JPH10306180A - 樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体 - Google Patents

樹脂組成物およびそれを用いた多層構造体

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JPH10306180A
JPH10306180A JP31193697A JP31193697A JPH10306180A JP H10306180 A JPH10306180 A JP H10306180A JP 31193697 A JP31193697 A JP 31193697A JP 31193697 A JP31193697 A JP 31193697A JP H10306180 A JPH10306180 A JP H10306180A
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copolymer
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弘之 大木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガスバリア性、耐屈曲疲労性および耐衝撃性
に優れた樹脂組成物およびそれからなる多層構造体を得
ること。 【解決手段】 シングルサイト触媒を用いて製造され、
密度が0.85〜0.90g/cm3であるエチレンを
主成分とする共重合体(A)およびエチレン含量が20
〜60モル%でケン化度が95%以上のエチレン−ビニ
ルアルコール共重合体(B)からなり、下記式(1)を
満足する樹脂組成物。 1/99≦{(A)の重量}/{(B)の重量}≦40/60 ・・ ・(1)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスバリア性、耐
屈曲疲労性および耐衝撃性に優れた樹脂組成物、および
それを用いた多層構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】エチレン−ビニルアルコール共重合体
(以下EVOHと略すことがある)は、溶融成形が可能
で、ガスバリア性に優れた材料として、広く用いられて
いる。特に、耐湿性、機械的特性等に優れた熱可塑性樹
脂、なかでもポリオレフィン系樹脂の層と積層した多層
プラスチック包装材は、バッグ、ボトル、カップ、パウ
チ等の形で酸素バリアー性に優れた容器として食品、化
粧品、医化学薬品、トイレタリー等の種々の分野で広く
使用されている。
【0003】しかしながら、EVOHは一般的に柔軟性
に欠け、耐屈曲疲労性や耐衝撃性に問題を有している。
特に、前述の用途のうちでも耐屈曲疲労性が要求され
る、フレキシブルなバッグやパウチの用途や、耐衝撃性
が要求されるボトルやカップの用途等においては、必ず
しも十分な性能を有しているとは言えず、改善が求めら
れている。
【0004】EVOHの耐衝撃性や耐屈曲性を改善する
方策として、EVOHに柔軟な樹脂を配合する方法が知
られており、なかでも柔軟なポリオレフィン系重合体を
配合したものとしては、チーグラー系触媒を用いて重合
された低密度の、具体的には密度0.86〜0.91g
/cm3のポリエチレン系重合体を添加する方法が特開
昭62−153333号公報に記載されている。しかし
ながら、かかる方法によっても、その耐衝撃性、耐屈曲
性の改善は十分なものとは言えなかった。
【0005】近年ポリオレフィンの中でも、重合活性点
が均一な触媒、すなわちシングルサイト触媒を用いて製
造されたものが注目を集めている。かかるシングルサイ
ト触媒を用いて重合されたポリオレフィンは、従来のポ
リオレフィンに比べて分子量分布、組成分布が狭いとい
う特徴を有している。その結果、透明性、強度、接着
性、ヒートシール性、耐衝撃性、耐溶出性、耐ブロッキ
ング性など多くの有用な性能を有しているので、各種検
討が進められている。
【0006】シングルサイト触媒を用いて製造されたエ
チレン−α−オレフィン共重合体とEVOHとの積層物
については、包装材料用積層フィルムについて特開平7
−232418号公報、共押出フィルムについて特開平
7−314624号公報、バルーン形成用複合フィルム
について特開平7−284570号公報、熱収縮フィル
ムについて特開平7−309962号公報、レトルト用
包材について特開平7−266520号公報にそれぞれ
記載されており、その用途は多岐に渡っている。しかし
ながら、これらの積層体に関する出願においてはEVO
Hとエチレン−α−オレフィン共重合体との組成物につ
いての記載はなされていない。
【0007】特開平7−102133号公報にはシング
ルサイト触媒を用いて製造されたエチレン−α−オレフ
ィン共重合体とカルボン酸変性ポリオレフィンとからな
る樹脂組成物層とEVOH層を有する積層体について記
載されている。これはナイロン、EVOH、ポリエステ
ル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の各種樹脂に対し
て接着性の良好な組成物を提供することを主目的とする
ものである。したがって、シングルサイト触媒を用いて
製造されたエチレン−α−オレフィン共重合体とカルボ
ン酸変性ポリオレフィンに加えてEVOHをも含む組成
物については記載されていない。
【0008】
【本発明が解決しようとする課題】本発明は、EVOH
に特定のエチレンを主成分とする共重合体を、特定の樹
脂組成、配合比率等を採用し、配合することによって、
耐衝撃性、耐屈曲疲労性の優れたEVOHを主成分とす
るガスバリア性の優れた樹脂組成物を得ようとするもの
である。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的は、シングルサ
イト触媒を用いて製造され、密度が0.85〜0.90
g/cm3であるエチレンを主成分とする共重合体
(A)およびエチレン含量が20〜60モル%でケン化
度が95%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体
(B)からなり、下記式(1)を満足する樹脂組成物を
提供することによって達成される。 1/99≦{(A)の重量}/{(B)の重量}≦40/60 ・・ ・(1)
【0010】このとき、エチレンを主成分とする共重合
体(A)が、α−オレフィンの炭素数が3〜8であるエ
チレン−α−オレフィン共重合体であること、あるいは
その分子量分布の比Mw/Mnが4以下であることが好
適である。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体
(B)がリン元素換算で2〜200ppmのリン化合物
を含有することも好適である。
【0011】また、エチレンを主成分とする共重合体
(A)のメルトフローレートMaとエチレン−ビニルア
ルコール共重合体(B)のメルトフローレートMbの比
が下記式(2)を満たすことが好適である。 0.2≦Ma/Mb≦20 ・・・(2) また、カルボン酸変性ポリオレフィン(C)を含み、か
つ下記式(3)を満足することも好適である。 0.1/99.9≦X≦20/80 ・・・(3) 但し、X={(C)の重量}/{(A)と(B)の合計
重量}
【0012】かかる樹脂組成物層、接着性樹脂層および
ポリオレフィン層を含む多層構造体は好適な実施態様で
ある。また、中心層の樹脂組成物層が、接着性樹脂層を
介して内外層のエチレン−α−オレフィン共重合体層と
積層されてなる多層構造体からなるバッグインボックス
内容器も好適な実施態様である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明で用いられるエチレンを主
成分とする共重合体(A)は、シングルサイト触媒を用
いて製造され、密度が0.85〜0.90g/cm3
のである。ここで、エチレンを主成分とする共重合体と
はエチレンの含有量が50重量%以上である共重合体の
ことをいう。
【0014】エチレンを主成分とする共重合体(A)の
密度は、0.85〜0.90g/cm3であり、好まし
くは0.855〜0.895g/cm3、より好ましく
は0.86〜0.89g/cm3である。密度が0.9
0g/cm3以上の場合は、耐衝撃性、耐屈曲疲労性の
改善が不十分である。一方密度が0.85g/cm3
下の場合には結晶性が著しく低下し、樹脂チップが膠着
する等、取扱いが困難となるので望ましくない。
【0015】エチレンと共重合されるコモノマーは、特
に限定されるものではなく、プロピレン、1−ブテン、
1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテ
ンなどから選ばれたα−オレフィン、スチレン、ジオレ
フィン、N−ビニルカルバゾール、塩化ビニル、塩化ビ
ニリデン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、ビニルエー
テルなどのビニル化合物、マレイン酸、アクリル酸、メ
タクリル酸、エタクリル酸、フマル酸、イタコン酸など
の不飽和カルボン酸、そのエステルおよびその酸無水物
あるいはこれらにヒドロキシル基またはエポキシ基を付
加したものなどがあげられる。
【0016】エチレンを主成分とする共重合体(A)と
しては、α−オレフィンの炭素数が3〜8であるエチレ
ン−α−オレフィン共重合体であることが好ましく、エ
チレンを92〜50重量%、好ましくは90〜55重量
%、より好ましくは85〜55重量%と炭素数が3〜8
の1種または2種以上のα−オレフィンを8〜50重量
%、好ましくは10〜45重量%、より好ましくは15
〜45重量%とを原料とし、シングルサイト触媒の存在
下に製造されたものが好ましい。
【0017】炭素数が3〜8のα−オレフィンとして
は、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテ
ン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、3−
メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、4,
4−ジメチル−1−ペンテン等が挙げられる。これらの
α−オレフィンは単独で使用してもよく、二種以上を組
み合わせて使用してもよい。中でも、1−ブテン、イソ
ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1
−ペンテン、1−オクテンがモノマーコストが安く、共
重合組成を幅広く制御できる点から好ましい。炭素数が
9以上の場合にはモノマーコストが高くなると同時に、
重合時の共重合反応性が低く、共重合体中への導入が困
難な点でも好ましくない。
【0018】シングルサイト触媒とは、活性点が均一
(シングルサイト)である特徴を有する触媒のことであ
る。代表的なものとして、メタロセン系触媒があげられ
る。かかるメタロセン系触媒を用いてポリオレフィンの
重合を行う際には、メタロセン化合物とアルミノキサン
に代表される有機アルミニウム化合物を併せ用いるこ
と、あるいはメタロセン化合物と、これと反応して安定
なアニオンを形成する化合物とを併せ用いることが好ま
しい。
【0019】ここで、メタロセン系遷移金属化合物とし
ては、周期律表の第3〜10族またはランタノイド系列
の金属に、少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格
を有する配位子がη5結合様式で配位している化合物が
用いられる。金属の一例としては、チタン、ジルコニウ
ム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロ
ム、ランタン、ニッケル、パラジウム、ロジウム、イリ
ジウム等が挙げられ、特にチタン、ジルコニウム、ハフ
ニウム、バナジウム、ニッケル、パラジウムが好まし
い。
【0020】上記シクロペンタジエニル基または置換シ
クロペンタジエニル基を有する配位子としては、例え
ば、シクロペンタジエニル基、アルキル置換シクロペン
タジエニル基、インデニル基、アルキル置換インデニル
基、1,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、アル
キル置換1,5,6,7−テトラヒドロインデニル基、
フルオレニル基またはアルキル置換フルオニル基等が挙
げられる。これらの基の置換アルキル基はハロゲン原
子、トリアルキルシリル基等で置き換えられていてもよ
い。これらの配位子のうちでも、シクロペンタジエニル
基またはアルキル置換シクロペンタジエニル基が特に好
ましい。メタロセン化合物1分子中に上記シクロペンタ
ジエニル基を2個以上含む場合には、シクロペンタジエ
ニル基を有する基同志がエチレン基、プロピレン基、イ
ソプロピリデン基等のアルキレン基や、ジフェニルシリ
レン基、メチルフェニルシリレン基等の置換シリレン基
を介して結合されていてもよい。
【0021】メタロセン化合物の例としては、シクロペ
ンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メ
チルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチル
アミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジ
クロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジ
エニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、ジ
メチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−
ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメチルシリルテ
トラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェ
ニルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシ
リルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルア
ミドハフニウムジクロリド、(t−ブチルアミド)(テ
トラメチル−シクロペンタジエニル)−1,2−エタン
ジイルチタンジクロリド、インデニルチタニウムトリス
(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジ
エチルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−
ブチルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−
プロピルアミド)などを挙げることができる。
【0022】その他のシングルサイト触媒の例として、
金属−ジイミン錯体化合物が挙げられ、その具体例とし
て、N,N’−ビス(ジイソプロピルフェニル)ジイミ
ンニッケルジブロミド、N,N’−ビス(ジイソプロピ
ルフェニル)ジイミンニッケルジクロリド、N,N’−
ビス(ジイソプロピルフェニル)ジイミンニッケルジメ
チル、N,N’−ビス(ジイソプロピルフェニル)ジイ
ミンパラジウムジブロミド、N,N’−ビス(ジイソプ
ロピルフェニル)ジイミンパラジウムジクロリド、N,
N’−ビス(ジイソプロピルフェニル)ジイミンパラジ
ウムジメチル、N,N’−ビス(ジメチルフェニル)ジ
イミンニッケルジブロミド、N,N’−ビス(ジメチル
フェニル)ジイミンニッケルジクロリド、N,N’−ビ
ス(ジメチルフェニル)ジイミンニッケルジメチル、
N,N’−ビス(ジメチルフェニル)ジイミンパラジウ
ムジブロミド、N,N’−ビス(ジメチルフェニル)ジ
イミンパラジウムジクロリド、N,N’−ビス(ジメチ
ルフェニル)ジイミンパラジウムジメチル等が挙げられ
る。
【0023】これらのシングルサイト触媒と組み合わせ
て使用される活性化用共触媒の例として、Al−O結合
を有するアルミニウム化合物、例えば鎖状あるいは環状
アルミノキサン等が挙げられる。この鎖状あるいは環状
アルミノキサンは、アルキルアルミニウムと水を接触さ
せて生成される。例えば、重合時にアルキルアルミニウ
ムを加えておき、後に水を添加するか、あるいは、錯塩
の結晶水または有機、無機化合物の吸着水とアルキルア
ルミニウムを反応させることで得られる。
【0024】ここで、アルキルアルミニウムとしては、
トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウ
ム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニ
ウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチル
アルミニウムジクロリド、ジメチルアルミニウムフルオ
リド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジエチ
ルアルミニウムハイドライド、エチルアルミニウムセス
キクロリド等が挙げられる。
【0025】また、メタロセン化合物と反応して安定な
アニオンとなる成分としては、有機ホウ素化合物アニオ
ン、有機アルミニウム化合物アニオン、有機ガリウム化
合物アニオン、有機リン化合物アニオン、有機ケイ素化
合物アニオン、有機ヒ素化合物アニオン、有機アンチモ
ン化合物アニオン等が挙げられる。
【0026】重合条件は特に限定されるものではない
が、チーグラー系触媒における周知の重合方法と同様の
方法により通常行われる。すなわち、塊状重合、溶液重
合、懸濁重合、気相重合等が挙げられ、また、これらの
重合はバッチ法であっても連続法であってもよい。圧力
が常圧から100気圧、好ましくは常圧から50気圧
で、温度が0〜250℃、好ましくは25〜200℃の
反応条件下に、高圧イオン重合法によって製造されるの
が好ましい。
【0027】本発明のシングルサイト触媒を用いて重合
したエチレンを主成分とする共重合体(A)のメルトフ
ローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下)
は特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜
50g/10分、より好ましくは0.5〜30g/10
分である。
【0028】上記のような、シングルサイト触媒を用い
て製造されたエチレンを主成分とする共重合体を用いる
ことで、本願発明の目的を達成することができる。ここ
で、従来から用いられてきた一般的な触媒(チーグラー
系触媒)を用いて製造されたエチレンを主成分とする共
重合体を用いたのでは、比較例にも示すように組成物の
耐衝撃性、耐屈曲疲労性の改善が十分でない。かかる理
由は必ずしも明らかではないが、EVOH樹脂と、シン
グルサイト触媒を用いて製造されたエチレンを主成分と
する共重合体樹脂との界面において、その界面接着力が
大きい、あるいは溶融時の界面張力が小さいといった効
果が発現しており、それが組成物に対して良好な分散
性、力学強度を与えることになり、結果として耐衝撃
性、耐屈曲疲労性の改善にも寄与しているのではないか
と考えることもできる。カルボン酸変性ポリオレフィン
を相溶化剤として用いたときには、界面接着力、界面張
力をさらに改善することができ、より大きな効果が得ら
れるものと考えられる。
【0029】さらに、本発明のエチレンを主成分とする
共重合体(A)の分子量分布の比Mw/Mnが4以下で
あることが好ましい。かかる範囲にあることで、良好な
耐衝撃性および耐屈曲疲労性を得ることができる。
【0030】また、EVOH(B)とはエチレン−ビニ
ルアルコール共重合体であり、エチレン含有量は20〜
60モル%、好適には25〜55モル%、最適には30
〜50モル%の範囲から、またビニルエステル成分のケ
ン化度は95%以上、好適には98%以上、最適には9
9%以上から選ばれる。またEVOH(B)の融点は限
定されるものではないが、好ましくは125〜220
℃、最適には135〜200℃から選ばれる。エチレン
含有量が上記範囲を下回り、融点が上記範囲を上回る場
合は、溶融成形性が悪く、一方エチレン含有量が上記範
囲を上回る場合は、ガスバリアー性が不足する。また、
ケン化度が上記範囲を下回る場合は、ガスバリアー性お
よび熱安定性が悪くなリ、ゲル・ブツの発生量が増え
る。
【0031】なお、EVOHのエチレン含有量およびケ
ン化度は、核磁気共鳴(NMR)法により、また融点は
示差熱分析(DSC)法(スキャンニングスピード10
℃/分)により求めることができる。また、本発明に用
いるEVOHの好適なメルトフローレート(MFR)
(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に
基づく)は0.1〜50g/10min.、最適には
0.5〜30g/10min.である。
【0032】EVOH製造時に用いるビニルエステルと
しては酢酸ビニルが代表的なものとしてあげられるが、
その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、
ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。
【0033】また、EVOH(B)に共重合成分として
ビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有
する場合にはEVOH(B)の溶融粘性が改善され、ブ
レンドに際し分散性が改善されるだけでなく、均質な共
押出多層フィルムの製造の面でも有効である。ここで、
ビニルシラン系化合物としては、たとえばビニルトリメ
トキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ
(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオ
キシプロピルメトキシシランが挙げられる。なかでも、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン
が好適に用いられる。
【0034】さらに、EVOH(B)がホウ素化合物を
含有する場合にも、EVOH(B)の溶融粘性が改善さ
れ、ブレンドに際し分散性が改善されるだけでなく、均
質な共押出多層フィルムの製造の面で有効である。ここ
でホウ素化合物としては、ホウ酸類、ホウ酸エステル、
ホウ酸塩、水素化ホウ素類等が挙げられる。具体的に
は、ホウ酸類としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、四
ホウ酸などが挙げられ、ホウ酸エステルとしてはホウ酸
トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸
塩としては上記の各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アル
カリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの化
合物うちでもオルトホウ酸(単にホウ酸と表示)、Na
BH4が好ましい。ホウ素化合物の含有量はホウ素換算
で20〜2000ppm、望ましくは50〜1000p
pmである。この範囲にあることで加熱溶融時のトルク
変動が抑制されたエチレン−ビニルアルコール共重合体
組成物を得ることができる。20ppm未満ではそのよ
うな効果が小さく、2000ppmを超えるとゲル化し
やすく、成形性不良となる場合がある。
【0035】さらに、本発明の目的が阻害されない範囲
で、他の共単量体[例えば、プロピレン、ブチレン、不
飽和カルボン酸又はそのエステル{(メタ)アクリル
酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エ
チルなど}、ビニルピロリドン(N−ビニルピロリドン
など)を共重合することも出来る。
【0036】また本発明においては二種以上のEVOH
を配合して用いることもできるし、また本発明の目的を
阻外しない範囲で熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止
剤、着色剤、フィラー、他の樹脂(ポリアミド、部分け
ん化エチレン−酢酸ビニル共重合体など)をEVOH樹
脂にブレンドすることもできる。
【0037】また、本発明のEVOH(B)中のリン化
合物濃度は、リン元素換算で2〜200ppm、好適に
は3〜150ppm、最適には5〜100ppmの範囲
であることが好ましい。組成物中のリン濃度が2ppm
より少ない場合や200ppmより多い場合には、製膜
性や熱安定性に問題を生じることがある。特に、長時間
にわたる製膜を行なう際のゲル状ブツの発生や着色の問
題が発生しやすくなる。
【0038】EVOH(B)中に配合するリン化合物の
種類は特に限定されるものではない。リン酸、亜リン酸
等の各種の酸やその塩等を用いることができる。リン酸
塩としては第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩
のいずれの形で含まれていても良く、そのカチオン種も
特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アル
カリ土類金属塩であることが好ましい。中でも、リン酸
2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸水素
2ナトリウム、リン酸水素2カリウムの形でリン化合物
を添加することが好ましい。
【0039】また、本発明のEVOH(B)に対し、ア
ルカリ金属塩をアルカリ金属元素換算で5〜5000p
pm含有させることも、本発明の効果を増進させ、耐衝
撃性や耐屈曲疲労性の改善のためにも効果的である。ア
ルカリ金属塩のより好適な含有量はアルカリ金属元素換
算で10〜500ppm、さらには20〜200ppm
である。ここでアルカリ金属としては、リチウム、ナト
リウム、カリウムなどがあげられ、アルカリ金属塩とし
ては、一価金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン
酸塩、燐酸塩、金属錯体等が挙げられる。例えば、酢酸
ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸リチ
ウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウ
ム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げら
れる。中でも酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、燐酸ナト
リウムが好適である。
【0040】本発明の樹脂組成物において、エチレンを
主成分とする共重合体(A)とEVOH(B)の重量比
率(A)/(B)は1/99〜40/60であり、好適
には2/98〜30/70である。40/60を越える
とガスバリアー性が悪くなり好ましくない。一方、1/
99未満の場合には耐衝撃性、耐屈曲疲労性が悪化す
る。
【0041】樹脂組成物におけるエチレンを主成分とす
る共重合体(A)のメルトフローレートMaとエチレン
−ビニルアルコール共重合体(B)のメルトフローレー
トMbの比は下記式(2)を満たすことが望ましい。こ
れにより、良好な分散性が得られ、耐衝撃性、耐屈曲疲
労性さらにガスバリア性が良好なものとなる。 0.2≦Ma/Mb≦20 ・・・(2)
【0042】さらに、カルボン酸変性ポリオレフィンを
エチレンを主成分とする共重合体(A)及びEVOH
(B)に加えることによって、良好な分散性が得られ、
耐衝撃性、耐屈曲疲労性さらにガスバリア性が良好な組
成物を得ることができる。カルボン酸変性ポリオレフィ
ン(C)とは、分子中にカルボキシル基を有するポリオ
レフィンのことをいい、ポリオレフィンを不飽和ジカル
ボン酸無水物を用いてグラフト変性したものや、オレフ
ィン単量体と不飽和カルボン酸とを共重合させたものが
例示される。
【0043】カルボン酸変性ポリオレフィン(C)のオ
レフィン成分としては、エチレン、プロピレン、1−ブ
テン、2−ブテン、スチレンなどがあげられ、酢酸ビニ
ル、(メタ)アクリル酸エステル等の単量体が共重合さ
れていてもよい。これらのうちカルボン酸変性ポリエチ
レンが、組成物の透明性、相溶性などに優れた本発明の
目的物を得る上で好ましい。
【0044】グラフト変性するのに用いる不飽和ジカル
ボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン
酸、無水シトラコン酸などがあげられ、このうち無水マ
レイン酸が好適である。また、オレフィン単量体と共重
合させる不飽和カルボン酸としてはアクリル酸、メタク
リル酸などがあげられる。
【0045】かかるカルボン酸変性ポリオレフィン
(C)の好適なメルトフローレート(MFR)(190
℃、2160g荷重下)は0.1〜100g/10分で
あり、さらに好適には0.5〜50g/10分である。
【0046】次に、樹脂組成物におけるカルボン酸変性
ポリオレフィン(C)と、EVOH(B)とエチレンを
主成分とする共重合体(A)の合計との重量比率(C)
/{(A)+(B)}は好適には0.1/99.9〜2
0/80であり、より好適には0.5/99.5〜15
/85、さらに好適には1/99〜10/90である。
0.1/99.9未満の場合、本発明の目的とする性能
が得られないことがある。一方、20/80を越えると
ブツ、ゲル発生など熱安定性の面で好ましくない。
【0047】エチレンを主成分とする共重合体(A)、
EVOH(B)及び必要によりカルボン酸変性ポリオレ
フィン(C)をブレンドする方法に関しては、特に限定
されるものではなく、該熱可塑性樹脂をドライブレンド
してそのまま使用する、あるいは、より好適にはバンバ
リーミキサー、単軸又は二軸スクリュー押出し機などで
ペレット化、乾燥する方法等がある。ブレンドが不均一
であったり、またブレンドペレット化操作時にゲル、ブ
ツの発生、混入があるとクラックが発生する可能性が大
きいため、ブレンドペレット化操作時混練度の高い押出
機を使用し、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出し
する事が望ましい。
【0048】しかし、より性能を発揮させるためにはエ
チレンを主成分とする共重合体(A)および/またはE
VOH(B)にカルボン酸変性ポリオレフィン(C)を
あらかじめ溶融混合し、これをエチレンを主成分とする
共重合体(A)および/またはEVOH(B)に配合し
て、溶融混合し、成形することが好ましい。このような
方法で成形することにより、成形物の外観が一層改善さ
れ、さらに耐衝撃性、耐屈曲疲労性も著しく改善され
る。
【0049】性能改善の理由は定かではないが、エチレ
ンを主成分とする共重合体(A)および/またはEVO
H(B)とカルボン酸変性ポリオレフィン(C)とをあ
らかじめ混練した場合、両樹脂が分子オーダーで混合
し、両者の特性を兼備えた組成物が作り出され、EVO
H(B)とエチレンを主成分とする共重合体(A)との
相溶性が増し、その結果、3者が均一に分散し品質、成
形性を改善するものと予想される。
【0050】また、こうして得られた樹脂組成物中の各
樹脂成分の分散形態は、EVOH(B)のマトリックス
中にエチレンを主成分とする共重合体(A)からなる樹
脂粒子が分散していることが好ましい。かかる分散形態
を有することで、良好なガスバリア性が得られる。
【0051】EVOH(B)のマトリックス中に分散し
ているエチレンを主成分とする共重合体(A)からなる
樹脂粒子の平均粒径は、5μm以下であることが好まし
く、より好ましくは4μm以下であり、最適には3μm
以下である。上記平均粒径が5μmを超える場合には、
耐衝撃性、耐屈曲疲労性が悪化し、本願発明の効果が低
下する。
【0052】本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を
増進させ、また溶融安定性等を改善するためにハイドロ
タルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダ
ードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩
(たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マ
グネシウム等)の一種または二種以上を樹脂組成物に対
し0.01〜1重量%添加することは好適である。
【0053】ここで、ハイドロタルサイト系化合物とし
ては特にMxAly(OH)2x+3y-2z(A)z・aH2
(MはMg、CaまたはZn、AはCO3またはHP
4、x、y、z、aは正数)で示される複塩であるハ
イドロタルサイト系化合物を挙げることができ、このよ
うなもので、特に好適なものとして次のようなものが例
示される。
【0054】 Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O Mg8Al2(OH)20CO3・5H2O Mg5Al2(OH)14CO3・4H2O Mg10Al2(OH)22(CO32・4H2O Mg6Al2(OH)16HPO4・4H2O Ca6Al2(OH)16CO3・4H2O Zn6Al6(OH)16CO3・4H2O Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2
【0055】また、ハイドロタルサイト系化合物とし
て、特開平1−308439号(USP495455
7)に記載されているハイドロタルサイト系固溶体であ
る、[Mg0.75Zn0.250.67Al0.33(OH)2(C
30.167・0.45H2Oのようなものも用いること
ができる。
【0056】また、高級脂肪族カルボン酸の金属塩とは
炭素数8〜22の高級脂肪酸の金属塩であり、炭素数8
〜22の高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ステアリン
酸、ミリスチン酸などがあげられ、また金属としては、
ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜
鉛、バリウム、アルミニウムなどがあげられる。このう
ちマグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土
類金属が好適である。
【0057】本発明の樹脂組成物では、上記ハイドロタ
ルサイト系化合物および高級脂肪族カルボン酸の金属塩
を併用することがより好適な態様である。エチレンを主
成分とする共重合体(A)とEVOH(B)とカルボン
酸変性ポリオレフィン(C)に加えて上記ハイドロタル
サイト系化合物または高級脂肪族カルボン酸の金属塩を
ブレンドし成形性の改善を行なう場合、ハイドロタルサ
イト系化合物または高級脂肪族カルボン酸の金属塩をそ
のまま上記組成物に配合するよりも、これらの添加剤を
シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン−α−
オレフィン共重合体に代表されるポリオレフィン系樹脂
で2〜100倍に希釈した後に配合する方が分散性が改
善されるためか、より効果的である。
【0058】さらに樹脂組成物には、本発明の効果を増
進させるために、ヒンダードフェノール系、ヒンダード
アミン系熱安定剤の一種、または、二種以上をエチレン
を主成分とする共重合体(A)およびEVOH(B)の
合計重量に対し0.01〜1重量%添加することもでき
る。またその他の添加剤(可塑剤、熱安定剤、紫外線吸
収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラー)を配合すること
もできる。添加剤の具体的な例としては次のようなもの
が挙げられる。
【0059】酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイ
ドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾー
ル、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノー
ル)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−
t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,
5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プ
ロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル
フェノール)等。
【0060】紫外線吸収剤:エチレン−2−シアノ−
3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒド
ロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベン
ゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチ
ルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロ
キシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−
クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メト
キシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メ
トキシベンゾフェノン等。
【0061】可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエ
チル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィ
ン、リン酸エステル等。 帯電防止剤:ペンタエリスリットモノステアレート、ソ
ルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、
ポリエチレンオキシド、カーボワックス等。 滑剤:エチレンビスステアロイルアミド、ブチルステア
レート等。 着色剤:カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリ
ドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等。 充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイ
ト、ケイ酸カルシウム等。
【0062】また、他の多くの高分子化合物を本発明の
作用効果が阻害されない程度にブレンドすることもでき
る。
【0063】本発明の樹脂組成物からなる層を有する多
層構造体は、その内層、外層または内外層にEVOH層
を保護する層、好適には熱可塑性樹脂層を積層すること
もできる。内外層に使用する熱可塑性樹脂は、多層構造
体に耐湿性、耐熱性、ヒートシール性、機械的特性を付
与するために使用され、さらに樹脂組成物層への水分な
どの侵入によるガスバリアー性の劣化を防止するために
も使用される。
【0064】熱可塑性樹脂としてはとくに制限されるも
のではないが、前記エチレン−α−オレフィン共重合
体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エ
チレン−アクリル酸系共重合体、エチレン−メタクリル
酸系共重合体、エチレン−アクリル酸エステル系共重合
体、ポリプロピレン、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド
系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹
脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが
挙げられ、中でもエチレン−α−オレフィン共重合体、
低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピ
レンなどが好適に用いられる。最も好適にはシングルサ
イト触媒を用いて製造されたエチレン−α−オレフィン
共重合体である。これらの樹脂層には前述したような酸
化防止剤、着色剤、充填剤などの添加物を添加してもよ
い。
【0065】本発明の多層構造体を得る際、必要に応じ
て、層間接着性樹脂(以下ADと略すことがある)を用
いることもできる。ここで接着性樹脂としては、各層間
を強固に接着するものであれば、特に限定されるもので
はないが、不飽和カルボン酸又はその無水物(無水マレ
イン酸など)をポリプロピレン、ポリエチレン等のオレ
フィン系重合体、あるいはエチレンとこれを共重合しう
るモノマー(酢酸ビニル、アクリル酸エステルなど)と
の共重合体{たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合
体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メチルエ
ステル、またはエチルエステル)共重合体}にグラフト
したものが、好適に用いられる。なかでも組成物中に含
まれるカルボン酸変性ポリオレフィン(C)と同じもの
を用いることが好ましい。
【0066】多層構造体の構成としては特に限定される
ものではないが、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン
(PO)を用い、接着性樹脂(AD)としてカルボン酸
変性ポリオレフィンを用いることが好ましい。ポリオレ
フィンと積層することで、力学的特性を補強することが
できる上に、耐湿性を向上できるからである。積層構成
例としては、PO/AD/樹脂組成物、PO/AD/樹
脂組成物/AD/PO等が代表的なものとしてあげられ
る。なかでも、両外層にポリオレフィン層を設ける場合
は、樹脂組成物層への吸湿が効果的に防止できるので特
に好ましい。また、ポリオレフィン層として、ポリオレ
フィンを主成分とし、EVOHや接着性樹脂等を含有す
る回収組成物(リグラインド)を用いても構わない。多
層構造体の厚み比率に関しても、特に限定されるもので
はないが、成形性およびコスト等を考慮した場合、全厚
みに対する樹脂組成物層の厚み比率は0.5〜20%程
度が好適であり、とくに1〜10%が好ましい。
【0067】多層構造体を得る方法としては、押出ラミ
ネート法、ドライラミネート法、共射出成形法、共押出
成形法、溶液コート法などがあげられ、特に限定される
ものではないが、製造が容易である点、経済的である点
などから共押出成形法が好適である。共押出成形法とし
ては、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押
出インフレ成形法、共押出ブロー成形法などを挙げるこ
とができる。このようにして得られた多層構造体のシー
ト、フィルム、パリソンなどをEVOHの融点以下の範
囲で再加熱し、絞り成形等の熱成形法、ロール延伸法、
パンタグラフ式延伸法、あるいはインフレ延伸法、ブロ
ー成形法などにより一軸、あるいは二軸延伸することに
よって延伸された成形品を得ることもできる。
【0068】さらに、該多層構造体に放射線、電子線な
どを照射し、EVOH層、熱可塑性樹脂層を架橋するこ
と、あるいは、押出成形時、化学架橋剤を添加し化学架
橋してもよい。
【0069】このような多層構造体は、ガスバリアー性
に優れ、良好な耐衝撃性、耐屈曲疲労性を有しているの
で、それらの性能の要求される食品包装材、医療品(医
薬品、医療用具等)包装材、工業材料として有用であ
る。
【0070】なかでも、本発明の効果が最も効果的に得
られるものとして、バッグインボックス内容器が挙げら
れる。柔軟性、特に耐屈曲疲労性が高度に要求される用
途だからである。具体的には、中心層の樹脂組成物から
なる層が、接着性樹脂層を介して内外層のエチレン−α
−オレフィン共重合体層と積層されてなるバッグインボ
ックス内容器が好適である。内外層のエチレン−α−オ
レフィン共重合体は、通常密度が0.90〜0.94g
/cm3であるものが好ましく、シングルサイト触媒を
用いて製造されたものであってもよいし、従来のチーグ
ラー型の触媒を用いて製造されたものであっても構わな
い。
【0071】耐衝撃性、耐屈曲疲労性およびガスバリア
性に優れたEVOH組成物を提供し、それからなる層を
有する多層構造体やそれからなる高性能の容器等の提供
を可能ならしめた本発明の工業的意義は極めて大きい。
【0072】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに説明する
が、これにより何ら限定されるものではない。本発明に
おける各種試験方法は以下の方法にしたがって行った。
【0073】・多層フィルム中の分散粒径 フィルムの一部を切り取り、液体窒素に浸漬してから、
押出方向に垂直な面で破断した。破断面を走査型電子顕
微鏡で観察し、その粒径を測定し、得られた数値の算術
平均値を分散粒径とした。
【0074】・多層フィルムの酸素透過量 フィルムの一部を切り取り、20℃−65%RHに湿度
調整した後、酸素透過量測定装置(モダンコントロール
社製、OX−TRAN−10/50A)にて、酸素透過
量(ml/m2・day・atm)を測定した。 ・多層フィルムの耐屈曲性試験 フィルムの一部を12×8インチに切り取り、20℃−
65%RHに湿度調整した後、同一雰囲気下で、直径
3.5インチの円筒状にして、ゲルボフレックステスタ
ー(理学工業製)に両端を把持する形で固定し、初期把
持間隔7インチ、最大屈曲時の把持間隔1インチ、スト
ロークの最初の3.5インチで440度の角度のひねり
を加え、その後の2.5インチは直線水平動である動作
の繰り返し往復動を40回/分の早さで行った。500
回ごとにサンプルを観察し、ピンホールが発生するま
で、最大10000回試験を続けた。
【0075】・フレキシブル包装体の落下試験 得られたフィルムを加熱融着し、水を封入したフレキシ
ブル包装体をコンクリート上に落下させ、包装体の破壊
(容器内部の水が漏れる)する高さをもとめた。破壊高
さは、n=30の試験結果を用いて、JIS試験法(K
7211の「8.計算」の部分)に示される計算方法を
用いて、50%破壊高さを求めた。
【0076】実施例1 シングルサイト触媒を用いて製造されたエチレン−α−
オレフィン共重合体(A)としてダウケミカル製「エン
ゲージEG8100」{1−オクテン24重量%共重合
品、密度0.87g/cm3、MFR=1.0g/10
分(210℃、2160g荷重)、Mw/Mn=3.
7}を10重量部、カルボン酸変性ポリオレフィン
(C)として三井石油化学製「アドマーNF500」
{無水マレイン酸グラフト変性線状低密度ポリエチレ
ン、MFR=3.6g/10分(210℃、2160g
荷重)}を5重量部をドライブレンドした後、直径40
mm、L/D=24、圧縮比3.8のマドック型混練部
を有するスクリューを用い210℃で溶融押出し、2種
類の樹脂からなる樹脂組成物のペレットを得た。
【0077】得られた2種類の樹脂からなる樹脂組成物
のペレット15重量部と、リン化合物(リン酸二水素カ
リウム)をリン元素換算で100ppm(カリウム元素
換算で125ppm)、ナトリウム塩(酢酸ナトリウ
ム)をナトリウム元素換算で65ppm含むエチレン含
有量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=3.1
g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH
(B)90重量部を、上記と同じ装置および条件で溶融
押出し、3種類の樹脂からなる樹脂組成物のペレットを
得た。
【0078】この樹脂組成物を中間層とし、内外層のエ
チレン−α−オレフィン共重合体としてチーグラー系触
媒で重合された三菱化学製エチレン−α−オレフィン共
重合体(LLDPE)「UF420」、密度0.925
g/cm3、MFR=0.8g/10分(210℃、2
160g荷重)}を用い、接着性樹脂層として三井石油
化学製「アドマーNF500」{無水マレイン酸グラフ
ト変性線状低密度ポリエチレン、MFR=3.6g/1
0分(210℃、2160g荷重)}を用い、これらの
樹脂を別々の押出機に仕込みLLDPE/AD/樹脂組
成物/AD/LLDPE(膜厚み:50μ/5μ/20
μ/5μ/50μ)の構成を有する全層厚み130μの
多層フィルムを3種5層の共押出フィルム成形装置によ
り得た。押出成形はエチレン−α−オレフィン共重合体
が直径65mm、L/D=22の一軸スクリューを備え
た押出機を200〜240℃の温度とし、樹脂組成物は
直径40mm、L/D=26の一軸スクリューを備えた
押出機を200〜240℃の温度とし、カルボン酸変性
ポリオレフィン(C)は直径40mm、L/D=26の
一軸スクリューを備えた押出機を160〜220℃の温
度として、フィードブロック型ダイ(巾600mm)を
240℃で運転した。
【0079】得られたフィルムを液体窒素で冷却してか
ら破断した破断面を走査型電子顕微鏡で観察したとこ
ろ、EVOH(B)中にエチレン−α−オレフィン共重
合体(A)およびカルボン酸変性ポリオレフィン(C)
の粒子が分散しており、その平均粒径(算術平均値)は
1.6μmであった。また、得られたフィルムを切り取
り、20℃−65%RHに湿度調整した後、酸素透過度
測定装置(モダンコントロール社製、OX−TRAN−
10/50A)にて、積層フィルムの酸素透過量を測定
した。
【0080】また、フィルムを12×8インチに切り取
り、20℃−65%RHに湿度調整した後、同一雰囲気
下で、直径3.5インチの円筒状にして、ゲルボフレッ
クステスター(理学工業製)に両端を把持する形で固定
し、初期把持間隔7インチ、最大屈曲時の把持間隔1イ
ンチ、ストロークの最初の3.5インチで440度の角
度のひねりを加え、その後の2.5インチは直線水平動
である動作の繰り返し往復動を40回/分の早さで行っ
た。500回ごとにサンプルを観察し、ピンホールが発
生するまで、最大10000回試験を続けた。
【0081】さらに、得られたフィルムを20×30c
mに切り出して2枚重ねて、30cmの辺2辺と20c
mの辺1辺を加熱融着してから、20℃の水を1000
cc入れ、残りの20cmの辺を加熱融着して密封し、
バッグインボックス用フレキシブル包装体を得た。この
包装体をコンクリート上に落下させ、包装体の破壊(容
器内部の水が漏れる)する高さをもとめた。破壊高さ
は、n=30の試験結果を用いて、JIS試験法(K7
211の「8.計算」の部分)に示される計算方法を用
いて、50%破壊高さを求めた。評価結果を表1にまと
めて示す。
【0082】比較例1 実施例1において、樹脂組成物層のかわりに実施例1で
用いたものと同じEVOHのみで多層フィルムを作成し
た以外は実施例1と同様して、フィルム、フレキシブル
包装体を得た。評価結果は表1にまとめて示す。
【0083】実施例2、3、比較例2 実施例1において、エチレン−α−オレフィン共重合体
(A)およびEVOH(B)の配合比率{(A)の重
量}/{(B)の重量}を、それぞれ5/95(実施例
2)、20/80(実施例3)、50/50(比較例
2)を変えてペレットを作成した以外は実施例1と同様
して、ペレット、フィルム、フレキシブル包装体を得
た。評価結果は表1にまとめて示す。
【0084】実施例4、5 実施例1で用いられたEVOH(B)のかわりに、以下
に示す樹脂を用いてペレットを作成した以外は実施例1
と同様にして、ペレット、フィルム、フレキシブル包装
体を得た。評価結果は表1にまとめて示す。 ・実施例4;リン化合物(リン酸二水素カリウム)をリ
ン元素換算で100ppm(カリウム元素換算で125
ppm)、ナトリウム塩(酢酸ナトリウム)をナトリウ
ム元素換算で65ppm含むエチレン含有量27モル
%、ケン化度99.6%、MFR=3.9g/10分
(210℃、2160g荷重)のEVOH ・実施例5;リン化合物(リン酸二水素カリウム)をリ
ン元素換算で100ppm(カリウム元素換算で125
ppm)、ナトリウム塩(酢酸ナトリウム)をナトリウ
ム元素換算で65ppm含むエチレン含有量44モル
%、ケン化度99.7%、MFR=3.5g/10分
(210℃、2160g荷重)のEVOH
【0085】実施例6、比較例3〜6 実施例1で用いられたエチレン−α−オレフィン共重合
体(A)のかわりに、以下に示す樹脂を用いてペレット
を作成した以外は実施例1と同様にして、ペレット、フ
ィルム、フレキシブル包装体を得た。ここで、実施例
6、比較例5で用いた樹脂はシングルサイト触媒を用い
て重合された樹脂であり、比較例3、4、6で用いた樹
脂はチーグラー系触媒を用いて重合されたものである。
評価結果は表1にまとめて示す。 ・実施例6;ダウケミカル製エチレン−α−オレフィン
共重合体「エンゲージCL8003」{1−オクテン1
8重量%共重合品、密度0.885g/cm3、MFR
=1.0g/10分(210℃、2160g荷重)、M
w/Mn=3.4} ・比較例3;住友化学製エチレン−α−オレフィン共重
合体「エスプレンN0372」{1−ブテン13重量%
共重合品、密度0.89g/cm3、MFR=3.0g
/10分(210℃、2160g荷重)、Mw/Mn=
4.6} ・比較例4;住友化学製エチレン−プロピレン共重合体
「V0111」{プロピレン22重量%共重合品、密度
0.87g/cm3、MFR=0.9g/10分(21
0℃、2160g荷重)、Mw/Mn=4.3} ・比較例5;ダウケミカル製エチレン−α−オレフィン
共重合体「エンゲージFM1570」{1−オクテン
7.5重量%共重合品、密度0.915g/cm3、M
FR=1.0g/10分(210℃、2160g荷
重)、Mw/Mn=3.6} ・比較例6;三菱化学製エチレン−α−オレフィン共重
合体「UF420」{1−ヘキセン4.95重量%共重
合品、密度0.925g/cm3、MFR=0.8g/
10分(210℃、2160g荷重)、Mw/Mn=
7.5}
【0086】実施例7、8 実施例1で用いられたエチレン−α−オレフィン共重合
体(A)およびEVOH(B)のかわりに、それぞれ以
下に示す樹脂を用いてペレットを作成した以外は実施例
1と同様にして、ペレット、フィルム、フレキシブル包
装体を得た。エチレン−α−オレフィン共重合体(A)
のMFRおよびEVOH(B)のMFRの比Ma/Mb
の値はそれぞれ0.03(実施例7)、23.1(実施
例8)であった。評価結果は表1にまとめて示す。 ・実施例7; (A):実施例1で用いたものと同じエチレン−α−オ
レフィン共重合体。 (B):リン化合物(リン酸二水素カリウム)をリン元
素換算で100ppm(カリウム元素換算で125pp
m)、ナトリウム塩(酢酸ナトリウム)をナトリウム元
素換算で65ppm含むエチレン含有量32モル%、ケ
ン化度99.6%、MFR=33g/10分(210℃
2160g荷重)のEVOH ・実施例8; (A):ダウケミカル製「エンゲージSM1250」
{1−オクテン19重量%共重合品、密度0.885g
/cm3、MFR=30g/10分(210℃、216
0g荷重)、Mw/Mn=3.5、シングルサイト触媒
を用いて重合されたもの} (B):リン化合物(リン酸二水素カリウム)をリン元
素換算で100ppm、ナトリウム塩(酢酸ナトリウ
ム)をナトリウム元素換算で65ppm含むエチレン含
有量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=3.1
g/10分(210℃2160g荷重)のEVOH
【0087】実施例9 実施例1において、エチレン−α−オレフィン共重合体
(A)、EVOH(B)およびカルボン酸変性ポリオレ
フィン(C)を同時にドライブレンドし、3種の樹脂を
一時に押出成形した以外は実施例1と同様にして、ペレ
ット、フィルム、フレキシブル包装体を得た。評価結果
は表1にまとめて示す。
【0088】実施例10 実施例1において、カルボン酸変性ポリオレフィン
(C)を配合せず、エチレン−α−オレフィン共重合体
(A)およびEVOH(B)のみを一時に押出成形した
以外は実施例1と同様にして、ペレット、フィルム、フ
レキシブル包装体を得た。評価結果は表1にまとめて示
す。
【0089】比較例7 比較例3において、カルボン酸変性ポリオレフィン
(C)を配合せず、エチレン−α−オレフィン共重合体
(A)およびEVOH(B)のみを一時に押出成形した
以外は比較例3と同様にして、ペレット、フィルム、フ
レキシブル包装体を得た。評価結果は表1にまとめて示
す。
【0090】
【表1】
【0091】
【発明の効果】本発明の樹脂組成物は、ガスバリア性、
耐屈曲疲労性および耐衝撃性に優れており、多層構造
体、特にフレキシブルな包装容器として好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C08L 23/20 C08L 23/20 23/26 23/26 29/04 29/04 S

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シングルサイト触媒を用いて製造され、
    密度が0.85〜0.90g/cm3であるエチレンを
    主成分とする共重合体(A)およびエチレン含量が20
    〜60モル%でケン化度が95%以上のエチレン−ビニ
    ルアルコール共重合体(B)からなり、下記式(1)を
    満足する樹脂組成物。 1/99≦{(A)の重量}/{(B)の重量}≦40/60 ・・ ・(1)
  2. 【請求項2】 エチレンを主成分とする共重合体(A)
    が、α−オレフィンの炭素数が3〜8であるエチレン−
    α−オレフィン共重合体である請求項1記載の樹脂組成
    物。
  3. 【請求項3】 エチレンを主成分とする共重合体(A)
    の分子量分布の比Mw/Mnが4以下である請求項1ま
    たは2に記載の樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 エチレン−ビニルアルコール共重合体
    (B)がリン元素換算で2〜200ppmのリン化合物
    を含有する請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂組
    成物。
  5. 【請求項5】 エチレンを主成分とする共重合体(A)
    のメルトフローレートMaとエチレン−ビニルアルコー
    ル共重合体(B)のメルトフローレートMbの比が下記
    式(2)を満たす請求項1ないし4のいずれかに記載の
    樹脂組成物。 0.2≦Ma/Mb≦20 ・・・(2)
  6. 【請求項6】 カルボン酸変性ポリオレフィン(C)を
    含み、かつ下記式(3)を満足する請求項1ないし5の
    いずれかに記載の樹脂組成物。 0.1/99.9≦X≦20/80 ・・・(3) 但し、X={(C)の重量}/{(A)と(B)の合計
    重量}
  7. 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれかに記載の樹
    脂組成物層および接着性樹脂層およびポリオレフィン層
    を含む多層構造体。
  8. 【請求項8】 中心層の樹脂組成物層が、接着性樹脂層
    を介して内外層のエチレン−α−オレフィン共重合体層
    と積層されてなる請求項7に記載の多層構造体からなる
    バッグインボックス内容器。
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