JPH1160770A - ゴム組成物、加硫ゴム及びタイヤ - Google Patents

ゴム組成物、加硫ゴム及びタイヤ

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JPH1160770A
JPH1160770A JP9231480A JP23148097A JPH1160770A JP H1160770 A JPH1160770 A JP H1160770A JP 9231480 A JP9231480 A JP 9231480A JP 23148097 A JP23148097 A JP 23148097A JP H1160770 A JPH1160770 A JP H1160770A
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啓詩 森永
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裕之 寺谷
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裕二 山口
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた氷上性能を有するタイヤのトレッド等
に好適な加硫ゴムの原料等となるゴム組成物の提供。 【解決手段】 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ば
れた少なくとも1種からなるゴム成分を含むゴムマトリ
ックスと、発泡剤含有繊維とを含有してなるゴム組成物
であって、該発泡剤含有繊維が、加硫時にゴム組成物の
温度が加硫最高温度に達するまでの間にその粘度がゴム
マトリックスの粘度よりも低くなる樹脂と、該樹脂10
0重量部に対して10〜150重量部の発泡剤とを含有
してなることを特徴とするゴム組成物である。樹脂が結
晶性高分子を含んでなり、その融点が高くとも190℃
である態様、結晶性高分子がポリエチレンである態様、
発泡剤含有繊維中の樹脂の量が、ゴム成分100重量部
に対して1〜60重量部である態様等が好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴム組成物、加硫
ゴム及びタイヤに関し、更に詳しくは、特に市場が要望
する優れた氷上性能を有するタイヤ、該タイヤのトレッ
ド等に好適に使用できる加硫ゴム、及び該加硫ゴムの原
料等として好適に使用できるゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】スパイクタイヤが規制されて以来、氷雪
路面上でのタイヤの制動・駆動性能(氷上性能)を向上
させるため、特にタイヤのトレッドについての研究が盛
んに行われてきている。前記氷雪路面においては、該氷
雪路面と前記タイヤとの摩擦熱等により水膜が発生し易
く、該水膜が、タイヤと氷雪路面との間の摩擦係数を低
下させる原因になっている。このため、前記タイヤのト
レッドの水膜除去能やエッヂ効果が、前記氷上性能に大
きく影響する。したがって、タイヤにおける前記氷上性
能を向上させるためには、前記トレッドの水膜除去能や
エッヂ効果を改良することが必要である。
【0003】そこで、前記タイヤの表面にミクロな排水
溝(深さ、幅共に100μm程度)を多数設け、該ミク
ロな排水溝により前記水膜を排除し、該タイヤの前記氷
雪路面上での摩擦係数を大きくさせることが提案されて
いる。しかし、この場合、該タイヤの使用初期における
前記氷上性能を向上させることはできるものの、該タイ
ヤの摩耗に伴い、徐々に前記氷上性能が低下してしまう
という問題がある。また、タイヤが摩耗しても前記氷上
性能が低下しないようにするため、前記トレッドに発泡
ゴムを用いることが提案されている。しかし、単なる発
泡ゴムにおける気泡は、球状であり異方性を持たず、前
記ミクロな排水溝として機能し得ないため、この場合、
市場の要求レベルを満たす程度にまで前記氷上性能を向
上させることができないという問題がある。
【0004】一方、特開平4−38207号公報には、
短繊維入発泡ゴムを前記トレッドに用いることにより、
該トレッドの表面に前記ミクロな排水溝を形成する手法
が記載されている。しかしながら、この場合、走行によ
り該トレッドが摩耗しても、摩耗面と略平行でない短繊
維は、該トレッドから容易に離脱せず、当初の狙いのよ
うな前記ミクロな排水溝が効率的に形成できず、前記氷
雪路面上での摩擦係数の向上が十分でない。また、前記
短繊維の離脱は走行条件等に大きく左右され、確実に前
記氷上性能を向上させることができないという問題があ
る。
【0005】他方、特開平4−110212号公報等に
は、前記トレッドに中空繊維を分散させることにより、
前記氷雪路面と前記トレッドとの間に存在する前記水膜
を該中空繊維の中空部分で排除し得るタイヤが開示され
ている。しかしながら、このタイヤの場合、該中空繊維
のゴム中への混練時や成形時における圧力、ゴム流れ、
温度等によって該中空繊維が潰れてしまい、実際には該
中空繊維は中空形状を保つことができず、前記ミクロな
排水溝が効率的に形成できず、依然として前記氷上性能
が十分でないという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来に
おける諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課
題とする。即ち、本発明は、前記氷雪路面上に生ずる水
膜の除去能力に優れ、前記氷雪路面との間の摩擦係数が
大きく、前記氷上性能に優れたタイヤを提供することを
目的とする。また、本発明は、前記氷雪路面上でのスリ
ップを抑えることが必要な構造物、例えば前記タイヤの
トレッド等に好適で、優れた氷上性能を有する加硫ゴム
を提供することを目的とする。更に、本発明は、前記加
硫ゴムの原料等として好適に使用できるゴム組成物を提
供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の手段は、以下の通りである。即ち、 <1> 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少
なくとも1種からなるゴム成分を含むゴムマトリックス
と、発泡剤含有繊維とを含有してなるゴム組成物であっ
て、該発泡剤含有繊維が、加硫時に該ゴム組成物の温度
が加硫最高温度に達するまでの間にその粘度が前記ゴム
マトリックスの粘度よりも低くなる樹脂と、該樹脂10
0重量部に対して10〜150重量部の発泡剤とを含有
してなることを特徴とするゴム組成物である。 <2> 樹脂が結晶性高分子を含んでなり、その融点が
高くとも190℃である前記<1>に記載のゴム組成物
である。 <3> 結晶性高分子がポリエチレンである前記<2>
に記載のゴム組成物である。 <4> 発泡剤含有繊維中の樹脂の含有量が、ゴム成分
100重量部に対して0.5〜30重量部である前記<
1>から<3>のいずれかに記載のゴム組成物である。
【0008】<5> 前記<1>から<4>のいずれか
に記載のゴム組成物を加硫して得られ、長尺状気泡を有
してなることを特徴とする加硫ゴムである。 <6> 発泡率が3〜40%である前記<5>に記載の
加硫ゴムである。
【0009】<7> 1対のビード部と、該ビード部に
トロイド状をなして連なるカーカスと、該カーカスのク
ラウン部をたが締めするベルト及びトレッドを有してな
り、少なくとも前記トレッドが前記<5>又は<6>に
記載の加硫ゴムを含んでなることを特徴とするタイヤで
ある。 <8> 長尺状気泡がタイヤの周方向に配向された前記
<7>に記載のタイヤである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のゴム組成物、加
硫ゴム及びタイヤについて以下に詳細に説明する。
【0011】(ゴム組成物)本発明のゴム組成物は、発
泡剤含有繊維とゴムマトリックスとを少なくとも含有し
てなる。
【0012】−−発泡剤含有繊維−− 前記発泡剤含有繊維は、樹脂と発泡剤とを少なくとも含
有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有して
なる。
【0013】−樹脂− 前記樹脂としては、ゴム組成物が加硫最高温度に達する
までの間に溶融(軟化を含む)する熱特性を有している
こと、換言すれば、ゴム組成物の加硫時に該ゴム組成物
の温度が加硫最高温度に達するまでの間に前記樹脂の粘
度が該ゴム組成物における前記樹脂以外の成分からなる
ゴムマトリックスの粘度よりも低くなる熱特性を有して
いることが特に好ましい。このような熱特性を前記樹脂
が有していると、前記発泡剤含有繊維を配合したゴム組
成物を加硫して得た加硫ゴム中に、前記ミクロな排水溝
として機能し得る長尺状気泡を容易に形成することがで
きる点で有利である。
【0014】前記加硫最高温度とは、ゴム組成物の加硫
時における該ゴム組成物が達する最高温度を意味する。
例えば、モールド加硫の場合には、該ゴム組成物がモー
ルド内に入ってからモールドを出て冷却されるまでに該
ゴム組成物が達する最高温度を意味する。前記加硫最高
温度は、例えば、ゴム組成物中に熱電対を埋め込むこと
等により測定することができる。
【0015】なお、前記ゴムマトリックスの粘度は、流
動粘度を意味し、例えば、コーンレオメーター、キャピ
ラリーレオメーター等を用いて測定することができる。
また、前記樹脂の粘度は、溶融粘度を意味し、例えば、
コーンレオメーター、キャピラリーレオメーター等を用
いて測定することができる。
【0016】前記樹脂としては、その材質等について特
に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる
が、前記熱特性を有する材質が好ましく、例えば、その
融点が前記加硫最高温度よりも低い結晶性高分子からな
る樹脂などが特に好適に挙げられる。
【0017】該結晶性高分子からなる樹脂を例に説明す
ると、該樹脂の融点と、ゴム組成物の前記加硫最高温度
との差が大きくなる程、該ゴム組成物の加硫中に速やか
に該樹脂が溶融するため、該樹脂の粘度が前記ゴムマト
リックスの粘度よりも低くなる時期が早くなる。このた
め、該樹脂が溶融すると、該樹脂に含まれる発泡剤から
発生したガスは、前記ゴムマトリックスよりも低粘度で
ある該樹脂の内部に留まる。その結果、前記ゴム組成物
を加硫して得られた加硫ゴムにおいては、該樹脂により
被覆されたカプセル状の長尺状気泡が、潰れのない状態
で効率良く形成される。該加硫ゴムにおいては、このカ
プセル状の長尺状気泡が、前記ミクロな排水溝として機
能し得る。
【0018】一方、前記樹脂の融点が、前記ゴム組成物
の前記加硫最高温度に近くなり過ぎると、加硫初期に速
やかに該樹脂が溶融せず、加硫終期に該樹脂が溶融す
る。加硫終期では、該樹脂に含まれる前記発泡剤から発
生したガスの一部が加硫したゴムマトリックス中に取り
込まれてしまい、溶融した該樹脂の内部には留まらず、
その結果、前記ミクロな排水溝として機能し得る長尺状
気泡が、効率良く形成されないことがある。他方、前記
樹脂の融点が低くなり過ぎると、例えば、発泡剤含有繊
維をゴム組成物中に配合し混練りする際、該発泡剤含有
繊維同士の融着が発生し、該発泡剤含有繊維の分散不良
が生じ、前記ミクロな排水溝として機能し得る長尺状気
泡が効率良く形成されないことがある。したがって、前
記樹脂の融点は、加硫工程中にゴムマトリックスの粘度
と前記樹脂の粘度とが逆転するような範囲で選択するの
が好ましい。
【0019】前記樹脂の融点の上限としては、特に制限
はないものの、以上の点を考慮して選択するのが好まし
く、一般的には、前記ゴム組成物の前記加硫最高温度よ
りも、10℃以上低いのが好ましく、20℃以上低いの
がより好ましい。ゴム組成物の工業的な加硫温度は、一
般的には最高で約190℃程度であるが、例えば、加硫
最高温度がこの190℃に設定されている場合には、前
記樹脂の融点としては、通常190℃以下の範囲で選択
され、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好
ましい。
【0020】なお、前記樹脂の融点は、それ自体公知の
融点測定装置等を用いて測定することができ、例えば、
DSC測定装置を用いて測定した融解ピーク温度を前記
融点とすることができる。
【0021】前記樹脂は、結晶性高分子から形成されて
いてもよいし、非結晶性高分子から形成されていてもよ
いし、結晶性高分子と非結晶性高分子とから形成されて
いてもよいが、本発明においては、相転移があるために
粘度変化がある温度で急激に起こり、粘度制御が容易な
点で結晶性高分子を含む有機素材から形成されているの
が好ましく、結晶性高分子のみから形成されるのがより
好ましい。前記好ましい場合乃至より好ましい場合、前
記発泡剤含有繊維を含むゴム組成物を加硫して得られた
加硫ゴムにおいて、前記ミクロな排水溝として機能し得
る長尺状気泡を容易に形成することができる点で有利で
ある。
【0022】前記結晶性高分子の具体例としては、例え
ば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、
ポリブチレン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレ
ンサクシネート、シンジオタクティック−1,2−ポリ
ブタジエン(SPB)、ポリビニルアルコール(PV
A)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の単一組成重合物
や、共重合、ブレンド等により融点を適当な範囲に制御
したものも使用でき、更にこれらの樹脂に添加剤を加え
たものも使用できる。これらは、1種単独で使用しても
よいし、2種以上を併用してもよい。これらの結晶性高
分子の中でも、ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合
体が好ましく、汎用で入手し易い点でポリエチレン(P
E)、ポリプロピレン(PP)がより好ましく、融点が
低く、取扱いが容易な点でポリエチレン(PE)が特に
好ましい。
【0023】前記非結晶性高分子としては、例えば、ポ
リメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリ
ルブタジエンスチレン共重合体(ABS)、ポリスチレ
ン(PS)、ポリアクリロニトリル、これらの共重合
体、これらのブレンド物等が挙げられる。これらは、1
種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよ
い。
【0024】前記樹脂における前記有機素材の分子量と
しては、該有機素材の化学組成、分子鎖の分岐の状態等
によって異なり一概に規定することはできないが、一般
に、該樹脂は、同じ有機素材で形成されていてもその分
子量が高い程、ある一定の温度における粘度(溶融粘
度)は高くなる。本発明においては、前記樹脂における
前記有機素材の分子量は、前記ゴム組成物の加硫最高温
度における前記ゴムマトリックスの粘度(流動粘度)よ
りも該樹脂の粘度(溶融粘度)が高くならないような範
囲で選択するのが好ましい。
【0025】−発泡剤− 前記発泡剤としては、例えば、ジニトロソペンタメチレ
ンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(AD
CA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミンやベンゼ
ンスルホニルヒドラジド誘導体、オキシビスベンゼンス
ルホニルヒドラジド(OBSH)、二酸化炭素を発生す
る重炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモ
ニウム、窒素を発生するニトロソスルホニルアゾ化合
物、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソフタル
アミド、トルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエン
スルホニルセミカルバジド、P,P’−オキシービス
(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)等が挙げられ
る。
【0026】これらの発泡剤の中でも、製造加工性を考
慮すると、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DP
T)、アゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましく、
特にアゾジカルボンアミド(ADCA)が好ましい。こ
れらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用
してもよい。
【0027】前記発泡剤の形態としては、特に制限はな
く目的に応じて、粒子状、液状等の中から適宜選択する
ことができるが、発泡剤含有繊維中での該発泡剤の偏在
を防止し、発泡ムラを防止し、また、長手方向に垂直な
断面形状がほぼ円形であるカプセル状の長尺状気泡を潰
れのない状態で効率良く形成する観点からは、径の細か
い粒子状であるのが好ましい。粒子状の発泡剤の平均粒
径としては、例えば、0.1〜20μmが好ましく、
0.5〜10μmがより好ましい。なお、前記発泡剤の
形態は、例えば顕微鏡等を用いて観察することができ
る。また、前記粒子状の発泡剤の平均粒径は、例えば、
コールターカウンター等を用いて測定することがでる。
【0028】前記発泡剤の前記発泡剤含有繊維における
含有量としては、前記樹脂100重量部に対して、10
〜150重量部が好ましく、20〜140重量部がより
好ましく、30〜130重量部が特に好ましい。また、
前記含有量としては、前記数値範囲のいずれかの下限値
若しくは上限値又は後述の実施例において採用した該含
有量のいずれかの値を下限とし、前記数値範囲のいずれ
かの下限値若しくは上限値又は後述の実施例において採
用した該含有量のいずれかの値を上限とする範囲も好ま
しい。
【0029】前記発泡剤の含有量が10重量部未満であ
ると、発泡剤含有繊維に含まれる該発泡剤から発生した
ガス同士が連結せず、該発泡剤含有繊維内に、長手方向
に垂直な断面形状がほぼ円形である長尺状気泡を潰れの
ない状態で形成できず、気泡が繊維内で分散した状態に
なってしまうことがある。一方、前記発泡剤の含有量が
150重量部を越えると、樹脂に対して異物である発泡
剤の量が多くなり過ぎ、発泡剤含有繊維の製造時に糸切
れが多く発生し、発泡剤含有繊維の製造の点で好ましく
ない。
【0030】−その他の成分− 前記その他の成分としては、本発明の目的を害しない限
り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することがで
き、例えば市販品を好適に使用することができる。これ
らは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して
もよい。また、前記その他の成分の発泡剤含有繊維にお
ける含有量としては、特に制限はなく、本発明の目的を
害しない範囲内において適宜選択することができる。
【0031】本発明においては、前記その他の成分とし
て発泡助剤を、前記発泡剤と併用してもよいが、この場
合、発泡剤含有繊維の製造中に発泡が生じない範囲内に
限られる。前記発泡助剤を前記発泡剤と併用すると、発
泡剤含有繊維中に含まれる総ての発泡剤を効率良く発泡
させることができ、発泡ムラ等を招くことがない点では
有利であるが、発泡開始温度が下がるため、より正確な
温度コントロールが必要になる。したがって、前記発泡
助剤は、前記ゴムマトリックス中に添加しておくのが特
に好ましい。
【0032】前記発泡助剤としては、例えば、尿素、ス
テアリン酸亜鉛、ベンゼンスルフィン酸亜鉛や亜鉛華
等、通常、発泡製品の製造に用る助剤等が挙げられる。
これらの中でも、尿素、ステアリン酸亜鉛、ベンゼンス
ルフィン酸亜鉛等が好ましい。これらは、1種単独で使
用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】−繊維形状− 前記発泡剤含有繊維の平均径(D)としては、特に制限
はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該
発泡剤含有繊維を含むゴム組成物を加硫して得られる加
硫ゴム中に、前記ミクロな排水溝として機能し得る長尺
状気泡を効率良く形成するためには、10〜100μm
が好ましく、15〜90μmがより好ましく、20〜8
0μmが特に好ましい。また、本発明においては、前記
平均径(D)として、前記数値範囲のいずれかの上限値
若しくは下限値又は後述の実施例で採用した前記平均径
(D)のいずれかの値を下限とし、前記数値範囲のいず
れかの上限値若しくは下限値又は後述の実施例で採用し
た前記平均径(D)のいずれかの値を上限とする数値範
囲も好ましい。
【0034】前記平均径(D)が10μm未満である
と、前記発泡剤の平均粒径に対して該平均径が小さくな
り過ぎて、発泡剤含有繊維の製造時に糸切れが多く発生
する点で好ましくない。一方、前記平均径(D)が10
0μmを越えると、発泡剤含有繊維の平均径(直径)が
大きくなり過ぎ、含まれる前記発泡剤の一部が発泡を生
じなかったり、発泡剤から生じたガス同士が発泡剤含有
繊維内で連結せず、中空部に潰れのないカプセル状の長
尺状気泡を形成できず、気泡が分割されてしまうことが
ある点で好ましくない。なお、前記平均径(D)は、光
学顕微鏡を用いて測定することができる。
【0035】前記発泡剤含有繊維が短繊維である場合、
該発泡剤含有繊維の平均長さ(L)としては、特に制限
はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、該
発泡剤含有繊維を含むゴム組成物を加硫して得られる加
硫ゴム中に、前記ミクロな排水溝として機能し得る長尺
状気泡を効率良く形成するためには、0.5〜20mm
が好ましく、1〜10mmがより好ましい。また、本発
明においては、前記平均長さ(L)として、前記数値範
囲のいずれかの上限値若しくは下限値又は後述の実施例
で採用した前記平均長さ(L)の値を下限とし、前記数
値範囲のいずれかの上限値若しくは下限値又は後述の実
施例で採用した前記平均長さ(L)の値を上限とする数
値範囲も好ましい。
【0036】前記平均長さ(L)が0.5mm未満であ
ると、機械的な切断が困難になり、前記発泡剤含有繊維
の生産性が非常に悪化することがあり、20mmを越え
ると、ゴム混練り時の分散不良や、押出時の配向乱れが
発生することがある。なお、前記発泡剤含有繊維の平均
長さ(L)は、例えば、光学顕微鏡等により測定でき
る。
【0037】−製造方法− 前記発泡剤含有繊維は、例えば、溶液紡糸法、ゲル紡糸
法、溶融紡糸法等により製造され得るが、発泡剤が発泡
反応を起こさないような低温で安定した製造が行える点
で溶媒を使った溶液紡糸法やゲル紡糸法が好ましい。こ
れらの紡糸法の場合、所定の加熱温度の下、有機溶媒に
前記樹脂を溶解し、かつ前記発泡剤を分散させた紡糸原
液を紡糸ノズルから押し出してなる糸状体を急冷し、脱
溶媒等を行うことにより前記繊維を製造することができ
る。
【0038】前記加熱温度(即ち、発泡剤含有繊維の製
造工程における温度)としては、40〜180℃である
ことが好ましく、40〜150℃がより好ましく、40
〜130℃が特に好ましい。また、本発明において、前
記加熱温度としては、前記数値範囲のいずれかの上限値
若しくは下限値又は後述の実施例で採用した該温度のい
ずれかの値を下限とし、前記数値範囲のいずれかの上限
値若しくは下限値又は後述の実施例で採用した該温度の
いずれかの値を上限とする数値範囲も好ましい。
【0039】前記加熱温度が、40℃未満であると、前
記樹脂の種類にもよるが該樹脂の溶解あるいは前記発泡
剤の分散を十分に行うことができない可能性があり、1
80℃を越えると、発泡剤の種類にもよるが、発泡剤含
有繊維の製造中に発泡反応が起こり、ガスを取り逃がし
てしまったり、あるいは、発泡剤含有繊維の製造安定性
を損なうことがある。なお、前記発泡剤含有繊維中の樹
脂がポリエチレンである場合、前記加熱温度としては1
00〜150℃が好ましい。
【0040】前記有機溶媒としては、前記樹脂の種類に
応じて適宜選択することができ、例えば、デカリン、ア
セトン、ベンゼンなどが挙げられる。これらの有機溶媒
は、1種単独で使用してもよい。
【0041】前記樹脂は上述した通りであるが、融点が
一般のゴム加硫温度以下である点でポリエチレンが特に
好ましい。前記発泡剤も上述した通りであるが、製造加
工性の点でADCAが特に好ましい。前記紡糸原液は、
前記樹脂を前記有機溶媒に溶解し、かつ前記発泡剤を分
散させることにより得ることができる。前記溶解及び前
記分散は、公知の機器、装置、例えば攪拌装置等を用い
て行うことができる。
【0042】前記分散を行う時間、具体的には攪拌等を
行う時間としては、前記紡糸原液における各成分の種類
や量、攪拌速度、フィン形状、攪拌装置の内壁材質等に
応じて異なり一概に規定することはできないが、前記発
泡剤を前記紡糸原液中に均一に分散させる観点からは5
〜60分間程度が好ましい。
【0043】前記発泡剤含有繊維は、前記紡糸原液を用
い、これを紡糸することにより製造することができる。
なお、得られる糸状体中において前記発泡剤を偏在させ
ず、均一に分散させる観点からは、前記紡糸原液を紡糸
する際に、該紡糸原液中に含まれる発泡剤の分散状態を
良好にしておくのが好ましい。
【0044】前記溶融紡糸法又はゲル紡糸法において
は、前記紡糸原液は紡糸ノズルから水等の液体中に(湿
式)、あるいは空気中に(乾式)等に押し出され、糸状
体の形態に紡糸(成形)される。なお、紡糸された糸状
体は、例えば、巻き取り機等を用いて巻き取ることがで
きる。
【0045】なお、前記紡糸の際に用いる紡糸装置とし
ては特に制限はなく、公知の紡糸装置やスクリュー型押
出装置等の押出装置の中から適宜選択することができ
る。前記スクリュー型押出装置を用いると、前記紡糸原
液中に含まれる前記発泡剤の分散状態を良好にすること
ができる点で有利である。なお、紡糸の際の押出温度
は、特に重要であり、紡糸性が良好でかつ発泡反応が生
じない範囲内で選択される。
【0046】前記紡糸ノズルとしては、特に制限はな
く、目的に応じて適宜選択することができるが、該紡糸
ノズルの吹出口の直径としては、例えば、0.05〜1
mmが好ましく、0.1〜0.8mmがより好ましい。
なお、前記紡糸ノズルは、前記紡糸装置や前記押出装置
における前記紡糸原液の吹出口に装着される。
【0047】こうして得られた糸状体は、急冷されて固
化される。この急冷速度としては、特に制限はなく、目
的に応じて適宜選択することができる。例えば、水中で
急冷する場合には、前記糸状体は瞬間的に冷却される。
前記冷却中又は冷却後に前記糸状体は脱溶媒される。前
記脱溶媒の方法としては、特に制限はなく、目的に応じ
て適宜選択することができるが、例えば、メタノール浴
を用いる方法、熱風筒を用いる方法などが好適に挙げら
れる。
【0048】前記脱溶媒の前後いずれかに前記糸状体を
延伸するのが好ましいが、前記脱溶媒の前に前記糸状体
を延伸するのが、該糸状体の延伸倍率を上げられる点で
好ましい。前記延伸の際の温度としては、40〜180
℃の加熱下であるのが好ましく、40〜150℃の加熱
下であるのがより好ましい。前記温度が40℃未満でる
と、延伸倍率を上げられず、180℃を越えると、発泡
反応が生ずることがある。なお、前記延伸を行う装置と
しては、特に制限はなく、公知の延伸装置の中から適宜
選択することができる。
【0049】こうして得られた発泡剤含有繊維において
は、前記発泡剤が偏在せず、分散した状態で含まれてい
る。得られた発泡剤含有繊維は、通常、長繊維であるた
め、短繊維を得る場合には、適宜選択した切断具を用い
て所望の長さに切断すればよい。
【0050】−−ゴムマトリックス−− 前記ゴムマトリックスは、本発明のゴム組成物における
前記発泡剤含有繊維以外の成分を含み、具体的には、天
然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ばれた少なくとも1
種からなるゴム成分を含み、更に必要に応じて適宜選択
したその他の成分を含む。
【0051】−ゴム成分− 前記ゴム成分は、天然ゴムのみを含んでいてもよいし、
ジエン系合成ゴムのみを含んでいてもよいし、両者を含
んでいてもよい。前記ジエン系合成ゴムとしては、特に
制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択
することができるが、例えば、スチレン−ブタジエン共
重合体(SBR)、ポリイソプレン(IR)、ポリブタ
ジエン(BR)などが挙げられる。これらのジエン系合
成ゴムの中でも、ガラス転移温度が低く、氷上性能の効
果が大きい点で、シス−1,4−ポリブタジエンが好ま
しく、シス含有率が90%以上のものが特に好ましい。
【0052】なお、本発明のゴム組成物をタイヤのトレ
ッド等に用いる場合には、前記ゴム成分としては、−6
0℃以下のガラス転移温度を有するものが好ましい。こ
のようなガラス転移温度を有するゴム成分を用いると、
該トレッド等は、低温域においても十分なゴム弾性を維
持し、良好な前記氷上性能を示す点で有利である。
【0053】−その他の成分− 前記その他の成分としては、本発明の効果を害しない範
囲で、目的に応じて適宜選択することができ、市販品を
好適に使用することができる。前記その他の成分として
は、例えば、カーボンブラック、シリカ等の補強性充填
材、硫黄等の加硫剤、ジベンゾチアジルジスルフィド等
の加硫促進剤、加硫助剤、シリカ用のカップリング剤、
N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジル−スルフェン
アミド、N−オキシジエチレン−ベンゾチアジル−スル
フェンアミド等の老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン
酸、オゾン劣化防止剤、着色剤、帯電防止剤、分散剤、
滑剤、酸化防止剤、軟化剤、無機充填材等の添加剤等の
他、通常ゴム業界で用いる各種配合剤などが挙げられ
る。
【0054】なお、本発明においては、前記発泡助剤を
前記その他の成分として特に好適に用いることができ、
前記発泡剤を必要に応じて前記その他の成分として用い
ることができる。前記発泡剤を用いた場合には、前記ゴ
ム組成物を加硫して得られた加硫ゴムを効率良く発泡ゴ
ムにすることができる。
【0055】−−ゴム組成物の調製−− 以上の各成分を適宜選択した条件、手法にて混練り、熱
入れ、押出等することにより本発明のゴム組成物が得ら
れる。
【0056】前記混練りは、混練り装置への投入体積、
ローターの回転速度、ラム圧等、混練り温度、混練り時
間、混練り装置等の諸条件について特に制限はなく、目
的に応じて適宜選択することができる。前記混練り装置
としては、市販品を好適に使用することができる。
【0057】前記熱入れ又は押出は、熱入れ又は押出時
間、熱入れ又は押出装置等の諸条件について特に制限は
なく、目的に応じて適宜選択することができる。前記熱
入れ又は押出装置としては、市販品を好適に使用するこ
とができる。ただし、熱入れ又は押出温度は、前記発泡
剤含有繊維が発泡を起こさないような範囲で適宜選択さ
れる。
【0058】本発明のゴム組成物においては、前記押出
等により前記発泡剤含有繊維は押出方向等に容易にかつ
十分に配向しているが、これを効果的に達成するために
は、前記ゴムマトリックス中に、アロマ系オイル、ナフ
テン系オイル、パラフィン系オイル、エステル系オイル
等の可塑剤等を適宜添加することができる。
【0059】前記発泡剤含有繊維を押出方向に配向させ
た状態で含むゴム組成物を加硫してなる加硫ゴムをタイ
ヤのトレッド等に使用する場合、該発泡剤含有繊維を、
該トレッド等における地面と接触する表面に平行な方向
に配向させるのが好ましく、該タイヤ等の周方向に配向
させるのがより好ましい。これらの場合、該タイヤ等の
走行方向の排水性を高めることができ、前記氷上性能を
向上させることができる点で有利である。
【0060】前記発泡剤含有繊維の配向を揃える方法と
しては、該発泡剤含有繊維が長繊維である場合、例え
ば、ゴム組成物において該発泡剤含有繊維を一定の方向
に平行に配列させればよい。また、発泡剤含有繊維が短
繊維である場合、例えば、図1に示すように、発泡剤含
有繊維14を含むゴムマトリックス15を、流路断面積
が出口に向かって減少する押出機の口金16から押し出
すことにより、該発泡剤含有繊維14を一定の方向に配
向させればよい。
【0061】なお、この場合、押し出される前のゴムマ
トリックス15中の発泡剤含有繊維14は、口金16へ
押し出されていく過程でその長手方向が押出方向(A方
向)に沿って除々に揃うようになり、口金16から押し
出されるときには、その長手方向が押出し方向(A方
向)にほぼ完全に配向させることができる。この場合に
おける発泡剤含有繊維14のゴムマトリックス15中で
の配向の程度は、流路断面積の減少程度、押出速度、ゴ
ムマトリックス15の粘度等によって変化する。
【0062】本発明のゴム組成物においては、加硫前、
即ち非加熱下では、前記ゴムマトリックスよりも前記発
泡剤含有繊維中の樹脂の方が粘度が高い。該ゴム組成物
の加硫開始後であって該ゴム組成物が加硫最高温度に達
するまでの間に、前記ゴムマトリックスは加硫によりそ
の粘度が上昇していき、前記発泡剤含有繊維中の樹脂は
溶融して粘度が大幅に低下していく。そして、加硫途中
において、前記ゴムマトリックスよりも該発泡剤含有繊
維中の樹脂の方が粘度が低くなる。即ち、加硫前の前記
ゴムマトリックスと該発泡剤含有繊維中の樹脂との間に
おける粘度の関係が、加硫途中の段階で逆転する現象が
生ずる。
【0063】この間、前記発泡剤含有繊維中の前記発泡
剤は、前記ゴムマトリックスに前記発泡助剤を添加して
いる場合には該発泡助剤と接触しているものから発泡反
応を起こし、ガスを生ずる。このガスは、加硫反応が進
行して粘度が高くなった前記ゴムマトリックスに比べ、
溶融して相対的に粘度が低下した前記発泡剤含有樹脂の
内部に留まる。その結果、該ゴム組成物を加硫して得ら
れた加硫ゴムにおいては、発泡剤含有繊維が存在してい
た場所に気泡が存在する。この気泡は、その周囲(気泡
の壁面)が前記発泡剤含有繊維中の樹脂によって覆わ
れ、カプセル状になっている。また、この気泡は、加硫
ゴム内において独立して存在している。なお、前記発泡
剤含有繊維中の樹脂の素材をポリエチレン、ポリプロピ
レン等とした場合、加硫したゴムマトリックスと該樹脂
とは強固に接着している。
【0064】本発明のゴム組成物は、各種分野において
好適に使用することができるが、後述の本発明の加硫ゴ
ムの原料等として特に好適に使用することができる。
【0065】(加硫ゴム)本発明の加硫ゴムは、前記本
発明のゴム組成物を加硫することにより得られる。以
下、本発明の加硫ゴムの詳細を説明する。
【0066】前記加硫を行う装置乃至方式等について
は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが
できるが、前記加硫の温度は、前記加硫中の前記ゴム組
成物の加硫最高温度が前記発泡剤含有繊維における樹脂
の融点以上になるように選択される。前記加硫最高温度
が前記発泡剤含有繊維における樹脂の融点未満である
と、前記発泡剤含有繊維中の樹脂が溶融せず、該発泡剤
含有樹脂中に発泡により生じたガスを留まらせることが
できず、長尺状気泡を形成することができない。なお、
前記加硫を行う装置としては、特に制限はなく、市販品
を好適に使用することができる。
【0067】本発明の加硫ゴムにおいては、加硫したゴ
ムマトリックス中に長尺状気泡が存在している。前記発
泡剤含有繊維を短繊維とし、該発泡剤含有繊維の前記ゴ
ム組成物中での配向を一方向に揃えた場合には、図2に
示すように、長尺状気泡11が一方向に配向した状態で
存在している。この長尺状気泡11は、溶融した発泡剤
含有繊維14中の樹脂が、加硫したゴムマトリックス6
Aに接着してなる保護層13により囲まれている。該保
護層13内には、前記発泡剤から発生したガスが取り込
まれている。
【0068】本発明の加硫ゴムをタイヤのトレッド等に
使用した場合においては、長尺状気泡11が表面に露出
して形成される凹部12が、効率的な排水を行う排水路
として機能する。また、本発明の加硫ゴムは、該凹部1
2の表面が保護層13で被覆されているため、水路形状
保持性、水路エッジ部摩耗性、荷重入力時の水路保持性
等にも優れる。保護層13の厚みとしては、0.5〜5
0μmが好ましい。
【0069】なお、保護層13は、ポリエチレン、ポリ
プロピレン等の場合には、加硫したゴムマトリックス6
Aと強固に接着しているが、該接着力をより向上させる
必要がある場合には、例えば、前記発泡剤含有繊維に、
加硫したゴムマトリックス6Aとの接着性を向上させ得
る成分を含ませることができる。
【0070】本発明の加硫ゴムにおいては、長尺状気泡
11の1個当たりの平均長さ(L)(図2参照)と、前
記平均径(D)との比(L/D)としては、小さくとも
3(即ち、3以上)が好ましく、小さくとも5(即ち5
以上)がより好ましい。なお、前記比(L/D)の上限
は、特に制限はないが、100程度が選択される。ま
た、本発明においては、前記比(L/D)として、前記
数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又は後述の
実施例において採用した該比(L/D)の値を下限と
し、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値又
は後述の実施例において採用した該比(L/D)の値を
上限とする数値範囲も好ましい。
【0071】前記比(L/D)が3未満であると、摩耗
した加硫ゴムの表面に露出する長尺状気泡11による溝
を長くすることができず、またその容積を大きくするこ
とができないため、該加硫ゴムをタイヤのトレッド等に
用いる場合には、該タイヤの水排除性能を十分に向上さ
せることができない点で好ましくない。
【0072】本発明の加硫ゴムにおいては、長尺状気泡
11の平均径(D)(=保護層13の内径、図2参照)
としては、20〜500μmが好ましい。前記平均径
(D)が、20μm未満であると、該加硫ゴムをタイヤ
のトレッド等に用いても該タイヤの水排除性能が向上せ
ず、500μmを越えると、該加硫ゴムの耐カット性、
ブロック欠けが悪化し、また、該加硫ゴムをタイヤのト
レッド等に用いても該タイヤの乾燥路面での耐摩耗性が
悪化するため、いずれも好ましくない。
【0073】本発明の加硫ゴムにおける平均発泡率Vs
としては、3〜40%が好ましく、5〜35%がより好
ましい。また、本発明においては、前記平均発泡率Vs
として、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限
値又は後述の実施例における平均発泡率Vsの値を下限
とし、前記数値範囲のいずれかの下限値若しくは上限値
又は後述の実施例における平均発泡率Vsの値を上限と
する数値範囲も好ましい。
【0074】前記平均発泡率をVsとは、長尺状気泡1
1の発泡率を意味し(図7に示すように、球状の気泡1
7が形成されている場合には、球状の気泡17の発泡率
Vs1 と長尺状気泡11の発泡率Vs2 との合計を意味
し)、次式により算出できる。 Vs=(ρ0 /ρ1 −1)×100(%)
【0075】ここで、ρ1 は、加硫ゴム(発泡ゴム)の
密度(g/cm3 )を表す。ρ0 は、加硫ゴム(発泡ゴ
ム)における固相部の密度(g/cm3 )を表す。な
お、前記加硫ゴム(発泡ゴム)の密度及び前記加硫ゴム
(発泡ゴム)における固相部の密度は、エタノール中の
重量と空気中の重量を測定し、これから算出した。
【0076】前記平均発泡率Vsが3%未満であると、
発生する水膜に対し、前記長尺状気泡による凹部12の
体積の絶対的な不足により十分な水排除機能が得られ
ず、該加硫ゴムの氷上性能を十分に向上させることがで
きない可能性がある。一方、前記平均発泡率Vsが40
%を越えると、前記氷上性能を向上させることはできる
ものの、該加硫ゴム中の気泡の量が多くなり過ぎるため
に、該加硫ゴムの破壊限界が大巾に低下し、耐久性の点
で好ましくない。なお、前記平均発泡率Vsは、前記発
泡剤の種類、量、組み合わせる前記発泡助剤の種類、
量、樹脂の配合量等により適宜変化させることができ
る。
【0077】本発明においては、前記平均発泡率Vsが
3〜40%であると共に、長尺状気泡11が前記平均発
泡率Vsにおける30%以上を占めることが好ましく、
60%以上を占めることがより好ましい。換言すれば、
長尺状気泡11が加硫ゴム中の全気泡の少なくとも30
体積%(30体積%以上)を占めることが好ましく、長
尺状気泡11が加硫ゴム中の全気泡の少なくとも60体
積%(60体積%以上)を占めることがより好ましい。
なお、長尺状気泡11の体積比率を上げる観点からは、
前記ゴム組成物中に発泡剤を添加せずに発泡剤含有繊維
中でのみ発泡反応を生じさせると、前記長尺状気泡11
の体積比率がほぼ100体積%となり好ましい。前記比
率が30%未満であると、長尺状気泡11による排水路
が少ないために、水排除機能が十分でないことがある。
【0078】前記発泡剤含有繊維を含むゴム組成物を加
硫して得られた加硫ゴムにおいては、長手方向に垂直な
断面形状がほぼ円形であるカプセル状の長尺状気泡が潰
れのない状態で効率良く形成されている。該カプセル状
の長尺状気泡は前記ミクロな排水溝として機能し得るた
め、該加硫ゴムは、前記氷上性能に極めて優れる。
【0079】本発明の加硫ゴムは、各種分野において好
適に使用することができるが、氷上でのスリップを抑え
ることが必要な構造物に特に好適に使用でき、空気入り
タイヤのトレッド等に最も好適に用いることができる。
前記氷上でのスリップを抑えることが必要な構造物とし
ては、例えば、更生タイヤの貼り替え用のトレッド、中
実タイヤ、氷雪路走行に用いるゴム製タイヤチェーンの
接地部分、雪上車のクローラー、靴底等が挙げられる。
【0080】(タイヤ)本発明のタイヤは、少なくとも
トレッドを有してなり、少なくとも該トレッドが前記本
発明の加硫ゴムを含んでなる限り、他の構成としては特
に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ
る。換言すれば、前記本発明のゴム組成物を用い、これ
を加硫することにより該トレッドを形成したタイヤが、
本発明のタイヤである。
【0081】本発明のタイヤの一例を図面を用いて説明
すると以下の通りである。図3に示すように、本発明の
タイヤ4は、一対のビード部1と、該一対のビード部1
にトロイド状をなして連なるカーカス2と、該カーカス
2のクラウン部をたが締めするベルト3と、トレッド5
とを順次配置したラジアル構造を有する。なお、トレッ
ド5以外の内部構造は、一般のラジアルタイヤの構造と
変わりないので説明は省略する。
【0082】トレッド5には、図4に示すように、複数
本の周方向溝7及びこの周方向溝7と交差する複数本の
横溝8とによって複数のブロック9が形成されている。
また、ブロック9には、氷上でのブレーキ性能及びトラ
クション性能を向上させるために、タイヤの幅方向(B
方向)に沿って延びるサイプ10が形成されている。
【0083】トレッド5は、図5に示すように、直接路
面に接地する上層のキャップ部5Aと、このキャップ部
5Aのタイヤの内側に隣接して配置される下層のベース
部5Bとから構成されており、いわゆるキャップ・ベー
ス構造を有する。
【0084】キャップ部5Aは、図2及び図6に示すよ
うに、長尺状気泡11を無数に含んだ発泡ゴムであり、
ベース部5Bには発泡されていない通常のゴムが使用さ
れている。前記発泡ゴムが、前記本発明の加硫ゴムであ
る。長尺状気泡11は、図2に示すように、実質的にタ
イヤの周方向(A方向)に配向されており、その周囲が
前記発泡剤含有繊維中の樹脂による保護層13で被覆さ
れている。なお、本発明においては、長尺状気泡11の
配向の向きは、総てタイヤの周方向となっていなくても
よく、一部タイヤの周方向以外の向きになっていてもよ
い(図5参照)。
【0085】タイヤ4は、その製造方法については特に
制限はないが、例えば、以下のようにして製造すること
ができる。即ち、まず、前記本発明のゴム組成物を調製
する。このゴム組成物においては、前記発泡剤含有繊維
を一方向に配向させておく。該ゴム組成物を、生タイヤ
ケースのクラウン部に予め貼り付けられた未加硫のベー
ス部の上に貼り付ける。このとき、前記発泡剤含有繊維
の配向の方向を、タイヤの周方向と一致させておく。そ
して、所定のモールドで所定温度、所定圧力の下で加硫
成形する。その結果、前記本発明のゴム組成物が加硫さ
れてなる本発明の加硫ゴムで形成されたキャップ部5A
を、加硫されたベース部5B上に有してなるタイヤ4が
得られる。
【0086】なお、このとき、未加硫のキャップ部がモ
ールド内で加熱されると、前記発泡剤含有繊維中で発泡
剤による発泡が生じ、ガスが生ずる。一方、該発泡剤含
有繊維中の樹脂は溶融(又は軟化)し、その粘度(溶融
粘度)がゴムマトリクスの粘度(流動粘度)よりも低下
することにより、該発泡剤含有繊維内で生じたガスは、
溶融して相対的に粘度が低下した該発泡剤含有繊維の内
部に留まる。図2に示すように、冷却後のキャップ部5
Aは、実質的にタイヤの周方向に配向した長尺状気泡1
1が多数存在する発泡率に富む加硫ゴムとなっている。
この長尺状気泡11の含有率に富む加硫ゴムは、前記本
発明の加硫ゴムである。
【0087】次に、タイヤ4の作用について説明する。
氷雪路面上でタイヤ4を走行させる。タイヤ4と前記氷
雪路面との摩擦により、タイヤ4のトレッド5の表面が
摩耗する。すると、図6に示すように、長尺状気泡11
による溝状の凹部12が、トレッド5のキャップ部5A
の接地面に露出する。一方、タイヤ4を走行させると、
タイヤ4とその接地面との間の接地圧及び摩擦熱によ
り、タイヤ4と氷雪路面との間に水膜が生じる。この水
膜は、トレッド5のキャップ部5Aの接地面に露出する
無数の凹部12により、素早く排除され、除去される。
このため、タイヤ4は、前記氷雪路面上でもスリップ等
することが少ない。
【0088】タイヤ4においては、実質的にタイヤの周
方向に配向している溝状の凹部12が効率的な排水を行
う排水溝として機能する。凹部12は、その表面(周
囲)に耐剥離性に優れる保護層13が形成されているた
め、高荷重時でも潰れ難く、高い排水溝形状保持性、水
排除性能を保持しており、この凹部12により、タイヤ
4の回転方向後側への水排除性能が向上するため、タイ
ヤ4は、氷上ブレーキ性能に特に優れる。タイヤ4にお
いては、保護層13の引っ掻き効果によって横方向の氷
上μが向上し、氷上ハンドリングが良好である。
【0089】なお、タイヤ4のトレッド5の原料として
用いた前記本発明のゴム組成物における前記ゴムマトリ
ックス中に、発泡率を調整するために前記発泡剤を含有
させた場合には、該トレッド5のキャップ部5Aは、図
7に示すように、長尺状気泡11の外に球状の気泡17
をも有する。このタイヤ4を走行させると、長尺状気泡
11による凹部12の外、球状の気泡17による凹部1
8も表面に露出する。しかし、氷上での摩擦係数につい
ては、長尺状気泡11の体積比率を大きくした方が有利
である。
【0090】本発明のタイヤは、いわゆる乗用車用のみ
ならず、トラック・バス用等の各種の乗物に好適に適用
できる。
【0091】
【実施例】以下に、本発明の実施例を説明するが、本発
明は、これの実施例に何ら限定されるものではない。
【0092】(実施例1〜10及び比較例1〜4) −発泡剤含有繊維の調製− 実施例1〜10及び比較例1〜3では、デカリン400
重量部に対して、ポリエチレン(HDPE、重量平均分
子量=2.1×105 、Dupont社製DSCによ
り、昇温速度10℃/分、サンプル重量約5mgの条件
にて測定した融点ピーク温度(融点)=132℃)10
0重量部を添加し、デカリンを120℃に加熱しながら
攪拌し、均一な溶液とした。この溶液中に発泡剤(粒子
状、平均粒径=4μm、アゾジカルボンアミド(ADC
A))を表1及び表2に示す所定量添加して、更に20
分間攪拌を続けた。こうして、該発泡剤が均一に分散し
た紡糸原液を調製した。
【0093】この紡糸原液を、120℃に設定したスク
リュー型押出機に装着した直径0.3mmの紡糸ノズル
から押し出して糸状体としたものを、水浴中(湿式)で
急冷固化した後、メタノール浴中で脱溶媒を行い、巻き
取り機にて巻き取り、発泡剤含有繊維(ポリエチレン
製)を製造した。
【0094】比較例4では、アセトン/ベンゼン混合液
(重量比60/40)220重量部に対して、ポリ塩化
ビニル(PVC、Dupont社製DSCにより、昇温
速度10℃/分、サンプル重量約5mgの条件にて測定
した融点ピーク温度(融点)=203℃)100重量部
を添加し、90℃に加熱しながら攪拌し、均一な溶液と
した。この溶液中に発泡剤(粒子状、平均粒径=4μ
m、アゾジカルボンアミド(ADCA))を50重量部
添加して、更に10分間攪拌を続けた。こうして、該発
泡剤が均一に分散した紡糸原液を調製した。
【0095】この紡糸原液を、90℃に設定した押出機
に装着した直径0.2mmの紡糸ノズルから押し出して
糸状体としたものを、150℃に設定した熱風筒中を通
過させることにより脱溶媒を行い、巻き取り機にて巻き
取り、発泡剤含有繊維(ポリ塩化ビニル製)を製造し
た。
【0096】得られた各発泡剤含有繊維について、以下
のようにして平均径を測定した。結果を表1及び表2に
示した。 <平均径>得られた発泡剤含有繊維について無作為に2
0か所選択し、光学顕微鏡を用いてその直径を測定し、
その平均値を「平均径」とした。
【0097】次に、表1及び表2に示す組成の各ゴム組
成物を製造した。得られた各ゴム組成物を用いてタイヤ
のトレッドを形成し、通常のタイヤ製造条件に従って各
試験用のタイヤを製造した。
【0098】このタイヤは、乗用車用ラジアルタイヤで
あり、そのタイヤサイズは185/70R13であり、
その構造は図3に示す通りである。即ち、一対のビード
部1と、該一対のビード部1にトロイド状をなして連な
るカーカス2と、該カーカス2のクラウン部をたが締め
するベルト3と、トレッド5とを順次配置したラジアル
構造を有する。
【0099】このタイヤにおいて、カーカス2のコード
は、タイヤの周方向に対し90°の角度で配置され、そ
の打ち込み数は50本/5cmである。タイヤ4のトレ
ッド5には、図4に示す通り、タイヤの幅方向に4個の
ブロック9が配列されている。ブロック9のサイズは、
タイヤの周方向の寸法が35mmであり、タイヤの幅方
向の寸法が30mmである。ブロック9に形成されてい
るサイプ10は、幅が0.4mmであり、タイヤの周方
向の間隔が約7mmになっている。なお、このタイヤ4
のトレッド5には、長尺状気泡11が含まれており、そ
の長手方向が実質的にタイヤの周方向(A方向)に配向
されており、その周囲が発泡剤含有繊維における樹脂に
よる保護層13で被覆されている。
【0100】なお、各ゴム組成物の加硫時における加硫
最高温度は、該ゴム組成物中に熱電対を埋め込んで測定
したところ総て175℃であった。前記発泡剤含有繊維
中の樹脂の融点は、比較例4を除き、前記タイヤの加硫
時における加硫最高温度よりも低くなっていた。このた
め、タイヤの加硫温度がトレッドの最高温度に達するま
での間に、前記発泡剤含有繊維中の樹脂の粘度は、前記
ゴムマトリックスの粘度よりも低くなった。
【0101】また、前記発泡剤含有繊維の前記加硫最高
温度における粘度(溶融粘度)は、コーンレオメーター
を用いて測定(ゴムのトルクがMaxをむかえたら終了
とし、トルクをゴム粘度として、トルクの変化と発泡圧
力の変化を測定)したところ、6であった。ただし、比
較例4は前記加硫最高温度において溶融しなかったた
め、該粘度は測定できない程、高かった。
【0102】前記ゴムマトリックスの前記加硫最高温度
における粘度(流動粘度)は、モンサント社製コーンレ
オメーター型式1−C型を使用し、温度を変化させなが
ら100サイクル/分の一定振幅入力を与えて経時的に
トルクを測定し、その際の最小トルク値を粘度としたと
ころ(ドーム圧力0.59MPa、ホールディング圧力
0.78MPa、クロージング圧力0.78MPa、振
り角±5°)、11であった。
【0103】得られた各試験用のタイヤについて、長尺
状気泡の平均径、ゴム硬度、精錬作業性、氷上性能につ
いて評価した。その結果を表1及び表2に示した。
【0104】なお、トレッド5における発泡ゴムについ
ての発泡率は、既述の計算式より算出(測定)した。ま
た、長尺状気泡と球状気泡との体積比は、以下のように
して測定した。即ち、タイヤのトレッドからセンター部
ブロック片を切り取り、更に、タイヤの周方向に対して
垂直に、かつトレッド表面に対して垂直に、鋭利なカミ
ソリで観察面を切り出す。このカットサンプルを走査型
電子顕微鏡(SEM)で、倍率100倍にて写真撮影を
行う。なお、写真撮影場所については無作為に抽出す
る。次に、この写真中の長尺状気泡と球状の気泡とを分
別し、それぞれの面積を測定して、ある一定面積内の長
尺状気泡と球状の気泡との面積比を算出する。以上の測
定を10回行い、面積比の平均を求め、その値を長尺状
気泡と球状の気泡との体積比とした。
【0105】<長尺状気泡の平均径>該加硫ゴムを、含
まれる発泡剤含有繊維の長手方向に垂直、及び、平行
に、それぞれ鋭利なカミソリで切断した面を観察面とし
た。この観察面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて
100倍倍率で写真撮影した。なお、このときの気泡の
状態を表1に示した。そして、前記写真から長尺状気泡
の断面積を測定し、次式、長尺状気泡の平均径=(長尺
状気泡の断面積÷π)0.5 ×2、により、長手方向に垂
直な断面形状が円形であると仮定した際の直径を算出し
た。これを10回繰り返し、その平均値を求め、該平均
値を長尺状気泡の平均径とした。
【0106】<硬度>得られたタイヤのトレッドにおけ
る各加硫ゴムのサンプルを、スプリング式硬さ試験機
(A型)を用い、JIS K6301−1995に準拠
し、室温(24℃)にて測定した。
【0107】<精錬作業性(加硫前)> 以下の○、×、△の3段階の基準にて評価した。 ○: 問題ないレベル。 △: 一部に繊維の分散不良(径が5mm未満の塊)が少
量観られる ×: 繊維の塊(径が5mm以上の塊)が複数箇所観られ
【0108】<氷上性能>タイヤを国産1600CCク
ラスの乗用車に装着し、該乗用車を、一般アスファルト
路上に200km走行させた後、氷上平坦路を走行さ
せ、時速20km/hの時点でブレーキを踏んでタイヤ
をロックさせ、停止するまでの距離を測定した。結果
は、距離の逆数を比較例1のタイヤを100として指数
表示した。なお、数値が大きいほど氷上性能が良いこと
を示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】表1及び表2において、配合内容の欄にお
ける数値(量)は、「ブタジエンゴム」は、シス−1,
4−ポリブタジエン(日本合成ゴム(株)製、BR0
1)を意味する。「カーボンブラック」は、旭カーボン
(株)製、カーボンN220を意味し、「シリカ」は、
日本シリカ工業(株)製、ニプシル−VN3を意味す
る。「老化防止剤」は、大内新興化学工業(株)製、ノ
クラック6Cを意味する。上段の「加硫促進剤」は、ジ
ベンゾチアジルジスルフィドを意味し、下段の「加硫促
進剤」は、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリル
−スルフェンアミドを意味する。「発泡剤(ADC
A)」は、アゾジカルボンアミドを意味する。「発泡助
剤A」は、ベンゼンスルフィン酸亜鉛(大塚化学(株)
製)を意味し、「発泡助剤B」は、尿素/ステアリン酸
(85:15)ブレンド物を意味する。「ポリエチレン
繊維」は、発泡剤が含まれていないポリエチレン単独で
形成された繊維を意味し、比較例1の「発泡剤含有繊
維」の欄に記載された特性を有する。「PE」は、ポリ
エチレンを意味し、「PVC」は、ポリ塩化ビニルを意
味する。「長尺状気泡:球状気泡」は、長尺状気泡と球
状の気泡との体積比を意味する。
【0112】表1及び表2の結果から、以下のことが明
らかである。即ち、発泡剤含有繊維を用いない比較例1
のコントロールタイヤの氷上性能に比べ、該発泡剤含有
繊維を用いた本発明のタイヤの氷上性能のレベルは向上
している。
【0113】また、該発泡剤含有繊維を用いたとして
も、該発泡剤含有繊維における発泡剤の含有量が10重
量部未満であると(比較例2)、該発泡剤から発生する
ガスの量が少ないため、加硫ゴムであるタイヤのトレッ
ドにおいて、ミクロな排水溝として機能し得る長尺状気
泡が形成されず、単に泡が分散した状態の気泡が多く形
成され、全発泡における該長尺状気泡の占める割合が低
かった。
【0114】一方、該発泡剤含有繊維に含まれる発泡剤
の含有量が150重量部を越えると(比較例3)、樹脂
に対して異物である発泡剤の量が多くなり過ぎ、発泡剤
含有繊維の紡糸中に糸切れが多発し、発泡剤含有繊維が
製造できなかった。
【0115】これに対し、該発泡剤含有繊維における発
泡剤の含有量が10〜150重量部の範囲内にある実施
例1〜4では、これらの問題は観られず、加硫ゴムであ
るタイヤのトレッドにおいて、ミクロな排水溝として機
能し得る長尺状気泡11が形成されていた(図6及び7
参照)。
【0116】なお、実施例1〜4では、該発泡剤の含有
量の増加に伴う、全発泡における長尺状気泡の占める割
合の向上及び氷上性能の向上が観られた。特に実施例4
では、発泡率を他の実施例と同等に保ちつつ全発泡にお
ける長尺状気泡の占める割合を100%とすることがで
きた。
【0117】また、発泡率をほぼ同等に保ちつつ、ゴム
成分100重量部に対する発泡剤含有繊維の配合量を互
いに変更した実施例5〜10では、該配合量が、1〜6
0重量部である実施例5〜8において更なる効果が認め
られた。なお、発泡剤含有繊維の配合部数が少ないもの
については、コントロールタイヤに対してポリエチレン
部数を同等以上とするために、即ち樹脂部数の影響を排
除するために、適宜ポリエチレン単体繊維をゴム組成物
中に配合した。
【0118】具体的には、実施例9の場合、発泡剤含有
繊維中の発泡剤の含有量は高いものの、該発泡剤含有繊
維のゴム組成物中への配合量が少ないため、球状の気泡
に対する長尺状気泡の割合を十分に大きくすることがで
きず、結果として氷上性能を十分には向上させることが
できなかった。また、実施例10の場合、発泡剤含有繊
維の量が多いため、該発泡剤含有繊維のゴム成分中への
分散性が十分でなく、トレッドの硬度も高くなり、氷上
性能はむしろ低下する傾向にある。なお、発泡剤含有繊
維の量が30重量部よりも多い場合において、発泡剤含
有繊維中の発泡剤の量を多くすると、実施例には示して
いないが、タイヤとしての発泡率が極めて高くなり、耐
久性の問題が生ずることが推測される。
【0119】一方、融点が高く、ゴム組成物の温度が加
硫最高温度に達するまでの間にその粘度がゴムマトリッ
クスの粘度よりも低くならないポリ塩化ビニル(PV
C)を含む発泡剤含有繊維を用いた比較例4では、該発
泡剤含有繊維が溶融せず、該発泡剤含有繊維中の一部の
発泡剤は発泡反応を起こしたものの、微細気泡が該発泡
剤含有繊維中に存在するだけで、長尺状気泡が形成され
ず、発泡率が低く、比較例4のタイヤの氷上性能は、該
発泡剤含有繊維を用いた本発明のタイヤに比べて低いレ
ベルであった。
【0120】
【発明の効果】本発明によると、前記従来における諸問
題を解決することができる。また、本発明によると、前
記氷雪路面上に生ずる水膜の除去能力に優れ、前記氷雪
路面との間の摩擦係数が大きく、前記氷上性能に優れた
タイヤを提供することができる。また、本発明による
と、前記氷雪路面上でのスリップを抑えることが必要な
構造物、例えば前記タイヤのトレッド等に好適で、優れ
た氷上性能を有する加硫ゴムを提供することができる。
更に、本発明によると、前記加硫ゴムの原料等として好
適に使用できるゴム組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、発泡剤含有繊維の配向を揃える原理を
説明する説明図である。
【図2】図2は、本発明の加硫ゴムの断面概略説明図で
ある。
【図3】図3は、本発明のタイヤの一部断面概略説明図
である。
【図4】図4は、本発明のタイヤの周面の一部概略説明
図である。
【図5】図5は、本発明のタイヤのトレッドの一部断面
概略説明図である。
【図6】図6は、本発明のタイヤの摩耗したトレッドの
一例を示す一部断面拡大概略説明図である。
【図7】図7は、本発明のタイヤの摩耗したトレッドの
一例を示す一部断面拡大概略説明図である。
【符号の説明】
1 一対のビード部 2 カーカス 3 ベルト 4 タイヤ 5 トレッド 5A キャップ部 5B ベース部 6 加硫ゴム 6A 加硫したゴムマトリックス 7 周方向溝 8 横溝 9 ブロック 10 サイプ 11 長尺状気泡 12 凹部 13 保護層 14 発泡剤含有繊維 15 ゴムマトリックス 16 口金 17 球状の気泡 18 凹部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 7/00 C08L 7/00 9/00 9/00

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 天然ゴム及びジエン系合成ゴムから選ば
    れた少なくとも1種からなるゴム成分を含むゴムマトリ
    ックスと、発泡剤含有繊維とを含有してなるゴム組成物
    であって、該発泡剤含有繊維が、加硫時に該ゴム組成物
    の温度が加硫最高温度に達するまでの間にその粘度が前
    記ゴムマトリックスの粘度よりも低くなる樹脂と、該樹
    脂100重量部に対して10〜150重量部の発泡剤と
    を含有してなることを特徴とするゴム組成物。
  2. 【請求項2】 樹脂が結晶性高分子を含んでなり、その
    融点が高くとも190℃である請求項1に記載のゴム組
    成物。
  3. 【請求項3】 結晶性高分子がポリエチレンである請求
    項2に記載のゴム組成物。
  4. 【請求項4】 発泡剤含有繊維中の樹脂の量が、ゴム成
    分100重量部に対して0.5〜30重量部である請求
    項1から3のいずれかに記載のゴム組成物。
  5. 【請求項5】 請求項1から4のいずれかに記載のゴム
    組成物を加硫して得られ、長尺状気泡を有してなること
    を特徴とする加硫ゴム。
  6. 【請求項6】 発泡率が3〜40%である請求項5に記
    載の加硫ゴム。
  7. 【請求項7】 1対のビード部と、該ビード部にトロイ
    ド状をなして連なるカーカスと、該カーカスのクラウン
    部をたが締めするベルト及びトレッドを有してなり、少
    なくとも前記トレッドが請求項5又は6に記載の加硫ゴ
    ムを含んでなることを特徴とするタイヤ。
  8. 【請求項8】 長尺状気泡がタイヤの周方向に配向され
    た請求項7に記載のタイヤ。
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