JP4578390B2 - 塗装ステンレス鋼板および電気・電子機器用筐体 - Google Patents

塗装ステンレス鋼板および電気・電子機器用筐体 Download PDF

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本発明は、家電製品、OA機器等に代表される電気・電子機器の筐体材料に好適な、優れた放熱性を有し、かつ金属光沢性を呈する塗装ステンレス鋼板、およびそれを用いた電気・電子機器用筐体に関する。
家電製品、OA機器をはじめとした各種電気・電子機器の筐体には、内部で発生する熱を外部に逃がす機能が要求される。特に最近では機器の高性能化・小型化に伴い、従来にも増して効率良く内部の熱を逃がすことが重要になっている。
電気・電子機器から発生する熱を効率良く逃がす機構として、筐体本体や、それと接合している部材(フレーム、シールドケース、液晶用バックパネル等)にヒートシンクやヒートパイプ等の放熱部品を取り付ける方法がある。しかし、この方法では、筐体内部の熱源(電気・電子回路など)から放出される熱をせいぜい筐体全体へ拡散させる程度の効果しか得られず、特に筐体の容積が小さい場合、所望の放熱効果が得られない。また、当該放熱部品の取り付けには手間がかかり、設置スペースを別途確保する必要があることや、部品コストが増大するなどのデメリットがあり、小型化・低廉化が進む電気・電子機器に適した方法とは言い難い。
電子機器の筐体に穴をあけてファンを取り付け、筐体内部への空気の導入および排出により放熱性を確保することも行われている。しかし、一般に電子機器は埃や水分に弱いため、用途によっては適用が困難である。また前述したヒートシンク等の場合と同様、設置スペースの確保や部品コスト増大等のデメリットもある。
一方、放熱性の良い塗装鋼板も種々開発されている(特許文献1〜5)。これらの技術によれば、筐体から直接外部に熱を効率的に放出することが期待できる。
特開2002−226783号公報 特開2002−228085号公報 特開平3−120378号公報 特開2004−74412号公報 特開2004−282055号公報
上記特許文献に開示されるような放熱性の良い塗装鋼板を筐体に使用すれば、高性能化・小型化が進む電気・電子機器において、ヒートシンクや冷却ファンなどの部品に頼らない放熱設計を実現することも可能になると考えられる。
しかしながら、塗装鋼板を用いた従来の筐体には以下のような問題がある。
従来使用されている黒色塗膜筐体は表面の電気抵抗が高いため、表面から所望のアースを取りにくい。
また、筐体に用いる塗装鋼板は下地の金属表面を隠すように塗装されているので、金属光沢、あるいは金属特有の表面肌が失われてしまい、意匠性の面で制約を受ける。
さらに、基材鋼板に着目すると、耐食性、塗装密着性等の観点から、塗装前処理としてクロメート処理を施すことが一般的である。しかし、クロメート処理には六価クロムが多量に使用されるため、環境汚染対策にコストがかかる。最近ではクロメート処理に代わるノンクロメート処理も採用されるようになってきたが、耐食性、塗装密着性の他、加工性の面でもクロメート処理より特性が劣る場合が多く、筐体用の塗装鋼板においてクロメート処理をノンクロメート処理に切り替えることは必ずしも容易ではない。
このような現状に鑑み、本発明では、放熱性に優れ、金属光沢を有し、クロメート処理等の表面処理を施すことなく耐食性、塗装密着性に優れ、かつアース性にも優れる鋼板を提供すること、およびそれを用いた電気・電子機器用の筐体を提供することを目的とする。
発明者らは詳細な検討の結果、基材鋼板として本来裸のままで使用できる耐食性を備えたステンレス鋼を使用し、その表面に部分的に電解エッチングによるピットを形成し、ピットを形成した部分を塗料で埋めるように塗装を施すと、上記の各特性を同時に具備した鋼板が構築できることを見出した。
すなわち本発明では、ステンレス鋼板の片面、あるいは両面にピット形成部の面積率が0.2〜0.8となるようにピット形成部とピット未形成部が混在する電解粗面化表面が形成され、その表面に、ピット形成部の平均塗膜厚みが1μm以上、かつピット未形成部の平均塗膜厚みが0〜0.3μmであるウレタン樹脂黒色塗膜層を有する、金属光沢を保持し放熱性に優れた塗装ステンレス鋼板が提供される。
ここで、ステンレス鋼はよく知られているようにCrを11質量%以上含有するFe−Cr系、あるいはFe−Cr−Ni系の鋼であり、具体的にはJIS G4305に規定されている種々のものが対象となる。その他、各メーカーで独自に開発されているステンレス鋼種を採用することもできる。
ピット形成部の面積率は、鋼板表面を板厚方向に平行な方向から観察した顕微鏡画像における「観察領域に占めるピット形成部の面積の割合」である。「ピット形成部の面積率+ピット未形成部の面積率=1」である。
ピット未形成部の平均塗膜厚みは、例えば塗装、乾燥後の鋼板断面をSEMなどを用いて観察することによって求めることができる。ピット未形成部の塗膜厚みがゼロの場合は、断面観察によって塗膜厚さを検出できない場合である。
ピット形成部の平均塗膜厚みは、使用した塗料の量、ピット形成部の面積率、ピット未形成部の平均塗膜厚みから、ピット形成部に使用されている塗料の量を算出し、その値を乾燥後の塗膜厚みに換算することによって求めることができる。
上記の電解粗面化表面としては、塩化第二鉄水溶液中での交番電解エッチングにより形成されるものが好適な対象となる。
また本発明では、これらの塗装ステンレス鋼板を用いた電気・電子機器用筐体が提供される。
本発明によれば、放熱性に優れ、金属光沢を有し、クロメート処理等の表面処理を施すことなく耐食性、塗装密着性に優れ、かつアース性にも優れる鋼板が提供された。本発明の塗装ステンレス鋼板は、従来の黒色塗装鋼板と比べ、塗膜厚みが薄くても良好な放熱性が得られる。このため、カーボンブラックやニッケル微粉末を分散させた塗料を使用した従来の放熱鋼板のように樹脂皮膜の厚膜化を要しない。また、従来のステンレス鋼板との比較では放熱性が大幅に改善されている。したがって本発明は、高性能化・小型化が進む電気・電子機器に好適な筐体用材料および筐体を提供し得るものである。
本発明では、基材鋼板としてステンレス鋼板を使用する。ステンレス鋼は周知のように表面に不働体皮膜が形成され、裸のままでも優れた耐食性を示す材料である。また、その不働体皮膜により表面の腐食形態は局部腐食型になっている。この性質をうまく利用すると、電解エッチングによって局部的なピットを多数形成することができる。そのピットのサイズは深さが例えば1〜数μm、径も深さと同程度のものとなる(ただし隣同士のピットがつながって複合ピットとなった箇所では径の値はより大きく算出される)。このような「電解粗面化表面」に塗装を施すと、ピット内部に入り込んだ塗膜はピットによるアンカー効果が発揮され加工時にも剥離しにくくなる。また、ピット形成部で塗膜の量が十分確保されることにより、塗膜による熱線の吸収・放射が十分に行われ、優れた「放熱性」が得られる。
ピット未形成部については、例えばバーコート法などによって塗料を塗布することにより、塗膜厚みを極めて薄く調整できる。事実上その部分の塗膜厚みをゼロにすることも可能である。塗膜厚みが一定値以下に薄い部分を作ることにより、表面の電気抵抗を低減でき、アース性が確保される。同時に、その部分では下地の金属表面肌の状態が露呈され、外観上、金属光沢を呈する塗装鋼板が実現できる。
種々検討の結果、基材鋼板であるステンレス鋼板の表面に形成されるピットは、そのピット形成部の面積率が0.2〜0.8となるようにすることが望ましい。ピット形成部の面積率が0.2未満だと、ピット未形成部の塗膜厚みを後述のように薄くした場合、鋼板表面に存在する塗料の量が少なくなり、十分な放熱性(熱線の吸収・放射)を安定して確保することが難しくなる。一方、ピット形成部の面積率が0.8を超えて多くなると、その分、ピット未形成部の面積率は0.2未満と少なくなるため、ピット未形成部の塗膜厚みを極めて薄くするかゼロにした場合でも、外観上、金属光沢が得られなくなるとともに、アース性も低下する。
本発明の塗装ステンレス鋼板は、塗膜による熱線(赤外線)の吸収・放射を利用して放熱性を高める。一般に金属表面は放射率が低く、熱線の吸収・放射効率は低い。これに対し、樹脂やセラミックスを主体とする塗膜は金属表面より放射率がかなり高いため、金属表面の一部または全部をこのような塗膜で覆うことにより、放熱性の高い鋼板が得られる。ただし、塗膜の量があまり少ないとその効果は低減する。発明者らの検討の結果、ピット形成部における平均塗膜厚みが少なくとも1μm以上となる量の塗膜を形成することが望ましい。塗膜の放射率にもよるが、黒色の樹脂塗膜の場合、ピット形成部の平均塗膜厚みを1〜5μm程度とすれば、顕著な放熱性改善効果が得られる。それより塗膜厚みを厚くしても、あまり効果的ではない。現時点で理由は定かではないが、ピットを形成していない鋼板に全面塗装を施している従来の放熱鋼板(塗膜厚み;例えば10μm程度)と比較すると、本発明の鋼板では比較的薄い塗膜厚みで優れた放熱効果が得られる。
ピット未形成部は、塗装鋼板表面の電気抵抗の低減、および金属光沢を呈する外観の維持を担う。そのためにはピット未形成部の塗膜厚みをできるだけ薄くすることが望ましい。バーコート法などによる塗装方法を利用すると、凹部であるピット形成部に塗料を埋め込む一方で、平滑な凸部であるピット未形成部の塗膜厚みを極めて薄くするか、事実上ゼロにすることができる。ピット未形成部の平均塗膜厚みは0.3μm以下に抑えることが望ましい。これより厚くなると、ピット形成部の面積率が0.2程度と小さい場合(すなわちピット未形成部の面積率が0.8程度と大きい場合)であっても、後述する方法で測定した表面抵抗が1Ω以上に大きくなり、電気・電子機器の筐体として望まれる表面のアース性を安定して確保することができなくなる。また、金属光沢を呈する外観も得られにくくなる。
ステンレス鋼板の表面にピット形成部とピット未形成部が上記の比率で混在する「電解粗面化表面」は、塩化第二鉄水溶液中での交番電解エッチングによって実現できる。図1にそのメカニズムを模式的に示す。
ステンレス鋼の表面は、酸化物、水酸化物等からなる不動態皮膜で覆われている。このステンレス鋼板表面を交番電解エッチングすると、まずアノード電解によってピットが発生する(図1(a))。続くカソード電解でH2が発生すると、フラットな部分に比較してピット内部では一時的にFe3++3OH-→Fe(OH)3の反応が起きる領域までpHが上昇する(図1(b))。このときピット内壁はFe(OH)3によって覆われる。続くアノード電解では、このFe(OH)3が保護膜として働き、すでに形成されているピット内部よりも、H2発生により活性化されたフラットな部分(ピット未形成部)が優先的に溶解され、新たなピットが形成される(図1(c))。以上のことが繰り返されるに従ってピット形成部の面積率が大きくなっていく。この交番電解時間をコントロールすることにより、ピット形成部と未形成部が混在した粗面化表面が実現できる。
交番電解エッチングは以下のような条件で行うことができる。
〔電解液〕
上記のメカニズムでエッチングするためには、Fe3+イオンを含む電解液を使用することが必要である。これは、ピット内でFe3++3OH-→Fe(OH)3の反応を起こしてピット内壁をFe(OH)3で保護し、フラットな部分に新たなピットを形成させるためである。Fe3+を含まない塩化第一鉄、硝酸、塩酸、硫酸等の電解液中での交番電解では、上記所望の電解粗面化が行えない。さらに、本発明ではステンレス鋼を対象とするので、電解液中にはステンレス鋼の酸化作用を促進するNO3-、SO4 2-等のイオンが含まれていないことも、孔食、すなわちピットを容易に形成させ、短時間での粗面化処理を可能にするための重要な条件となる。このような観点から、Fe3+を含む塩化第二鉄水溶液を使用することが望ましい。
電解液中の塩化第二鉄濃度が低すぎるとエッチング力が低下するため、ピット形状は開口部の割に深さが浅いものとなり、ピット形成部の平均塗膜厚み1μm以上を安定して確保することが難しくなる。逆に塩化第二鉄濃度が高すぎるとエッチング力が強くなりすぎて全面溶解型の腐食形態が強まるため、ピットの形成が行えない場合がある。エッチング力に及ぼす塩化第二鉄濃度の影響は、ステンレス鋼に含まれる化学成分によって多少異なるが、フェライト系ステンレス鋼の場合はFe3+濃度が概ね1〜50g/Lの範囲、オーステナイト系ステンレス鋼の場合はFe3+濃度が概ね30〜120g/Lの範囲でそれぞれ適正条件を見出すことができる。
液温は例えば55〜60℃の範囲とすればよい。
〔電解条件〕
アノード電解では、概ね+0.5V(SCE)以上の電位において、アノード電流密度は1.0〜10.0kA/m2の範囲とすることが望ましい。
カソード電解では、概ね−0.3〜−1.5V(SCE)の電位において、カソード電流密度は0.5〜3.0kA/m2の範囲とすることが望ましい。
交番電解1サイクルあたりの適正通電時間は、アノード電解で0.05〜0.5sec、カソード電解では0.01sec以上とすることが望ましいが、工業的規模での交番電源を考慮した場合、アノードとカソードの通電時間は1:1とすることがコスト的な面から望ましい。交番電解のサイクルは1〜10Hzの範囲とすることが好ましい。
電解時間によってピット形成部の面積率をコントロールすることができるが、その適正条件は鋼種や液濃度によって多少変動する。多くの場合、10〜120secの範囲で良好な結果が得られる。
図2および図3には、それぞれピット未形成部の面積率が0.2(後述発明例1)および0.8(後述発明例4)のステンレス鋼板について、表面のSEM写真(a)、および断面のSEM写真(b)を例示した。上記の交番電解エッチングのサイクルを繰り返していくと、未エッチング部であるフラットな部分(ピット未形成部)の面積率は減少していく。すなわち、塩化第二鉄水溶液中での交番電解エッチングによると、ピット形成部の面積率をコントロールすることが可能である。そして、ピット未形成部ではそのフラットな表面による正反射が金属光沢を生じさせる。ステンレス鋼板の全面溶解が生じる強酸などによるエッチングでは、このような金属光沢を生じさせる部分を残すことができない。
塗料としては、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、セラミックス系など、種々のものが有効であるが、本発明ではウレタン樹脂塗料を適用する。放射率を上げる意味では黒色に近いものがよい。必要に応じて、ワックス、レベリング剤、顔料、遠赤外線放射特性に優れたフィラーなどを添加することができる。
塗装方法としては、ロールコート法、バーコート法等、種々の方法が適用できるが、本発明ではピット未形成部分の塗膜厚みをできるだけ薄くする必要があることから、バーコート法が望ましい。前述の電解粗面化表面を鋼板の片面または両面に形成したステンレス鋼板を、鋼帯のまま既存の連続塗装ラインに通板して塗装することができる。
片面のみに本発明で規定する電解粗面化表面と塗膜を形成した塗装ステンレス鋼板は、当該塗装面を筐体のどちら側の面に配しても、裸のステンレス鋼板に比べ放熱性の向上効果が得られるが、筐体の内側に配する方が好ましい。内側に配することにより、内部の電気・電子機器から発せられる熱線が効率よく塗装鋼板に吸収され、また、内部の機器から筐体へのアース性も確保される。鋼板に吸収された熱は反対側の面から筐体外部に放出されるが、外側の全面に従来の放熱性に優れた黒色塗装が施されていると放熱性は一層向上するし、また、外側の面をステンレス鋼素地とするか、あるいは種々の塗色の塗装を施すことにより、所望の意匠性を有する筐体が構築できる。
両面に本発明で規定する電解粗面化表面と塗膜を形成した塗装ステンレス鋼板は、筐体の内側の面では電気・電子機器から発せられる熱線の吸収効率の向上とアース性が確保され、更に外側の面では筐体外部への熱の放射性能が向上すると同時に、金属光沢を呈する外観を得ることができる。この場合、従来の裸のステンレス鋼板を用いた筐体では得られない優れた放熱性、および従来の塗装鋼板では得られないアース性や金属光沢を呈する特有の外観が得られる。
厚さ0.6mmのステンレス鋼板(SUS304、2B仕上げ)を基材として使用し、塩化第二鉄水溶中での交番電解により両面にピットを形成した。電解条件は概ね以下のとおりとし、電解時間を10〜60secの範囲で変化させることにより、ピット形成部の面積率が異なる種々の粗面化ステンレス鋼板を作製した。
・初期Fe3+濃度: 55g/L
・液温: 約55〜60℃
・アノード電流密度: 3.0kA/m2
・カソード電流密度: 1.0kA/m2
・アノード/カソード通電時間比: 1
・交番サイクル: 5Hz
ピット形成部の面積率はSEMにより表面を観察し、その観察画像を画像処理することにより求めた。
各鋼板の両面について、脱脂処理を行ったのち、バーコート法にてウレタン樹脂(黒色)を塗布した。塗布後は鋼板の到達温度が180℃程度になるように加熱することにより焼き付け塗装を行って、塗装ステンレス鋼板を得た。塗布量は、一部のサンプルを除き、ピット形成部の平均塗膜厚みが1μm以上となるようにした。
ピット未形成部の平均塗膜厚みは、塗装ステンレス鋼板断面のSEM画像から求めた。また、ピット形成部の平均塗膜厚みは、使用した塗料の量、ピット形成部の面積率、ピット未形成部の平均塗膜厚みから、ピット形成部に使用されている塗料の量を算出し、その値を乾燥後の塗膜厚みに換算することによって求めた。
各サンプルとも、ピット形成部の面積率、および各平均塗膜厚みは、両面で同じと見てよい。
各塗装ステンレス鋼板について、外観上どの程度金属光沢を呈するかを評価するために、光沢度を測定した。ポータブル表面光沢時計(株式会社村上色彩研究所製)を用いて、測定角度20°で測定し、目視により金属光沢が失われたと感じられる光沢度250未満のものを×評価、250以上のものを○評価とした。
また、表面のアース性を評価するために、表面抵抗を測定した。4探針式抵抗計(株式会社三菱化学製、MCP−TP03P型)を用いて4端子法により一定の面圧で鋼板の表面抵抗を測定し、1Ω以上であったものをアース性不十分(×評価)、1Ω未満であったものをアース性良好(○評価)とした。
次に、各塗装ステンレス鋼板の放熱性を以下のような模擬筐体を用いた実験により評価した。
厚さ5mmの塩化ビニル板により内のり寸法115mm(幅)×170mm(長さ)×30mm(高さ)の箱を作り、その上面に100mm×140mmの開口部を設けた。この塩化ビニル箱の内面はアルミ箔でライニングした。塩化ビニル箱の外面は上面を除く各面を厚さ20mmの発泡スチロールで覆った。塩化ビニル箱の内部には、底面上に電熱ヒーターと、空気攪拌用のファンを置いた。また、内部の空気の温度を測定するための熱電対を内部空間に設置した。熱電対は周囲からの放射熱の影響を受けないように覆いの中に収納した。各塗装ステンレス鋼板から110mm×150mmの試験板を切り出し、これを前記塩化ビニル箱の開口部に蓋をするように塩化ビニル箱の上面に置いた。塩化ビニル箱の内部は密閉状態となり、外部との空気の出入りはない。試験板で蓋をした密閉状態の箱(以下「模擬筐体」という)を、恒温高湿試験槽の中に入れ、模擬筐体の周囲環境を23℃、R.H.60%に保持した状態とし、電熱ヒーターを0.86Wの出力で発熱させた。模擬筐体内部の空気をファンによって攪拌し、その空気の温度を熱電対でモニターした。そして、模擬筐体内部の温度が平衡状態となったときの内部の空気温度を「平衡温度」として読み取った。
基準となる試験板として、電解エッチング行う前の基材鋼板(上記2B仕上げのSUS304鋼板)を使用し、上記の方法で平衡温度を測定し、これを「基準平衡温度」とした。各試験板について、平衡温度と基準平衡温度の差ΔT(℃)を求め、ΔTが4℃以上の場合に顕著な放熱性向上効果を有すると判断して○評価とし、ΔTが4℃未満の場合は×評価とした。
これらの結果を表1に示す。
表1からわかるように、本発明例の塗装ステンレス鋼板はいずれも金属光沢性、アース性、放熱性に優れるものであった。なお、鋼板表面に形成されたピットの平均深さは1.5〜3μm程度であった。
これに対し比較例であるNo.11、12はピット形成部の面積率が小さすぎたため、塗膜の総量が少なくなり、放熱性に劣った。No.13はピット形成部の面積率が大きすぎたこと、すなわちピット未形成部分の面積率が小さすぎたことにより、金属光沢性に劣った。No.14はピット形成部の面積率が大きすぎ、かつピット未形成部の平均塗膜厚みが厚すぎたため、金属光沢だけでなく、アース性も不良であった。No.15は塗料の塗布量を少なくしすぎたことによりピット形成部の平均塗膜厚みが小くなりすぎ(約0.5μm)、放熱性に劣った。
塩化第二鉄水溶液中での交番電解によるピット形成のメカニズムを説明するための模式図。 ピット形成部の面積率が0.2である電解粗面化ステンレス鋼板の表面(a)および断面(b)を観察したSEM写真。 ピット形成部の面積率が0.8である電解粗面化ステンレス鋼板の表面(a)および断面(b)を観察したSEM写真。

Claims (4)

  1. ステンレス鋼板の少なくとも片面にピット形成部の面積率が0.2〜0.8となるようにピット形成部とピット未形成部が混在する電解粗面化表面が形成され、その表面に、ピット形成部の平均塗膜厚みが1μm以上、かつピット未形成部の平均塗膜厚みが0〜0.3μmであるウレタン樹脂黒色塗膜層を有する、金属光沢を保持し放熱性に優れた塗装ステンレス鋼板。
  2. ステンレス鋼板の両面にピット形成部の面積率が0.2〜0.8となるようにピット形成部とピット未形成部が混在する電解粗面化表面が形成され、その表面に、ピット形成部の平均塗膜厚みが1μm以上、かつピット未形成部の平均塗膜厚みが0〜0.3μmであるウレタン樹脂黒色塗膜層を有する、金属光沢を保持し放熱性に優れた塗装ステンレス鋼板。
  3. 電解粗面化表面は塩化第二鉄水溶液中での交番電解エッチングにより形成されるものである請求項1または2に記載の塗装ステンレス鋼板。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の塗装ステンレス鋼板を用いた電気・電子機器用筐体。
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