JPH1148697A - エンボス化粧材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】粗面化された有色の基材面に絵付けを行い高意
匠性の化粧材を提供する。 【解決手段】着色された木粉等の粒状物を混入してなる
粗面な着色熱可塑性樹脂基材１の表面に、２値化画像、
あるいは連続階調画像を再現する凹陥部２をエンボッシ
ング等の方法で形成し、この凹陥部２にワイピング等の
方法でインキ３を充填する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、粗面な着色シート
乃至は板を基材としたエンボス化粧材に関する。

【０００２】

【従来の技術】内装材等に使用される化粧シートの基材
の表面は一般に平滑であって印刷適正があるが、逆に基
材の表面を粗面にして特異な質感を狙った化粧紙シート
がある。特開平９−５７８６７号公報には、塩化ビニル
樹脂に木粉が配合された樹脂組成物に着色ペレットを配
合し、板状に熱成型する成型時の着色ペレットの流れの
流紋を利用して木目模様を付けた板状樹脂成型品の製造
方法が提案されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかるに、特開平９−
５７８６７号公報に提案されている板状樹脂成型品は、
木粉を混入することにより表面が粗面になっているため
通常の印刷の適用が難しいという問題がある。そのため
に上記のような板状樹脂成型品成型時に絵付けする製造
方法が提案されているが、単調な絵柄になり易いという
問題があり、優れた表面の質感を生かした高意匠性のあ
る化粧シートにすることが難しいという問題がある。ま
た上記の絵付け方法では絵柄もロット間で安定しないと
いう問題がある。本発明は、前述の問題点に鑑みてなさ
れたもので、粗面化された基材上に、表面の質感にマッ
チした着色画像を安定して形成し、付加価値の高い意匠
性を付与したエンボス化粧材の提供を目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に本発明では、粗面な着色熱可塑性樹脂からなる基材の
表面に、凹陥部を形成し、この凹陥部に着色材またはイ
ンキを充填して画像を形成する。

【０００５】

【発明の実施の形態】本発明を図面によりさらに詳細に
説明する。本発明によるエンボス化粧材に適用する絵柄
はヘアーラインや木目導管柄等の２値化画像に加えて、
網点から構成される連続階調のある木目、石目等の絵柄
にまで及ぶものである。図１は、本発明によるエンボス
化粧材１０の模式断面図である。本発明によるエンボス
化粧材１０の基材１は、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフ
ィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレ
ンテレフタレート、ポリエステル系熱可塑性エラストマ
ー等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポ
リスチレン、ポリカーボネート、ＡＢＳ，アクリル等の
熱可塑性樹脂等からなる基材の少なくとも表面層に木粉
等の木質系等の微粒子あるいはタルク等の無機質系の微
粒子を混入させたものであって、表面は、中心線平均粗
さ（ＪＩＳ−Ｂ−０６０１規定）で５〜１００μｍ程度
に粗面化されて、光の乱反射による艶消外観や粗い触感
により特異な質感を保有したものである。基材の形態と
しては、シート（フィルム）、或いは板状のものであ
り、厚さは任意である。このような基材１に対して、荒
い画線部からなる画像をフレキソ印刷、シルクスクリー
ン印刷等で印刷することは可能であるが、細線や網点に
よる連続階調の絵柄を通常のオフセット印刷やグラビア
印刷で印刷することはできない。そこで、本発明による
エンボス化粧材１０においては、図１に示すように、基
材１表面に微細な凹陥部２を設け、その中にワイピング
法によって着色料あるいはインキ（以下インキという）
３を充填して絵付けが行われる。図１（ａ）は木目の導
管柄が適用された場合の模式断面図である。粗面化され
た基材１の表面には、木目の導管に相当する凹陥部２が
Ｖ字状あるいはＵ字状に深くエンボスによって形成さ
れ、さらにワイピングによってインキ３が充填されて導
管柄が再現されている。導管柄に代わってさらに細いヘ
アーライン等の細線絵柄も絵付けすることができる。こ
れら、導管柄、ヘアーライン柄等は２値化画像として扱
われている。図１（ｂ）は、連続階調のある木目柄が適
用された場合の模式断面図である。粗面化された基材１
の表面には、凹陥部の面積が最終的に表現すべき色の光
学濃度と正の相関を持つ（正比例、対数に比例等）セル
状の凹陥部２が形成され、その中にワイピング等の手法
によってインキ３が充填されて着色され、該着色凹陥部
２の面積の大小により、色の光学濃度の濃淡が表現さ
れ、以て連続階調の木目柄が再現されている。すなわ
ち、網グラビアやオフセット等の印刷における面積階調
法と同様の階調再現である。この木目柄に対して図１
（ａ）の導管柄を組み合わせてもよい。

【０００６】以上の凹陥部２の形成方法は、本来限定さ
れず、機械切削、レーザー光による彫刻等、代表的に
は、後述するエンボス版を用いて加熱加圧状態でエンボ
スすることによって形成され、凹陥部２はそれぞれ独立
している。ただし、部分的には凹陥部２同志が連結して
いてもよい。以上の凹陥部２に対して、インキ３を充填
する代表的例としてワイピング法がる。これは、一旦基
材表面の全面にインキ（乃至は塗料）をコートし、次い
で凸状部上にコートされたインキをドクターブレード、
リバースロール、布、スポンジ等でかきとり、凹陥部２
にだけインキ３を残留させる方法である。このワイピン
グによって凹陥部２以外の粗面化されている基材面にも
多少のインキは残るが濃度的には微細であり、また基材
と類似色相のインキが使われるのでエンボス化粧材表面
の明度は下がるが製品としてはまったく不自然ではな
い。

【０００７】図２は、本発明によるエンボス化粧材の凹
陥部の拡大平面図である。図２（ａ）は、２値化画像と
して処理され、またセル（乃至網点）に量子化されてい
ない木目導管柄である。実際には導管の内側にも微妙な
濃淡があって、それまでも再現しようとすれば、連続階
調画像として処理すればよい。図２（ｂ）は、光学濃度
に連続階調のある絵柄の場合の網点拡大図であって、図
２（ｂ）の上図は、凹陥部２がオフセット印刷網点状に
配列した場合であり、下図は、ダイレクトグラビア印刷
網点状に配列した場合である。独立する凹陥部２の占め
る面積比は、オフセット網点配列の場合は４０％を、ま
たダイレクトグラビア印刷網点配列の場合は、６０％を
越えない範囲にあることが好ましい。それは、この限度
を過ぎると、凹陥部２同志が連結しやすくなって、ドク
ター等による安定したインキのかきとりができにくくな
るからである。この連続階調を表現する凹陥部２の平面
形状は、必ずしも印刷に使用される網点形状と同一であ
る必要はなく、長方形、亀甲形、円等の形状であっても
よい。図２（ｂ）における凹陥部２の大きさは、実際に
は目視出来ない程度の大きさ（通常１０〜３００μｍ程
度）にあるので、基材１の表面には、充填されたインキ
３の色の面積率の大小による濃度階調が形成される。従
って、本発明によるエンボス化粧材１０の表面は、着色
された基材１の基調色と、木粉のような混入された微粒
子の色と、ワイピングに使用されるインキ３の色とが混
合して、デリケートな落ちつきのある絵柄を創造するこ
とができる。

【０００８】図３は、本発明に使用するエンボス版Ｅの
製造方法の説明図である。先ず、連続階調のある原画を
もとに作成する場合について説明する。再現しようとす
る連続階調画像を製版スキャナから光電変換し、デジタ
ル信号化して読み取ってＣＥＰＳ（COLOR ELECTRONIC P
REPRESS SYSTEM）装置のハードディスクに取り込み、必
要に応じてレタッチ、切り抜き、階調補正等の前処理を
行っておく。この画像の階調は濃度範囲が０〜１００％
のフル階調であっても差し支えない。次に、一旦入力さ
れたこの画像をＣＥＰＳ装置のディスプレイに取り出
し、ディスプレイ上でエンボスシリンダーの円周に合わ
せたエンドレス画像になるよう画像処理を行う。このよ
うなエンドレス化の画像処理法としては、例えば、特公
昭６２−４５９７５号公報、特公平７−９７２０９号公
報、特開平７−３２５９０５号公報等に開示の公知の方
法に従えばよい。若し、既存のエンドレス原版を流用す
るのであれば、このデータを同じく入力しておいて、修
正がなければそのまま使用すればよい。次に、エンボス
版の製造であるが、これは、レジスト感光液をあらかじ
め塗布してある表面が銅のエンボスシリンダー上に、レ
ーザービーム走査による直接露光方式製版装置を使用し
て、前記エンドレス画像データを光学的に出力して、網
点画像を焼き付け、レジスト層を形成する。この場合、
オフセットあるいはグラビア網点配列のいずれによって
もよいが、オフセット網点配列で出力する場合には、フ
ル階調で画像濃度１００％の最シャドウ部分（最濃部）
を略６０％で出力し、図３、（１）とそのｘ−ｘ断面図
である図３、（２）に示すような略４０％のレジスト網
点４とそのレジスト層５が形成されるように焼き付け
る。またグラビア網点配列の場合では、図３には図示は
されていないが、略６０％のレジスト網点４となるよう
に焼き付ける。一方、フル階調で画像濃度０％の最ハイ
ライト部（最淡部）を１００％で出力し、図３、（１）
と図３、（２）に示すように画像１０〜２０％のレジス
ト網点４とそのレジスト層５を形成する。この最ハイラ
イト部の処理はオフセット網点配列とグラビア網点配列
の場合で区別はない。次に、エンボスシリンダー面の現
像、腐食を行うと、レジスト網点４によるレジスト層５
以外の部分が腐食されて凸状部６が形成され、それらが
集合したエンボス版Ｅが出来上がる。腐食は、通常のグ
ラビア製版で使用する塩化第２鉄水溶液等を用いる。凸
状部６の周辺の傾斜度、サイドエッチングの度合いは腐
食法によって変化させることができる。すなわち、網点
と版の凹凸との関係は、通常のグラビア印刷版とは逆に
画像部（網点部）が凸になる。最後にこの面にクロムメ
ッキを施してエンボス版Ｅを完成させる。無論、それほ
ど耐久性を要求しない場合は、クロムメッキは省略して
もよい。本発明に使用するエンボス版Ｅの製造は、以上
述べたエンボスシリンダーに画像データを直接出力する
フィルムレスの方法以外にも、従来のダイレクトグラビ
ア印刷方式によって、フィルムに出力された網点画像を
シリンダー面に焼き付けるようにしてもよい。

【０００９】図４は、エンボス版Ｅの製造工程における
トーンカーブの説明図であり、原画像濃度０−１００％
が製造工程で変換される変換度合いを図示したものであ
る。図４では、簡略にするため直線で描かれているが、
必要に応じて曲線とすることができる。このトーンカー
ブにおいて、は、レーザー出力の変換カーブである。
またレーザー出力にあたって、原画像にハイシャドウを
持たないもの、あるいはハイシャドウ部において重要な
デテールの無い場合は、で示すトーンカーブを採用し
てもよい。なお、絵付け可能な絵柄は２値化された木目
導管、ヘアーライン等のパターンのほか連続階調のある
木目柄、石目柄、布目柄、レザー柄、抽象柄等広範囲に
及ぶものである。

【００１０】尚、本発明による化粧材は、そのままで或
いは必要に応じて、さらに任意の素材を裏打ちした上
で、壁、床、天井等の建築物の内装材、扉、窓枠、手摺
等の建具、家電製品の筐体、箪笥等の家具、箱等の容
器、車輌内装材、船舶内装材等の用途に用いられる。

【実施例】本発明によるエンボス化粧材１０を次の仕様
と方法に従って作成したところ、着色された基材１の色
と、木粉の色と、ワイピングに使用したインキ３の色と
が類似トーンで混合した落ちついた色合いの木目柄が再
現され、これが基材の地肌の質感と相まって高意匠性の
化粧シートを得ることができた。 基材：ブラウンの木粉５０重量％をライトブラウンの着
色ポリ塩化ビニル樹脂に混入した厚み０．１６ｍｍのシ
ート状基材 基材の表面粗さ： Ｒ_a ０．７μｍ 原画像：オーク柾目の木目柄 エンボス版の製造方法： ＣＥＰＳ； ＳＣＩＴＥＸ社製、ＰＲＩＳＭＡＸ レーザービーム露光装置； レーザーストリーム製版
装置（シンクラボラトリー社製） 出力網点配列とスクリーン線； オフセット、１７５線
／インチ 凹陥部の開口部最高面積、深度； ５３％、１５μｍ 採用したトーンカーブ； 図４参照 ワイピングインキの色調：ダークブラウン

【００１１】

【発明の効果】本発明によるエンボス化粧材によれば、
高範囲にわたる絵柄を、再現性のある安定した方法で粗
面化された基材の表面に形成することができ、基材の基
調色と基材に混入された微粒子の色と、ワイピングに使
用するインキの色とが混色して得られる落ちついた色合
いと、基材が本来有する質感を生かした高意匠性の化粧
シートを得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明によるエンボス化粧材の模式断面図

【図２】本発明によるエンボス化粧材の凹陥部の拡大平
面図

【図３】本発明に使用するエンボス版の製造方法の説明
図

【図４】エンボス版の製造工程におけるトーンカーブの
説明図

【符号の説明】

１ 基材 ２ 凹陥部 ３ インキ ４ レジスト網点 ５ レジスト層 ６ 凸状部 １０ 本発明によるエンボス化粧材 Ｅ 本発明に使用するエンボス版

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】粗面な着色熱可塑性樹脂からなる基材の表
   面に凹陥部が形成され、該凹陥部に着色材またはインキ
   が充填されて画像が形成されてなることを特徴とするエ
   ンボス化粧材。