
本発明者らは、前記目的を達成すべく、鋭意研究を重ねた結果、亜鉛めっき鋼板にりん酸亜鉛処理を施してりん酸亜鉛皮膜を形成させた後、その上にMg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩溶液を塗布し、乾燥させてMg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩皮膜を形成させると、シーリングクロメート処理なしで、シーリングクロメート処理した耐食性亜鉛めっき鋼板と同等もしくはそれ以上の耐食性を有する耐食性亜鉛めっき鋼板が得られることを見いだした。
【0021】
即ち、亜鉛めっき鋼板にりん酸亜鉛処理をすると、りん酸亜鉛皮膜はりん酸亜鉛処理時のカソード部のpHが上昇して形成される。逆に、アノード部にはりん酸亜鉛皮膜は形成され難い。このため、りん酸亜鉛皮膜には、前記アノード部に相当する個所に多数の欠陥部が残存することになり、腐食の起点になると考えられる。そこで、亜鉛めっき鋼板にりん酸亜鉛処理を施した後、上記欠陥部を充填するために、Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩溶液を塗布し乾燥させ、これにより、Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩皮膜を形成させる。そうすると、シーリングクロメート処理なしでシーリングクロメート処理した耐食性亜鉛めっき鋼板と同等もしくはそれ以上の耐食性を有する耐食性亜鉛めっき鋼板が得られることを見いだした。このMg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩皮膜は、MgやCaを含まないりん酸亜鉛皮膜よりも結晶粒が小さくて上記欠陥部を充填するのに適しており、このため、防食効果が大きい。
【0022】
かかる知見に基づき、本発明に係る耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法は、亜鉛めっき鋼板にりん酸亜鉛処理を施した後、Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩溶液を塗布し、乾燥することにより、亜鉛めっき鋼板上に、りん酸亜鉛皮膜、および、Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩皮膜を、この順に形成させることとしている〔第1発明〕。
【0023】
従って、本発明に係る耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法によれば、クロメート処理することなしに(即ち、クロム化合物を用いることなしに)、クロメート処理した耐食性亜鉛めっき鋼板と同等もしくはそれ以上の耐食性を有する耐食性亜鉛めっき鋼板を得ることができる。この耐食性亜鉛めっき鋼板は、クロム化合物を含まないで(即ち、クロム化合物を用いることなしに)、クロメート処理した耐食性亜鉛めっき鋼板と同等もしくはそれ以上の耐食性を有することができる。
【0024】
この耐食性亜鉛めっき鋼板(以下、本発明法製造の耐食性亜鉛めっき鋼板ともいう)においては、亜鉛めっき鋼板/リン酸亜鉛皮膜/リン酸(亜鉛+Mg,Caの1種以上)皮膜という構成の皮膜が形成されており、第1層のリン酸亜鉛皮膜の欠陥部(隙間)を第2層が埋める構造をとる。リン酸亜鉛皮膜上にMg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩皮膜〔リン酸(亜鉛+Mg,Caの1種以上)皮膜〕を形成させることにより、このりん酸塩皮膜はリン酸亜鉛皮膜よりも結晶が細かくなり、シーリング効果が高まるため、耐食性が向上する。また、このりん酸塩皮膜〔リン酸(亜鉛+Mg,Caの1種以上)皮膜〕は、りん酸Mg皮膜やりん酸Ca皮膜よりも水や酸に対して溶解し難いため、耐食性が向上する。
【0025】
前記従来技術(1) の場合、即ち、特開平8−13154号公報に記載されたものにおいては、前述の如く、形成される皮膜は、亜鉛めっき鋼板/リン酸(亜鉛+マグネシウム等)皮膜/りん酸塩(亜鉛)皮膜であり、本発明法製造の耐食性亜鉛めっき鋼板とは第1層と第2層の順序が逆である。従って、防食効果は得られるものの、第1層が微細であるため、皮膜表面の凹凸も微細となり、塗膜密着性が劣る。これに対し、本発明法製造の耐食性亜鉛めっき鋼板の場合には、第1層が微細でなく、第1層よりも第2層の方が微細であるため、皮膜表面の凹凸が微細とならないので、塗膜密着性に優れるという利点がある。
【0026】
本発明法製造の耐食性亜鉛めっき鋼板の皮膜の結晶形態は、X線回折したところホパイトのみとなることから、リン酸(亜鉛+Mg,Caの1種以上)皮膜〔Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩皮膜〕の構造は、リン酸亜鉛結晶の亜鉛イオンがマグネシウムイオンおよび/またはカルシウムイオンで置換された構造となっていると考えられる。走査型電子顕微鏡(SEM)観察では、鱗片状となっている。即ち、本発明法製造の耐食性亜鉛めっき鋼板は、最表面のX線回折による結晶構造がホパイトを示し、走査型電子顕微鏡観察による結晶形態が鱗片状である〔第1発明〕。かかる結晶構造および結晶形態に起因して、耐食性および塗膜密着性に優れると考えられる。
【0027】
前記りん酸塩皮膜に含有されるMg,Caの1種以上が、Mgの場合は前記りん酸塩皮膜中のMg含有量が1.7〜30mg/m2 であり、Caの場合は前記りん酸塩皮膜中のCa含有量が2.6〜20mg/m2 であることが望ましい〔第1発明〕。Mgの場合、Mg含有量が1.7mg/m2 未満であると耐食性が低下して不充分となる傾向があり、30mg/m2 を超えても耐食性向上効果が飽和し、それ以上の防錆作用が得られなくなる傾向がある。Caの場合、2.6mg/m2 未満であると耐食性が低下して不充分となる傾向があり、20mg/m2 を超えても耐食性向上効果が飽和する傾向がある。なお、上記りん酸塩皮膜中のMg量、Ca量[mg/m2 ]は、耐食性亜鉛めっき鋼板の表面積1m2 当たりのりん酸塩皮膜中のMg量、Ca量[mg]、即ち、りん酸塩皮膜の表面積1m2 当たりのMg量、Ca量[mg]である。
【0028】
上記Mgの場合とCaの場合とを比較するに、いずれの場合も同様の耐食性向上という作用効果が得られ、耐食性向上という点では特には優劣はないが、耐食性亜鉛めっき鋼板の製造上等の点からすると、CaよりもMgの方が好ましい。即ち、本発明に係る耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法において、りん酸塩溶液を塗布するに際し、このりん酸塩溶液としてCaを含有する処理液(りん酸塩溶液)を用いる場合、このりん酸塩溶液は溶解度があまり高くないため、沈殿が生じたり、塗布方法によっては目的の付着量が得られない可能性があり、かかる点からするとCaよりもMgを含有する処理液(りん酸塩溶液)を用いる方が好ましい。
【0029】
りん酸亜鉛皮膜の厚みは、0.3〜3g/m2 であることが望ましい。りん酸亜鉛皮膜の厚みが0.3g/m2 未満の場合、耐食性が低下して不充分となる傾向がある。りん酸亜鉛皮膜の厚みが3g/m2 を超えると、この厚みが増大しても厚み増大の割りには耐食性があまり向上しなくなる(耐食性向上効果がほぼ飽和する)傾向がある。なお、上記りん酸亜鉛皮膜の厚み[g/m2 ]はりん酸亜鉛皮膜の重量[g/m2 ]に相当するものであり、これは耐食性亜鉛めっき鋼板の表面積1m2 当たりのりん酸亜鉛皮膜の重量[g]、即ち、りん酸亜鉛皮膜の表面積1m2 当たりの重量[g]である。
【0030】
本発明に係る耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法において、第2層(Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩皮膜)の形成のためのりん酸塩溶液の塗布方法としてスプレーによる塗布法を採用する場合、塗布するりん酸塩溶液(Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩溶液)はpH2.5以上のものを用いることが望ましい。これは、低pH(pH2.5未満)のものを用いると、第1層(りん酸塩溶液塗布前に形成されているりん酸亜鉛皮膜)が溶解する可能性があるためである。
【0031】
第2層形成のためのりん酸塩溶液の塗布方法としてロールコータによる塗布法を採用する場合には、スプレーによる塗布法の場合ほどではなく、低pH(pH2.5未満)のものを用いても上記のような第1層溶解の可能性はないが、それでもpHが低くなりすぎると上記と同様の第1層溶解の可能性があるため、pH2.0以上のものを用いることが望ましい。
【0032】
本発明において、耐食性亜鉛めっき鋼板の基材である亜鉛めっき鋼板、即ち、りん酸亜鉛処理およびりん酸塩溶液の塗布処理が施される亜鉛めっき鋼板としては、電気亜鉛めっき鋼板の他、亜鉛浴に浸漬して得られる溶融亜鉛めっき鋼板等を用いることができる。
【0033】
Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩溶液としては、その種類は特には限定されず、種々のものを用いることができ、例えば、Mg(H2PO4)2及び/又はCa(H2PO4)2、及び、Zn3(PO4)2 をりん酸水溶液に添加して溶解させたもの、MgCO3 及び/又はCaCO3 、及び、Zn3(PO4)2 をりん酸水溶液に添加して溶解させたもの等を用いることができる。
【0034】
【実施例】
本発明の実施例および比較例を、以下説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0035】
基材の亜鉛めっき鋼板としては、電気亜鉛めっき鋼板を用いた。この亜鉛めっき鋼板の板厚は0.4mm、Zn(亜鉛)付着量は20g/m2 (亜鉛めっき鋼板1m2 当たり20g)である。
【0036】
上記亜鉛めっき鋼板について、市販のチタンコロイド系処理剤〔日本パーカライジング(株)製PL−Zn〕を使用して前処理を行った後、市販のリン酸塩処理浴〔日本パーカライジング(株)製Bt3307〕を用いてスプレー処理し、1g/m2 (亜鉛めっき鋼板1m2 当たり1g)のリン酸塩皮膜〔第1層〕を形成させた。
【0037】
上記リン酸塩皮膜〔第1層〕を形成させた亜鉛めっき鋼板を、水洗し乾燥した後、その表面に表1に示す組成の処理液〔第2層形成のための塗布液〕をロールコーターで塗布し、そして乾燥させた。このとき、到達板温度が100℃になるように乾燥して、塗布皮膜の重量が0.3g/m2 (亜鉛めっき鋼板1m2 当たり0.3g、即ち、第1層または第2層1m2 当たり0.3g)となるように調整した。以上により、本発明の実施例および比較例に係る亜鉛めっき鋼板(No.1〜8 、10〜20)を得た。
【0038】
【0039】
このようにして得られた亜鉛めっき鋼板(第1層及び第2層形成後のもの)を剪断して、幅:70mm、長さ:150mmの大きさの試験片を採取した後、その端面部をシールした。そして、この試験片について、塩水噴霧試験(JIS Z−2371)を行い、各試験片表面の面積の5%に白錆が発生するまでに要する時間(白錆発生時間)を測定し、下記評価基準に従って耐食性を評価した。即ち、上記白錆発生時間が72時間以上の場合、耐食性が優れており(優であり)、上記白錆発生時間が48時間以上72時間未満の場合、その次に耐食性が良いが耐食性不充分であり、上記白錆発生時間が24時間未満の場合、耐食性が不良であるとする。
【0040】
また、上記亜鉛めっき鋼板(第1層及び第2層形成後のもの)からサンプルを採取し、このサンプルを用いて下記のようにして皮膜中のMg量、Ca量の分析を行った。即ち、上記サンプル表面の皮膜を0.1N(規定)硝酸で溶解し、ICP 発光分光分析を行って皮膜中のMg量、Ca量を求めた。
【0041】
また、上記亜鉛めっき鋼板(第1層及び第2層形成後のもの)からX線回折試料を採取し、そのX線回折を行った。このとき、X線回折装置としては理学電機製RINT1500を使用し、ターゲット:Cu、ターゲット出力:50kV−200mA、薄膜入射角:1°、測定範囲(2θ):20〜90°、走査速度:4°/min の条件で測定した。
【0042】
更に、上記亜鉛めっき鋼板(第1層及び第2層形成後のもの)から試料を採取し、走査型電子顕微鏡(SEM)により、表面性状の観察を行った。
【0043】
これらの結果の中、耐食性試験結果を表1に示す。この表1の耐食性の欄において、○は耐食性:優(白錆発生時間:72時間以上)、△は耐食性:不充分(白錆発生時間:48時間以上72時間未満)、×は耐食性:不良(白錆発生時間:24時間未満)であることを示すものである。
【0044】
本発明の実施例に係るもの(No.1〜8 、No.13 〜19)は、その全てが○(耐食性:優)であり、優れた耐食性を示している。これに対し、比較例に係るもの(No.10 〜12、No.20 )は、△(耐食性:不充分)または×(耐食性:不良)である。
【0045】
No.10 〜12、No.20 のものから、Mg(H2PO4)2、Ca(H2PO4)2、Zn3(PO4)2 それぞれ単独とりん酸の組み合わせでは、△(耐食性:不充分)または×(耐食性:不良)であり、耐食性が優れていないことがわかる。即ち、第2層の皮膜の形成のための塗布液として、Mg,Caの1種を含有するりん酸塩溶液(Zn含有せず)を用いる場合も、Znを含有するりん酸塩溶液(MgもCaも含有せず)を用いる場合も、耐食性:優(○)とはならないこと、即ち、第2層のりん酸塩皮膜がMg,Caの1種以上を含有する場合(Zn含有せず)も、Znを含有する場合(MgもCaも含有せず)も、耐食性:優(○)とはならないことがわかる。このように、Mg,Caの1種とZnのいずれか一方を含有するだけでは、耐食性:優(○)とすることはできない。これに対し、本発明の実施例に係るもの(No.1〜8 、No.13 〜19)からわかるように、Mg,Caの1種以上とZnとを同時に含有する場合は、それに起因して耐食性:優(○)となる。
【0046】
図1に亜鉛めっき鋼板の表面(第2層の表面)の表面性状を示す。即ち、この表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を示す。図1は、No.5(本発明の実施例)に係る亜鉛めっき鋼板についてのものである。
【0047】
ホパイトの鱗片状の結晶形態が認められる。表面に塗料を塗装した場合、塗膜密着性に優れていることが、上記表面性状からうかがえる。X線回折の結果からは、ホパイト構造であることがわかった。
【0048】
【表1】
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、クロメート処理することなしに(即ち、クロム化合物を用いることなしに)、クロメート処理した耐食性亜鉛めっき鋼板と同等もしくはそれ以上の耐食性を有する耐食性亜鉛めっき鋼板を得ることができる。この耐食性亜鉛めっき鋼板は、クロム化合物を含まないで(即ち、クロム化合物を用いることなしに)、クロメート処理した耐食性亜鉛めっき鋼板と同等もしくはそれ以上の耐食性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係る薄膜(りん酸塩皮膜)表面の顕微鏡写真である。
Claims (1)
- 亜鉛めっき鋼板にりん酸亜鉛処理を施した後、Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩溶液を塗布し、乾燥することにより、前記亜鉛めっき鋼板上に、りん酸亜鉛皮膜、および、Mg,Caの1種以上とZnとを含有するりん酸塩皮膜を、この順に形成する耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法であって、前記りん酸塩溶液中でのMgの数とCaの数との総和に対するZnの数の比が1.7以上であり、前記りん酸塩皮膜の最表面のX線回折による結晶構造がホパイトを示し、走査型電子顕微鏡観察による結晶形態が鱗片状であり、前記りん酸塩皮膜に含有されるMg,Caの1種以上を、Mgの場合は前記りん酸塩皮膜中のMg含有量:1.7 〜30mg/m2とし、Caの場合は前記りん酸塩皮膜中のCa含有量:2.6 〜20mg/m2とする耐食性亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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