JPH1111020A - 有機薄膜及びそれを用いた光情報記録媒体並びに情報の記録・再生・消去方法 - Google Patents

有機薄膜及びそれを用いた光情報記録媒体並びに情報の記録・再生・消去方法

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JPH1111020A
JPH1111020A JP9185916A JP18591697A JPH1111020A JP H1111020 A JPH1111020 A JP H1111020A JP 9185916 A JP9185916 A JP 9185916A JP 18591697 A JP18591697 A JP 18591697A JP H1111020 A JPH1111020 A JP H1111020A
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JP
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dye molecules
molecules
group
dye
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JP9185916A
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English (en)
Inventor
Noboru Sasa
登 笹
Tsutomu Sato
勉 佐藤
Tatsuya Tomura
辰也 戸村
Yasunobu Ueno
泰伸 植野
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Ricoh Co Ltd
Original Assignee
Ricoh Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 光や熱などの外部エネルギーの付与により大
きな吸光または反射スペクトルのシフトを生じ、また光
や熱などの外部エネルギーの付与条件によりそのスペク
トルシフトが良好な可逆変化を示す有機薄膜、それを記
録層に用いた光情報記録媒体、および情報の記録・再生
・消去方法を提供する。 【解決手段】 色素分子と他分子とを含む混合系材料か
らなり、色素分子に置換された置換基同士の相互作用に
よって色素分子が会合あるいは凝集した状態と、色素分
子と他分子との相互作用によって色素分子が分散した状
態とにより異なる吸光スペクトルを示す有機薄膜。この
有機薄膜を記録層とする光情報記録媒体。光や熱などの
外部エネルギーの付与による状態変化によって情報を記
録あるいは消去し、スペクトル変化による吸光度の差に
基づく透過光量あるいは反射光量の差により再生信号を
得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光や熱などの外部
エネルギーの付与条件により吸光あるいは反射スペクト
ルが良好な可逆変化を示す有機薄膜、およびそれを用い
た光情報記録媒体、並びに光情報記録媒体への情報の記
録方法、情報の再生方法、および情報の消去方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、書き換え型の光情報記録媒体の記
録層には、一般に無機系材料が用いられ、例えば、カー
効果を利用したTeFeCo等の合金からなる光磁気記
録層、カルコゲナイド薄膜により相変化を利用した相変
化型光記録層などが知られている。これら無機系材料は
有害物質を多く含んでおり、また、その成膜方法が蒸着
やスパッタリングなどに限定されるためコスト高になる
という難点を有している。これらのことから、有機系材
料を記録層に用いた光情報記録媒体が注目されるように
なってきている。
【0003】有機系材料を用いた書き換え型の光情報記
録媒体としては、スピロピラン等のフォトクロミック化
合物を用いたもの(特開昭59−227972号公報
等)、液晶高分子と色素との混合物を用いたもの(特開
平2−136289号公報等)、配位原子を含む基を有
する第一の高分子化合物、第一の高分子化合物と相互作
用できる色素および低融点をもつ第二の高分子化合物を
用いたもの(特開平4−339865号公報等)などが
提案されている。しかしながら、スピロピラン等のフォ
トクロミック化合物は、記録状態の安定性や記録・消去
の繰り返し性が良くなく、また、読みだし破壊等の問題
があり、未だ実用段階に至っていない。
【0004】液晶高分子と色素との混合物からなる記録
層は、加熱−冷却条件の相違により異なった光学的性質
を示すものであり、その可逆変化のメカニズムは、液晶
高分子の側鎖の配列状態が変化することで液晶高分子と
色素間の相互作用が変化し、結果として記録層の光学的
特性を可逆的に変化させるものであり、また、配位原子
を含む基を有する第一の高分子化合物、第一の高分子化
合物と相互作用できる色素および低融点をもつ第二の高
分子化合物を含有してなる記録層は、相対的に高温に加
熱された場合と相対的に低温に加熱された場合で吸光ス
ペクトルが変化することを利用するものであるが、これ
らは記録コントラスト、消去比、或いは感度などで実用
的には未だ十分でなく、新規な材料の開発が必要とされ
ている。
【0005】さらに、特開平6−223374号公報に
は、光照射によって会合状態が生じる色素材料を含有す
る記録膜を用いることにより、また特開平6−2514
17号公報には、フタロシアニンポリマーを用いること
により、光学特性の変化、すなわち再生レーザー光波長
域の光透過率の変化を利用して高感度で高密度の記録を
行うことが開示されているが、書き換え型の光情報記録
媒体としての記載はなく、また記録モ−ドは光照射を受
けた部分の反射率が大きくなる、所謂Lowto Hi
gh型の記録であり通常の光ディスクとは記録極性が逆
となっている。また、特開平6−251418号公報に
は、特定のフタロシアニンと融点が140℃〜250℃
の範囲にある有機化合物とからなる記録膜により、光透
過率の変化を利用して記録および消去を行うことが開示
されており、再生レーザー光に対する反射レベルが未記
録状態の42%から記録状態の56%に変化することが
示されているが、記録コントラストや反射率としては実
用的には未だ充分ではない。また、この場合もLow
to High型の記録であり通常の光ディスクとは記
録極性が逆となっている。このように、光透過率の変化
を利用した光情報記録媒体はほとんど全てがLow t
o High型の記録であり、未記録状態で60〜70
%以上の反射率が必要なCDファミリー系の光情報記録
媒体として用いることは困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明の課題は
このような問題点を解決し、光や熱などの外部エネルギ
ーの付与により大きな吸光または反射スペクトルのシフ
トを生じ、また光や熱などの外部エネルギーの付与条件
によりそのスペクトルシフトが良好な可逆変化を示す有
機薄膜、特に光情報記録媒体に用いるのに適した有機薄
膜を提供することにある。
【0007】また、本発明の課題は、その有機薄膜を用
い、記録コントラストが大きく、且つ消去比が高く、更
に所謂High to Low型の記録である通常の光デ
ィスクと同一極性でも記録を行うことができ、CD、C
D−R等のCDファミリー系の光情報記録媒体と互換性
を有する高感度な書き換え型の光情報記録媒体を提供す
ることにある。また、本発明の課題は、その有機薄膜を
用いた追記型の光情報記録媒体、特に動画再生などの高
速転送レートが必要なアプリケ−ションや高密度化によ
るジッタ低減などの信号特性改善にも対応できる高感度
な追記型の光情報記録媒体を提供することにある。
【0008】更に、本発明の課題は、その書き換え型の
光情報記録媒体を用いた情報の記録、再生および消去方
法、あるいはその追記型の光情報記録媒体を用いた情報
の記録および再生方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は、色
素分子と他分子とを含む混合系材料からなり、色素分子
に置換された置換基同士の相互作用によって色素分子が
会合あるいは凝集した状態と、色素分子と他分子との相
互作用によって色素分子が分散した状態とにより異なる
スペクトル(吸光または反射スペクトル)を示すことを
特徴とする有機薄膜によって達成される。
【0010】また、本発明の上記課題は、基板上に記録
層を有する光情報記録媒体において、記録層が色素分子
と他分子とを含む混合系材料からなり、色素分子に置換
された置換基同士の相互作用によって色素分子が会合あ
るいは凝集した状態と、色素分子と他分子との相互作用
によって色素分子が分散した状態とにより異なるスペク
トルを示す有機薄膜であることを特徴とする光情報記録
媒体によって達成される。
【0011】本発明の有機薄膜によれば、色素分子が会
合あるいは凝集した状態と、色素分子が分散した状態と
を形成させることにより、大きなスペクトルシフトを生
じさせることができ、またこの状態変化は良好な可逆性
を有しており、スペクトルシフトが良好な可逆変化を示
す。この有機薄膜を記録層に用い、状態変化を未記録・
消去状態および記録状態として利用することにより、記
録コントラストが大きく、かつ消去比が高く、更に所謂
High to Low型の記録である通常の光ディスク
と同一極性でも記録を行うことができ、CD、CD−R
等のCDファミリー系の光情報記録媒体と互換性を有す
る書き換え型の光情報記録媒体を得ることができる。ま
た、上記の状態変化は記録層の形状変化を伴わないた
め、高感度化を図ることができる。また、本発明の有機
薄膜は、色素分子や他分子などの選択により、上記の状
態変化を不可逆変化とすることも可能であり、その有機
薄膜を記録層として用いることにより、特に高感度な追
記型の光情報記録媒体を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。
本発明における色素分子としては、下記一般式(1)ま
たは(2)で示され、中心金属Mに置換基を有するフタ
ロシアニン化合物またはナフタロシアニン化合物が好ま
しい。
【0013】
【化1】
【0014】
【化2】
【0015】(式中、Mは置換基を有する3価または4
価の金属原子を表し、X1〜X4は、それぞれ独立に水素
原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル
基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有して
もよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオ
キシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基
を有してもよいアリールチオ基、ニトロ基、シアノ基、
スルホン酸基、スルホン酸アミド基またはスルホン酸エ
ステル基を表し、k、l、m、nは置換基X1〜X4の置
換数で0〜4の整数を表す。)
【0016】中心金属Mとしては、(OR4)a、(O
SiR567)b、(OCOR8)c、(OPOR9
10)dなどの置換基を有する三価、あるいは四価の金属
が好ましい。ここで、a、b、c、dは1〜2の整数で
あり、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、独立に
水素原子、置換あるいは未置換の脂肪族もしくは芳香族
炭化水素基を表す。三価、あるいは四価の金属として
は、Al、Ga、In、Tl、Mn、Fe、Ru、C
r、Zr、Ti、Si、Ge、Sn、Vなどが挙げら
れ、脂肪族もしくは芳香族炭化水素基としてはアルキル
基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリ
ールオキシ基、アリールチオ基などが挙げられる。
【0017】この様に中心金属に置換基を有するフタロ
シアニン化合物またはナフタロシアニン化合物は、置換
基同士の分子間力等の相互作用により会合あるいは凝集
した状態を形成することができる。そして、中心金属に
置換基を持たない場合にはそれら化合物は平面的な骨格
どうしの分子間力によって会合あるいは凝集した状態を
形成し、光や熱エネルギーなどの外部エネルギーにより
それら化合物分子にダメージを与えることなく会合ある
いは凝集した状態を解くことが困難であるが、中心金属
に置換基を有する場合には、他分子との相互作用によっ
てそれら化合物分子にダメージを与えることなく会合あ
るいは凝集した状態を解きくことができ、それら化合物
を分散した状態とすることができる。
【0018】特に、下記一般式(3)または(4)で示
されるフタロシアニン化合物またはナフタロシアニン化
合物が好ましい。
【0019】
【化3】
【0020】
【化4】
【0021】(式中、X1〜X4は、それぞれ独立に水素
原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル
基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有して
もよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオ
キシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基
を有してもよいアリールチオ基、ニトロ基、シアノ基、
スルホン酸基、スルホン酸アミド基またはスルホン酸エ
ステル基を表し、k、l、m、nは置換基X1〜X4の置
換数で0〜4の整数を表す。R1、R2、R3はアルキル
基を表し、R1、R2、R3はアルキル基の種類が異なっ
ていても良く、R3はR1とR2のうち炭素数の大きいア
ルキル基よりも炭素数が5つ以上多いアルキル基であ
る。)
【0022】これらの化合物は、会合あるいは凝集した
状態と分散した状態とを形成させることにより、大きな
スペクトルシフトを生じさせることができ、またこの状
態変化は良好な可逆性を有しており、スペクトルシフト
が良好な可逆変化を示し、好ましいものである。更に、
1、R2が炭素数3以下のアルキル基であり、R3がR1
とR2のうち炭素数の大きいアルキル基よりも炭素数が
5つ以上多いアルキル基である一般式(3)または
(4)で示されるフタロシアニン化合物またはナフタロ
シアニン化合物が、特に好ましい。
【0023】次に、本発明において、色素分子と共に用
いられ色素分子の分散状態をつくるための他分子につい
て説明する。このような他分子としては、熱可塑性高分
子化合物、特にアルキル基を含む置換基を側鎖に導入し
た熱可塑性高分子化合物が好ましい。熱可塑性高分子化
合物としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、
ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル系樹
脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、
ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂など
を挙げることができる。
【0024】アルキル基を含む置換基を側鎖に導入した
熱可塑性高分子化合物としては、例えばポリメタクリル
酸エステル、ポリスチレン誘導体などが好ましく、特に
下記一般式(5)または(6)で示されるポリメタクリ
ル酸エステルまたはポリスチレン誘導体が好ましい。
【0025】
【化5】
【0026】(式中、Rは炭素数3以上の分岐を有して
もよいアルキル基を表し、nは重合度を表す。)
【0027】
【化6】
【0028】(式中、Yは水素原子またはメチル基を表
す。Z1〜Z5は水素原子または炭素数3以上の分岐を有
してもよいアルキル基を表し、Z1〜Z5のうち少なくと
も一つは炭素数3以上の分岐を有してもよいアルキル基
である。nは重合度を表す。)
【0029】色素分子と他分子との相互作用によって色
素分子の分散状態をつくるためには、他分子どうしの相
互作用が強くないこと、及び他分子と色素分子が相互作
用できることが必要である。このような点から、上記の
様な高分子化合物が好ましく、この高分子化合物の側鎖
のかさ高さ、立体障害を利用することにより、高分子化
合物同士の相互作用を低下させることができ、また高分
子化合物の側鎖と色素分子の置換基とに相互作用をもた
せ色素分子の分散状態を作ることができる。
【0030】上記の高分子化合物は、光や熱などの外部
エネルギーにより、いわば受動的に相互作用変化をもた
らす高分子化合物であるが、他にも外部エネルギーによ
り高分子が自ら変化を起こす能動型の高分子化合物も本
発明における他分子として用いることができる。この能
動型の高分子化合物は、光や熱などの外部エネルギーに
より電子的または構造的変化を可逆的に生ずる高分子化
合物であり、この可逆的な電子的または構造的変化を利
用して色素分子の会合あるいは凝集状態と分散状態を可
逆的に変化させることができる。
【0031】このような高分子化合物としては、例えば
フォトクロミズムやサーモクロミズムを示す高分子化合
物を挙げることができる。具体的には、例えば、主鎖ま
たは側鎖に、O、N、S、P、As、Se等の配位原子
を含んだ配位基をもつ高分子化合物、あるいは外部エネ
ルギーに対して分子鎖の形態が変化するような高分子化
合物などを挙げることができる。
【0032】更に、このような高分子化合物の具体例と
しては、下記一般式(7)で示される高分子化合物を挙
げることができる。
【0033】
【化7】
【0034】(式中、R11、R12は水素原子、または置
換基を有してもよいアルキル基を表す。ただし、R11
12が同時に水素となることはない。XはS、O、Se
またはNR13を表し、R13は水素原子、アルキル基、ま
たはアリール基を表す。なお、nは重合度を表す。)
【0035】これらのうち、Xが硫黄原子であるポリチ
オフェン誘導体が好ましく、特にR11、R12のうちの1
つが水素原子であり、他方がアルキル基であるポリ(3
−アルキルチオフェン)が好ましい。更に、このポリ
(3−アルキルチオフェン)のうちでも、有機溶媒への
溶解性、高分子化合物間の相互作用力、色素分子との相
互作用力等の関係から炭素数が6以上のアルキル基を有
するものが好ましい。
【0036】また、外部エネルギーが光である場合、上
述した分子鎖の形態が変化する高分子化合物は、光誘起
により分子鎖の形態が変化する光応答性高分子化合物と
いうことができ、例えば、1)高分子化合物の主鎖また
は側鎖に含まれている光感応基間の相互作用を光異性化
により変化させるもの。2)高分子主鎖に含まれている
光感応基の構造を変化させるもの。3)光照射により高
分子鎖に沿って電荷を可逆的に発生させ、それらの静電
反発を利用するもの、などのタイプのものを挙げること
ができる。
【0037】なお、本発明における記録層の前記状態変
化を不可逆変化とし、高感度な追記型の光情報記録媒体
を得るには、色素分子、または他分子である高分子化合
物を選択することにより、或いは色素分子と他分子であ
る高分子化合物との組成比を調整することにより、色素
分子を会合あるいは凝集状態、または分散状態の一方に
偏らせる様にすればよい。
【0038】次に、本発明の光情報記録媒体に情報を記
録する方法、記録した情報を再生する方法、記録した情
報を消去する方法について説明する。本発明の光情報記
録媒体への情報の記録は、1)色素分子に置換された置
換基同士の相互作用によって色素分子が会合あるいは凝
集した状態の記録層を有する光情報記録媒体に光や熱な
どの外部エネルギーを付与し、外部エネルギー付与部の
記録層において色素分子と他分子との相互作用によって
色素分子を分散状態とすることにより、外部エネルギー
付与部の記録層におけるスペクトルを色素分子が会合あ
るいは凝集した状態の記録層におけるスペクトルに対し
て変化させて情報を記録する方法、或いは2)色素分子
と他分子との相互作用によって色素分子が分散した状態
の記録層を有する光情報記録媒体に光や熱などの外部エ
ネルギーを付与し、外部エネルギー付与部の記録層にお
いて色素分子に置換された置換基同士の相互作用によっ
て色素分子を会合あるいは凝集した状態とすることによ
り、外部エネルギー付与部の記録層におけるスペクトル
を色素分子が分散した状態の記録層におけるスペクトル
に対して変化させて情報を記録する方法、によって行う
ことができる。
【0039】更に具体的には、色素分子が会合あるいは
凝集した状態の記録層を有する光情報記録媒体を加熱後
急冷することによって加熱後急冷部の記録層におけるス
ペクトルを色素分子が会合あるいは凝集した状態の記録
層におけるスペクトルに対して変化させることにより、
或いは、色素分子が分散した状態の記録層を有する光情
報記録媒体を加熱後徐冷することによって加熱後徐冷部
の記録層におけるスペクトルを色素分子が分散した状態
の記録層におけるスペクトルに対して変化させることに
より、光情報記録媒体に情報を記録することができる。
【0040】色素分子が会合あるいは凝集した未記録状
態の記録層は、色素分子として比較的会合あるいは凝集
力の大きな化合物を選択することにより、または初期に
アニーリング処理を施す等により得ることができる。ま
た、色素分子が分散した未記録状態の記録層は、色素分
子として比較的会合あるいは凝集力の弱い化合物を選択
することにより、または初期に分散化処理を施す等によ
り得ることができる。
【0041】この記録方法によれば、大きなスペクトル
シフトを生じさせることができ、記録コントラストの大
きな記録を行うことができる。また、上記の状態変化は
記録層の形状変化を伴わないため、高感度化や高転送レ
ート化を図ることができる。
【0042】本発明の光情報記録媒体に記録された情報
の再生は、上記1)あるいは2)の方法により情報が記
録された光情報記録媒体に再生レーザー光を照射し、記
録層の記録部と非記録部とにおける反射光量あるいは透
過光量の差を読み取ることにより行うことができる。こ
の再生方法によれば、記録部と非記録部とで再生レーザ
ー光の反射光量あるいは透過光量が大きく変化するの
で、大きなコントラストを有する再生信号を得ることが
できる。
【0043】また、本発明の光情報記録媒体に記録され
た情報の消去は、上記1)あるいは2)の方法により情
報が記録された光情報記録媒体に光や熱などの外部エネ
ルギーを付与し、a)色素分子と他分子との相互作用に
よって色素分子が分散した状態にある記録部を、色素分
子に置換された置換基同士の相互作用によって色素分子
が会合あるいは凝集した状態とすることにより記録層全
体を色素分子が会合あるいは凝集した状態の記録層と
し、あるいは、b)色素分子に置換された置換基同士の
相互作用によって色素分子が会合あるいは凝集した状態
にある記録部を、色素分子と他分子との相互作用によっ
て色素分子が分散した状態とすることにより、記録層全
体を色素分子が分散した状態の記録層とすることによっ
て、行うことができる。
【0044】更に具体的には、色素分子が会合あるいは
凝集した状態の記録層を有する光情報記録媒体を加熱後
急冷することによって情報が記録された光情報記録媒体
を加熱後徐冷することにより、記録層全体を色素分子が
会合あるいは凝集した状態の記録層とし、或いは、色素
分子が分散した状態の記録層を有する光情報記録媒体を
加熱後徐冷することによって情報が記録された光情報記
録媒体を加熱後急冷することにより、記録層全体を色素
分子が分散した状態の記録層として、光情報記録媒体に
記録された情報を消去することができる。
【0045】この情報の消去方法によれば、記録状態と
未記録・消去状態との変化が記録層の形状変化や化学的
変化を伴わない物理的な変化であるため、変化の可逆性
を容易に発現させることができ、また、消去比の大き
な、繰返し特性の良好な消去を行うことができる。
【0046】次に、本発明の光情報記録媒体の作製方
法、および光情報記録媒体に関する上記以外の付加的構
成について説明する。本発明の光情報記録媒体は、基板
上に、必要により下引き層を介して、記録層を形成し、
さらに必要に応じて反射層及び/又は保護層・基板表面
ハードコート層を形成することにより作製することがで
きる。
【0047】記録層には、光や熱などの外部エネルギー
の付与効率の向上、光エネルギー付与の際の波長整合
性、レーザ光吸収による発熱性向上、色素分子の会合あ
るいは凝集状態と分散状態との変化促進などのために、
他の色素を添加してもよい。そのような色素としては、
例えばポリメチン色素、ナフタロシアニン系、フタロシ
アニン系、スクアリリウム系、コロコニウム系、ピリリ
ウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンス
レン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズ
レン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、ト
リフェノチアジン系などの染料、および金属錯体化合物
などが挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、2種
以上の組合わせて用いてもよい。
【0048】また、記録層中に金属や金属化合物、例え
ばIn、Te、Bi、Al、Be、TeO2、SnO、
As、Cdなどを分散混合して、あるいはこれらを記録
層の上下に積層する形態で用いることもできる。
【0049】さらに、記録層中に高分子材料、例えばア
イオノマー樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、天
然高分子、シリコーン、液状ゴムなどの種々の材料、も
しくはシランカップリング剤などを分散混合して用いて
もよいし、あるいは特性改良の目的で、安定剤(例えば
遷移金属錯体)、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、
界面活性剤、可塑剤などと一緒に用いることができる。
【0050】記録層の形成は、蒸着、スパッタリング、
CVD、または溶剤塗布法などの通常の手段によって行
うことができる。塗布法を用いる場合には、色素分子と
色素分子の分散状態をつくるための他分子、例えば中心
金属に置換基を有するフタロシアニン化合物またはナフ
タロシアニン化合物とポリメタクリル酸エステルまたは
ポリスチレン誘導体、および必要により添加される上記
補助剤を有機溶媒に溶解させて、スプレー、ローラーコ
ーティング、ディッピングあるいはスピンコーティング
などの慣用のコーティング法によって、その溶液を基板
上あるいは下引き層上に塗布し乾燥させて記録層を形成
すればよい。
【0051】有機溶媒としては、一般にメタノール、エ
タノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセ
トン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなとのケ
トン類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメ
チルホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシ
ドなどのスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキ
サン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチ
ルエーテルなどのエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル
などのエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、ジク
ロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタンなどの脂肪
族ハロゲン化炭素類、あるいは、ベンゼン、キシレン、
モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族
類、メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセ
ルソルブ類、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メ
チルシクロヘキサンなどの炭化水素類などを用いること
ができる。
【0052】記録層の膜厚としては、100Å〜10μ
mが好ましく、特に200Å〜2000Åが好ましい。
【0053】光情報記録媒体に用いる基板材料として
は、例えばポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、
ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノー
ル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドなどのプラスチッ
ク、あるいはガラス、セラミック、金属などを挙げるこ
とができる。基板に必要な特性としては、基板側より記
録・再生を行う場合のみ使用レーザ光に対して透明でな
ければならず、記録層側から記録・再生を行う場合は透
明である必要はない。また、基板の表面にはトラッキン
グ用の案内溝や案内ビット、さらにアドレス信号などの
プレフォーマットが形成されていてもよい。
【0054】下引き層は、a)接着性の向上、b)水ま
たはガスなどのバリアー、c)記録層の保存安定性の向
上、d)反射率の向上、e)溶剤からの基板の保護、
f)案内溝・案内ビット・プレフォーマット等の形成な
どを目的として使用されるものであり、a)の目的に対
しては高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミ
ド樹脂、ビニル系樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコ
ーン、液状ゴムなどの種々の高分子物質、およびシラン
カップリング剤などを用いることができ、b)および
c)の目的に対しては、上記高分子材料以外に無機化合
物、例えばSiO2、MgF2、SiO、TiO2、Zn
O、TiN、SiNなど、或いは金属または半金属、例
えばZn、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Au、A
g、Alなどを用いることができる。またd)の目的に
対しては金属、例えばAl、Ag等や、金属光沢を有す
る有機薄膜、例えばメチン染料、キサンテン系染料等を
用いることができ、e)およびf)の目的に対しては紫
外線硬化樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を用いる
ことができる。下引き層の膜厚としては、0.01〜3
0μmが好ましく、特に0.05〜10μmが好まし
い。
【0055】保護層または基板表面ハ−ドコート層は、
a)傷、ホコリ、汚れ等からの記録層の保護、b)記録
層の保存安定性の向上、c)反射率の向上などを目的と
して使用されるものであり、前記下引き層の材料として
示した材料を用いることができる。また無機材料とし
て、SiO、SiO2なども用いることができ、有機材
料として、ポリメチルアクリレート、ポリカーボネー
ト、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、
ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、芳香族
炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレン−ブタジエン樹脂、
クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性
油、ロジン等の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性
樹脂なども用いることができる。上記材料のうち保護層
または基板表面ハードコート層に最も好ましい物質は、
生産性に優れた紫外線硬化樹脂である。保護層または基
板表面ハードコート層の膜厚としては、0.01〜30
μmが好ましく、特に0.05〜10μmが好ましい。
【0056】なお、下引き層、保護層または基板表面ハ
ードコート層には、記録層の場合と同様に、安定剤、分
散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤
等を含有させることができる。
【0057】反射層には単体で高反射率の得られる、腐
食されにくい金属、半金属等を用いることができ、材料
例としてはAu、Ag、Cu、Cr、Ni、Alなどが
挙げられ、特にAu、Alが好ましい。これらの金属、
半金属は単独で使用してもよく、2種以上の合金として
使用してもよい。膜形成方法としては、蒸着、スパッタ
リングなどが挙げられ、膜厚としては50〜3000Å
が好ましく、特に100〜1000Åが好ましい。
【0058】
【作用】フタロシアニン化合物やナフタロシアニン化合
物等の色素化合物を用いた光情報記録媒体における未記
録(消去)状態と記録状態との可逆性は、例えば結晶状
態、凝集状態、構造、電子的状態等の変化により生ずる
ものであるが、色素化合物単独では色素分子どうしの相
互作用による会合あるいは凝集状態を形成することはで
きるが、色素分子どうしの相互作用をなくした色素分子
の分散状態をつくることが困難であり、また分散状態を
つくることができても経時的安定性が悪く、徐々に会合
あるいは凝集状態へ戻ってしまう場合が多い。
【0059】本発明においては、会合あるいは凝集状態
を形成することができる色素分子、およびその色素分子
と相互作用をして色素分子の分散状態を形成することが
できる他分子を含む混合系材料からなる有機薄膜を記録
層として用いることにより、 1)未記録(消去)状態を色素分子の会合あるいは凝集
状態とし、記録状態を色素分子と他分子が相互作用した
色素分子の分散状態とする、あるいは2)未記録(消
去)状態を色素分子と他分子が相互作用した色素分子の
分散状態とし、記録状態を色素分子の会合あるいは凝集
状態とすることを特徴とするものである。そこで、以下
に本発明で用いることのできる色素分子の構造につて説
明する。
【0060】色素分子の分散状態と凝集状態の変化の可
逆性は、色素分子と色素分子との間の相互作用が変化す
るもので、図1に示すように、色素分子が他の色素分子
と相互作用しない単独に存在する状態、すなわち色素分
子が分散された状態における吸光スペクトル対して、色
素分子の凝集状態における吸光スペクトルは短波長側、
あるいは長波長側にシフトする。色素分子のいわゆるH
−会合、J−会合等の会合現象がこの凝集状態にあたる
ものである。
【0061】本発明においては、色素分子の基本骨格ど
うしの分子間力や静電力または双極子相互作用の力など
による不可逆的な会合あるいは凝集を防ぎ、色素分子の
会合あるいは凝集状態と分散状態との間の状態変化を光
や熱などの外部エネルギーの付与によってコントロール
できる程度な会合あるいは凝集状態が得られる色素分子
として、置換基を有する色素分子、好ましくは中心金属
に置換基を有する色素分子を用い、その置換基の凝集力
によって色素分子を会合あるいは凝集させて色素分子基
本骨格のπ共役系の相互作用を生じさせることによっ
て、スペクトルを色素分子の分散状態におけるスペクト
ルに対して変化させるものである。
【0062】色素分子に置換基がない場合(例えば、フ
タロシアニン、ナフタロシアニンの中心金属や基本骨格
に置換基がない場合)、あるいは置換基が小さい場合な
どには、色素分子どうしの相互作用力が大きく色素分子
間の距離も狭いため、光や熱などの外部エネルギーを付
与しても、この相互作用力に影響を与えることができ
ず、色素分子の状態を変化させることが困難である。一
方、置換基が非常に大きい場合などには、置換基の分子
間力相互作用により色素分子が会合あるいは凝集する可
能性はあるが、色素分子の基本骨格間の距離が大きくな
り、色素分子基本骨格のπ共役系間の相互作用がほとん
どなくなり、スペクトルを色素分子の分散状態における
スペクトルに対して変化させることができなくなる。
【0063】従って、光や熱などの外部エネルギーを付
与することによって色素分子の会合あるいは凝集状態と
色素分子の分散状態とを可逆的に変化させ、且つ色素分
子基本骨格のπ共役系の相互作用を生じさせてスペクト
ルを色素分子の分散状態におけるスペクトルに対して変
化させるためには、色素分子同士の距離が、色素分子基
本骨格のπ共役系の相互作用を生じさせ、しかも色素分
子の状態を可逆的に変化させるような範囲内となるよう
に色素分子における置換基の位置、置換基の種類あるい
は置換基の凝集力(分子間力)などを調整することが重
要である。
【0064】フタロシアニン化合物あるいはナフタロシ
アニン化合物の場合は、置換基の付く場所により大別す
ると、1)α位に置換基を有するタイプ、2)β位に置
換基を有するタイプ、3)中心金属に置換基を有するタ
イプ、に分けられる。これらのうち、α位に置換基を有
するタイプ、およびβ位に置換基を有するタイプのフタ
ロシアニン化合物あるいはナフタロシアニン化合物は異
性体の存在や置換基の回転・振動によるエネルギー準位
の存在により、吸光スペクトルが図2のaのように広が
り易く、会合あるいは凝集状態による吸光スペクトルの
シフトが生じても、その変化が非常に大きくなければ高
い記録コントラストは得られない。
【0065】他方、中心金属に置換基を有するタイプ、
いわゆる軸配位子型のフタロシアニン化合物あるいはナ
フタロシアニン化合物は、一般的に軸配位子の影響がフ
タロシアニン化合物あるいはナフタロシアニン化合物の
基本骨格に与える影響が少ないため、軸配位子の回転・
振動によるエネルギー状態間にほとんど差がない。また
α位やβ位に置換基を導入しなければ、異性体も存在し
ないため、図2のbのように広がりがなく、溶液状態の
ような鋭いピークを持つ吸光スペクトルを示し、このよ
うな軸配位子型の色素分子は、会合あるいは凝集状態に
よる色素分子と色素分子間の相互作用によって吸光スペ
クトルが僅かにシフトしても、高い記録コントラストが
得られる。
【0066】さらに、CD系メディアと互換性を持たせ
る構造とした場合、すなわち記録層の上に金属反射層を
設けた場合、α位に置換基を有するタイプおよびβ位に
置換基を有するタイプのフ夕ロシアニン化合物あるいは
ナフタロシアニン化合物は、スペクトルがブロードで、
もともと可逆変化の2つの安定状態を含んだスペクトル
形状を示すこと、本来メイン構造の色素には存在しない
はずの波長領域にも異性体の存在や置換基の回転・振動
によるエネルギー準位の存在により吸収があることなど
により、未記録状態や記録の消去状態において再生レー
ザー光の波長に対し比較的大きな吸収がある場合が多く
なり、未記録部分や記録の消去部分における再生レーザ
ー光の反射率が低下する恐れがある。そして、未記録・
消去部分の再生レーザー光の反射率を高くするような再
生波長(その波長ではほとんど吸収がない)を選択する
と、その波長に大きな吸収をもたせるようになるほどに
スペクトルを動かすことは容易でなく、CD系メディア
と互換性を持たせることが困難である。
【0067】他方、中心金属に置換基を有するタイプ、
いわゆる軸配位子型のフタロンアニン化合物あるいはナ
フタロシアニン化合物の場合には、スペクトルが僅かに
シフトしても、高い記録コントラストが得られるため、
未記録部分の反射率を高くするような波長(未記録・消
去部分ではほとんど吸収がない波長)の再生レーザー光
を選択しても、その波長に対して高い記録コントラスト
を与えるスペクトルのシフトを生じさせるような会合あ
るいは凝集状態を形成することができ、CD系メディア
と互換性を持たせることが容易である。
【0068】このように軸配位子型の色素分子によれ
ば、中心金属における置換基が色素分子間の距離を広げ
る働きをし、軸配位子を適当に選ぶことによって軸配位
子の凝集力、および軸配位子の空間立体障害性によって
色素分子間の距離をコントロールできるため、記録コン
トラストが高く、且つ良好な可逆性を有する記録層を形
成することができ、またCD系メディアとの互換性を有
する光情報記録媒体を得ることができる。
【0069】このような理由により、本発明における色
素分子としては、軸配位子型の色素分子、特に下記一般
式(1)または(2)で示される軸配位子型のフタロシ
アニン化合物あるいはナフタロシアニン化合物が好まし
い。
【0070】
【化1】
【0071】
【化2】
【0072】(式中、Mは置換基を有する3価または4
価の金属原子を表し、X1〜X4は、それぞれ独立に水素
原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル
基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有して
もよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオ
キシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基
を有してもよいアリールチオ基、ニトロ基、シアノ基、
スルホン酸基、スルホン酸アミド基またはスルホン酸エ
ステル基を表し、k、l、m、nは置換基X1〜X4の置
換数で0〜4の整数を表す。)
【0073】中心金属Mとしては、(OR4)a、(O
SiR567)b、(OCOR8)c、(OPOR9
10)dなどの置換基を有する三価、あるいは四価の金属
が好ましい。ここで、a、b、c、dは1〜2の整数で
あり、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10は、独立に
水素原子、置換あるいは未置換の脂肪族もしくは芳香族
炭化水素基を表す。三価、あるいは四価の金属として
は、Al、Ga、In、Tl、Mn、Fe、Ru、C
r、Zr、Ti、Si、Ge、Sn、Vなどが挙げら
れ、脂肪族もしくは芳香族炭化水素基としてはアルキル
基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリ
ールオキシ基、アリールチオ基などが挙げられる。
【0074】ところで、色素分子−色素分子間の相互作
用による吸光スペクトルは、単分子状態のハミルトニア
ンに双極子−双極子相互作用の項を取り込むことで近似
できる。双極子−双極子相互作用は次式で表される。
【0075】
【数1】E(μμ)=−(μA・μB/r3){2cosθAcosθB
sinθAsinθBcos(φA−φB)}
【0076】いま双極子−双極子相互作用の項のみを考
え、この相互作用によるエネルギー変化を調べると図3
および図4(但し、φA=φB)に示すように、フタロシ
アニン化合物あるいはナフタロシアニン化合物などにお
ける主骨格環がθ方向、φ方向、あるいはθ方向とφ方
向の混合で、どのような配置をとるかによって吸光スペ
クトルのシフト量も変わることがわかる。すなわち、エ
ネルギーが大きくなることは吸光スペクトルが短波長へ
シフトすることを、またエネルギーが小さくなることは
吸光スペクトルが長波長へシフトすることを示し、図4
からθが小さいうちは吸光スペクトルが短波長にシフト
し、θが大きくなると吸光スペクトルが長波長にシフト
することを示している。そしてそのシフト量は距離が近
づけば大きくなる。φに関しても同様な関係がある。
【0077】双極子−双極子相互作用の式を見てわかる
ように、この相互作用によるエネルギー変化を大きくす
るためには、1)双極子モーメントの大きさμA、μBを
大きくすること、2)距離rを小さくすること、あるい
は3)φ、θを最適化することが必要である。双極子モ
ーメントの大きさμA、μBを大きくすることは、フタロ
シアニン化合物あるいはナフタロシアニン化合物などに
おける主骨格環を変えることに対応するため、分子設計
が困難である。また前述のように、距離rを極端に小さ
くすることは吸光スペクトルのシフトやそのシフトの可
逆性を失わせることになるため好ましいものではない。
【0078】そこで、本発明においては、主骨格環のθ
方向、φ方向の配置、およびスペクトルシフト性を失わ
ない程度の範囲内での距離rをコントロールすることに
より、双極子−双極子相互作用力の変化、すなわち色素
分子基本骨格のπ共役系間の相互作用力の変化によって
吸光スペクトルのシフト量を大きくしようとするもので
あり、そのコントロールは中心金属の置換基、すなわち
軸配位子を選択することにより行うことができる。すな
わち、図5−(a)〜(d)に示すように、軸配位子を
変えることにより、〔(a)→(d)の順で傾きが大き
くなる〕軸配位子の傾きをコントロールすることがで
き、したがって色素分子同士が相互作用をする配置を変
えることができる(例えば、H会合状態にするか、J会
合状態にするかをコントロ−ルできる)。また、軸配位
子の空間立体障害性をコントロールすることでも同様に
色素分子同士の相互作用配置を変化させることができ
る。
【0079】このような軸配位子としてはアルキル基を
有するものが好ましい。これはアルキル基の凝集力が大
きく、アルキル基を大きくしても色素分子基本骨格のπ
共役系間の相互作用を持たせることができるためであ
る。また、アルキル基では立体障害性や長さなどの分子
設計がしやすいためである。前記の双極子−双極子相互
作用によるエネルギー変化を見てわかるように、非会
合、非凝集のいわゆる色素分子の分散状態に対して吸光
スペクトルのシフト量を大きくするためには、軸配位子
が比較的立った状態になるようにアルキル基を選択して
色素分子同士がH会合した状態、あるいはそれに近い状
態をとるようにすること、あるいは軸配位子が極端に寝
た状態になるようにアルキル基を選択して色素分子同士
がJ会合した状態、あるいはそれに近い状態をとるよう
にすることが好ましい。
【0080】例えば、下記一般式(3)または(4)で
示されるフタロシアニン化合物またはナフタロシアニン
化合物におけるR1、R2、R3にアルキル基を導入する
ことにより、H会合した状態あるいはJ会合した状態が
形成されるようにするには、あるいは色素分子分散状態
またはそれに近い状態と色素分子凝集状態のスペクトル
差が大きくなるように色素分子を凝集させるには、R3
をR1とR2のうち炭素数の大きいアルキル基よりも炭素
数が5つ以上多いアルキル基とすることが好ましく、特
にR1、R2を炭素数3以下のアルキル基とし、R3をR1
とR2のうち炭素数の大きいアルキル基よりも炭素数が
5つ以上多いアルキル基とすることが好ましい。
【0081】
【化3】
【0082】
【化4】
【0083】(式中、X1〜X4は、それぞれ独立に水素
原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル
基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有して
もよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオ
キシ基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基
を有してもよいアリールチオ基、ニトロ基、シアノ基、
スルホン酸基、スルホン酸アミド基またはスルホン酸エ
ステル基を表し、k、l、m、nは置換基X1〜X4の置
換数で0〜4の整数を表す。)
【0084】R1、R2、R3が同一で大きなアルキル基
である場合には、空間的に密で、フタロシアニン化合物
またはナフタロシアニン化合物同士があまり近づけなく
なり(図4におけるrが大きくなり)、色素分子基本骨
格のπ共役系の相互作用が低下するため吸光スペクトル
のシフト量が小さくなる。また、アルキル基3つが全て
大きなアルキル基であると、アルキル基の熱運動による
無秩序性が低下し、そのアルキル基部分が結晶化しやす
くなり、光情報記録媒体の記録層として使用することが
困難となる。
【0085】R1、R2、R3のうち1つのアルキル基を
長くし、他の2つを短くすることにより、このような難
点を改善することができる。更に、R1、R2、R3のう
ち1つのアルキル基を長くして、他の2つを短くし、且
つ長いアルキル基として中心金属に近い部分に分岐構造
を有するアルキル基を選択することによって軸配位子を
立たせることができ、また分岐構造を持たない極端に長
いアルキル基を1つもたせることによって軸配位子を寝
かせることができる可能性がある。但し、この軸配位子
の傾き、および空間的な広がりは他の2つのアルキル基
によって大きく変化するので、R1、R2、R3の選択に
より確認することが必要である。
【0086】本発明における軸配位子に適したアルキル
基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n
−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、ネオペン
チル基、イソアミル基、2−メチルブチル基、n−ヘキ
シル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル
基、4−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、n−
ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシ
ル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、
2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、n−オ
クチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル
基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、2
−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、n−ノニ
ル基、n−デシル基、n−ドデシル基等の一級アルキル
基、イソプロピル基、sec−ブチル基、1−エチルプ
ロピル基、1−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロ
ピル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルブチル基、
1,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル
基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘ
キシル基、1−エチルヘプチル基、1−プロピルブチル
基、1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、1−エ
チル−2−メチルブチル基、1−プロピル−2−メチル
プロピル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシ
ル基、1−プロピルペンチル基、1−イソプロピルペン
チル基、1−イソプロピル−2−メチルブチル基、1−
イソプロピル−3−メチルブチル基、1−メチルオクチ
ル基、1−エチルヘプチル基、1−プロピルヘキシル
基、1−イソブチル−3−メチルブチル基等の二級アル
キル基、tert−ブチル基、tert−へキシル基、
tert−アミル基、tert−オクチル基等の三級ア
ルキル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシ
ル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−tert−ブ
チルシクロヘキシル基、4−(2−エチルヘキシル)シ
クロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマ
ンタン基等のシクロアルキル基などが挙げられる。
【0087】また、前記一般式(1)、(2)、(3)
または(4)で示されるフタロシアニン化合物またはナ
フタロシアニン化合物における置換基X1〜X4として
は、立体的にあまり大きくなく、また置換基の数として
も少ないことが好ましい。置換基として立体的に大きい
ものを導入し、また置換基を数多く導入することは、軸
配位子型色素のスペクトルの特徴をなくすことになるか
らである。
【0088】次に、他分子による色素分子の分散状態の
形成について説明する。2つの分子AとBとの間におけ
る任意の型の相互作用に対して、任意に与えられた分子
間距離における相互作用エネルギーは、Aの或る分子的
性質とBの或る分子的性質の積に比例すると考えられ
る。そこで、この性質をそれぞれA,Bとする。従っ
て、様々な型の相互作用に対して、互いに接触する分子
AとBとの間の静電力、電荷−双極子相互作用、双極子
−双極子相互作用、電荷−誘起双極子相互作用、双極子
−誘起双極子相互作用、分散力(物理的結合)などによ
る相互作用エネルギーは、WAA=−A2、WBB=−B2
AB=−ABで表すことができる。ただし電荷−電荷間
の純粋なクーロン相互作用の場合のみ負の符号を正に換
える必要がある。
【0089】図6−(a)のように等量の分子AとBの
混合物を考えると、もし分子がランダムに分散している
ならば、1個のA分子の周囲には平均するとAとBの両
方が最接近分子として存在し、また、B分子につても同
様である。しかし、分子が会合あるいは凝集している場
合には、A分子とB分子のまわりの最接近分子の分子構
成は図6−(b)のようになる。したがって、会合ある
いは凝集したクラス夕ーと分散したクラスターのエネル
ギー差は、18個のA−B結合(A−B会合体あるいは
A−B凝集体といえる)の代わりに9個のA−A結合と
9個のB−B結合ができるため、δW=−9(A−B)
2になる。2個の分子が会合あるいは凝集した最も簡単
な場合は、図6−(c)、−(d)に示すようにδW=
−(A−B)2となる。さらに各中心分子が12個の最
近接分子で囲まれる状況において、6個のA分子と6個
のB分子が各AまたはB分子を囲む場合、27個のA−
A結合と27個のB−B結合が生じることから、δW=
−27(A−B)2となる。
【0090】したがって、一般的に、δW=W(会合)
−W(分散)=−n(A−B)2で示すことができる。
ここでnは関与する分子の数と、それらの相対的な大き
さに無関係に会合あるいは凝集する過程で形成される同
種分子間の結合(物理的結合)の数に常に等しい。この
ことから2元混合物における同種の分子間には、常に一
種の実効引力が存在し、同種分子の会合あるいは凝集状
態は分散状態に比べてエネルギー的に有利であると考え
られる。
【0091】そこで、色素分子の分散状態を形成させる
ためには、色素分子の分散状態を安定的につくるような
他分子を色素分子と共に用いればよく、それには上記し
たように、δWを小さくすればよい。すなわち、色素分
子の会合あるいは凝集エネルギーと他分子の会合あるい
は凝集エネルギーとの差が小さければよく、また会合あ
るいは凝集の過程で形成される同種分子間の結合数nが
小さければよいことになる。ただし、色素分子の会合あ
るいは凝集エネルギーと他分子の会合あるいは凝集エネ
ルギーを近づけると、色素分子が会合あるいは凝集した
状態を形成しづらくなる可能性がある。そのため色素分
子の会合あるいは凝集エネルギーは常に他分子どうしの
会合あるいは凝集エネルギーよりも大きく保ちながらも
色素分子の分散状態が形成され、安定化させるようにす
ることが必要である。
【0092】このような状態を達成するためには、会合
あるいは凝集の過程で形成される同種分子間の結合(物
理的結合)の数nを少なくすればよい。その点で色素分
子は大きな分子であり、更に色素分子への置換基の導入
により会合あるいは凝集状態を形成する能力が押さえら
れ、色素分子自体が大きな会合あるいは凝集状態を作ら
ないので分散状態の安定化には有利である。
【0093】また、nを小さくするためには、他分子が
色素分子に対し、大きな分子であることが望ましく、更
に、色素分子の会合あるいは凝集エネルギーが比較的弱
くても、会合あるいは凝集状態を形成することができる
ようにするために、他分子としては他分子同士の凝集エ
ネルギーの小さな分子が望ましいと考えられる。これら
のことから色素分子と共に用いる他分子としては、熱可
塑性高分子化合物、特に側鎖に大きな置換基を有する熱
可塑性高分子化合物が好ましい例として挙げられる。
【0094】熱可塑性高分子化合物としては、アクリル
樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ
アミド樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルエステル系
樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポ
リエーテルスルホン樹脂などを挙げることができる。特
に、高分子化合物同士の相互作用を低下させ、また色素
分子との相互作用力を高めるために、アルキル基などの
部位を有する置換基を側鎖に導入した熱可塑性高分子化
合物が好ましい。
【0095】例えば、下記一般式(5)または(6)で
示されるポリメタクリル酸エステルまたはポリスチレン
誘導体が好ましい。
【0096】
【化5】 (式中、Rは炭素数3以上の分岐を有してもよいアルキ
ル基を表し、nは重合度を表す。)
【0097】
【化6】
【0098】(式中、Yは水素原子またはメチル基を表
す。Z1〜Z5は水素原子または炭素数3以上の分岐を有
してもよいアルキル基を表し、Z1〜Z55うち少なくと
も一つは炭素数3以上の分岐を有してもよいアルキル基
である。nは重合度を表す。)
【0099】これらの高分子化合物が好ましいのは、側
鎖に立体障害をもたらすかさ高い置換基を導入すること
により高分子化合物間の相互作用を低下させ、また側鎖
へのアルキル基の導入によって、そのアルキル基と色素
分子の置換基、具体的には例えば中心金属に置換された
アルキル基部分との分子間力、すなわち色素分子と高分
子化合物との相互作用を高めることにより、色素分子の
分散状態を形成することができるからである。
【0100】
【実施例】以下に本発明を実施例により説明する。
【0101】実施例1 下記一般式(8)で表される化合物におけるR1、R2
3が表1に示される置換基であるフタロシアニン化合
物を合成した。
【0102】
【化8】
【0103】
【表1】
【0104】次いで、これらのフタロシアニン化合物と
ポリスチレンを重量比2対1の割合でクロロホルムに溶
解させ、スピンコート法によりガラス基板上に塗布し室
温で乾燥させてNo.1〜12のそれぞれのフタロシア
ニン化合物を含有する有機薄膜を形成した。それらの有
機薄膜を昇温スピード5℃/分の速さで加熱していった
時の、形成直後の有機薄膜における吸光スペクトルから
の変化を、最大吸収波長のシフト量で評価した。その結
果を表2に示す。
【0105】
【表2】 表2において、nはR1、R2、R3のうち最大の炭素数
を有するアルキル基の炭素数と、他の2つのアルキル基
のうち炭素数の多い方のアルキル基の炭素数との差を示
す。またΔλは、有機薄膜を昇温スピード5℃/分の速
さで加熱していった時に、形成直後の有機薄膜における
吸光スペクトルの最大吸収波長に対して最大吸収波長が
最大に移動した移動量(単位nm)を示す。+は初期の
最大吸収波長に対し、加熱により長波長側へ吸光スペク
トルが移動したことを示し、−は初期の最大吸収波長に
対し、加熱により短波長側へ吸光スペクトルが移動した
ことを示す。
【0106】表1及び表2から、R1、R2がメチル基
(CH3)である化合物に対し、R3のアルキル基の長さ
を変化させた時の吸光スペクトルのシフト量(上記Δ
λ)をプロットすると、図7のようになる。図7は、色
素分子と高分子物質間の相互作用の大きさ(相互作用の
しやすさ)を示しており、アルキル鎖長が短いものは、
低温加熱(徐冷)によってもアルキル鎖の熱運動等によ
り色素分子の凝集状態を大きく変化させることができ
ず、また高温加熱(急冷)によっても、アルキル鎖長が
短いため高分子物質との相互作用が弱く色素分子が分散
化されず、加熱によるスペクトルシフトが少ないことを
示している。
【0107】スピンコートによって形成した直後の有機
薄膜における色素分子の状態はランダム凝集状態である
と考えられるが、アルキル鎖長が長くなると(図7中、
炭素数が5〜8のアルキル鎖)、熱エネルギーによるア
ルキル鎖の熱運動等により色素分子同士の凝集状態が変
化させられるが(エネルギー安定方向な凝集状態へと変
化する)、高分子物質と十分相互作用できるほどアルキ
ル鎖長が長くなく、色素分子と高分子物質の相互作用に
よる色素分子の分散状態は形成されにくくなるため、初
期の最大吸収波長に対して最大吸収波長が最大に動く方
向は+方向(長波長方向)となるものと考えられる。
【0108】更にアルキル鎖長が長くなると(図7中、
炭素数が10〜12のアルキル鎖)、形成直後の有機薄
膜における色素分子のランダム凝集状態に対し、熱エネ
ルギーによるアルキル鎖の熱運動等により色素分子どう
しの凝集状態が変化させられ(エネルギー安定方向な凝
集状態へと変化する)、またアルキル鎖長が長く高分子
物質と十分相互作用できるため、色素分子と高分子物質
の相互作用による色素分子の分散状態が形成されやす
く、したがって初期の最大吸収波長に対して最大吸収波
長が最大に動く方向は−方向(短波長方向)となるもの
と考えられる(初期のランダム凝集状態からのスペクト
ルシフト量は、色素分子−色素分子凝集相互作用による
ものよりも、色素分子−高分子物質相互作用によるもの
のほうが大きい)。
【0109】また、表1および表2から、最大アルキル
鎖長が同じ色素分子でも他の2つの短いアルキル鎖長が
異なると、最大吸収波長に対する最大吸収波長の移動量
が変化することは、色素分子の凝集状態におけるフタロ
シアニン骨格どうしの重なり状態(θやφの変化)が異
なることを示しているものと考えられる。すなわち、軸
配位子を適当に選択することにより、フタロシアニン
(あるいはナフタロシアニン)骨格どうしの重なり(配
置)を制御することができ、例えば色素分子を分散状態
から会合あるいは凝集状態に変化させることによるスペ
クトルシフト量を大きくすることができるものと考えら
れる。
【0110】具体的には、最大アルキル鎖長が同じSi
Pc〔−OSi(CH326132とSiPc〔−O
Si(CH322−(C25)C6122ではアルキル
鎖に分岐のあるSiPc〔−OSi(CH322−(C
25)C6122のほうが、クロロホルム溶液での最大
吸収波長がほぼ同じであるにもかかわらず、色素分子が
凝集した時のスペクトルが長波長にピークを有する。ま
た、最大アルキル鎖長が同じSiPc〔−OSi(i−
3728172、SiPc〔−OSi(CH32
8172、SiPc〔−OSi(n−C3728
172とでは、特にSiPc〔−OSi(n−C372
8172が、クロロホルム溶液での最大吸収波長が他
の色素とほぼ同じであるにもかかわらず、色素分子が凝
集した時のスペクトルピークが極端に長波長化する。
【0111】この現象は、明らかに軸配位子を適当に選
択することにより、フタロシアニン(あるいはナフタロ
シアニン)骨格どうしの重なり(配置)を制御すること
ができ、例えば、ある1つの安定な色素分子凝集状態
(初期状態)から会合あるいはもう1つの安定な色素分
子凝集状態に変化させることによるスペクトルシフト量
を大きくすることができることを示すものである。
【0112】また、分岐を除いたアルキル鎖長が同じで
あるSiPc〔−OSi(CH32492とSiP
c〔−OSi(CH32i−C5112とでは、スペク
トルシフト量に大きな違いがなく、分岐アルキル鎖が色
素分子の凝集状態にあたえる作用が小さい。分岐を含め
たアルキル鎖長が同じであるSiPc〔−OSi(CH
325112とSiPc〔−OSi(CH32i−C
5112とでは、分岐を有さない色素のほうがスペクト
ルシフト量が多くなっている。このことは、フタロシア
ニン(あるいはナフタロシアニン)骨格どうしの重なり
(配置)を制御するためには、軸配位子として軸配位子
の中心金属に近い部分に分岐を有するアルキル基を置換
することが好ましいことを示している。
【0113】いずれの場合においても、スペクトルシフ
ト量を大きくし、或いはスペクトルシフト量を大きくし
且つ色素分子の凝集状態間変化に可逆性を確保するため
には、色素分子どうしが接近しすぎないようにすること
が重要であり、そのためこは炭素数の最も大きいアルキ
ル基が、炭素数6以上であることか好ましい。また3つ
の軸配位子が全て同じ長さのアルキル基になると、軸配
位子の対称性があがって無秩序性が低下することで結晶
化しやすくなったり、軸配位子の立体障害性向上により
色素分子基本骨格のπ共役系間の相互作用が弱まりスペ
クトルシフト能が低下しないようにするため、炭素数の
最も大きいアルキル基の炭素数とその他のアルキル基の
うち炭素数の大きいアルキル基の炭素数との差が5以上
であることが好ましい。
【0114】次に吸光スペクトルのシフト量の大きかっ
たR1=R2=CH3、R3=C1225のフタロシアニン化
合物を用いた有機薄膜と、R1=R2=CH3、R3=2−
(C25)C612のフタロシアニン化合物を用いた有
機薄膜について、吸光スペクトルの変化、およびその変
化の繰り返し特性の評価を行った。
【0115】図8はR1=R2=CH3、R3=C1225
フタロシアニン化合物を用いた場合における未記録状態
(フタロシアニン化合物の分散状態、又はそれに近い凝
集状態)と記録状態(フタロシアニン化合物の或る安定
な会合あるいは凝集状態)の吸光スペクトルであり、図
9はR1=R2=CH3、R3=2−(C25)C612
フタロシアニン化合物を用いた場合における未記録状態
(フタロシアニン化合物の分散状態、又はそれに近い凝
集状態)と記録状態(フタロシアニン化合物の或る安定
な会合あるいは凝集状態)の吸光スペクトルである。
【0116】この図のように、本発明の有機薄膜を記録
層に用いることにより、未記録状態と記録状態とで吸光
スペクトルがきれいにシフトしており、記録層表面の形
状変化を起こすことなく、コントラストの高い記録を行
うことができる。未記録状態と記録状態との吸光スペク
トルを上記とは逆とすることも、勿論可能である。
【0117】また、R1=R2=CH3、R3=C1225
フタロシアニン化合物を用いた有機薄膜について、吸光
度変化の繰り返し特性を測定した結果を図10に示す。
図10は、有機薄膜について、70℃→90℃→110
℃→130℃→150℃→130℃→110℃→90℃
→70℃→………と繰り返し温度を変化させた時の68
0nmにおける吸光度変化を示したものであり、吸光ス
ペクトルのシフトによる吸光度変化の繰り返し特性が良
好であることを示している。すなわち、本発明の有機薄
膜を記録層に用いることにより、記録状態と未記録・消
去状態を繰り返し良好に発現させることができる。
【0118】次に、CD系メディアとしての互換性、す
なわち反射率での未記録状態と記録状態、および記録状
態と消去状態との繰り返し特性を確認するために、上記
の有機薄膜上に金を蒸着したサンプルを新たに作成し
た。このサンプルについて未記録状態の反射スペクトル
と記録状態処理を施した時の反射スペクトルを測定した
結果を図11に示す。図11から明らかなように、吸光
度の場合と同様に、良好な反射スペクトルシフトが生じ
ている。
【0119】更に、このサンプルについて、反射率変化
の繰り返し特性を測定した結果を図12に示す。図12
は、サンプルについて、70℃→90℃→110℃→1
30℃→150℃→130℃→110℃→90℃→70
℃→………と繰り返し温度を変化させた時の700nm
における反射率変化(高反射率の5点が130℃→15
0℃→130℃→110℃→90℃の温度変化における
各温度での反射率)を示したものであり、反射スペクト
ルのシフトによる反射率変化の繰り返し特性が良好であ
ることを示している。すなわち、本発明の有機薄膜を記
録層に用いることにより、反射率においても記録コント
ラストの高い記録状態と未記録・消去状態を繰り返し良
好に発現させることができる。
【0120】このように、本発明の有機薄膜を記録層に
用いることにより、記録コントラストを高めることがで
きると共に、最大ピ−ク波長に対し、長波長側と短波長
側の両方を記録・再生波長として選ぶことができ、また
色素分子における軸配位子の状態を制御することによ
り、スペクトルシフトの方向も制御できることから、現
行のCD系メディアと同一の記録極性で記録を行うこと
ができる。
【0121】実施例2 前記一般式(8)で表される化合物においてR1=R2
CH3、R3=C1225であるフタロシアニン化合物0.
1gを5mlのトルエンに溶解させて色素溶液を得た。
一方、ポリスチレン、ポリt−ブチルスチレン〔前記一
般式(6)においてZ3がt−ブチル基、その他は
H〕、ポリメチルメタクリレート〔前記一般式(5)に
おいてRがメチル基〕、ポリイソプロピルメタクリレー
ト〔前記一般式(5)においてRがイソプロピル基〕、
ポリイソブチルメタクリレート〔前記一般式(5)にお
いてRがイソブチル基〕、ポリt−ブチルメタクリレー
ト〔前記一般式(5)においてRがt−ブチル基〕また
はポリn−ブチルメタクリレート〔前記一般式(5)に
おいてRがn−ブチル基〕をそれぞれ50mlのトルエ
ンに0.7g溶解させて高分子化合物溶液を得た。
【0122】上記色素溶液0.lmlと高分子化合物溶
液0.lmlとを混合し、石英基板上にスピンコート法
により塗布し室温で乾燥させて各々の有機薄膜を形成さ
せた。これら各々のサンプルについて、1)有機薄膜形
成直後、2)70℃で10分間加熱し室温まで冷却した
後、3)80℃で30分加熱し室温まで冷却した後、
4)「3)」の処理後1日放置した後、5)90℃で3
0分間加熱し室温まで冷却した後、6)150℃で10
分加熱し室温まで冷却した後、7)「6)」の処理後1
日放置した後、8)「7)」の処理後8日放置した後、
のそれぞれの吸光スペクトルを測定した。
【0123】その結果を図13、図14および図15に
示す。図中の矢印は各処理による吸光スペクトルの移動
方向を示したものである。また、図16、図17および
図18は、図13、図14および図15の680nmに
おける吸光度変化を示した図である。図中の横軸は上記
処理条件を表しており、0は有機薄膜形成直後の吸光
度、1は70℃で10分間加熱し室温まで冷却した後の
吸光度、2は80℃で30分加熱し室温まで冷却した後
の吸光度、3は「2」の処理後1日放置した後の吸光
度、4は90℃で30分間加熱し室温まで冷却した後の
吸光度、5は150℃で10分加熱し室温まで冷却した
後の吸光度、6は「5」の処理後1日放置した後の吸光
度、7は「6」の処理後8日放置した後の吸光度を示
す。また図15、18には色素(フタロシアニン化合
物)のみで、高分子化合物を添加しなかった場合の結果
も示した。
【0124】図13〜図15において700nm付近の
ピ−クは、色素単独膜での色素凝集あるいは会合状態と
ほぼ同じピ−ク波長であり、色素分子が会合あるいは凝
集した状態を示し、また680nm付近のピ−クは、色
素の溶液状態のピ−ク波長に近く、色素分子が分散され
た状態を示しているものと考えれれる。
【0125】色素単独の場合は初期(色素薄膜形成直
後)から色素の会合あるいは凝集状態を形成しているが
(勿論初期から会合あるいは凝集するような色素に設計
されているが)、図15に示されるように加熱によって
吸光度が低下するのみで吸光スペクトルのシフトは起き
ず、加熱によって分散状態に変化させることができてい
ない。
【0126】それに対し、図13、図14、図15およ
び図16〜図18、に示されるように、色素分子と高分
子化合物との混合系では、加熱によって吸光スペクトル
のシフトが生じており、初期(色素薄膜形成直後)状態
とその加熱とによって、色素分子の分散状態と会合ある
いは凝集状態が安定して存在できていることがわかる。
この吸光スペクトルシフトの可動性、可逆性を生じさせ
る高分子化合物としては、前記一般式(5)または
(6)においてRまたはZ1〜Z5が分岐を有してもよ
い炭素数3以上のアルキル基を有する高分子化合物、例
えばポリイソプロピルメタクリレート、ポリイソブチル
メタクリレート、ポリt−ブチルメタクリレート、ポリ
n−ブチルメタクリレート、ポリt−ブチルスチレンな
どが、本発明の顕著な効果を示し、特に好ましいもので
ある。
【0127】実施例3 ポリt−ブチルスチレンと前記一般式(8)においてR
1=R2=CH3、R3=C1225であるフタロシアニン化
合物とを重量比(フタロシアニン化合物/ポリt−ブチ
ルスチレン)で0.5、0.625、0.83、1.2
5、2.5、5、6.25、7.5、8.75の割合で
混合したトルエン溶液を、石英基板上にスピンコート法
により塗布し室温で乾燥させて各々の有機薄膜を形成さ
せた。これら各々のサンプルについて、1)有機薄膜形
成直後、2)70℃で1時間加熱し室温まで冷却した
後、3)「2)」の処理後3日経過後、4)90℃で1
時間加熱し室温まで冷却した後、5)100℃で1時間
加熱し室温まで冷却した後、6)150℃で10分加熱
し室温まで冷却した後、7)「6)」の処理後2日経過
後、8)「7)」の処理後4日経過後の、それぞれの吸
光スペクトルを測定した。
【0128】その結果を図19、図20および図21に
示す。図中の矢印は各処理による吸光スペクトルの移動
方向を示したものである。また、図22、図23および
図24は、図19、図20および図21の680nmに
おける吸光度変化を示した図である。図中の横軸は上記
処理条件を表しており、0は有機薄膜形成直後の吸光
度、1は70℃で1時間加熱し室温まで冷却した後の吸
光度、2は「1」の処理後3日経過後の吸光度、3は9
0℃で1時間加熱し室温まで冷却した後の吸光度、4は
100℃で1時間加熱し室温まで冷却した後の吸光度、
5は150℃で10分加熱し室温まで冷却した後の吸光
度、6は「5」の処理後2日経過後の吸光度、7は
「6」の処理後4日経過後の吸光度を示す。
【0129】また、ポリメチルメタクリレ−トと前記一
般式(8)においてR1=R2=CH3、R3=C1225
あるフタロシアニン化合物とを重量比(フタロシアニン
化合物/ポリメチルメタクリレ−ト)で、0.8、1.
0、1.33、2.0、4.0、8.0、10.0、1
2.0の割合で混合したトルエン溶液を、石英基板上に
スピンコート法により塗布し室温で乾燥させて各々の有
機薄膜を形成させた。これら各々のサンプルについて、
1)有機薄膜形成直後、2)70℃で1時間加熱し室温
まで冷却した後、3)90℃で1時間加熱し室温まで冷
却した後、4)100℃で1時間加熱し室温まで冷却し
た後、5)150℃で10分加熱し室温まで冷却した
後、6)「5)」の処理後1日経過後の、それぞれの吸
光スペクトルを測定した。その結果を図25、図26お
よび図27に示す。図中の矢印は各処理による吸光スペ
クトルの移動方向を示したものである。
【0130】図19〜図21および図22〜図24によ
れば、ポリt−ブチルスチレンを用いた場合には、組成
比(フタロシアニン化合物/ポリt−ブチルスチレンの
重量比)が1.25以上において、加熱によって吸光ス
ペクトルのシフトが生じており、初期(色素薄膜形成直
後)状態とその加熱とによって、色素分子の会合あるい
は凝集状態と分散状態とが両方存在し、しかもそれらの
状態が安定して存在でき、熱ネルギーの付与条件によっ
て両者の状態をコントロールできることが示されてい
る。
【0131】他方、ポリメチルメタクリレートを用いた
場合には、図25〜図27に示されるように、いずれの
組成比においても加熱によって吸光スペクトルのピーク
が700nm付近から変化せず、色素分子の分散状態が
形成されずらいことを示している。また150℃の加熱
により色素分子の分散状態ができかけているが、この状
態は経時安定性が悪く、時間とともに色素分子が会合あ
るいは凝集状態へと推移していくことが示されている。
【0132】以上の結果から、本発明の有機薄膜は、外
部エネルギーの付与によって色素分子が会合あるいは凝
集した状態と色素分子が分散した状態、またはそれに近
い状態、あるいは、ある一つの色素分子が会合あるいは
凝集した状態ともう一つ別の色素分子が会合あるいは凝
集した状態とを形成させることができ、大きなスペクト
ルシフトを生じさせることができると共に、この状態変
化は良好な可逆性、または追記性を有しており、この有
機薄膜を記録層に用いた光情報記録媒体によれば、記録
コントラストが大きな記録、またはその記録及び消去比
の高い記録の消去を繰り返し行うことができる。
【0133】
【発明の効果】本発明によれば、光や熱などの外部エネ
ルギーの付与により大きなスペクトルシフトを示し、ま
た光や熱などの外部エネルギーの付与条件によりスペク
トルシフトが良好な可逆変化を示す有機薄膜を得ること
ができる。
【0134】また、本発明によれば、記録コントラスト
が大きく、かつ消去比が高く、繰り返し特性に優れ、ま
た、所謂High to Low型の記録である通常の光
ディスクと同一極性でも記録を行うことができ、CD、
CD−R等のCDファミリー系の光情報記録媒体と互換
性を有する高感度な書き換え型の光情報記録媒体を得る
ことができる。
【0135】また、本発明によれば、特に動画再生など
の高速転送レートが必要なアプリケ−ションや高密度化
によるジッタ低減などの信号特性改善にも対応できる高
感度な追記型の光情報記録媒体を得ることができる。
【0136】更に、本発明によれば、記録コントラスト
が大きく、かつ消去比が高い情報の記録および消去を繰
り返し行うことができる。また、本発明によれば、記録
コントラストが大きく、かつ高感度な記録を行うことが
できる。また、本発明によれば、大きなコントラストの
再生信号が得られる情報の再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】色素分子の会合あるいは凝集状態と、色素分子
の分散状態とにより吸光スペクトルがシフトする様子の
一例を示す説明図である。
【図2】フタロシアニン化合物あるいはナフタロシアニ
ン化合物における置換基の位置の相違(軸配位子型か否
かの相違)による吸光スペクトルの相違を示す説明図で
ある。
【図3】色素分子間の相互作用を双極子−双極子相互作
用と考えたときの色素分子間の説明図である。
【図4】色素分子間の相互作用の形態(θ、φ、r)に
よるエネルギー変化を示す説明図である。
【図5】(a)〜(d)は軸配位子の種類によって色素
分子が相互作用をする配置の違いを模式的に示す説明図
である。
【図6】(a)〜(d)は他分子による色素分子の分散
状態の形成についての説明図である。
【図7】フタロシアニン化合物における軸配位子のアル
キル基の長さを変えたときの吸光スペクトルのシフト量
の変化を示す説明図である。
【図8】未記録状態と記録状態の吸光スペクトルの一例
を示す説明図である。
【図9】未記録状態と記録状態の吸光スペクトルの一例
を示す説明図である。
【図10】吸光度の繰り返し特性を測定した結果を示す
説明図である。
【図11】未記録状態と記録状態の反射スペクトルを示
す説明図である。
【図12】光反射率の繰り返し特性を測定した結果を示
す説明図である。
【図13】加熱条件を変えたときの吸光スペクトルの変
化の一例を示す説明図である。
【図14】加熱条件を変えたときの吸光スペクトルの変
化の一例を示す説明図である。
【図15】加熱条件を変えたときの吸光スペクトルの変
化の一例を示す説明図である。
【図16】図13に関して680nmにおける吸光度変
化を示した説明図である。
【図17】図14に関して680nmにおける吸光度変
化を示した説明図である。
【図18】図15に関して680nmにおける吸光度変
化を示した説明図である。
【図19】加熱条件を変えたときの吸光スペクトルの変
化の一例を示す説明図である。
【図20】加熱条件を変えたときの吸光スペクトルの変
化の一例を示す説明図である。
【図21】加熱条件を変えたときの吸光スペクトルの変
化の一例を示す説明図である。
【図22】図19に関して680nmにおける吸光度変
化を示した説明図である。
【図23】図20に関して680nmにおける吸光度変
化を示した説明図である。
【図24】図21に関して680nmにおける吸光度変
化を示した説明図である。
【図25】加熱条件を変えたときの吸光スペクトルの変
化の一例を示す説明図である。
【図26】加熱条件を変えたときの吸光スペクトルの変
化の一例を示す説明図である。
【図27】加熱条件を変えたときの吸光スペクトルの変
化の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
a α位またはβ位に置換基を有する化合物の吸光スペ
クトル b 軸配位子型の化合物の吸光スペクトル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI // C08J 5/18 C08J 5/18 (72)発明者 植野 泰伸 東京都大田区中馬込1丁目3番6号 株式 会社リコー内

Claims (21)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 色素分子と他分子とを含む混合系材料か
    らなり、色素分子に置換された置換基同士の相互作用に
    よって色素分子が会合あるいは凝集した状態と、色素分
    子と他分子との相互作用によって色素分子が分散した状
    態とにより異なるスペクトルを示すことを特徴とする有
    機薄膜。
  2. 【請求項2】 基板上に記録層を有する光情報記録媒体
    において、記録層が色素分子と他分子とを含む混合系材
    料からなり、色素分子に置換された置換基同士の相互作
    用によって色素分子が会合あるいは凝集した状態と、色
    素分子と他分子との相互作用によって色素分子が分散し
    た状態とにより異なるスペクトルを示す有機薄膜である
    ことを特徴とする光情報記録媒体。
  3. 【請求項3】 色素分子が下記一般式(1)または
    (2)で示され中心金属Mに置換基を有するフタロシア
    ニン化合物またはナフタロシアニン化合物であることを
    特徴とする請求項2記載の光情報記録媒体。 【化1】 【化2】 (式中、Mは置換基を有する3価または4価の金属原子
    を表し、X1〜X4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲ
    ン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有
    してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキ
    シ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基
    を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよい
    アリールチオ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、
    スルホン酸アミド基またはスルホン酸エステル基を表
    し、k、l、m、nは置換基X1〜X4の置換数で0〜4
    の整数を表す。)
  4. 【請求項4】 色素分子が下記一般式(3)または
    (4)で示されるフタロシアニン化合物またはナフタロ
    シアニン化合物であることを特徴とする請求項2記載の
    光情報記録媒体。 【化3】 【化4】 (式中、X1〜X4は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲ
    ン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有
    してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキ
    シ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基
    を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよい
    アリールチオ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、
    スルホン酸アミド基またはスルホン酸エステル基を表
    し、k、l、m、nは置換基X1〜X4の置換数で0〜4
    の整数を表す。R1、R2、R3はアルキル基を表し、
    1、R2、R3はアルキル基の種類が異なっていても良
    く、R3はR1とR2のうち炭素数の大きいアルキル基よ
    りも炭素数が5つ以上の大きいアルキル基である。)
  5. 【請求項5】 一般式(3)または(4)で示されるフ
    タロシアニン化合物またはナフタロシアニン化合物にお
    いて、R1、R2は炭素数3以下のアルキル基であり、R
    3はR1とR2のうち炭素数の大きいアルキル基よりも炭
    素数が5つ以上多いアルキル基であることを特徴とする
    請求項4記載の光情報記録媒体。
  6. 【請求項6】 他分子が熱可塑性高分子化合物であるこ
    とを特徴とする請求項2、3、4または5記載の光情報
    記録媒体。
  7. 【請求項7】 他分子がアルキル基を含む置換基を側鎖
    に有する熱可塑性高分子化合物であることを特徴とする
    請求項2、3、4または5記載の光情報記録媒体。
  8. 【請求項8】 他分子が下記一般式(5)で示されるポ
    リメタクリル酸エステルであることを特徴とする請求項
    2、3、4または5記載の光情報記録媒体。 【化5】 (式中、Rは炭素数3以上の分岐を有してもよいアルキ
    ル基を表し、nは重合度を表す。)
  9. 【請求項9】 他分子が下記一般式(6)で示されるポ
    リスチレン誘導体であることを特徴とする請求項2、
    3、4または5記載の光情報記録媒体。 【化6】 (式中、Yは水素原子またはメチル基を表す。Z1〜Z5
    は水素原子または炭素数3以上の分岐を有してもよいア
    ルキル基を表し、Z1〜Z5のうち少なくとも一つは炭素
    数3以上の分岐を有してもよいアルキル基である。nは
    重合度を表す。)
  10. 【請求項10】 他分子が光や熱などの外部エネルギー
    により電子的または構造的変化を可逆的に生ずる高分子
    化合物であることを特徴とする請求項2、3、4または
    5記載の光情報記録媒体。
  11. 【請求項11】 高分子化合物が下記一般式(7)で示
    される化合物であることを特徴とする請求項10記載の
    光情報記録媒体。 【化7】 (式中、R11、R12は水素原子、または置換基を有して
    もよいアルキル基を表す。ただし、R11、R12が同時に
    水素原子となることはない。XはS、O、SeまたはN
    13を表し、R13は水素原子、アルキル基、またはアリ
    ール基を表す。なお、nは重合度を表す。)
  12. 【請求項12】 光情報記録媒体への情報記録方法にお
    いて、色素分子に置換された置換基同士の相互作用によ
    って色素分子が会合あるいは凝集した状態の記録層を有
    する請求項2記載の光情報記録媒体に光や熱などの外部
    エネルギーを付与し、外部エネルギー付与部の記録層に
    おいて色素分子と他分子との相互作用によって色素分子
    を分散状態とすることにより、外部エネルギー付与部の
    記録層におけるスペクトルを色素分子が会合あるいは凝
    集した状態の記録層におけるスペクトルに対して変化さ
    せて情報を記録することを特徴とする情報記録方法。
  13. 【請求項13】 光情報記録媒体への情報記録方法にお
    いて、色素分子に置換された置換基同士の相互作用によ
    って色素分子が会合あるいは凝集した状態の記録層を有
    する請求項2記載の光情報記録媒体を加熱後急冷するこ
    とにより、加熱後急冷部の記録層におけるスペクトルを
    色素分子が会合あるいは凝集した状態の記録層における
    スペクトルに対して変化させて情報を記録することを特
    徴とする情報記録方法。
  14. 【請求項14】 光情報記録媒体への情報記録方法にお
    いて、色素分子と他分子との相互作用によって色素分子
    が分散した状態の記録層を有する請求項2記載の光情報
    記録媒体に光や熱などの外部エネルギーを付与し、外部
    エネルギー付与部の記録層において色素分子に置換され
    た置換基同士の相互作用によって色素分子を会合あるい
    は凝集した状態とすることにより、外部エネルギー付与
    部の記録層におけるスペクトルを色素分子が分散した状
    態の記録層におけるスペクトルに対して変化させて情報
    を記録することを特徴とする情報記録方法。
  15. 【請求項15】 光情報記録媒体への情報記録方法にお
    いて、色素分子と他分子との相互作用によって色素分子
    が分散した状態の記録層を有する請求項2記載の光情報
    記録媒体を加熱後徐冷することにより、加熱後徐冷部の
    記録層におけるスペクトルを色素分子が分散した状態の
    記録層におけるスペクトルに対して変化させて情報を記
    録することを特徴とする情報記録方法。
  16. 【請求項16】 光情報記録媒体の情報再生方法におい
    て、請求項12の方法により情報が記録された光情報記
    録媒体に再生レーザー光を照射し、記録層の記録部と非
    記録部とにおける反射光量あるいは透過光量の差を読み
    取ることにより情報の再生を行うことを特徴とする情報
    再生方法。
  17. 【請求項17】 光情報記録媒体の情報再生方法におい
    て、請求項14の方法により情報が記録された光情報記
    録媒体に再生レーザー光を照射し、記録層の記録部と非
    記録部とにおける反射光量あるいは透過光量の差を読み
    取ることにより情報の再生を行うことを特徴とする情報
    再生方法。
  18. 【請求項18】 光情報記録媒体の情報消去方法におい
    て、請求項12の方法により情報が記録された光情報記
    録媒体に光や熱などの外部エネルギーを付与し、色素分
    子と他分子との相互作用によって色素分子が分散した状
    態にある記録部を、色素分子に置換された置換基同士の
    相互作用によって色素分子が会合あるいは凝集した状態
    とすることにより、記録層全体を色素分子が会合あるい
    は凝集した状態の記録層とすることを特徴とする情報消
    去方法。
  19. 【請求項19】 光情報記録媒体の情報消去方法におい
    て、請求項13の方法により情報が記録された光情報記
    録媒体を加熱後徐冷することにより、記録層全体を色素
    分子が会合あるいは凝集した状態の記録層とすることを
    特徴とする情報消去方法。
  20. 【請求項20】 光情報記録媒体の情報消去方法におい
    て、請求項14の方法により情報が記録された光情報記
    録媒体に光や熱などの外部エネルギーを付与し、色素分
    子に置換された置換基同士の相互作用によって色素分子
    が会合あるいは凝集した状態にある記録部を、色素分子
    と他分子との相互作用によって色素分子が分散した状態
    とすることにより、記録層全体を色素分子が分散した状
    態の記録層とすることを特徴とする情報消去方法。
  21. 【請求項21】 光情報記録媒体の情報消去方法におい
    て、請求項15の方法により情報が記録された光情報記
    録媒体を加熱後急冷することにより、記録層全体を色素
    分子が分散した状態の記録層とすることを特徴とする情
    報消去方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003074282A1 (fr) * 2002-02-15 2003-09-12 Sony Corporation Support d'enregistrement d'informations optiques reinscriptible, procede d'enregistrement/reproduction et dispositif d'enregistrement/reproduction

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WO2003074282A1 (fr) * 2002-02-15 2003-09-12 Sony Corporation Support d'enregistrement d'informations optiques reinscriptible, procede d'enregistrement/reproduction et dispositif d'enregistrement/reproduction

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