JPH10504314A - 水分結合性添加剤を含有するエストラジオール経皮治療システム - Google Patents
水分結合性添加剤を含有するエストラジオール経皮治療システムInfo
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- A61P5/30—Oestrogens
Abstract
(57)【要約】
活性物質エストラジオールと、随意的に追加の活性物質とを有し、水分結合性添加剤を有し、かつ、活性物質と水分を透過しない裏打ち層と、活性物質を含有するマトリックス層と、必要であれば、取り外し可能な保護層とからなる積層構造を有する経皮治療システム。この経皮治療システムは、前記水分結合性添加剤が前記マトリックスの成分であることを特徴とする。
Description
【発明の詳細な説明】
水分結合性添加剤を含有するエストラジオール経皮治療システム
本発明は、活性物質エストラジオール(estradiol)を有し、更に任意で、水分
結合性添加剤物質だけでなく付加的な活性物質を有し、かつ、活性物質と水分を
透過しない裏打ち層と、活性物質を含有するマトリックス層と、必要であれば、
マトリックス層を覆う取り外し可能な保護層とからなる積層構造を有する経皮治
療システムに関連する。
近年、いくつかの疾病の薬剤治療において、経皮治療システム(TTS)が市
場に導入されている。
以下、「エストラジオール」という用語は、溶解または結晶質(無水和物)の
形態の17−β−エストラジオールの無水物質を意味する。
活性物質エストラジオールを含有するTTSが更年期障害の治療薬として販売
されており、また、少し以前からは骨粗鬆症の治療薬としても販売されている。
これらは治療に効果的であることが知られている。
先行技術のシステムの問題は、活性物質が皮膚を透過する能力が不十分なこと
である。経皮治療システムの構造に関するガレノスの方法がいくつか用いられて
いるが(多層システムの使用、制御膜の使用、活性物質濃度を変化させる、基礎
ポリマーを変更する等)、活性物質が皮膚を透過する力は、いわゆる「飽和の流
れ」の一定限度以上増加することができない。この発見、すなわち、たとえ溶解
度の高い媒体を用いても、原則的に、微細に分散された固体相からの活性物質の
経皮的な流れはそれ以上増加できないという発見は、Higuchiの先行文献(例、T
.Higuchi:Physical Chemical Analysis of percutaneous process from cream
s and ointments.J.Soc.Cosmetic Chem.11,p.85-97(1960))に
既に示されている。
EP 0 421 454に開示されているシステムは、「結晶化抑制剤」と粘着付与樹脂
が添加され、アクリルポリマーにエストラジオールが含まれている。早い時期に
粘着力が失われないようにするため、膨化剤が含まれている。
製造時において、多くの活性物質と共に、いわゆる「増強剤」がTTSに加え
られる場合もある。たいていの場合、この増強剤は人間の皮膚の吸収性を改善す
る液体混合薬である。このため、この増強剤は、十分小さいTTSの表面からの
活性物質の吸収を可能にする。特に、活性物質のエストラジオールに使用される
エタノールなどの揮発性の高い増強剤には、TTSの粘着層を相当な程度にまで
軟化してしまう欠点がある。また、とりわけ、それらはシステム内に付加的なか
さばる区画を必要とし、TTSの厚さが許容できなくなる問題がある。最後に、
非重合体添加剤を追加した場合には、皮膚の不適合反応が生じる危険性があり、
感作の危険性の可能性すらある。揮発性はより小さいが、たいていはもっと活性
が小さい増強剤(例、グリセロールエステル類、環状アミド類、オイカリプトー
ル)を添加すれば、1つまたは複数のモノリチウム層に活性物質と吸収促進成分
を含むマトリックスシステムを製造することができる。
任意のTTSマトリックスにおいて、任意の濃度で、増強剤(この場合はグリ
セロールモノオレアート)と共に、エストラジオールなどの活性物質を応用する
ことを請求する例は多いが、US 4 863 738はそのうちの1つである。
この先行技術によると、このようなTTSを用いても十分な治療が可能な訳で
はない。その理由は、この活性増強剤に対する皮膚の耐性が弱いことか、あるい
は皮膚を通した流れがまだ不十分なために、許容できないほど大きいシステムの
表面が必要になることのいずれかである。
皮膚を通した活性物質の流れを増すための別の方法として、TTSにおいて、
飽和溶解度に対応する量を超える活性物質を、分子を分散させて溶解する方法が
ある。これらのシステムを過飽和すれば、皮膚の透過率は同じ程度にまで上昇す
る。しかしながら、このような状態は熱力学的に不安定なので、このような配剤
の形は保存の時に不安定である。活性物質の粒子が予測できない再結晶化を起こ
すので、皮膚を通した流れ率は徐々に飽和の流れの水準まで下がってしまう。こ
の結果、出発濃度によっては、当初存在した治療効果のある活性の大部分が失わ
れてしまう。
このプロセスはエストラジオールに特有である。
室温および通常相対空気湿度(20〜60%相対湿度)においては、2つの周
知の無水物の変形(I、II)のいずれの形態のエストラジオールも存在せず、半
水和物として存在する(Busetti and Hospital,Acta Cryst.1972,B28,560)。
この半水和物は、積層構造が水素結合を介して安定しているため、更に結晶化合
物の拡散がコンパクトであるため、分解を伴わずに約170℃まで短期間熱処理
Pharmaceutica 44(3),177-190)。しかしながら、微粉化によって結晶表面を拡
大すれば、既に約120℃で定量的に無水物の形が得られる。本発明者らの観察
によれば、非常にゆっくりと加熱する場合(0.2〜1 K/min)、また、特に微細な結
晶性物質の場合には、既に約90℃でこの変換が起こる。
特にポリアクリレートなどのいくつかのポリマーにおいては、水蒸気分圧が減
るに従ってエストラジオールの溶解度は増加する。フックの法則によると、他の
条件が同じであれば、濃度が高くなれば、皮膚を通した拡散の流れは増加する。
このため、このような濃度の増加は経皮治療システムにおいて非常に望ましい。
しかしながら、エストラジオール−半水和物は既に、エストラジオール半水和物
としての溶液が徐々に再結晶化を始めるのに十分な水を備えている(Kuhnert-
190)。結晶化の後は、濃度が減少するに従って、システムから皮膚への流れ率は
相当減少する。
このような状況を考慮して、経皮治療システムにおいては、エストラジオール
−無水和物の濃度を飽和溶解度とほぼ同じに厳密に調節するか(DE-PS 42 37 453
)、あるいは部分的に溶解していない、分散したエストラジオール−無水和物を
用いれば(DE-PS 42 23 360)、薬理療法上満足できる溶液が得られることが知ら
れている。
このような当技術の状況を考慮しても、難溶性のエストラジオール−半水和物
が広領域で析出するのを避けるためには、エストラジオール−TTSの製造と保
存の時に、大気中の湿度を十分低く保つことが重要である。このため、原則的に
水蒸気透過率の小さい防水包装が使用される。しかしながら、今日のTTSに含
まれるエストラジオールの濃度は低いため、ほんの少しの水分でエストラジオー
ル−半水和物は析出する。例えば、TTSに、2mgのエストラジオール(無水物
)が溶解して存在する場合は、66.1μgの水で完全な析出が生じる。従って
、従来の包装手段を用いると、数年の保存期間にその様な少量の水分の侵入を防
ぐことは非常に困難である。
既にDE 42 37 453において、保存用に準備した包装の中に乾燥剤を入れること
が提案されている。しかしながら、水結合性添加剤をマトリックスの成分として
用いることについては示されていない。
従って、保存期間に、包装されたシステムにおけるエストラジオール−半水和
物の析出を防ぎ、更に必要であれば、飽和溶解度に対応する量を超える活性物質
を分子が分散し、溶解した形で含むマトリックスに適したエストラジオールを含
む経皮治療システムを提供することが本発明の目的である。
本発明において、この目的は、クレーム1の前提部分に記載された種類の経皮
治療システムにおいて、水分結合性添加剤物質がマトリックスの成分であること
により達成される。
本発明に基づくマトリックスの物質の中に水結合性無機物成分を組み込むこと
は、TTSにおいて様々な方法によって実現できる。最も簡単な形は、マトリッ
クスが感圧粘着機能を同時に有しており、粘着層を追加する必要のない単一層の
マトリックスシステムである。
溶解の形態か、または大部分が分散された固体相においてマトリックスに含ま
れた無機物成分は、保存期間に水分含有量の平衡状態を低く保ち、エストラジオ
ール−半水和物が析出することが不可能になる。
皮膚が無機物粒子と直接接触することを避ける時は、マトリックスのみに水を
結合する無機物成分を含め、皮膚に接する、エストラジオール粒子を全く含まな
い粘着層を積層して加える。
エストラジオールおよび水結合性無機物成分を含むこのようなマトリックスと
粘着層との間に、エストラジオールをほとんど透過しない膜を導入すれば、活性
物質の放出の変形が達成される。
エストラジオールと共に用いるのに適し、広く用いられたアクリル酸エステル
共重合体に加えて、他のポリマーを基材として用いることも可能である。例えば
、ポリイソブチレン、ポリビニルアセテート、共重合体、合成ゴム、シリコンな
どである。
いずれの場合においても、本発明に基づく経皮治療システムの特徴は、マトリ
ックスに水結合性無機物成分が存在することである。これに関して、マトリック
スにおける前記添加剤の厳密な量は十分多い量でなければならない。これはシス
テムの水分結合容量の総量を増加するからである。当業者は、添加する物質の厳
密な量を、その成分の水結合力から包括的な方法で導くことができる。以下に例
示するほとんどの物質の水結合力は、一般にエストラジオールの水結合力より大
きいので、エストラジオールの含有量の範囲内(約1〜2%)で加えた場合は、
最小量であると考えられる。上限は、マトリックスの流動性、粘着力、加工性な
どの物理学的数値によって決定される。一般に、10〜50重量%、好ましくは
20〜35重量%の割合が望ましい。
以下の物質は、水結合性無機物成分として用いられる。例えば、酸化亜鉛、二
酸化シリコン、シリカゲル(同様に、疎水性化された形などの改質の形態)、タ
ルク、五酸化リン、アルミナ、リン酸アルミニウム、酸化マグネシウムおよび水
酸化マグネシウム、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウム、カオリン、分子ふ
るい、酸化ナトリウム、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウム、硫酸マグネシ
ウム、硫酸カルシウム、硫酸銅、酸化マンガン類、ケイ酸塩類、アルミン酸塩類
、過塩素酸マグネシウムなどである。
これに関して、酸化マグネシウムから水酸化マグネシウムへの反応などの化学
反応プロセスと、初めは無水物であった硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、また
は塩化カルシウムに結晶水を含有させる方法、あるいは純粋な非化学量論的な吸
湿や吸着などの物理学的変化の両方が利用できることを考慮しなければならない
。これらのことは当技術者に周知である。
湿度が低い場合(相対湿度が約5%以下の範囲)に高い水結合力を有する物質
を用いることが望ましい。更に、高度の生理的適合性を有する物質が望ましい。
幸いにも、アルカリ土類金属およびアルカリ金属の塩の水和物の多くはこれら
の条件を満たしている。例えば、炭酸カルシウムおよび炭酸マグネシウム、カル
シウム、ナトリウム、硫酸マグネシウム、あるいは多数のケイ酸塩類、アルミン
酸塩類、ホウ酸塩類、アルカリ金属(好ましくは、ナトリウム、カリウム、リチ
ウム)およびアルカリ土類金属(カルシウムおよびマグネシウム)のリン酸塩類
などである。
サブクレームに基づいて、更なる本発明の実施様態を示す。
実施例:
実施例1: 本発明に基づくシステムの製造
17−β−エストラジオール−半水和物(微粉): 2.0g
カリフレックス(“Cariflex”(商標名))TR 1107(スチレン−イソプレン
−スチレンブロック共重合体): 60.0g
スタイベリートエステル5E(“Staybelite Ester 5E”(商品名))(コロ
ホニウム誘導体の熱可塑性エステルガム): 120.0g
粘性パラフィン: 50g
硫酸カルシウム二水塩: 50g
上記の材料は真空排気可能な混練機の中で130℃で溶解され、10時間以内
で混練によって外面的に均質な状態にされる。真空下(0.02バール未満)に
おいて165℃まで一時間加熱し、その間、活性物質および硫酸カルシウムから
混練によって結晶水が放出される。
その溶解物は120℃まで冷却される。その後、連続コーティングラインにお
いて、層の単位面積当たり重量が200g/m2になるように、膜厚100μm
のシリコン化ポリエステル膜に溶解物をコーティングする。
その後、気泡の形成を避けながら、まだ熱い層の上にロール圧力下で膜厚15
μmのポリエステル膜を塗布する(積層する)。
ワッドパンチ(wad punch)を用いた打抜き加工によって16cm2の経皮システ
ムが得られる。
実施例2: 本発明に基づくシステムの製造
17−β−エストラジオール−半水和物(微粉): 3.0g
アクリル酸エステル共重合体溶液(固体含有量50%w/w): 400.0g
硫酸カルシウム(無水物)(「硬セッコウ」): 70.0g
上記の材料を円筒形ガラス容器に入れ、均質な懸濁液が得られるまで室温で攪
拌される。その後、100μmのシリコン化ポリエステル膜に、500μmのス
リット幅でコーティングする。25℃、50℃、80℃、および95℃において
、各10分間コーティングを乾燥する。その後直ちに、気泡の形成を避けながら
、ロール圧力下で前記の乾燥した層に15μmのポリエステル膜を塗布する(積
層する)。
ワッドパンチを用いた打抜き加工によって10cm2の経皮システムを得る。
これらの経皮システムは、硫酸カルシウム(あらかじめ180℃で乾燥する)を
0.3g含有する乾燥剤の錠剤を加えた上で、経皮システムを紙・アルミニウム
フォイル・熱間シーリング層からなる複合包装材料に包装する。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】1996年7月8日
【補正内容】
請求の範囲
1.活性物質エストラジオールと、随意的に追加の活性物質とを有し、水分結合
性添加剤を有し、活性物質と水分を透過しない裏打ち層と、活性物質を含有する
マトリックス層と、必要であれば取り外し可能な保護層とからなる積層構造を有
する経皮治療システムであって、
前記マトリックスが水分結合性添加剤と共に、水を含まないエストラジオール
としての活性物質を含み、前記水分結合性添加剤が湿度の均衡を保ち、エストラ
ジオール半水和物の析出を防ぐことを特徴とする経皮治療システム。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(72)発明者 フランク, ハンシェルマン
ドイツ、デー 56566 ノイヴィード、ハ
ウゼンボーマー シュトラッセ 23
(72)発明者 ポンツェン、 トーマス
ドイツ、デー 56575 ヴァイセンツルム、
イム ヴォンパーク ネッテ 4
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.活性物質エストラジオールと、随意的に追加の活性物質とを有し、水分結合 性添加剤を有し、かつ、活性物質と水分を透過しない裏打ち層と、活性物質を含 有するマトリックス層と、必要であれば、取り外し可能な保護層とからなる積層 構造を有する経皮治療システムであって、前記水結合性添加剤が前記マトリック スの成分であることを特徴とする経皮治療システム。 2.前記マトリックスが活性物質含有層を数層含み、そのうち少なくとも1層が 薬剤としての基準に合った、水分結合性無機物添加剤を含むことを特徴とする請 求項1に記載の経皮治療システム。 3.前記マトリックスの材料が、微細に分散した懸濁液に前記水分結合性添加剤 物質を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の経皮治療システム。 4.前記水分結合性添加剤物質が無機物であることを特徴とする、請求項1〜3 の1項または複数項に記載の経皮治療システム。 5.前記水分結合性添加剤がアルカリ土類金属またはアルカリ金属塩の無水和物 であることを特徴とする請求項1〜4の1項または複数項に記載の経皮治療シス テム。 6.前記水分結合性添加剤が硫酸カルシウムの半水和物または無水和物(「硬セ ッコウ」)であることを特徴とする請求項1〜4の1項または複数項に記載の経 皮治療システム。 7.前記エストラジオールが無水結晶化物の分散体で存在することを特徴とする 請求項1〜6の1項または複数項に記載の経皮治療システム。 8.飽和溶解度に対応する量を超えるエストラジオールが分子的に分散し、溶解 された形態でマトリックス基材に含まれていることを特徴とする請求項1〜7の 1項または複数項に記載の経皮治療システム。 9.マトリックス材料全体に占める無機物の水分結合性添加剤の割合が1〜40 重量%、好ましくは20重量%までであることを特徴とする請求項1〜8の1項 または複数項に記載の経皮治療システム。 10.マトリックス基材が、水分の全くない条件下において活性物質エストラジ オールの溶解度が0.4から3.0%(w/w)であるポリマーであることを特徴 とする請求項1〜9の1項または複数項に記載の経皮治療システム。 11.マトリックス基材がポリアクリレートポリマーであることを特徴とする請 求項10に記載の経皮治療システム。 12.以下の工程を特徴とする前記の請求項の1項または複数項に記載の経皮治 療システムの製造方法: マトリックス基材の溶液、分散、または溶解物におけるエストラジオール−半 水和物と水分結合性無機物添加剤の懸濁液を作る。 シート状の基体にこの懸濁液を塗布して層を形成する。 90℃から175℃まで加熱し、層におけるエストラジオール−半水和物を無 水エストラジオールに転化する。 13.前記無機物水分結合性添加剤が含水の形態から無水の形態へ転化するまで 、前記乾燥層を90℃から200℃まで加熱することを特徴とする請求項12に 記載の方法。 14.必要であれば、前記経皮治療システムを、乾燥剤を含む防水包装体に包装 することを特徴とする請求項12〜13のいずれかに記載の方法。
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