JPH1170800A - 化粧材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】天然の木目が有する照りを再現した質感、高級
感、意匠性を有する化粧材を提供する。 【解決手段】 化粧材の熱可塑性樹脂からなるトップシ
ート表面に、数種のサイズからなり、それぞれが独立し
て、ランダムに配列し、しかも形状が早材部Ｓから晩材
部Ｂにかけて円形から細線状に連続的に変化する微細な
凸状素子若しくは凹状素子の集合体からなるエンボスパ
ターンを賦型する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、表面の照りが部分
的に異なり、さらに、場所によっては、照りが視角及び
光線入射角によって変化する外観を有し、特に天然木目
柄を再現するのに適した化粧材に関する。

【０００２】

【従来の技術】内装材、家具等の化粧材には天然の木目
柄が有する質感、意匠性等を再現すべくプラスチック仕
上げ面の艶を実際の艶に合わせるように加工した化粧材
が多用されている。従来の、ポリ塩化ビニルあるいはポ
リオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂層を表面に有する
化粧材が最終的に有する艶を制御するには、微細な凹凸
形状のあるエンボス版によってその凹凸形状を賦型し、
粗面化することが一般に行われている。該粗面での光の
拡散（乱反射）により、表面を所定の艶消し状態とする
ものであ。このエンボス版における凹凸形状の形成は、
サンドブラスト法によって、エンボスシリンダー表面に
投射材料を吹きつけるか、あるいはシリンダー表面にマ
ットクロムメッキを行うことによって行われている。ま
たエンボス版の表面をグラビア印刷シリンダー彫刻機に
よって刻印し、粗面化することも可能である。さらに、
化粧材加工の最終段階で、化粧材の表面に光拡散性微粒
子を混入した塗料を用いてマットＯＰをコートすること
によって艶を制御することがある。また、化粧材の表面
の艶の強弱は、エンボス版の表面あらさ（通常、ＪＩＳ
−Ｂ−０６０１規定のＲ_a （中心線平均あらさ）、Ｒ_Z
（十点平均粗さ）等によって評価される）によって、あ
るいはマットＯＰに混入する微粒子の粒度と添加量によ
って制御されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】天然の木目柄をよく観
察すると、早材部分と晩材部分とで照り（木材板表面の
光沢）が微妙に異なり、また、通常、晩材部（樹種によ
っては早材部）では見る角度及び光線の入射方向との組
合せによっても変化している。しかるに、従来のいかな
る方法を用いても木目柄に合わせて部分的に艶（光沢及
び照りと同義語）を変化させたり、また視角によって艶
を変化させることは困難であり、平均的な艶で全面を覆
う加工方法に終始せざるを得ないという問題があった。
またサンドブラストによって粗面化されたエンボス版で
賦型されたプラスチックの表面は、粗面の先端が尖って
いたり、ケバ立っている形状のため、耐スクラッチ性が
悪く傷になり易く、また汚れ易いという問題がある。ま
た、サンドブラスト法は、エンボス版作成工程からみ
て、異質の加工方法でありインライン化が難しく、完成
まで時間がかかるという問題もある。エンボス版の表面
をグラビア印刷シリンダー彫刻機によって粗面化する方
法は、彫刻されるセル間の平らな非画線部（土手部）が
目立ちすぎ、意匠的に人工的な印象を与えるという問題
がある。化粧シートの方にＯＰコートを施すのは、微粒
子の分散状態のバラツキによって艶や表面物性が不安定
となり易く、繊細な質感のある仕上がりを得ることが難
しいという問題がある。本発明は、前述の問題点に鑑み
てなされたもので、腐食法によって製作されたエンボス
版によって賦型する等の方法で容易に製造でき、表面の
艶が場所によって連続的に変化し、しかも特定の領域で
は、艶に方向性があって、視角及び光の入射方向との組
合せによって艶が異なって見え、しかも耐スクラッチ
性、耐汚染性のある化粧材の提供を目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
に本発明による化粧材では、基材表面に凸状素子若しく
は凹状素子が配列して凹凸模様を形成してなる化粧材に
おいて、前記凸状素子若しくは前記凹状素子を、その底
面若しくは開口面形状が、前記基材表面の位置座標に対
応して、円形から楕円を経由して細線に至るまでの間で
分布する柱状を呈するものとし、前記凸状素子若しくは
前記凹状素子を、それぞれ独立して、ランダムな位置座
標で配列させる。

【０００５】

【発明の実施の形態】本発明を図面によりさらに詳細に
説明する。図４は、従来の表面に凹凸模様を有する化粧
材の説明図である。従来の化粧材は、図４（ａ）の模式
断面図に示すように、シート乃至は板状の基材１の上に
木目等の所望の絵柄（模様）状に印刷インキ層２を設
け、熱可塑性樹脂からなるトップシート３をラミネート
すると同時に表面をエンボスして粗面化することによっ
て艶を所望のレベルに制御し、必要に応じてさらに保護
膜４を薄くコートしてなるものである。粗面化されたト
ップシート３の表面の凹凸模様は、エンボス版の表面に
形成された凹凸模様がエンボス時の加熱圧着によって忠
実に賦型されて得られるものであって、図４（ｂ）に
は、その一態様の平面図を拡大して示す。この凹凸模様
は、複数のサイズからなる円柱形の微細な凸状部、ある
いはクレーターのような凹陥部が形成された単純な形状
のケースであって、実際にはさらに複雑な形状であるこ
とが多い。このような凹凸模様を構成する最小単位を以
下凸状素子あるいは凹状素子と称し、この両者を凹凸状
素子と称する。これまでのサンドブラスト等の方法で形
成されるエンボス版面の凹凸形状が賦型された化粧材面
は、断面形状がきわめて複雑であるにもかかわらず、表
面全体に与える艶は均一で、また艶の方向性、すなわち
視角および光源から化粧材表面に入射する光の入射方向
との組合せによる艶の変化は見られない。

【０００６】本発明による化粧材には、エンボス加工等
により表面に凹凸模様が施された化粧材であって、薄い
シート状、或いは厚い板状いづれでもよい。またその用
途は、壁、床、天井等の建築物の内装材、扉、窓枠、手
摺等の建具、家電製品の筐体、箪笥等の家具、箱等の容
器、車両等の内装材、船舶内装材等に用いるものであ
る。この化粧材は、単層でもよいし、或いは必要に応じ
て更に任意の素材を裏打ちした加工材料のすべてを含
む。凹凸模様が施される基材としては、各種のものが適
用可能であるが、通常は、加工適性の点で、少なくとも
最表面層は熱可塑性樹脂を用いる。この熱可塑性樹脂と
しては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフ
ィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリエステ
ル、ポリウレタン、ＡＢＳ，ポリスチレン等が用いられ
る。さらに、本発明による化粧材では、必要に応じて基
材の表面から目視可能な位置に木目柄、石目柄、布目柄
等凹凸模様に対応した絵柄（模様）層を設けることがで
きる。

【０００７】図１は、本発明による化粧材の凹凸模様の
説明図であり、本発明の最も好適な応用例である木目化
粧板を例にした場合である。本発明による化粧材の表面
を粗面化するために使用される凹凸状素子の形状は、図
１に示すような、凸状素子の基材面と同レベルにある底
面もしくは凹状素子の基材面と同レベルにある開口面
が、楕円柱乃至はそれに近似する形状であって、その形
状は、円から楕円を経て超楕円とでもいうべき細線にま
で至る間を連続的に変化している。

【０００８】図２は、本発明による化粧材の表面状態の
説明図である。図２は、本発明による化粧材の表面状態
の１例を示す模式的平面図であって、実際には目視出来
ない範囲の細かさにある凹凸状素子が、説明上拡大して
描かれている。本発明に使用される凹凸模様は、図２に
示すように、大きさを異にし、それぞれが独立して、ラ
ンダムに配列する凹凸状素子の集合体からなり、凹凸状
素子の形状は、その底面若しくは開口面が、領域指定に
従って、図１に示す円から細線の範囲内で連続的に変化
している。本発明による化粧材の表面は、濃度の薄い早
材部Ｓ，濃度があって目の詰まった晩材部Ｂ、それらの
中間部からなり、通常の樹種の場合、早材部Ｓには、大
きさを異にし、図１、〜のような円若しくは円に近
い楕円状の底面若しくは開口面を有する凹凸状素子が、
また晩材部分Ｂには大きさを異にし、図１、〜の線
状に近い凹凸状素子が、また中間部にはを中心とした
楕円状の凹凸状素子が、それぞれ重ならないように独立
して、長手方向（楕円でいうと長軸方向）は略揃った状
態で、それぞれの位置座標はランダムに配列されてい
る。この底面若しくは開口面が円に近い形状の柱状体か
らなる凹凸状素子が配列する早材部Ｓでは、艶に方向性
がなく、視角及び光線入射角による艶変化は見られない
が、底面若しくは開口面が線状に近い形状の凹凸状素子
が長手方向を略同一方向に揃えて配列する晩材部Ｂで
は、この線状の凹凸状素子の長手方向から見る場合と線
状の凹凸状素子と交叉する方向から見る場合とでは明ら
かに艶に変化を生じ、後者の場合の方が艶が消えて見え
る。

【０００９】凹凸状素子の底面もしくは開口面の大きさ
は、円形に近い部分で、長半径ｂが、０．０２ｍｍφ乃
至０．３ｍｍφの範囲にあることが望ましい。また、凹
凸状素子の集合度合いは、最密に配置するほど好まし
い。それは、平坦な部分が多すぎると、艶が残りやす
く、しかも人工的な質感を与え易いからである。細線に
近い方の凹凸状素子については、細線幅（短半径ａ）が
０．０２ｍｍφ乃至０．１ｍｍφの範囲にあることが望
ましい。また長さ（長半径ｂ）は１乃至１０ｍｍである
ことが望ましい。凹凸状素子の底面若しくは開口面の偏
平度（長半径ｂ／短半径ａ）を化粧材表面の各領域での
再現したい艶に応じて変化させる方法の具体例として
は、次のものがある。 原稿となる実物の木材板表面の艶の面分布を光沢度計
で計測し、その光沢度の函数として偏平度を変える。 原稿表面の光学濃度を計測し、その光学濃度の函数と
して偏平度を変える。 その他 また函数としては、１次函数、２次函数、対数函数、指
数函数、ロジスティック函数等があり、増加函数、減少
函数いずれでもよい。また、凹凸状素子の高さ或いは深
さは、０．０１ｍｍ〜０．１ｍｍ程度である。

【００１０】以上述べたように、本発明による化粧材で
は、凹凸状素子の形状変化によって天然の木目板が有す
る部分的な艶の方向性を再現することができるが、部分
的な艶の絶対値の強弱変化も無論再現することができ
る。本発明において、仕上げ面の艶に変化を及ぼす要因
は凹凸状素子の大きさ、粗密度、高さあるいは深度等多
いが、これを領域指定によって適宜変えてやればよい。
例えば、原稿となる実物の木材板表面の艶の面分布を光
沢度計で計測し、その光沢度の函数として凹凸状素子の
粗密度を変化させ、艶消しの部分ほど凹凸模様の粗密度
を高くしてやればよい。天然の木目が有する木目柄に応
じた艶が忠実に再現されれば望ましいが、木目柄と照り
との同調はあまり精度よく行う必要はない。それは木目
柄と艶柄（艶の変化）との見当が多少ずれていても殆ど
不自然さを感じないからである。

【００１１】次に、本発明による化粧材の凹凸状素子形
成に用いるエンボス版の製造方法について説明する。先
ず、再現しようとする天然木目の原画像を製版スキャナ
によって光電変換し、デジタル信号化して読み取り、Ｃ
ＥＰＳ（COLOR ERECTRONIC PREPRESS SYSTEM）装置のハ
ードディスクに記憶し、取り込む。一旦入力されたデジ
タル画像をＣＥＰＳ装置のディスプレイに取り出し、階
調修正、エンボス版の円周に合わせたエンドレス画像修
正等を行っておく。次に、出力スキャナーのドットジェ
ネレーターから所定のプログラムに従って修正されたデ
ジタル画像をレーザービーム走査による直接露光装置に
よって予めレジスト感光液が塗布されたエンボスシリン
ダー上に出力し焼き付ける。次に、エンボスシリンダー
面を現像して、各種の形状の凹凸状素子からなるレジス
トパターンを形成する。ここで得られるレジストパター
ンはオン、オフ制御されたレーザービームが描くモザイ
クパターンであって、レーザービーム径は略５μｍであ
る。以上のレーザービームによる出力にあたって使用さ
れるプログラムは、図３に示すような画像の光学濃度対
凹凸状素子形状の変換プログラムであって、凹凸状素子
形状の指数として、例えば偏平度（楕円の長径ｂ／楕円
の半径ａ）の対数を採用することができる。このプログ
ラムを設定することによって、木目柄の光学濃度に応じ
た領域指定が可能となり、その指定通りの形状で凹凸状
素子を出力させることができる。さらに、複数の底面積
の長半径がランダムに分布する凹凸状素子を独立して、
ランダムな位置座標に配列させるための乱数を発生させ
るアルゴリズムに基づくプログラムも予め設定してお
く。但し、同じ光学濃度値に対応する底面積若しくは開
口面積の分布幅が大きすぎると外観が不自然になるた
め、乱数の最大値と最小値の比を規定する。通常、最大
値／最小値＝１０程度とする。このようにしてレジスト
パターンが形成された銅メッキ層からなるシリンダーの
表面をダイレクトエッチンググラビア製版法と同じよう
に塩化第１鉄溶液で腐食し、レジスト剥離、クロムメッ
キを行えば、所望のエンボス版が得られる。このエンボ
ス版を用いて、化粧材表面に凹凸模様を形成する代表的
方法としては、熱可塑性樹脂からなる単層シートを加熱
軟化させ、エンボス版を押圧して、エンボスするか、ト
ップシートにエンボスを行い、それを基材シートとラミ
ネートして２層積層体の化粧材とするか、あるいはエン
ボスとラミネートを同時に行うダブリングエンボスを行
い２層積層体の化粧材とするか、或いは、トップシート
の押し出し成型とダブリングエンボスをインラインで行
い、さらに最終用途に応じて裏打ち材、例えばドアに加
工する場合については、ハニカムボード等を貼り合わせ
る等の方法によれば、本発明による化粧材が得られる。
また、以上のような、熱プレスによるエンボス加工の
他、化粧材表面に本発明の凹凸模様を形成する方法とし
ては、特開平２−１３１１７５号公報等に開示の方法、
すなわち、上記の如き方法で製版してなるエンボス版表
面の少なくとも凹部に紫外線又は、電子線硬化型樹脂の
未硬化液状物を充填し、該液状物を間に挟んで紫外線又
は電子線透過性の基材を該エンボス版面に重ねて密着さ
せ、基材側から紫外線又は電子線を照射して該液状物を
硬化（固体化）せしめ、しかるのちに基材とその表面に
接着したエンボス版表面の凹凸模様が賦型された硬化樹
脂とをエンボス版から剥離するという方法を採用するこ
ともできる。本発明による化粧材には、木目、石目、布
目、皮絞、抽象柄等各種外観の再現を行うことが可能で
ある。木目を再現する場合、天然木目の照りには、各種
のバリエーションがあり、図１、の如き細線部を晩材
部に位置せしめる態様の他、該細線部を早材部に対応さ
せる方が好適な場合もある。

【００１２】本発明による化粧材の最大の特色は、艶が
部分的に凹凸状素子の底面若しくは開口面の形状、サイ
ズ、凹凸状素子の高さ若しくは深さそして密集度を変え
ることによって変化し、より好ましい態様では、さらに
晩材部Ｂでは視角及び光線入射角によって艶が変化する
ようにしてなることである。加工された化粧材の表面に
は上述したような凹凸状素子が出来るかぎり密集した状
態で形成されている。凹凸模様を凸状素子で構成するか
あるいは凹状素子で構成するかは、前述のレーザー出力
によって形成されるレジストパターンをポジパターンに
するかネガパターンにするかによって決まる。凸状素子
あるいは凹状素子のいずれを選んでも本発明による化粧
材表面の艶加工は同じように行うことができる。しか
し、上記の方法で製造された本発明による化粧材の凹凸
模様は、凹凸状素子の重なりがないので、化粧材面の耐
スクラッチ性、耐汚染性を高める効果はあるものの、サ
ンドブラスト等による凹凸模様に較べてまだ艶が残りす
ぎる場合がある。この艶をさらに消すために、全面に薄
いマットＯＰ層を保護膜代わりに設けて前記の艶変化の
特色を生かしながら、全体の艶をさらに抑えてもよく、
或いは一度得られたエンボス版面にレジスト感光液を塗
布し、再度同一パターンを見当をずらしてレーザー出力
し、２重腐食を行えば、凹凸形状はかなり複雑となって
全体に艶を抑えることができる。

【００１３】

【発明の効果】本発明によれば、化粧材の表面を、数種
のサイズからなり、それぞれが独立してランダムに配列
し、しかも底面若しくは開口面の形状が場所に対応して
円形から細線の範囲で分布する微細な凸状素子若しくは
凹状素子の集合体からなる凹凸模様を賦型することによ
り、表面の艶が、場所によって変化する。従って、特に
木目化粧材に適用した場合に、表面光沢が天然木目に対
応して場所毎に変化、しかも晩材部分或いは早材部分の
所定の領域では視角及び光線入射角によって艶が変化す
る天然の木目の特性を再現することができ、天然の木目
に匹敵する質感、高級感、意匠性を得ることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による化粧材の凹凸模様の説明図

【図２】本発明による化粧材の表面状態の説明図

【図３】画像の光学濃度対凹凸状素子形状の変換プログ
ラムの説明図

【図４】従来の表面に凹凸模様を有する化粧材の説明図

【符号の説明】

１ 基材シート ２ 印刷インキ層 ３ 熱可塑性樹脂からなるトップシート ４ 保護層 Ｓ 早材部 Ｂ 晩材部

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 基材表面に凸状素子若しくは凹状素子が
   配列して凹凸模様を形成してなる化粧材であって、前記
   凸状素子若しくは前記凹状素子は、凸状素子の底面若し
   くは凹状素子の開口面形状が、前記基材表面の位置座標
   に対応して、円形から楕円を経由して細線に至るまでの
   間で分布する柱状を呈し、前記凸状素子若しくは前記凹
   状素子が、それぞれ独立して、ランダムな位置座標で配
   列してなることを特徴とする化粧材。