JP4184711B2 - 木目柄を有する化粧材 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、建材製品の表面の装飾に利用される化粧材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より建材製品の装飾に用いられる化粧材として、様々なものが利用されている。このうち、パールインキ等の光輝性インキで印刷することにより光沢を有する化粧材は特に好まれ、良く使用されている。このような光沢を有する化粧材において濃淡階調を有するパターンを表現しようとする場合、グラビア印刷法で印刷されるのが通常である。グラビア印刷法は、グラビアシリンダ上にセルを形成し、このセルにインキを流し込み、シート等の基材にインキを転移させることにより印刷する方法である。グラビア印刷法としては、大きく分けて、網グラビア法、機械彫刻グラビア法のようなセル(網点)面積の大小で濃淡を表現する手法と、コンベンショナルグラビア法のようにセルの間口(面積)は一定とし、セルの深さで濃淡を表現する手法との2通りがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
光輝性顔料は鱗片状箔片であり、平均粒径も10〜30μm程度と大きい。そのため、光輝性インキを用いて印刷する場合、網グラビア法や機械彫刻グラビア法では、ハイライト部ではセルの面積が狭くなると共に深さが浅くなるため、ハイライト部では、セル内に顔料が充填不能となる。また、コンベンショナルグラビア法では、セルの間口は、ハイライト部であっても、シャドウ部と同様の広さとなるが、セルの深さが浅いため、やはり顔料はセルに充填されない。ハイライト部にインキが十分に充填されないと、被印刷材である基材上にインキが上手く転移せず、好ましい絵柄が得られないことになる。
【0004】
そこで、特開平8−146594号公報に開示されているようなセルの面積が均一なグラビア印刷版を用いて印刷を行った。しかし、大粒径の顔料を常に確実に基材上のハイライト部に転移することはできなかった。
【0005】
上記のような点に鑑み、本発明は、大粒径の光輝性顔料を基材上に上手く転移させることを可能とし、結果としてハイライト部において好ましい再現性を有する化粧材を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明では、化粧材の構成を、基材上に、光輝性顔料を含むインキから成り、光輝性を有すると共に、濃度に濃淡の階調を有する光輝性絵柄層が形成されるとともに、当該光輝性絵柄層上に光輝性顔料以外の通常顔料を含む通常絵柄層を有し、前記光輝性絵柄層は、セル面積が一定の印刷版を用いて光輝性インキを印刷することにより、前記印刷版のセルの単位面積当たりの個数密度の大小によって濃淡を変化させて木の照りを表現し、前記通常絵柄層は、セル数が単位面積当たり一定の印刷版を用いて通常インキを印刷することにより、前記印刷版のセルの面積の大小によって濃淡を変化させて木目模様を表現するものとしたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、光輝性顔料を含むインキで形成される光輝性絵柄層を有し、光輝性絵柄層におけるインキセルの大きさを均一にして単位面積当たりの個数密度で濃淡を表現するようにしたので、大粒径の光輝性顔料を基材上に上手く転移させることを可能とし、結果としてハイライト部において好ましい再現性を得ることが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
まず、本発明第1の実施形態に係る化粧材について説明する。第1の実施形態では、特開平8−146594号に開示されているグラビア印刷版を用いる。図1は、特開平8−146594号開示のグラビア印刷版のセル配列を表面から見た状態を示す図である。図1に示すように、第1の実施形態で使用するグラビア印刷版では、セルの面積は一定であり、シャドウ部(高濃度部)、中間部、ハイライト部(低濃度部)では、単位面積当たりのセルの個数、すなわちセル密度が異なっている。
【0009】
図1に示すグラビア印刷版はセル面積は一定でセルの分布密度変化によって濃度階調を再現するFM的配列を示している。図1で示すセル配列は一定面積のセルを設ける頻度、すなわち、セルの分布密度(配列周期の変調)によって濃淡を再現しようとするいわゆるFrequency Moduration的概念に基づくもので以降FM変調方式と称する。この場合のセルの配列位置は少なくともハイライト部、中間部においてランダムであることが特徴である。このセルの配列座標系(x,y)におけるx軸方向の周期をPx,y軸方向の周期をPyとすると、セルの2次元配列周期(Px,Py)は一定値を持たず、Px,Pyは所定の確率密度関数f(Px),f(Py)に従う確率変数となっている。この関数の例としては正規分布(Gauss分布)、二項分布、Poisson分布等があり、これらの中から適宜選んで使用すればよい。ただしf(Px),f(Py)は同じ関数系にすることが好ましい。即ちセル配列周期Px,Pyは、確率密度関数f(Px),f(Py)の平均値(FM変調で言うところの搬送波の周期に対応)mx,myを中心とし、標準偏差σx,σyで評価される所定の範囲に分布している。しかもその分布の仕方はランダムである。
【0010】
シャドウ部に近づくにつれてセル1の分布密度は大きくなり、しかも上記のランダムな配列が続くのでセル同士が接触したりあるいは重なったりするようになり、セルの周辺に区画された土手2の形成が難しくなる。そこで、本発明においては、シャドウ部におけるセルの配列に次のような制約を設け、シャドウ部は次のいずれであってもよいこととした。
【0011】
(1)図1に示すように、シャドウ部の極限(グラデーションの最終点)は所定の土手巾をもってセルが整列した状態とする。すなわちシャドウ部に入ってからセルのFM的な配列が次第にAM配列に移行する。
【0012】
(2)図2に示すように、所定の大きさを有する集合領域3を設け、集合領域3同士は所定の間隔以上には接近しないようにランダムに配置し、セルはこの集合領域内に於いてのみランダムに分布させる。従って極限においては、セルはこの集合領域3を埋めつくし、しかも集合領域は図2のように細密充填した状態となる。ただし、再現すべき濃度階調によってはシャドウ部を上記のように極限状態にする必要はなく、シャドウ部をセル同士がまだ接触しない密度の状態あるいは集合領域3がランダムな配置をしている段階で終わらせてもよい。かかる場合はフラットな階調再現しかできないがハイライト部、中間調部の主要なデテールを再現するには効果的である。
【0013】
本発明による化粧材は、上述のようなグラビア印刷版を利用して、光輝性インキを用いて印刷を行うことにより得られる。具体的には、上述のグラビア印刷版の版面に光輝性インキを供給し、ドクターブレードで光輝性インキをかきとって光輝性インキをセルに充填し、続いてこの光輝性インキを被印刷物である基材に印圧をかけて転移することにより得られることになる。
【0014】
本発明では、光輝性インキの粒子がハイライト部においても、セル内に充填されるように、セルの面積を一定としている。そのため、セルの大きさと粒子の直径の関係を規定する必要がある。本実施形態では、セルの形状が円形である場合は、セルの直径が光輝性インキの平均粒径よりも大きくなるように規定し、セルの形状が多角形である場合は、セル形状の対角線長が光輝性インキの平均粒径よりも大きくなるように規定している。ここで、光輝性インキの平均粒径は、顔料粒子の外接球直径あるいは対角線長LMAXで評価する。
【0015】
基材に光輝性インキを用いて印刷することにより得られる化粧材の断面図を図3に示す。図3において、10は化粧材、11は基材、12は光輝性インキによる光輝性絵柄層を示す。図3に示すような化粧材10は表面から見ると、ハイライト部に上手く光輝性インキが転移するため、ハイライト部において好ましい再現性が得られる。
【0016】
上記のような手法により、ハイライト部においても好ましい光沢を有する化粧材が得られた。しかし、上記のような光沢を有する絵柄と組み合わせて通常の絵柄を印刷しようとした場合、上記図1、図2に示したグラビア印刷版では、次のような問題が生じる。
【0017】
図1、図2に示したグラビア印刷版は、上述のようにセルの分布がランダムである。そのため、光輝性インキについては、元来、光輝いてまぶしく、ムラ状の視覚を生じるものであり、色ムラが目立ち難いため、問題ないが、通常の顔料の場合、色ムラが目立つことになる。一方、従来からのグラビア印刷版、すなわち網グラビア法、機械彫刻グラビア法、コンベンショナルグラビア法でふるくから用いられている、セル(網点)の位置は固定とし、各セルの面積または深さで転移させるインキ量を調整して濃淡を表現する印刷版を用いて印刷した場合、上述のように、光輝性顔料は十分にセルに充填することができないが、通常のインキは顔料の平均粒径が小さく、分散性も良いため、ハイライト部においても滑らかにインキが転移する。
【0018】
(第2の実施形態)
そのため、第2の実施形態では、図4に示すようなセル数が単位面積当たり一定の印刷版を用いて通常インキを印刷し、上記図1に示したセル面積が一定の印刷版を用いて光輝性インキを印刷するようにしたことを特徴としている。この結果得られる化粧材は図5に示すようなものとなる。図5において、20は化粧材、21は基材、22は光輝性インキによる光輝性絵柄層、23は通常インキによる通常絵柄層を示す。図5における基材21、光輝性絵柄層22は、図3に示した基材11、光輝性絵柄層12と同様のものである。図5に示すような化粧材20を表面から見ると、ハイライト部に上手く光輝性インキが転移するため、ハイライト部において好ましい再現性が得られ、さらに通常インキとの組合せにより意匠性の高い化粧材が得られる。特に通常絵柄として木目模様を用い、木の照りを光輝性絵柄で表現することにより好ましい化粧材が得られる。
【0019】
(光輝性顔料)
本発明で適用される顔料、基材等は、上記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、光輝性顔料としては、アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等が使用できる。
【0020】
(通常顔料)
また、通常顔料としては、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(或いは染料も含む)が使用できる。
【0021】
(基材の特徴)
基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS、アクリル樹脂等の樹脂シート、薄葉紙、上質紙、クラフト紙、和紙等の紙、硝子、ビニロン、ポリエステル、セルロース等の繊維からなる不織布、或いは織布、アルミニウム、鉄、銅等の金属箔等が使用できる。また、基材の形状としては、シート、板材、その他立体物とすることができる。
【0022】
(セルの形状)
上記図1、図2に示したグラビア印刷版におけるセルの平面的形状は必ずしも正四角形でなくともよく、長方形、菱形、多角形、円形、楕円、等であってもよい。セル1の対角線長あるいは直径は20〜400μm(もちろん光輝性顔料の粒径よりも大となる必要がある)、土手巾は10μm以上あることが望ましい。
【0023】
(製法)
以上述べた配列によるセルをグラビアシリンダーの上に形成するいわゆるグラビア製版法には公知のコンベンショナルグラビア製版法、ダイレクトグラビア製版法、レーザービーム彫刻法等が適用可能である。また版の材質も銅、鉄、セラミックス、合成樹脂等が適用でき、版の形状はシリンダー状でも平板状でもよい。フィルム原版を作成するにはスキャナーによって画像階調をデジタル化してパソコンに取り込み、アプリケーションソフトを利用して修正、集版を行い、イメージセッターで網点をフィルム出力するが、この出力にあたって前記のようなセル(網点)配列をさせるようなソフトを搭載すればよい。また、フィルムの代わりにシリンダー表面に塗布した感光性レジスト膜に対し光ビーム(レーザー光等)で走査しつつ前記セルパターンを露光(出力)し、現像してセル(網点)部分のレジスト膜を除去した後腐食させてセルを形成してもよい。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
まず、光輝性絵柄層を印刷するためのグラビア印刷版を作成する。具体的には、円筒形状のシリンダ(版胴)に感光剤を塗布した後、紫外線でレーザー露光する。これにより、網点が形成されることになる。本実施例では、光輝性絵柄層を印刷するための印刷版と、通常絵柄層を印刷するための印刷版の2つを作成することになる。光輝性絵柄層を印刷するための印刷版は、網点の大きさを均一にしているので、分布密度で調整する。通常絵柄層を印刷するための印刷版は、分布密度を一定とし、網点の大きさを変化させる。このようにして2つのグラビア印刷版が得られたら、これらを軸芯の回りに回転させる。さらに、長尺帯状の基材シートを、該版胴の周速度と同速度で供給する。なお、円筒形状の版胴としては、公知の凹版、グラビア版と基本的には、同様の材料、同様の構造、同様の製法によるものを用いれば良い。版の材料としては、通常は鉄、銅等の金属が用いられる。版胴の軸芯の回りの回転駆動は、通常の輸転式グラビア印刷機と同様な機構、方法を用いれば良い。基材シートの版胴への密着の為には、ゴム、金属等のローラ(圧着ローラ)で圧着する。また、基材シートの版胴からの剥離にもゴム、金属等のローラ(剥離ローラ)で押さえて剥離する。基材シートは、長尺・帯状のものを用いる。このような基材シートは巻出ロール(供給ロール)から巻き出して、印刷後は巻取りロール(排紙ロール)で巻き取る。
【0025】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によれば、基材上に、顔料を含むインキから成り、光輝性を有すると共に、濃度に濃淡の階調を有する光輝性絵柄層が形成されており、光輝性絵柄層はインキから成るセルの集合体から成り、光輝性絵柄層の濃度の濃淡は、インキで形成されるセルの単位面積当たりの個数密度の大小によって表現されており、かつ顔料は光輝性顔料とした構成としたので、大粒径の光輝性顔料を基材上に上手く転移させることを可能とし、結果としてハイライト部において好ましい再現性を得ることが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】光輝性インキの印刷に用いるグラビア印刷版のFM的セル配列であり、シャドウ部のセルを整列させたものを示す図である。
【図2】光輝性インキの印刷に用いるグラビア印刷版のFM的セル配列であり、シャドウ部のセルを非整列としたものを示す図である。
【図3】第1の実施形態による化粧材の断面図である。
【図4】通常インキの印刷に用いるグラビア印刷版のAM的セル配列を示す図である。
【図5】第2の実施形態による化粧材の断面図である。
【符号の説明】
1・・・セル(網点)
2・・・土手
10、20・・・化粧材
11、21・・・基材
12、22・・・光輝性絵柄層
23・・・通常絵柄層
Claims (3)
- 基材上に、光輝性顔料を含むインキから成り、光輝性を有すると共に、濃度に濃淡の階調を有する光輝性絵柄層が形成されるとともに、当該光輝性絵柄層上に光輝性顔料以外の通常顔料を含む通常絵柄層を有し、
前記光輝性絵柄層は、セル面積が一定の印刷版を用いて光輝性インキを印刷することにより、前記印刷版のセルの単位面積当たりの個数密度の大小によって濃淡を変化させて木の照りを表現し、
前記通常絵柄層は、セル数が単位面積当たり一定の印刷版を用いて通常インキを印刷することにより、前記印刷版のセルの面積の大小によって濃淡を変化させて木目模様を表現していることを特徴とする木目柄を有する化粧材。 - 請求項1において、前記光輝性顔料は、鱗片状箔片から成ることを特徴とする木目柄を有する化粧材。
- 請求項1または請求項2において、前記光輝性顔料の平均粒径がセル径よりも小さいことを特徴とする木目柄を有する化粧材。
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