JPH11193378A - 蛍光体の製造方法 - Google Patents

蛍光体の製造方法

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JPH11193378A
JPH11193378A JP30417798A JP30417798A JPH11193378A JP H11193378 A JPH11193378 A JP H11193378A JP 30417798 A JP30417798 A JP 30417798A JP 30417798 A JP30417798 A JP 30417798A JP H11193378 A JPH11193378 A JP H11193378A
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JP
Japan
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phosphor
grain growth
growth inhibitor
base material
producing
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JP30417798A
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Inventor
Yasuhiro Mano
泰広 真野
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Renesas Semiconductor Manufacturing Co Ltd
Kansai Nippon Electric Co Ltd
Original Assignee
Renesas Semiconductor Manufacturing Co Ltd
Kansai Nippon Electric Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来の方法で製造された分散型EL用蛍光体
は中心粒径が20〜30μmと大きいので、これを用い
た分散型ELの発光層は厚く、必要な輝度を得るために
は動作電圧を高くする必要があった。 【解決手段】 蛍光体材料に粒成長抑制剤を混合して
(工程11)1回目の焼成を行い(工程12)、洗浄、
乾燥して中間蛍光体とし(工程13)、次いで表面に付
着した粒成長抑制剤を除去し(工程14)、次いでボー
ルミルして結晶欠陥を形成し(工程15)、次いで2回
目の焼成を行い(工程16)、洗浄、乾燥して完成蛍光
体を得る(工程17)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は蛍光体の製造方法に
関し、特にエレクトロルミネッセンス(EL)を利用し
た分散型ELパネル、陰極線管、蛍光表示管などに好適
する高輝度の小粒径蛍光体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の蛍光体の製造方法について、分散
型EL用蛍光体を例にして説明する。分散型ELパネル
(以下、電界発光灯と称する。)は、図4に示すよう
に、透明フィルム1上に形成されたITOなどの透明電
極2と、アルミニウム箔、カーボンペーストなどの裏面
電極3の間に、銅、ハロゲンなどで付活した硫化亜鉛蛍
光体4を有機バインダ中に分散させた発光層5と、チタ
ン酸バリウムなどの高誘電物質を有機バインダ中に分散
させた反射絶縁層6とを薄く積層配置した構造をしてい
る。この電極間に交流電圧を印加すると蛍光体4に高電
界がかかり発光する。かかる電界発光灯7は極めて薄く
軽量で、しかも広い面積で発光するので液晶ディスプレ
イのバックライト、面状表示装置などに好適する。
【0003】上記蛍光体4は、通常、次のようにして製
造される。まず、母体用の粒径数μmの微粉末状の硫化
亜鉛(ZnS)と、付活剤用の0.1〜1.0mol%
の硫酸銅(CuSO4 )と、共付活剤と粒成長促進剤
(フラックス)を兼ねて5〜20mol%の塩化マグネ
シウム(MgCl2 )などのアルカリ土類金属やアルカ
リ金属のハロゲン化物とを混合する。この混合物を石英
るつぼに入れて約1000℃の温度で大気中、硫化水素
中などで数時間焼成し、次いでKCN水溶液で表面に付
着している硫化銅などの不純物を洗浄・除去し乾燥し
て、粉末の蛍光体4を得る。
【0004】しかし、この蛍光体は必ずしも長寿命では
ないため、前記のような混合物を1100〜1200℃
の高温で3〜10時間焼成し、脱イオン水で洗浄して中
間蛍光体を作り、これにラバープレスで静加圧を加えて
六方晶型から立方晶型に結晶変換し、さらに700〜9
50℃でアニールすることにより立方晶型で粒径の大き
い高輝度・長寿命の蛍光体を得ることができる(特開昭
61−296085号公報)。
【0005】また、1回目の高温焼成で得た中間蛍光体
をボールミル内で撹拌し、中間蛍光体に衝撃力を加えて
歪みを発生させ、結晶に欠陥を生じさせた後500〜8
00℃の温度で大気中で2回目の焼成をすることにより
歪みに銅を偏析させ高輝度・長寿命化を実現したものも
ある(特開平6−306355号公報)。
【0006】
【発明が解決しょうとする課題】近年、携帯電話、PH
S、ページャなど液晶ディスプレイを搭載した携帯用小
型無線機器が爆発的に普及している。この種の機器は電
池を電源にしているため低消費電力が必須条件である。
液晶ディスプレイのバックライトに使用される電界発光
灯は機器の構成部品の中でも消費電力が高いので、特
に、低電圧で動作し、かつ、高輝度の電界発光灯が望ま
れている。ところが、上記の方法で製造された従来の蛍
光体を用いた電界発光灯は、動作電圧が交流で約50V
以上と高く消費電力が大きくなり、また、電池の数Vの
直流電圧を交流電圧に変換するインバータが大型化する
と共に高価になるという問題がある。
【0007】動作電圧が高い理由の一つは、従来の製法
による蛍光体4の中心粒径が20〜30μm程度と大き
いためである。すなわち、この蛍光体4を有機バインダ
中に分散した発光層5を均一に印刷するためには発光層
の膜厚が約50μmと厚くなるので、印加電圧が発光層
に有効に印加されなくなる。このため蛍光体にかかる電
界強度が小さくなり発光輝度が不足するため、動作電圧
を高くして必要な輝度を得ている。対策として、高輝度
小粒径の蛍光体であれば発光層の膜厚を薄くでき、電界
発光灯の動作電圧を低下できる。なお、粒径が大きくて
も輝度が十分に大きければ動作電圧を低下できるが、実
現容易ではない。一般的に粒径を小さくするには、焼成
温度を下げる方法、焼成時間を短縮する方法、フラック
ス量を少なくする方法などがあるが、いずれも輝度が低
下して実用的でない。特に、フラックスは共付活剤も兼
ねているのでフラックス量を減らすと共付活剤が不足し
て輝度が低下する。
【0008】そこで、本発明は上記の問題点に鑑みて提
案されたもので、その目的は、低電圧で高輝度が得られ
る高輝度・小粒径の蛍光体の製造方法を提供することで
ある。中心粒径としては用途によって異なるが、例え
ば、電界発光灯用は20μm以下で、しかも粒径の揃っ
たものが望ましい。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の蛍光体の製造方
法は、蛍光体母体原料と、フラックスと、付活剤原料
と、蛍光体母体原料と反応しない粒成長抑制剤とを混合
して焼成し中間蛍光体を得る工程と、前記中間蛍光体か
ら前記粒成長抑制剤を除去する工程とを具備することを
特徴とする。この手段により、焼成において粒成長抑制
剤の作用により母体原料の結晶成長が抑制され、高輝度
で小粒径の蛍光体が合成できる。
【0010】また、蛍光体母体原料と、フラックスと、
付活剤原料と、蛍光体母体原料と反応しない粒成長抑制
剤とを混合して1回目の焼成を行い中間蛍光体を得る工
程と、中間蛍光体から前記粒成長抑制剤を除去する工程
と、ミリング、超音波振動などにより中間蛍光体に結晶
欠陥を形成する工程と、結晶欠陥を形成した中間蛍光体
を1回目の焼成温度より低い温度で2回目の焼成をする
工程とを具備することを特徴とする。この手段により、
最高度に高輝度化した小粒径の蛍光体を提供できる。
【0011】また、蛍光体母体原料の中心粒径に対する
粒成長抑制剤の中心粒径の比率が0.2〜1.7である
ことを特徴とする。この手段により、粒成長抑制剤が残
存しない高輝度小粒径蛍光体を合成できる。
【0012】また、蛍光体母体原料に対する粒成長抑制
剤の混合重量比率が3〜100wt%であることを特徴
とする。この手段により、例えば20μm以下の高輝度
小粒径蛍光体を合成できる。
【0013】また、粒成長抑制剤が金属化合物であっ
て、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウムな
どの金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの窒
化物、炭化珪素、炭化タングステン、炭化タンタルなど
の炭化物など高温度下で化学的に安定な金属化合物の一
種以上からなることを特徴とする。これらの材料は安定
で取り扱いが容易であり、高輝度小粒径の蛍光体を容易
に提供できる。
【0014】また、蛍光体母体原料が硫化亜鉛であり、
粒成長抑制剤が酸化アルミニウムであることを特徴とす
る。この手段により、電界発光灯用または陰極線管用の
高輝度小粒径の蛍光体を容易かつ安価に提供できる。
【0015】また、蛍光体母体原料が硫化亜鉛であり、
粒成長抑制剤が酸化珪素であることを特徴とする。この
手段により、電界発光灯用または陰極線管用の高輝度小
粒径の蛍光体を容易かつ安価に提供できる。
【0016】また、超音波振動により粒成長抑制剤を除
去することを特徴とする。この手段により、中間蛍光体
に損傷を与えることなく容易に粒成長抑制剤を分離除去
できる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の蛍光体の製造方法は、蛍
光体母体原料と、フラックスと、付活剤原料と、蛍光体
母体原料と反応しない粒成長抑制剤とを混合して焼成し
中間蛍光体を得る工程と、前記中間蛍光体から前記粒成
長抑制剤を除去する工程とを具備することを特徴とす
る。本発明の製造方法は基本的に液相結晶成長を利用す
るものである。そのため、フラックスが必要である。焼
成中、フラックスが溶融して母体原料粒子間を埋めるの
で母体原料粒子どうしの接触の機会が増し、液相結晶成
長が起きるが、粒成長抑制剤が蛍光体母体原料粒子の間
隙を埋めると母体原料粒子同士が接触する割合が減り、
液相結晶成長が抑制されるため、付活剤や共付活剤が適
量であり、かつ、結晶成長に十分な焼成条件であるにも
かかわらず母体原料の結晶成長が抑制され、高輝度で小
粒径の蛍光体が容易に合成できる。ここで、反応しない
とは、物理的、化学的に安定であり、蛍光体母体原料と
全く反応しないか、極くわずかしか反応しないことを意
味する。
【0018】また、蛍光体母体原料と、フラックスと、
付活剤原料と、蛍光体母体原料と反応しない粒成長抑制
剤とを混合して1回目の焼成を行い中間蛍光体を得る工
程と、中間蛍光体から前記粒成長抑制剤を除去する工程
と、除去後の中間蛍光体に結晶欠陥を形成する工程と、
結晶欠陥を形成した中間蛍光体を1回目の焼成温度より
低い温度で2回目の焼成をする工程とを具備することを
特徴とする。この手段により電界発光に寄与する導電層
が高密度に形成され、最高度に高輝度化した小粒径蛍光
体を実現できる。なお、粒成長抑制剤を分離除去する工
程と結晶欠陥を形成する工程の順序は逆にしてもよい。
特に、結晶欠陥を形成する方法はどのような方法でもよ
い。例えば、ミリング、超音波振動、ラバープレスなど
力を加える方法、熱を加える方法、放射線を照射する方
法などがある。ミリングとしては、ボールミル(例え
ば、日刊工業新聞社:粉体機器・装置ハンドブック(1
995、5.30、初版)、p.74〜p.79に記載
のように、転動ミル、振動ミル、遊星ミル、媒体攪拌ミ
ルなどを含む。)や、ボールミル以外のミリングが好適
する。
【0019】本発明で用いる粒成長抑制剤としては、目
標とする化学組成の蛍光体を得るための焼成条件(温
度、時間、雰囲気など)のもとで蛍光体母体原料と反応
しないものが望ましい。そのような粒成長抑制剤として
は、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコ
ニウムなどの金属酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウム
などの窒化物、炭化珪素、炭化タングステン、炭化タン
タルなどの炭化物など高温度下で化学的に安定な金属化
合物が好適する。
【0020】また、焼成温度が高すぎると粒成長抑制剤
が分解したり反応することがある。このため、例えばZ
nSとAl の組合せの場合、焼成温度は150
0℃を越えるべきでないし、また、ZnSとSiO
の組合せの場合、1300℃を越えるべきでない。ま
た、母体原料同士の直接接触を緩和するため、粒成長抑
制剤の平均粒径は母体原料の平均粒径と同等または小さ
いことが望ましい。粒径比率が大きすぎると粒成長抑制
効果が減り小粒子化が難しく、最適値がある。また、母
体原料同士の接触を有効に緩和するため母体原料に対す
る粒成長抑制剤の重量比率も最適範囲がある。重量比が
小さすぎると量が不足して抑制剤の効果がなく母体原料
が容易に接触して大粒子となり、大きすぎると粒成長抑
制剤が蛍光体表面に付着残存して分離できず輝度が低く
なる。
【0021】また、本発明で用いる母体原料は粒成長抑
制剤と反応しないものであれば制限はなく、本発明は電
界発光灯のほか、陰極線管や蛍光表示管などどのような
用途のどのような組成の蛍光体の製造にも適用できる。
また、本発明で用いるフラックス、付活剤原料、共付活
剤原料にも特に制限はなく、一般的な材料が使用でき
る。
【0022】また、本発明の蛍光体の製造方法の他の特
徴は、焼成後の中間蛍光体に付着している粒成長抑制剤
を除去する工程を備えていることである。粒成長抑制剤
は発光しないので、これを除去する必要がある。除去手
段は蛍光体に悪影響を及ぼさない限りどのような方法で
もよい。望ましい具体例としては、例えば、超音波振動
で機械的に分離し、混合物を水中の沈降速度の差で分級
して粒成長抑制剤を除去する方法がある。中間蛍光体と
粒成長抑制剤の粒径分布が重ならない場合は篩で分別し
てもよい。
【0023】さて、本発明の粒成長抑制剤を蛍光体母体
原料と混合して焼成することにより小粒径蛍光体が得ら
れる理由は次のとおりである。すなわち、従来の方法で
は図2(a)に示すように、例えば多くのZnS粒子が
焼成により液相となったフラックス(図示しない)に溶
け込んで粒子どうしの接触の機会が増し、より大きな蛍
光体粒子に成長するので粒径が大きい。これに対して本
発明では図2(b)に示すように、粒成長抑制剤(例え
ば酸化アルミニウム)の微粒子が各ZnS粒子の間隙を
埋めてZnS粒子同士の接触を阻害するので、例えば破
線の円で囲まれたような近傍にある比較的少数のZnS
粒子しか一つの蛍光体粒子に成長しないためである。
【0024】
【実施例】(実施例1)以下本発明の第1の実施例とし
て電界発光灯用の蛍光体の製造方法について図1を参照
しながら説明する。まず、中心粒径約3μm(ただし、
1次粒子の中心粒径は約0.05μm)の凝集粉末状の
硫化亜鉛(ZnS)100グラムに対して、付活剤とし
て0.1mol%の硫酸銅(CuSO4 )を湿式混合し
乾燥した。次に、前記混合物に粒成長抑制剤として平均
粒径2μmのα−アルミナ(例えば、住友化学工業
(株)製“スミコランダム、AA−2”)100グラム
を乾式で混合し、さらに共付活剤兼フラックスとしてZ
nSに対し10mol%の塩化マグネシウム(MgCl
2 )を乾式で混合した(工程11)。次に、この混合物
を石英るつぼに入れて空気中で1200℃の温度で3時
間焼成し(1回目の焼成)(工程12)、焼成後脱イオ
ン水で数回洗浄し、乾燥して中間蛍光体を得た(工程1
3)。この中間蛍光体を電子顕微鏡(SEM)で観察す
ると、図3に示すように中間蛍光体8の表面に多数のア
ルミナ粒子9が付着していた。なお、1回目の焼成の温
度は立方晶から六方晶への結晶転移温度1020℃より
高い温度範囲で適宜選択する。
【0025】次に、α−アルミナ粒子が付着した中間蛍
光体と脱イオン水をビーカーに入れ、撹拌しながら超音
波振動を加えて中間蛍光体に付着したアルミナ粒子を機
械的に分離した。次いで撹拌のみ停止すると沈降速度の
差によりアルミナ粒子がビーカーの上部に浮き、中間蛍
光体が下部に溜まるので、上部のアルミナ粒子を除去し
た(工程14)。この操作を数回繰り返して分離除去を
徹底し、最後に中間蛍光体を取り出して乾燥した。な
お、アルミナ粒子を除去した後の中間蛍光体をSEMで
観察したところ、表面に多数の微小な凹部があった。凹
部の形状、サイズ、分布状態などから、この凹部はアル
ミナ粒子が付着した痕跡であった。これらの状況から判
断すると、蛍光体母体原料とアルミナは実質的に化合物
を形成していない。
【0026】次に、アルミナ粒子を除去した上記中間蛍
光体と約1mmφのアルミナ球とを磁性ポットに入れて
50rpmの回転数で3時間ミリングし、中間蛍光体に
衝撃力を加え、粉砕することなく中間蛍光体粒子内に歪
み(結晶欠陥)を形成した(工程15)。次に、歪みを
形成した中間蛍光体を再び石英るつぼに入れて2回目の
焼成をした(工程16)。2回目の焼成は結晶転移温度
より低温の500〜900℃で、30分〜3時間行なっ
た。この焼成により前記の歪みをきっかけとして中間蛍
光体の結晶の一部が六方晶型から立方晶型へ転移すると
共に、境界部に銅が偏析し、電界発光に寄与する導電層
が形成される。なお、2回目の焼成に先だち付活剤、共
付活剤などを補給添加してもよい。次に、2回目の焼成
をした中間蛍光体をKCN水溶液で洗浄して表面に付着
した硫化銅などの不要物を除去し、さらに脱イオン水で
洗浄し、オーブン内で乾燥して蛍光体として完成した
(工程17)。
【0027】(実施例2〜4)本発明の第2乃至第4の
実施例は、α−アルミナの平均粒径をそれぞれ0.6、
5、18μmとした以外は実施例1と同一仕様で蛍光体
を製造した。
【0028】(実施例5〜8)本発明の第5乃至第8の
実施例は、α−アルミナの混合重量をそれぞれ50、2
5、10、1グラムとした以外は実施例1と同一仕様で
蛍光体を製造した。
【0029】(比較例1)従来例として、α−アルミナ
を使用しないで実施例1と同様にして蛍光体を製造し
た。
【0030】上記各実施例および比較例に示した仕様で
製造した蛍光体の中心粒径を、市販のレーザ回折式粒度
分布測定装置((株)堀場製作所製、型式LA−50
0)を用いて測定した結果を表1に示す。本発明による
蛍光体は従来製法による蛍光体よりも中心粒径が小さく
なった。例えば、実施例1では中心粒径13.70μ
m、10%粒子径8.22μm、90%粒子径22.3
3μmとなり、粒径の揃った小粒径蛍光体を得た。ま
た、これらの蛍光体を用いて図4に示した構造の発光層
を最適化した電界発光灯を作成し、正弦波交流電圧(6
00Hz)を印加して電圧−輝度特性を測定したとこ
ろ、実施例4以外の本発明によるものは、従来製法によ
るものよりも低電圧側へシフトし、同一電圧で高い発光
輝度を得た。輝度を同一にすれば、動作電圧が低下す
る。比較例1と同一輝度の場合、比較例1の動作電圧よ
り低減できる電圧量(シフト量)の結果も併せて表1に
示す。本発明により低電圧で動作する高輝度・小粒径の
蛍光体を実現できた。
【0031】
【表1】
【0032】表1によれば、完成蛍光体の中心粒径はア
ルミナの中心粒径に弱く依存している。アルミナの中心
粒径が小さいほど沈降による分離は容易であるが、実施
例4のように大きくなると沈降による分離が困難にな
る。このため中心粒径3μmの硫化亜鉛(母体原料)に
対する望ましいアルミナ(粒成長抑制剤)の中心粒径は
0.6〜5μmである。粒成長抑制の原理からすると、
粒成長抑制効果は母体原料と粒成長抑制剤との相対的な
粒径に依存する。したがって、母体原料の中心粒径に対
する粒成長抑制剤の中心粒径の比率で表すことが適切で
あり、望ましい比率は0・2(=0・6/3)〜1・7
(=5/3)である。0.2未満では溶融したフラック
ス中を微小な粒成長抑制剤が流動するので粒成長抑制効
果が小さくなるという問題があり、1.7を越えると分
離困難となり残存する粒成長抑制剤が発光を吸収して輝
度が低下するという問題がある。
【0033】また、表1によれば、完成蛍光体の中心粒
径はアルミナの混合重量に依存しており、混合重量が大
きいほど蛍光体の中心粒径が小さくなる。望ましい蛍光
体の中心粒径は20μm以下であり、アルミナ約3グラ
ムに相当するから、硫化亜鉛100グラムに対してアル
ミナの混合重量は3〜100グラムが望ましい。この場
合も母体原料に対する粒成長抑制剤の混合重量比率で表
すことが適切であり、望ましい比率は3〜100wt%
である。3wt%未満では十分な小粒径蛍光体が得られ
ないし、100wt%を越えると粒成長抑制剤が多すぎ
て蛍光体表面に付着し分離困難となり、発光を吸収して
輝度が低下するという問題がある。
【0034】上記の実施例では、蛍光体母体原料として
ZnSを使用したが、これに限定されずZnSe、(Z
nCd)Sなどなんでもよい。粒成長抑制剤としては酸
化アルミニウム(アルミナ)を使用した例を説明した
が、酸化珪素(シリカ)、酸化ジルコニウムなど高温で
安定な金属酸化物の微小粉末でも同様の効果が得られ
る。また、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの窒化物、
炭化珪素、炭化タングステン、炭化タンタルなどの炭化
物など高温度下で化学的に安定な金属化合物が好適す
る。また、これらの金属化合物の複数混合物でもよい。
また、焼成を2回行なった例について説明したが、1回
目の焼成だけにしてもよい。焼成を1回にしても粒成長
抑制剤を添加することにより小粒子蛍光体を得ることが
できるが、輝度は焼成2回の場合より小さくなる。
【0035】上記の各実施例では、粒成長抑制剤を除去
した中間蛍光体をボールミルして中間蛍光体に歪み(結
晶欠陥)を形成したが、歪みを形成できればボールミル
だけでなくどのような方法でもよく、超音波振動を加え
ることによっても歪みを形成できるし、ラバープレスな
どでもよい。特に超音波振動を加える場合、純水1リッ
トル中に上記中間蛍光体200グラムを入れたビーカー
を超音波振動装置(BRANSONIC U.S.CLEANER B320
0、周波数47KHz、出力120ワット)の水槽に入
れ、攪拌しながら5〜30時間超音波振動を加えると、
ボールミルと同様の効果が得られた。超音波処理はボー
ルミルに比べて簡易な方法である。前(または後)工程
で超音波処理によって中間蛍光体から粒成長抑制剤を除
去する場合、同一の超音波振動装置を使用できることも
有利である。
【0036】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の蛍光体
の製造方法は、蛍光体母体原料と、フラックスと、付活
剤原料と、蛍光体母体原料と反応しない粒成長抑制剤と
を混合して焼成し中間蛍光体を得る工程と、前記中間蛍
光体から前記粒成長抑制剤を除去する工程とを具備する
ことを特徴とする。これにより、粒成長抑制剤が蛍光体
母体原料粒子の間隙を埋めるため、母体原料粒子同士が
接触する割合が減るので、結晶成長にとって十分な焼成
条件であるにもかかわらず母体原料の結晶成長が抑制さ
れ、高輝度で小粒径の蛍光体が合成できる。この方法で
製造した硫化亜鉛系蛍光体を用いると、低電圧で動作す
る薄型かつ高輝度の分散型ELパネルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の蛍光体の製造方法を示す工程図
【図2】 本発明による小粒子蛍光体の合成原理を説明
するための模式図
【図3】 本発明の1回目の焼成後の中間蛍光体の外観
【図4】 従来の方法で製造された蛍光体を用いた分散
型ELパネルの要部拡大断面図
【符号の説明】
8 中間蛍光体 9 アルミナ粒子 11 蛍光体材料と粒成長抑制剤とを混合する工程 12 1回目の焼成工程 13 洗浄乾燥して中間蛍光体を得る工程 14 中間蛍光体から粒成長抑制剤を除去する工程 15 除去後の中間蛍光体に結晶欠陥を形成する工程 16 2回目の焼成工程 17 洗浄乾燥して完成蛍光体を得る工程

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】蛍光体母体原料と、フラックスと、付活剤
    原料と、蛍光体母体原料と反応しない粒成長抑制剤とを
    混合して焼成し中間蛍光体を得る工程と、該中間蛍光体
    から前記粒成長抑制剤を除去する工程とを具備する蛍光
    体の製造方法。
  2. 【請求項2】蛍光体母体原料と、フラックスと、付活剤
    原料と、蛍光体母体原料と反応しない粒成長抑制剤とを
    混合して1回目の焼成を行い中間蛍光体を得る工程と、
    中間蛍光体から前記粒成長抑制剤を除去する工程と、中
    間蛍光体に結晶欠陥を形成する工程と、結晶欠陥を形成
    した中間蛍光体を1回目の焼成温度より低い温度で2回
    目の焼成をする工程とを具備する蛍光体の製造方法。
  3. 【請求項3】蛍光体母体原料の中心粒径に対する粒成長
    抑制剤の中心粒径の比率が0.2〜1.7であることを
    特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光体の製
    造方法。
  4. 【請求項4】蛍光体母体原料に対する粒成長抑制剤の混
    合重量比率が3〜100wt%であることを特徴とする
    請求項1または請求項2に記載の蛍光体の製造方法。
  5. 【請求項5】粒成長抑制剤が金属化合物であって、酸化
    アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウムなどの金属
    酸化物、窒化珪素、窒化アルミニウムなどの窒化物、炭
    化珪素、炭化タングステン、炭化タンタルなどの炭化物
    など高温度下で化学的に安定な金属化合物の一種以上か
    らなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載
    の蛍光体の製造方法。
  6. 【請求項6】蛍光体母体原料が硫化亜鉛であり、粒成長
    抑制剤が酸化アルミニウムであることを特徴とする請求
    項1または請求項2に記載の蛍光体の製造方法。
  7. 【請求項7】蛍光体母体原料が硫化亜鉛であり、粒成長
    抑制剤が酸化珪素であることを特徴とする請求項1また
    は請求項2に記載の蛍光体の製造方法。
  8. 【請求項8】超音波振動により粒成長抑制剤を除去する
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蛍光
    体の製造方法。
  9. 【請求項9】ミリングにより中間蛍光体に結晶欠陥を形
    成することを特徴とする請求項2に記載の蛍光体の製造
    方法。
  10. 【請求項10】超音波振動により中間蛍光体に結晶欠陥
    を形成することを特徴とする請求項2に記載の蛍光体の
    製造方法。
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