JP5343553B2 - 表面処理鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、主に電気製品に用いられる表面処理鋼板であり、特に、亜鉛を含有するめっきを施すことなく、膜厚5μm以下の有機樹脂層を形成するだけで良好な耐食性を有することができる表面処理鋼板およびその製造方法に関するものである。
薄型テレビ用パネル等の電気製品に用いられるプレコート鋼板(塗装鋼板)としては、例えば特許文献1に開示されているように、鋼板の表面にめっき層を形成し、該めっき層上に、直接又は化成皮膜を介して、所定の樹脂を含有する皮膜を形成してなる塗装鋼板が挙げられる。特許文献1の塗装鋼板は、前記めっき層や樹脂皮膜の作用によって、良好な耐食性を実現することができる。
ここで、前記めっき層の種類としては、その用途によっても異なるが、良好な耐食性を有する点や、コストの点などから、亜鉛系のめっき層を設けた鋼板、例えば、溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板又はアルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板等を用いるのが一般的である。しかしながら、かかる亜鉛系めっき層の形成は、近年の亜鉛原料価格高騰に伴って、製品コストの上昇を招くとともに、鋼板リサイクルの際にできるだけ鋼板成分以外の成分を排除したいという観点から望ましくないため、前記鋼板表面に亜鉛めっき層を形成しない表面処理鋼板が望まれている。
前記亜鉛系めっき層を設けない鋼材として、例えば特許文献2に、鋼材を脱脂処理工程と、酸化処理によって前記鋼材の表面を凹凸化する工程と、変性ポリオレフィン樹脂をコーティングする工程とによって製造される鋼材が挙げられる。
しかしながら、特許文献2の鋼材のように、有機樹脂層(特許文献2では変性ポリオレフィン樹脂層)を厚く鋼材表面に形成することができるのであれば、一定の耐食性を有することは可能であるものの、家庭用電気製品等に用いる場合、十分な厚さの有機樹脂層を鋼板表面上に形成することが難しく、また、コストの点からも好ましくない。加えて、特許文献2の鋼材に対して、前記有機樹脂層を貫通して素地鋼板の表面にまで達する傷が生じた場合、必要な耐食性を得ることができないという問題もあった。
特開2007−119858号公報 特開平3−80969号公報
本発明の目的は、素地鋼板の表面および有機樹脂層の適正化を図ることにより、有機樹脂層の膜厚が薄い場合であっても、亜鉛系めっき層を形成することなく、膜厚5μm以下の有機樹脂層を形成するだけで、良好な耐食性を有するとともに、仮に有機樹脂層を貫通して素地鋼板の表面にまで達する傷が生じたとしても、良好な耐食性を維持することができる表面処理鋼板およびその製造方法を提供することにある。
発明者らは、上記の課題を解決するため検討を重ねた結果、素地鋼板として硝酸水溶液で酸洗処理した鋼板を用い、その素地鋼板の酸洗処理面上にエポキシ系有機樹脂層を形成し、該エポキシ系有機樹脂層の架橋度を、前記エポキシ系有機樹脂層に対して、溶剤としてメチルエチルケトンを用いてラビング試験を行った後に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をI、前記ラビング試験を行う前に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をIとして、I/I比で0.95以上とすることで、エポキシ系有機樹脂層の膜厚が5μm以下と薄い場合であっても、鋼板表面に亜鉛系めっき層を形成することなく、膜厚5μm以下のエポキシ系有機樹脂層を形成するだけで、良好な耐食性が得られるとともに、仮にエポキシ系有機樹脂層を貫通して素地鋼板の表面に達する傷が生じたとしても良好な耐食性が維持できることを見出した。
また、上記した良好な耐食性の達成と、エポキシ系有機樹脂層を貫通して素地鋼板の表面にまで達する傷が生じた場合においても良好な耐食性の維持することは、架橋度が高くなると、エポキシ系樹脂中の窒素が、素地鋼板とエポキシ系有機樹脂層との密着性を向上させる、あるいは、エポキシ系樹脂中のフェニル基が、鋼板の腐食因子に対するバリヤ性を向上させ、素地鋼板が外部の腐食環境と直接接することを抑制するという知見を得た。
本発明は、上記した知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
1.常温の5〜40mass%硝酸水溶液に30秒未満の間浸漬させる酸洗処理した素地鋼板の少なくとも片面に、エポキシ系有機樹脂層を具え、
前記エポキシ系有機樹脂層が有する架橋度は、前記エポキシ系有機樹脂層に対して、溶剤としてメチルエチルケトンを用いてラビング試験を行った後に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をI、前記ラビング試験を行う前に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をIとするとき、I/I比で0.95以上であり、
前記エポキシ系有機樹脂層の膜厚が、5μm以下であることを特徴とする表面処理鋼板。
2.前記エポキシ系有機樹脂層は、末端アミン変性エポキシ樹脂が架橋剤により架橋され形成されることを特徴とする、上記1に記載の表面処理鋼板。
3.前記架橋剤は、ブロックイソシアネート、ウレア樹脂およびフェノール樹脂のいずれか1種であることを特徴とする、上記2に記載の表面処理鋼板。
4.素地鋼板の少なくとも片面に対して、常温の5〜40mass%硝酸水溶液に30秒未満の間浸漬させる酸洗処理を施した後、水洗および乾燥を施し、その後、前記素地鋼板の酸洗処理面に、エポキシ系有機樹脂を有する塗料を塗布し、加熱することで、前記エポキシ系有機樹脂層が有する架橋度が、前記エポキシ系有機樹脂層に対して、溶剤としてメチルエチルケトンを用いてラビング試験を行った後に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をI、前記ラビング試験を行う前に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をIとするとき、I/I比で0.95以上であり、前記エポキシ系有機樹脂層の膜厚を、5μm以下とすることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
本発明によれば、エポキシ系有機樹脂層の膜厚が薄い場合であっても、亜鉛系めっき層を形成することなく、膜厚5μm以下のエポキシ系有機樹脂層を形成するだけで、良好な耐食性を具え、仮にエポキシ系有機樹脂層を貫通して素地鋼板の表面にまで達する傷が生じたとしても良好な耐食性を維持できる表面処理鋼板およびその製造方法を提供することが可能となる。
以下、本発明の構成と限定理由を説明する。
本発明に従う表面処理鋼板は、硝酸水溶液で酸洗処理した素地鋼板の少なくとも片面に、5μm以下のエポキシ系有機樹脂層が形成され、該エポキシ系有機樹脂層が有する架橋度は、前記エポキシ系有機樹脂層に対して、溶剤としてメチルエチルケトンを用いてラビング試験を行った後に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をI、前記ラビング試験を行う前に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をIとするとき、I/I比で0.95以上であることを特徴とする表面処理鋼板である。
本発明は、硝酸水溶液で酸洗処理を施した素地鋼板を用いる。硝酸水溶液で酸洗処理を施すことにより、素地鋼板の表面に図1に示すような微細な凹凸が形成され、素地鋼板表面の上に施されるエポキシ系有機樹脂層との密着性が向上する。これに対し、塩酸水溶液(図2)、硫酸水溶液(図3)、リン酸水溶液(図4)で酸洗処理を施した素地鋼板の表面と、酸洗処理を施さない素地鋼板の表面(図5)は、硝酸水溶液で酸洗処理を施したときのような微細な凹凸が存在せず、結果として、鋼板表面の上に施されるエポキシ系有機樹脂層との密着性が劣ることを併せて確認した。つまり、硝酸水溶液で酸洗処理したときの、この密着性の良さが、良好な耐食性をもたらし、そして、仮にエポキシ系有機樹脂層を貫通して素地鋼板の表面にまで達する傷が生じたとしても、良好な耐食性を維持することをもたらすのである。なお、図1〜5は、上記素地鋼板の表面を、走査型電子顕微鏡で観察した結果を示したものである。
また、素地鋼板に塩酸水溶液、硫酸水溶液若しくはリン酸水溶液で酸洗処理を施した場合、または、酸洗処理を施さない場合と比較して、素地鋼板に硝酸水溶液で酸洗処理を施した場合は、放射率が0.1〜0.4の範囲で増加するため、放熱性に優れ、電気製品に使用する表面処理鋼板として好都合である。
特許文献2に記載される鋼板は、表面の凹凸化に主眼をおき、変性ポリオレフィンとの接着性の向上を狙った鋼板である。一方、本発明の鋼板は、表面に安定な酸化膜を形成し、貴化させることにより耐食性の向上を狙った鋼板である。そのため、硝酸水溶液で酸洗処理を施したときの図1に示すような微細な凹凸は、特許文献2に記載される鋼材のような、酸化処理によって形成された表面の凹凸と比べて、Raが小さくPPIが大きな値を示し、やや平滑であるという点で異なり、硝酸水溶液で酸洗処理を施した素地鋼板のエポキシ系有機樹脂層との密着性は、格段に優れる。素地鋼板は、硝酸水溶液で酸洗処理を施すことができる鋼板であれば特に限定はなく、用途に応じ適宜選択できる。
酸洗処理後の素地鋼板の表面は、常温(10〜30℃)の硝酸水溶液(5〜40mass%)に、前記鋼板を30秒未満の間浸漬させた後、水洗し、乾燥させることにより形成することができる。ここで、硝酸水溶液の濃度を5〜40mass%に限定したのは、濃度が5mass%未満の場合、鋼板表面上に緻密な保護膜が形成されにくいため、耐食性が低下し、一方、濃度が40mass%を超える場合にも、素地鋼板が激しく反応し、酸洗処理後の素地鋼板の表面にムラ模様が発生し、エポキシ系有機樹脂層を形成した後においても、表面処理鋼板の外観を著しく低下させるためである。また、浸漬時間を30秒未満としたのは、30秒以上の場合、酸洗処理後の素地鋼板の表面にムラ模様が発生し、エポキシ系有機樹脂層を形成した後においても、表面処理鋼板の外観を著しく低下させるからである。上記したように、硝酸水溶液での酸洗処理条件が、エポキシ系有機樹脂層を形成した後においても表面処理鋼板の外観に影響を与えるのは、本発明に係る表面処理鋼板のエポキシ系有機樹脂層の膜厚が5μm以下と薄いからである。
また、本発明の表面処理鋼板は、硝酸水溶液で酸洗処理した素地鋼板の表面に、所定のエポキシ系有機樹脂層が形成されている。このエポキシ系有機樹脂層は、主として耐食性や、耐疵付き性、意匠性などを具えることができるように設けられる層であり、所望の耐食性を得て、エポキシ系有機樹脂層を貫通して素地鋼板の表面にまで達する傷が生じた場合でも所望の耐食性の維持するためには、このエポキシ系有機樹脂層の架橋度が、エポキシ系有機樹脂層に対して、溶剤としてメチルエチルケトンを用いてラビング試験を行った後に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をI、ラビング試験を行う前に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をIとするとき、I/I比で0.95以上である必要がある。
本発明において、エポキシ系有機樹脂層の架橋度を、メチルエチルケトンに対する耐溶剤性を評価する上記ラビング試験の前後で、エポキシ系有機樹脂層の蛍光X線分析したときの上記I/I比で評価したのは、架橋が不充分な場合、エポキシ系有機樹脂層中に未反応物が残存し、それがラビング試験により溶解し、I/I比の値が低下する。すなわち架橋度とI/I比の値が比例関係にあるためである。
なお、上記ラビング試験は、濃度100mass%のメチルエチルケトン5mlをガーゼに染み込ませた状態で、0.05MPaの定荷重をかけて有機樹脂層上を10回往復運動させて行う。
一般に有機樹脂被覆鋼板において、(1)素地鋼板と有機樹脂層の密着性が高い場合、(2)有機樹脂層のバリヤ性がそれぞれ高い場合、に耐食性が向上する。有機樹脂層の架橋が進むにつれて、上記(1)および(2)のいずれもが高まることが知られている。
ここで、I/I比が0.95未満では、素地鋼板と有機樹脂層との密着性およびバリヤ性がそれぞれ不充分であるため、高い防食効果を得ることができないからである。従って、I/I比は0.95以上とする。好ましくは、0.97以上である。なお、I/I比が1のとき、エポキシ系有機樹脂層は、完全に架橋されているものとする。
前記エポキシ系有機樹脂層を形成する樹脂としては、末端アミン変性エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂等、多くのエポキシ樹脂を用いることができ、これらエポキシ樹脂が架橋剤により架橋されていればよい。末端アミン変性エポキシ樹脂が架橋剤により架橋されたものが特に好ましい。これは、アミンにはNが存在し、これが孤立電子対を持つこと、オキシラン環とアミンが反応した際にOH基を生じること等により基材との密着性が向上することにより、さらに耐食性を向上させ、有機樹脂層を貫通して素地鋼板の表面にまで達する傷が生じた場合でも良好な耐食性を維持する性能をさらに向上させることができるからである。
また、架橋剤としては、ブロックイソシアネート、ウレア樹脂、フェノール樹脂、メラミン、ベンゾグアナミン等、多数の構造が考えられ、これらのいずれも用いることができるが、ブロックイソシアネート、ウレア樹脂およびフェノール樹脂のいずれかであることが特に好ましい。これは、ブロックイソシアネート、ウレア樹脂、フェノール樹脂については、それら自身が分子間で結合しにくいことにより自己縮合物を形成せず、素地鋼板とエポキシ系有機樹脂層との接着性の低下がみられず、その結果、バリヤ性を劣化させることがないため、本発明の効果(良好な耐食性を得て、エポキシ系有機樹脂層を貫通して素地鋼板の表面にまで達する傷が生じた場合でも良好な耐食性を維持すること)を、最も発揮することができるからである。
また、架橋剤の含有量は、樹脂との当量比で決まるものであり、特に限定されることはないが、5〜40mass%の範囲であることが好ましい。架橋剤の含有量が5mass%以上とすると、架橋剤が樹脂に対して不足することがないため架橋不足状態とならず、本発明の効果(良好な耐食性を得て、エポキシ系有機樹脂層を貫通して素地鋼板の表面にまで達する傷が生じた場合でも良好な耐食性を維持すること)を十分に奏することができる。一方、架橋剤の含有量が40mass%以下とすると、架橋剤が樹脂に対して過剰とならず、水や塩素イオンなどの腐食因子をバリヤする能力がない余剰の架橋剤が存在せず本発明の効果を得ることができるためである。
さらに、エポキシ系有機樹脂層の膜厚は5μm以下とする必要がある。膜厚が5μmを超えると、鋼板表面の電気抵抗が高くなるため、アース性が著しく低下するだけでなく、有機樹脂層の成膜時の収縮応力が素地鋼板と有機樹脂層との密着性を低下させるため、素地鋼板の表面にまで達する傷がエポキシ系有機樹脂層に生じると、傷が生じた部分で素地鋼板からこのエポキシ系有機樹脂層が剥離しやすく、耐食性が著しく低下する。さらに製造コストが高騰するという問題が発生するためである。好ましくは、3μm以下である。また、前述の本発明の効果を得るためには、膜厚は0.5μm以上とすることが好ましい。
なお、硝酸水溶液で酸洗処理を施した素地鋼板に、エポキシ系有機樹脂層を形成すると、焼付け温度(PMT:最高到達鋼板温度)が低い場合でも耐指紋性も向上し、電気製品に使用する表面処理鋼板として好都合である。
次に、本発明の表面処理鋼板の製造方法について説明する。
エポキシ系有機樹脂層は、脱脂した素地鋼板に、常温の5〜40mass%硝酸水溶液で酸洗処理した面に、エポキシ系有機樹脂を含有する塗料を塗布して加熱し、乾燥させることによって形成することができる。
エポキシ系有機樹脂を含有する塗料は、硝酸水溶液で酸洗処理した面に、加熱炉などを用いて、加熱・乾燥後に、エポキシ系樹脂層の膜厚が5μm以下になるように、バーコート、ロールコート等の方法により調整して塗布される。
加熱条件としては、最高到達鋼板温度(PMT)が、180〜250℃の範囲であることが好ましい。最高到達鋼板温度(PMT)が、180℃以上とすると、選択される架橋剤によっても、エポキシ系有機樹脂層の前述したI/I比で表される架橋度が0.95以上とならない場合がない。一方、最高到達鋼板温度(PMT)を、250℃以下とすると、樹脂や硬化剤の分子構造が分解や酸化により黄変する懸念がない。従って、最高到達鋼板温度(PMT)は、180〜250℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは、190〜230℃の範囲である。
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したにすぎず、請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
本発明の実施例について説明する。
まず、以下の要領で各サンプルを作製した。
(サンプルNo.1〜28)
板厚0.8mmの冷延鋼板の片面に、前処理として、オルソ珪酸ソーダ(60g/L)添加のアルカリ脱脂液(液温:70℃)中で、対極をステンレス板として電流密度:5A/dmで30秒間の電解脱脂を施した後、水洗し、表1に示す条件の硝酸水溶液中に、所定時間(表1参照)浸漬させて酸洗した後、水洗、乾燥させた。
ブロックイソシアネート、ウレア樹脂およびフェノール樹脂のいずれかの架橋剤を加えた末端アミン変性エポキシ樹脂を含有する塗料を、酸洗処理を施した鋼板上に塗布し、種々の焼付け条件(表1参照)で加熱して乾燥させることにより、表1に示す構成の有機樹脂層を形成し、サンプルNo.1〜28の表面処理鋼板を作製した。
有機樹脂層の膜厚(μm)については、断面を光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用い、1視野につき任意の3箇所の膜厚を測定し、少なくとも5視野で、合計15箇所以上で測定した膜厚の平均値とする。
また、有機樹脂層の架橋度については、溶剤としてメチルエチルケトンを用いてラビング試験を行った後に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をI、前記ラビング試験を行う前に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をIとしたときの、I/I比で評価した。なお、溶剤としてメチルエチルケトンを用いたラビング試験の条件は、濃度100mass%のメチルエチルケトン5mlをガーゼに染み込ませた状態で、0.15MPaの荷重をかけて有機樹脂層上を10回往復運動させて行った。
(サンプルNo.29)
架橋剤としてブロックイソシアネートを加えた末端OH基エポキシ樹脂を含有する塗料としたこと以外は、サンプルNo.1と同様の要領で、サンプルNo.29の表面処理鋼板を作製した。
(サンプルNo.30〜37)
メラミンおよびベンゾクアナミンのいずれかの架橋剤を加えた末端アミン変性エポキシ樹脂を含有する塗料を、酸洗処理を施した鋼板上に塗布し、種々の焼付け条件(表2参照)で加熱して乾燥させることにより、表2に示す構成の有機樹脂層を形成したこと以外は、サンプルNo.1と同様の要領で、サンプルNo.30〜37の表面処理鋼板を作製した。
(サンプルNo.38〜41)
架橋剤を加えない末端アミン変性エポキシ樹脂を含有する塗料を、酸洗処理を施した鋼板上に塗布し、種々の焼付け条件(表2参照)で加熱して乾燥させることにより、表2に示す構成の有機樹脂層を形成したこと以外は、サンプルNo.1と同様の要領で、サンプルNo.38〜41の表面処理鋼板を作製した。
(サンプルNo.42〜44)
酸洗処理に用いる水溶液を塩酸水溶液、硫酸水溶液およびリン酸水溶液のいずれかとしたこと以外は、サンプルNo.1と同様の要領でサンプルNo.42〜44の表面処理鋼板を作製した。なお、塩酸水溶液、硫酸水溶液およびリン酸水溶液の濃度と液温、並びに素地鋼板の水溶液中での浸漬時間は表2に示すとおりとした。
(サンプルNo.45)
酸洗処理を行わなかったこと以外は、サンプルNo.1と同様の要領で、サンプルNo.45の表面処理鋼板を作製した。
(サンプルNo.46〜49)
エポキシ系有機樹脂層の膜厚が、0.1、0.3、2.5および7.0μmとなるように、末端アミン変性エポキシ樹脂の含有量、ブロックイソシアネートの含有量および焼付け条件を変更(表2参照)したこと以外は、サンプルNo.1と同様の条件で、サンプルNo.46〜49の表面処理鋼板を作製した。
(サンプルNo.50および51)
架橋剤として、ブロックイソシアネートを加えたアクリル樹脂を含有する塗料を、酸洗処理を施した鋼板上に塗布し、種々の焼付け条件(表2参照)で加熱して乾燥させることにより、表2に示す構成の有機樹脂層を形成したこと以外は、サンプルNo.1と同様の要領で、サンプルNo.50および51の表面処理鋼板を作製した。
(サンプルNo.52)
有機樹脂層を形成しないこと以外は、サンプルNo.1と同様の要領で、サンプルNo.52の鋼板を作製した。
かくして得られた各表面処理鋼板のサンプルについて性能評価を行った。本実施例で行った試験の評価方法を以下に示す。
(評価方法)
(1)有機樹脂層カットなしでの耐食性
各サンプルについて、以下の有機樹脂層カットなしでの耐食性評価を行った。具体的には、各サンプルに対して、1週間に2度の周期で人工海塩を付着させて(付着量:10mg/m2)、絶対湿度がほぼ一定となる、乾燥環境(60℃、35%RH)と湿潤環境(40℃、95%RH)とを、乾燥環境→移行時間→湿潤環境→移行時間を1サイクルとして、60サイクル繰り返した。湿潤環境および乾燥環境での各サンプルの保持時間は、それぞれ3時間とし、移行時間は、1時間とした。60サイクル繰り返し後の各サンプルの表面の状態を観察し、以下の基準に従って評価した。評価結果を表3および4に示す。
◎:赤錆発生面積率5%未満
○:赤錆発生面積率5%以上10%未満
×:赤錆発生面積率10%以上
(2)有機樹脂層カット時の耐食性
各サンプルについて、有機樹脂層カット時の耐食性評価を行った。具体的には、各サンプルに対して、作製した塗装鋼板から、試験片(大きさ:50mm×100mm)を切り出し、鋼板まで達する、長さが45mmのクロスカットを入れた後、各サンプルに対して、1週間に2度の周期で人工海塩を付着させて(付着量:10mg/m2)、絶対湿度がほぼ一定となる、乾燥環境(60℃、35%RH)と湿潤環境(40℃、95%RH)とを、乾燥環境→移行時間→湿潤環境→移行時間を1サイクルとして、60サイクル繰り返した。湿潤環境および乾燥環境での各サンプルの保持時間は、それぞれ3時間とし、移行時間は、1時間とした。60サイクル繰り返し後の各サンプルの表面の状態を観察し、以下の基準に従ってクロスカット部からの赤錆発生幅を評価した。評価結果を表3および4に示す。
◎:赤錆発生幅0.8mm未満
○:赤錆発生幅0.8mm以上1mm未満
×:赤錆発生幅1mm以上
(3)耐指紋性
各サンプルについて、JIS K 2246:2007に規定される人工指紋液に、20℃雰囲気下で1分間浸漬し、浸漬前後の色差(ΔE)で耐指紋性の評価をした。以下の評価基準に従って評価し、評価結果を表3および4に示す。
なお、ΔEは、日本電気(株)社製カラーコンピュータで測定されるL値、a値、b値を用いて、以下の計算式に従い算出したものである。
(4)放熱性
各サンプルについて、アクリル樹脂板(板厚2mm)で組立てた、筐体の内面(側面および底面)にアルミホイルを貼り、完全に被覆した。筐体の内部底面中央に設置したアルミ架台の上に底面より10mmの高さに位置するように、シリコンラバーヒーターをセットした。なお、各サンプルは、縦300mm、横300mmの大きさに切り出して筐体の天板として用い、筐体の上面開口部(側面上端部)に設置されたパッキングに接するように載せ、密封した。下記のシース型白金抵抗温体とヒーターとの間の空間に、該ヒーターから該シース型白金抵抗測温体への直接輻射防止用アルミホイル(縦200mm、横200mm)を、シリコンラバーヒーターの直上、かつ、底面から35mmの定置に、底面と平行に設置し、その位置を維持できるようにアルミホイルの4角を針金で支えた。
そして、天板から鉛直下方向に35mm離れ、かつ、アルミホイルから鉛直上方向に40mm離れた筐体内部にシース型白金抵抗測温体(直径1.6mm、長さ150mm)を筐体の側面から水平を保つように差込み、筐体内部の水平方向の中央部、天板から鉛直下方向に、35mmの付近の温度を測定できるようにした後、直流安定化電源から電圧を供給し、発熱させた(入力65V×705mA=45.8W)。
筐体内部温度の変化をデータロガーに記録し、筐体の内部温度が定常状態に達したときの温度から天板の吸放熱性を判定した。また、判定は電気亜鉛めっき鋼板の放熱性を各サンプルと同様に評価したときと比較することにより行った。評価基準を以下に示し、評価結果を表3および4に示す。
○:電気亜鉛めっき板に比べて温度低下が5℃以上
×:電気亜鉛めっき板に比べて温度低下が5℃未満
(5)外観
各サンプルについて目視による外観の評価を行った。評価基準を以下に示し、評価結果を表3および4に示す。
○:外観にムラなし
×:外観にムラあり
表3および4の結果から、実施例であるサンプルの表面処理鋼板は、比較例であるサンプルの表面処理鋼板に比べ、いずれも良好な耐食性、耐指紋性、放熱性および外観を有していることがわかる。
本発明によれば、エポキシ系有機樹脂層の膜厚が薄い場合であっても、亜鉛系めっき層を形成することなく、膜厚5μm以下の有機樹脂層を形成するだけで、良好な耐食性を具え、仮にエポキシ系有機樹脂層を貫通して素地鋼板の表面にまで達する傷が生じたとしても良好な耐食性を維持できる表面処理鋼板およびその製造方法を提供することが可能となる。
硝酸水溶液で酸洗処理を施した素地鋼板の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。 塩酸水溶液で酸洗処理を施した素地鋼板の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。 硫酸水溶液で酸洗処理を施した素地鋼板の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。 リン酸水溶液で酸洗処理を施した素地鋼板の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。 酸洗処理を施さない素地鋼板の表面を走査型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。

Claims (4)

  1. 常温の5〜40mass%硝酸水溶液に30秒未満の間浸漬させる酸洗処理した素地鋼板の少なくとも片面に、エポキシ系有機樹脂層を具え、
    前記エポキシ系有機樹脂層が有する架橋度は、前記エポキシ系有機樹脂層に対して、溶剤としてメチルエチルケトンを用いてラビング試験を行った後に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をI、前記ラビング試験を行う前に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をIとするとき、I/I比で0.95以上であり、
    前記エポキシ系有機樹脂層の膜厚が、5μm以下であることを特徴とする表面処理鋼板。
  2. 前記エポキシ系有機樹脂層は、末端アミン変性エポキシ樹脂が架橋剤により架橋され形成されることを特徴とする、請求項1に記載の表面処理鋼板。
  3. 前記架橋剤は、ブロックイソシアネート、ウレア樹脂およびフェノール樹脂のいずれか1種であることを特徴とする、請求項2に記載の表面処理鋼板。
  4. 素地鋼板の少なくとも片面に対して、常温の5〜40mass%硝酸水溶液に30秒未満の間浸漬させる酸洗処理を施した後、水洗および乾燥を施し、その後、前記素地鋼板の酸洗処理面に、エポキシ系有機樹脂を有する塗料を塗布し、加熱することで、前記エポキシ系有機樹脂層が有する架橋度が、前記エポキシ系有機樹脂層に対して、溶剤としてメチルエチルケトンを用いてラビング試験を行った後に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をI、前記ラビング試験を行う前に蛍光X線分析したときのCのピーク強度をIとするとき、I/I比で0.95以上であり、前記エポキシ系有機樹脂層の膜厚を、5μm以下とすることを特徴とする表面処理鋼板の製造方法。
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