JPH10259499A - ステンレス鋼板表面の粗面化方法 - Google Patents

ステンレス鋼板表面の粗面化方法

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JPH10259499A
JPH10259499A JP8465597A JP8465597A JPH10259499A JP H10259499 A JPH10259499 A JP H10259499A JP 8465597 A JP8465597 A JP 8465597A JP 8465597 A JP8465597 A JP 8465597A JP H10259499 A JPH10259499 A JP H10259499A
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雅央 長尾
Masayoshi Tadano
政義 多々納
Yukio Uchida
幸夫 内田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ステンレス鋼板表面を電解粗面化処理するこ
とによって、有機系塗膜,無機系塗膜,クラッド合せ材
等、各種被覆材に対して高い密着性を示すステンレス鋼
板を得る方法であって、あらゆるステンレス鋼種に広く
適用できる方法を提供する。 【解決手段】 塩化第二鉄水溶液中で、+0.5VSCE
上の電位でのアノード電解と、−0.3〜−1.5VSCE
の間の電位でのカソード電解とを交互に行う交番電解を
ステンレス鋼板に施すステンレス鋼板表面の粗面化方
法。ここで、VSCEは飽和カロメル参照電極電位に対す
る電位(V)を表す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電解処理によって
ステンレス鋼板表面を粗面化する方法に関するものであ
り、塗膜,ほうろう被膜,クラッド被覆材等の各種被覆
材との密着性に優れたステンレス鋼板を製造するための
ものである。
【0002】
【従来の技術】近年、耐食性・意匠性等の観点から、建
材や家電製品等の多くの用途に各種の塗料を塗装したス
テンレス鋼板が使用されているが、最近ではさらに高度
な機能を有する塗装ステンレス鋼板のニーズが高まりつ
つある。例えば、住宅やビルの内外壁に使用される材料
にはメンテナンスフリー化の観点から数十年の使用に耐
える耐食性・耐候性・耐汚染性が、また、電子オーブン
レンジの内箱材には500℃以上もの温度に耐える耐熱
性が、さらに、トンネル内壁材のような道路施設材料に
は繰り返しの洗浄に耐える耐傷付き性,火災発生時の耐
燃焼性・無煙性が要求される。
【0003】従来から一般的に用いられているエポキ
シ,アクリル,ウレタン樹脂等に代表される有機高分子
を主体とした塗料では、これらの要求特性を満足するに
は限界がある。そこで最近では、有機系塗料のうち特に
フッ素塗料を塗布したステンレス鋼板や、アルコキシシ
ラン化合物を出発原料として加水分解・縮合反応により
塗膜を形成するセラミックス塗料、あるいは「ほうろ
う」等の、無機系塗料を塗布したステンレス鋼板が注目
されるようになってきた。フッ素塗料や無機系塗料は、
従来の有機系塗料と比較して耐食性,耐候性,耐熱性,
耐傷付き性等の特性が格段に優れる。しかし、従来の有
機系高分子塗料に比べ、フッ素系有機塗料や、セラミッ
クス塗料,ほうろう等の無機系塗膜はステンレス鋼表面
に対する密着性が悪い。このため、単にステンレス鋼表
面の不動態皮膜を除去して活性化するだけではこれらの
高機能性塗膜との密着性を十分に確保することが難し
く、加工部における塗膜剥離や、ステンレス鋼基材との
熱膨張差に起因するクラック発生等のトラブルが生じや
すい。
【0004】一般に、ステンレス鋼板と塗膜の密着性を
向上させる方法として、ステンレス鋼板表面を粗面化し
て塗膜との密着力を向上させる方法が知られている。例
えば、ダルロール圧延,ショットブラスト,ホーニング
といったステンレス鋼板表面を物理的に粗面化する方
法、硫酸,塩酸,硝弗酸等の酸類や塩化第二鉄溶液によ
るスプレーあるいは浸漬による化学エッチングでステン
レス鋼板表面を粗面化する方法等が挙げられる。
【0005】しかし、ダルロール圧延は、圧延ロールに
施した凹凸を転写するため、塗膜との密着性を満足する
ような微細な粗面化が不可能である。また、ショットブ
ラストやホーニングにおいては、削り取られた鋼粉の処
理による連続生産性の低下、薄ゲージ鋼板に適用した場
合には鋼板が反りかえる等の問題がある。さらに、物理
的な外力によって鋼板に歪が残り、鋼板本来の耐食性を
低下させるといった問題も残る。一方、化学エッチング
処理による方法は、局所的に大きなピットが発生するな
どステンレス鋼板表面に均一にピットを形成させるのが
難しく、処理時間も長いことから連続生産には向かな
い。
【0006】また最近では、ステンレス鋼の持つ高耐食
性と他の金属材料の持つ特性とを兼ね備えた複合材料と
して、ステンレス鋼クラッド材が多くの分野で使用され
ている。例えば、耐食性とともに均熱性・電磁誘導加熱
特性が必要とされるIH炊飯器の内釜にはAl/フェラ
イト系ステンレス鋼クラッド材が、放熱性と電気伝導性
が要求される電子部品材料にはCu/ステンレス鋼クラ
ッド材が、低接触電気抵抗性が求められるようなボタン
電池の外装缶にはNi/ステンレス鋼クラッド材が用い
られるなど、多種にわたる異種金属とのステンレス鋼ク
ラッド材がある。
【0007】ステンレス鋼クラッド材を製造する場合、
異種金属とステンレス鋼板を圧着する前に予めステンレ
ス鋼板表面をショットブラストあるいはブラッシングに
より粗面化しておき、圧着後には加熱拡散処理を施すの
が一般的である。しかし、ショットブラストやブラッシ
ングによる粗面化方法では研削粉の処理に手間がかかり
連続生産性が低下する。加えて、鋼板表面に研削粉が残
存したまま圧着される可能性が高く、その場合にはその
部分の接合面は加熱拡散が進行せず、ステンレス鋼クラ
ッド材全体として安定した接合強度が得られない。
【0008】以上のような問題点を解決する方法とし
て、特開平6-136600号には、塗膜との密着性向上を目的
に、硝酸または硝酸を主成分とする水溶液中でステンレ
ス鋼の陽極電解または陽極電解+陰極電解を行って表面
を粗面化する方法が開示されている。しかし、粗面化に
要する処理時間がフェライト系鋼種で40〜60min、オー
ステナイト系鋼種で3〜60minと長く、この方法も大量生
産に適した方法とはいい難い。また、この方法ではステ
ンレス鋼板表面に発生するピットのなかに最大深さが15
μmにおよぶものもあり、このように凹凸の激しい粗面
化形態の場合には、加工を施したときにピット開口部の
広がりが助長されてアンカー効果不足を生じ、被覆材と
の十分な密着力を維持できなくなる恐れがある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、フッ素
塗料や無機系塗膜で被覆した機能性の高いステンレス鋼
板や、ステンレス鋼クラッド材のニーズが高いにもかか
わらず、これらの被覆材に対して高い密着性を示すステ
ンレス鋼板素材を工業的に安定して製造する技術は確立
されていない。特に電解処理による方法においては、ス
テンレス鋼の不動態化能が鋼種によって大きく変わるた
め、電解条件も鋼種に応じていわば試行錯誤的に設定し
なくてはならない面があり、この煩雑さが電解粗面化処
理の普及を阻む一因となっている。本発明は、かかる現
状に鑑み、電解処理によって各種被覆材に対して高い密
着性を示す凹凸をステンレス鋼板表面に形成させる方法
であって、しかも鋼種に関わらずステンレス鋼に広く一
般的に適用できるように特定された粗面化方法を提供す
ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1の発明は、塩化第二鉄水溶液中で、+0.
5VSCE以上の電位でのアノード電解と、−0.3〜−
1.5VSCEの間の電位でのカソード電解とを交互に行う
交番電解をステンレス鋼板に施すステンレス鋼板表面の
粗面化方法を提供するものである。ここでVSCEは飽和
カロメル参照電極電位に対する電位(V)を表す。アノ
ード電解およびカソード電解の電位は、例えば走査速度
50mV/secとしたときのアノード分極曲線およびカソ
ード分極曲線から求めることができる。
【0011】請求項2の発明は、請求項1のアノード電
解を、+0.5VSCE以上の電位であって電流密度が1
0.0kA/m2以下の範囲で行うものである。
【0012】請求項3の発明は、請求項1または請求項
2の発明において、塩化第二鉄水溶液として、粗面化す
るステンレス鋼板を当該液中に浸漬して、X軸が電位
(VS CE),Y軸が電流密度(kA/m2)である直行座標
系におけるアノード分極曲線を測定し、その分極曲線上
に点A,B,Cを、X座標が浸漬電位である点をA,X座
標が(浸漬電位+0.5)/3である点をB,X座標が0.
5である点をCとなるようにとり、点A,B,Cの(X,
Y)座標をそれぞれ(XA,YA),(XB,YB),(XC,YC)としたと
き、当該アノード分極曲線において下記(1)式および
(2)式の関係が成立する液を使用するものである。 YB≦0.6 -----(1) 2(YB−YA)/(XB−XA)≦dYC/dXC -----(2) ここで、dYC/dXCは上記の直行座標上の点Cにおける分
極曲線の傾きを意味する。すなわち、点C近傍での分極
曲線の平均変化率を表すものであり、具体的には点Cに
おける分極曲線の接線の傾きとして求めることができ
る。
【0013】請求項4の発明は、ステンレス鋼板がフェ
ライト系ステンレス鋼板である場合に、請求項1または
請求項2の塩化第二鉄水溶液として、特にFe3+を1〜
50g/L含む液を使用するものである。請求項5の発
明は、ステンレス鋼板がオーステナイト系ステンレス鋼
板である場合に、請求項1または請求項2の塩化第二鉄
水溶液として、特にFe3+を30〜120g/L含む液
を使用するものである。
【0014】請求項6の発明は、請求項1または請求項
2の発明において、交番電解を、特に0.5〜10Hzと
するものである。請求項7の発明は、請求項1または請
求項2の発明において、交番電解を、特に10〜120
秒間施すものである。
【0015】請求項8の発明は、請求項1または請求項
2に記載の交番電解をステンレス鋼板に施すに際し、当
該鋼板について測定された塩化第二鉄水溶液中でのアノ
ード分極曲線およびカソード分極曲線から、+0.5V
SCE以上の電位に対応するアノード電流密度(kA/m2
の範囲および−0.3〜−1.5VSCEの電位に対応する
カソード電流密度(kA/m2)の範囲を予め求め、アノ
ード電流密度およびカソード電流密度をそれぞれ上記の
範囲になるように調整して交番電解を施すことに特徴を
有するものである。
【0016】請求項9の発明は、請求項1〜請求項8の
発明において、特に鋼板表面の粗面化形状を、ピット未
発生部分の面積率が60%以下であるように高密度にピ
ットが形成しており、かつ、これらピットの開口部の平
均径D(μm)とピットの平均深さH(μm)が下記
(3)式および(4)式の関係を満足するような粗面化
形状にするものである。 0.5≦D≦10 -----(3) D/4≦H≦D/2 -----(4) ここで、ピット未発生部分の面積率とは、鋼板表面の垂
直投影面積に占めるピット未発生部分の面積の割合
(%)をいう。また、ピットの開口部の平均径Dは、各
ピットの開口部の直径を平均したμm単位の値を意味す
る。したがって(3)式によりDの値は0.5〜10μ
mの範囲に規定されるが、開口部の直径が10μmを超
えるピットや0.5μm未満のピットが存在する場合も
含まれる。また同様に、ピットの平均深さHは、各ピッ
トの深さを平均したμm単位の値を意味する。したがっ
て(2)式によりHの値はD/4〜D/2の範囲に規定
されるが、深さがD/2を超えるピットやD/4未満の
ピットが存在する場合も含まれる。
【0017】請求項10の発明は、請求項1〜請求項8
の発明において、特に鋼板表面の粗面化形状を、当該鋼
板表面にピットが隙間なく形成しており、かつ、これら
ピットの開口部の平均径D(μm)とピットの平均深さ
H(μm)が下記(3)式および(4)式の関係を満足
するような粗面化形状にするものである。 0.5≦D≦10 -----(3) D/4≦H≦D/2 -----(4) ここで、ピットが隙間なく形成しているとは、各ピット
の間にピット未発生部分がないこと、換言すれば、各ピ
ットは周囲全体が他のピットと接するようにして連続的
につながっている状態を意味する。
【0018】請求項11の発明は、請求項1〜請求項1
0の発明において、鋼板が特に鋼帯である点に特徴を有
するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明者らは、フッ素系有機塗
料、セラミックス,ほうろう等の無機系塗料、およびA
l,Cu,Ni等の各種クラッド合わせ材との密着力を
高めるような鋼板の表面形態について種々検討した結
果、ピット未発生部分の面積率が60%以下であるよう
に高密度にピットが形成しており、しかもピットの形状
が半球状に近いとき、際だって高い密着力が得られるこ
とを知見した。ピットの形状が半球状であれば、接して
いるピット同士の境界が鋭く切り立った状態となる。ピ
ットの密度は高密度であるほど望ましく、各ピットが隙
間なく接しているとき、この鋭く切り立ったピット境界
は被覆材を強固に固着させる作用を最も強く発揮する。
【0020】図1に、各種被覆材との密着力を高めた本
発明に係るステンレス鋼板表面の走査電子顕微鏡写真の
一例(SUS304の例)を示す。また、図2に、そのステン
レス鋼板の断面の走査電子顕微鏡写真を示す。これらの
写真から、鋼板表面にピットが隙間なく連続的に形成し
ており、隣り合ったピット同士の境界は鋭く切り立った
状態となっていることが判る。なお、ピット開口部の平
均径Dは、例えば図1のような鋼板表面の電子顕微鏡写
真から求めることができ、図1の例ではD=2μmであ
る。また、ピットの平均深さHは、例えば図2のような
鋼板断面の電子顕微鏡写真から求めることができ、図2
の例ではH=1μmである。
【0021】このようなステンレス鋼板表面の凹凸形態
は塩化第二鉄水溶液中での交番電解で形成できる。その
理由について、次のように考えられる。図3に、塩化第
二鉄水溶液中での交番電解によるステンレス鋼板表面の
ピット形成過程を模式的に示す。まず、アノード電解で
ピットが発生する。そして、次のカソード電解でH2
発生が起きると、フラットな部分に比べピット内部では
一時的にFe3++3OH-→Fe(OH)3の反応が起こ
る領域までpHが上昇し、この時にピット内壁はFe
(OH)3によって覆われる。そして、再びアノード電
解が行われる時に、このFe(OH)3が保護作用を
し、すでに形成されているピット内部よりも、H2発生
により活性化されているフラットな部分が優先的に溶解
され、その結果、フラットな部分に新たなピットが形成
されることになる。以上のことが繰り返し行われること
により、本発明では比較的短時間で微細かつ緻密なピッ
トをステンレス鋼板表面に均一に施すことができると考
えられる。
【0022】ところで、ステンレス鋼はその化学組成に
よって耐食性、すなわち不動態化能が大きく異なる。し
たがって、現実の操業においてはそれぞれの鋼種に合っ
たエッチング力を有する電解液を使用すること、およ
び、それぞれの鋼種に応じてアノード電流およびカソー
ド電流を設定することが重要となる。しかし、使用する
ステンレス鋼種ごとにこれらの電解条件をいわば試行錯
誤的に模索していたのでは昨今の多様化したニーズに迅
速に応えられない。そこで、本発明では、適正な電解条
件を、使用するステンレス鋼種によらず共通して表すこ
とのできるパラメータによって特定した。そのパラメー
タとは、塩化第二鉄水溶液中でのアノード分極曲線・カ
ソード分極曲線から定まる飽和カロメル参照電極電位に
対する電位である。以下、本発明における交番電解処理
の条件について説明する。
【0023】〔電解液〕本発明では、Fe3+イオンを含
む電解液を使用することが必須要件である。これは、本
発明の交番電解では、前述のとおり、ピット内でFe3+
+3OH-→Fe(OH)3の反応を起こしてピット内壁
をFe(OH)3で保護し、フラットな部分に新たなピ
ットを形成させるというメカニズムを利用するからであ
る。したがって、Fe3+を含まない塩化第一鉄,硝酸,
塩酸,硫酸等の電解液中での交番電解では、上記メカニ
ズムを利用した電解粗面化が行えない。さらに、本発明
ではステンレス鋼を対象とするので、電解液中にはステ
ンレスの酸化作用を促進するNO3 -,SO4 2-等のイオ
ンが多量に含まれていると、孔食、すなわちピット形成
が容易にできず、短時間での粗面化表面形成が困難とな
る。このような観点から、本発明ではFe3+を含む塩化
第二鉄水溶液を使用する。
【0024】本発明は、先述のようにアノード電解で次
々と新たな箇所にピットを形成していく、いわば孔食発
生のメカニズムを利用するものであるから、アノード電
解は「孔食領域」となる電位で行われる。しかし、ステ
ンレス鋼板に対してエッチング力が強すぎてほとんど不
動態化作用を示さないような電解液を使用した場合に
は、アノード電解時に全面溶解型の腐食形態となってピ
ットが形成できなくなる恐れがある。逆に、エッチング
力が弱すぎる液を使用した場合には、たとえ孔食領域で
アノード電解を行ったとしても浅いお椀型のピットが形
成されるだけで、被覆材との密着力を十分発揮するに足
るアンカー効果が期待できない。つまり、望ましい形状
の凹凸をステンレス鋼板表面に形成させるためには、
「適度な不動態化作用」を呈する塩化第二鉄水溶液を使
用することが重要である。
【0025】そのような電解液として、例えば次のよう
に特定される塩化第二鉄水溶液を使用することが望まし
い。すなわち、粗面化するステンレス鋼板を当該塩化第
二鉄水溶液中に浸漬して、X軸が電位(VSCE),Y軸
が電流密度(kA/m2)である直行座標系におけるアノ
ード分極曲線を測定し、その分極曲線上に点A,B,C
を、X座標が浸漬電位である点をA,X座標が(浸漬電
位+0.5)/3である点をB,X座標が0.5である点
をCとなるようにとり、点A,B,Cの(X,Y)座標をそ
れぞれ(XA,YA),(XB,YB),(XC,YC),(XD,YD)としたとき、
当該アノード分極曲線において下記(1)式および
(2)式の関係が成立する液を使用することが望まし
い。 YB≦0.6 -----(1) 2(YB−YA)/(XB−XA)≦dYC/dXC -----(2) ここで、dYC/dXCは上記点Cにおける分極曲線の傾きを
意味する。
【0026】以下に、その望ましい電解液の条件につい
て、図4〜図9の分極曲線を例に説明する。このうち、
図4,図5,図6,図7はそれぞれSUS304,SUS316,SUS4
30,SUS444について、望ましい電解液を使用した場合の
例である。図8はSUS304についてエッチング力が強すぎ
る電解液を使用した場合の例、図9は同じくSUS304につ
いてエッチング力が弱すぎる電解液を使用した場合の例
である。これらの分極曲線はいずれも走査速度50mV/
secで測定したものである。図4〜図9の分極曲線上に
は、上記の3点A,B,Cを記してある。浸漬電位である
点Aより高電位側がアノード分極曲線、低電位側がカソ
ード分極曲線である。
【0027】望ましい電解液を使用した図4〜図7のア
ノード分極曲線には不動態化領域を示す低勾配の部分と
孔食領域を示す高勾配の部分が見られる。本発明者らが
種々のステンレス鋼について調査したところ、浸漬電位
(点A)と+0.5VSCEの電位(点C)の間に不動態化
領域の存在が必要であり、その不動態化領域が(浸漬電
位+0.5)/3VSCEの電位(点B)まで維持される液
であれば、良好なピットを形成するうえで十分な不動態
化力を有することがわかった。しかし、+0.5VSCE
電位(点C)以上の電位でもなお低勾配の不動態化領域
が維持されるような液になると、逆に、エッチング力が
弱すぎて良好なピットが形成できなくなることも明らか
となった。すなわち、浸漬電位(点A)から少なくとも
(浸漬電位+0.5)/3VSCEの電位(点B)までが不
動態化領域であり、かつ、点Bの電位と+0.5VSCE
電位(点C)の間で孔食領域に移行し、点Cでは既に孔
食領域となっている電解液が望ましいと言える。点Cを
+0.5VSCEの電位に規定したのは、後述するように、
アノード電解は単に孔食領域で行えば良いとは限らず、
孔食領域であっても電位が+0.5VSC E以上の領域で行
わなければアンカー効果の高い凹凸の形成が難しいこと
が判明したからである。
【0028】その関係を表したのが前記(1)式および
(2)式である。すなわち(1)式は、上記点Bが不動
態化領域に含まれることを規定している。本発明者らの
調査によれば、点Bにおける電流密度が0.6kA/m2
超えるような場合は全面溶解の性質が強く、結果的に良
好なピットの形成が望めない。このため、(1)式にお
いて点Bでの電流密度を0.6kA/m2以下であることを
要件とした。また(2)式は、点Cにおけるアノード分
極曲線の接線の傾きが、点Aと点Bを結んだ直線ABの
傾きの2倍以上であることを規定している。このように
規定したのは、塩化第二鉄水溶液中におけるステンレス
鋼板のアノード分極特性を考慮すれば、前記(1)式を
満たす液、すなわち点Aと点Bの間が不動態化領域であ
るとみなされる液である以上、+0.5VSCEである点C
におけるアノード分極曲線の接線傾きが直線ABの傾き
の少なくとも2倍以上となっているときは、点Cにおい
て既に孔食領域に入っている液であると考えて良く、依
然点Cにおいても不動態化領域が維持されている液と明
瞭に区別することができるからである。図4〜図7の電
解液は、いずれも(1)式および(2)式の関係を満た
している。
【0029】図8のエッチング力が強すぎる液では、点
Bでの電流密度が0.6kA/m2を超えており、(1)式
を満たしていない点において適正な液と明瞭に区別でき
る。また、図9のエッチング力が弱すぎる液では、点C
においても依然不動態化作用が維持されていると見ら
れ、(2)式を満たしていない点において適正な液と明
瞭に区別できる。
【0030】なお、好ましい電解液を塩化第二鉄の濃度
の面から捉えると、フェライト系ステンレス鋼板に対し
てはFe3+を1〜50g/L含む塩化第二鉄水溶液を、
またオーステナイト系ステンレス鋼板に対してはFe3+
を30〜120g/L含む塩化第二鉄水溶液をそれぞれ
使用することが望ましい。
【0031】〔アノード電解〕アノード電解の目的は孔
食領域においてステンレス鋼板表面にピットを形成させ
ることである。しかし先に触れたように、本発明者らが
不動態化作用を呈する塩化第二鉄水溶液中で種々の電位
においてステンレス鋼板のアノード電解実験を試みたと
ころ、たとえ孔食領域でのアノード電解であっても、+
0.5VSCE以上の高電位側の領域でなければ必ずしも良
好なピットを短時間で形成できるとは限らなかった。例
えば、不動態化領域が存在し、かつ+0.4VSCEにおい
て既に孔食領域となる塩化第二鉄水溶液中において、交
番電解のアノード電解を+0.4VSCEの電位で行ったと
ころ、ピットの形成は可能ではあったが、高いアンカー
効果が期待できる粗面化形状を達成するまでに長時間を
必要とした。したがって本発明では+0.5VSCE以上の
高電位側でアノード電解を行うこととした。ただし、ア
ノード電解の電位が高くなるにしたがってアノード電流
が増加し、アノード電流が10.0kA/m2を超えるとC
-イオンの分解反応が顕著になり、作業効率と作業環
境がともに悪化する。このため、アノード電解は電流密
度が10.0kA/m2以下の範囲で行うことが望ましい。
【0032】また、交番電解1サイクルあたりのアノー
ド通電時間は、ステンレス鋼板表面に形成されるピット
開口部の平均径Dと直接関係し、1サイクルあたりのア
ノード通電時間が長くなるほどピットの平均径Dはアノ
ード電流密度とは無関係に増大する。各種被覆材との密
着性の良好なピットを形成させるためには、1サイクル
あたりのアノード通電時間を0.05〜1secとすること
が望ましい。
【0033】〔カソード電解〕カソード電解の目的は、
前述したように、ステンレス鋼板表面でH2を発生さ
せ、ピット内壁にFe(OH)3の保護皮膜を形成させ
ること、およびピット未発生部分を活性化させることで
ある。このためH2発生反応を伴う領域でカソード電解
を行う必要がある。−0.3VSCE以下の電位でカソード
電解を行えば本発明にとってほぼ十分な速度のH2発生
反応が起き、−0.4VSCE以下の電位において一層安定
したH2発生反応が起きる。ただし、−1.5VSCEより
卑な電位でカソード電解を行うと、過剰なH2発生反応
により必要以上にステンレス鋼板表面が活性化され、浅
いピットしか形成できなくなったり、ピット内壁に生成
したFe(OH)3保護皮膜が取り去られるなど、却っ
て不都合が多くなり、ピット形成反応を円滑に進めるた
めには特に−1.0VSCEより卑な電位にしないことが望
ましい。したがって、本発明ではカソード電解を−0.
3〜−1.5VSCEの範囲で行うことが必要であり、特に
−0.4〜−1.0VSCEの範囲で行うことが好ましい。
また、カソード電解の目的を達成するためには、交番電
解1サイクルあたりのカソード通電時間は0.01sec以
上とすればよい。
【0034】〔交番電解サイクル〕交番電解1サイクル
あたりの適正通電時間は、アノード電解で0.05〜1s
ec、カソード電解では0.01sec以上であればよいこと
を述べたが、工業的規模での交番電源を考慮した場合、
アノードとカソードの通電時間は1:1とすることがコ
スト的な面から望ましい。このことから、交番電解のサ
イクルは0.5〜10Hzの範囲で行うことが望ましい。
【0035】〔電解処理時間〕交番電解に要する処理時
間が10secに満たないと、ステンレス鋼板表面のピッ
ト未発生部分の面積率が60%を超え、被覆材との密着
性が不十分となる恐れがある。一方、120secを超え
て電解しても粗面化形態および被覆材との密着性に大き
な差はなく、それ以上の処理は経済上不利になる。した
がって、交番電解をステンレス鋼に施す時間は10〜1
20secの範囲とすることが望ましい。これは、工業的
規模での鋼帯の連続生産に十分対応できる処理時間と言
える。
【0036】本発明では以上のような条件で電解処理を
行うことによって各種被覆材との密着性に優れたステン
レス鋼板が製造できる。ところで、現実の電解処理ライ
ンで飽和カロメル参照電極電位に対する鋼板の電位を直
接計測して電解電圧を調整することは、電解装置の複雑
化を招き、却ってコスト高につながる場合が多い。実際
に多くの電解処理ラインでは、電流密度が適正範囲とな
るように電源の電圧を調整しながら電解を行っている。
そこで、これまで説明してきた飽和カロメル参照電極電
位に対する鋼板の電位を用いた電解条件を実ラインでの
操業に活かすためには、例えば次のようにすればよい。
すなわち、粗面化するステンレス鋼板について予め測定
された塩化第二鉄水溶液中でのアノード分極曲線および
カソード分極曲線から、+0.5VSCE以上の電位に対応
するアノード電流密度(kA/m2)の範囲および−0.3
〜−1.5VSC Eの電位に対応するカソード電流密度(kA
/m2)の範囲を求めておき、実ラインでの操業に際し
ては、アノード電流密度およびカソード電流密度をそれ
ぞれ先に求めた上記の範囲になるように調整して交番電
解を施せばよい。
【0037】また、本発明では、ステンレス鋼板表面の
粗面化形状を、ピット未発生部分の面積率が60%以下
であるように高密度にピットが形成しており、かつ、こ
れらピットの開口部の平均径D(μm)とピットの平均
深さH(μm)が下記(3)式および(4)式の関係を
満足するような粗面化形状にすることによって、各種被
覆材との密着性を安定して改善することができる。 0.5≦D≦10 -----(3) D/4≦H≦D/2 -----(4) 特に、ピットは高密度に形成している程、各種被覆材と
の密着力をより一層高めることができる。鋼板表面にピ
ットが隙間なく形成している状態が最も望ましい。
【0038】なお、本発明にかかる粗面化方法は処理時
間も短くて済むので、特にステンレス鋼板が鋼帯である
場合の、連続処理による大量生産に好適に用いることが
できる。
【0039】
【実施例】
〔実施例1〕供試面積を1cm2としたSUS430の2D仕上
げ材およびSUS304の2D仕上げ材にそれぞれ通常の電解
脱脂・酸洗を施した材料について、SUS430の場合は液温
が30℃,Fe3+を25g/L含む塩化第二鉄水溶液、
SUS304の場合は液温が50℃,Fe3+を70g/L含む
塩化第二鉄水溶液中で、サイクル数2.5Hz,処理時間
60secと一定にした条件で交番電解を行った。その
際、飽和カロメル電極を参照極として直接アノード電解
電位およびカソード電解電位をコントロールしながら
「定電位電解」を行い、種々のアノード電解電位とカソ
ード電解電位の組合せについてのデータを採取した。表
1に、電解条件と、得られたピットの発生状況・形態を
示す。
【0040】
【表1】
【0041】アノード電解電位が+0.5VSCE以上、か
つカソード電解電位が−0.3〜−1.5VSCEの範囲で
ある本発明に係るNo.1〜14のサンプルは、いずれも鋼板
表面にピット未発生部分の面積率が60%以下であるよ
うに高密度にピットが発生しており、ピットの形態は開
口部の平均径D(μm)と平均深さH(μm)が0.5
≦D≦10、およびD/4≦H≦D/2の関係を満たす
半球状に近いものであった。これに対し、No.15,16,2
1,22のサンプルはカソード電解電位を貴にしすぎたた
めH2が発生せず、既存ピットの保護およびピット未発
生部の活性化が不十分となり、局所的にピット成長が進
んでしまった。No.17,18,23,24のサンプルは逆にカ
ソード電解電位を卑にしすぎたためH2発生量が過剰と
なり、ステンレス鋼板表面が活性化されすぎて浅いピッ
ト形態を呈してしまった。No.19,25のサンプルは孔食
領域でアノード電解が行われているにもかかわらず、ア
ノード電解電位を卑にしすぎたため当該60secの処理
時間では鋼板表面に良好なピットを形成できなかった。
No.20,26のサンプルはアノード電解が不動態領域で行
われたため、全くピット成長が見られなかった。
【0042】〔実施例2〕供試面積を1cm2としたSUS41
0L,SUS430,SUS444の各種2B仕上げ材のフェライト系
ステンレス鋼板に通常の電解脱脂・酸洗を施した材料に
ついて、塩化第二鉄水溶液の温度および電解液中に含ま
れるFe3+の濃度を種々変えた条件の電解液を使用し
て、アノード電解電位を+1.0VSCE.,カソード電解
電位を−0.6VSCE.,交番電解サイクルを3.3Hz,処
理時間を30secとした条件で電解処理を行い、それぞ
れの鋼種について適正な電解液の条件を調査した。表2
に、何種類かの液について、アノード分極曲線が前述の
(1)式および(2)式の条件を満たすか否かの判定結
果と、その液を用いた電解処理によって得られたピット
の発生状況・形態を示す。
【0043】
【表2】
【0044】前記(1)式を満たさない条件の液を使用
した場合は、いずれもエッチング力が強すぎたために全
面溶解型の腐食形態となり、ピットの形成ができなかっ
た。一方(1)式は満たすものの(2)式を満たさない
条件の液を使用した場合は、いずれもエッチング力が弱
すぎたため浅いお椀型の形状のピットとなり、アンカー
効果の期待できないものであった。
【0045】図10には、各鋼種についてのFe3+の濃
度および液温の適正範囲を枠で囲って示す。一般的に不
動態化能が強いとされる鋼種ほど適正範囲は高濃度・高
液温側にあることがわかる。鋼板がフェライト系ステン
レス鋼板である場合には、工業的に管理しやすい液温2
0〜70℃の範囲においては、電解液中に含まれるFe
3+の濃度を1〜50g/Lにコントロールすることが望
ましいことがわかる。
【0046】〔実施例3〕実施例2と同様に、SUS304,
SUS316,SUS309Sの各種2B仕上げ材のオーステナイト
系ステンレス鋼板についても、適正な電解液の条件を調
査した。電解条件は実施例2と同じである。表3に、何
種類かの液について、表2同様の調査結果を示す。
【0047】
【表3】
【0048】オーステナイト系ステンレス鋼板について
も、前記(1)式を満たさない条件の液を使用した場
合、および(1)式は満たすものの(2)式を満たさな
い条件の液を使用した場合において、それぞれ実施例2
で述べたフェライト系ステンレス鋼板の場合と同様の結
果が得られた。
【0049】図11には、図10と同様に、各鋼種につ
いてのFe3+の濃度および液温の適正範囲を枠で囲って
示す。鋼板がオーステナイト系ステンレス鋼板である場
合には、工業的に管理しやすい液温20〜70℃の範囲
においては、電解液中に含まれるFe3+の濃度を30〜
120g/Lにコントロールすることが望ましいことが
わかる。
【0050】〔実施例4〕セラミックス塗料との密着性
を調査するために、供試面積を10×15cmとした板厚
0.5mmのSUS430の2D仕上げ材に通常の電解脱脂・酸
洗を施した材料について、液温が20℃,Fe3+を45
g/L含む塩化第二鉄水溶液を用いて電解粗面化処理を
行った。電解処理時間は60secと一定にし、交番電解
サイクルを0.25〜20Hzの範囲で変えてピットの開
口部の平均径Dが0.1〜20μmの種々の段階にある
サンプルを作製した。ただし、アノード・カソード電解
は、以下のようにして予め求めた電流密度値にコントロ
ールすることによって行った。すなわち、粗面化処理に
先立ち、被処理ステンレス鋼板から切り出した供試面積
1cm2小試験片を用いて上記塩化第二鉄水溶液中でのア
ノード・カソード分極曲線を測定した。分極曲線の測定
はアノード分極,カソード分極とも飽和カロメル電極を
参照極として浸漬電位から50mV/secで行った。得ら
れたアノード分極曲線から+0.8VSCEの電位に対応す
るアノード電流密度値を、またカソード分極曲線から−
0.5VSCEの電位に対応するカソード電流密度値をそれ
ぞれ求めた。そして、電解粗面化処理は、これらの電流
密度値にコントロールしながら交番電解を施すことによ
って行った。
【0051】このように電流密度によって間接的に電位
をコントロールして得られたステンレス鋼板の粗面化形
態は、実施例1のように直接電位をコントロールした場
合の粗面化形態とよく対応していた。また、ここで得ら
れたサンプルはピット開口部の平均径Dが0.1〜20
μmと広範囲のものであるが、いずれのサンプルにも平
均径Dと平均深さHの間にD/4≦H≦D/2の関係が
成立している半球状に近いピットが、ピット未発生部分
の面積率が60%以下であるように高密度に形成されい
た。
【0052】各サンプルにつき、90゜V曲げ加工(曲
げコーナー部;1R)を行い、加工部(凸側)および未
加工部にセラミックス塗料をスプレー塗布したのち16
0℃×20minの焼付処理を行い、膜厚約20μmの塗
膜を付着させた。そして、加工部(凸側)および未加工
部にカッターガイド間隔1mmの碁盤目を刻み、その部分
にセロテープを貼付後剥離する方法(以下、碁盤目セロ
テープ剥離試験という)により塗膜残存状況を調査して
塗膜密着性を評価した。なお、ここで使用したセラミッ
クス塗料は、中国塗料(株)製の商品名;エコルトンA
3(白色タイプ)のオルガノポリシロキサンを主成分と
したものである。
【0053】図12に、上記碁盤目セロテープ剥離試験
によるピット開口部の平均径とセラミックス塗膜との密
着性の関係を示す。図12中、未加工部については碁盤
目100マス目のうちの塗膜残存率を、加工部について
は塗膜剥離の有無を示す。ピット開口部の平均径が0.
5μm未満だと加工の有無に関係なくセラミックス塗膜
との密着性は乏しい。一方、ピット開口部の平均径が1
0μmを超えて大きくなると、未加工部の密着性は良好
に維持されるものの、加工部の密着性が低下するのがわ
かる。これは、ピット開口部の径が大きくなるほど加工
時にピットの広がりが助長され、その結果塗膜とのアン
カー効果が少なくなるためであると考えられる。
【0054】〔実施例5〕ほうろうとの密着性を調査す
るために、供試面積を10×15cmとした板厚0.8mm
のSUS321の2D仕上げ材に通常の電解脱脂・酸洗を施し
た材料について、液温が50℃,Fe3+を90g/L含
む塩化第二鉄水溶液を用いて電解粗面化処理を行った。
電解処理時間は45secと一定にし、交番電解サイクル
を0.25〜20Hzの範囲で変えてピットの開口部の平
均径Dが0.1〜20μmの種々の段階にあるサンプル
を作製した。ここでアノード・カソード電解は、実施例
4と同様に、アノード・カソード分極曲線から予め求め
た電流密度値にコントロールすることによって行った。
ただし、ここでは、+1.5VSCEの電位に対応するアノ
ード電流密度値および−1.0VSCEの電位に対応するカ
ソード電流密度値を採用した。
【0055】得られたサンプルはピット開口部の平均径
Dが0.1〜20μmと広範囲のものであるが、いずれ
のサンプルにも平均径Dと平均深さHの間にD/4≦H
≦D/2の関係が成立している半球状に近いピットが、
ピット未発生部分の面積率が60%以下であるように高
密度に形成されていた。
【0056】各サンプルにつき、焼成後の膜厚が100
μmとなるようにほうろうを被覆し、エリクセン押し込
み高さ4mmを与えた後の被覆層残存状況を調査する方法
(以下、エリクセン押し込み試験という)により、ほう
ろうとの密着性を評価した。なお、ここで使用したほう
ろう用フリットは、日本フェロー(株)製の上ぐすり用
(チタン白)でSiO2,Al23を主成分としたもの
であり、焼成は820℃×3minで行った。
【0057】図13に、上記エリクセン押し込み試験に
よるピット開口部の平均径とほうろうとの密着性の関係
を示す。ほうろうとの密着性においても、ピット開口部
の平均径が0.5〜10μmの範囲で塗膜残存率70%
以上と非常に良好な密着性を示すことがわかる。
【0058】〔実施例6〕フッ素系有機塗料との密着性
を調査するために、ここでは鋼帯を用いて実験を行っ
た。すなわち板厚0.5mm,幅300mmのSUS436Lの2D
仕上げ材に通常の電解脱脂・酸洗を施した鋼帯につい
て、液温が50℃,Fe3+を30g/L含む塩化第二鉄
水溶液を用いて電解粗面化処理を行った。交番電解サイ
クルを1Hzと一定にし、通板速度を変化させて電解処理
時間を0〜30secの範囲で変えた条件で電解を行っ
た。ここで処理時間0secは電解粗面化未処理を意味す
る。なお、アノード・カソード電解は、実施例4と同様
に、アノード・カソード分極曲線から予め求めた電流密
度値にコントロールすることによって行った。ただし、
ここでは、+2.0VSCEの電位に対応するアノード電流
密度値および−0.4VSCEの電位に対応するカソード電
流密度値を採用した。
【0059】得られた鋼帯には、電解未処理部分を除
き、ピット開口部の平均径Dが5〜7μmで、平均径D
と平均深さHの間にD/4≦H≦D/2の関係が成立し
ている半球状に近いピットが形成されていた。
【0060】電解処理時間の異なる部分から採取した各
サンプルにつき、280℃×30secの条件でプライマ
ーを5μm塗布した上層に、280℃×60secの焼き
付け条件でフッ素塗膜を20μm形成させた。これらの
試料について次の一次密着性および二次密着性の評価を
行った。一次密着性は、180゜t曲げ加工を行い曲げ
加工部にセロテープを貼付後剥離する方法(以下、18
0゜t曲げセロテープ剥離試験という)により、塗膜剥
離の生じない最小t曲げ値を求め、これを限界t曲げ値
として塗膜密着性を評価した。ここで、t曲げ値とは、
素材の板厚tのn倍の板厚を有するポンチを用いて素材
内側の曲げ半径をnt/2として180゜曲げを行った
ときのnの値をいい、いわゆるnt曲げを意味する。例
えば「t曲げ値=2」とは、厚さ2tのポンチを用いて
素材内側の曲げ半径をtとして180゜曲げを行うこと
であり、いわゆる2t曲げを意味する。「t曲げ値=
0」とはポンチを挟まないで行う、いわゆる密着曲げを
意味する。二次密着性は、50℃の温水に10日間浸漬
した後、上記一次密着性の場合と同様の方法で試験を行
い、評価した。なお、ここで使用した塗料は、大日本イ
ンキ化学工業(株)製で、プライマーは商品名;ファイ
ンタフC800Pプライマー(エポキシ系),フッ素塗
料は商品名;ディックフローCF752(PVdF/A
C:70%/30%のカイナータイプ)のものである。
【0061】図14に、上記一次密着性,二次密着性に
およぼす粗面化電解処理時間の影響を示す。処理時間が
10sec以上では一次,二次密着性とも限界t曲げ値は
0となり、非常に良好な密着性を示した。これに反し、
処理時間が10sec未満では、鋼板表面のピット未発生
部分の面積率が60%を超えて残存しており、その結
果、塗膜との密着性が低下した。
【0062】〔実施例7〕次に、電解条件の各種ファク
ターを変化させて、セラミックス塗料との密着性を調べ
た。供試材として、供試面積を10×15cmとした板厚
0.4mmのSUS430のBA仕上げ材およびSUS304の2B仕
上げ材に通常の電解脱脂・酸洗を施した材料を用いた。
SUS430の場合は液温が50℃,Fe3+を10g/L含む
塩化第二鉄水溶液を、SUS304の場合は液温が30℃,F
3+を110g/L含む塩化第二鉄水溶液を用いた。な
お、アノード・カソード電解電位のコントロールは、予
めアノード・カソード分極曲線から求めておいた各電位
に対応する電流密度値にコントロールすることによって
行った。使用したセラミックス塗料およびその塗装方法
ならびに塗膜密着性の評価方法は実施例4と同様であ
る。電解条件および結果を表4および表5に示す。表
中、台形波または正弦波(交流波)を交番電源として用
いた場合については、その最大電流密度値に相当する電
位を示した。さらに、比較のために、塩化第二鉄水溶液
以外の電解液を用いて表面を粗面化したサンプルも準備
し、同様の方法で特性を評価した。この場合において
も、予め、同条件の電解液中で測定したアノード・カソ
ード分極曲線から孔食領域の電位およびH2発生が過剰
に起こらない領域の電位に相当する電流密度値を求め、
その値による定電流交番電解を実施した。その結果を、
表6に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】表4に示した本発明の電解条件で処理を行
ったNo.31〜50のサンプルは、いずれも鋼板表面にピッ
ト未発生部分の面積率が60%以下であるように高密度
にピットが発生しており、ピットの形態は開口部の平均
径D(μm)と平均深さH(μm)が0.5≦D≦1
0、およびD/4≦H≦D/2の関係を満たす半球状に
近いものであった。その結果、加工部においてもセラミ
ックス塗膜との密着性が良好であった。交番電源波形
は、矩形波,台形波,正弦波(交流波)等の各種交番波
形が利用できることがわかる。これに対し、表5に示し
た電解条件で得たサンプルは、加工部においてセラミッ
クス塗膜との密着性が不十分であった。これらのうち、
No.56,63はピット開口部の平均径が0.5μm未満のも
の、No.55,62はピット開口部の平均径が10μmを超
えるもの、No.54,61はピット開口部の平均径D(μ
m)とピットの平均深さH(μm)の関係がH<D/4
となったもの、No.51,52,53,57,58,59,60,64は
鋼板表面に未電解部分が残り、ピット未発生部分の面積
率が60%を超えてしまったものである。また、表6に
示した塩化第二鉄水溶液以外の電解液を用いて得たサン
プルでは、良好な塗膜密着性は得られなかった。
【0067】〔実施例8〕次に、種々の粗面化手段によ
ってステンレス鋼板表面を粗面化し、ほうろうとの密着
性試験を試みた。素材鋼板には板厚0.5mmのSUS430のN
o.4仕上げ材を用い、粗面化手段として、交番電解処
理,サンドブラスト処理,液体ホーニング処理を用い
た。交番電解処理は、供試面積を10×15cmとしたN
o.4仕上げ材に通常の電解脱脂・酸洗を施した材料につ
いて、液温が60℃,Fe3+を7g/L含む塩化第二鉄
水溶液中で、交番電解サイクルを5Hzと一定にし、電解
時間を15〜120secの範囲で変えて行った。その際
アノード・カソード電解電位のコントロールは、予めア
ノード・カソード分極曲線から求めておいた+1.0V
SCEの電位に対応するアノード電流密度値および−0.5
SCEの電位に対応するカソード電流密度値にコントロ
ールすることによって行った。なお、比較のために、N
o.4仕上げのままの材料、およびダルロール圧延材(2
DR仕上げ)も用いた。使用したほうろう用フリットお
よび焼成方法ならびに密着性の評価方法は実施例5と同
様である。ただし、ここではエリクセン押し込み高さを
5mmとした。粗面化方法および密着性試験結果を表7に
示す。
【0068】
【表7】
【0069】表7に示したように、本発明に係る電解処
理を施したNo.91〜95のサンプルは、いずれも鋼板表面
にピット未発生部分の面積率が60%以下であるように
高密度にピットが発生しており、ピットの形態は開口部
の平均径D(μm)と平均深さH(μm)が0.5≦D
≦10、およびD/4≦H≦D/2の関係を満たす半球
状に近いものであった。そしてこれらはいずれもほうろ
う塗膜残存率が70%以上と良好な密着性を示した。こ
れに対し、No.96のNo.4仕上げ材、およびNo.97のダルロ
ール圧延仕上げ材では、ほうろう塗膜の残存は認められ
なかった。また、No.98〜100のサンドブラスト仕上げ材
および液体ホーニング仕上げ材では、鋼板の反りかえり
が大きく、ほうろう用フリットを吹き付けるまでに至ら
なかった。
【0070】〔実施例9〕次に、クラッド被覆材との接
合強度を調べた。板厚が1.0mmのSUS430の2D仕上
げ鋼帯に通常の電解脱脂・酸洗後、本発明の電解粗面化
処理を施したコイルを準備した。電解条件は、電解液の
Fe3+濃度:15g/L,液温:40℃,アノード電解
電位:+1.0VSCE,カソード電解電位:−1.0
SCE,電解処理時間:30secとした。得られたピット
の形態は、開口部の平均径D=5μm,平均深さH=2
μmであり、鋼板表面のピット未発生部分の面積率は6
0%以下であった。また、電解粗面化処理の代わりにシ
ョットブラストあるいはブラッシングによる粗面化処理
をクラッド接合面となる面に施したコイルも準備した。
そして、それぞれアルカリ脱脂済みのAlコイル(A11
00,板厚2.0mm)とのクラッドコイルを連続圧着ラ
インにて圧着後、さらに接合強度を高める目的で350
℃×1hの接合部の加熱拡散処理を実施した。
【0071】得られた各Al/ステンレス鋼クラッドコ
イルの長手方向任意の位置から幅方向にわたるサンプル
を採取し、その接合強度を図15に示すT字剥離試験法
により引張速度0.16mm/secで測定した。その
結果、本発明の電解粗面化処理を施したステンレス鋼コ
イルを用いた場合には、幅方向にわたって安定して70
0N/inch以上の接合強度が得られていた。これに対
し、ショットブラストによる粗面化処理を行ったコイル
を用いた場合、およびブラッシングによる粗面化処理を
行ったコイルを用いた場合には、接合強度が場所によっ
て不安定であり、一部500N/inchに満たないところ
もみられた。このようにショットブラストやブラッシン
グ処理材において接合強度が不安定なのは、粗面化処理
時に発生した研削粉が完全に取り切れないまま圧着され
たためと考えられる。
【0072】
【発明の効果】本発明により、従来ステンレス鋼板表面
との密着性が十分確保できなかったためにステンレス鋼
板表面への被覆が難しいとされていた、フッ素塗料等の
有機系被覆材、セラミックス塗料,ほうろう等の無機系
被覆材、さらにはAl,Cu,Ni等のクラッド用被覆
材に対して、優れた密着性を発揮できる表面凹凸状態を
ステンレス鋼板表面に形成させることが可能になった。
しかも本発明ではアノード・カソード分極曲線における
飽和カロメル参照電極電位に対する電位を用いて電解条
件を規定したので、多くのステンレス鋼種についていわ
ば画一的に電解条件を設定することが可能になった。し
たがって、本発明は、素材であるステンレス鋼板の鋼
種選定の自由度拡大を容易にすること、および、被覆
材の適用範囲の拡大を可能にすることを通じ、機能性の
高い各種被覆ステンレス鋼板の普及に貢献するものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法で得られたステンレス鋼板表面の電
子顕微鏡(SEM)写真の一例を示す図。
【図2】本発明方法で得られたステンレス鋼板断面の電
子顕微鏡(SEM)写真の一例を示す図。
【図3】塩化第二鉄水溶液中での交番電解によるステン
レス鋼板表面のピット形成過程を示す模式図。
【図4】Fe3+濃度:50g/L,液温:50℃の塩化
第二鉄水溶液中におけるSUS304のアノード・カソード分
極曲線を示すグラフ。
【図5】Fe3+濃度:85g/L,液温:50℃の塩化
第二鉄水溶液中におけるSUS316のアノード・カソード分
極曲線を示すグラフ。
【図6】Fe3+濃度:10g/L,液温:50℃の塩化
第二鉄水溶液中におけるSUS430のアノード・カソード分
極曲線を示すグラフ。
【図7】Fe3+濃度:35g/L,液温:50℃の塩化
第二鉄水溶液中におけるSUS444のアノード・カソード分
極曲線を示すグラフ。
【図8】Fe3+濃度:120g/L,液温:50℃の塩
化第二鉄水溶液中におけるSUS304のアノード・カソード
分極曲線を示すグラフ。
【図9】Fe3+濃度:20g/L,液温:30℃の塩化
第二鉄水溶液中におけるSUS304のアノード・カソード分
極曲線を示すグラフ。
【図10】各種フェライト系ステンレス鋼についての、
交番電解液として使用する塩化第二鉄水溶液の温度と濃
度の適正範囲を表すグラフ。
【図11】各種オーステナイト系ステンレス鋼について
の、交番電解液として使用する塩化第二鉄水溶液の温度
と濃度の適正範囲を表すグラフ。
【図12】表面にピットを隙間なく形成したステンレス
鋼板について、セラミックス塗膜の密着性に及ぼすピッ
ト開口部の平均径の影響を表すグラフ。
【図13】表面にピットを隙間なく形成したステンレス
鋼板について、ほうろう塗膜の密着性に及ぼすピット開
口部の平均径の影響を表すグラフ。
【図14】一次密着性,二次密着性およびピット未発生
部分の面積率に及ぼす粗面化電解処理時間の影響を表す
グラフ。
【図15】ステンレス鋼クラッド材の接合強度を測定す
るT字剥離試験法を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 多々納 政義 大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株式 会社技術研究所内 (72)発明者 内田 幸夫 大阪府堺市石津西町5番地 日新製鋼株式 会社技術研究所内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩化第二鉄水溶液中で、+0.5VSCE
    上の電位でのアノード電解と、−0.3〜−1.5VSCE
    の間の電位でのカソード電解とを交互に行う交番電解を
    ステンレス鋼板に施すステンレス鋼板表面の粗面化方
    法。ここで、VSCEは飽和カロメル参照電極電位に対す
    る電位(V)を表す。
  2. 【請求項2】 アノード電解は+0.5VSCE以上の電位
    であって電流密度が10.0kA/m2以下の範囲で行う、
    請求項1に記載のステンレス鋼板表面の粗面化方法。
  3. 【請求項3】 塩化第二鉄水溶液は、粗面化するステン
    レス鋼板を当該液中に浸漬して、X軸が電位
    (VSCE),Y軸が電流密度(kA/m2)である直行座標
    系におけるアノード分極曲線を測定し、その分極曲線上
    に点A,B,Cをそれぞれ、X座標が浸漬電位である点を
    A,X座標が(浸漬電位+0.5)/3である点をB,X
    座標が0.5である点をCとなるようにとり、点A,B,
    Cの(X,Y)座標をそれぞれ(XA,YA),(XB,YB),(XC,YC)と
    したとき、当該アノード分極曲線において下記(1)式
    および(2)式の関係が成立する液である、請求項1ま
    たは請求項2に記載のステンレス鋼板表面の粗面化方
    法。 YB≦0.6 -----(1) 2(YB−YA)/(XB−XA)≦dYC/dXC -----(2) ここで、dYC/dXCは上記点Cにおける分極曲線の傾きを
    意味する。
  4. 【請求項4】 塩化第二鉄水溶液はFe3+を1〜50g
    /L含む液であり、ステンレス鋼板はフェライト系ステ
    ンレス鋼板である、請求項1または請求項2に記載のス
    テンレス鋼板表面の粗面化方法。
  5. 【請求項5】 塩化第二鉄水溶液はFe3+を30〜12
    0g/L含む液であり、ステンレス鋼板はオーステナイ
    ト系ステンレス鋼板である、請求項1または請求項2に
    記載のステンレス鋼板表面の粗面化方法。
  6. 【請求項6】 0.5〜10Hzの交番電解をステンレス
    鋼板に施す、請求項1または請求項2に記載のステンレ
    ス鋼板表面の粗面化方法。
  7. 【請求項7】 交番電解をステンレス鋼板に施す時間を
    10〜120秒間とする、請求項1または請求項2に記
    載のステンレス鋼板表面の粗面化方法。
  8. 【請求項8】 請求項1または請求項2に記載の交番電
    解をステンレス鋼板に施すに際し、当該鋼板について測
    定された塩化第二鉄水溶液中でのアノード分極曲線およ
    びカソード分極曲線から、+0.5VSCE以上の電位に対
    応するアノード電流密度(kA/m2)の範囲および−0.
    3〜−1.5VSCEの電位に対応するカソード電流密度
    (kA/m2)の範囲を予め求め、アノード電流密度およ
    びカソード電流密度をそれぞれ上記の範囲になるように
    調整して交番電解を施すことを特徴とするステンレス鋼
    板表面の粗面化方法。
  9. 【請求項9】 鋼板表面の粗面化形状を、ピット未発生
    部分の面積率が60%以下であるように高密度にピット
    が形成しており、かつ、これらピットの開口部の平均径
    D(μm)とピットの平均深さH(μm)が下記(3)
    式および(4)式の関係を満足するような粗面化形状と
    する、請求項1〜請求項8に記載のステンレス鋼板表面
    の粗面化方法。 0.5≦D≦10 -----(3) D/4≦H≦D/2 -----(4)
  10. 【請求項10】 鋼板表面の粗面化形状を、当該鋼板表
    面にピットが隙間なく形成しており、かつ、これらピッ
    トの開口部の平均径D(μm)とピットの平均深さH
    (μm)が下記(3)式および(4)式の関係を満足す
    るような粗面化形状とする、請求項1〜請求項8に記載
    のステンレス鋼板表面の粗面化方法。 0.5≦D≦10 -----(3) D/4≦H≦D/2 -----(4)
  11. 【請求項11】 鋼板は鋼帯である請求項1〜請求項1
    0に記載の粗面化方法。
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