JPH1068461A - 遊星歯車装置の潤滑構造 - Google Patents

遊星歯車装置の潤滑構造

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JPH1068461A
JPH1068461A JP8227096A JP22709696A JPH1068461A JP H1068461 A JPH1068461 A JP H1068461A JP 8227096 A JP8227096 A JP 8227096A JP 22709696 A JP22709696 A JP 22709696A JP H1068461 A JPH1068461 A JP H1068461A
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lubricating oil
thrust bearing
planet carrier
planetary gear
thrust
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Tatsuya Kato
達也 加藤
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JATCO Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】遊星歯車装置を構成するピニオンギア内周面と
ピニオンシャフト外周面との間に効率良く潤滑油を供給
できるようにする。 【解決手段】サンギア３１とキャリアプレート１５Ｂと
の間に介在するスラスト軸受２２のスラストレース２２
Ａのキャリアプレート１５Ｂ側の面に、内周側及び外周
側を連通する溝２２Ｄを形成する。ピニオンシャフト１
４には、軸方向端面１４Ｂ側に開口する縦穴１４ａと、
外周面で開口する横穴１４ｂ，１４ｃとを形成する。ピ
ニオンシャフト１４の軸方向端面１４Ｂには、キャリア
プレート１５Ｂ外面及び軸方向端面１４Ｂに沿って、ス
ラスト軸受２２の外周面近傍から縦穴１４ａ開口部にま
で至る案内油路２５Ａを形成するオイルキャッチャ２５
を固定し、その最内周部をサンギア３１側に屈曲させ、
案内油路２５Ａの開口部分は広くする。入力軸１には、
隙間２６の内側で開口する潤滑油吐出口１ｂを形成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【発明の属する技術分野】この発明は、遊星歯車装置の
潤滑構造に関し、特に、遊星歯車装置を構成するピニオ
ン内周面とピニオンシャフト外周面との間に効率良く潤
滑油を供給できるようにしたものである。
【０００２】
【従来の技術】この種の従来の技術としては、例えば特
開昭６１−４８６４３号公報に開示されたものがある。
即ち、上記公報に開示された従来の技術は、車両用自動
変速機の遊星歯車装置の強制潤滑機構に関するものであ
って、ピニオンシャフト内部に形成された油路のシャフ
ト端面側開口部に潤滑油を供給するオイルリザーバを、
ピニオンシャフトを支持するプラネットキャリアの側面
に固定するとともに、プラネットキャリアとこれに隣接
するリングギア支持部材との間にスラストレースを備え
た軸受を配設し、その軸受のスラストレースはリングギ
ア支持部材に当接させ、スラストレースの外周は上記オ
イルリザーバの開口部とオーバーラップするようにプラ
ネットキャリア側に屈折させ、さらに、プラネットキャ
リアとリングギア支持部材とが互いに向かい合う側に力
を受けるようにしている。なお、プラネットキャリアと
リングギア支持部材とが互いに向かい合う側に力を受け
るようにするための具体的な構造としては、サンギア，
ピニオン又はリングギアに車両進行時の正転方向の動力
の伝達を受けた場合にサンギアとリングギア支持部材と
が互いに向かい合う側に力を受けるように、各ギアをは
すば歯車とする構造が開示されている。
【０００３】そして、このような構成であれば、プラネ
ットキャリアとリングギア支持部材との間を半径方向外
側に向かって流れる潤滑油は、軸受を介してさらに半径
方向外側に流れてオイルリザーバに供給され、そこから
ピニオンシャフト内部の油路を通じてピニオンシャフト
外周面及びピニオン内周面間に介在する軸受や、プラネ
ットキャリア及びピニオン端面間に介在するスラストワ
ッシャ等に供給されることになるが、プラネットキャリ
アとリングギア支持部材とが互いに向かい合う側に力を
受けるようにしているため、軸受のスラストレースがリ
ングギア支持部材に押し付けられ、そのスラストレース
とリングギア支持部材との間に隙間が形成されることが
防止されるから、プラネットキャリアとリングギア支持
部材との間を流れる潤滑油のうちの多くをプラネットキ
ャリアに沿って移動させて、比較的多量の潤滑油を確実
にオイルリザーバに供給できる、というものであった。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報に開示された従来の技術にあっては、プラネットキャ
リアとリングギア支持部材とが互いに向かい合う側に力
を受けるような構造とすることによって上記のような有
利な作用効果を得ようとしているが、それを実現するた
めには各ギアを所定ねじれ方向のはすば歯車とする必要
があり、はすば歯車のねじれ方向によっては以前から使
用していた他のはすば歯車製造用のヘリカルブローチが
流用できず、ねじれ方向に応じた新たなヘリカルブロー
チが必要となってコスト増大を招くという可能性があっ
た。
【０００５】また、スラストレースがリングギア支持部
材に押し付けられるのは正転時だけであり、逆転時には
スラストレースとリングギア支持部材との間に隙間が形
成され、この隙間から潤滑油が流れてしまい、オイルリ
ザーバに供給できる潤滑油の量が減少してしまうという
問題点があった。
【０００６】なお、このような問題点を解決するため
に、例えばスラストレースをリングギア支持部材側に押
圧するスプリングを設けることも考えられるが、これで
は部品点数が増大し、組立工数の増大やコストアップを
招くという不具合があるため、有効な解決策とはならな
い。
【０００７】本発明は、このような従来の技術が有する
未解決の課題に着目してなされたものであって、ピニオ
ン内周面とピニオンシャフト外周面との間に効率良く潤
滑油を供給できる遊星歯車装置の潤滑構造を提供するこ
とを目的としている。
【０００８】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項１に係る発明は、ピニオンが回転自在に外嵌
するピニオンシャフトの端部をプラネットキャリアに保
持し、前記ピニオンシャフト内には前記プラネットキャ
リア側の軸方向端面から外周面に通じる内部潤滑油路を
形成し、前記プラネットキャリアとこれに軸方向で隣り
合う他の部材との間には前記ピニオンシャフトよりも半
径方向内側に位置するようにスラスト軸受を介在させ、
前記スラスト軸受よりも半径方向内側に潤滑油吐出口を
形成し、前記スラスト軸受よりも半径方向外側に前記内
部潤滑油路への潤滑油の流入を案内する案内部材を配設
している遊星歯車装置の潤滑構造において、前記スラス
ト軸受と前記プラネットキャリアとの間に、前記スラス
ト軸受の半径方向内側及び半径方向外側間を連通する溝
を形成した。
【０００９】また、請求項２に係る発明は、上記請求項
１に係る発明である遊星歯車装置の潤滑構造において、
前記スラスト軸受の前記プラネットキャリアに当接する
スラストレースに前記溝を形成した。
【００１０】そして、請求項３に係る発明は、上記請求
項１に係る発明である遊星歯車装置の潤滑構造におい
て、前記プラネットキャリアに前記溝を形成した。さら
に、請求項４に係る発明は、上記請求項１に係る発明で
ある遊星歯車装置の潤滑構造において、前記スラスト軸
受と前記プラネットキャリアとの間に板部材を配置し、
その板部材に前記溝を形成した。
【００１１】ここで、請求項１に係る発明にあっては、
潤滑油吐出口から吐出してプラネットキャリアとこれに
軸方向で隣り合う他の部材との間に流入した潤滑油は、
先ずはプラネットキャリアと他の部材との間に介在する
スラスト軸受に供給されるから、スラスト軸受を構成す
る例えば転動体とスラストレース転動面との間の潤滑が
行われる。そして、スラスト軸受を通過してその半径方
向外側に移動した潤滑油は、案内部材に案内されて内部
潤滑油路内に流入するが、潤滑油吐出口からスラスト軸
受に到達した潤滑油の一部は、スラスト軸受とプラネッ
トキャリアとの間に形成された溝を通過し、その溝を通
過した潤滑油は確実にプラネットキャリアの軸方向端面
に沿って移動するため、案内部材に案内される潤滑油が
比較的多量となる。
【００１２】つまり、案内部材は、ピニオンの軸方向端
面に開口する内部潤滑油路への潤滑油の流入を案内する
部材であるから、ピニオンの軸方向端部を保持するプラ
ネットキャリアに沿って移動する潤滑油が多量になれば
なるほど案内部材に案内されて内部潤滑油路に流入する
潤滑油の量は増加し、内部潤滑油路に多量の潤滑油が流
入すれば、ピニオンシャフト外周面に十分な潤滑油が供
給され、良好な潤滑が行われるのである。
【００１３】しかも、プラネットキャリアとこれに隣り
合う他の部材との間に互いに近づく方向の力が働いても
或いは互いに離れる方向の力が働いても、スラスト軸受
及びプラネットキャリア間の溝は常に形成されているか
ら、ギアの回転方向によって案内部材に案内される潤滑
油の量が減少するようなことはないし、例えばスラスト
軸受をプラネットキャリアに押し付けるスプリングのよ
うな他の部材は不要であるから、コスト的にも有利であ
り、配設スペース上の制約も受けない。
【００１４】スラスト軸受とプラネットキャリアとの間
に形成する溝は、請求項２に係る発明のようにスラスト
軸受のスラストレース側に形成しても、請求項３に係る
発明のようにプラネットキャリア側に形成しても、或い
は、請求項４に係る発明のようにスラスト軸受及びプラ
ネットキャリア間に挟み込まれる他の部材に形成しても
よく、いずれの溝であっても請求項１に係る発明の作用
が発揮される。
【００１５】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図１及び図２は本発明の第１の
実施の形態を示す図であって、図１は本発明に係る遊星
歯車装置を含んで構成した車両用自動変速機の部分断面
図である。
【００１６】先ず、構成を説明すると、この車両用自動
変速機は、入力軸１の回転中心軸Ｃと同軸にフロント遊
星歯車装置１０とリヤ遊星歯車装置３０とを有してい
る。フロント遊星歯車装置１０は、サンギア１１と、こ
のサンギア１１と噛み合う複数（図１にはそのうちの一
つのみを示す）のピニオン１２と、各ピニオン１２と噛
み合うリングギア１３と、を有していて、ピニオン１２
は、コロ軸受１２ａを介してピニオンシャフト１４に外
嵌し、ピニオンシャフト１４の両端部は、プラネットキ
ャリア１５を構成するキャリアプレート１５Ａ，１５Ｂ
に相対回転不可能に保持されている。なお、ピニオンシ
ャフト１４の軸方向端部はキャリアプレート１５Ａ，１
５Ｂを貫通していて、その軸方向端面１４Ａ，１４Ｂは
各キャリアプレート１５Ａ，１５Ｂの外面側にまで達し
ている。また、リヤ遊星歯車装置３０に近い方のキャリ
アプレート１５Ｂの内周側は入力軸１近傍にまで至って
おり、そのキャリアプレート１５Ｂの内周面は、入力軸
１に相対回転可能に同軸に外嵌したプラネットシャフト
２にスプライン結合している。
【００１７】そして、ピニオン１２の両端面とキャリア
プレート１５Ａ，１５Ｂ内面との間にはスラストワッシ
ャ１６Ａ，１６Ｂが介在していて、これらスラストワッ
シャ１６Ａ，１６Ｂとコロ軸受１２ａとによって、ピニ
オン１２はピニオンシャフト１４に対して回転自在とな
っている。
【００１８】また、フロント遊星歯車装置１０のサンギ
ア１１のキャリアプレート１５Ｂ側とは逆側の端部は、
半径方向外側（図１において回転中心軸Ｃから遠い側）
に広がるサンギア支持部材１１Ａに固定されていて、そ
のサンギア支持部材１１とキャリアプレート１５Ａ外面
との間には、スラスト軸受２０が介在している。
【００１９】一方、リヤ遊星歯車装置３０は、内周側が
入力軸１にスプライン結合したサンギア３１と、このサ
ンギア３１と噛み合う複数（図１にはそのうちの一つの
みを示す）のピニオン３２と、各ピニオン３２と噛み合
うリングギア（図示せず）と、を有していて、ピニオン
３２は、コロ軸受３２ａを介してピニオンシャフト３４
に外嵌している。ピニオンシャフト３４の両端部は、プ
ラネットキャリア３５を構成するキャリアプレート３５
Ａ，３５Ｂに相対回転不可能に保持されていて、フロン
ト遊星歯車装置１０側のキャリアプレート３５Ａの外周
側は、フロント遊星歯車装置１０のリングギア１３内周
面にスプライン結合され、他方のキャリアプレート３５
Ｂは、入力軸１と同軸に配設された図示しない出力軸に
スプライン結合されている。
【００２０】そして、ピニオン３２の両端面とキャリア
プレート３５Ａ，３５Ｂ内面との間にはスラストワッシ
ャ３６Ａ，３６Ｂが介在していて、これらスラストワッ
シャ３６Ａ，３６Ｂとコロ軸受３２ａとによって、ピニ
オン３２はピニオンシャフト３４に対して回転自在とな
っている。
【００２１】また、キャリアプレート３５Ｂの内面側に
は潤滑油溝３５ａが形成されており、そのキャリアプレ
ート３５Ｂとサンギア３１との間には、スラスト軸受２
１が介在している。
【００２２】さらに、サンギア３１のキャリアプレート
３５Ｂ側とは逆側の面と、キャリアプレート１５Ｂとの
間には、スラスト軸受２２が介在している。ここで、ス
ラスト軸受２２は、図２（ｂ）にも示すように、キャリ
アプレート１５Ｂに当接するスラストレース２２Ａと、
サンギア３１に当接するスラストレース２２Ｂと、これ
らスラストレース２２Ａ，２２Ｂ間で転動する転動体２
２Ｃと、を有している。そして、スラストレース２２Ａ
のキャリアプレート１５Ｂ側の面には、内周側及び外周
側を連通する溝２２Ｄが、各ピニオンシャフト１４保持
位置の半径方向内側（図１において回転中心軸Ｃに近い
側）に位置するように、周方向に９０度ずつ離隔して計
四つ形成されている。なお、スラストレース２２Ａの外
周部には、スラストレース２２Ｂ側に向かって屈曲した
屈曲部２２ａが形成されている。
【００２３】ここで、本実施の形態では、フロント遊星
歯車装置１０のピニオンシャフト１４には、軸方向端面
１４Ｂ側から軸心に沿って延びて軸方向中央部を若干越
えた当たりまで至っている縦穴１４ａと、リングギア１
３側を向く外周面の軸方向中央部から半径方向（図１の
上下方向）に延びて縦穴１４ａに連通する横穴１４ｂ
と、リングギア１３側を向く外周面のスラストワッシャ
１６Ｂに包囲された部位から半径方向に延びて縦穴１４
ａに連通する横穴１４ｃとが穿孔されている。
【００２４】そして、ピニオンシャフト１４の軸方向端
面１４Ｂには、キャリアプレート１５Ｂ外面及び軸方向
端面１４Ｂに沿って、スラスト軸受２２の外周面近傍か
ら縦穴１４ａ開口部にまで至る案内油路２５Ａを形成す
る案内部材としてのオイルキャッチャ２５が固定されて
いる。オイルキャッチャ２５は、薄いリング状の部材で
あって、縦穴１４ａよりも半径方向外側の部分がシール
リング２５ａを介在させた状態で軸方向端面１４Ｂに張
り付けられていて、縦穴１４ａよりも半径方向内側の部
分が軸方向端面１４Ｂ及びキャリアプレート１５Ｂから
離隔して案内油路２５Ａを形成している。また、本実施
の形態では、オイルキャッチャ２５の最内周部をサンギ
ア３１側に屈曲させていて、これにより案内油路２５Ａ
の開口部分を広くしている。
【００２５】さらに、入力軸１には、その内部にこれと
同軸に延びる潤滑油供給路１Ａが形成されるとともに、
その潤滑油供給路１Ａに通じて外周面にて開口する複数
の潤滑油吐出口１ａ，１ｂ，１ｃが形成されている。こ
れらのうち、潤滑油吐出口１ａはプラネットシャフト２
に覆われた部位に形成されているが、その潤滑油吐出口
１ａから吐出した潤滑油は、プラネットシャフト２に形
成された貫通孔２ａ及びサンギア１１に形成された貫通
孔１１ａを通じてキャリアプレート１５Ａ内周部が存在
する空間に供給され、スラスト軸受２０，スラストワッ
シャ１６Ａ，サンギア１１及びピニオン１２の噛み合い
部分等に対する潤滑を行うようになっている。また、潤
滑油吐出口１ｃは、キャリアプレート３５Ｂの内周面に
対向した位置にて開口していて、その潤滑油吐出口１ｃ
から吐出した潤滑油は、スラスト軸受２１に対する潤滑
を行うとともに、そのスラスト軸受２１を通過した潤滑
油が、スラストワッシャ３６Ｂ，コロ軸受３２ａ，サン
ギア３１及びピニオン３２の噛み合い部等に対する潤滑
を行うようになっている。
【００２６】そして、潤滑油吐出口１ｂは、キャリアプ
レート１５Ｂとサンギア３１との間に形成された隙間２
６にて向かって開口していて、その潤滑油吐出口１ｂか
ら吐出した潤滑油は隙間２６に供給されるようになって
いる。
【００２７】次に、本実施の形態の動作を説明する。即
ち、フロント遊星歯車装置１０，リヤ遊星歯車装置３０
の各ギア等が変速比に応じて適宜回転駆動している状態
では、潤滑油供給路１Ａ内の潤滑油は入力軸１の回転に
伴って生じる遠心力の影響により各潤滑油吐出口１ａ〜
１ｃを通じて入力軸１外部に吐出し、潤滑油吐出口１ａ
から吐出した潤滑油によってスラスト軸受２０やスラス
トワッシャ１６Ａに対する潤滑が行われ、潤滑油吐出口
１ｃから吐出した潤滑油によってスラスト軸受２１，ス
ラストワッシャ３６Ｂ及びコロ軸受３２ａに対する潤滑
が行われる。
【００２８】そして、潤滑油吐出口１ｂから吐出した潤
滑油は隙間２６に流れ込み、その隙間２６内を半径方向
外側に移動してスラスト軸受２２に到達するから、スラ
スト軸受２２のスラストレース２２Ａ，２２Ｂと転動体
２２Ｃとの間の潤滑が行われる。このスラスト軸受２２
内の潤滑に用いられた潤滑油は、さらに遠心力の影響を
受けて半径方向外側に移動しようとするが、スラストレ
ース２２Ａの外周部に形成された屈曲部２２ａによって
流れの方向が調整されるから、スラスト軸受２２よりも
半径方向外側の空間に至るとサンギア３１に沿って流れ
るようになり、サンギア３１及びピニオン３２の噛み合
い部分やスラストワッシャ３６Ａ等に対する潤滑を行う
ようになる。
【００２９】その一方で、潤滑油吐出口１ｂから隙間２
６内に流入してスラスト軸受２２に到達した潤滑油の一
部は、溝２２Ｄ内を通過してスラスト軸受２２よりも半
径方向外側の空間に至り、キャリアプレート１５Ｂに沿
って半径方向外側に移動するから、確実に案内油路２５
Ａ内に流入する。つまり、本実施の形態にあっては、溝
２２Ｄを形成しているため、隙間２６内の潤滑油の一部
を確実にオイルキャッチャ２５内に送り込むことができ
るのである。
【００３０】特に、本実施の形態では、オイルキャッチ
ャ２５が形成する案内油路２５Ａをスラスト軸受２２の
外周面近傍まで到達させているし、しかもオイルキャッ
チャ２５の内周部を屈曲して案内油路２５Ａの開口部を
広くしているから、溝２２Ｄを通過した潤滑油を極めて
確実に案内油路２５Ａ内に送り込むことができる。従っ
て、溝２２Ｄの断面積等を適宜選定すれば、オイルキャ
ッチャ２５内に十分な量の潤滑油を確実に供給すること
ができるのである。
【００３１】そして、オイルキャッチャ２５内に供給さ
れた潤滑油はさらに遠心力の影響を受けて半径方向外側
に移動して縦穴１４ａ内に入り込み、そこから横穴１４
ｂ，１４ｃ内を通じて半径方向外側に移動するから、コ
ロ軸受１２ａやスラストワッシャ１６Ｂに対する潤滑が
良好に行えるのである。また、溝２２Ｄの形成位置とピ
ニオンシャフト１４の保持位置とを回転方向で一致させ
ることにより、溝２２Ｄと縦穴１４ａ開口部とを同一半
径方向に沿って並ぶようにしているから、溝２２Ｄを通
過した潤滑油を最短距離で縦穴１４ａに供給することが
できるようにもなっている。
【００３２】しかも、キャリアプレート１５Ｂとサンギ
ア３１との間に互いに近づく方向の力が働いても或いは
互いに離れる方向の力が働いても、溝２２Ｄは常に形成
されているから、ギアの回転方向によってオイルキャッ
チャ２５に入り込む潤滑油の量が減少するようなことは
ない。さらに、必要な加工はスラストレース２２Ａに溝
２２Ｄを形成するだけであり、スラストレース２２Ｂを
サンギア３１側に押し付けるスプリング等の部材は不要
であるから、コスト的にも有利であり、配設スペース上
の制約も受けない。
【００３３】ここで、本実施の形態では、縦穴１４ａ，
横穴１４ｂ及び１４ｃが請求項１に係る発明における内
部潤滑油路に対応し、キャリアプレート１５Ｂが請求項
１に係る発明におけるプラネットキャリアに対応し、サ
ンギア３１が請求項１に係る発明における他の部材（プ
ラネットキャリアに軸方向で隣り合う他の部材）に対応
する。
【００３４】図３は本発明の第２の実施の形態を示す図
であって、図１と同様に本発明に係る遊星歯車装置を含
んで構成した車両用自動変速機の部分断面図である。な
お、上記第１の実施の形態と同様の部材及び部位には、
同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【００３５】即ち、本実施の形態では、スラスト軸受２
２のスラストレース２２Ａに溝を形成するのではなく、
そのスラストレース２２Ａが当接するキャリアプレート
１５Ｂ側に半径方向に延びる溝４０を形成している。溝
４０の個数や形成位置等は、上記第１の実施の形態にお
ける溝２２Ｄと同様である。
【００３６】このような構成であっても、潤滑油吐出口
１ｂから隙間２６内に流入してスラスト軸受２２に到達
した潤滑油の一部は、溝４０内を通過してスラスト軸受
２２よりも半径方向外側の空間に至り、キャリアプレー
ト１５Ｂに沿って半径方向外側に移動するようになるか
ら、上記第１の実施の形態と同様に、オイルキャッチャ
２５内に十分な量の潤滑油を確実に供給でき、コロ軸受
１２ａやスラストワッシャ１６Ｂに対する潤滑が良好に
行えるのである。その他の作用効果も、上記第１の実施
の形態と同様である。
【００３７】図４は本発明の第３の実施の形態を示す図
であって、図１と同様に本発明に係る遊星歯車装置を含
んで構成した車両用自動変速機の部分断面図である。な
お、上記第１の実施の形態と同様の部材及び部位には、
同じ符号を付し、その重複する説明は省略する。
【００３８】即ち、本実施の形態では、スラスト軸受２
２のスラストレース２２Ａとキャリアプレート１５Ｂと
の間に薄いリング状の例えば合成樹脂製の板部材４５を
挟み込んでいて、その板部材４５のスラストレース２２
側の面に、内周側及び外周側間を連通する溝４５Ａを形
成している。溝４５Ａの個数や形成位置等は、上記第１
の実施の形態における溝２２Ｄと同様である。また、キ
ャリアプレート１５Ｂのサンギア３１側の面には、リン
グ状の板部材４５の外周面に当接してその位置決め等を
容易にするためのリング状に連続した凸部４６を形成し
ている。
【００３９】このような構成であっても、潤滑油吐出口
１ｂから隙間２６内に流入してスラスト軸受２２に到達
した潤滑油の一部は、溝４５Ａ内を通過してスラスト軸
受２２よりも半径方向外側の空間に至り、キャリアプレ
ート１５Ｂに沿って半径方向外側に移動するようになる
から、上記第１の実施の形態と同様に、オイルキャッチ
ャ２５内に十分な量の潤滑油を確実に供給でき、コロ軸
受１２ａやスラストワッシャ１６Ｂに対する潤滑が良好
に行えるのである。その他の作用効果も、上記第１の実
施の形態と同様である。
【００４０】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
プラネットキャリアとこれに軸方向で隣り合う他の部材
との間に介在するスラスト軸受と、プラネットキャリア
との間に、そのスラスト軸受の半径方向内側及び半径方
向外側間を連通する溝を形成したため、大幅なコストア
ップ等の不具合を招くことなく、遊星歯車装置を構成す
るピニオン内周面とピニオンシャフト外周面との間に効
率良く潤滑油を供給できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図１】第１の実施の形態の構成を示す断面図である。
【図２】スラスト軸受の構成を示す図である。
【図３】第２の実施の形態の構成を示す断面図である。
【図４】第３の実施の形態の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
１ 入力軸 １ａ〜１ｃ 潤滑油吐出口 １０ フロント遊星歯車装置 １１ サンギア １２ ピニオン １３ リングギア １４ ピニオンシャフト １４Ａ，１４Ｂ 軸方向端面 １４ａ 縦穴（内部潤滑油路） １４ｂ，１４ｃ 横穴（内部潤滑油路） １５ プラネットキャリア １５Ａ，１５Ｂ キャリアプレート ２２ スラスト軸受 ２２Ａ，２２Ｂ スラストレース ２２Ｄ 溝 ２５ オイルキャッチャ（案内部材） ３０ リヤ遊星歯車装置 ３１ サンギア（他の部材） ３２ ピニオン ４０ 溝 ４５ 板部材 ４５Ａ 溝

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 ピニオンが回転自在に外嵌するピニオン
    シャフトの端部をプラネットキャリアに保持し、前記ピ
    ニオンシャフト内には前記プラネットキャリア側の軸方
    向端面から外周面に通じる内部潤滑油路を形成し、前記
    プラネットキャリアとこれに軸方向で隣り合う他の部材
    との間には前記ピニオンシャフトよりも半径方向内側に
    位置するようにスラスト軸受を介在させ、前記スラスト
    軸受よりも半径方向内側に潤滑油吐出口を形成し、前記
    スラスト軸受よりも半径方向外側に前記内部潤滑油路へ
    の潤滑油の流入を案内する案内部材を配設している遊星
    歯車装置の潤滑構造において、 前記スラスト軸受と前記プラネットキャリアとの間に、
    前記スラスト軸受の半径方向内側及び半径方向外側間を
    連通する溝を形成したことを特徴とする遊星歯車装置の
    潤滑構造。
  2. 【請求項２】 前記スラスト軸受の前記プラネットキャ
    リアに当接するスラストレースに前記溝を形成した請求
    項１記載の遊星歯車装置の潤滑構造。
  3. 【請求項３】 前記プラネットキャリアに前記溝を形成
    した請求項１記載の遊星歯車装置の潤滑構造。
  4. 【請求項４】 前記スラスト軸受と前記プラネットキャ
    リアとの間に板部材を配置し、その板部材に前記溝を形
    成した請求項１記載の遊星歯車装置の潤滑構造。
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