JP2007319166A - 動物性蛋白質からなる食品及び同動物性蛋白質の軟化方法及び動物性蛋白質の軟化処理に用いる軟化剤 - Google Patents

動物性蛋白質からなる食品及び同動物性蛋白質の軟化方法及び動物性蛋白質の軟化処理に用いる軟化剤 Download PDF

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Abstract

【課題】動物性蛋白質のジューシーさやテクスチャー、食味を改善する。
【解決手段】動物性蛋白質100wt部に対して、塩類溶液3〜12wt部と、アルカリ剤溶液1〜10wt部と、粉末とした酵素粉末0.001〜0.1wt部とを混合した混合溶液を含浸させることにより、動物性蛋白質に塩溶々解ゲル化能付与と酵素反応を生じさせて動物性蛋白質を軟化させる動物性蛋白質の軟化方法を提供する。また、この軟化方法を用いて軟化させた動物性蛋白質からなる食品を提供する。また、適宜の溶媒に溶解させることにより上記の濃度となる塩類粉末と、アルカリ剤粉末と、酵素粉末からなる軟化剤を提供する。特に、酵素粉末は、プロテアーゼ、アミラーゼのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物とする。プロテアーゼとしてはパパイン、アクチニジン、ククミシンが望ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、動物性蛋白質からなる食品及び同動物性蛋白質の軟化方法及び動物性蛋白質の軟化処理に用いる軟化剤に関するものである。
近年生活様式が洋風化したためか若年層を中心に、軟らかい肉が好まれ、硬い肉が敬遠される傾向にある。
一例として一頭の牛の80%は硬い肉と言われている。また、ロース等の軟らかい肉でも調理後は冷めると100%硬くなり、また、油脂が表面に付着し食べにくくなる傾向がある。特に老齢牛、豚、廃鶏、内臓肉などの肉は他の肉に比べて総じて硬く、市場での評価は低くなっているものの、コスト競争により硬い肉を活用する傾向にある。
かかる畜類肉の軟化方法としては、特開平05−260924号公報(特許文献1)において、アルコール水溶液に蛋白分解酵素を含有する果汁を添加した肉軟化剤が知られている。
特開平05−260924号公報
しかしながら、畜肉、魚介、鯨肉、甲殻類、沖あみ類、野生動物等哺乳類等の動物性蛋白質の利用に際して、筋肉の結合組織の量と質、アクチンやミオシン等の筋肉繊維の結合量、高齢動物全般の加齢現象によるコラーゲンやエラスチン等の増加により硬化した動物性蛋白質を酵素を用いて軟化させるには、酵素の浸透性・分散均一性が低いことによって肉表面でのみ酵素が反応することによる肉表面の過剰反応と、蛋白質由来の分解酵素活性によって自己消化や冷凍変性が生じやすく、以下の課題を有することとなっていた。
1.酵素により動物性蛋白質は軟化するが、保水力が低下することによりパサツキが生じるとともに歯触り、弾力性、ゲル化力が低下し、ジューシーさがなくなり、またテクスチャーに欠ける。
2.冷凍時に水分の氷結が生じやすい。
3.酵素による自己消化を防止できない。
4.酵素安全性の限界により、加工食品への応用が困難。
5.酵素反応を調整するための簡便な技術が存在しないため、軟化不足や過度の軟化等の反応ムラを防止することが困難。
6.魚肉・畜肉を冷凍貯蔵すると塩に溶ける蛋白質が少なくなり、解凍した時には海綿のように小孔の多い肉質となったり、硬さが増すなどの冷凍にともなう本来の魚肉・畜肉の性質が変化する冷凍変性を生じやすい。
7.冷凍変性との兼合いから使用可能な動物性蛋白質に制限があり、安定的な幅広い利用が困難。
そこで、本発明では、かかる問題を解決した動物性蛋白質からなる食品、及び同動物性蛋白質の軟化方法、さらには動物性蛋白質の軟化処理に用いる軟化剤を提供するものである。
特に、動物性蛋白質中にある数多くの品質の改質成分に着目し、筋原繊維のスリム化、及び筋形蛋白質・コラーゲン・エラスチン・細胞組織・体液等を溶解ゲル化して、酵素によって筋繊維をほぐした中に糊状にして水分を取り込み、ドリップ等を一切流出させず、耐凍性に優れ、冷凍変性及び緩慢凍結により引き起される各種の品質劣化を防止可能としているものである。しかも、その場合の酵素の使用量を極めて低減可能としているものである。
本発明の動物性蛋白質からなる食品は、NaCl、KCl、CaCl、MgClのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を水及び/または動物性蛋白質のドリップに溶解し、1.5〜7.0mol/kgの濃度とした塩類溶液を3〜12wt部と、NaHCO、NaCO、KHCO、NHHCO、KCO、CaCO、NaOH、KOH、Ca(OH)、リン酸一ナトリウム、リン酸ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸三カリウムのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を水及び/または動物性蛋白質のドリップに溶解し、0.1〜3.0mol/kgの濃度としたアルカリ剤溶液を1〜10wt部と、パパイン、アクチニジン、ククミシンのいずれか一つ、またはこれらのうちのいずれか二種若しくは三種の組合せからなる粉末とした酵素粉末0.001〜0.1wt部とを混合してなる混合溶液を、100wt部とした動物性蛋白質に含浸させることにより、同動物性蛋白質に塩溶々解ゲル化酵素反応を生じさせて軟化させたものである。したがって、かかる動物性蛋白質からなる食品は、いつまでも軟らかく、かつ、日持ちさせることができ、特に、長期保存を行なった後でも軟らかさを維持させることができ、いつでも美味しく食することができる。したがって、かかる動物性蛋白質からなる食品は、いつまでも軟らかく、かつ、日持ちさせることができ、特に、冷凍保存を行なった後でも軟らかさを維持させることができ、いつでも美味しく食することができる。
また、本発明の動物性蛋白質の軟化方法は、動物性蛋白質100wt部に対して、NaCl、KCl、CaCl、MgClのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を水及び/または動物性蛋白質のドリップに溶解し、1.5〜7.0mol/kgの濃度とした塩類溶液を3〜12wt部と、NaHCO、NaCO、KHCO、NHHCO、KCO、CaCO、NaOH、KOH、Ca(OH)、リン酸一ナトリウム、リン酸ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸三カリウムのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を水及び/または動物性蛋白質のドリップに溶解し、0.1〜3.0mol/kgの濃度としたアルカリ剤溶液を1〜10wt部と、パパイン、アクチニジン、ククミシンのいずれか一つ、またはこれらのうちのいずれか二種若しくは三種の組合せからなる粉末とした酵素粉末0.001〜0.1wt部とを混合してなる混合溶液を、動物性蛋白質に含浸させることにより、同動物性蛋白質に塩溶々解ゲル化酵素反応を生じさせて軟化させるものである。したがって、いままでは不可能であった動物性蛋白質の自由自在な軟化を確実に行なうことができ、動物性蛋白質の食品としての品質を向上させることができる。すなわち、従来は動物性蛋白質を軟化させるために大量の酵素が必要であって、かつ、大量に使用した場合であっても均一で安全な軟化が不可能であったが、従来と比較して極めて少量の酵素の使用で動物性蛋白質をムラなく均一に、かつ安全に改質・軟化させることができるとともに、冷凍変性を防止することができるので、品質の向上とコストダウンを可能とすることができる。
また、本発明の動物性蛋白質の軟化処理に用いる軟化剤は、NaCl、KCl、CaCl、MgClのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物からなる粉末状の塩類粉末と、NaHCO、NaCO、KHCO、NHHCO、KCO、CaCO、NaOH、KOH、Ca(OH)、リン酸一ナトリウム、リン酸ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸三カリウムのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物からなる粉末状のアルカリ剤粉末と、パパイン、アクチニジン、ククミシンのいずれか一つ、またはこれらのうちのいずれか二種若しくは三種の組合せからなる粉末状とした酵素とを混合して生成した混合粉末からなる軟化剤であって、同混合粉末を所定量の溶媒に溶解させることにより塩類粉末の成分濃度が1.5〜7.0mol/kg、アルカリ剤粉末の成分濃度が0.1〜3.0mol/kgとなるとともに、酵素濃度が0.01〜1.0g/kgとなった混合溶液を生成して、この混合溶液を100wt部の動物性蛋白質に対して、酵素を0.001〜0.1wt部含浸させることにより動物性蛋白質を軟化させるようにしているものである。したがって、かかる軟化剤を用いることによって、動物性蛋白質を短時間で十分に軟化させることができるとともに、軟化にともなって熟成を安定的に行なうことができ、しかも動物性蛋白質からなる食品の品質を向上させて冷凍変性を防止し、また修復復元を可能とし、さらには、動物性蛋白質の日持ちを良くすることができる。そして、かかる動物性蛋白質の大量処理を容易に行なうことができる。
本発明によれば、通常の肉類をはじめとして硬い老齢畜類や魚介類の利用に際して、様々な消費者ニーズを合致させ、世界の人口増加に対して食糧確保のうえでも、通常肉や低利用肉あるいは南極沖アミ等の未利用肉を有効に活用すべく酵素と塩類とアルカリ剤との組合せにより、塩溶あるいは弛緩を生起して、さらにゲル化能付与、乳化反応を生起して高い浸透吸収・分散性を利用して酵素を短時間で肉中に略均一に分散させることができる。
従って、酵素の使用量を大幅に低減させることができ、酵素の過剰使用にともなう肉の過度の分解を防止して、肉の品質を損なうこと防止でき、さらにはドリップの流出を防止できる。そして、使用目的に合わせて肉類を自由自在に軟化させることができる。
その複合効果として、動物肉全般の冷凍変性を防止でき、また解凍品肉質の修復・復元を行なうことができ、急速冷凍や冷蔵保存時の冷凍変性・凍結時の水分氷結を防止することができる。
このことから、低温海域に生息する魚介類、深海魚、南極沖アミ等の資源の活用を容易とし、また、無晒しスリ身原料の生産加工性を向上させ、新素材を利用しての練り製品等の資源の幅広い活用方法を提供することができる。特に、この製品は、品質が安定しており、使いやすく、短時間での生産性に優れ、コストダウンを図ることができ、また、新素材としての高歩留りや機能性、調理の簡便性、低塩分製品等の多岐にわたる有効性を有している。
本発明の動物性蛋白質からなる食品は、上記した多くの品質課題を解決するために、フードライフサイエンスの視点から、塩類、アルカリ剤、酵素から得られるそれぞれのナノレベル反応を組み合わせることにより、動物性蛋白質からなる食品の分子栄養学レベルでの改質を相乗的に生起して、品質の向上を図ったものである。
特に、塩類の所定濃度溶液とアルカリ剤の所定濃度溶液とを組み合わせることにより、かかる塩アルカリ混合溶液によって動物性蛋白質の骨格筋及び細胞組織に均一分散性を生起するとともに乳化作用とゲル化能を生起することができ、この塩アルカリ混合溶液に酵素を添加して生成した混合溶液として動物性蛋白質に酵素を含浸させることにより酵素の浸透性を極めて向上させることができ、酵素を動物性蛋白質の内部まで確実に浸透させて、動物性蛋白質の骨格筋及び細胞組織に均一分散性を付与し、少量の酵素であっても動物性蛋白質に自由度のある軟化処理を施して、調味を省力化してそのまま簡便に食することができる。
上記の動物性蛋白質からなる食品は、フードライフサイエンススーペルバ(登録商標)となるものである。
特に、動物性蛋白質100wt部に対して、塩類溶液3〜12wt部と、アルカリ剤溶液1〜10wt部と、粉末とした酵素粉末0.001〜0.1wt部とを混合した混合溶液を含浸させることにより、動物性蛋白質に塩溶々解ゲル化能付与と酵素反応を生じさせる塩溶々解ゲル化能付与と酵素反応を生じさせ、動物性蛋白質を軟化し、さらには冷凍変性を防止するとともに、修復復元性を高めているものである。
酵素は温和な条件(常温・常圧・中性pH付近)で特定の物質にのみ作用する基質特異性という優れた性質がある。酵素はこれらの性質を応用して工業・農産加工・食品工業・醗酵工業・医薬品・味噌醸造・水産加工など各方面で利用されている。
このうち食品加工業に利用されるものは、肉の軟化に用いられるプロテアーゼのパパイン、アクチニジン、ククミシン、キモパパイン、肉類調理に用いられるカビのプロテアーゼ、水産加工に用いられる細菌プロテアーゼ、リパーゼフレーバ酵素、ペクチン分解酵素のペクチアーゼ、果実類関連酵素、その他としてグルコース、オキシダーゼ、カタラーゼ、リゾチーム、ラクターゼ、リポキシケナーゼ等がある。
果実由来のプロテアーゼの利用は、その簡便性と安全性により近年主流をなす手段として注目を集めている。しかしこの方法にも次のような課題があった。すなわち酵素の使用にあたって安全性には限界があり、加工食品への応用が困難であること及び酵素反応をコントロールするための簡便な技術が存在しないため軟化不足や過度の軟化を防止し、適度な効果の再現性を良く発現させることが困難であることなどである。
これらの課題は機能因子である酵素そのものの性質に起因するものであり、有効な解決策はなかなか見出されなかった。
一方、食肉の硬さは、骨格筋及び脂肪層、硬膜、筋周膜、筋束、コラーゲン及びエラスチン繊維などの筋肉結合組織の量と質及びアクチンやミオシンなど筋原繊維の結合量である。一般に老齢牛が硬くて敬遠されるのは筋肉結合組織の量と質によるものである。
筋肉の結合組織を構成している主体は、コラーゲン、エラスチンであり、その量は家畜の加齢によって増加すると共に、コラーゲン分子同士の結合も強まって肉が硬くなる。これを軟らかくするには、このコラーゲン分子を酵素などによって分解すればよいことになる。
これらを分解する酵素として現在よく知られている酵素は、パパイヤから調製されるパパイン、キウイフルーツやメロンに含まれるアクチニジンやククミシン、イチジクのフイシン、パイナップルのプロメリンなど植物由来の酵素で、中でも食肉軟化剤として歴史が古く、安全性が高く、使用実績が高いのはパパインである。
パパインは分子量約23000の蛋白質で、温度やpHにあまり左右されず、強力に蛋白質を分解する酵素である。
しかしながら、ただ単にパパインを速やかに浸漬あるいは分散させる場合、大きな肉塊では中まで酵素が浸透せず、また均一な分散が得られないという加工処理上の課題があり、優れた加工法の現れてないのが現状である。
本発明は、これらの課題を所定濃度の塩類溶液、あるいは、所定濃度のアルカリ剤溶液、あるいはそれらの組合せで作られた溶液で、コラーゲン、エラスチンなどの酸、または、アルカリでは未溶解といわれている蛋白質を溶解し、その溶解性と高い浸透性、吸収分散性、均一性による生化学反応によるゲル化能を利用して酵素を確実に含浸させ、酵素の使用量を従来によりも大幅に少なくしながら目的の効果を発現させ、冷凍変性や硬いために未利用・低利用であった魚介・畜類肉を自在に軟化させて利用可能としているものである。
そのうえ、本発明の動物性蛋白質からなる食品及び同動物性蛋白質の軟化方法では、動物性蛋白質の取り扱い上の安全性も高くし、しかも安定性に優れ、日持ちを良くすることができる。さらに、冷凍肉やチルド肉は短時間で軟らかくすることができるとともに、今までできなかった冷凍変性した動物性蛋白質の本格的な熟成を安定的に行いながら加工可能とし、未利用・低利用であった動物性蛋白質を美味しくして、食材の幅広い利用加工を可能とすることができる。しかも低コストかつ短時間の簡単な作業で動物性蛋白質を改質して新食材とすることができ、そのうえ調理後もソフトな食感を維持するとともに、冷めても軟らかい状態を維持可能とした動物性蛋白質を大量生産可能とすることができる。
特に、酵素としてはプロテアーゼ、アミラーゼのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物が好ましく、望ましくは様々なテストの結果、プロテアーゼの中でもやはりパパイン、アクチニジン、ククミシンであった。
また、コラーゲン、エラスチンなどの酸、または、アルカリでは未溶解といわれている蛋白質を極めて短時間で溶解するとともに、その溶解性と高い浸透性、分散性による生化学反応によるゲル化能を利用するためには、塩類溶液は、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩化物からなる溶液が好ましく、特に、NaCl、KCl、CaCl、MgClのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を水及び/または動物性蛋白質のドリップに溶解し、1.5〜7.0mol/kgの濃度としていることが望ましい。
また、アルカリ剤溶液は、アルカリ金属炭酸塩とリン酸塩類からなる溶液が好ましく、特に、NaHCO、NaCO、KHCO、NHHCO、KCO、CaCO、NaOH、KOH、Ca(OH)、リン酸一ナトリウム、リン酸ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸三カリウムのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を水及び/または動物性蛋白質のドリップに溶解し、0.1〜3.0mol/kgの濃度としていることが望ましい。
さらに、本発明の好ましい態様として、本発明における動物性蛋白質の軟化方法においては、副資材として糖類、ビタミン類、酒類、ハーブ類、大豆蛋白質、リンゴ醗酵物、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳清蛋白、油脂、脂肪、調味料、香辛料、香料、天然保存料、熟成抑制剤の少なくともいずれか1種、好ましくは2種以上を含有している。
これらの副資材を含有させることにより、動物性蛋白質の美味しさを可及的に向上させることができるとともに、その後の調理を容易として、加熱してすぐに食すことができるようにしたり、そのまま加工食品の中間材料や簡便食品・中食、作りおき惣菜としたりして使用することができる。かかる食品を用いることによって、一工程による短時間の省力化された調理が可能な使用簡便調理済みの食品を提供でき、食生活を向上させることができる。
なお、混合溶液を動物性蛋白質に含浸させる際には、通常用いられる注入法、噴霧法、浸漬法、塗着法、混練混和法による含浸が行なわれ、また、塩溶促進・ゲル化熟成法としてマッサージ法、バイブレーション法、あるいは、混練混和法のいずれかの手法を用いている。これらの手法を用いることにより、動物性蛋白質に混合溶液を速やかに略均一に含浸させることができ、動物性蛋白質全体を略均一に軟化させることができる。
以下、本発明に係わる動物性蛋白質の軟化方法についての実施態様をより詳細に説明する。
なお、本発明は、下記に説明する実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨並びに範囲から逸脱しないあらゆる変法並びに改良法も当然のこととして本発明の範囲に包含されるものである。
以下に説明する動物性蛋白質の軟化方法は、塩類と、アルカリ類と、酵素とを動物性蛋白質に添加することにより、塩溶々解とゲル化酵素反応とを同時に生じさせていることが要旨である。
本発明に係わる動物性蛋白質としては、上記したように、淡水、海水産の魚介類その他、鯨や海豚、沖アミ類を含む海産動物及び畜類の精肉のみならず、食肉として牛、馬、羊、鳥などの畜肉、猪や鹿などの獣肉等全般の簡便軟化法に関するものである。さらに、魚介類,畜肉類の硬いモモ肉、ウデ肉、内臓肉や老齢牛、豚、羊肉や廃鶏等、あるいは冷水海等の多獲性白身魚、深海魚、赤魚、青魚類等の冷凍変性に弱い魚介類や淡水魚介類があげられる。それら低利用または未利用水産資源などを晒または無晒しで、スリ身からあらゆる形状肉まで各種肉類を含む数多くの課題を有している動物性蛋白である。
また動物性蛋白質としては、例えば冷蔵、冷凍、チルド、氷温(パーシャルフリージング)などに使用でき、また動物性蛋白質の形状については望ましくは形状肉が良く、小さい肉片や屑肉等であれば、例えばスリ身、ミンチ肉、落とし肉でも良く、形状を生かすことができるものとして、切り身、フィレ、ラウンド、セミドレス、ドレス、バンドレス、チャンク、ブロック、ステーキ等があげられる。
本発明に係わる動物性蛋白質の軟化において使用できる塩類としては、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩化物があげられ、かかるアルカリ金属もしくはアルカリ土類塩化物としてはNaCl、KCl、CaClまたはMgClがあげられる。また使用されるアルカリ類としては、アルカリ金属炭酸塩があげられ、かかるアルカリ金属炭酸塩としては、例えばNaHCO、NaCO、KHCO、NHHCO、KCO、CaCO、NaOH、KOH、Ca(OH)があげられる。リン酸塩類としては、例えばリン酸一ナトリウム、リン酸ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸三カリウムがあげられる。上記塩類及びアルカリ類はいずれも単独で、もしくは互いに組み合わせた混合物として使用することができる。
さらに、本発明において使用される酵素としては、例えば果実またカビ由来のプロテアーゼやアミラーゼがあげられる。特に、パパイヤから調製されるパパインや、キウイフルーツやメロンに含まれるアクチニジン及びククミシンが食肉軟化には最も適している。
本発明に係わる動物性蛋白質の軟化においては、塩類と、アルカリ剤と、酵素とからなる動物性蛋白質軟化成分を溶液の状態で使用し、かかる軟化成分をそれぞれ個別の溶液として使用したり、またはそれらのいずれかの混合物を含んだ溶液として使用したりすることができるが、これらの軟化成分を全て含んだ混合溶液として使用するのが効果的であり好ましい。また、塩類と、アルカリ剤と、酵素を粉末のまま、あるいは、または造粒して、あるいは、混合溶液を粉末化して顆粒状として使用する場合もある。
特に、本発明では、粉末状とした塩類粉末と、粉末状としたアルカリ剤粉末と、粉末状とした酵素とを混合して混合粉末を生成し、同混合粉末を所定量の溶媒に溶解させることにより混合溶液を作成している。
この場合、混合粉末を所定量の溶媒に溶解させた際に、混合溶液中の塩類粉末の成分濃度が1.5〜7.0mol/kg、アルカリ剤粉末の成分濃度が0.1〜3.0mol/kgとなるようにするとともに、酵素濃度が0.01〜1.0g/kgとなるようにしている。そして、酵素濃度を、動物性蛋白質100wt部に対して0.001〜0.1wt部程度含浸させることが望ましい。
特に、上記したように、塩類粉末には、NaCl、KCl、CaCl、MgClのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を用い、アルカリ剤粉末には、NaHCO、NaCO、KHCO、NHHCO、KCO、CaCO、NaOH、KOH、Ca(OH)、リン酸一ナトリウム、リン酸ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸三カリウムのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を用い、酵素には、プロテアーゼ、アミラーゼのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物、特にパパインを用いている。
そして、混合粉末は所定量毎に微粉末や顆粒状として取り扱いやすくしている。
また、溶媒には、水、または、動物性蛋白質のドリップ、若しくは、水と動物性蛋白質のドリップとの混合液を用いている。
水、または、動物性蛋白質のドリップ、若しくは、水と動物性蛋白質のドリップとの混合液である所定量の溶媒に粒状となった混合粉末を溶解させることにより混合溶液を生成している。特に、旨味成分が含まれる原料肉もしくは他の肉からのドリップを添加した場合には、動物性蛋白質の旨味を向上させることができる。
上記のようにして生成した混合溶液は、塩類が通常1.5〜7.0mol/kg、アルカリ類が通常0.1〜3.0mol/kgとなるようにしており、さらに、酵素濃度が0.01〜1.0g/kgとなるようにしている。なお、好ましくは、塩類が通常1.5〜6.0mol/kg、アルカリ類が通常0.1〜1.0mol/kg、酵素濃度が0.05〜0.5g/kgである。この混合溶液を、動物性蛋白質100wt部に対して5〜15wt部程度含浸させることが望ましい。これにより、動物性蛋白質100wt部に対して酵素濃度を0.001〜0.1wt部程度含浸させるようにしており、好ましくは、酵素濃度を0.005〜0.05wt部程度含浸させるようにしている。
また、かかる混合溶液には、加工食品において常用されている副資材を添加することができ、かかる副資材としては、例えば糖類、ビタミン類、酒類、ハーブ類、大豆タンパク類、リンゴ醗酵物、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳清タンパク、調味料、油脂、脂肪、香辛料、香料、天然保存料、熟成抑制剤などがあげられる。
本発明に係わる動物性蛋白質の軟化方法は、原料肉としての食肉に混合溶液を含浸させることからなっているが、この含浸処理方法としては、加工食肉を製造する分野において通常使用されている方法に従って行なうことができる。
また、本発明の動物性蛋白質の軟化方法においては、動物性蛋白質に混合溶液を含浸させた後に、さらに常法に従ってバイブレーション、タンブリングなどを行い、熟成させることによって、混合溶液を食肉全体に効率的に浸透、分散させることができる。
このように、本発明において多種多様な動物性蛋白質を美味しく軟らかくすることができるようになったのは、その詳細なメカニズムは不解明であるが、所定割合の塩類及びアルカリ類溶液に所定割合の酵素を混合した混合溶液を使用することによって、塩溶軟化効果とともにゲル化能が著しく付与され、かつ酵素による軟化反応とあいまって、動物性蛋白質の肉組織が適度に軟化したものと考えられる。
また、本発明の方法により軟化された動物性蛋白質は、体液や細胞が糊状化されて保水性が著しく高くなり、また含浸された混合溶液が貯蔵、解凍並びに調理などの間にドリップとして流出することを著しく抑制して冷凍変性を防止するとともに、その修復復元を可能とすることができる。さらに、動物性蛋白質中の水分が糊状化していることにより冷凍時に氷結化することを防止でき、貯蔵中において動物性蛋白質の品質を安定化させることができるので、動物性蛋白質を利用し易くすることができ、食品としての品質を高めることができるものである。
そのうえ、大量の酵素を用いる必要がなく、短時間で動物性蛋白質を軟らかくすることができ、酵素の使用量の大幅な低減を実現させ、使い易く、かつ、品質安定性の向上とコストダウンを可能とすることができる。
さらに、本発明の動物性蛋白質の軟化方法を用いた場合、動物性蛋白質を段階的なムラがなく均一な好みの軟らかさに軟化することができるので、電子レンジ等によるマイクロ波の照射によって内部まで均一にかつ安定的に加熱することができる。
従って、あらかじめ本発明の動物性蛋白質の軟化方法による処理を行なった動物性蛋白質加工食品を準備しておき、客のオーダーに応じて調理済みのチルド食品または冷凍食品を電子レンジで暖めるだけで提供する飲食業システムで、多品種のメニューを取り揃えることが可能である。
また、このような飲食業システムでは、電子レンジによって調理する設備やスペースがあればよく、しかも、専門の調理人が不要であるので、飲食業システムの運営コストを大きく低減させることができる。
以下において、具体的な実施例を示しながら説明を行なう。
国産廃鶏モモ肉を解凍し、2850gを得た。この解凍肉を4等分して試験肉とした。そして、食塩6mol溶液と、重曹0.4mol溶液とを混合して食塩重曹混合液を作成し、かかる食塩重曹混合液を、試験肉100wt部に対して12wt部とし、それに酵素を0.006wt部、0.012wt部、0.018wt部を混合した3種類の混合溶液を作成した。
この3種類の混合溶液を試験肉にそれぞれ添加し、3種類の処理済み試験肉を作成した。
この3種類の処理済み試験肉、及び、無処理試験肉をそれぞれ混練混和し、その後、タンブラーを約15分間行い、30日間冷蔵熟成、冷凍保存した。解凍後、フライパンで裏表を約4分間焼成し、試食を行った。結果は次の表1のようになった。
Figure 2007319166
酵素配合により軟化度が非常に変動するが、このテストではNo.2の配合が全般的に良かった。
米国産ハンキング肉(冷凍)を解凍し、2160gを得た。このハンキングを4等分して試験肉とした。そして、食塩2.0mol溶液と、重曹0.2mol溶液とを混合して食塩重曹混合液を作成し、かかる食塩重曹混合液を、試験肉100wt部に対して10wt部とし、それに酵素を0.006wt部、0.012wt部、0.018wt部を混合した3種類の混合溶液を作成した。
この3種類の混合溶液を試験肉にそれぞれ含浸させ、3種類の処理済み試験肉を作成した。
この3種類の処理済み試験肉、及び、無処理試験肉を、その後、30日間冷蔵熟成を行い、冷凍保管した。これを解凍後、裏表約10分間焼成し、試食を行った。その結果は次の表2のようになった。
Figure 2007319166
酵素配合により軟化度が非常に変動するが、このテストではNo.2の配合が全般的に良かった。
チルド秋鮭・ブナ系(国産)を処理し、精肉3000gを得た。これを4等分し試験肉とした。そして、食塩2.8mol溶液と、NaCO濃度1.8mol溶液とを混合して塩アルカリ混合液を作成し、かかる塩アルカリ混合液を、試験肉100wt部に対して10wt部とし、それに酵素を0.003wt部、0.006wt部、0.009wt部を混合した3種類の混合溶液を作成した。
バイブレーション処理を施しながらこの3種類の混合溶液を試験肉に含浸させ、3種類の処理済み試験肉を作成した。
この3種類の処理済み試験肉、及び、無処理試験肉を焼成し、試食を行った。その結果は次の表3のようになった。
Figure 2007319166
本試験においては、無処理肉は高熱により肉組織が溶解し、ボロボロになっていた。肉が硬く、保水性が悪く、味・肉色とも悪かった。そのうえ、焼き縮みが大きかった。
No.1〜No.3の試験品は肉がふっくらとソフトであって、溶解物がなく、弾力があり、色も良かった。酵素の影響として本来の肉組織を活かした軟らかさがあった。また、日持ちが非常に良かった。ただし、酵素の量が対肉0.009wt部となるとやや軟化しすぎた感がした。秋鮭は畜肉類に比べて肉質が軟らかいので、酵素は少なくても軟化効果があり、缶詰としても優れた効果があった。
冷凍トリ、モモ肉(国産)を解凍し、1200gを100g毎にカットして試験肉とした。そして、等量ずつのNaCl溶液(濃度6.0mol/Kg)とNaHCO溶液(濃度0.42mol/Kg)と、さらに、ビタミンE0.05%、ビタミンC0.05%、ソルビット0.7%、グルソー0.1%、酵素(パパイン)0.012%を混合溶解して生成した混合溶液145gを、上記の試験肉1200gとタンブラーにて約15分間処理を行い、処理済み試験肉とした。
処理済み試験肉と無処理試験肉とにそれぞれ塩、コショウをつけ、軽く焼き上げて冷凍を行い、試食前に電子レンジに冷凍肉200gずつを入れ、マイクロ波を約4分間照射して照り焼肉とした。その評価点は次の表4のようになった。なお、評価は各項目10点満点で、計70点満点でとしている。
Figure 2007319166
処理済み試験肉の方が全ての項目にわたって優れており、食品としての機能を向上させることができる。
老齢牛ロース肉(冷凍・国産)を解凍し精肉300gを得た。食塩濃度2.0mol/kg溶液36g(対肉12wt部)に酵素0.036g(対肉0.012wt部)を溶解して酵素混合液を生成し、この酵素混合液に100gずつにカットした処理肉を15分間浸漬した。その後、タンブリングを約10分間行なって冷凍保管を行なった。
30日後、処理肉を解凍したがドリップは見られなかった。そして、その処理肉をフライパン(約350℃)で裏表約7分ずつ焼成した。焼成歩留まりは88.5%であった。処理肉は塩溶溶解と酵素反応によってゲル化し、各部分とも略均一な軟らかさとなっていた。
また、処理肉を冷蔵庫で2〜10℃で保管し、3時間後、6時間後、24時間後、48時間後、3日後、4日後、5日後、6日後ごとに品質確認を行なったが、品質、中身ともに良好で、使用しやすくなった。
廃鶏モモ肉(冷凍・国産)を解凍し精肉300gを得た。廃鶏全水分は約70%(内自由水50%)であった。食塩6g(対肉2wt部)と、酵素(パパイン)0.072g(対肉0.024wt部)を廃鶏モモ肉(皮なし)300gに添加し、混練混和を約10分間行なって、さらに添加剤の含浸を行なった。
食塩及び酵素入製剤は廃鶏モモ肉中の自由水150gと反応し、塩分濃度は0.7mol/kgであり塩溶溶解ゲル化反応と酵素反応によって硬いモモ肉の軟化を行なった。
処理肉を冷凍保管し、30日後に解凍し、100gずつにカットしたがドリップはほとんど見られなかった。そして、その処理肉をホットプレート(約350℃)で裏表約7分ずつ焼成した。焼成歩留まりは87.8%であった。
また、処理肉を冷蔵庫で2〜10℃で6日間保管し、品質確認を行なったが、品質には何ら問題がなく、処理肉は美味であり、ソフトであった。
一方、比較肉として同一原料肉を冷凍保管し、解凍したがドリップが8.5%発生し、焼成しても硬くバサバサしたものであった。焼成歩留まりも78.4%と低く、処理肉と比較肉との差は明白であった。
ホキ肉(冷凍・ニュージーランド産)を解凍し、2000gを得た。この解凍肉を4等分して試験肉とした。そして、食塩4.0mol/kg溶液と、重曹0.1mol/kg溶液とを混合して食塩重曹混合液を作成し、かかる食塩重曹混合液を、試験肉100wt部に対して15wt部とし、それに酵素を0.006wt部、0.012wt部、0.018wt部を混合した3種類の混合溶液を作成した。
この3種類の混合溶液を試験肉にそれぞれ添加し、3種類の処理済み試験肉を作成した。
こ3種類の処理済み試験肉、及び、無処理試験肉を12時間冷蔵熟成し、冷凍保存を行なった。30日の冷凍後、解凍し、裏表約4分間焼成し、試食を行った。その結果は次の表5のようになった。
Figure 2007319166
酵素の効果としては、No.2の配合が全般的に良好であった。
まず、スケトウダラ(冷凍・北海道産)の頭と内臓を取り除き、洗浄した魚体を5mmφの採肉機で落し身とし、さらに2mmφの採肉機にかけて小骨を取り除いた。
このミンチ状スケトウダラ3000gをミキサーに入れ、0.3mol/kgとした120ccの重曹溶液にソルビット120g、ミリン50g、ビタミンC及びE剤5gを溶解し、さらにパパイン酵素0.6gを溶解して生成した酵素混合液をミキサー内に噴霧しながらミキサーを低速で作動させ、酵素混合液をミキサー内に入れた後にさらにミキサーを約5分間連続運転させ、乳化・ゲル化能付与前の熟成処理を行なった。
その後、ミキサー内の処理肉を2つに分け、一方はそのまま冷凍保存した。他方は、カッターミキサーに入れ、カッターを低速運転させながら4.5mol/kgの濃度の食塩水25ccに日本酒25ccを混合し、グルタミン酸ソーダ2.5gを溶解させた塩類溶液を噴霧し、塩類溶液の噴霧後、カッターを高速運転に切換えて約3分間連続運転させ、塩溶を促進し、ゲル化能付与を行なって熟成促進させた。
冷凍保存したスケトウダラ無晒しスリ身と、塩を添加したスケトウダラ無晒しスリ身をそれぞれ直径約100mm、厚み約10mmの円板状として約165℃の植物油で約3分間揚げて天麩羅とした。
冷却した天麩羅に対して折り曲げテストを行なったところ、冷凍保存したスケトウダラ無晒しスリ身からなる天麩羅では5個中3個が十分な柔軟性を示し、塩を添加したスケトウダラ無晒しスリ身からなる天麩羅では5個中4個が十分な柔軟性を示した。
なお、冷凍保存したスケトウダラ無晒しスリ身からなる天麩羅と、塩を添加したスケトウダラ無晒しスリ身からなる天麩羅は、どちらも無晒しスリ身を使用したにもかかわらず、魚臭もなく歯ごたえも良く、美味しく食べることができた、すなわち、魚肉の歩留まりが向上し、栄養価の優れた新しい練り製品を提供可能となった。
蛋白原料として、沖アミのむき身(冷凍・北海道産)、サケ産卵カス(冷凍・北海道産)、イカ(冷凍・国内産)及び牛肉屑肉(冷凍・国産肉)を各300g準備した。
予備粉砕した沖アミ、サケ産卵カス、イカ、牛肉をそれぞれ高速カッターに投入し、高速微粒化を開始するとともに3.5mol/kgの食塩溶液25ccと、砂糖15gと、グルタミン酸ソーダ3gと、酵素0.06gとを加え、その後、1.0mol/kgの重曹溶液25ccを加えた。
高速カッターを作動させてから約2分30秒後に水を50cc添加して、さらに約30秒間高速カッターを作動させ、肉糊状の蛋白食品素材を得た。蛋白食品素材の平均流度は、それぞれ0.05〜0.7mmであった。
各製品を用いて官能試験用サンプルとなる天麩羅を作成し、それぞれ10人の試験者に配り、色、テクスチャー、風味、旨味の項目に対して5段階評価(優−5点、良−4点、普通−3点、やや劣る−2点、劣る−1点)を行なった。なお、比較対象として、それぞれの蛋白原料に、食塩溶液及び重曹溶液の代わりに水を添加して生成したも比較例を作成し、同様に官能試験を行なった。
1)沖アミの場合
Figure 2007319166
実施例では、天麩羅はピンク色で見た目の良さは一番優れている。エビ・カニの風味が良く出ていて、表面の焼色が黄身の焦げ目風で良かった。
比較例は、結着性が悪く、成形が困難であった。加熱するとバラバラになった。焼縮みが激しく、焼成歩留まりが悪かった。そのうえ保水性も悪かった。
2)サケ産卵カスの場合
Figure 2007319166
実施例では、天麩羅はソフトで食感が良く、味、表面の焼色ともに良かった。自然風味等に優れていた。
比較例は、ハンバーグ状になり、纏まりは良いが、加熱すると崩れやすかった。色調が急速に低下した。
3)牛肉屑肉の場合
Figure 2007319166
実施例では、旨味、テクスチャーは著しく優れていた。ただし肉色がやや劣るので、他の食品と組み合わせて肉糊の特徴を出すと良いと思われた。肉中の脂味を感じにくかった。
比較例は、肉がばらけやすく、結着性に欠けていた。また旨味も欠けていた。
4)イカの場合
Figure 2007319166
実施例では、スリ身の水添加性が優れていた。強い弾力性を有し、味はやや劣ると思われるが、歯切れが良かった。色が白いので中華料理向けと思われる。他のスリ身に添加して利用することによりスリ身製品の足を強くすることが可能である。
なお、比較品は、成形性が非常に悪いために作成できなかった。
以上の1)〜4)のように、中間製品化が可能になったので、中間製品を冷凍し、消費地で最終製品を生産でき、多品種少量生産適した蛋白食品素材を提供できる。
老齢牛ロース肉(冷凍・国産)を解凍し精肉300gを得た。重曹溶液濃度0.3mol/kgの溶液45g(対肉15wt%)に酵素0.054g(対肉0.018wt部)を溶解して酵素混合液を生成し、この酵素混合液に100gずつにカットした処理肉を約10分間浸漬した。その後、タンブリングを約15分間行なって冷凍保管を行なった。
30日後、処理肉を解凍したがドリップは見られなかった。そして、その処理肉をフライパン(約350℃)で裏表約7分ずつ焼成した。焼成歩留まりは87.4%であった。処理肉は弛緩膨張と酵素反応によって各部分とも略均一な軟らかさとなっていた。
また、処理肉を冷蔵庫で2〜10℃で7日間保管して品質確認を行なったが、品質、中身ともに良好で品質上の問題はなく、調理後もソフトで美味であった。
一方、比較肉として同一肉を冷凍保管し、解凍したがドリップが5.4%発生した。また、比較肉を焼成しても硬くバサバサしたものであった。焼成歩留まりも78.5%と低く、処理肉と比較肉との差は明白であった。
食塩36wt部、重曹15wt部、糖類30wt部、抗酸化剤4.99wt部、酵素0.01wt部、呈味料14wt部からなる軟化剤を調製し、以下のように使用した。
蛋白原料には、北海道釧路産のイカを30日間冷凍し、その後解凍したものを用いた。かかるイカ220gを一つの試料とし、その一つには軟化剤20gを100ccの水に溶解させて生成した軟化剤溶液のうち26.4g(試料に対して12wt部)を添加した。軟化剤溶液を添加した試料は、その後、直ちにバイブレータによる約10分間の振動を加えて軟化剤溶液を浸透させた。
対照品のイカには何も加えず、また、バイブレータによる処理も行なわなかった。
その後、軟化剤溶液を添加したイカ(以下、「処理品」と呼ぶ)と、無添加のイカ(以下、「未処理品」と呼ぶ)とをそれぞれ冷蔵庫で12時間保管して、外観と触感を比較した。
さらに、処理品と未処理品とをカットしてフライパンでソテーした後、外観と食感を比較した。食感は、ソテー直後だけでなく、ソテー後に1時間放置した状態に対しても比較を行なった。結果は、下表の通りである。
Figure 2007319166
処理品の方が明らかに優れており、食品としての品質を向上させることができた。
食塩38wt部、重曹15wt部、糖類33wt部、抗酸化剤4.99wt部、酵素0.01wt部、呈味料9wt部からなる軟化剤を調製し、以下のように使用した。
蛋白原料には、市販の冷凍ムキエビを解凍したものを用いた。かかるムキエビ22gを一つの試料とし、その一つには軟化剤20gを100ccの水に溶解させて生成した軟化剤溶液のうち2.6g(試料に対して12wt部)を添加した。軟化剤溶液を添加した試料は、その後、直ちにバイブレータによる約10分間の振動を加えて軟化剤溶液を浸透させた。
対照品のムキエビには何も加えず、バイブレータによる処理も行なわなかった。
その後、軟化剤溶液を添加したムキエビ(以下、「処理品」と呼ぶ)と、無添加のムキエビ(以下、「未処理品」と呼ぶ)とをそれぞれ冷蔵庫で12時間保管して、外観と触感を比較した。
さらに、処理品と未処理品とをフライパンでソテーした後、外観と食感を比較した。食感は、ソテー直後だけでなく、ソテー後に1時間放置した状態に対しても比較を行なった。結果は、下表の通りである。
Figure 2007319166
処理品の方が明らかに優れており、食品としての品質を向上させることができた。
食塩35wt部、重曹13wt部、糖類30wt部、抗酸化剤4.95wt部、酵素0.05wt部、呈味料17wt部からなる軟化剤を調製し、以下のように使用した。
(1)キューブ状マグロ生食刺身の製造
冷蔵マグロ肉2kgをサイレントカッターで約80秒間チョップしながら、軟化剤40gを200ccの水に溶解させて生成した軟化剤溶液200g(試料に対して10wt部)を添加した。
その後、かかるマグロ肉を直ちに肉押出成型機にて、20mm×25mm×20mmのキューブ状に成型し、これを複数個ずつトレーに載置してトレーを封止し、トンネルフリーザで急速凍結させ、化粧箱に箱詰めして冷凍保管した。
(2)キューブ状アボカド生食刺身の製造
皮を除去したアボカドの果肉2kgをサイレントカッターで約15秒間チョップした。
その後、かかる果肉を直ちに肉押出成型機にて、20mm×25mm×20mmのキューブ状に成型し、これを複数個ずつトレーに載置してトレーを封止し、トンネルフリーザで急速凍結させ、化粧箱に箱詰めして冷凍保管した。
上記したように保管したキューブ状マグロ肉とキューブ状アボカドとをそれぞれ解凍し、組み合わせて食することにより新規の食品を提供可能とすることができる。
これにより、魚肉、畜肉、果肉の数多くの組み合わせからなる、新たな食文化を提供することができる。

Claims (3)

  1. NaCl、KCl、CaCl、MgClのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を水及び/または動物性蛋白質のドリップに溶解し、1.5〜7.0mol/kgの濃度とした塩類溶液を3〜12wt部と、
    NaHCO、NaCO、KHCO、NHHCO、KCO、CaCO、NaOH、KOH、Ca(OH)、リン酸一ナトリウム、リン酸ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸三カリウムのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を水及び/または動物性蛋白質のドリップに溶解し、0.1〜3.0mol/kgの濃度としたアルカリ剤溶液を1〜10wt部と、
    パパイン、アクチニジン、ククミシンのいずれか一つ、またはこれらのうちのいずれか二種若しくは三種の組合せからなる粉末とした酵素粉末0.001〜0.1wt部とを混合してなる混合溶液を、
    100wt部とした動物性蛋白質に含浸させることにより、同動物性蛋白質に塩溶々解ゲル化酵素反応を生じさせて軟化させたことを特徴とする動物性蛋白質からなる食品。
  2. 動物性蛋白質100wt部に対して、
    NaCl、KCl、CaCl、MgClのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を水及び/または動物性蛋白質のドリップに溶解し、1.5〜7.0mol/kgの濃度とした塩類溶液を3〜12wt部と、
    NaHCO、NaCO、KHCO、NHHCO、KCO、CaCO、NaOH、KOH、Ca(OH)、リン酸一ナトリウム、リン酸ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸三カリウムのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物を水及び/または動物性蛋白質のドリップに溶解し、0.1〜3.0mol/kgの濃度としたアルカリ剤溶液を1〜10wt部と、
    パパイン、アクチニジン、ククミシンのいずれか一つ、またはこれらのうちのいずれか二種若しくは三種の組合せからなる粉末とした酵素粉末0.001〜0.1wt部とを混合してなる混合溶液を、
    動物性蛋白質に含浸させることにより、同動物性蛋白質に塩溶々解ゲル化酵素反応を生じさせて軟化させることを特徴とする動物性蛋白質の軟化方法。
  3. NaCl、KCl、CaCl、MgClのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物からなる粉末状の塩類粉末と、
    NaHCO、NaCO、KHCO、NHHCO、KCO、CaCO、NaOH、KOH、Ca(OH)、リン酸一ナトリウム、リン酸ニナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、リン酸三カリウムのうちいずれか一種もしくはこれらの混合物からなる粉末状のアルカリ剤粉末と、
    パパイン、アクチニジン、ククミシンのいずれか一つ、またはこれらのうちのいずれか二種若しくは三種の組合せからなる粉末状とした酵素とを混合して生成した混合粉末からなる軟化剤であって、
    同混合粉末を所定量の溶媒に溶解させることにより塩類粉末の成分濃度が1.5〜7.0mol/kg、アルカリ剤粉末の成分濃度が0.1〜3.0mol/kgとなるとともに、酵素濃度が0.01〜1.0g/kgとなった混合溶液を生成して、この混合溶液を100wt部の動物性蛋白質に対して、酵素を0.001〜0.1wt部含浸させることにより動物性蛋白質を軟化させる軟化処理に用いる軟化剤。
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