JP3544202B2 - 筆記具用インキ収容管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油性ボールペン用インキ収容管等の筆記具用インキ収容管として好適に用いられ、インキの経時的な保管性に優れる筆記具用インキ収容管に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、筆記具用インキ収容管は、ポリプロピレンやポリエチレンなどの直鎖系のオレフィン樹脂を使用するのが通常であり、油性ボールペンもインキ収容管としてポリプロピレン製のインキ収容管を使用している。
【0003】
これは、従来の油性ボールペン用インキの溶剤が蒸気圧0.01mmHg以下の揮発性が低い溶剤を使用し、吸湿性も低い溶剤であったため、特に溶剤の揮発や水分の吸湿に対してそれほど問題視されず、コスト的にもメリットのあるポリプロピレン製のインキ収容管を変更する意味がなかったからである。
【0004】
一方、従来積層構造を有するラミネートなどは、外界の酸素や二酸化炭素及び水分を防ぐためのガスバリアー用アミド系樹脂とその樹脂に対する水分防止のため、ポリエチレンやポリプロピレン等を使用している。
通常、これらのガスバリアー用アミド系樹脂とポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂は、高分子同士に親和性がないため、接着層を設けて両樹脂を張り合わせるのが一般的であった。また、これ以外の方法等としては金属管を使用する以外方法はないのが現状である。
【0005】
他方、本願出願人は、分子内の炭素数が4以上のアルコール、多価アルコール、グリコールモノエーテルから選ばれる溶剤をインキの主溶剤とした、優れた筆記性能及び筆記描線の乾燥性、並びに筆跡の裏抜けをなくした筆記具用インキを開発している。
【0006】
しかしながら、この溶剤を含有するインキをポリプロピレン製のインキ収容管に充填した場合には、溶剤の透過性や水分の吸湿性に対し不十分となり、インキの経時的な保管性に劣る点に課題を生じている。
また、上述のごとく、マヨネーズの容器等に代表されるようなラミネートのように外部からの影響を防ぐために使用しているオレフィン系樹脂と全く性質の異なるアミド系樹脂の層を張り合わせるための接着層を設けたものでは、上記溶剤では直鎖系オレフィン樹脂内にかかえられてしまった溶剤分が多湿下では吸湿に多大に影響してしまうためアミド系樹脂層が水分で膨潤してしまったり、溶剤の透過に伴いアミド系樹脂層を劣化させてしまう点に課題がある。更に、異種樹脂層間を密着させるための接着層等が存在してしまうと、両層間に親和性があるため、その部分に水分や溶剤分が蓄積され膨らんでしまったり、透明性を失ってしまう点に課題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、分子内の炭素数が4以上のアルコール、多価アルコール、グリコールモノエーテルから選ばれる溶剤を含有するインキを収容してなる筆記具用インキ収容管において、多種多様の環境下であっても、溶剤の透過性や水分の吸湿性に対して十分満足でき、インキの経時的な保管性に優れる筆記具用インキ収容管を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来の技術の課題等について、鋭意検討した結果、分子内の炭素数が4以上のアルコール、多価アルコール、グリコールモノエーテルから選ばれる溶剤を含有する筆記具用インキを収容してなるインキ収容管の構造を特定構造とすることにより、上記目的の筆記具用インキ収容管が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
本発明は、次の(1)〜(3)に存する。
(1)分子内の炭素数が4以上のアルコール類、多価アルコール類、グリコールモノエーテル類から選ばれる少なくとも1種の溶剤を含有する筆記具用インキを収容してなるインキ収容管と、該インキ収容管の先端に具備したボールペン型チップとを備えた筆記具用インキ収容管であって、前記インキ収容管が2種以上のオレフィン系樹脂で押し出し成形された接着層を有しない積層構造からなり、かつ、第2層以降に、環状オレフィン又は無機フィラーをコンパウンドしたものを積層したことを特徴とする筆記具用インキ収容管。
(2)前記オレフィン系樹脂は、視認性を有するオレフィン系樹脂であることを特徴とする上記(1)記載の筆記具用インキ収容管。
(3)前記インキ収容管の後端部には、筆記具用インキの溶剤揮発及び吸湿を防ぐインキ追従体を有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の筆記具用インキ収容管。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の筆記具用インキ収容管は、分子内の炭素数が4以上のアルコール類、多価アルコール類、グリコールモノエーテル類から選ばれる少なくとも1種の溶剤を含有する筆記具用インキを収容してなるインキ収容管と、該インキ収容管の先端に具備したボールペン型チップとを備えた筆記具用インキ収容管であって、前記インキ収容管が2種以上のオレフィン系樹脂で押し出し成形された接着層を有しない積層構造からなり、かつ、第2層以降に、環状オレフィン又は無機フィラーをコンパウンドしたものを積層したことを特徴とするものである。
【0010】
本発明におけるインキ収容管は、2種以上のオレフィン系樹脂、すなわち、特性の異なる2種以上のオレフィン系樹脂で押し出し成形された接着層を有しない積層構造からなり、かつ、第2層以降に、環状オレフィン又は無機フィラーをコンパウンドしたものを積層したことが必要である。
この押出成形により構成される積層構造のインキ収容管に用いるオレフィン系樹脂としては、本発明の効果を発揮せしめるものであれば、特に限定されないが、耐溶剤性、成形性、環境性、透明性、経済性等からポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、オレフィン系エラストマー、環状ポリオレフィン、ポリメチルペンテンなどから選ばれるオレフィン系樹脂、特に好ましくは、耐水分透過性に優れた透明部材又は半透明部材からなる視認性を有するオレフィン系樹脂からなるものが望ましい。
【0011】
特に、本発明の筆記具用インキ収容管に収容されるインキの溶剤揮発及び吸湿を防ぐために、インキ後端部に好ましく充填される後述のインキ追従体に影響されない直鎖系オレフィン系樹脂などのポリプロピレンやポリエチレンを内層(第一層)に用いることが好ましく、それ以外の第二層以上は別系統のオレフィン系熱可塑性樹脂などで構成されることが好ましい。
【0012】
別系統のオレフィン系樹脂としては、例えば、直鎖系オレフィン系樹脂に無機フィラーをコンパウンドしたもの、ポリメチルペンテンや環状オレフィンなどが挙げられる。
特に、インキ溶剤の吸湿抑制の点から環状オレフィン系樹脂が好ましい。この環状オレフィン系樹脂としては、例えば、視認性に優れる(光線透過率90%以上の)ポリオレフィン樹脂と非晶性樹脂の性能を融合した環状オレフィンコポリマー、具体的には、APL(アペル)シリーズ(APL6509T、APL6013T、APL6011T、APL6015T、APL8008F、APL8009T、APL5014DP、以上、三井化学社製)、または、C5留分中のジシクロペンタジエンを主原料にする非晶質ポリオレフィンの一種で視認性に優れる(光線透過率90%以上の)環状オレフィン樹脂、具体的には、ゼオネックス、ゼオネア(日本ゼオン社製)などが挙げられる。
【0013】
また、上記直鎖系オレフィン系樹脂に無機フィラーをコンパウンドしたものに用いる無機フィラーとしては、例えば、鱗片状マイカや微粒子チタン、微粒子シリカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。
これらの無機フィラーの平均粒子径は、分散性の向上、透過物質の立体障害性の点から、好ましくは、0.5〜50μm、更に好ましくは、0.5〜30μmとなるものが望ましい。また、この無機フィラーを充填した樹脂層は、その厚さと充填量によって透明感を低減させてしまうことがあるので、性能とのバランスに十分注意しなければならず、その無機フィラーの配合量は、その樹脂層中に0.01〜20重量%配合することが望ましい。
【0014】
また、これらの樹脂から形成された層間の密着性は、接着を目的とする接着層を用いることなく、上記に挙げたオレフィン系樹脂の親和性だけで形成することができる。これは、例えば、オレフィン系樹脂Aとオレフィン系樹脂Bでは、樹脂間の界面はできてしまうが、ファンデルワールス力を主とした親和性で接触させることができる。また、オレフィン系樹脂Aとオレフィン系樹脂A+無機フィラーは、同じ樹脂で押し出すため界面は溶融し無機フィラーの層が配向する結果となる。
なるべく界面が無い方が好ましいが、多湿条件下などでは接着層があると、本発明に用いる溶剤と外界から侵入してくる水分で更に層間を劣化させる結果となり、樹脂の透明感は失われ、白く濁る現象が生じてくる。また、樹脂間に接着層が入るとコスト的にも悪くなるからである。
【0015】
本発明において、2種以上のオレフィン系樹脂で押し出し成形された接着層を有しない積層構造としては、二層構造、三層構造、四層構造、五層構造等が挙げられ、例えば、a)内層及び外層に夫々特性の異なるオレフィン系樹脂からなる2層構造、b)内層にオレフィン系樹脂、中間層に内層のオレフィン系樹脂と特性の異なるオレフィン系樹脂、外層に内層と同じ特性のオレフィン系樹脂又は外層に内層及び中間層のオレフィン系樹脂と特性の異なるオレフィン系樹脂からなる3層構造、c)第1層(内層)〜第4層(最外層)の4層構造からなり、隣り合う層が夫々特性の異なるオレフィン系樹脂からなるものが挙げられる。
好ましくは、本発明の効果を更に発揮させるために、上記特性の環状オレフィン系樹脂層、直鎖系オレフィン系樹脂に無機フィラーをコンパウンドしたものからなる積層構造が好ましく、例えば、二層構造の場合は最外層に、三層構造の場合はその中間層に、四層以上の場合は、その最外層と最内層の間に一層以上、又は最外層に設けられていることが望ましい。
【0016】
本発明において、2種以上のオレフィン系樹脂で押し出し成形された接着層を有しない積層構造における各樹脂層の厚さ(L1、L2、L3……)と、これらの樹脂層を合わせた総厚(L)は、収容するインキ種、用いるオレフィン系樹脂種などにより変動するが、好ましくは、強度、耐溶剤透過、吸湿抑制、成形性、透明感、デザイン性などの点から上記総厚(L)を0.05〜2.0mmとし、かつ、上記各オレフィン系樹脂層の各厚さ(L1、L2、L3……)を0.05〜1.8mmとすることが望ましい。
【0017】
本発明の筆記具用インキ収容管に収容する筆記具用インキの主溶剤は、分子内の炭素数が4以上のアルコール、多価アルコール、グリコールモノエーテルから選ばれる少なくとも1種である。
具体的に用いることができるアルコール類としては、炭素数が4以上の脂肪族アルコールであり、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、n−ヘキサノール、メチルアミルアルコール、2−エチルブタノール、n−へブタノール、2−へブタノール、3−へブタノール、n−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−デカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、へブタデカノール、シクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコールやその他多種の高級アルコール等が挙げられる。
【0018】
また、多価アルコール類としては、例えば、ジエチレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、へキシレングリコール、オクチレングリコール等の分子内に2個以上の炭素、2個以上の水酸基を有する多価アルコール類が挙げられる。
更に、グリコールモノエーテルとしては、例えば、ブチルエーテル、へキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノへキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、3−メチル−3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。
以上挙げた溶剤の中で特に好ましいのは、安全性及び経口毒性等の点から、エチレングリコール誘導体等以外の溶剤である。
これらの溶剤の含有量はインキ全量に対して、20〜80重量%である。
【0019】
本発明の筆記具用インキ収容管に収容する筆記具用インキ組成としては、上記主溶剤の他に、顔料(樹脂顔料含む)、染料などの着色剤、樹脂、及び筆記具用インキに含有される任意成分などが挙げられる。
筆記具用インキに含有される任意成分としては、例えば、インキに悪影響を及ぼさず相溶することができる防錆剤、防黴剤、界面活性剤、潤滑剤及び湿潤剤等を挙げることができる。特に、脂肪酸などは、潤滑剤として好適に使用できる。また、乾燥抑制用添加剤として製品特性上、悪影響を及ぼさない範囲で主溶剤に相溶する不揮発性溶剤等も含有することができる。
【0020】
本発明における筆記具用インキ組成物をボールペンに用いる場合には、インキ追従体をボールペン後端部に備えることが好ましい。本発明に用いる上述の溶剤は、揮発性があるので、揮発防止、吸湿性防止、インキ漏れ防止としてインキ追従体を用いるものである。
用いるインキ追従体としては、インキに使用する溶剤に対して低透過性、低拡散性が必要であり、そのベースとしては不揮発性や難揮発性の流動体、具体的には、ポリブテンや流動パラフィン等、本発明に用いる上記特性の溶剤と基本的に相溶性を有さない非シリコン系の油脂類を使用することができる。
これらの物質の粘度が低い場合には、増粘剤やゲル化剤を用いることが好ましい。具体的には、金属セッケン類、ベントナイト類、脂肪酸アマイド類、水添ヒマシ油類、酸化チタンやシリカやアルミナ等を含む金属微粒子類、セルロース類、エラストマー類等が挙げられる。
【0021】
次に、本発明の筆記具用インキ収容管の具体的な実施形態を図1及び図2により更に詳しく説明する。
図1(a)、(b)及び図2は、本発明の筆記具用インキ収容管をボールペン用インキ収容管(リフィール)に適用した場合である。
本実施形態の筆記具用インキ収容管Aは、先端にボールペン型チップ10を具備したインキ収容管11を有している。なお、12はインキ収容管に充填される上記特性の溶剤を含有するボールペン用インキ、13はペン先部とインキ収容管との継ぎ手部材であり、14はインキ追従体である。
このインキ収容管11は、共押し出し成形により成形されるものであり、図1(b)に示すように、上述のオレフィン系樹脂、本形態では内層及び最外層に夫々PPからなる内層部11a、11c(各厚さ0.2mm)と、内層部11aと外層部11cの中間に環状オレフィン樹脂からなる中間層11b(厚さ0.6mm)11bとから構成されている。
この筆記具用インキ収容管Aは、図2に示すように、ボールペン用軸体15に装着してボールペンとして用いられる。なお、16は尾栓、17はキャップ体、18はシールゴムである。
【0022】
このように構成される本発明の筆記具用インキ収容管が、何故、多種多様の環境下であっても、上述の溶剤の透過性や水分の吸湿性に対しても十分満足でき、インキの経時的な保管性等に優れるかは、以下の理由によるものと推察される。
このような効果を発揮する理由としては、使用するインキ溶剤とオレフィン系樹脂の間に関わる相互作用が大きく影響するものである。すなわち、分子内の炭素数が4以上のアルコール類、多価アルコール類、グリコールモノエーテル類から選ばれるものは吸湿性の強い有機溶剤であるため、使用したインキ収容管材質を可塑化させる作用があり、この場合には高温多湿条件下で収容管外部からの水分の透過が激しくなる。そのため、これらの溶剤に親和性の少ない材質を選定しなければならず、その結果、オレフィン系樹脂、好ましくは、直鎖系ではないオレフィン系樹脂が好ましいことが判った。また、インキの揮発等を防止するために用いるインキ追従体などに用いる基油に対しても耐性を有するものでなければならない。そのため、好ましくは、内層をインキ追従体などに使用する基油に対しても耐性を有するオレフィン系樹脂、好ましくは、直鎖系オレフィン系樹脂で保護することが望ましい。そして第2層以降を内層と異なる特性のオレフィン系樹脂、好ましくは、環状オレフィンや無機フィラーをコンパウンドしたもの等で積層することでインキ溶剤の吸湿性を抑制し、インキ追従体に対しても耐性を有するインキ収容管(チューブ)を作製することが可能となる。また、これらのオレフィン系樹脂は透明感があるため、押し出し成形により積層構造としてもその透明感は失われず、特にインキ残量を確認できないといった不都合もないものである。これらのことから、本発明のインキ収容管構造とすることにより、多種多様の環境下であっても、溶剤の透過性や水分の吸湿性に対しても十分な耐透過性、耐吸湿性を有し、インキの経時的な保管性に優れる筆記具用インキ収容管が提供されるものとなる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0024】
〔実施例1〜8及び比較例1〜20〕
(1) 各実施例及び比較例に用いる下記配合組成となる評価用インキ(4種):1〜4を調製し、並びに、下記方法により押し出し成形されたインキ収容管(7種):1〜7を作製した。
【0025】
【0026】
(評価用インキ:3)
着色剤:スピロンイエローC−GNH(保土ヶ谷化学工業社製) 20%
樹脂:ポリビニルブチラール BM−S(積水化学社製) 8%
樹脂:ハイラック110H(日立化成社製) 12%
溶剤:エタノール 60%
【0027】
(評価用インキ:4)
着色剤:スピロンイエローC−GNH(保土ヶ谷化学工業社製) 10%
樹脂:ベッカサイト1111(日立化成社製) 30%
溶剤:ジプロピレングリコールジメチルエーテル 60%
【0028】
(インキ収容管の作製)
下記1〜7に記載の各熱可塑性樹脂を用いて、押し出し成形機(多層押し出し金型、2種2層、3種3層、5種5層等)により内径4.0mm、1.0mm厚の形で筒状に押し出し成形し、長さを100mmに切断して筒状の積層構造又は単層構造のインキ収容管を作製した。
1.第1層(内層)/第2層(中間層)/第3層(外層)=ポリプロピレン(0.3mm)/ポリプロピレンに平均粒径2〜5μmの鱗片状マイカ1重量%充填物(0.3mm)/ポリプロピレン(0.4mm)
2.第1層(内層)/第2層(外層)=ポリプロピレン(0.4mm)/環状オレフィン(アペル8008T、三井化学社製、0.6mm)
3.第1層(内層)/第2層(中間層)/第3層(外層)=ポリプロピレン(0.3mm)/ポリプロピレンに平均粒径0.5〜2μmの微粒子チタン1重量%充填物(0.3mm)/ポリプロピレン(0.4mm)
4.第1層(内層)/第2層(中間層)/第3層(外層)=ポリエチレン(0.2mm)/環状オレフィン(アペル8009T、三井化学社製、0.6mm)/ポリエチレン(0.2mm)
5.ポリプロピレン
6.ABS樹脂
7.第1層(内層)/第2層/第3層/第4層/第5層(最外層)=ポリプロピレン(0.2mm)/接着層(無水マレイン酸変性ポリオレフィン、0.2mm)/ナイロン(ノバミッド1020 三菱化学社製、0.2mm)/接着層(無水マレイン酸変性ポリオレフィン、0.2mm)/ポリプロピレン(0.2mm)
【0029】
(2)ボールペン用インキ収容管の作製
上記方法により得られた各インキ収容管の先端に金属(真鍮)製の継ぎ手部材でボール径1.0mmのボールペンのチップを夫々取り付け、上記配合組成の評価用インキ(4種):1〜4を所定量(1.0g)充填した。下記表1〜表3に実施例及び比較例となる上記各評価用インキと各インキ収容管の組合わせを示す。
その後、各評価用インキを充填した各インキ収容管の後端部より更に下記組成のインキ追従体を所定量(0.15g)充填して油性ボールペン用インキ収容管サンプルとした。
【0030】
(インキ追従体の配合組成)
ダイアナプロセスオイルPW−380(出光興産社製)100重量%を使用した。なお、ペン体などは、インキ追従体が漏れないようにペン先を下にして静置した。
【0031】
上記で得られた各実施例及び比較例となる各油性ボールペン用インキ収容管サンプルを用いて下記方法により吸湿率、透過率、収容管容器の変化について評価した。
これらの評価結果を下記表1〜表3に示す。
【0032】
(評価方法)
温度50℃、湿度30%及び80%の環境下で2週間放置し、インキ収容管内の吸湿率、透過率を測定及び算出した。また、外観上の変化も観察した。
なお、吸湿率の測定は、インキ中の水分量をカールフィッシャー水分計(京都電子工業社製MKA−210)により測定し、水分率をブランクとの差より吸湿率として算出した。
また、透過率の測定は、インキ充填量の変化量と上記水分率より補正を行い、インキ透過率として算出した。
【0033】
(インキ収容管の吸湿率の評価)
吸湿率の度合いを下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:吸湿率が1.00%以下のもの
○:吸湿率が1.00〜1.50%
△:吸湿率が1.50〜2.00%
×:吸湿率が2.00%以上のもの
【0034】
(インキ収容管の透過率の評価)
透過率の度合いを下記評価基準で評価した。
評価基準:
◎:透過率が1.00%以下のもの
○:透過率が1.00〜1.50%
△:透過率が1.50〜2.00%
×:透過率が2.00%以上のもの
【0035】
(インキ収容管容器の変化の評価)
50℃、80%の環境下で2週間放置し、目視にて劣化のあったものの下記評価基準で評価した。
評価基準:
○:外観が何も変化なかったもの。
△:外観に割れや白く濁った状態あるいは変形が観察されたもの(程度が少ない)。
×:外観に割れや白く濁った状態あるいは変形が観察されたもの(程度が多い)。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
上記表1〜表3の結果から明らかなように、本発明の範囲となる実施例1〜8の組合せの各インキ収容管は、本発明の範囲外となる比較例1〜20の組合せに比べて溶剤の吸湿性や溶剤透過性に非常に優れていることが判明した。また、本発明の範囲となる実施例1〜8の各インキ収容管は、50℃、80%の環境下で2週間放置しても、外観に割れや白濁状態あるいは変形もなく、視認性にも優れていることが判明した。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、多種多様の環境下であっても、溶剤の透過性や水分の吸湿性に対しても十分な耐透過性、耐吸湿性を有し、インキの経時的な保管性に優れる筆記具用インキ収容管が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の筆記具用インキ収容管をボールペン用インキ収容管に適用した一例を断面態様で示す縦断面図であり、(b)は、その要部を示す部分横断面図である。
【図2】図1のボールペン用インキ収容管を備えたボールペンの縦断面図である。
【符号の説明】
11 インキ収容管
11a オレフィン系樹脂層
11b オレフィン系樹脂層
11c オレフィン系樹脂層
Claims (3)
- 分子内の炭素数が4以上のアルコール類、多価アルコール類、グリコールモノエーテル類から選ばれる少なくとも1種の溶剤を含有する筆記具用インキを収容してなるインキ収容管と、該インキ収容管の先端に具備したボールペン型チップとを備えた筆記具用インキ収容管であって、前記インキ収容管が2種以上のオレフィン系樹脂で押し出し成形された接着層を有しない積層構造からなり、かつ、第2層以降に、環状オレフィン又は無機フィラーをコンパウンドしたものを積層したことを特徴とする筆記具用インキ収容管。
- 前記オレフィン系樹脂は、視認性を有するオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の筆記具用インキ収容管。
- 前記インキ収容管の後端部には、筆記具用インキの溶剤揮発及び吸湿を防ぐインキ追従体を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具用インキ収容管。
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