JP3522152B2 - 遊星歯車装置の潤滑構造 - Google Patents

遊星歯車装置の潤滑構造

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JP3522152B2 JP14455299A JP14455299A JP3522152B2 JP 3522152 B2 JP3522152 B2 JP 3522152B2 JP 14455299 A JP14455299 A JP 14455299A JP 14455299 A JP14455299 A JP 14455299A JP 3522152 B2 JP3522152 B2 JP 3522152B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用自動変速機な
どに用いられる遊星歯車装置の潤滑構造、特に ピニオ
ンギヤの端面とキャリヤの側面との間に配置されるスラ
ストワッシャへの潤滑油の供給構造に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、自動変速機には種々のタイプの遊
星歯車装置が用いられている。例えば実開平4−126
055号公報にはラビニヨウ型遊星歯車装置が開示され
ており、この遊星歯車装置は互いに噛み合う軸長の長い
ロングピニオンギヤ(遊星歯車)と軸長の短いショート
ピニオンギヤ(遊星歯車)とを備えており、これらピニ
オンギヤはそれぞれピニオンシャフトを介してキャリヤ
で回転自在に支持されている。ロングピニオンギヤは大
径な第1サンギヤに噛み合い、ショートピニオンギヤは
小径な第2サンギヤに噛み合っており、ロングピニオン
ギヤはさらにリングギヤとも噛み合っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような構造の遊星
歯車装置の場合、ピニオンギヤの両端面とキャリヤの内
側面との間には、ピニオンシャフトに挿通されたスラス
トワッシャが配置されている。ところが、ピニオンギヤ
は自転しつつ公転するので、スラストワッシャを潤滑す
るのが難しい。スラストワッシャへの潤滑油量が不足す
ると、スラストワッシャとピニオンギヤとの間、あるい
はスラストワッシャとキャリヤとの間で焼き付きや摩耗
が発生する。
【0004】従来、このようなスラストワッシャの焼き
付きや摩耗を防止するために、例えば特開平7−317
885号公報や特開平10−311410号公報のよう
に、2枚のスラストワッシャを重ねて使用したものが提
案されている。前者の場合には、2枚のスラストワッシ
ャの一方をキャリヤに対して回り止めするとともに、2
枚のスラストワッシャの対向面に直径方向の凹溝を形成
し、この凹溝に潤滑油を流すことで、焼き付きを防止す
るものである。また、後者の場合には、一方のスラスト
ワッシャに突出部を設けるとともに、このスラストワッ
シャと接するキャリヤの内側面に半径方向の溝を形成
し、さらに他方のスラストワッシャの内径部に切欠部を
形成することで、スラストワッシャとピニオンギヤとの
隙間、スラストワッシャ間の隙間、スラストワッシャと
キャリヤとの隙間からそれぞれ潤滑油を外径方向へ流
し、焼き付きを防止している。
【0005】ところが、上記のように2枚のスラストワ
ッシャを使用すると、部品数の増加およびコスト上昇を
招くとともに、スラストワッシャやキャリヤの側面に溝
加工を行わなければならず、製造コストが上昇するとい
う欠点がある。一般に、スラストワッシャは炭素鋼のよ
うなばね鋼で形成されるので、このような高強度材料に
溝加工を行なうことは、多大のコストがかかる。また、
上記いずれの場合も、スラストワッシャがピニオンギヤ
の端面およびキャリヤの側面に殆ど隙間なく接触してい
るので、ニードルベアリングに沿って軸方向へ流れた潤
滑油を摺動面、つまりスラストワッシャとピニオンギヤ
との隙間、およびスラストワッシャとキャリヤとの隙間
に供給するのが非常に難しい。その結果、いずれの場合
も摺動面の摩耗や焼き付きを確実に防止できないという
問題があった。
【0006】そこで、本発明の目的は、1枚のスラスト
ワッシャを用い、かつこのスラストワッシャに簡単な加
工を行なうだけで、摺動面に確実に潤滑油を供給でき、
摩耗や焼き付きを防止できる遊星歯車装置の潤滑構造を
提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明は、ピニオンギヤの中心穴にニードルベアリ
ングを介してピニオンシャフトを相対回転自在に挿通
し、ピニオンシャフトの両端部をキャリヤで支持すると
ともに、上記ピニオンギヤの端面とキャリヤの内側面
の間に、上記ピニオンシャフトに挿通されたスラストワ
ッシャを配置してなる遊星歯車装置において、上記ピニ
オンシャフトに、上記ニードルベアリングに潤滑油を供
給する潤滑穴を設ける一方、上記スラストワッシャに、
内径側端部が上記スラストワッシャとピニオンギヤとの
摺動面より内径側に位置するとともに、外径側端部が上
記スラストワッシャとピニオンギヤとの摺動面内に位置
し、ピニオンギヤの中心穴内周面とピニオンシャフトの
外周面との間を流れた潤滑油を受け入れる貫通穴よりな
油溜め穴を形成し、上記油溜め穴をスラストワッシャ
と接触するキャリヤの内側面に開口させたことを特徴と
する遊星歯車装置の潤滑構造を提供する。
【0008】ピニオンシャフトの潤滑穴に供給された潤
滑油は、遠心力によってピニオンシャフトの外周面へ流
れ、ニードルベアリングを潤滑する。ニードルベアリン
グを潤滑した油は、ピニオンギヤの中心穴内周面とピニ
オンシャフトの外周面との間を軸方向へ流れ、スラスト
ワッシャとの接触部へ到達する。スラストワッシャに
は、内径側端部がスラストワッシャとピニオンギヤとの
摺動面より内径側に位置し、外径側端部がスラストワッ
シャとピニオンギヤとの摺動面内に位置する大きさの油
溜め穴が形成されているので、ピニオンギヤの中心穴内
周面に沿って流れた油はこの油溜め穴に溜められる。油
溜め穴は、スラストワッシャを間にして摺動するピニオ
ンギヤとキャリヤとの摺動面に開口しているので、油溜
め穴に溜まった油によって摺動面に油膜を形成でき、焼
き付きや摩耗を確実に防止できる。また、本発明では、
スラストワッシャに油溜め穴を適数個加工するだけでよ
いので、スラストワッシャやキャリヤの内側面に溝を加
工する必要がなく、製造コストを低減できる。
【0009】本発明で使用されるニードルベアリングと
しては、保持器付きあるいは保持器無しのいずれでも使
用可能であり、少なくともスラストワッシャに形成され
た油溜め穴を閉じない構造のニードルベアリングであれ
ばよい。ただ、請求項2のように保持器付のニードルベ
アリングを使用すれば、スラストワッシャの油溜め穴に
常に効率よく潤滑油を供給できるので、望ましい。スラ
ストワッシャはピニオンギヤおよびキャリヤに対して相
対回転自在としてもよいし、例えばキャリヤに対して回
り止めしてもよい。キャリヤに対して回り止めした場合
には、キャリヤとスラストワッシャとの間を必ずしも潤
滑する必要はない。ピニオンシャフトの潤滑穴に潤滑油
を供給する方法としては、例えばキャリヤに遠心力によ
って外周方向へ流れた潤滑油を受け取る油収集板を取り
付け、この油収集板によってピニオンシャフトの潤滑穴
へ潤滑油を導くようにしてもよいし、キャリヤに油供給
穴を設け、この穴からピニオンシャフトの潤滑穴へ油を
供給してもよい。また、それ以外の方法を用いることも
できる。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は本発明にかかる遊星歯車装
置を用いた自動変速機の変速機構の概略を示す。この変
速機構1は、入力軸2、3個のクラッチC1〜C3、2
個のブレーキB1,B2、ワンウエイクラッチF、遊星
歯車装置4、出力軸5などを備えている。
【0011】この実施例の遊星歯車装置4はラビニヨウ
型であり、第1サンギヤ4a、第2サンギヤ4b、キャ
リヤ4c、ロングピニオンギヤ4d、ショートピニオン
ギヤ4e、リングギヤ4fなどを備えている。第1サン
ギヤ4aと入力軸2とはC1クラッチを介して連結され
ており、第2サンギヤ4bと入力軸2とはC2クラッチ
を介して連結されている。キャリヤ4cはセンターシャ
フト3と連結され、センターシャフト3はC3クラッチ
を介して入力軸2と連結されている。また、キャリヤ4
cはB2ブレーキとキャリヤ4cの正転のみを許容する
ワンウェイクラッチFとを介して変速機ケース6に連結
されている。キャリヤ4cは2種類のピニオンギヤ4
d,4eを支持しており、第1サンギヤ4aは軸長の長
いロングピニオンギヤ4dと噛み合い、第2サンギヤ4
bは軸長の短いショートピニオンギヤ4eを介してロン
グピニオンギヤ4dと噛み合っている。ロングピニオン
ギヤ4dのみと噛み合うリングギヤ4fは出力軸5に連
結されている。この変速機構1は、クラッチC1,C
2,C3、ブレーキB1,B2およびワンウェイクラッ
チFの作動によって前進4段、後退1段の変速段を実現
している。
【0012】図2〜図6は遊星歯車装置4の詳細構造を
示す。ロングピニオンギヤ4dの中心穴4d1 にはニー
ドルベアリング11を介して第1ピニオンシャフト10
が回転自在に挿通されており、ショートピニオンギヤ4
eの中心穴4e1 にもニードルベアリング13を介して
第2ピニオンシャフト12が回転自在に挿通されてい
る。キャリヤ4cには、図3に示すように、第1ピニオ
ンシャフト10の両端部および第2ピニオンシャフト1
2の両端部を嵌合支持する軸受穴14a,14bおよび
15a,15bが設けられている。
【0013】第1ピニオンシャフト10の一端部(図3
の右端部)、およびこの端部を支持するキャリヤ4cの
軸受穴14aには、半径方向外方からローラピン17が
挿入され、第1ピニオンシャフト10はキャリヤ4cに
対して軸方向および回転方向に固定されている。
【0014】キャリヤ4cの軸方向一端部(図3の右端
部)にはキャリヤカバー20が取り付けられている。キ
ャリヤカバー20は、キャリヤ4の外周部を覆うようド
ラム状に形成されており、B2ブレーキのクラッチ板が
係合するスプラインハブ21と、ワンウエイクラッチF
の内輪を構成する内輪部22とを備えている。また、キ
ャリヤカバー20の側壁部は皿ネジ23によってキャリ
ヤ4cに締着されており、キャリヤカバー20はキャリ
ヤ4cと一体的に固定されている。キャリヤカバー20
の一端部(図3の右端部)内周面は、上記ローラピン1
7の外周端部を位置決めして、ローラピン17を抜け止
めしている。
【0015】キャリヤ4cとピニオンギヤ4d,4eの
左端面との間には、図7に示すような略眼鏡形状のスラ
ストワッシャ30が配置されており、ロングピニオンギ
ヤ4dおよびショートピニオンギヤ4eの左端面を摺動
自在に支持している。スラストワッシャ30の一端部に
は異形穴30aが形成されており、この異形穴30aに
第2ピニオンシャフト12の他端部(図3の左端部)に
形成された異形断面部12aが嵌合している。なお、異
形断面部12aの形状は、円形以外であれば、4角形な
どいかなる形状でもよい。第2ピニオンシャフト12の
異形断面部12aをスラストワッシャ30の異形穴30
aに嵌合することにより、第2ピニオンシャフト12の
回転方向および軸方向左方への動きが規制される。スラ
ストワッシャ30の他端部には第1ピニオンシャフト1
0の端部と嵌合する円形穴30bが形成されている。こ
の穴30bが円形であるのは、第1ピニオンシャフト1
0がローラピン17によって軸方向および回転方向に固
定されているため、異形穴とする必要がないからであ
る。
【0016】また、第2ピニオンシャフト12の軸方向
右方への動きは、キャリヤカバー20の一端部内側面2
6(図3参照)によって規制されている。そのため、第
2ピニオンシャフト12はスラストワッシャ30の異形
穴30aによって回転方向に固定され、異形穴30aお
よび内側面26によって軸方向に固定される。
【0017】スラストワッシャ30の異形穴30aおよ
び円形穴30bの周囲には、複数個(実施例ではそれぞ
れ3個)の油溜め穴30c,30dがそれぞれ形成され
ている。これら油溜め穴30c30dは、図7に斜線で
示すように、内径側端部がピニオンギヤ4d,4eの端
面と摺動する摺動面Sより内径側に突出しており、外径
側端部が摺動面S内に位置する大きさを有する。そし
て、後述するように、ピニオンシャフト10の外周面に
供給された潤滑油を溜め、ピニオンギヤ4d,4eの端
面またはキャリヤ4cの内側面を潤滑して焼き付きや摩
耗を防止する働きをする。
【0018】また、ロングピニオンギヤ4dの右側端面
とキャリヤ4cの内側面との間には、図8に示すスラス
トワッシャ31が介装され、ショートピニオンギヤ4e
の右側端面とキャリヤ4cの内側面との間にもスラスト
ワッシャ32が介装されている。スラストワッシャ31
は円環状のワッシャであり、第1ピニオンシャフト10
が嵌合される円形の嵌合穴31aを有し、この嵌合穴3
1aの周囲に複数個(実施例では3個)の油溜め穴31
bが形成されている。これら油溜め穴31bも、上記油
溜め穴30c,30dと同様に、内径側端部がピニオン
ギヤ4dの端面と摺動する摺動面S(斜線で示す)より
内径側に突出しており、外径側端部が摺動面S内に位置
する大きさを有する。そして、後述するように、ピニオ
ンギヤ4dの内周面とピニオンシャフト10の外周面と
の間を流れた潤滑油を溜め、ピニオンギヤ4dの端面ま
たはキャリヤ4cの内側面を潤滑して焼き付きや摩耗を
防止する働きをする。なお、スラストワッシャ32はス
ラストワッシャ31と同一形状であるため、説明を省略
する。
【0019】図2に示すように、センターシャフト3の
軸心には軸心穴3aが形成され、この軸心穴3aから半
径方向に開口する供給穴3bを介してキャリヤ4cと出
力軸5との隙間に潤滑油が供給される。この潤滑油は、
スラストベアリング40を通り、キャリヤ4cの外周面
に嵌着されたオイルカバー(油収集板)33で受け止め
られ、第1ピニオンシャフト10の軸心潤滑穴10bへ
供給される。軸心潤滑穴10bに入った油は、半径方向
に開口する供給穴10cから第1ピニオンシャフト10
の外周面へと排出され、第1ピニオンシャフト10とロ
ングピニオンギヤ4dとの間に配置されたニードルベア
リング11を潤滑する。この実施例のニードルベアリン
グ11は保持器11a付きのものであり、図9の(b)
に示すように保持器11aに形成された穴にニードル1
1bが円周方向に所定間隔を開けて複数本配列されてい
る。
【0020】ここで、本発明にかかる遊星歯車装置4の
潤滑構造、特にスラストワッシャ30,31の潤滑作用
を図5,図6を参照して説明する。上述のように、第1
ピニオンシャフト10の軸心潤滑穴10bに入った潤滑
油は、半径方向に開口する供給穴10cから第1ピニオ
ンシャフト10の外周面へと排出され、第1ピニオンシ
ャフト10とロングピニオンギヤ4dとの間に配置され
たニードルベアリング11を潤滑する。ニードルベアリ
ング11を潤滑しながら軸方向の一方側(図2の左方)
へ流れた潤滑油は、図5のようにニードルベアリング1
1の保持器11aの外周面とロングピニオンギヤ4dの
内周面との隙間を流れ、スラストワッシャ30の部位に
到達する。このとき、スラストワッシャ30には、内径
側端部がロングピニオンギヤ4dの内径より内径側に突
出し、外径側端部がロングピニオンギヤ4dの内径より
外径側に位置する油溜め穴30dが形成されているた
め、ロングピニオンギヤ4dの内周面に沿って流れた潤
滑油は油溜め穴30dに溜められる。油溜め穴30dは
スラストワッシャ30を間にして摺動するロングピニオ
ンギヤ4dとキャリヤ4cとの摺動面に開口しているの
で、油溜め穴30dに溜まった油によって摺動面に常時
油膜を形成でき、焼き付きや摩耗を確実に防止できる。
なお、スラストワッシャ30はキャリヤ4cに対して回
り止めされているので、スラストワッシャ30とキャリ
ヤ4cとの間は必ずしも潤滑する必要がない。
【0021】一方、ニードルベアリング11を潤滑しな
がら軸方向の他方側(図2の右方)へ流れた潤滑油は、
図6のようにニードルベアリング11の保持器11aの
外周面とロングピニオンギヤ4dの内周面との隙間を流
れ、スラストワッシャ31の部位に到達する。このと
き、スラストワッシャ31には、内径側端部がロングピ
ニオンギヤ4dの内径より内径側に突出し、外径側端部
がロングピニオンギヤ4dの内径より外径側に位置する
油溜め穴31bが形成されているため、ロングピニオン
ギヤ4dの内周面に沿って流れた潤滑油は、油溜め穴3
1bに溜められる。油溜め穴31bはスラストワッシャ
31を間にして摺動するロングピニオンギヤ4dとキャ
リヤ4cとの摺動面に開口しているので、油溜め穴31
bに溜まった油によって摺動面に常時油膜を形成でき、
焼き付きや摩耗を確実に防止できる。なお、スラストワ
ッシャ31はキャリヤ4cおよびロングピニオンギヤ4
dに対して回り止めされていないので、スラストワッシ
ャ31の両面を潤滑する必要があるが、上記のように油
溜め穴31bは貫通穴であるから、スラストワッシャ3
1の両面を確実に潤滑できる。
【0022】この実施例のように、ニードルベアリング
11が保持器11a付きである場合には、次のような作
用効果を奏する。すなわち、保持器11aを有しないニ
ードルベアリングの場合、図9の(a)のように、ニー
ドル11bが偏ることがあり、ニードル11a間とピニ
オンギヤ4dの内周面とで囲まれたAの範囲しか潤滑油
が通過できない。しかも、これか最大の通過面積であ
り、運悪くニードル11bとスラストワッシャ31の油
溜め穴31bとが重なると、なお一層通過面積が減少す
る。これに対し、保持器11a付のニードルベアリング
の場合、図9の(b)のように、ニードル11bの偏り
がなく、ニードル11a間と保持器11bとピニオンギ
ヤ4dの内周面とで囲まれたBの範囲が潤滑油の通過面
積として確保される。しかも、万一ニードル11bとス
ラストワッシャ31の油溜め穴31bとが重なっても、
図5,図6のようにニードル11bはスラストワッシャ
31方向への移動が規制されているので、油溜め穴31
bがニードル11bで閉じられることがない。したがっ
て、スラストワッシャ31の油溜め穴31bへ潤滑油が
常に効果的に供給される。
【0023】ショートピニオンギヤ4eの両端面の潤滑
については説明を省略したが、ショートピニオンギヤ4
eの一端面はスラストワッシャ30の油溜め穴30cで
潤滑され、他端面はスラストワッシャ32の油溜め穴
(図示せず)で潤滑される。そのため、第2ピニオンシ
ャフト12にも第1ピニオンシャフト10と同様な潤滑
穴を設け、スラストワッシャ30,32の油溜め穴に潤
滑油を供給するようにしてもよい。したがって、ショー
トピニオンギヤ4eの両端面とキャリヤ4cの内側面と
の間についても、焼き付きや摩耗が防止される。
【0024】上記実施例では、ラビニヨウ型遊星歯車装
置を例にして説明したが、本発明はラビニヨウ型に限ら
ず、その他の形式の遊星歯車装置にも適用できることは
言うまでもない。また、上記実施例では、ピニオンギヤ
の一方の端面を支持するスラストワッシャが図7のよう
に眼鏡形状の例を示したが、ピニオンギヤの両端面を図
8のような円環状のスラストワッシャで支持してもよい
ことは勿論である。特に、本発明では油溜め穴の機能に
よって、スラストワッシャの両側面を同時に潤滑できる
ので、スラストワッシャを必ずしも回り止めする必要が
ない。さらに、上記実施例では油溜め穴を円形穴とした
が、円形以外の如何なる形状の穴であってもよい。
【0025】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明に
よれば、ピニオンギヤの端面とキャリヤの側面との間に
配置されるスラストワッシャの所定位置に適数個の油溜
め穴を形成することにより、スラストワッシャの摺動部
を確実に潤滑でき、摩耗や焼き付きを確実に防止でき
る。また、本発明では2枚のスラストワッシャを使用す
る必要がなく、しかもスラストワッシャの摺動部の潤滑
を行なうために、スラストワッシャに油溜め穴を形成す
るという簡単な加工で済み、他の部品の形状を全く変更
する必要がないので、安価に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における遊星歯車装置が適用される車両
用自動変速機の変速機構の概略図である。
【図2】図1の変速機構の遊星歯車装置部分の断面図で
ある。
【図3】図2の遊星歯車装置単体の断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】ロングピニオンギヤの一端面を支持する支持構
造の拡大断面図である。
【図6】ロングピニオンギヤの他端面を支持する支持構
造の拡大断面図である。
【図7】スラストワッシャの正面図である。
【図8】他のスラストワッシャの正面図である。
【図9】保持器付と保持器を有しないニードルベアリン
グの断面図である。
【符号の説明】
4 遊星歯車装置 4c キャリヤ 4d ロングピニオンギヤ 4d1 中心穴 4e ショートピニオンギヤ 10 ピニオンシャフト 10b 潤滑穴 10c 供給穴 11 ニードルベアリング 30,31 スラストワッシャ 30c,30d,31b 油溜め穴
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 正広 大阪府池田市桃園2丁目1番1号ダイハ ツ工業株式会社内 (56)参考文献 特開 平3−260453(JP,A) 特開 平7−103320(JP,A) 特開 平1−120425(JP,A) 実開 平2−125251(JP,U) 実開 平4−126055(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16H 57/00 - 57/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ピニオンギヤの中心穴にニードルベアリン
    グを介してピニオンシャフトを相対回転自在に挿通し、
    ピニオンシャフトの両端部をキャリヤで支持するととも
    に、上記ピニオンギヤの端面とキャリヤの内側面との間
    に、上記ピニオンシャフトに挿通されたスラストワッシ
    ャを配置してなる遊星歯車装置において、 上記ピニオンシャフトに、上記ニードルベアリングに潤
    滑油を供給する潤滑穴を設ける一方、 上記スラストワッシャに、内径側端部が上記スラストワ
    ッシャとピニオンギヤとの摺動面より内径側に位置する
    とともに、外径側端部が上記スラストワッシャとピニオ
    ンギヤとの摺動面内に位置し、ピニオンギヤの中心穴内
    周面とピニオンシャフトの外周面との間を流れた潤滑油
    を受け入れる貫通穴よりなる油溜め穴を形成し 上記油溜め穴をスラストワッシャと接触するキャリヤの
    内側面に開口させた ことを特徴とする遊星歯車装置の潤
    滑構造。
  2. 【請求項2】上記ニードルベアリングは、ニードルを円
    周方向に所定間隔をあけて保持する保持器を備えたこと
    を特徴とする請求項1に記載の遊星歯車装置の潤滑構
    造。
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