JP4562858B2 - 塗布具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、修正液、液状化粧料などの塗布液や、筆記具用インキなどのインキを紙面などの被塗布面に塗布等するための塗布具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の塗布具において、ポリプロピレン(PP)や一部をエンプラ材で対応させたブロー容器、ダイレクト成形により調達された容器を軸本体とし、該軸本体にインキ又は塗布液等を内蔵したものは既に数多く市販されている。
【0003】
また、近年、保香性や酸化防止用途での多層ブロー容器(二種三層、三種三層、三種五層等)では、内層には液体、インキ等の内容物と反応しない材質(例えば、PE,PP)とし、中間層にガスバリアー性を確保するためにガスバリアー性樹脂とし、外層を通常の材質(例えば、PE,PP)としている。
例えば、マヨネーズの容器では、スクイズ性能が必要であることから、三種五層とし、内層(第一層)、外層(第五層)にはPEが採用され、中間層(第三層)には材質的に比較的に高価なガスバリアー性樹脂が採用されており、この中間層の肉厚は0.1mm程度とされている。また、第二層、第四層となる接着層には、夫々内層、外層と中間層とに相溶可能な樹脂が採用され、全体の肉厚で0.8mm程度としている。
【0004】
しかしながら、上記三種五層などの容器を塗布具の軸体に使用する場合には、成形設備が大型化し、コストなどがかかる点に課題があり、また、樹脂間でのブロッキング、ブリッジの発生が多くなるなどの課題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、成形性、要求品質を低下させることなく、ダイレクトブロー成形機械での成形調達を可能としてコストの抑制を図ることができる塗布具を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記従来の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ダイレクトブロー成形機械での成形調達を可能とするためオレフィン系樹脂と、ガスバリアー性樹脂及び接着性樹脂とを特定の配合量とすることにより、上記目的の塗布具を得ることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明の塗布具は、(1)〜(4)に存する。
(1) インキ又は塗布液を内蔵する容器から構成された軸本体を備え、該軸本体の先端部にインキ又は塗布液の吐出機構部を有する塗布具において、前記軸本体がオレフィン系樹脂40〜60重量%、接着性樹脂20〜40重量%及びガスバリアー性樹脂10〜30重量%とからなる配合組成でダイレクトブロー成形された成形体からなることを特徴とする塗布具。
(2) オレフィン系樹脂がポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂から選ばれる少なくとも1種である上記(1)記載の塗布具。
(3) 接着性樹脂が接着性オレフィン系樹脂である上記(1)記載の塗布具。
(4) ガスバリアー性樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂である上記(1)記載の塗布具。
なお、本明細書で規定する「塗布具」とは、修正液を被塗布面に塗布するための修正ペン、インキを被塗布面に筆記するためのボールペン、マーキングペンなどの筆記具、液状化粧料などを塗布するように充填されている化粧具などをいう。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
図1(a)及び(b)は、本発明の塗布具の実施形態の一例を示すものであり、本実施形態の塗布具10は、筆記具(マーキング用ペン)として用いられるものである。
【0008】
この塗布具10の軸本体11は、オレフィン系樹脂(A)40〜60重量%、接着性樹脂(B)20〜40重量%及びガスバリアー性樹脂(C)10〜30重量%とからなる配合組成(全量100重量%)、好ましくは、(A)45〜55重量%、(B)25〜35重量%及び(C)15〜25重量%とからなる配合組成でダイレクトブロー成形された成形体からなるものである。
このブロー成形体に用いるオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリメチルペンテン樹脂(TPX)から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、具体的には、日本ポリオレフィン社製のKB165A(HDPE)、日本ポリケム社製のHY540(HDPE)、昭和電工社製のEZ−112(PP)、日本ポリケム社製のEZ7(PP)、三井化学社製のMX002(TPX)などが挙げられる。
【0009】
このブロー成形体に用いる接着性樹脂としては、オレフィン系樹脂及びガスバリアー性樹脂に対して相溶性を有するものが好ましく、例えば、無水マレイン酸変性ポリオレフィンなどの接着性オレフィン系樹脂が挙げられる。具体的には、三菱化学社製のモディック L−502、L−400F、三井化学社製のアドマー LB−530などが挙げられる。
また、このブロー成形体に用いるガスバリアー性樹脂としては、例えば、ガスバリアー性に優れるエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)が挙げられ、具体的には、日本合成化学社製のソアノール AT4403(EVOH)、クラレ社製のエバール EP−F101(EVOH)などが挙げられる。
なお、上記「エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂」(EVOH)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)のケン化物であり、EVAよりも更に耐薬品性、耐溶剤性、ガスバリアー性が優れている点に特徴を有し、エチレン含量(通常27〜47mol%)により多種のグレードがあり、塗布具(修正ペン、ボールペン、マーキングペン、化粧具等)の用途、並びに、インキ又は塗布液などを考慮することにより最適のエチレン含量のEVOHを適合させることができる。
【0010】
上記配合組成において、オレフィン系樹脂の量が40重量%未満であると、底部ピンチオフ強度が不足し、割れにつながり、耐衝撃強度不足となり、また、60重量%を超えると、接着性樹脂、ガスバリアー性樹脂の効果が得られず、好ましくない。
また、接着性樹脂の量が20重量%未満であると、オレフィン系樹脂とガスバリアー性樹脂の溶融不足となり、また、40重量%を超えると、必要効果に対して過剰となり、コスト高にもなり、好ましくない。
更に、ガスバリアー性樹脂の量が10重量%未満であると、目的とする効果が得られず、また、30重量%を超えると、必要効果に対して過剰となり、コスト高にもなり、好ましくない。
【0011】
前記軸本体11を構成するダイレクトブロー成形体は、上記配合組成の各樹脂を用いてダイレクトブロー成形機により製造することができる。具体的には、下記▲1▼〜▲3▼の態様が挙げられる。
▲1▼オレフィン系樹脂(A)と接着性樹脂(B)とガスバリアー性樹脂(C)とを予めドライブレンドにより混合しておき、この混合物をダイレクトブロー成形機のホッパーに投入して成形することにより、ダイレクトブロー成形体を製造することができる。
▲2▼用いる三樹脂の混合安定性の確保のために、三樹脂のうち、オレフィン系樹脂(A)、接着性樹脂(B)の二樹脂を予めドライブレンドにより混合しておき、残りのガスバリアー性樹脂(C)を成形機のホッパーに投入して成形することにより、ダイレクトブロー成形体を製造することができる。
【0012】
▲3▼用いる三樹脂の混合安定性の確保のために、三樹脂のうち、接着性樹脂(B)、ガスバリアー性樹脂(C)の二樹脂を予めドライブレンドにより混合しておき、残りのオレフィン系樹脂(A)を成形機のホッパーに投入して成形することにより、ダイレクトブロー成形体を製造することができる。
【0013】
本発明におけるダイレクトブロー成形法としては、ダイレクトブロー成形機、例えば、タハラ社製TL機、樹脂温度220〜240℃、金型温度22℃、サイクルタイム10sec等でダイレクトブロー成形することができる。
また、上記▲1▼〜▲3▼の各混合物を調製する際に、混合効果の向上、成形体の物性向上の点等から、更に、流動パラフィン(モレスコホワイトP−55、松村石油研究所社製)などのブレンドオイルを、上記樹脂の配合組成全量に対して、1〜10重量%、好ましくは、1〜5重量%とすることが望ましい。
【0014】
上記各製造により得られる軸本体11の厚み(肉厚)は、塗布具の用途、軸本体11に充填するインキ又は化粧液等の内容液等により異なるが、0.5mm〜1.2mm、好ましくは、0.8〜1.2mmとすることが望ましい。
厚み(肉厚)が0.5mm未満であると、インキ又は化粧液等の内容液の透過率が高くなり本発明の塗布具に最適の軸本体が得られず、また、強度的にも不十分となり、しかも、成形の困難化が増すこととなる。また、厚み(肉厚)が1.2mmを越えた場合も、本発明の効果は変わらないが、成形の困難化が増し、しかも、コスト高となる傾向となる。
【0015】
前記軸本体11に充填するインキ又は塗布液は、通常の修正ペン、ボールペン、マーキングペン、化粧具等に使用されるインキ又は塗布液であれば含有させる溶剤等も含めて何等限定されるものではなく、塗布具(修正ペン、ボールペン、マーキングペン、化粧具等)の用途により最適のインキ又は塗布液が調製されるものである。
【0016】
前記軸本体11の先端部には、図1(a)に示すように、先軸12が固着されている。また、軸本体11内には筆記具用インキ13と撹拌ボール14とが内蔵されている。
上記軸本体11と先軸12内には、弁棒15、バネ受け16、スプリング17、弁座18を有するバルブ本体部19とペン芯20からなる吐出機構部21が設けられている。なお、22はインキ吸蔵体、23はキャップである。
【0017】
このように構成される本実施形態の塗布具10では、軸本体11をオレフィン系樹脂40〜60重量%、接着性樹脂20〜40重量%及びガスバリアー性樹脂10〜30重量%とからなる配合組成でダイレクトブロー成形された成形体としたので、ダイレクトブロー成形機械で調達することができ、コストの抑制が図られ、しかも、成形性、要求品質を低下させることがない塗布具が提供されることとなる。
【0018】
本発明の塗布具は、上述のように構成され、使用されるものであるが、上記実施形態に限定されるものではない。
本発明の塗布具は、インキ又は塗布液を内蔵する容器から構成された軸本体を備え、該軸本体の先端部にインキ又は塗布液の吐出機構部を有する塗布具において、前記軸本体軸本体11を上記構成のダイレクトブロー成形体から構成したことを要旨とするものであり、上記構成の軸本体であれば、その他の軸本体の構造、形状等は特に限定されるものでない。
また、吐出機構部はインキ又は塗布液などの内容液を吐出できるものであれば、上記実施形態で記載のペン芯の他、刷毛構造、ボールペン構造などの吐出機構部としてもよく、その吐出機構部の構造等は何ら限定されるものでない。
【0019】
次に、実施例及び比較試験例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
オレフィン系樹脂:HDPE(KB165A、日本ポリオレフィン社製)、ガスバリアー性樹脂:EVOH〔エバールEP−F101(エチレン含量40mol%)、クラレ社製〕、接着性樹脂:モディックL−502(三菱化学社製)を材料としてダイレクトブロー成形機(TL機、タハラ社製、以下同様)を用いて軸本体を作製した。
具体的には、オレフィン系樹脂50重量%と接着性樹脂30重量%とEVOH20重量%をタンブラーより混合してホッパーに投入して、ダイレクトブロー成形機で成形することにより、ダイレクトブロー成形体を製造した。
成形された軸本体の全長Lは、95(mm)、胴部外径Wは、φ14(mm)、口部内径は、φ7.6(mm)、厚み(肉厚)dは、1(mm)であった。
上記軸本体を用いて図1に示す筆記具を作製した。
【0021】
(実施例2)
オレフィン系樹脂:HDPE(KB165A、日本ポリオレフィン社製)、ガスバリアー性樹脂:EVOH〔ソアノールAT4403(エチレン含量40mol%)、日本合成化学社製〕、接着性樹脂:モディックL−502(三菱化学社製)を材料としてダイレクトブロー成形機を用いて軸本体を作製した。
具体的には、オレフィン系樹脂50重量%と接着性樹脂30重量%とEVOH20重量%をタンブラーにより混合してホッパーに投入して、ダイレクトブロー成形機で成形することによりダイレクトブロー成形体を製造した。
成形された軸本体の全長Lは、95(mm)、胴部外径Wは、φ14(mm)、口部内径は、φ7.6(mm)、厚み(肉厚)dは、1(mm)であった。
上記軸本体を用いて図1に示す筆記具を作製した。
【0022】
(実施例3)
オレフィン系樹脂:HDPE(HY540、日本ポリケム社製)、ガスバリアー性樹脂:EVOH〔エバールEP−F101(エチレン含量40mol%)、クラレ社製〕、接着性樹脂:アドマーLB−530(三井化学社製)を材料としてダイレクトブロー成形機を用いて軸本体を作製した。
具体的には、オレフィン系樹脂50重量%と接着性樹脂30重量%とEVOH20重量%をタンブラーにより混合してホッパーに投入して、ダイレクトブロー成形機で成形することによりダイレクトブロー成形体を製造した。
成形された軸本体の全長Lは、95(mm)、胴部外径Wは、φ14(mm)、口部内径は、φ7.6(mm)、厚み(肉厚)dは、1(mm)であった。
上記軸本体を用いて図1に示す筆記具を作製した。
【0023】
(比較試験例)
上記実施例1の三種の樹脂を用いて内層をEVOH層、中間層を接着性樹脂層、外層をHDPE層とした二層構造(二種三層構造)のダイレクトブロー成形体を軸本体としたもの(比較例1、コントロール)と、クラレ社製のBPO−10A樹脂を用いたダイレクトブロー成形体を軸本体としたもの(比較例2)と、PP単身ダイレクトブロー成形体を軸本体としたもの(比較例3)と、上記実施例1〜3とを使用した塗布具を作製し、下記評価法によりインキ揮発減量、耐衝撃性及び保香性を測定した。なお、上記比較例1及び2の成形された軸本体の全長L、胴部外径W、口部内径及び厚み(肉厚)は実施例1と同じである。
インキの配合組成、揮発減量、耐衝撃性及び保香性の評価方法などは下記のとおりである。
これらの結果を下記表1に示す。
【0024】
(インキの配合組成)
カーボンブラック 10重量%
樹脂 9重量%
エチレングリコール 3重量%
水 73重量%
香料 5重量%
【0025】
(揮発減量の評価方法)
50?の恒温室に上記インキ8gを充填した図1の製品を入れ、1カ月経過後に、軸本体から揮発したインキの揮発量を計量器により測定し、下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:150mg未満
○:150〜200mg
×:200mg超過(製品として採用不可能)
【0026】
(耐衝撃性の評価法)
製品を1.5mの高さから杉板製床面に落下させ、軸本体の割れ性を下記評価基準で目視で評価した。
評価基準:
◎:全く割れの発生がない。
○:一部割れの発生が見受けられるが、製品として採用可能の範囲。
×:割れの発生があり、製品として採用できない。
【0027】
(保香性の評価法)
揮発減量(1カ月)測定品について、筆記しインキ中に含有された香料の飛散程度を下記評価基準で官能評価した。
評価基準:
◎:初期(充填直後)の香りが維持されている。
○:若干香りの飛散があるが、残香が判る程度。
×:全く香りがなくなってしまっている。
【0028】
【表1】
【0029】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜3は、比較例1(コントロール)の二種三層構造のダイレクトブロー成形体と同等の性能を有するものであり、また、比較例2の特殊グレードのダイレクトブロー成形体、比較例3のPP単身ダイレクトブロー成形体と較べ、揮発減量、耐衝撃性及び保香性に優れていることが判明した。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、軸本体をポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる樹脂40〜60重量%、接着性オレフィン系樹脂20〜40重量%及びガスバリアー性樹脂となるエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂とブレンドオイル1〜10重量%とからなる組成でダイレクトブロー成形された成形体により構成できるので、ダイレクトブロー成形機械での調達することができ、コストの抑制が図られ、しかも、成形性、要求品質を低下させることがない塗布具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の塗布具の実施形態の一例を示す部分断面図である。
【符号の説明】
10 塗布具
11 軸本体
12 先軸
21 吐出機構部
Claims (1)
- インキ又は塗布液を内蔵する容器から構成された軸本体を備え、該軸本体の先端部にインキ又は塗布液の吐出機構部を有する塗布具において、前記軸本体がポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂から選ばれる少なくとも1種からなる樹脂40〜60重量%、接着性オレフィン系樹脂20〜40重量%及びエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂10〜30重量%とブレンドオイル1〜10重量%とからなる配合組成でダイレクトブロー成形された成形体からなることを特徴とする塗布具。
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