JPH11209516A - ポリアミド繊維強化ゴム組成物とその製造法 - Google Patents

ポリアミド繊維強化ゴム組成物とその製造法

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JPH11209516A
JPH11209516A JP1906398A JP1906398A JPH11209516A JP H11209516 A JPH11209516 A JP H11209516A JP 1906398 A JP1906398 A JP 1906398A JP 1906398 A JP1906398 A JP 1906398A JP H11209516 A JPH11209516 A JP H11209516A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】極微細なポリアミド繊維が分散した樹脂組成物
が,ゴム成分中に分散性が優れると共に,配合時にゴム
成分がゲル化しないポリアミド繊維強化ゴム組成物を提
供することを目的とする。 【解決手段】(A)ブタジエンゴム,クロロプレンゴ
ム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム,及びエピクロ
ルヒドリンゴムから選択されるゴム成分100重量部,
及び(B)繊維強熱可塑性組成物2〜100重量%から
なる繊維強化ゴム組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,グリーン強度とダ
イスウェルに優れると共に加硫物の引張特性に優れた繊
維強化ゴム組成物に関するもので,タイヤにおけるビー
ドフィラーやチェーファーなどのタイヤの内・外部材や
ベルト,ホース,チューブ,ゴムロール,ゴムクロー
ラ,ダイヤフラム,リング,パッキン,ウエザーストリ
ップ材,ブーツ材などの工業製品などに好ましく用いら
れる。
【0002】
【従来の技術】天然ゴムやポリイソプレン,ポリブタジ
エン,エチレン−プロピレンゴムなどの加硫可能なゴム
状ポリマーに短繊維を分散させモジュラスや強度などを
改善した組成物、即ち繊維強化ゴム組成物は,ナイロ
ン,ポリエステル,ビニロンなどの短繊維を配合し,必
要に応じて加硫するという方法で製造されてきた。
【0003】かかる方法により得られる繊維強化ゴム組
成物は,自動車のタイヤ部材などとして用いるには,繊
維が太く強度や伸びが不足していたので,これらの点を
改善した繊維強化ゴム組成物が求められてきた。このよ
うな要求に応える繊維強化ゴム組成物として,例えばナ
イロンなどの短繊維がサブミクロンの平均径を有する微
細な繊維である繊維強化ゴム組成物が提案されてきた。
例えば加硫可能なゴムとナイロン及び結合剤をナイロン
の融点以上の温度で溶融混練し,得られた混練物をナイ
ロンの融点以上の温度で紐状に押出し,得られた紐状物
を延伸又は圧延するという方法により得られる繊維強化
ゴム組成物及びこれに加える加硫可能なゴム及び加硫剤
を配合し加硫するという方法で得られる。このような方
法における結合剤としてレゾール型アルキルフェノール
フォルムアルデヒド系樹脂の初期縮合物を用いた製法は
特開昭58−79037号公報に,結合剤してノボラッ
ク型アルキルフェノールフォルムアルデヒド系樹脂を用
いた製法は特開昭59−43041号公報に,結合剤と
してシランカップリング剤を用いた製法は特開昭63−
81137号公報,特開昭63−179945号公報及
び特開平7−278360号公報に記載されている。更
に特開平7−238189号公報,特開平9−5943
1号公報にはオレフィンとエラストマーをマトリックス
としてポリアミド繊維が微細に分散した繊維強化ゴム組
成物とすることによる繊維配向方向の引張応力の異方性
が緩和され耐疲労性に優れ且つ作業性の良いペレットで
供給できることが提案されている。
【発明が解決しようとする課題】しかし,この方法では
希釈するゴムの種類が限定され熱加工中にゲル化しやす
く,特にブタジエンゴム(BR),クロロプレンゴム
(CR),アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NB
R),エピクロルヒドリンゴム(CO)の場合は組成物
を製造する工程でゲル化,劣化しやすい傾向があり,加
硫ゴムでも機械的特性が出ないこともあった。また, 工
程が複雑で再現性が低いことも問題であった。本発明
は, これらの問題を解決し, 生産性に優れ且つ低コスト
で製造でき, 且つモジュラスや強度が改善された繊維強
化ゴム組成物とその製造法を提供することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0004】即ち, 本発明によれば, (A)ブタジエン
ゴム,クロロプレンゴム,アクリロニトリル−ブタジエ
ンゴム,及びエピクロルヒドリンゴムから選択されるゴ
ム成分100重量部及び(B)繊維強化熱可塑性組成物
成分2〜100重量部からなる繊維強化ゴム組成物が提
供される。そして,(B)繊維強化熱可塑性組成物成分
が(a)ポリオレフィン90〜40重量部,(b)熱可
塑性ポリアミド繊維10〜60重量部及び,(c)シラ
ンカップリング剤からなり,(B)繊維強化熱可塑性組
成物中にポリアミドが繊維状に分散していることを特徴
とする。又,(A)ゴム成分がポリブタジエン,クロロ
プレンゴム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム,及び
エピクロルヒドリンゴムから選択されるゴム成分と
(B)繊維強化熱可塑性組成物成分からなる繊維強化ゴ
ム組成物を170℃以下で混練して加硫配合剤を添加し
て加硫することを特徴とする繊維強化ゴム組成物の製造
法が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】以下,本発明の繊維強化ゴム組成
物及びその製造法における構成成分を具体的に説明す
る。
【0006】(A)成分はブタジエンゴム(BR),ア
クリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),クロロプ
レンゴム(CR),及びエピクロルヒドリンゴム(C
O)から選択される。これらは単独で使用してもよく複
数組合せて用いてもよい。ブタジエンゴム(以下BR)
としては,シス−1,4構造が90〜98%の高シス−
1,4構造のものである。又高シス−1,4構造のブタ
ジエンゴムに,結晶性シンジオタクチック−1,2ポリ
ブタジエンが部分的にグラフト又はブロック結合したビ
ニル−シスブタジエンゴム(以下VCR)でもよいし,
トランス−1,4構造が3〜30%で残りがシス−1,
4構造のブタジエンゴムであるトランス−シスブタジエ
ンゴム(以下TAC)でもよい。クロロプレンゴム(以
下CR)としては,ムーニー粘度が20〜120の範囲
のものが好ましい。アクリロニトリル−ブタジエンゴム
(以下NBR)としては,アクリロニトリル含有量が2
4%以下の低ニトリル,アクリロニトリル含有量が25
〜30%の中ニトリル,アクリロニトリル含有量が31
〜35%の中高ニトリル,アクリロニトリル含有量が3
6〜41%の高ニトリル,及びアクリロニトリル含有量
が41%以上の高ニトリルのものがあるがアクリロニト
リル含有量が20〜45%のものが好ましい。アクリロ
ニトリル−ブタジエンゴムを水素化した水素化ニトリル
も含まれる。エピクロルヒドリンゴム(以下CO)とし
ては,エピクロルヒドリンゴム単独又はエチレンオキサ
イドとの共重合体,更にエピクロルヒドリンとアリルグ
リシジルエーテルとの共重合体,エピクロロヒドリン−
エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテルなどと
の3元共重合ゴムでもよい。(A)成分にはBR,NB
R,CR,及びCO以外にも天然ゴム(以下NR),ポ
リイソプレンゴム,スチレン−ブタジエンゴム,エチレ
ン−プロピレンゴム,エチレン−プロピレン−ジエンゴ
ムを含んでいてもよい。
【0007】(B)成分は(a)成分のポリオレフィ
ン,(b)成分のポリアミド繊維及び(c)成分のシラ
ンカップリング剤からなる繊維強化熱可塑性組成物であ
る。(a)成分はポリオレフィンであって,80〜25
0℃の範囲の融点のものが好ましい。又,50℃以上,
特に好ましくは50〜200℃のビカット軟化点を有す
るものも用いられる。このような好適な例としては,炭
素数2〜8のオレフィンの単独重合体や共重合体及び,
炭素数2〜8のオレフィンとスチレンやクロロスチレ
ン,α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物との
共重合体,炭素数2〜8のオレフィンと酢酸ビニルとの
共重合体,炭素数2〜8のオレフィンとアクリル酸ある
いはそのエステルとの共重合体,炭素数2〜8のオレフ
ィンとメタアクリル酸あるいはそのエステルとの共重合
体,及び炭素数2〜8のオレフィンとビニルシラン化合
物との共重合体が好ましく用いられるものとして挙げら
れる。
【0008】(a)成分の具体例としては, 高密度ポリ
エチレン,低密度ポリエチレン,ポリプロピレン,エチ
レン・プロピレンランダム共重合体,線状低密度ポリエ
チレン, ポリブテン−1,ポリヘキセン−1, エチレン
・酢酸ビニル共重合体,エチレン・ビニルアルコール共
重合体, エチレン・アクリル酸共重合体,エチレン・ア
クリル酸メチル共重合体, エチレン・アクリル酸エチル
共重合体,エチレン・アクリル酸プロピル共重合体,エ
チレン・アクリル酸ブチル共重合体,エチレン・アクリ
ル酸2−エチルヘキシル共重合体,エチレン・アクリル
酸ヒドロキシエチル共重合体,エチレン・ビニルトリメ
トキシシラン共重合体,エチレン・ビニルトリエトキシ
シラン共重合体,エチレン・ビニルシラン共重合体,及
びエチレン・スチレン共重合体などがある。又,塩素化
ポリエチレンや臭素化ポリエチレン,クロロスルホン化
ポリエチレンなどのハロゲン化ポリオレフィンも好まし
く用いられる。
【0009】これらの(a)成分のポリオレフィンのな
かで特に好ましいものとしては,高密度ポリエチレン
(HDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),線状
低密度ポリエチレン(LLDPE),ポリプロピレン
(PP),エチレン・プロピレンブロック共重合体,エ
チレン・プロピレンランダム共重合体及びエチレン・酢
酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられ、中でもメルト
フローレイト(MFR)が0. 2〜50g/10分の範
囲のものが最も好ましいものとして挙げられる。これら
は1種のみ用いてもよく,2種以上を組合わせてもよ
い。
【0010】(b)成分は主鎖中にアミド基を有する熱
可塑性ポリアミド(以下,ポリアミド)であり,融点1
35〜350℃の範囲のものが用いられ,しかも(a)
成分のポリオレフィンの融点より高いものであり,中で
も融点160〜265℃の範囲のものが好ましい。押出
し及び延伸によって強靱な繊維を与えるポリアミドが好
ましい。
【0011】ポリアミドの具体例としては,ナイロン
6,ナイロン66,ナイロン6−ナイロン66共重合
体,ナイロン610,ナイロン612、ナイロン46、
ナイロン11,ナイロン12,ナイロンMXD6,キシ
リレンジアミンとアジピン酸との重縮合体,キシリレン
ジアミンとピメリン酸との重縮合体,キシリレンジアミ
ンとスペリン酸との重縮合体,キシリレンジアミンとア
ゼライン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとセバシ
ン酸との重縮合体,テトラメチレンジアミンとテレフタ
ル酸の重縮合体,ヘキサメチレンジアミンとテレフタル
酸の重縮合体,オクタメチレンジアミンとテレフタル酸
の重縮合体,トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレ
フタル酸の重縮合体,デカメチレンジアミンとテレフタ
ル酸の重縮合体、ウンデカメチレンジアミンとテレフタ
ル酸の重縮合体,ドデカメチレンジアミンとテレフタル
酸の重縮合体,テトラメチレンジアミンとイソフタル酸
の重縮合体,ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の
重縮合体,オクタメチレンジアミンとイソフタル酸の重
縮合体,トリメチルヘキサメチレンジアミンとイソフタ
ル酸の重縮合体,デカメチレンジアミンとイソフタル酸
の重縮合体,ウンデカメチレンジアミンとイソフタル酸
の重縮合体及びドデカメチレンジアミンとイソフタル酸
の重縮合体などが挙げられる。
【0012】これらのポリアミドのうち特に好ましい具
体例としては,ナイロン6(PA6),ナイロン66
(PA66),ナイロン12(PA12),ナイロン6
−ナイロン66共重合体などが挙げられる。これらの1
種又は2種以上でもよい。これらのポリアミドは10,
000〜200,000の範囲の分子量を有しているこ
とが好ましい。
【0013】(c)成分はシランカップリング剤であ
る。その具体例としてはビニルトリメトキシシラン,ビ
ニルトリエトキシシラン,ビニルトリス(β−メトキシ
エトキシ)シラン,ビニルトリアセチルシラン,γ−メ
タクリロキシプロピルトリメトキシシラン,β−(3,
4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラ
ン,γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,γ
−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン,γ−
グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン,γ−グ
リシドキシプロピルエチルジメトキシシラン,γ−グリ
シドキシプロピルエチルジエトキシシラン,N−β−
(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン,
N−β−(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシ
シラン,N−β−(アミノエチル)アミノプロピルメチ
ルジメトキシシラン,N−β−(アミノエチル)アミノ
プロピルエチルジメトキシシラン,N−β−(アミノエ
チル)アミノプロピルエチルジエトキシシラン,γ−ア
ミノプロピルトリエトキシシラン,N−フェニル−γ−
アミノプロピルトリメトキシシラン,γ−〔N−(β−
メタクリロキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウ
ム(クロライド)〕プロピルメトキシシラン,及びスチ
リルジアミノシランなどが挙げられる。中でもアルコキ
シ基などから水素原子を奪って脱離し易い基及び極性基
やビニル基とを有するものが特に好ましく用いられる。
【0014】(c)成分のシランカップリング剤は,成
分 (a)と成分 (b)の合計100重量部に対し,0.
1〜5. 5重量部の範囲が好ましく,特に好ましくは
0. 2〜3. 0重量部の範囲である。シランカップリン
グ剤の量が0. 1重量部よりも少ないと、強度の高い組
成物が得られず,シランカップリング剤の量が5. 5重
量部よりも多いとモジュラスに優れた組成物が得られな
い。即ちカップリング剤の量が0. 1重量部より少ない
と,成分(a)及び成分(b)との間に強固な結合が形
成されず,強度の低い組成物しか得られない。一方,カ
ップリング剤の量が5. 5重量部より多いと,成分
(b)は良好な微細繊維にならないので,やはりモジュ
ラスに劣る組成物しか得られない。
【0015】(c)成分のシランカップリング剤を用い
る場合は,有機過酸化物を併用することができる。有機
過酸化物を併用することにより(a)成分の分子鎖状に
ラジカルが形成されシランカップリング剤と反応するこ
とにより(a)成分とシランカップリング剤との反応を
促進すると考えられる。有機過酸化物としては1分間の
半減期温度が(a)成分の融点或いは(b)成分の融点
のいずれか高い方と同じ温度ないし,この温度より30
℃程高い温度範囲であるものが好ましく用いられる。具
体的には1分間の半減期温度が110〜200℃程度の
ものが好ましく用いられる。
【0016】有機過酸化物の具体例としてはジ−α−ク
ミルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキ
シ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−
ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ
−t−ブチルパーオキシブタン、n−ブチル4,4−ジ
−t−ブチルパーオキシバレリレート、2,2−ビス
(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン)
プロパン、2,2,4−トリメチルペンチルパーオキシ
ネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエ
ート、t−ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t−
ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシア
セテート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチ
ルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソ
フタレートなどが挙げられる。中でも1分間の半減期温
度が溶融混練温度ないしこの温度より30℃程高い温度
の範囲であるもの,具体的には1分半減期温度が80〜
260℃程度のものが好ましく用いられる。
【0017】有機過酸化物を併用することにより(a)
成分のポリオレフィンの分子鎖上にラジカルが形成さ
れ,このラジカルがシランカップリング剤と反応するこ
とにより,(a)成分とシランカップリング剤との間の
反応を促進させると考えられる。このときの有機過酸化
物の使用量は(a)成分100重量部に対して0. 01
〜1. 0重量部の範囲が好ましい。
【0018】(a)成分と(b)成分の割合は次の通り
である。(a)成分が90〜40重量部に対して(b)
成分は10〜60重量部である。好ましくは(a)成分
が85〜65重量部に対して(b)成分は15〜35重
量部である。(b)成分の割合が10重量部より少ない
と弾性率あるいは強度などの向上効果が少なく,(b)
成分の割合が60重量部を超えると成形品の分散性が悪
く表面光沢が損なわれる。
【0019】(A)成分と(B)成分の割合は(A)成
分100重量部に対して(B)成分は2〜100重量部
である。好ましくは(B)成分は2〜50重量部であ
る。(B)成分が2重量部より少ないと弾性率或いは強
度などの向上効果が少なく,100重量部を越えると繊
維の分散性が悪く伸びがでない。
【0020】(b)成分はその殆どが微細な繊維として
上記(a)成分のポリオレフィン中に均一に分散してい
る。具体的には,その70重量%,好ましくは80重量
%,特に好ましくは90重量%以上が微細な繊維として
分散している。(b)成分の繊維は平均径が1μm以下
であり、そしてアスペクトアスペクト比(繊維長/繊維
径)は20以上であり1,000以下であることが好ま
しい。そして,(a)成分と(b)成分はいずれとも界
面で(c)成分を介して結合している。
【0021】次に本発明の繊維強化ゴム組成物の製造法
について説明する。以下の工程で製造される。即ち, (1)(a)成分のポリオレフィンと(c)成分のシラ
ンカップリング剤とを溶融混練して化学変性する工程
(以下第1工程); (2)化学変性した(a)成分と(b)成分のポリアミ
ドを(b)成分の融点以上の温度で溶融混練する工程
(以下第2工程); (3)化学変性した(a)成分に(b)成分のポリアミ
ドを(b)成分の融点以上の温度で溶融混練・化学変性
して押出す工程(以下第3工程); (4)溶融混練・化学変性した押出物を(a)成分の融
点以上で,しかも(b)成分の融点以下でドラフトをか
けつつ延伸又は圧延する工程(以下第4工程); (5)延伸又は圧延した組成物を室温に冷却してペレタ
イズする工程(以下第5工程); (6)上記第5工程で得られた(B)繊維強化熱可塑性
組成物のペレットを(A)成分であるBR,CR,NB
R,及びCOから選択されるゴム成分と配合剤を170
℃以下で混練して加硫する工程(以下第6工程);によ
り製造される。
【0022】以下に各工程を説明する。第1工程は
(a)成分のポリオレフィンと (c)成分のシランカッ
プリング剤を溶融混練して化学変性する工程であり,
(a)成分の融点より10℃以上高い温度で溶融混練す
ると(c)成分のシランカップリング剤と反応して化学
変性される。 溶融混練は樹脂やゴムの混練に通常用い
られている装置で行うことができる。このような装置と
しては,バンバリー型ミキサー,ニーダー,ニーダーエ
キストルーダー,オープンロール,一軸混練機,二軸混
練機などが用いられる。これらの装置の中では短時間で
且つ連続的に溶融混練が行える点で二軸混練機が最も好
ましい。
【0023】第2工程は第1工程で得られた(a)成分
及び(c)成分からなる溶融混練物に(b)成分の熱可
塑性ポリアミドを(b)成分のの融点より10℃高い温
度で溶融混練し,(a)成分と(b)成分を化学結合さ
す工程である。第2工程での溶融混練は,第1工程と同
じ方法や装置で混練される。溶融混練温度は少なくとも
(b)成分の融点より10℃高い温度であり,好ましく
は20℃高い温度である。
【0024】第3工程は第2工程において得られた混練
物を紡糸口金或いはインフレーションダイ又はTダイか
ら押出す。紡糸,押出しのいずれも(b)成分の融点よ
り高い温度で実施する必要がある。具体的には(b)成
分の融点より10℃以上高い温度の範囲で実施する。本
工程で(b)成分の融点より低い温度で溶融・混練を行
っても,混練物は(a)成分中に(b)成分の微細な粒
子が分散した構造にはならない。従ってかかる混練物を
紡糸,延伸しても,(c)成分は微細な繊維にはなり得
ない。
【0025】第4工程は第3工程で押出された紐状又は
糸状の押出物を延伸及び/又は圧延して,(b)成分を
繊維形状に変換させて,繊維強化繊維熱可塑性組成物を
得る工程である。紡糸口金或いはインフレーションダイ
又はTダイなどから押出し,次いでこれを延伸及び/又
は圧延する工程において,紡糸又は押出によって,混練
中の(c)成分の微粒子が繊維に変形する。この繊維
は,それに引続く延伸又は圧延によって延伸処理され,
より強固な繊維となる。従って紡糸及び押出しは(b)
成分の融点以上の温度で実施する必要があり,延伸及び
圧延は(b)成分の融点よりも10℃低い温度で実施す
る必要がある。冷却・延伸又は圧延処理は,(b)成分
の融点より10℃以下の低い温度で行われることによ
り,より強固な繊維が形成されるので繊維強化熱可塑性
組成物としての特性がより発揮できてより好ましい。
【0026】第5工程は延伸又は圧延した繊維強化熱可
塑性組成物を室温に冷却してペレタイズする工程であ
る。ペレットすることによって樹脂やゴムなどを追加し
て均一に混練できるからである。樹脂組成物としてペレ
ット状のものを用いればゴム成分などと簡単に均一で
き,微細な繊維が均一に分散された強化ゴム組成物が容
易に得られる。
【0027】第6工程はた第5工程で得られた繊維強化
熱可塑性組成物のペレットを(A)BR,CR,NBR
及びCOから選択されるゴム成分とシランカップリング
剤及び配合剤を170℃以下で混練して加硫する工程で
ある。(A)ゴム成分の混練温度は,(a)成分が完全
に混合されるように(a)成分が融解する170℃以下
の温度で行われる。170℃以上になると (A)成分が
架橋,劣化してしまうからである。配合剤を入れて混練
する温度は100〜170℃で,シランカップリング剤
を通常配合剤と一緒に入れても良い。配合順序は例えば
(A)成分のゴムを配合・素練し(B)成分の繊維強化
組成物を投入し,次いでカーボンブラック,プロセスオ
イル、老化防止剤,亜鉛華,その他の一次配合剤などを
加えて混練する。装置は通常のゴムの配合で使用される
装置,例えばロール、バンバリーミキサーなどが好まし
い。その後二次配合剤を加えて混練する。押出機,射出
成形機,オープンロールで成形して加硫する。このよう
にして本発明のポリアミド繊維強化ゴム組成物が得られ
る。
【0028】本発明におけるポリアミド繊維強化ゴム組
成物は,(A)成分と(a)成分がマトリックスを形成
しており,このマトリックス中に(b)成分の微細な繊
維が均一に分散した構造であり,マトリックスと(b)
成分の微細な繊維が(c)成分のシランカップリング剤
を介して界面で結合している。そしてこの構造により繊
維強化効果を発現する。
【0029】上記各第1,2,及び3工程は、工程毎に
分離して説明したが,(a)成分,(b)成分及び
(c)成分を供給できる第1供給口,第2供給口及び第
3供給口を有し,且つ各供給口に対応する第1混練帯,
第2混練帯及び第3混練帯を有する二軸混練機を用いて
一括して連続的なプロセスで処理することも可能であ
る。そうすることにより経済的で安定した安全な製造法
になる。
【0030】加硫剤としては公知の加硫剤,例えば硫
黄,有機過酸化物,樹脂加硫剤,酸化マグネシウム,酸
化鉛などの金属酸化物などが用いられる。加硫助剤とし
てはアルデヒド・アンモニア類,アルデヒド・アミン
類,グアニジン類,チオウレア類,チアゾール類,チウ
ラム類,ジチオカルバメート類,キサンテートなどが用
いられる。
【0031】本発明のポリアミド繊維強化ゴム組成物に
は,このほかカーボンブラック,ホワイトカーボン,活
性炭酸カルシウム,超微粒子珪酸マグネシウム,ハイス
チレン樹脂,フェノール樹脂,リグニン,変成メラミン
樹脂,クマロンインデン樹脂,石油樹脂などの補助剤,
炭酸カルシウム,塩基性炭酸マグネシウム,クレー,亜
鉛華,珪草土,再生ゴム,粉末ゴム,エボナイト粉など
各種の充填剤,アミン・アルデヒド類,アミン・ケトン
類,アミン類,フェノール類,イミダゾール類,含硫黄
系酸化防止剤,含燐系酸化防止剤などの安定剤及び各種
顔料を含んでいてもよい。
【0032】
【実施例】以下、実施例及び比較例を示して、本発明に
ついてより具体的に説明するが本発明はこれらの実施例
の範囲に限定されるものではない。実施例及び比較例に
おいて,繊維強化熱可塑性組成物,ポリアミド繊維強化
ゴム組成物及びその加硫物の物性は以下のようにして測
定した。平均繊維径 :;繊維強化熱可塑性組成物ペレットを熱キ
シレンに溶解してポリオレフィンを溶解除去して残った
繊維を走査型電子顕微鏡で観察し,微細な繊維で分散し
ている場合は分散性良好,微細な繊維で分散していない
場合は分散性不良として,分散良好な微細繊維200本
について,上記の電子顕微鏡画像から繊維径を測定しそ
の平均を求めて平均繊維径とした。引張強度・引張弾性率・伸び :;繊維強化熱可塑性樹脂
組成物はJIS K6760に準じて温度23℃,引張
速度200mm/min.で測定した。ムーニー粘度 :;JIS K6300に準じて温度10
0℃でムーニー粘度ML1+4 を測定した。未加硫物強度 :;加硫物と同様にして未加硫物をJIS
K6300に準じて試料サイズJIS3号ダンベルに
て25℃,引張速度500mm/minで引張強度,5
0%応力,300%応力を測定した。ダイスウェル比 :;未加硫物を東洋精機製のキャピログ
ラフを用いて120℃で5分保持した後,押出速度10
0mm/minで押し出しレーザー光線で押出ストラン
ドの直径を測定してノズル径の比で表した。加硫物性 :; 100%引張応力,引張強度,引裂強度
をJIS K6301に準じて測定した。
【0033】サンプル1 (a)成分としてポリエチレン〔宇部興産(株)製,F
522,C520,融点110℃、MFI=5g/10
min〕100重量部,(c)成分としてγ−メタクリ
ロキシプロピルトリメトキシシラン1.0重量部,酸化
防止剤としてイルガノックス1010,0.5重量部及
び過酸化物としてジ−α−クミールパーオキサイド0.
5重量部を混合して170℃に加熱した二軸押出機(ス
クリュー,45mmφ)に投入して押し出してペレット
化してシラン変性ポリエチレンを得た。シラン変性ポリ
エチレン100重量部とナイロン6〔宇部興産(株),
1030B、融点215〜225℃)100重量部,酸
化防止剤としてイルガノックス1010,0.5重量部
を235℃に加熱した3mmφのダイスを付けた上記の
二軸押出機に投入して混練してダイスよりストランド状
に押出し空気で冷却してドラフト比7で引き取り5イン
チロール間で室温で1.5倍延伸して,引取りつつペレ
タイザーでペレット化した。ペレットの形状は長さ3m
m,直径1mmであった。得られたペレットを熱トルエ
ン(110℃)で溶解してポリエチレンを抽出した。不
溶分はトルエン中に均一に分散して懸濁液になってい
た。得られた不溶分を走査型電子顕微鏡で観察すると平
均繊維径0.3μmの微細な繊維であった。又,ペレッ
トを150℃に加熱したブラベンダープラストグラフで
5分間混練して繊維強化熱可塑性組成物を得た。2mm
の厚さに120℃でプレスして得られたシートの機械物
性(引張特性)を測定した。伸び500%,引張強度2
50kg/cm2 ,引張弾性率10,000kg/cm
2 であった。
【0034】
【実施例】実施例1 70℃,77rpmに設定したバンバリーミキサー(容
量1.7リットル)にブタジエンゴム〔宇部興産(株)
製,BR150,ML1+4 43,以下BR〕60重量
部,天然ゴム40重量部〔SMR−L,以下NR)及び
参考例1で得られた熱可塑性樹脂組成物6重量部を投入
して素練し,更に(c)成分のシランカップリン剤とし
てγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.
5重量部を投入した。表1に示した一次配合剤のカーボ
ンブラック,芳香族オイル,亜鉛華.老化防止剤,及び
ステアリン酸を投入して一次配合物のゴム組成物の温度
は140℃であった。この配合物のムーニー粘度と未加
硫物強度及びダイスウェルを測定した結果を表2に示し
た。一次配合物のゴム組成物を表1に示した二次配合剤
の加硫促進剤及び硫黄を100℃に加熱したロールで混
練して,150℃にセットした金型で35分加硫した。
この加硫したゴム組成物の配合量を表2に,物性として
引張強度及び引裂強度を測定した結果を表2に示した。
【0035】実施例2〜5 参考例で得られた繊維強化熱可塑性組成物の量を表2の
ように変量した以外は実施例1と同様にして配合して加
硫した。結果を表2に示した。
【0036】比較例1 参考例で得られた繊維強化熱可塑性組成物入れない以外
は実施例1(表2の配合)と同様に配合して加硫した。
結果を表2に示した。
【0037】比較例2 参考例で得られた繊維強化熱可塑性組成物120重量部
(表2の配合)入れた以外は実施例1と同様に配合して
加硫した。結果を表2に示した。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】実施例6〜10 ブタジエンゴムの代わりにビニルシスブタジエンゴム
(VCR)〔宇部興産(株)製,VCR412,ML
1+4 45,n−ヘキサン不溶分12%〕の量を表3のよ
うに変量した以外は実施例1と同様にして配合して加硫
した。結果を表3に示した。
【0041】比較例3 サンプル1で得られた繊維強化熱可塑性組成物入れない
以外は実施例6と同様に配合して加硫した。結果を表3
に示した。
【0042】比較例4 サンプル1で得られた繊維強化熱可塑性組成物120重
量部を入れた以外は実施例6と同様に配合して加硫し
た。結果を表3に示した。
【0043】
【表3】
【0044】実施例11〜16 ゴムの配合組成を表4のようにした以外は実施例1と同
様にしてBRとNRを配合して加硫した。結果を表4に
示した。
【0045】比較例5 繊維強化熱可塑性組成物を配合せずにBRのみ配合して
加硫した。結果を表4に示した。
【0046】
【表4】
【0047】実施例17〜20 100℃,60rpmに設定したブラベンダーミキサー
(容量0.6リットル)に(A)成分としてクロロプレ
ン(昭和ネオプレン製,ネオプレンW,M30,ML
1+4 38)100部とサンプル1で得られた(B)成分
の繊維強化熱可塑性組成物6重量部と(c)成分のシラ
ンカップリン剤としてγ−メタクリロキシプロピルトリ
メトキシシラン0.5重量部を投入した。樹脂温度は1
20℃であった。表5の通り配合して150℃で20分
加硫した。結果を表6に示した。
【0048】比較例6 (B)成分として100重量部配合した以外は(A)ゴ
ム成分は配合せずに実施例17と同様にして加硫した。
結果を表6に示した。
【0049】比較例7 (B)成分として100重量部と(A)ゴム成分として
120重量部を配合して実施例17と同様にして加硫し
た。結果を表6に示した。
【0050】
【表5】
【0051】
【表6】
【0052】実施例21〜24 100℃,60rpmに設定したブラベンダーミキサー
(容量0.6リットル)に(A)成分としてアクリロニ
トリル−ブタジエンゴム(日本合成ゴム社製,NBR
N230SL,ニトリル含量35%,ML1+4 42)1
00部とサンプル1で得られた(B)成分として繊維強
化熱可塑性組成物6重量部と(c)成分のシランカップ
リン剤としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシ
シラン0.5重量部を投入した。ゴム温度は170℃で
あった。表7の通り配合して160℃で15分加硫し
た。結果を表8に示した。
【0053】比較例8 (B)成分を配合しなかった以外は(A)ゴム成分はN
BRだけで実施例21〜24と同様に配合加硫した。結
果を表8に示した。
【0054】比較例9 (B)成分として100重量部と(A)ゴム成分として
120重量部を配合して実施例21〜24と同様にして
加硫した。結果を表8に示した。
【0055】
【表7】
【0056】
【表8】
【0057】実施例25〜28 100℃,60rpmに設定したブラベンダーミキサー
(容量0.6リットル)に(A)成分としてエピクロル
ヒドリンゴム(ダイソー社製,エピクロマーH,ML
1+4 55)100部とサンプル1で得られた(B)成分
として繊維強化熱可塑性組成物100重量部と(c)成
分のシランカップリン剤としてγ−メタクリロキシプロ
ピルトリメトキシシラン0.5重量部を投入して素練り
した。樹脂温度は140℃であった。表9の通り配合し
て160℃で15分加硫した。結果を表10に示した。
【0058】比較例10 (B)成分を配合しなかった以外は(A)ゴム成分はC
Oだけで実施例25〜28と同様に配合加硫した。結果
を表10に示した。
【0059】比較例11 (B)成分として120重量部と(A)ゴム成分として
100重量部を配合して実施例25〜28と同様にして
加硫した。結果を表10に示した。
【0060】
【表9】
【0061】
【表10】
【0062】
【発明の効果】本発明のポリアミド繊維強化ゴム組成物
は,ゴム状ポリマーに過酷な熱的条件を与えることなく
製造されて,ゴムマトリックス中にサブミクロンのポリ
アミド繊維が均一に分散しているので,配合物はグリー
ン強度やダイスウェルが優れたていて加工性が良好であ
り,又加硫物は引張応力が高いにもかかわらずその強度
や伸びに優れた繊維強化ゴム組成物が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 19/00 C08L 19/00 23/00 23/00 71/03 71/03 77/00 77/00 (72)発明者 中山 喜美男 千葉県市原市五井南海岸8番の1 宇部興 産株式会社高分子研究所

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(A)ブタジエンゴム,クロロプレンゴ
    ム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム,及びエピクロ
    ルヒドリンゴムから選択されるゴム成分100重量部及
    び(B)繊維強化熱可塑性組成物2〜100重量部から
    なり,(B)繊維強化熱可塑性組成物が以下の(a)〜
    (c)成分からなる; (a)ポリオレフィン 90〜40重量部,
    (b)熱可塑性ポリアミド繊維 10〜60重量部及び
    (c)シランカップリング剤ことを特徴とするポリアミ
    ド繊維強化ゴム組成物。
  2. 【請求項2】(B)繊維強化熱可塑性組成物中にポリア
    ミド繊維が平均繊維径1μm以下に繊維状に分散してい
    ることを特徴とする請求項1記載のポリアミド繊維強化
    ゴム組成物。
  3. 【請求項3】(A)ポリブタジエン,クロロプレンゴ
    ム,アクリロニトリルゴム−ブタジエンゴム,及びエピ
    クロルヒドリンゴムから選択されるゴム成分及び(B)
    繊維強化熱可塑性組成物からなる繊維強化ゴム組成物を
    170℃以下で混練して加硫配合剤を添加して加硫する
    請求項1記載のポリアミド繊維強化ゴム組成物の製造
    法。
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