JP3880871B2 - 光記録媒体及びそれを用いた光記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は大容量追記型コンパクトディスク、DVD−R等データ用大容量追記光ディスクに用いられる光記録媒体に関する。また、本発明による光ディスクは大容量光カードとしても応用できる光記録媒体に関する。さらにこれらの光記録媒体を用いた光記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、次世代大容量光ディスクとしてDVD−Rの開発が進められている。そのための記録容量向上の要素技術としては、記録ピット微少化のための記録材料開発、MPEG2に代表される画像圧縮技術の採用、記録ピット読みとりのための半導体レーザの短波長化等の技術開発が必要である。
【0003】
これまで赤色波長域の半導体レーザとしては、バーコードリーダ、計測器用に670nm帯のAlGaInPレーザダイオードが商品化されているのみであったが、光ディスクの高密度化に伴い、赤色レーザが本格的に光ストレージ市場で使用されつつある。DVDドライブの場合、光源として630nm〜670nm帯のレーザダイオードの波長で規格化されている。一方、再生専用のDVD−ROMドライブは波長〜650nmで商品化されている。
【0004】
このような状況下で最も好ましいDVD−Rメディアは、波長630〜670nmで記録、再生が可能なメディアである。
しかしながら、耐光性、保存安定性に優れ、670nm以下のレーザを用いた光ピックアップで記録、再生が可能な記録材料は未だ開発されていない。
【0005】
波長630〜670nmのレーザを用いた光ピックアップで記録再生する光記録媒体の記録材料の一つとしてスチリル色素が挙げられるが、この色素は光劣化が著しく安定性に乏しい。また高耐光性を示す色素としてアゾ金属キレート色素が挙げられるが、この色素を記録層に用いたメディアは反射率が低いなどの問題があった。特開平11−99746号公報、特開平11−99747号等の公報には500〜700nmの波長に対応できる有機色素膜として記録層がスチリル系シアニン色素を主成分とする光記録媒体が開示されているが、いずれも耐光性、保存安定性の点で十分ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、上記従来システムに比べて短波長に発振波長を有する半導体レーザーを用いるDVD−Rディスクシステムにおいて、記録、再生が可能で、特にスチリル色素を用いて、耐光性、保存安定性が共に優れた光記録媒体、及び該光記録媒体を用いた光記録方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記課題を解決するべく検討した結果、特定の構造を有する色素を混合して記録層とすることにより、発振波長670nm以下の半導体レーザーを用いる次世代大容量光ディスクシステムに適用可能で、かつ耐光性、保存安定性にも優れていることを見いだし本発明に至った。すなわち、本発明によれば、第一に、基板上に記録層を設けてなる光記録媒体において、記録層中に下記(II−1)、(II−2)、(II−3)で示されるいずれかのスチリルカチオン色素と、下記一般式(I)で示されるアゾ化合物と金属、金属酸化物またはそれらの塩とから形成されるアゾ金属キレートアニオン化合物とから形成される色素塩を少なくとも一種類含有することを特徴とする光記録媒体が提供される。
【化5】
(式中、R1〜R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、アミノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基、置換もしくは未置換のアルキルカルボキサミド基、置換もしくは未置換のアリールカルボキサミド基、スルホ基を表す。またR1〜R4同士が結合して環を形成してもよい。)
【化6】
(式中、XはC、O、S、Se原子を表す。R7〜R13はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。ただし、XがO、S、Seの場合は、R7、R8は存在しない。)
【化7】
(式中、R 14 〜R 16 は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
【化8】
(式中、R 17 〜R 19 は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基を表す。)
【0008】
第二に、アゾ金属キレートアニオン化合物における金属または金属酸化物の価数が3価であることを特徴とする上記の第一の光記録媒体が提供される。
【0009】
第三に、アゾ金属キレートアニオン化合物における金属原子がコバルトであることを特徴とする上記第一又は第二の光記録媒体が提供される。
【0011】
第四に、記録再生波長±5nmの波長領域の光に対する記録層単層の屈折率nが1.5≦n≦3.0であり、消衰係数kが0.02≦k≦0.2であることを特徴とする上記第一〜第三のいずれかの光記録媒体が提供される。
【0012】
第五に、前記記録媒体が反射層を有し、該反射層が金、銀、銅、アルミニウム、またはこれらの金属の合金であることを特徴とする上記第一〜第四のいずれかの光記録媒体が提供される。
【0013】
第六に、基板上のトラックピッチが0.7〜0.8μmであり、溝幅が半値幅で0.18〜0.40μmであることを特徴とする上記第一〜第五のいずれかの光記録媒体が提供される。
【0014】
第七に、上記第一〜第六のいずれかの光記録媒体を用いて記録波長600〜720nmで記録することを特徴とする光記録方法が提供される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明の光記録媒体は、記録層中に前記一般式( II −1)、( II −2)又は( III −3)で示されるスチリルカチオン色素と、前記一般式(I)で示されるアゾ化合物と金属からなるアゾ金属キレートアニオン化合物とからなる色素塩を含有していることを特徴とする。スチリルカチオン色素とアゾ金属キレートアニオン化合物とで塩形成することにより、スチリル色素の問題点である光劣化が防止され、耐光性に優れた光記録媒体が得られる。
【0016】
前記一般式(I)で示されるアゾ化合物において、式中R1〜R6はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環残基、置換もしくは未置換のアルキルオキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基、置換もしくは未置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは未置換のアリールオキシカルボニル基、置換もしくは未置換のアルキルカルボキサミド基、置換もしくは未置換のアリールカルボキサミド基、置換もしくは未置換のアルキルカルバモイル基、置換もしくは未置換のアリールカルバモイル基、置換もしくは未置換のアルケニル基、スルホ基を表す。またR1〜R4同士が結合して環を形成してもよい。
【0017】
前記アルキル基の具体例は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等の一級アルキル基、イソブチル基、イソアミル基、2−メチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−エチルブチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、2−メチルヘプチル基、3−メチルヘプチル基、4−メチルヘプチル基、5−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘキシル基、1−エチルヘプチル基、1−プロピルブチル基、1−イソプロピル−2−メチルプロピル基、1−エチル−2−メチルブチル基、1−プロピル−2−メチルプロピル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、1−イソプロピルペンチル基、1−イソプロピル−2−メチルブチル基、1−イソプロピル−3−メチルブチル基、1−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1−プロピルヘキシル基、1−イソブチル−3−メチルブチル基等の二級アルキル基、ネオペンチル基、tert−ブチル基、tert−ヘキシル基、tert−アミル基、tert−オクチル基等の三級アルキル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、4−(2−エチルヘキシル)シクロヘキシル基、ボルニル基、イソボルニル基(アダマンチル基)等のシクロアルキル基等が挙げられる。更に、これら一級及び二級アルキル基は、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、シアノ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環残基等を以て置換されていても良い。また酸素、硫黄、窒素等の原子を介して前記のアルキル基で置換されていてもよい。酸素を介して置換されているアルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、ピペリジノ基、モルホリノ基等が、硫黄を介して置換されているアルキル基としては、メチルチオエチル基、エチルチオエチル基、エチルチオプロピル基、フェニルチオエチル基等が、窒素を介して置換されているアルキル基としては、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基等が挙げられる。
【0018】
前記アリール基の具体例は、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナレニル基、フェナントラニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基等が挙げられる。更にこれらのアリール基は、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、シアノ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環残基等を以て置換されていてもよく、また酸素、硫黄、窒素等の原子を介して前記のアルキル基で置換されていてもよい。
【0019】
前記複素環残基の具体例は、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ベンゾフリル基、イソベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ピペリジル基、キノリル基、イソキノリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラジル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、キノキサリニル基等が挙げられる。更にこれらのアリール基は、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、シアノ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環残基等を以て置換されていてもよく、また酸素、硫黄、窒素等の原子を介して前記のアルキル基で置換されていてもよい。
【0020】
前記ハロゲン原子の具体例は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0021】
前記アルキルオキシ基は、酸素原子に直接置換もしくは未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0022】
前記アリールオキシ基は、酸素原子に直接置換又は未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0023】
前記アルキルチオ基は、硫黄原子に直接置換もしくは未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0024】
前記アリールチオ基は、硫黄原子に直接置換又は未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0025】
前記アルキルアミノ基は、窒素原子に直接置換もしくは未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。また、アルキル基同士が結合しピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジニル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基等の様に環を形成していても良い。
【0026】
前記アリールアミノ基は、窒素原子に直接置換又は未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0027】
前記アルキルオキシカルボニル基は、オキシカルボニル基の酸素原子に直接置換もしくは未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0028】
前記アリールオキシカルボニル基は、オキシカルボニル基の酸素原子に直接置換又は未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0029】
前記アルキルカルボキサミド基は、炭素原子に直接置換もしくは未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0030】
前記アリールカルボキサミド基は、炭素原子に直接置換又は未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0031】
前記アルキルカルバモイル基は、窒素原子に直接置換もしくは未置換のアルキル基が結合されているものであればよく、アルキル基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。また、アルキル基同士が結合しピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジニル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基等の様に環を形成していても良い。
【0032】
前記アリールカルバモイル基は、窒素原子に直接置換又は未置換のアリール基が結合されているものであればよく、アリール基の具体例としては前述の具体例を挙げることができる。
【0033】
前記一般式(1)で示されるアゾ化合物と塩を形成する金属原子の具体例は、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ロジウム、セリウム、酸化バナジウム、酸化チタン等が挙げられ、中でもコバルトのアゾ金属キレートアニオン化合物は、光記録材料として光学特性が優れている。
【0034】
一般式(I)で表されるアゾ色素の具体例を表1〜表3に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
本発明では、記録再生波長に600〜720nmのレーザー光を用いることを特徴としているが、この波長での光学特性から、スチリルカチオン色素の中でも下記一般式(II)で示されるものが好ましい。
【化0】
(式中、Aは+1価の電荷を持つ窒素原子を含む置換または未置換の5員環または6員環を有する基を表す。Yはベンゼン環に直接結合した置換基を表す。)
【0039】
前記一般式(II)で示されるスチルカチオン色素において、式中Aは+1価の電荷を持つ窒素原子を含む置換または未置換の5員環、または6員環を有する基を表す。Yはベンゼン環に直接結合した置換基を表す。Aの具体例は、置換もしくは未置換のピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、セレナゾール環、ピリジン環、イミダゾール環等、及びこれらの環に、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環が縮合した置換基を表す。また、Yの具体例は、先に挙げたR1〜R6置換基の具体例の中から選ばれる。すなわち、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、カルバモイル基、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換の複素環残基、置換もしくは未置換のアルキルオキシ基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアルキルチオ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアルキルアミノ基、置換もしくは未置換のアリールアミノ基、置換もしくは未置換のアルキルオキシカルボニル基、置換もしくは未置換のアリールオキシカルボニル基、置換もしくは未置換のアルキルカルボキサミド基、置換もしくは未置換のアリールカルボキサミド基、置換もしくは未置換のアルキルカルバモイル基、置換もしくは未置換のアリールカルバモイル基、置換もしくは未置換のアルケニル基、スルホ基を表す。
【0040】
一般式(II)で表されるスチリルカチオンの中でも、前記一般式( II −1)、( II −2)及び( II −3)に表わされるスチリルカチオン色素が特に好ましく用いられ、その色素の具体例を表4〜表6に示す。
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
【表6】
【0044】
次に記録媒体の構成について説明する。
記録層を構成するのに必要な項目として、光学特性が挙げられる。
光学特性に必要な条件は、記録再生波長である600nm〜720nm、好ましくは630nm〜690nmに対して短波長側に大きな吸収帯を有し、かつ記録再生波長が該吸収帯の長波長端近傍にあることが必要である。これは、記録再生波長である600nm〜720nmで大きな屈折率と消衰係数を有することを意味するものである。
具体的には、記録再生波長近傍の長波長近傍の波長域光に対する記録層単層の屈折率nが1.5以上3.0以下であり、消衰係数kが0.02以上0.2以下の範囲にあることが好ましい。nが1.5未満の場合には、十分な光学的変化得られにくいため、記録変調度が低くなるため好ましくなく、nが3.0を越える場合には、波長依存性が高くなり過ぎるため、記録再生波長領域であってもエラーとなってしまうため好ましくない。また、kが0.02未満の場合には、記録感度が悪くなるため好ましくなく、kが0.2を越える場合には、50%以上の反射率を得ることが困難となるので好ましくない。
【0045】
基板形状の好ましい条件は、基板上のトラックピッチが0.7〜0.8μmであり、溝幅が半値幅で0.18〜0.40μmである。
基板は通常、深さ1000〜2500Åの案内溝を有している。トラックピッチは、通常、0.7〜1.0μmであるが、高容量化の用途には0.7〜0.8μmが好ましい。溝幅は、半値幅で0.18〜0.40μmが好ましい。0.18μm未満には十分なトラッキングエラー信号強度を得ることが困難となる恐れがある。また、0.40μmを越える場合には、記録したときに記録部が横に広がりやすくなるので好ましくない。
【0046】
1.光記録媒体の構成
本発明の光記録媒体は、通常の追記型光ディスクである図1の構造(図1を2枚貼合わせたいわゆるエアーサンドイッチ、又は密着貼合わせ構造としてもよい)と図2からなるCD−R用メディアの構造としてもよい。
【0047】
2.各層の必要特性及び構成材料例
本発明の光記録媒体の構成としては、第1基板と第2基板とを記録層を介して接着剤で張り合わせた図3(b)、(c)の構造を基本構造とする。記録層は有機色素層単層でもよく、反射率を高めるため有機色素層と金属反射層との積層でも良い。記録層と基板間は下引き層あるいは保護層を介して層成してもよく、機能向上のためそれらを積層化した構成でも良い。最も通常に用いられるのは、第1基板/有機色素層/金属反射層/保護層/接着層/第2基板構造である。
【0048】
<基板>
基板の必要特性としては基板側より記録再生を行う場合のみ使用レーザー光に対して透明でなければならず、記録層側から記録、再生を行う場合基板は透明である必要はない。従って、本発明では、基板を1層しか用いない場合は、先に記載した層構造の例における第2の基板のみが透明であれば、第1の基板は透明、不透明は問わない。
基板材料としては例えば、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等のプラスチック、ガラス、セラミックあるいは金属等を用いることができる。尚、基板を1層しか用いない場合、あるいは基板2枚をサンドイッチ状で用いる場合は先に記載した層構造の例における第1の基板の表面にトラッキング用の案内溝や案内ピット、さらにアドレス信号等のプレフォーマットが形成されていても良い。
【0049】
<記録層>
記録層はレーザー光の照射により何らかの光学的変化を生じさせ、その変化により情報を記録できるものであって、この記録層中には本発明の色素が含有されていることが必要で、記録層の形成にあたって本発明の前記色素を1種ずつ、又は複数の組合せで用いてもよい。さらに、本発明の前記色素は光学特性、記録感度、信号特性等の向上の目的で他の有機色素及び金属、金属化合物と混合又は積層化しても良い。このような有機色素の例としては、ポリメチン色素、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系染料、及び金属キレート化合物等が挙げられ、前記の色素を単独で用いてもよいし、2種以上の組合せにしてもよい。
【0050】
また、前記色素中に金属、金属化合物例えば、In、Te、Bi、Se、Sb、Ge、Sn、Al、Be、TeO2、SnO、As、Cd等を分散混合あるは積層の形態で用いることもできる。さらに、前記色素中に高分子材料例えば、アイオノマー樹脂、ポリアミド系樹脂、ビニル系樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴム等の種々の材料もしくはシランカップリング剤等を分散混合して用いてもよいし、あるいは特性改良の目的で安定剤(例えば遷移金属錯体)、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等と一緒に用いることができる。
【0051】
記録層の形成は蒸着、スパッタリング、CVDまたは溶液塗布等の通常の手段によって行うことができる。塗布法を用いる場合には前記染料等を有機溶媒等に溶解してスプレー、ローラーコーティング、ディッピングおよび、スピンコーティング等の慣用のコーティング法によって行われる。
【0052】
用いられる有機溶剤としては一般にメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエタン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素類、あるいはベンゼン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族類、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のセロソルブ類、ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素類等を用いることができる。
【0053】
記録層の膜厚は通常100Å〜10μm、好ましくは200Å〜2000Åが適当である。
【0054】
<下引き層>
下引き層は(a)接着性の向上、(b)水、又はガス等のバリアー、(c)記録層の保存安定性の向上、(d)反射率の向上、(e)溶剤からの基板や記録層の保護、(f)案内溝・案内ピット・プレフォーマット等の形成等を目的として使用される。(a)の目的に対しては高分子材料、例えばアイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル系樹脂、天然樹脂、天然高分子、シリコーン、液状ゴム等の種々の高分子物質、およびシランカップリング剤等を用いることができ、(b)及び(c)の目的に対しては、前記高分子材料以外に無機化合物、例えばSiO2、MgF2、SiO、TiO2、ZnO、TiN、SiN等金属、又は半金属、例えばZn、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Au、Ag、Al等を用いることができる。また(d)の目的に対しては金属、例えばAl、Ag等や、金属光沢を有する有機薄膜、例えばメチン染料、キサンテン系染料等を用いることができ、(e)及び(f)の目的に対しては紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。下引き層の膜厚は通常0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。
【0055】
<金属反射層>
金属反射層の材料は単体で高反射率の得られる腐食されにくい金属、半金属等が挙げられ、材料例としてはAu、Ag、Cr、Ni、Al、Fe、Sn、Cu等が挙げられるが、反射率、生産性の点からAu、Ag、Al、Cuが最も好ましく、これらの金属、半金属は単独で使用しても良く、2種以上の合金としても良い。
膜形成法としては蒸着、スッパタリング等が挙げられ、膜厚としては通常50〜5000Å、好ましくは100〜3000Åである。
【0056】
<保護層、基板表面ハードコート層>
保護層、又は基板面ハードコート層は(a)記録層(反射吸収層)を傷、ホコリ、汚れ等から保護する、(b)記録層(反射吸収層)の保存安定性の向上、(c)反射率の向上等を目的として使用される。これらの目的に対しては、前記中間層(下引き層)に示した材料を用いることができる。又、無機材料としてSiO、SiO2等も用いることができ、有機材料としてポリメチルアクリレート、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリスチレン、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、セルロース、脂肪族炭化水素樹脂、芳香属炭化水素樹脂、天然ゴム、スチレンブタジエン樹脂、クロロプレンゴム、ワックス、アルキッド樹脂、乾性油、ロジン等の熱軟化性、熱溶融性樹脂も用いることができる。
【0057】
前記材料のうち保護層、又は基板表面ハードコート層に最も好ましい例としては生産性に優れた紫外線硬化樹脂である。保護層又は基板面ハードコート層の膜圧は通常0.01〜30μm、好ましくは0.05〜10μmが適当である。本発明において、前記下引き層、保護層、及び基板面ハードコート層には記録層の場合と同様に、安定剤、分散剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤等を含有させることができる。
【0058】
<保護基板>
保護基板はこの保護基板側からレーザー光を照射する場合、使用レーザー光に対し透明でなくてはならず、単なる保護板として用いる場合、透明性は問わない。使用可能な基板材料としては前記の基板材料と全く同様であり、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミドなどのプラスチック、又はガラス、セラミック、あるいは金属などを用いることができる。
【0059】
<接着材、接着層>
2枚の記録媒体を接着できる材料なら何でもよく、生産性を考えると、紫外線硬化型もしくはホットメルト型接着剤が好ましい。
【0060】
【実施例】
次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部はすべて重量部を表わす。
【0061】
実施例1
溝深さ1750Å、半値幅0.25μm、トラックピッチ0.74μmの案内溝を有する厚さ0.6mm射出成形ポリカーボネート基板上に、化合物例A−2とB−1との色素塩を2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに溶解させ、その溶液をスピンナー塗布して厚さ1000Åの有機色素層を形成し、次いでスパッタ法により銀1300Åの反射層を設け、その上にアクリル系フォトポリマーにて5μmの保護層を設けた。さらに厚さ0.6mmの射出成形ポリカーボネート基板をアクリルフォトポリマーにて接着し光記録媒体とした。
【0062】
実施例2〜10
表1に示すような組み合わせの色素塩を用い、それ以外は実施例1と全く同様にして光記録媒体を形成した。
【0063】
比較例1
スチリルカチオン色素である化合物B−1の対イオンがClO4 -の化合物のみを用い、それ以外は実施例1と全く同様にして光記録媒体を形成した。
【0064】
<記録条件>
これらの光記録媒体に発振波長658nm、ビーム径1.0μmの半導体レーザー光を用い、トラッキングしながら信号(線速3.5m/sec.)を記録し、発振波長658nmの半導体レーザーの連続光(再生パワー0.7mW)で再生し、再生波形を観察した。観察した結果を次の条件で行なった耐候テスト結果と併せ表7に示す。
【0065】
<耐候テスト条件>
耐光テスト:4万Lux、Xe光、10時間連続照射
保存テスト:50℃ 80% 800時間放置
【0066】
【表7】
【0067】
【発明の効果】
以上のように、請求項1の光記録媒体によれば、特定のスチリルカチオン色素とアゾ金属キレートアニオン化合物とから得られる色素塩化合物を用いたことから、光学特性に優れ、670nm以下の波長域のレーザー光で記録、再生が可能で、耐光性、保存安定性の優れた光記録媒体を得ることができる。
【0068】
請求項2の光記録媒体によれば、上記アゾ金属キレートアニオン化合物における金属または金属酸化物の価数が3価であることから、安定なアゾ金属キレートアニオン化合物を得ることができる。
【0069】
請求項3の光記録媒体によれば、上記アゾ金属キレートアニオン化合物における金属原子がコバルトであることから、耐光性の優れた記録媒体を得ることができる。
【0071】
請求項4の光記録媒体によれば、上記光記録媒体において、記録再生波長±5nmの波長領域の光に対する記録層単層の屈折率nが1.5≦n≦3.0であり、消衰係数kが0.02≦k≦0.2であることから、安定した高反射率かつ高変調度で記録再生ができる光記録媒体を提供することができる。
【0072】
請求項5の光記録媒体によれば、上記光記録媒体において、該記録媒体が反射層を有し、該反射層が金、銀、銅、アルミニウム、またはこれらの金属の合金であることから、さらに安定した高反射率かつ高変調度で記録再生を行なうことができる。
【0073】
請求項6の光記録媒体によれば、上記光記録媒体において、基板上のトラックピッチが0.7〜0.8μmであり、溝幅が半値幅で0.18〜0.40μmであることから、安定した記録及び再生を行なえる光記録媒体を提供することができる。
【0074】
請求項7の光記録方法によれば、上記本発明の光記録媒体を用い、記録波長600〜720nmで記録するものであることから、特定の記録波長と耐光性、保存安定性の優れた光記録媒体を用いた従来にない光記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)は、通常の追記型光記録媒体を表す図である。
【図2】(a)〜(c)は、CD−R用光記録媒体の構成を表す図である。
【図3】(a)〜(c)は、DVD−R用光記録媒体の構成を表す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 記録層
3 下引き層
4 保護層
5 ハードコート層
6 金属反射層
7 保護基板
8 接着層
Claims (7)
- 基板上に記録層を設けてなる光記録媒体において、記録層中に下記(II−1)、(II−2)、(II−3)で示されるいずれかのスチリルカチオン色素と、下記一般式(I)で示されるアゾ化合物と金属、金属酸化物またはそれらの塩とから形成されるアゾ金属キレートアニオン化合物とから形成される色素塩を少なくとも一種類含有することを特徴とする光記録媒体。
- アゾ金属キレートアニオン化合物における金属または金属酸化物の価数が3価であることを特徴とする請求項1に記載の光記録媒体。
- アゾ金属キレートアニオン化合物における金属原子がコバルトであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光記録媒体。
- 記録再生波長±5nmの波長領域の光に対する記録層単層の屈折率nが1.5≦n≦3.0であり、消衰係数kが0.02≦k≦0.2であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光記録媒体。
- 前記記録媒体が反射層を有し、該反射層が金、銀、銅、アルミニウム、またはこれらの金属の合金であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光記録媒体。
- 基板上のトラックピッチが0.7〜0.8μmであり、溝幅が半値幅で0.18〜0.40μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光記録媒体。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の光記録媒体を用いて記録波長600〜720nmで記録することを特徴とする光記録方法。
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