JP2012135274A - 魚介類加工品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】魚介類に油脂を注入しその組織中に分散させる魚介類加工品の製造方法について、魚介類の組織中に、乳化調整油脂をpH調整剤と共に、インジェクターを用いて注入し、それによって上記組織中に油脂成分を保持させ、上記組織中に油脂成分を保持させた魚介類を密封包装状態とし、真空脱気することによって、組織中に油脂成分を拡散、浸透させ、上記油脂成分の拡散、浸透した魚介類を凍結処理することによって、乳化調整油脂を油脂、調味水溶液及び乳化剤に分離し、乳化油脂による白濁した色相を解消させた構成とする。
【選択図】 なし
Description
A.油脂を、親和性の高い水溶液状にして分散する乳化技術。
B.pH調整剤等を利用した浸透、保水技術。
C.真空脱気による成分の浸透技術。
D.成分の、インジェクターと通称される塩水・調味液注入機による注入技術。
<本発明に係る製造方法の手順>
本発明の製造方法の工程を、順を追って示すと以下のとおりである。
1.対象魚介類の準備
冷凍保管されていた魚介類を解凍し、公知の必要な前処理を行い、割裁機を用いて割裁処理し、二ツ割、フィレを形成し、それの尾部、鰭等を取り除き、汚れを洗浄する。上記フィレとある形態に変えてチャンクとすることもあり、その他、魚介類の種類ないしは商品形態など、必要に応じて対象魚介類を準備することができる。
2.乳化調整油脂等の調製
乳化調整油脂の成分及び配合比率については、表4及び表5に具体的に示しているが、市販品の中に使用可能なものについて、その一例を示すと以下のとおりである。ヨークランF:54.94%(キューピータマゴ株式会社製乳化油脂:植物油脂50.0%、食塩9.0%、砂糖1.0%、調味料2.0%、乳化剤2.0%、残部清水36.0%)、コンブ液2.75%、乳酸ナトリウム2.75%、品質保持剤0.73%を混合して乳化調整油脂を調製する。
上記調整された乳化調整油脂中には、pH調整剤0.51%が品質保持剤の中に含まれている。品質保持剤には上記pH調整剤の他、0.08%のトレハロース、0.01%の酸化防止剤、0.02%のデキストリン、及び0.11%の調味料、砂糖、食塩が含まれている。上記の成分比率は列挙した成分を構成要素とする乳化調整油脂全量を100%としたときの割合である。この乳化調整油脂と、食塩(2.20%)及び水(36.63%)を夫々(61.17:2.20:36.63の割合で)混合し、インジェクターによって注入すべき注入液を調製する。
3.注入液の魚介類への注入
インジェクターを始動し、圧力、搬送ラインの速度を設定し、上記注入液の注入率を設定する。上記準備がなされた魚介類を搬送ラインに投入し、設定に従って、インジェクターを用いて上記注入液を注入し、それによって上記組織中に油脂成分を保持させる。油脂成分の保持された魚介類は、濃度5.00〜7.00%の塩水を用いてその表面に残置している油脂をすすぎ、搬送ラインから取り出し、容器を用いて水切りを行う。
4.魚介類への注入液の分散
上記組織中に油脂成分を保持させた魚介類を密封包装状態とし、真空脱気することによって、組織中に油脂成分を拡散、浸透させる。密封包装にはガスバリヤー性のプラスチックシートから成るものを用い、その内部に上記魚介類を配置した上で包装体を密封し、真空ポンプを用いて包装体内部を130〜200hPaの減圧状態とし、3.6〜4.0秒間上記減圧状態を維持する。
5.冷凍処理
上記目的油脂成分の拡散、浸透した魚介類を凍結処理する。凍結処理は前工程で密封包装した魚介類を凍結処理用コンテナの内部に移して行い、4.0〜10.0℃にて6.0〜24.0時間程度の時間をかけて行う。この凍結処理によって、乳化調整油脂を油脂、調味水溶液及び乳化剤に分離し、乳化油脂による白濁した色相の解消した製品を提供することができる。なお、凍結処理に先立って、金属探知機による異物検査、皮目、身色等の外観選別を行うことが望ましい。
6.保管等
前工程において完成した製品は、販売までの間、冷凍保管する。保管にはマイナス18.0〜マイナス25.0℃の温度を維持する。保管中の製品は注文に応じて出荷するので、保管前の適当な時期に内容量を計量し、出荷の前には塩分基準、微生物検査を実施しておくことが望ましい。なお、製品は冷蔵パックに包装した形態で行うことができるが、この冷蔵パックを予定して工程4で使用する包装体を選択しても良い。
<インジェクターの設定条件その1>
表1
表1において、搬送速度とあるのは本発明の方法を適用する対象魚介類を載せて搬送するコンベアの速度、注入回数とあるのはインジェクターの針状ノズルを魚介類の組織に刺入する回数ないしは速度、ピッチ幅とあるのは多数の針状ノズルの配置間隔、ピッチ×ショットとあるのは搬送速度とピッチ幅の積を夫々示しており、ピッチ×ショットは油脂注入量に比例する。
表2
表2は、乳化調整油脂等を針状ノズルから魚介類の組織中に注入する際の注入圧力を示しており、秋鮭、サバは注入圧力が高く、かつ、注入量も多目であり、ブリ、赤魚は注入圧力が低く、かつ、注入量も少な目であり、これに対しイナダはその中間である。これは、対象魚肉の身質強度に応じて注入圧力を変化させた例であるが、表2の範囲は魚介類に対する注入圧力の範囲を概ねカバーしているので、本発明の方法における乳化調整油脂等の注入圧力としては、表2の結果の包含される0.3〜1.4Mpaの範囲の適当であることが分かる。表1と表2を見ると、搬送速度の遅い秋鮭、サバ等に対しては注入圧力を高目に設定し、搬送速度の早いブリ、赤魚等に対しては注入圧力を低目に設定していることが分かるが、これも上記対象魚肉の身質強度によるものである。
表3
表3は針状ノズルの配置範囲を密度とともに示している。横4針が25セットで計100本、それが4列あるから合計400本となる。なお、前記のインジェクターを使用する場合には、4針×25セット(100本)から注入可能である。
表6
表6はそれぞれ大きさの異なる秋鮭1、2、3、4、天然ブリ1、2を対象魚介類とし、それらの各フィレ肉に、表4及び表5の配合比率を有する乳化調整油脂をpH調整剤と共に、表1ないし3の設定条件にて、インジェクターを用いて注入した実施例1、2、3を示している。
表7
表7における魚介類は表6に示したのと同じである。また、既存粗脂肪、注入油脂量及びそれらの合計である粗脂肪合計の単位は100分率(%)である。
表8
表8によれば、ほぼ全ての魚肉について満足すべき結果が得られており、利用度の低い魚介類の食味、食感を改善することができたことが分かる。
表9
表9によれば、予想したとおりであるが、肉質、うま味、食感の何れも本発明を適用した魚介類に劣ることが分かる。
Claims (3)
- 魚介類に油脂を注入しその組織中に分散させる魚介類加工品の製造方法であって、魚介類の組織中に、乳化調整油脂をpH調整剤と共に、インジェクターを用いて注入し、それによって上記組織中に油脂成分を保持させ、上記組織中に油脂成分を保持させた魚介類を密封包装状態とし、真空脱気することによって、組織中に油脂成分を拡散、浸透させ、上記油脂成分の拡散、浸透した魚介類を凍結処理することによって、乳化調整油脂を油脂、調味水溶液及び乳化剤に分離し、乳化油脂による白濁した色相を解消させた構成を有する魚介類加工品の製造方法。
- 乳化調整油脂は、質量比で、植物油脂18.00〜55.00%、食塩6.00〜9.00%、砂糖0.30〜1.00%、調味料2.20〜4.80%、乳化剤0.70〜1.85%、残部清水の成分比率を有する請求項1記載の魚介類加工品の製造方法。
- 魚介類は、秋鮭に代表される脂肪分の少ない魚種であり、それをフィレ、チャンクの形態で使用する請求項1記載の魚介類加工品の製造方法。
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