JPH1053A - 加工動物性蛋白食材及びその製造方法 - Google Patents

加工動物性蛋白食材及びその製造方法

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JPH1053A
JPH1053A JP8175930A JP17593096A JPH1053A JP H1053 A JPH1053 A JP H1053A JP 8175930 A JP8175930 A JP 8175930A JP 17593096 A JP17593096 A JP 17593096A JP H1053 A JPH1053 A JP H1053A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ソフトで弾力性に優れ、加工自在で、変性損
失を防ぎ、ドリップ等の低分子栄養成分等を有効に利用
した高歩留りで栄養価の高い加工魚肉、加工畜肉等の加
工動物性蛋白食材を提供することを目的とする。 【構成】 動物性蛋白原料100wt部に、NaCl,
KCl,CaCl2 ,MgCl2 からなる塩類の内いず
れか1種若しくはこれらの混合物を、水及び/又は動物
性蛋白原料のドリップに溶解した1.0〜7.0重量m
ol濃度の塩類溶液が添加され、前記動物性蛋白原料1
00wt部に乾燥重量で0.1〜5wt部好ましくは
0.2〜2.5wt部の塩類が含有されている構成を有
している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は加工動物性蛋白食材
及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】加工動物性蛋白食材には大別して魚介類
に由来するものと畜類肉に由来するものとがある。魚介
類は新鮮なものをそのまま利用する場合と加工して利用
する場合とがある。魚介類の加工方法には多くの方法が
あり、そのため従来から種々の魚介類の加工方法が提案
されている。たとえば、特開昭53−50358号公報
には、微細肉、植物性蛋白に食塩を加えてペースト化し
た後、油脂類、熱凝固性素材を不均一に混合して緩慢凍
結させる加工食品の製造方法が開示されている。特開昭
54−2368号公報には、カツオ等をNaHCO3
第二リン酸ソーダを溶存させたソルビトール液に漬け込
む工程と塩をまぶす工程を同時または前後して行うこと
で肉質の軟化や肉色素の安定化を図る魚肉燻製加工品の
製造方法が開示されている。特開昭55−144844
公報には、骨付き魚肉を食塩、NaHCO3 及びアルカ
リ性リン酸塩溶液中に魚肉を漬け込み、次いで水切り後
加圧下で加熱しその後冷凍する魚類冷凍食品の製造方法
が開示されている。特開昭57−5668号公報には、
魚肉に0.3〜1.0%NaHCO3 、0.3〜1.0
%ソルビトール溶液、またはその混合溶液に漬け込み、
脱水後塩類溶液に漬け込み、次いでケーシングして魚肉
結着性を高める採肉魚肉ハムの製造方法が開示されてい
る。特開昭62−19069号公報には、水晒ししたス
ケトウダラのような軟弱組織を改良するために、食用
油、食塩、及び糖類の混合液に長時間漬け込んだ後、緩
慢凍結する食用蛋白素材を製造方法が開示されている。
特開平6−165634号公報には、水産物の加工に伴
う品質劣化を最小限に止めることを目的とし、前処理剤
として食塩水溶液に食塩以外の無機塩類を溶解し、かつ
水溶液のpHをアルカリ性に保持するために炭酸ソーダ
を添加し、これに水産物を漬け込み0〜20℃にて長時
間、保持した後、ボイル、解凍加工を行う水産物加工用
の前処理剤及び水産物の前処理方法が開示されている。
【0003】一方畜類肉については、精肉として広く利
用される他、ハム・ソーセージ、缶詰、燻製品等の加工
食品としても利用されてきた。そのため従来から種々の
畜類肉の加工方法が提案されている。例えば、特開昭5
4−80456号公報には、肉塊状の原料肉を傷つけた
後、リン酸塩配合剤、食塩等の添加剤を加え減圧下で擂
漬する漬け込み操作を行うことで歩留りを15〜25%
向上させるコンビーフの製造方法が開示されている。特
開昭58−37826号公報には、肉塊にナトリウム塩
を加えて肉塊表面のイオン強度を0.6以上に調整し、
肉塊表面にアクトミオシンを溶出させ、−2℃〜−8℃
で冷凍した後、3〜70kg/cm2 の圧力で成形して
肉塊同士を接着させる一枚肉の製造方法が開示されてい
る。特開昭59−39111号公報には、肉塊状の鶏肉
に1〜3%食塩を添加し、緩やかに攪拌混合を行うこと
で、肉塊表面に肉糊状の塩溶性蛋白質を溶出させ、、こ
れを減圧下で型に導入充填し、さらに加熱することで凝
固させる鶏肉ブロックの製造方法が開示されている。特
開昭62−29953号公報には、加熱したピックル液
を原料肉に注入することにより低塩、低カロリー、低リ
ン酸の畜肉加工製品を提供する畜肉加工用ピックル及び
畜肉加工品の製造方法が開示されている。特開平2−3
08774号公報には、肉小塊10〜90wt部に食塩
等の筋原繊維蛋白質溶解剤を添加してpH6.0〜7.
3とした肉糊用肉と、残りの肉小塊90〜10wt部を
pH6.5以下とした混合用肉とを、真空アジター、ラ
インミル、ラインミキサーを使用して酸素の混入を避け
ながら混練した肉小塊の再成型法が開示されている。特
開平3−180138号公報には、粉砕塩を主体に適量
の糖類、結着剤、発色助剤、乳化安定剤、pH調整剤等
を加え、体液濃度に近い組成とした多量のピックル溶液
に10〜30時間浸漬する調味肉の製造方法が開示され
ている。特公平5−28587号公報には、調理した鶏
肉を逐次切断し肉質部の筋状物が適切な長さ以下になる
様予め粗砕する第1工程と、その粗砕物に食塩を主成分
とする塩類及び副材料、水分を配合し磨砕し均質なすり
身とする第2工程と、得られたすり身を凍結する第3工
程とより成る鶏肉冷凍すり身の製造方法が開示されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の魚介類の加工方法では、以下のような問題点有して
いた。すなわち、特開昭53−50358号公報の方法
では、微細肉に植物性蛋白と食塩を添加、擂潰してペー
スト状肉糊を作り、脂肪を配合した後、緩慢凍結を5時
間〜数日間に亘って行い、ロースハム等の代替品を作る
方法であるが、擂潰による摩擦で温度が上がり品質が劣
化し易くなり、これを防止するためには冷却する必要が
あった。さらに、酵素活性によりドリップが流出し易く
魚肉の結着性が低下するのでドリップを吸収するために
多量の植物性蛋白等を添加する必要があり、このため魚
肉のみからなる加工魚肉が得られず、魚肉の旨味や栄養
価を損ねるという問題点があった。特開昭54−236
8号公報の方法では、カツオのように調理後肉が硬く褐
変しやすい魚肉を食塩水で血抜きした後、塩をまぶして
48時間塩漬けし、その後NaHCO3 、第二リン酸ソ
ーダ、ソルビトール液に漬け込んで肉質の軟化を図るも
のであるが、食塩を多量にまぶすため塩辛く、塩分濃度
が高いため、水溶性蛋白質など低分子の微量成分が溶出
するとともに歩留りが低下するという問題点があった。
特開昭55−144844号公報の方法では、骨ごと食
べることができ骨に含まれているカルシウム等を摂取で
きるために栄養面では優れているが、加圧加熱工程が含
まれているために作業が煩雑で生産性が低く、その上一
部の熱に弱い栄養素が破壊され栄養価が下がるという問
題点があった。特開昭57−5668号公報の方法は、
魚肉ハムの結着性を向上させるには好適であるが、漬け
込み時間が長いために魚肉の品質が劣化し易く、品質劣
化を防止するためには温度コントロール等の煩雑な作業
が必要であり、また水溶性蛋白質をはじめ低分子の有効
栄養成分が溶出し栄養価に欠けるという問題点があっ
た。特開昭62−19069号公報の方法は、スケトウ
ダラのような軟弱組織の魚肉や、ボソボソした食感を有
する魚肉の改良には好適な方法であるが、脂肪分や低分
子蛋白質成分等の有効栄養成分が食用油、食塩、及び糖
類の混合液に溶出し栄養価が低下するとともに、魚肉の
結着性に欠けるという問題点があった。特開平6−16
5634号公報の方法は、水産物加工に伴う品質劣化の
抑制には効果があるが、漬け込み時間が長いために生産
性が低く、さらに漬け込み時に旨み成分であるドリップ
等が処理液中に溶出したり、漬け込み中に品質が低下す
るという問題点があった。これら従来の方法はいずれも
顆粒状の添加物をまぶすか、大量の低濃度加工処理液に
どっぷりと漬け込む方法なので、これらの方法で所期の
目的を達成するためには加工に長時間を要し、その間に
魚肉の品質低下(軟質化、硬質化や酸化)を引き起こす
とともに歩留りが低下するという問題点があった。ま
た、人が食した時に歯ごたえ等の食味を低下させるとい
う問題点もあった。さらに、漬け込み時に魚肉から流出
した脂肪分や低分子栄養成分を多量に含む漬け込み液を
廃棄処理するためには特定の処理設備を必要とし、その
維持管理等に多大の労力を要すという問題点があった。
さらに、従来の方法では魚肉の自在な加工が困難で特定
の用途にしか適用できないという問題点を有していた。
【0005】さらに、前記畜類肉の従来の加工方法には
次のような問題点があった。特開昭54−80456号
公報の方法では、5cm×10cmの肉片の筋膜や腱を
短く切断した後、添加剤を添加し減圧状態で攪拌後、必
要により3〜5℃で48時間漬け込みを行い、その後1
15〜118℃で60〜90分間蒸煮を行った後、その
処理肉をほぐし筋膜、腱、血管を取り除いて製品として
いる。このため、工程が複雑で作業時間が長く、生産性
が低いという問題点があった。また、コンビーフとして
は肉色が悪く、その上リン酸塩や亜硝酸ナトリウム等が
添加されているので消費者の健康上好ましくないという
問題点もあった。特開昭58−37826号公報の方法
では、肉塊表面にアクトミオシンを溶出させ、このアク
トミオシンで肉塊同士を接着させるが、肉塊中に脂肪層
があるとアクトミオシンの溶出反応は起こらないので、
加熱時に身崩れが起きるという問題点があった。このた
め、脂肪層の多い屑肉の全面利用が困難であり、さらに
生産工程が複雑で作業性や生産性に欠けるという問題点
もあった。特開昭59−39111号公報には、攪拌混
合機で肉塊の内部組織は損傷させず、表面は塩溶性蛋白
質が溶けて肉糊となるまで緩やかに攪拌混合し、肉塊表
面を塩溶肉糊にしてブロック肉を製造するものである
が、肉表面だけの反応で肉の内部まで改質できないとい
う問題点があった。また、作業工程は減圧状態で、12
〜48時間の成型作業と2〜3時間の加熱作業を必要と
するので、極めて作業が煩雑となり、生産性や作業性に
欠け原価が上がり、量産性に欠けるという問題点もあっ
た。特開昭62−29953号公報には、ピックル液を
水蒸気で加熱してインジェクションし、さらに着色剤や
食用色素を添加しているが、食塩濃度が低いために塩溶
効果が乏しく、またゲル化及び乳化作用が極めて緩慢な
ために、肉組織全体の改質を行うことができず、その製
品は弾力性や歯ごたえ等のテクスチャーに欠けるという
問題点を有していた。さらに、その製品は酸化され変色
し易いという問題点があった。特開平2−308774
号公報には、肉塊表面に脂肪層があると生化学反応が起
こらないので、結着性が弱く、このために結着補助剤を
使う必要があり、また、作業工程が複雑で生産性に欠け
るという問題点があった。特開平3−180138号公
報には、体液に近い濃度のピックル液に浸漬するが、ブ
ロック肉のような大きな肉塊を使用した時はピックル液
を肉塊内部まで浸透させることができず、また、脂肪層
を改質することが困難で、品質にバラツキがあり肉色も
よくないという問題点があった。また、ピックル液に1
0〜30時間浸漬する必要があり生産性に欠けるという
問題点もあった。特公平5−28587号公報には、鶏
肉を調理し、次いで粗砕後塩ズリするので、工程が煩雑
で作業性に欠け、生産性に欠けるという問題点を有して
いた。
【0006】また、上記従来の方法による畜類肉の加工
方法には以下のような問題点があった。一般に畜類肉は
長期保存のために急速冷凍した冷凍生肉が流通され、加
工工場で食品や加工食肉に加工されているが、長期にわ
たる貯蔵や解凍中に生肉の品質が低下するという問題点
があった。特に解凍中に旨味成分を含有するドリップが
流出し味が劣化するという問題点があった。また、肉の
旨味成分の流出のみならず肉の表面に付着したそれらの
ドリップの低分子蛋白質や血液が酸化され肉色を急速に
低下させるとともに、独特の畜肉臭やグラス臭を発生さ
せるという問題点があった。さらに、生肉中の水分の分
離により肉が硬化し食した際に歯あたり等のテクスチャ
ーを害するという問題点もあった。また、冷凍中の水分
の気化や冷蔵中もしくは解凍時のドリップの流出によ
り、歩留りが低下するという問題点もあった。冷蔵中も
しくは解凍時に流出する畜類肉の旨味成分である低分子
栄養成分は何ら活用されることなく廃棄されるととも
に、その処理のために多大の労力や設備を必要とすると
いう問題点もあった。
【0007】スーパーマーケット等小売り店の店頭販売
ではチルド肉や解凍食肉を低温に保持したショーケース
に入れドリップの流出を防止しながら販売されている
が、消費者が購入して持ち帰る時間に解凍されだしドリ
ップが流出するとともに、肉が変色し品質を低下させる
という問題点もあった。チルド肉や冷凍肉を使用したハ
ンバーグは加熱処理時に動物性油脂が流出し、これが冷
えるとロウ成分が表面に白く浮きだし、食すると口中が
ザラつき、食感を悪くし肉や脂肪の旨味を損なうという
問題点があった。一般に冷凍肉はドリップの流出等のた
め肉質が低く評価されていたために、冷凍肉の改善や付
加価値を高くする加工方法の開発が強く望まれていた。
【0008】本発明は上記従来の問題点を解決するもの
で、ソフトで弾力性に優れ、加工自在で、変性損失を防
ぎ、ドリップ等の低分子栄養成分等を有効に利用した高
歩留りで栄養価の高い加工魚肉、加工畜肉等の加工動物
性蛋白食材を提供すること、及び、動物性蛋白原料(生
肉)の内部で生化学反応を起こさせ、細胞膜、筋原繊
維、筋鞘、コラーゲン、脂質や脂肪、脂肪中の細胞膜組
織、コラーゲン等を短時間に改質させ、生肉の冷蔵中の
酸化による肉色の変色化を防止すると共に、肉色を修復
し、解凍に伴うドリップの流出や、冷蔵、冷凍中の変性
等を防止し、又屠殺直後等の生肉を急速に熟成出来、更
に畜肉臭やグラス臭を消臭させた加工動物性蛋白食材を
提供することを目的とする。また、肉内に於いて肉蛋白
質や油脂、脂肪中のロウ成分を乳化させてゲル化熟成さ
せ、肉組織を改質し口当たり良く、弾力性、保水性、結
着性のある肉に処理すると共に、肉の硬さを自由に調節
出来る加工動物性蛋白食材の製造方法を提供することを
目的とする。
【0009】この目的を達成するために本発明は以下の
構成からなる。すなわち、請求項1記載の加工動物性蛋
白食材は、動物性蛋白原料100wt部に、NaCl,
KCl,CaCl2 ,MgCl2 からなる塩類の内いず
れか1種若しくはこれらの混合物を、水及び/又は動物
性蛋白原料のドリップに溶解した1.0〜7.0重量m
ol濃度の塩類溶液が添加され、前記動物性蛋白原料1
00wt部に乾燥重量で0.1〜5wt部好ましくは
0.2〜2.5wt部の塩類が含有されている構成を有
している。請求項2に記載の加工動物性蛋白食材は、請
求項1において、動物性蛋白原料100wt部に、Na
HCO3 ,Na2 CO3 ,KHCO3 ,K2 CO3 ,N
4 HCO3 からなるアルカリ剤の内いずれか1種若し
くはこれらの混和物を、水及び/又は動物性蛋白原料の
ドリップに溶解した0.03〜3.0重量mol濃度の
アルカリ剤溶液が添加され、前記動物性蛋白原料100
wt部に乾燥重量で0.005〜3wt部好ましくは
0.01〜1wt部更に好ましくは0.05〜0.5w
t部含有されている構成を有している。請求項3に記載
の加工動物性蛋白食材は、請求項1又は2において、動
物性蛋白原料100wt部に、ビタミンC剤やビタミン
E剤等からなるビタミン剤を水及び/又は動物性蛋白原
料のドリップに溶解したビタミン剤溶液若しくは前記ビ
タミン剤を前記塩類溶液や前記アルカリ剤溶液に溶解し
た塩類・ビタミン剤溶液やアルカリ・ビタミン剤溶液が
添加され、前記動物性蛋白原料100wt部に乾燥重量
でビタミンC剤が6×10-3〜500×10-3wt部、
及び/又はビタミンE剤が1×10-3〜300×10-3
wt部含有・含浸されている構成を有している。
【0010】請求項4に記載の加工動物性蛋白食材の製
造方法は、動物性蛋白原料100wt部に、NaCl,
KCl,CaCl2 ,MgCl2 からなる塩類の内いず
れか1種若しくはこれらの混和物を水及び/又はドリッ
プに溶解させた1.0〜7.0重量mol濃度の塩類溶
液を2〜15wt部含有・含浸させる塩類含有工程を備
えている構成を有している。請求項5に記載の加工動物
性蛋白食材の製造方法は、請求項4において、動物性蛋
白原料100wt部に、NaHCO3 ,Na2 CO3
KHCO3 ,K2 CO3 ,NH4 HCO3 からなるアル
カリ剤の内いずれか1種若しくはこれらの混和物を、水
及び/又は動物性蛋白原料のドリップに溶解した0.0
3〜3.0重量mol濃度のアルカリ剤溶液を0.5〜
10wt部含有・含浸させるアルカリ含有工程を備えて
いる構成を有している。請求項6に記載の加工動物性蛋
白食材の製造方法は、動物性蛋白原料100wt部に、
1.0〜7重量mol濃度になるように秤量されたNa
Cl,KCl,CaCl2 ,MgCl2 からなる塩類の
1種以上と、0.03〜3.0重量mol濃度になるよ
うに秤量されたNaHCO3,Na2CO3,KHCO3
2CO3,NH4HCO3からなるアルカリ剤の1種以上
と、を水及び/又は動物性蛋白原料のドリップに溶解し
た塩・アルカリ溶液を2.5〜25wt部含有・含浸さ
せる塩・アルカリ含有工程を備えている構成を有してい
る。
【0011】請求項7に記載の加工動物性蛋白食材の製
造方法は、請求項4乃至6の内いずれか1項において、
動物性蛋白原料100wt部に、ビタミンC剤,ビタミ
ンE剤等のビタミン剤を水及び/又は動物性蛋白原料の
ドリップに溶解したビタミン剤溶液を0.5〜15wt
部含有・含浸させるビタミン含有工程を備えている構成
を有している。請求項8に記載の加工動物性蛋白食材の
製造方法は、請求項4乃至6の内いずれか1項におい
て、前記塩類溶液及び/又は前記アルカリ剤溶液若しく
は前記塩・アルカリ溶液に、6×10-3〜500×10
-3wt部のビタミンC剤と、及び/又は1×10-3〜3
00×10-3wt部のビタミンE剤と、が溶解されてい
る構成を有している。請求項9に記載の加工動物性蛋白
食材の製造方法は、請求項4,5,8の内いずれか1項
において、前記塩類含有工程後に、前記アルカリ含有工
程を備えている構成を有している。
【0012】請求項10に記載の加工動物性蛋白食材の
製造方法は、請求項4,5,8の内いずれか1項におい
て、前記アルカリ含有工程後に、前記塩類含有工程を備
えている構成を有している。請求項11に記載の加工動
物性蛋白食材の製造方法は、請求項4乃至6の内いずれ
か1項において、前記塩類含有工程及び/又は前記アル
カリ含有工程若しくは前記塩類・アルカリ含有工程の後
に前記ビタミン含有工程を備えている構成を有してい
る。請求項12に記載の加工動物性蛋白食材の製造方法
は、請求項4乃至11の内いずれか1項において、前記
塩類含有工程や前記アルカリ含有工程、前記ビタミン含
有工程が、インジェクション法、噴霧法、塗着法、又は
混練混和法の内いずれか1の方法で行われる構成を有し
ている。請求項13に記載の加工動物性蛋白食材の製造
方法は、請求項4乃至12の内いずれか1項において、
前記塩類含有工程や前記アルカリ含有工程、前記塩・ア
ルカリ含有工程、前記ビタミン含有工程の後に、前記含
有・含浸された塩類溶液やビタミン剤溶液,アルカリ剤
溶液を動物性蛋白原料内に拡散させる拡散工程を備えて
いる構成を有している。請求項14に記載の加工動物性
蛋白食材の製造方法は、請求項13において、前記拡散
工程がマッサージ法、バイブレーション法、超音波法及
びタンブラー法の内いずれか1の方法で行われる構成を
有している。
【0013】ここで、動物性蛋白原料としては魚介類や
畜類の肉が用いられる。魚介類としては、海産,淡水産
等を大小を問わず蛋白原料として使用することができ
る。例えば、スケトウダラ,ホキ,サケ,鯛等の白身魚
類、マグロ,カジキ等の赤身魚類、イワシ,サバ,ア
ジ,サンマ等の青身魚類等の海産魚介類や、エビ,カニ
類等の甲殻類、各種貝類の貝柱や貝や牡蠣のむきみ等、
ウナギ,ハモ,タチ魚,タコ,イカ等の軟体動物類、南
極沖アミ、アミ類等の沖アミ類、鯨、イルカ,オットセ
イ等の哺乳類やアザラシ等も利用できる。淡水産魚介類
としてはコイ,フナ,草魚,エビ,カニ等があげられ
る。魚類は捕獲直後のものや冷蔵、冷凍、半冷凍品等が
用いられる。魚介類の原料形態としては、魚の大小や用
途によりフィレー,落とし身,すり身,むきみ,ラウン
ド,セミドレス,ドレス,パンドレス,チャンク,ブロ
ック,ステーキ等が利用できる。特に多獲性魚(イワシ
等)、沖アミ、大量に捕れるサケの採卵カス、脂の少な
い赤身魚、サメ類その他低利用性の魚種も効率よく利用
することができるとともに、鮮度の低下した魚肉をも利
用することができる。
【0014】畜類肉の種類としては、鶏,豚,牛,羊,
馬等の畜類肉の他、鹿,猪,兎等の獣肉の肉が用いられ
る。畜類肉の形態としては、解体物,ブロック,ステー
キ,スライス,サイの目,ミンチ,スティック,細切,
スリ身その他の肉塊や骨付きの肉塊等が用いられる。ま
た生肉に限られず、冷凍品,冷蔵品,チルド品等を解凍
したものが用いられる。さらに冷凍中等に肉質が冷凍変
性等したものを用いてもよい。また、畜類肉は用途に応
じて別種の畜類肉を混合して用いてもよい。
【0015】塩類としては、上質塩,精製塩等の食塩や
必要に応じてグルタミン酸ソーダ等で加工した加工塩、
KCl,CaCl2,MgCl2の内いずれか1種若しく
はこれらの混合物が用いられる。塩類溶液として、塩類
の種類によるが、1.0〜7.0mol濃度,好ましく
は2.0〜6.5mol濃度のものが用いられる。畜類
肉の種類や部位にもよるが、一般的に2.0mol濃度
より低くなるにつれ筋原繊維の溶解度が下がる傾向が認
められ、肉内においてゲル化能や乳化能も減少し熟成が
遅くなる傾向が認められ、特に1.0mol濃度未満で
はその傾向が著しく、又、6.5mol濃度を越えるに
つれ塩味が強く肉質が硬くなり、畜類肉の旨味が損なわ
れてくる傾向が認められ、特に7.0mol濃度を越え
るとその傾向が著しくなるので、いずれも好ましくな
い。2.0〜6.5mol濃度の塩類濃度が畜類肉の骨
格筋の細胞膜、筋原繊維,筋鞘,コラーゲン,脂質や脂
肪,脂肪中の細胞膜やコラーゲン等の溶解度を向上さ
せ、畜類肉内において肉組織を毛細網目状構造化し、骨
格筋等からアクトミオシンを溶出させ、ゲル化能を付加
し熟成化させるとともに著しく結着性を付加向上させる
ので好適である。
【0016】塩類の添加量は、動物性蛋白原料100w
t部に対し、0.1〜5wt部,好ましくは0.2〜
2.5wt部が用いられる。0.2wt部より少なくな
るにつれ魚介類や畜類の肉の骨格筋等の細胞膜,筋原繊
維,筋鞘,コラーゲン,脂質や脂肪、脂肪中の細胞膜や
コラーゲン等の溶解度が下がる傾向が認められ、特に
0.2wt部未満ではその傾向が著しく、また2.5w
t部を超えるにつれ塩分が強く効きだし、特に5wt部
を超えると加工食材や加工方法の種類にもよるが、食品
としても適性を損なうという傾向が認められるので、い
ずれも好ましくない。尚、前記範囲内で塩類の添加量が
少ないほど素材の持つ低味性の風味を活かしたものが得
られ、添加量が多い場合には燻製品や塩干物として利用
するとこれらの保存性を向上させることができる。
【0017】アルカリ剤としてはNa2CO3,K2
3,CaCO3,NaOH,KOH,Ca(OH)2
NaHCO3,KHCO3,Ca(HCO32,NH4
CO3,の内いずれか1種若しくはこれらの混合物が用
いられる。中でもNaHCO3やKHCO3等が溶解性に
多少難があるもののpHの調整等が容易なので好まし
い。アルカリ剤溶液としては、アルカリ剤の種類にもよ
るが、0.03〜3.0重量mol濃度,乾燥重量0.
005〜3wt部,好ましくは0.05〜1.2重量m
ol濃度のものが用いられる。特に0.05重量mol
濃度未満ではゲル形成力が不安定化する傾向が認めら
れ、又、1.2重量mol濃度を超えるにつれ畜類肉の
種類や熟成度にもよるがpHが上がり過ぎて筋原繊維や
筋鞘が過度に溶解される傾向があり、その分畜類肉の変
敗が進行し易くなる傾向が認められ後工程での加工品と
品質の維持が困難になる傾向があり、特に、0.03重
量mol濃度未満若しくは3.0重量mol濃度を越え
るといずれもその傾向が著しくなるので好ましくない。
【0018】アルカリ剤の添加量は、原料動物性蛋白原
料の種類により異なるが、畜類肉蛋白原料100wt部
に対し、乾燥重量で0.005〜3wt部,好ましくは
0.01〜1wt部、更に好ましくは0.05〜0.5
wt部となるように水やドリップ液に溶解されて添加さ
れる。尚、pHが上がった場合は乳酸等の弱酸を添加し
て調整してもよい。アルカリ剤は塩溶効果と相まってゲ
ル形成能や乳化能を安定にする作用さらに消臭の効果が
あり、0.05wt部より少なくなるにつれその効果が
認められなくなり、また、0.5wt部を超えるにつれ
て筋原繊維等の過度の溶解や変敗が進行し易くなる傾向
が認められる。また、乾燥重量で0.01wt部未満に
なるとゲル形成能が減少するという傾向があり、また1
wt部を超えるとアルカリ剤の反応が強く働くという傾
向が現れだし、0.005wt部未満若しくは3wt部
を超えるとその傾向が著しくなるので好ましくない。
【0019】ビタミンC剤やビタミンE剤は、栄養強化
の他、酸化防止等の目的で添加させるもので、アスコル
ビン酸であるビタミンC剤は主に自由水に作用して抗酸
化性を呈すると共に、ビタミンE剤であるα−,β−,
γ−,δ−トコフェロールやα−,β−,γ−,δ−ト
コトリエノールは蛋白原料の脂肪分に作用して抗酸化性
を維持することができる。魚介類については、ビタミン
C剤は魚肉100wt部に対し、0.006〜0.3w
t部,好ましくは0.02〜0.15wt部が用いられ
る。0.02wt部より少なくなるにつれ魚肉が酸化さ
れ肉色が低下する傾向が現れ、特に0.006wt部未
満になるとその傾向が著しいので好ましくない。また、
0.15wt部より多くなるにつれ魚肉の種類や鮮度の
程度により魚肉の発色や酸化防止の効果に大きな差異が
認められなくなる傾向が現れ、特に0.3wt部を超え
るとその傾向が著しいので好ましくない。ビタミンE剤
は魚肉100wt部に対し0.001〜0.2wt部、
好ましくは0.005〜0.08wt部添加することに
よりビタミンC剤と相まって肉の発色や酸化防止効果を
改善し、特に0.005〜0.08wt部ではその効果
を顕著にすることができる。尚、ビタミンE剤は肉が新
鮮な場合は用いずビタミンC剤のみでよい。畜類肉につ
いては、ビタミンC剤は畜類肉100wt部に対し0.
006〜0.5wt部、好ましくは0.02〜0.3w
t部が用いられる。0.02wt部よりも少なくなるに
つれ酸化され肉色が低下する傾向が現れ、特に0.00
6wt部未満ではその傾向が著しく、また、0.3wt
部より多くなるにつれ肉の種類や鮮度により肉の発色や
酸化防止の効果に大きな差異が認められなくなる傾向が
現れ、特に0.5wt部を超えるとその傾向が著しくな
るのでいずれも好ましくない。ビタミンE剤は畜類肉1
00wt部に対し0.001〜0.3wt部,好ましく
は0.005〜0.15wt部を添加することによりビ
タミンC剤と相まって肉の発色や酸化防止効果を著しく
改善することができる。尚、肉が新鮮な場合はビタミン
C剤のみでもよい。
【0020】ドリップは新鮮なものや品質管理のされた
細菌数の少ないものであればよい。ドリップは単独でそ
のまま、または水に希釈して用いるか、若しくは塩類溶
液やアルカリ剤溶液中に添加混合して畜類肉に含有させ
てもよい。この際、ドリップ中の水分があるため塩類や
アルカリ剤を溶解する水分を減少させてもよい。ドリッ
プ中の低分子栄養成分や旨みを肉中に還元することによ
り原料畜類肉の持つ風味を活かすことができる。含有方
法はドリップの全量を塩類溶液に混入するか、または塩
類溶液とアルカリ剤溶液に分配して混入してもよい。ま
たドリップを他の種類の畜類肉に添加してもよい。例え
ば、牛肉のドリップを鶏肉に添加すると斬新な若者向き
の鶏肉を作ることができる。
【0021】魚介類や畜類肉が冷蔵品の場合、品温上昇
を防止するため少なくとも処理部を氷や冷媒(液体
2,ドライアイス,ブライン)等で冷却するのが好ま
しい。蛋白質分解酵素の活性化を抑制するとともにチロ
シナーゼ等の酵素の活性による変色を防止し生菌数の上
昇を抑止するためである。製造温度は蛋白原料が捕獲直
後又は冷蔵品の場合は20℃以下好ましくは10℃以下
で行われるのが好ましい。また凍結又は半凍結品の場合
は0℃以下で行うのが好ましい。尚、望ましくは全製造
工程が氷点下以下で行われるのが望ましい。氷点下の温
度でありながら、その自由水等のため内部で塩溶化や、
ゲル化能を進行させ乳化させた蛋白食品素材をえること
ができるからである。魚肉と低分子旨味成分(エキス)
が渾然一体化して自己乳化し均一分散したゲル形成力を
有する無晒しのスリ身を得ることができる。動物性蛋白
原料が冷凍品や半冷凍品、及び生鮮魚の冷蔵品である場
合は処理温度が5℃以下好ましくは0℃以下で行うのが
望ましい。乳化生や品質維持、坐り防止、雑菌の増殖防
止、肉の変質防止を図るためである。冷蔵品や捕獲直後
のもの、畜類肉等は処理温度が20℃以下好ましくは1
0℃以下であることが望ましい。乳化性や品質の維持、
坐り防止、雑菌の増殖防止、肉の変質防止を図るためで
ある。
【0022】塩類溶液やアルカリ剤溶液,副資材溶液の
動物性蛋白原料への添加は、インジェクター等の注入器
等が含浸する場合は肉塊の異なった個所から同時に含浸
させてもよい。順序は塩類溶液を先に注入し、次いでア
ルカリ剤溶液を注入するかその逆でもよい。また、両液
を混合して注入してもよい。塩類溶液を先にインジェク
ションすると色調を高めることができる。また、肉が新
しい場合や色調を問題としない場合(例えば、ハンバー
グ用等の加工用)はアルカリ剤溶液を先に注入すると若
干物性を向上させることができる。また、インジェクシ
ョン処理は畜類肉塊の片面あるいは両面に行ってもよ
く、また両面に行う場合は裏表同時に行ってもよい。ま
た必要により肉塊を小ブロックごとに分けてインジェク
ション処理または噴霧法で行ってもよい。
【0023】アルコールとしては、日本酒,ミリン等の
料理酒,ワインやブランディ,チェリー酒等の酒類や中
国酒等の酒類が好適に用いられる。日本酒,ミリン等の
料理酒は畜類肉100wt部に対し,各々0.5〜6w
t部好ましくは1〜4wt部の範囲で用いられる。1w
t部より低くなるにつれ、ツヤや風味が出にくい傾向が
現れ、特に0.5wt部未満ではその傾向が著しく、
又、4wt部を超えるにつれ、食味が悪くなる傾向が現
れ、特に6wt部を超えるとその傾向が著しくなるの
で、いずれも好ましくない。日本酒,ミリン等の料理酒
を加えることにより加工畜類肉にツヤや風味,ソフト感
を向上させることができる。
【0024】糖類としては、キシリット,ソルビット,
グルコース,オリゴ糖,ガラクトース,フルクトース,
ラクトース,蔗糖,麦芽糖等が用いられる。糖類は甘味
を抑え、かつ光沢感を出すため2種以上混合したものを
用いるのが望ましい。また、糖類を添加することにより
冷凍変性を防止することもできる。添加量は、蛋白原料
に対し1〜13wt%,好ましくは4〜10wt%が用
いられる。この範囲外では、上記効果が得難くなるので
好ましくない。
【0025】卵白は、畜類肉100wt部に対し、0.
1〜10wt部,好ましくは1〜5wt部が用いられ
る。乳化性,保水性,結着性等を向上させるためであ
る。1wt部より低くなるにつれ乳化・ゲル化の補強効
果が低減する傾向が現れ、特に0.1wt部未満ではそ
の傾向が著しく、又、5wt部を超えるにつれ肉の旨味
が減少する傾向が現れ、特に1wt部を超えるとその傾
向が著しくなるので、いずれも好ましくない。1〜5w
t部の卵白が長期に渡る冷凍保存等により冷凍変性等し
た畜類肉の塩溶溶解性や乳化,ゲル化の促進を図ること
ができる。卵白や全卵は生又は乾燥したものを用いるの
が好ましい。製造工程で加水処理等を行う場合は生の全
卵等を用いるのが好ましいが、素材の含水量を少なくす
る場合は乾燥全卵や乾燥黄卵、乾燥卵白が好ましい。
【0026】酸化防止剤としては、エチレンジアミン四
酢酸,カルシウム二ナトリウム,エリソルビン酸,ジブ
チルヒドロキシアニソールが用いられる。酸化防止剤
は、畜類肉100wt部に対し、0.005〜4wt
部,好ましくは0.05〜3wt部が用いられる。0.
05wt部より低くなるにつれ酸化され易くなる傾向が
現れ、特に0.05wt部未満ではその傾向が著しく、
又、3wt部を超えるにつれ食味が悪くなる傾向が現
れ、特に4wt部を超えるとその傾向が著しくなるので
いずれも好ましくない。
【0027】結着補助剤としては、ゲル化補助剤やデン
プン等があげられる。尚、足の促進剤としてリジン,ア
ルギニン,オルチニン等の塩基性アミノ酸等を少量加え
てもよい。添加量は蛋白原料100wt部に対して0.
001〜20wt部、好ましくは0.01〜10wt
部、更に好ましくは1〜8wt部が用いられる。添加量
が少ないと食感が柔らかくて伸びのある素材が得られ、
添加量が多いと弾力のある食感に富んだ素材が得られ
る。添加方法は溶液状やカード状で蛋白原料内に注入又
は添加するのが好ましく、また原料によっては直接これ
らの粉末を添加してもよい。添加時期は塩類溶液,又は
アルカリ剤溶液と同時に又は別々に添加してもよい。
【0028】ゲル化補助剤の混合比は塩類1に対してゲ
ル化補助剤1〜10wt部好ましくは5〜8wt部が用
いられる。ゲル化補助剤の添加量が少なくなるにつれ柔
軟で塩味をきかせたものを得ることができる。添加量が
多いと歯ごたえを増し成型性を向上させることができ
る。ゲル化補助剤としては、動物性アルブミンや植物性
アルブミン等のアルブミン,小麦粉,グルテン,活性グ
ルテン,大豆蛋白,卵白及び全卵,ゼラチン,カラギー
ナン,ペクチン,寒天,グルコマンナン等があげられ
る。動物性アルブミンとしては、卵アルブミン,血清ア
ルブミン,乳アルブミン等が利用でき、植物性アルブミ
ンとしては、澱粉や加工澱粉糖を用いることができる。
澱粉としては、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、小麦澱
粉、サツマイモ澱粉やこれらの加工澱粉類がある。その
他、小麦、大麦、ライ麦のロイコシン,エンドウ、ソラ
マメ、のレグメリン等が利用できる。ゲル化補助剤は、
スリ身が粘着性に乏しく、成型が困難である場合に、添
加することにより蛋白原料の結着性を向上させ利用範囲
を著しく拡大することができるので、ゲル化性の多少劣
る蛋白食品素材の場合には、最終製品に合わせて添加量
を適宜選択することにより目的とする形にスリ身を自由
に成型することができる。
【0029】血漿粉末としては、例えばプロファインF
G(太陽化学工業(株)製)等が用いられる。血漿粉末
を添加することにより、タンパク質分解酵素の活性を抑
制することができる。副資材としては乳化剤,植物繊
維,機能剤、動植物性油脂,pH調整剤等があげられ
る。乳化剤としては、全卵、卵黄、卵白、レシチン、脂
肪酸、エステル、シュガーエステルがあげられる。食物
繊維としては大豆等から得られる粉末繊維、セルロース
粉末、植物に多くみられる繊維質性多糖類、粒状あるい
は糸状の組織状大豆蛋白、組織化された澱粉質からなる
食物繊維などの非溶解性の食物繊維、グアガム、ポリデ
キストロース等の溶解性の食物繊維やキチン、動物性蛋
白原料を主成分とし加熱処理等で成型された紡糸状の加
工品(例えば日本水産(製)の商品名シーグレス等)も
食物繊維として利用できる。食物繊維を加えることによ
り、ねり状加工品の色調を上げ、色の白い蛋白食品を得
ることができる。更に、食物繊維のもつ保水性により肉
中の旨味を含んだ水分を保持し、結果として蛋白原料中
の水分分離を防ぐことができる。機能剤としては、動物
性蛋白の様々な性質をもった栄養素性を基に健康食,医
療食と、その用途に併せて各種のビタミン類や漢方薬エ
キス,キトサン等の機能性を有するものが用いられる。
動植物性油脂としては、動物油脂として豚脂,牛脂,羊
脂などやショートニングオイル,マーガリン等、植物油
としてダイズ油,ゴマ油,ナタネ油,綿実油,ヒマワリ
油,トウモロコシ油,サフラワー油,オリーブ油,パー
ム油,ラッカセイ油などが用いられる。
【0030】調味料として、風味や食感の向上化のため
牛乳,生クリーム,バター,チーズ等の乳製品類、ミリ
ン、調理酒、アミノ酸、各種香料、各種エキス類、各塩
類、イノシン酸塩やグルタミン酸塩等の化学調味料、シ
イタケ,コンブ,カツオブシ等の天然調味料、ペプタイ
ト等の魚種の濃縮エキス、複合調味料、ソルビット等の
甘味料、ソルビン酸等の防腐剤、若しくは必要によりp
H降下剤等を最終加工食品の種類に合わせて適宜添加す
るとカニ,エビ風味等蛋白原料に起因した風味を有する
美味で新規な食品を提供できる。これらは溶解性により
塩類溶液やアルカリ剤溶液若しくは液状の添加剤溶液に
溶解して用い畜類肉中に含浸させることができる。これ
らの溶液に溶解性を有しない粉状の添加剤は液中に分散
させ畜類肉に含有させて用いることもできる。中でも添
加剤が溶液状のものが特に好ましい。畜類肉中に均質に
含浸させることができるためである。これらを添加する
ことにより肉の旨味をより多く引き出すことができると
共に、また他の味付を行い全く新規な高付加価値化した
加工畜類肉を提供できる。
【0031】この構成によって、本発明は以下の作用を
有する。 (1) 所定量の塩類溶液とアルカリ剤溶液を畜類肉の内部
に注入等で含浸させることにより畜類肉内において、筋
原繊維や筋鞘を溶解し畜類肉内に於いて筋繊維,筋束を
塩溶し、乳化させ毛細網目状化させゲル形成を行うこと
ができるとともに素材の有する旨味や栄養価を最大限に
引き出すことができる。 (2) これらの溶液は肉組織や脂肪組織に分散反応して溶
液濃度が低下し短時間で生化学反応が終わるので肉組織
を破壊することなく改質できるとともに、生肉中の酵素
活性を阻害して肉組織の崩壊を防止することができる。 (3) マッサージやバイブレーション、超音波処理、混練
処理をすることにより塩類溶液とアルカリ剤溶液を肉中
に幅広く拡散させ毛細網目状化やゲル形成を促進するこ
とができる。 (4) 塩類溶液を少量用いたので硬い低級肉、例えば、モ
モ肉を柔らかい高品質の肉に変えることができる。ま
た、塩類やアルカリ剤の濃度を変えることにより肉の軟
度を自由に調節できる。また、この塩溶促進・ゲル化熟
成により肉の保水性や結着性が向上させ、ドリップの生
成を防止することができる。また、保水性や結着性を向
上するので水溶性低分子蛋白質等の旨味成分や各種低分
子栄養成分の流出を防止できる。 (5) 解凍時に生成したドリップを塩類溶液又はアルカリ
剤溶液中に混入し、畜類肉内に還元するので栄養価や旨
味を損なうのを防止できる。また、ドリップを生成した
畜類肉以外の他の種類の畜類肉のそのドリップを加える
ことによりその旨味に他の種類の肉汁の旨味を加重でき
新規な加工動物性蛋白食材を提供できる。 (6) 塩類溶液やアルカリ剤溶液中に水溶性の調味料や栄
養剤及び機能剤を混入できるので、病人食等用途に応じ
た味付けや栄養価を素材自体に行うことができる。畜類
肉の組織が変化し毛細網目状化し、いわゆるゲル形成を
生じ、かつ保水性や結着性や高いので、加熱処理しても
肉汁がでることがないので加熱調理後の歩留りを高め膨
張率を向上させることができるとともに栄養価を維持
し、ソフトになるので調理の領域を拡大することができ
る。 (7) 保水性や結着性が高いので数多くの薬品を使用する
ことなく冷凍によるドリップの流出が防止でき、冷蔵及
び冷凍時の変性を防止できる。アルカリ剤溶液と塩類溶
液等の作用で肉の色を向上させ又変色した肉色を復元し
品質を向上させることができる。塩類溶液とアルカリ剤
の添加効果と肉組織の毛細網目状化やゲル形成により、
畜臭やグラス臭を消臭することができる。 (8) 魚類や畜類肉の魚肉や精肉のみならず、低利用の蛋
白原料や屑肉、固くて食品に利用し難い各種の蛋白原料
をNaCl等の塩類とアルカリ剤の存在下で微粒化する
ことにより高栄養価でエキス等の低分子旨味栄養成分や
機能性成分,ビタミン類,微量元素等を含んだ加工動物
性蛋白食材を極めて容易に製造することができる。 (9) 少量の塩類水溶液を用いることにより効率的な塩溶
化を行うことができると同時に、アルカリ剤水溶液によ
り脂肪分その他を乳化活性化させるので、原料中の低分
子蛋白質やミネラル分と相まって強力にゲル化機能を有
しているので保水性に優れ、冷凍しても冷凍変性を受け
ることが少なく、また、解凍してもドリップの生成を防
ぎ旨味成分を維持できる。 (10)極めてゲル化度が高いので、解凍時でもドリップの
生成を防ぎ動物性蛋白原料全体を食品化できるので低分
子栄養旨味成分やDHA,EPA等の有効成分も有効に
利用できる。 (11)従来、無晒蛋白原料では、ゲル化がほとんど不可能
であったが、本構成によりアルカリ剤溶液や塩類溶液に
よる微粒化で、スリ身製造中にアクトミオシンの高度溶
出生を引き出すとともに、ゲル形成能の弱い原料でも卵
白などの結着補助剤等を加えることにより相乗的な架橋
作用で、網目構造を形成し、ゲル化を促進しゲル強度を
引き出すことができる。 (12)無晒しの原料を使用するので、特に魚肉においては
低分子旨味栄養成分を有効に活用することができ、EP
A、DHAなど優れた栄養機能を有し、水晒しの製品よ
り優れた製品を得ることができる。また製品歩留りを大
幅に向上させるとともに、ゲル化能が付与されているの
で、水のばしができるようになった。 (13)一般に、無晒し魚介類の精肉を利用すると、製品の
色が黒ずんで悪くなるが、アルカリ剤,ビタミン類など
を適宜使用することにより理論的に解明できなかった
が、それらの問題点を著しく改善することができる。畜
類においても同様の処理を施すことにより同様に著しい
効果を得ることができる。 (14)塩類溶液やアルカリ剤水溶液を用いる処理法を採用
したので、骨格筋や細胞膜を弛緩作用や浸透圧などによ
り細胞レベルまでビタミン剤などが作用し、極めて高い
酸化防止性とともに腿色防止性及び変色した肉の再生化
等を可能にし、細胞レベルまで塩溶化,乳化,ゲル化能
を及ぼすことができる。 (15)酸化防止機能のある製剤を細胞レベルまで作用させ
るので、酵素活性を防ぎ自己消化を著しく遅延させるの
で、品質の持続性を向上させることができる。 (16)塩類溶液やアルカリ剤溶液をインジェクター等で直
接動物性蛋白原料に含有させ、拡散させるので、魚介
類、畜類の種類を問わず油脂、脂肪を含んだ原料蛋白の
細胞膜や骨格筋を高い塩濃度で急速に塩溶・乳化させる
ので各種の微粒化機により従来の1/2乃至1/20の
短時間で肉糊を製造することができる。 (17)低分子栄養成分を取り込み高いゲル化能と乳化作用
を構成し、今までと違った相乗効果的な架橋作用で網目
構造を形成し、高いゲル強度を引き出すことにより低分
子旨味栄養成分を活用できるとともに、魚臭や畜臭を完
全に消臭した加工性に優れた加工動物性蛋白食材を製造
することができる。 (18)ゲル化度の自在性により、ヨーグルト状から天プラ
等のマイルドなものやジャーキー状のハードなゲル化食
品を任意に得ることができる。
【0032】塩類溶液や副資材溶液の動物性蛋白原料へ
の含有・含浸方法としてはインジェクションで塊状の蛋
白原料に注入するか、塊状の蛋白原料の表面に塗着や噴
霧方法によって付着・含浸させるか、あるいは混練混和
によって行う。
【0033】動物性蛋白原料への塩類溶液や副資材溶液
等の拡散方法としては、マッサージャーやバイブレータ
ー,超音波,タンブラー等を用いて行われる。拡散工程
により塩類溶液や副資材溶液等を肉中に奥深くかつ広範
囲に浸透させ毛細網目状化やゲル形成を促進することが
できる。
【0034】塩類溶液や副資材溶液等の動物性蛋白原料
への含有・含浸工程及び動物性蛋白原料へのこれらの溶
液の拡散工程は20℃以下、好ましくは10℃以下で行
うのが好ましい。10℃以上になるにつれて動物性蛋白
原料が変質しやすくなる傾向が認められるためである。
【0035】
【発明の実施の形態】以下実施例を挙げて本発明を説明
するが、本発明はこれに限定されるものではない。 (実施の形態1)動物性蛋白原料として、鮮魚のタイを
準備し三枚におろしてフィレーとした。このフィレーを
1枚300gに揃えて4枚用意した。塩類として食塩、
アルカリ剤としてNaHCO3を準備した。次いで、
(表1)に示す処理液を作製し、実験を行った。
【表1】 4.0重量mol濃度の塩類溶液8.0gはタイのフィ
レー300gに対して塩類として0.5wt部に、1.
0重量mol濃度のアルカリ剤溶液1 .9gはタイのフ
ィレー300gに対してアルカリ剤として0.05wt
部に、3.9gは0.10wt部にそれぞれ相当する。
実験は(表1)に示すように、タイのフィレーに食塩溶
液を網目状にインジェクションした後、電気マッサージ
機にて3分間バイブレーションを行った。次いで、アル
カリ剤溶液を網目状にインジェクションし、電気マッサ
ージ機で6分間バイブレーションして処理を完了し加工
動物性蛋白食材を得た。(表1)のナシの項は該当する
処理がなかったことを表す。上記処理を行った実験例1
〜3のフィレーは比較例1のフィレーと共に冷蔵庫に2
4時間放置し、その後真空包装して冷凍庫に保管した。
冷凍庫に保管したタイのフィレーを7日後に取り出して
解凍した。解凍時実験例1〜3はドリップの発生が認め
られず、肉は弾力性に優れ、色ツヤもよく、透明感を有
し、実験前とほとんど変わらなかった。一方、比較例の
フィレーはドリップの発生が認められ白濁化現象が認め
られた。次いで、サンプルを半分は刺し身として、残り
半分を焼き魚として10人のパネラーに配り、官能試験
として、刺し身の(1)ドリップの発生状況、(2)色
彩、(3)弾力性、(4)食味、また焼成品の(5)外
観、(6)食味、について比較例を5点として10点法
で採点し、その平均点を求めた。その結果を(表2)に
示した。
【表2】 この(表2)から明らかなように、比較例1に対して実
験例1〜3はすべて非常に良い評価を得ることができ
た。実験例1の結果から食塩溶液のみでも肉質が改質さ
れていることがわかった。ごく少量のアルカリ剤の存在
は更に塩溶を促進することもわかった。刺し身の色は比
較例1が若干白く濁っているのに対して、実験例1〜3
はすべて透明感が出ており、処理品は焼成品も含めてテ
クスチャーに優れ美味しく食することができた。この結
果、冷凍刺し身の製造が可能となり、解凍してもドリッ
プが発生せず、透明感を有することから寿司ねたにも使
用可能なことがわかった。
【0036】(実施の形態2)動物性蛋白原料として、
鮮魚の銀サケを準備し三枚におろしてフィレーとした。
この銀サケのフィレーを1枚900gに調整して7枚用
意した。一方、塩類として、食塩、アルカリ剤としてN
aHCO3,ビタミンC剤, ビタミンE剤を準備し、
(表3)の配合表に記載の処理液を作製し実験(実験例
4〜9)を行った。尚、比較例2として、塩類溶液アル
カリ剤溶液で処理しないものを用いた。
【表3】 尚、6.0重量mol濃度の塩類溶液34.6gはサケ
のフィレー900g(銀サケ100wt部に対してNa
Cl1.0wt部)、同じく0.5重量mol濃度のア
ルカリ剤溶液2.3gは0.01wt部に相当する。以
下カッコ内表示は同様な内容を表す。塩類溶液には、ビ
タミンC剤とビタミンE剤の混合物1.5g(1:1混
合物)を溶解させたものを用いた。各実験は銀サケのフ
ィレーに塩類溶液を網目状にインジェクションし、次い
で、電気マッサージ機にて3分間バイブレーションし
た。次にアルカリ剤溶液を網目状にインジェクション
し、電気マッサージ機で6分間バイブレーションして処
理を完了した。比較例2のナシの項は該当する処理がな
かったことを表す。上記処理を行った各実験例の銀サケ
のフィレーは比較例2のフィレーと共に冷蔵庫で24時
間保管して、その後真空包装して冷凍庫に保管した。冷
凍庫に保管した銀サケのフィレーは10日後に取り出し
て、常温で解凍した。解凍終了時、実験例4〜9はいず
れもドリップの発生が少なく認められなかった。また、
フィレーは実験前よりも光沢に優れ、弾力を有してい
た。一方比較例2はドリップの発生が認められ、肉色も
よくなかった。次いで、サンプルの一部を刺し身とし、
一部を焼き魚として10人のパネラーに配り、官能試験
として刺し身の(1)ドリップの発生状況、(2)色
彩、(3)魚の臭み、(4)弾力性、(5)食味を、ま
た焼成品の(6)外観、(7)食味について、比較例2
を5点として10点法で採点し、その平均点を求めた。
その結果を(表4)に示した。
【表4】 この(表4)から明らかなように、比較例2に対して実
験例4〜9はすべて良い評価が得られた。解凍時にはド
リップの発生は認められなかったが、刺し身として皿に
盛り付けた後も切り身の表面の光沢が極めてよく、これ
がかえってみずみずしさを感じさせた。さらに色彩につ
いてはサケの紅色が透明感が出て冴えてきた。この傾向
はアルカリ剤の使用により顕著となった。また、魚の臭
みは食塩のみの場合も少なくなっているが、アルカリ剤
の使用により完全になくなつており、近年の若者の魚離
れは魚臭にあると言われていることに対する解決策とな
ることがわかった。実験例4と7は食塩溶液とビタミン
剤のみであるが、比較例2と比較して肉質が相当に改質
されており、さらに少量のアルカリ剤を添加することに
より、その効果が高くなることがわかった。
【0037】(実施の形態3)動物性蛋白原料としてア
ジの冷凍魚を準備した。アジを注水解凍した後、三枚に
おろして小骨、皮を取り除いて10mmφのミンチ加工機
にかけ、荒挽きミンチとした。このミンチは無晒しであ
りこれを、各300gずつ4サンプル用意した。塩類・
ビタミン剤溶液として、4重量mol濃度のNaCl溶
液12.7g(0.8wt部)にビタミンC剤とビタミ
ンE剤の混合物0.5gを溶解したものを調整した。ま
た、アルカリ剤溶液として0.5重量mol濃度のNa
HCO3溶液3.8g(0.05wt部)にソルビトー
ル5gを溶解したものをそれぞれ各3セット準備した。 (比較例3)実施の形態3のアジのミンチ300gをミ
キサーに入れ低速で回転させながら、顆粒状の食塩2.
4g(0.8wt部)を添加し8分間運転を継続して処
理を終えた。 (実験例10)実施の形態3のアジのミンチ300gを
ミキサーに入れ低速で回転させながら塩類・ビタミン剤
溶液を添加し3分間運転を継続した。次いでアルカリ剤
溶液を添加し5分間運転を継続して塩溶処理を終えた。 (実験例11)実施の形態3のアジのミンチ300gを
ミキサーに入れ低速で回転させながらアルカリ剤溶液を
添加し3分間運転を継続した。次いで塩類・ビタミン剤
溶液を添加して5分間運転を継続して塩溶処理を終え
た。 (実験例12)実施の形態3のアジのミンチ300gを
ミキサーに入れ低速で回転させながら塩類・ビタミン剤
溶液とアルカリ剤溶液を混合して同時に添加し、8分間
運転を継続して塩溶処理を終えた。
【0038】実験例10〜12の処理を終えたミンチは
比較例3のミンチと共に24時間冷蔵庫に保管してその
後冷凍した。冷凍保管したアジのミンチは5日後解凍し
た。比較例はドリップの発生が見られたが、実験例10
〜12はドリップの発生は見られなかった。解凍したア
ジのミンチは半分を蒸煮しカマボコとし、半分を油ちょ
うして天ぷらとした。試料は厚み10mmに統一して折り
曲げテストを行った。折り曲げテストは、(株)恒星社
厚生閣発行の「新版魚肉ねり製品」(昭和62年版)の
399頁に記載の方法に準拠して行った。評価方法は、
各試料を折り曲げて次の4段階で評価した。 A:4つに折り曲げても亀裂の生じないもの B:2つに折り曲げても亀裂の生じないもの C:2つに折り曲げると径の半分位に亀裂が生じるもの D:2つに折り曲げると亀裂が全部に及ぶもの 折り曲げテストは各試料から5サンプルを取り出して行
いその平均を求めた。その結果は(表5)に示した。表
中、折り曲げテスト欄の〔 〕の内側はA〜Dの評価の
個数を示し、〔 〕の前の英文字は総合評価を示す。ま
た、官能試験は上記各試料を2cm角にサイの目状に切
り、これを10人のパネリストにより、(1)色,
(2)弾力性,(3)風味,(4)旨みについて5段階
評価で行った。評価は捕獲直後のマイワシを従来の水晒
法で魚肉を精製したものを微粒化したスリ身を用いて製
造した天ぷらやカマボコを基準にし、5は優、4は良、
3は普通の天ぷらやカマボコと変わらない、2は少し劣
る、1は劣るで採点し、その平均を求めた。その結果を
(表5)に示した。
【表5】 この(表5)から明らかなように、比較例3は実験例1
0〜12と同量の食塩を顆粒状で添加し同様の処理を行
ったが、塩溶割合は極めて低く、評価としては劣る結果
がでた。実験例10〜12については塩類・ビタミン剤
を液状で添加してあり、さらにアルカリ剤の促進作用で
塩溶が進み、立派な魚肉の塊の残った天ぷらとカマボコ
ができた。実験例10〜12は食塩とアルカリ剤の添加
順序の違いだけであるが、殆ど同じ結果になっている。
しかし厳密には実験例10の塩類溶液を先に添加し、そ
の後アルカリ剤溶液を添加する方法が良い結果が得られ
ている。なお、同時に添加した実験例12は実験例1
0、11に比較するとあまり相違のない結果が出た。
【0039】(実施の形態4)実施の形態2の銀サケの
フィレー1枚(960g)に6.0重量mol濃度の食
塩の塩類溶液92g(銀サケ100wt部に対して食塩
2.5wt部)にビタミンC剤とビタミンE剤の混合物
1.5g(ビタミンC剤:ビタミンE剤=6:4の混合
比)を溶解した溶液を網目状にインジェクションして、
その後電気マッサージ機で3分間バイブレーションし
た。次いで1.2重量mol濃度のNaHCO3 8.3
g(サケ100wt部に対してNaHCO30.08w
t部)にソルビトール15gと調味料CR3gを溶解し
たアルカリ剤溶液を網目状にインジェクションして電気
マッサージ機で5分間バイブレーションして処理を終え
て、甘口塩サケを得た。このフィレー状塩サケは直ちに
真空包装して冷凍庫に保管した。14日後に取り出し解
凍し、切り身を焼いて官能試験を行ったが、全くドリッ
プは出ず、焼き色は赤く、テクスチャー、風味に優れ、
高い評価を得た。
【0040】(実施の形態5)動物性蛋白原料として、
牛もも肉の冷凍品を準備した。この牛もも肉を温度に注
意しながら解凍し、発生したドリップは回収した。この
牛もも肉900gに、ドリップと水を同量混合した溶液
に食塩を溶解し6重量mol濃度の塩類溶液を調製し、
その溶液35g(牛もも肉100wt部に対して1.0
wt部)にビタミンC剤とビタミンE剤の混合物1.5
gを溶解した塩類・ビタミン剤溶液を網目状にインジェ
クションした後、電気マッサージ機で5分間バイブレー
ションを行った。次いでドリップと水を同量混合した溶
液から調製した0.5重量mol濃度のNaHCO3
溶解したアルカリ剤溶液22.5g(牛もも肉100w
t部に対して0.10wt部)に蔗糖15gを溶解した
溶液を網目状にインジェクションして、その後電気マッ
サージ機で10分間バイブレーション処理を行い、加工
動物性蛋白食材を得た。加工動物性蛋白食材の牛もも肉
は48時間冷蔵庫に保管した後、取り出しステーキ状、
細切状、薄切状にカットし、真空包装して冷凍庫に保管
した。7日後に冷凍庫から取り出し、解凍したがドリッ
プの発生は全く認められず、色鮮やかであり、ステー
キ、焼肉、しゃぶしゃぶにして官能試験を行ったが、ソ
フトでかつジュウシーでテクスチャーや風味に優れ、歯
当たりがよく味は美味であるとの高い評価を得た。
【0041】(実施の形態6)動物性蛋白原料として、
豚ロース肉のチルド品を用意し、このチルド品を600
gのブロックにカットして7サンプル準備し、実験例1
3〜18、比較例4に供した。この肉に対して(表6)
に記載の処理液を準備した。実験例13〜18の塩類溶
液にはすべてビタミンC剤とビタミンE剤の混合物各
1.5g(混合比1:1)を添加溶解した。処理は実験
例13,14,16,17は塩類・ビタミン剤溶液を豚
ロース肉に網目状にインジェクションして、電気マッサ
ージ機で15分間バイブレーション処理を行った。実験
例15、18は塩類溶液を網目状にインジェクション
し、5分間電気マッサージ機にてバイブレーションし、
次いで網目状にアルカリ剤溶液をインジェクションし
て、その後10分間電気マッサージ機でバイブレーショ
ンして処理を終了し各加工動物性蛋白食材を得た。処理
が終了した各加工動物性蛋白食材は冷蔵庫で24時間保
管し、その後比較例4の該食材と共に豚ポークソテー
用、トンカツ用にカットしそれぞれ真空包装をして、冷
凍庫に保管した。冷凍庫に保管した各加工動物性蛋白食
材を7日後に取り出して解凍し、(1)生肉の色彩を評
価し、ポークソテー、トンカツ、にして官能試験を行っ
た。評価は10人のパネラーにて比較例4を評価点5点
として、(2)柔らかさ、(3)ジュウシィさ、(4)
弾力性、(5)旨みについて、10点満点で評価し、平
均点で(表7)に示した。
【表7】 この(表7)から明らかなように、塩類・ビタミン剤溶
液のみでなく、アルカリ剤溶液を添加した方が良い結果
が得られている。又塩類・ビタミン剤溶液及びアルカリ
剤溶液を同時に添加したものは生肉の色彩が非常に良い
結果が得られているが、その他の項目では逆に塩類・ビ
タミン剤溶液を添加し、その後にアルカリ剤溶液を添加
した方が若干ではあるが良い結果が得られた。さらに塩
類、アルカリ剤の添加量の多い方が若干良い結果となっ
ているが、塩類の添加量が1wt部以上であれば塩辛さ
が出てくるので注意を要することがわかった。豚ロース
肉を食材に加工する場合、従来は顆粒状の食塩をロース
肉にまぶしたり、薄い食塩水に長時間(6時間〜12時
間)浸漬したりして行っていたが、本実施例によればそ
の少量をインジェクションで添加することで肉中組織を
その形態を維持して内部で塩溶を促進することができ、
しかも極短時間(15分間)で処理は完了し、またアル
カリ剤を加えることによりさらに塩溶を促進させること
がわかった。得られた加工動物性蛋白食材は保水性や、
テクスチャーの改善のみならず、調理時に焼き縮みがな
く、むしろ膨張するのでトンカツの場合はカットした
時、皮と身の結着性が非常に良く、従来品の様に皮と身
の間に隙間ができることは全く見られなかった。また、
試食してみたところ、テスクチャーや旨み等極めて高い
評価を得た。
【0042】(実施の形態7)動物性蛋白原料として、
鶏もも肉チルド品を用意し、この鶏もも肉600gに、
6重量mol濃度の食塩水溶液23g(もも肉100w
t部に対し1.0wt部) にビタミンC剤とE剤の混合
物1.0gを溶解させた塩類・ビタミン剤溶液を網目状
にインジェクションした。その後電気マッサージ機で5
分間バイブレーションした。次いで、NaHCO3 を水
に溶解した0.8重量mol濃度のアルカリ剤溶液7.
6g(もも肉100wt部に対し0.08wt部)にミ
リン6gを溶解したアルカリ剤溶液を網目状にインジェ
クションし、その後電気マッサージ機で10分間バイブ
レーションして処理を完了した。得られた加工動物性蛋
白食材は冷蔵庫で24時間保管した後冷凍庫にて保管し
た。冷凍庫で7日間保管後、取り出し、解凍したがドリ
ップの発生は全く認められなかった。次いで、解凍した
一部をホットプレートで焼成し、残りは冷蔵庫に保管し
た。鶏もも肉の加工動物性蛋白食材は焼成時の焼き縮み
がなく、非常に美味しく食すことができ、焼成後7時間
経過してもソフトさ、ジュウシィーさ、旨味に変化はな
かった。また、冷蔵庫に保管した残りの該食材は解凍後
7日経過しても腐敗の兆候は見られなかった。
【0043】(実施の形態8)動物性蛋白原料として、
鶏むね肉チルド品を準備した。この鶏むね肉を鶏唐揚げ
サイズにカットした。このカットされた鶏むね肉600
gを真空ミキサーに入れ、6.0mol濃度の食塩水溶
液23g(むね肉100wt部に対して1.0wt部)
と0.8重量mol濃度のNaHCO3 水溶液の7.6
g(0.08wt部)を混合し、更にビタミンC剤とE
剤の混合物1.0gとミリン12gを混合した塩類・ア
ルカリ・ビタミン剤溶液を真空ミキサーを40mmHg
まで減圧した状態で低速回転しながら噴霧して添加し
た。回転を5分間継続した後ミキサー内を常圧に戻し処
理を完了し加工動物性蛋白食材を得た。次いで、得られ
た鶏むね肉の加工動物性蛋白食材を冷蔵庫に24時間保
管した後、半分は小麦粉をまぶして唐揚げとし、残り半
分は真空包装し、冷凍庫に保管した。唐揚げした鶏むね
肉については10人のパネラーにて官能試験を行った。
全員がソフトさ、ジュウシィーさ、旨味に付いて極めて
高い評価をつけ、美味しく食す事ができた。尚唐揚げ調
理後24時間経過した調理品を同様に10人のパネラー
にて官能試験を行ったが、調理直後の評価に対して80
%程度の品位を保っていた。このことから弁当にも充分
に利用できることがわかった。又冷凍保管した鶏むね肉
の加工動物性蛋白食材を10日後に取り出し、常温解凍
を行ったが、ドリップは全く認められなかった。次い
で、唐揚げ調理をして10人のパネラーで評価したが、
前記の冷凍しないで唐揚げ調理したものと比較して全く
遜色のないものであることが結論づけられた。
【0044】(実施の形態9)動物性蛋白原料として、
牛もも肉、豚もも肉、各半々の合い挽きミンチ肉チルド
を準備した。このミンチ肉300gを比較例5として残
し、その他のミンチ肉900gをミキサーにいれ、塩類
としてNaClとCaCl2を混合比で9:1に混合し
たものを水に溶解した。6重量mol濃度の塩類溶液3
5g(ミンチ肉100wt部に対し1.0wt部)に、
ビタミンC剤とビタミンE剤の混合物1.5gを溶解し
た塩類・ビタミン剤溶液を、ミキサーを低速回転させな
がら添加し3分間運転を継続した。次いで、アルカリ剤
としてNaHCO3とKHCO3の9:1混合物を水に溶
解した0.8重量mol濃度の水溶液14.3g(ミン
チ肉100wt部に対し0.1wt部)にミリン15g
を混合したアルカリ剤溶液を、ミキサーを低速回転させ
ながら添加し、5分間運転を継続してミンチの処理を終
了し加工動物性蛋白食材を得た。得られた加工動物性蛋
白食材と比較例5の処理をしないミンチ肉にミンチ肉の
重量の30%に当たるタマネギのバター炒めを混ぜ合わ
せてハンバーグ状に成形し焼成し、比較例5とその結着
性について評価した。このハンバーグはタマネギの炒め
もの以外には卵やパン粉などはなにも加えなかつた。焼
成時には比較例5は盛んに水蒸気を出したが、実験例品
は水分は出ず、若干の油を出す程度であり、比較例5は
焼成時に反転させた時にヒビ入り割れたりしたが、実験
例品は形状を維持して焼け、試食した結果、極めて美味
であった。また、焼成時の歩留りは実験例品が90%に
対して比較例5は79%であった。
【0045】(実施の形態10)実施の形態2で用いた
銀サケのフィレーの皮を剥ぎ、10mmφのプレートのミ
ンチ加工機にかけ、サケの粗ミンチを得た。このサケ粗
ミンチ肉600gをミキサーに入れ、4重量mol濃度
の食塩水溶液32g(サケ粗ミンチ肉100wt部に対
して1.0wt部)に、ビタミンC剤とビタミンE剤の
混合物1.0gと調味量CR1.0gを溶解した塩類・
ビタミン剤溶液をミキサーを低速で回転させながら噴霧
して添加した。その後3分間運転を継続した。次いで、
0.5重量mol濃度のNaHCO3 水溶液5.2g
(同0.08wt部)にミリン9gを混合したアルカリ
剤溶液をミキサーを低速で回転させながら噴霧して添加
し、運転を5分間継続して処理を完了し加工動物性蛋白
食材を得た。加工動物性蛋白食材として得られたサケの
粗ミンチは24時間冷蔵庫に保管した後プラスチックの
ケーシングに詰め、30mmφ×20cmの棒状として加熱
室で35〜40℃で40分間加温し、次いで75℃に温
度調整された加熱水で2時間ボイルして直ちに冷水に浸
けて冷却しサケの魚肉荒挽きハムを得た。プラスチック
ケーシングを取り除きカットしたサケのハムは魚肉の形
状が保たれており、新規な魚肉ハムを得ることができ
た。従来の魚肉ソーセージは水晒をした魚肉に顆粒状の
食塩を多量(水晒した魚肉100wt部に対し食塩2.
5〜3.0wt部)に添加して長時間かけて擂潰したす
り身に更に結着剤を添加しなければ魚肉ソーセージには
ならなかったが、本処理品は塩分1%でしかも擂潰を必
要とせずに優れた結着性を発揮し、魚肉の形状を維持し
たままのハムとなり、サケの紅色は鮮やかで、ソフトか
つジュウシィでしかも弾力性のある魚肉ハムが得られ
た。次いで、10人のパネラーが官能試験をしたが、全
員から極めて高い評価を得た。
【0046】(実施の形態11)動物性蛋白原料とし
て、豚ロース肉チルド品を用意し、この豚ロース肉12
00gに、6重量mol濃度のNaCl水溶液46g
(ロース肉100wt部に対して1.0wt部) に、ビ
タミンC剤とE剤の混合物2.0gと調味料としてCR
2.0gを溶解した塩類・ビタミン剤溶液を網目状にイ
ンジェクションした後、電気マッサージ機で5分間バイ
ブレーションした。次いで0.8重量mol濃度のNa
HCO3 水溶液19g(同0.10wt部)にミリン1
2gを混合しさらに蔗糖12gを溶解したアルカリ剤溶
液を網目状にインジェクションし、10分間電気マッサ
ージ機でバイブレーションして塩溶、乳化、ゲル化能付
加の熟成促進を行ない処理を終了し加工動物性蛋白食材
を得た。加工動物性蛋白食材のロース肉は冷蔵庫で24
時間保管した後、肉塊をまるめながらファイブラスケー
シングに押し込み、空気を抜いて両端を結束した。巻き
締めが終わったブロック肉を35〜45℃で40分間表
面乾燥を行い、直ちにサクラチップで60分間薫煙処理
し、次いで75℃の加熱水で4時間ボイルし直ちに冷水
に漬け冷却してロースハムを得た。本処理により得られ
たロースハムは強いゲル化熟成のために肉質はしなやか
で、弾力性に優れ、亜硝酸を使用しなくともビタミン類
の使用で発色性に優れ、短時間処理のために生産性が高
いロースハムが生産できることが分かった。従来のハム
は結着性を高めるために植物蛋白質や卵白を添加するた
め、添加量にもよるが旨味が損なわれるという問題点を
有していた。また色も肉本来の鮮色がだんだんと薄れて
くるので、有害な発色剤としての亜硝酸などを添加しな
ければならないので、安全性に欠けるが、本実施の形態
により解決することができた。
【0047】(実施の形態12)動物性蛋白原料として
小振りのブラックタイガー、むき身冷凍エビを用意し、
温度に注意しながら解凍した。解凍したむきエビ600
gを真空タンブラーに入れ、食塩を水に溶解した4.0
mol濃度の塩類溶液25.3g(0.8wt部)とN
aHCO3を水に溶解した0.8mol濃度のアルカリ
剤水溶液19g(0.2wt部)を混合してむきエビに
添加した。直ちにタンブラーを30mmHgまで減圧に
し、回転させ10分間回転を継続した後、タンブラーを
常圧に戻したところ、添加した混合溶液は全量エビに吸
収され処理は完了し加工動物性蛋白食材を得た。加工動
物性蛋白食材のエビのむき身は3時間冷蔵庫に保管し、
半数を冷凍し、残りの半数は生のまま一部を刺し身とし
て試食し、残りを焼成してパネラーによる試食を行っ
た。いずれも美味であり、特に刺し身はエビのおどりに
匹敵する味であるとの評価であった。冷凍した処理エビ
は3日後解凍したが、ドリップの発生は認められなかっ
た。また焼成してパネラーによる冷凍した処理エビは3
日後解凍したが、ドリップの発生は認められなかった。
また、焼成してパネラーによる試食をおこなったが、い
ずれも美味であるとの評価を得た。
【0048】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、以下の優
れた効果を有する加工動物性蛋白食材及びその製造方法
を実現できるものである。 A.加工動物性蛋白食材 (1)低分子旨味栄養成分を流出することなく全てを含
有しているので、極めて高い栄養価を得ることができ
る。 (2)弾力性があり、光沢に優れ、かつ品質保持性に優
れている。 (3)耐冷凍性に優れ、流通適性に極めて、優れてい
る。 (4)保水性や結着性に優れ、調理品はソフトでテクス
チャーや風味に優れ、食材そのものの味を出すことがで
きる。 (5)加工自在で変性損失を防ぎ、ドリップ等の低分子
栄養成分等を有効に利用した高歩留りで栄養価の高い、
ねり状肉、ミンチ肉、細切肉、スライス肉、ポーショ
ン、ブロック又はフィレー等を処理することができ、更
に、これらを刺し身、焼き魚、焼き肉、つくね、煮魚、
ハンバーグ、ステーキ、揚げ物、缶詰、ハム、ソーセー
ジ類その他各種加工食品に適した各種食材を提供でき
る。 B.加工動物性蛋白食材の製造方法 (1)高濃度で少量の塩類溶液と副資材としてアルカリ
剤、ビタミンE剤及びC剤、を細胞膜の浸透性を利用し
て動物性蛋白原料の骨格筋組織や脂肪層組織に完全に含
浸、分散させることで肉中に生化学反応を起こさせ、細
胞膜、筋原繊維、筋鞘、コラーゲン、脂質や脂肪、脂肪
中の細胞膜組織、コラーゲン等を短時間に改質させ、生
肉の冷蔵中の酸化による肉色の変色化を防止することが
できる。 (2)肉色を修復し、解凍に伴うドリップの流出や、冷
蔵、冷凍中の変性等を防止し、又屠殺直後等の生肉を急
速に熟成でき、さらに畜肉臭やグラス臭を消臭させるこ
とができる。 (3)肉内に於ける肉蛋白質や油脂、脂肪中のロウ成分
を乳化させてゲル化熟成させ、肉組織を改質し口当たり
良く、弾力性、保水性、結着性のある肉に処理すると共
に、肉の硬さを自由に調節出来る。
【表6】

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動物性蛋白原料100wt部に、NaC
    l,KCl,CaCl2 ,MgCl2 からなる塩類の内
    いずれか1種若しくはこれらの混合物を、水及び/又は
    動物性蛋白原料のドリップに溶解した1.0〜7.0重
    量mol濃度の塩類溶液が添加され、前記動物性蛋白原
    料100wt部に乾燥重量で0.1〜5wt部好ましく
    は0.2〜2.5wt部の塩類が含有されていることを
    特徴とする加工動物性蛋白食材。
  2. 【請求項2】 動物性蛋白原料100wt部に、NaH
    CO3 ,Na2 CO3 ,KHCO3 ,K2 CO3 ,NH
    4 HCO3 からなるアルカリ剤の内いずれか1種若しく
    はこれらの混和物を、水及び/又は動物性蛋白原料のド
    リップに溶解した0.03〜3.0重量mol濃度のア
    ルカリ剤溶液が添加され、前記動物性蛋白原料100w
    t部に乾燥重量で0.005〜3wt部好ましくは0.
    01〜1wt部更に好ましくは0.05〜0.5wt部
    含有されていることを特徴とする請求項1に記載の加工
    動物性蛋白食材。
  3. 【請求項3】 動物性蛋白原料100wt部に、ビタミ
    ンC剤やビタミンE剤等からなるビタミン剤を水及び/
    又は動物性蛋白原料のドリップに溶解したビタミン剤溶
    液若しくは前記ビタミン剤を前記塩類溶液や前記アルカ
    リ剤溶液に溶解した塩類・ビタミン剤溶液やアルカリ・
    ビタミン剤溶液が添加され、前記動物性蛋白原料100
    wt部に乾燥重量でビタミンC剤が6×10-3〜500
    ×10-3wt部、及び/又はビタミンE剤が1×10-3
    〜300×10-3wt部含有・含浸されていることを特
    徴とする請求項1又は2に記載の加工動物性蛋白食材。
  4. 【請求項4】 動物性蛋白原料100wt部に、NaC
    l,KCl,CaCl2 ,MgCl2 からなる塩類の内
    いずれか1種若しくはこれらの混和物を水及び/又はド
    リップに溶解させた1.0〜7.0重量mol濃度の塩
    類溶液を2〜15wt部含有・含浸させる塩類含有工程
    を備えていることを特徴とする加工動物性蛋白食材の製
    造方法。
  5. 【請求項5】 動物性蛋白原料100wt部に、NaH
    CO3 ,Na2 CO 3 ,KHCO3 ,K2 CO3 ,NH
    4 HCO3 からなるアルカリ剤の内いずれか1種若しく
    はこれらの混和物を、水及び/又は動物性蛋白原料のド
    リップに溶解した0.03〜3.0重量mol濃度のア
    ルカリ剤溶液を0.5〜10wt部含有・含浸させるア
    ルカリ含有工程を備えていることを特徴とする請求項4
    に記載の加工動物性蛋白食材の製造方法。
  6. 【請求項6】 動物性蛋白原料100wt部に、1.0
    〜7重量mol濃度になるように秤量されたNaCl,
    KCl,CaCl2 ,MgCl2 からなる塩類の1種以
    上と、0.03〜3.0重量mol濃度になるように秤
    量されたNaHCO3,Na2CO3,KHCO3,K2
    3,NH4HCO3からなるアルカリ剤の1種以上と、
    を水及び/又は動物性蛋白原料のドリップに溶解した塩
    ・アルカリ溶液を2.5〜25wt部含有・含浸させる
    塩・アルカリ含有工程を備えていることを特徴とする加
    工動物性蛋白食材の製造方法。
  7. 【請求項7】 動物性蛋白原料100wt部に、ビタミ
    ンC剤,ビタミンE剤等のビタミン剤を水及び/又は動
    物性蛋白原料のドリップに溶解したビタミン剤溶液を
    0.5〜15wt部含有・含浸させるビタミン含有工程
    を備えていることを特徴とする請求項4乃至6の内いず
    れか1項に記載の加工動物性蛋白食材の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記塩類溶液及び/又は前記アルカリ剤
    溶液若しくは前記塩・アルカリ溶液に、6×10-3〜5
    00×10-3wt部のビタミンC剤と、及び/又は1×
    10-3〜300×10-3wt部のビタミンE剤と、が溶
    解されていることを特徴とする請求項4乃至6の内いず
    れか1項に記載の加工動物性蛋白食材の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記塩類含有工程後に、前記アルカリ含
    有工程を備えていることを特徴とする請求項4,5,8
    の内いずれか1項に記載の加工動物性蛋白食材の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 前記アルカリ含有工程後に、前記塩類
    含有工程を備えていることを特徴とする請求項4,5,
    8の内いずれか1項に記載の加工動物性蛋白食材の製造
    方法。
  11. 【請求項11】 前記塩類含有工程及び/又は前記アル
    カリ含有工程若しくは前記塩類・アルカリ含有工程の後
    に前記ビタミン含有工程を備えていることを特徴とする
    請求項4乃至6の内いずれか1項に記載の加工動物性蛋
    白食材の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記塩類含有工程や前記アルカリ含有
    工程、前記ビタミン含有工程が、インジェクション法、
    噴霧法、塗着法、又は混練混和法の内いずれか1の方法
    で行われることを特徴とする請求項4乃至11の内いず
    れか1項に記載の加工動物性蛋白食材の製造方法。
  13. 【請求項13】 前記塩類含有工程や前記アルカリ含有
    工程、前記塩・アルカリ含有工程、前記ビタミン含有工
    程の後に、前記含有・含浸された塩類溶液やビタミン剤
    溶液,アルカリ剤溶液を動物性蛋白原料内に拡散させる
    拡散工程を備えていることを特徴とする請求項4乃至1
    2の内いずれか1項に記載の加工動物性蛋白食材の製造
    方法。
  14. 【請求項14】 前記拡散工程がマッサージ法、バイブ
    レーション法、超音波法及びタンブラー法の内いずれか
    1の方法で行われることを特徴とする請求項13に記載
    の加工動物性蛋白食材の製造方法。
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