JP3850971B2 - 中空成形容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスバリア性および耐衝撃性に優れた中空成形容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)はガスバリア性が良好で溶融成形が可能なことから、食品や医薬品等、品質の保持が重要視される内容物を包装する材料として好適に用いられている。かかるEVOHを用いた包装容器の形態は多様であり、中でもEVOH層を有する中空成形容器は広く用いられている。
EVOHを中間層とし、内外層にポリオレフィンあるいはポリエステル等の熱可塑性樹脂を積層した構成は、かかる中空成形容器の内でも最も一般的な構成であり、食品、飲料水、化粧品、薬品、医薬品、農薬、油脂類、灯油類又はガソリン類等の容器として広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、EVOHはポリオレフィン等と比較して固くてもろい樹脂であるため、EVOH層を有する中空成形容器は力学的特性、特に耐衝撃性に問題を有する場合が多い。したがって落下強度が不十分であり、特にピンチオフ部分の強度に問題を有している。
【0004】
しかして、本発明の目的は、ガスバリア性および耐衝撃性に優れた中空成形容器を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、エチレン含量20〜60モル%、ケン化度90%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体60〜99重量%および(メタ)アクリル酸含量1〜30重量%のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体40〜1重量%からなり、エチレン−ビニルアルコール共重合体のマトリックス中にエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が分散している樹脂組成物からなる中空成形容器を提供することによって達成される。
【0006】
このとき、上記樹脂組成物からなる層と熱可塑性樹脂からなる層を有する積層中空成形容器が好ましい実施態様として挙げられる。ここで用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンまたはポリエステルが好適である。
また、樹脂組成物からなる層と熱可塑性樹脂からなる層の間に接着性樹脂からなる層を有することが好ましく、かかる接着性樹脂が、不飽和カルボン酸又はその無水物で変性したポリオレフィンであることがより好ましい。
【0007】
さらに、上記樹脂組成物に用いるエチレン−ビニルアルコール共重合体が、エチレン含量の異なる2種類のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a)および(b)の混合物からなり、(a)のエチレン含量が20〜45モル%、(b)のエチレン含量が45〜65モル%、(a)と(b)のエチレン含量の差が8モル%以上であり、かつその配合重量比{(a)/(b)}が2/1〜50/1であることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のEVOHは、エチレンとビニルエステルからなる共重合体をアルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。
ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとしてあげられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。
【0009】
本発明におけるEVOHのエチレン含量は20〜60モル%であり、好適には25〜50モル%、より好適には25〜45モル%である。なおここで、EVOHがエチレン含量の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をエチレン含量とする。
エチレン含量が20モル%未満では、高湿度下でのガスバリア性が低下し溶融成形性も悪化する。また60モル%を越えると十分なガスバリア性が得られない。
【0010】
また、本発明のEVOHのビニルエステル成分のケン化度は90%以上であり、好適には95%以上、より好適には98%以上である。なおここで、EVOHがケン化度の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。
ケン化度が90モル%未満では、ガスバリア性が低下するだけでなく、EVOHの熱安定性が悪化し、成形物にゲルが発生しやすくなる。
【0011】
またEVOHには、本発明の目的が阻害されない範囲で他の単量体を少量共重合することもできる。共重合できる単量体の例としては、プロピレン、ブテン、イソブテン、4−メチルペンテン−1、ヘキセン、オクテンなどのα−オレフィン、イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシラン系化合物、不飽和スルホン酸、その塩、アルキルチオール類、ビニルピロリドンなどがあげられる。
【0012】
なかでも、EVOHに共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有する場合は共押出し成形あるいは共射出成形する際の基材樹脂との溶融粘性の整合性が改善され、均質な成形が可能なだけでなく、EVOH同士をブレンドに使用する際の分散性が改善される点でも有効である。ここで、ビニルシラン系化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。なかでも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
【0013】
本発明のEVOH中のリン化合物濃度は、リン元素重量換算で1〜200ppm、好適には2〜150ppm、最適には5〜100ppmの範囲であることが溶融成形性や熱安定性の点から好ましい。
【0014】
さらにナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンなどのアルカリ金属イオンを金属重量換算でEVOHに対し10〜500ppm含有させることも本発明の効果を増進させ、層間接着性や相溶性の改善のために効果的である。アルカリ金属化合物としては、一価金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、リン酸塩、金属錯体等があげられ、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩等があげられ、好適には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウムがあげられる。
【0015】
また、本発明に用いるEVOHの好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下で測定した値)は、好適には0.1〜50g/10分、最適には0.5〜20g/10分である。なおここで、EVOHがメルトフローレートの異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をメルトフローレートとする。
【0016】
本発明で用いるEVOHとしては、エチレン含量および/またはケン化度の異なる2種以上のEVOHをブレンドして用いる事が好適である。
特に、EVOHが、エチレン含量の異なる2種類のEVOH(a)および(b)の混合物からなり、(a)のエチレン含量が20〜45モル%、(b)のエチレン含量が45〜65モル%、(a)と(b)のエチレン含量の差が8モル%以上であり、かつその配合重量比{(a)/(b)}が2/1〜50/1であることが、良好なガスバリア性と耐衝撃性の両立のために好ましい。
【0017】
このとき、EVOH(a)のエチレン含量は20〜45モル%であることが好ましい。より好適には25〜42モル%であり、さらに好適には30〜40モル%である。EVOH(a)のエチレン含量が20モル%未満では、耐衝撃性が悪化し、45モル%を超えるとガスバリア性が低下する。
【0018】
また、 EVOH(b)のエチレン含量は45〜65モル%であることが好ましい。より好適には47〜62モル%であり、さらに好適には50〜60モル%である。EVOH(b)のエチレン含量がかかる範囲にあることで、耐衝撃性が十分に改善される。
【0019】
さらに、 EVOH(a)と(b)のエチレン含量の差は8モル%以上であることが好ましい。より好適には12モル%以上であり、さらに好適には15モル%以上である。EVOH(a)のエチレン含量の差が8モル%未満では、耐衝撃性の改善効果が小さい。
【0020】
またEVOH(a)および(b)の配合重量比{(a)/(b)}が2/1〜50/1であることが好ましい。より好適には3/1〜40/1であり、さらに好適には4/1〜 30/1である。配合重量比が2/1未満では、ガスバリア性が低下し、50/1を超えると耐衝撃性の改善効果が小さい。
【0021】
本発明で用いられるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体とは、エチレンを主成分としアクリル酸またはメタクリル酸を共重合した重合体のことをいう。本発明においては共重合体中のカルボキシル基がナトリウムや亜鉛などの金属の塩の形で存在している、いわゆるアイオノマーを含むものではない。かかるアイオノマーを用いた場合に本願発明の目的が達成されないことは、理由は明らかでないが、後述する比較例に示したとおりである。したがって、具体的にはカルボン酸の金属イオンによる中和度は10%以下、好適には5%以下である。
【0022】
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体中の(メタ)アクリル酸含量は、1〜30重量%であり、好適には2〜25重量%、より好適には3〜20重量%である。(メタ)アクリル酸含量が1重量%未満である場合は樹脂粒子の分散が不良となり、耐衝撃性が悪化する。また30重量%を超える場合には熱安定性が不良となる。
【0023】
また、本発明に用いるエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下で測定した値)は、好適には0.1〜80g/10分、最適には0.5〜50g/10分である。本発明においてエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は、(メタ)アクリル酸含量および/またはMFRの異なる2種あるいはそれ以上のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体をブレンドして用いることもできる。
【0024】
本発明の樹脂組成物におけるEVOHの含有量は60〜99重量%、好ましくは70〜97重量%、より好ましくは80〜95重量%である。またエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の含有量は1〜40重量%、好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の配合比が1重量%より少ない場合には、優れた耐衝撃性が得られず、落下強度が不十分になり、特に押出ブロー成形した際にピンチオフ部分の強度が低下する。また、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の配合比が40重量%より多い場合には、ガスバリア性が著しく低下して実使用に適さない。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、EVOHのマトリックス中にエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が分散しているものである。かかる分散形態を有することで、良好なガスバリア性および耐衝撃性を保有することができる。エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のマトリックス中にEVOHが分散していたり、双方の樹脂が連続状につながっているような形態の時にはガスバリア性の低下が著しい。
【0026】
本発明に用いるEVOHとエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下で測定した値)比としては、EVOHのMFR(Ma)とエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のMFR(Mb)の比Ma/Mbが0.1〜5.0であることが好ましく、より好適には0.15〜3.0、最適には0.2〜2.0である。かかる範囲のMFRの比の樹脂を組み合わせることによって、良好に分散され、本発明の目的を達成することができる。
【0027】
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を増進させ、また溶融安定性等を改善するためにハイドロタルサイト系化合物、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系熱安定剤、高級脂肪族カルボン酸の金属塩(たとえば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等)の一種または二種以上を樹脂組成物に対し0.01〜1重量%添加することは好適である。
【0028】
また、本発明の樹脂組成物に必要に応じて各種の添加剤を配合することもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、あるいは他の高分子化合物を挙げることができ、これらを本発明の作用効果が阻害されない範囲でブレンドすることができる。添加剤の具体的な例としては次のようなものが挙げられる。
【0029】
酸化防止剤:2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)等。
【0030】
紫外線吸収剤:エチレン−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等。
【0031】
可塑剤:フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル、ワックス、流動パラフィン、リン酸エステル等。
帯電防止剤:ペンタエリスリットモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、硫酸化ポリオレフィン類、ポリエチレンオキシド、カーボワックス等。
滑剤:エチレンビスステアロアミド、ブチルステアレート等。
着色剤:カーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、インドリン、アゾ系顔料、ベンガラ等。
充填剤:グラスファイバー、アスベスト、バラストナイト、ケイ酸カルシウム等。
【0032】
また、他の多くの高分子化合物を本発明の作用効果が阻害されない程度にブレンドすることもできる。
【0033】
ここで、本発明の樹脂組成物はEVOHのマトリックス中に平均粒子径が0.3〜1.5μmのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が分散していることが好ましく、0.3〜1.0μmであることがより好ましい。かかる分散形態を有することで良好なガスバリア性および耐衝撃性を得ることができる。平均粒子径が1.5μmより大きい場合には、組成物中での不均一な分散が発生しやすく耐衝撃性が低下するとともにガスバリア性が低下しやすい。また平均粒子径が0.3μm以下の場合、分散粒子を含有する効果が組成物の耐衝撃性に生かされず、良好な耐衝撃性が得られにくい。
【0034】
かかる分散形態は主に、中空成形容器の原料となるペレットの状態において観察される。観察は、破断面の走査型電子顕微鏡観察、あるいは薄片の透過型電子顕微鏡観察等によって行うことができる。これら電子顕微鏡観察等によって得られた写真を画像処理によりその輪郭を特定し、特定された粒子の輪郭の長径と短径の平均の値から各粒子ごとの粒径を求めた。こうして得られた各粒子の粒径の単純平均を分散粒子径とした。このとき、観察方向による粒径の相異を解消するために、互いに垂直な3方向から観察して得られた粒子の平均の値が採用される。
【0035】
このような分散形態を得るために、本発明における混練操作は重要である。高度な分散を有する組成物を得るための混練機としては、連続式インテンシブミキサー、ニーディングタイプ二軸押出機(同方向、あるいは異方向)などの連続型混練機が最適であるが、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダーなどのバッチ型混練機を用いることもできる。また別の連続混練装置としては石臼のような摩砕機構を有する回転円板を使用したもの、たとえば(株)KCK製のKCK混練押出機を用いることもできる。混練機として通常に使用されるもののなかには、一軸押出機に混練部(ダルメージ、CTM等)を設けたもの、あるいはブラベンダーミキサーなどの簡易型の混練機もあげることができる。
【0036】
この中で、本発明の目的に最も好ましいものとしては連続式インテンシブミキサーを挙げることができる。市販されている機種としてはFarrel社製FCM、(株)日本製鋼所製CIMあるいは(株)神戸製鋼所製KCM、LCMあるいはACM等がある。実際にはこれらの混練機の下に一軸押出機を有する、混練と押出ペレット化を同時に実施する装置を採用するのが好ましい。また、ニーディングディスクあるいは混練用ロータを有する二軸混練押出機、例えば(株)日本製鋼所製のTEX、Werner&Pfleiderer社のZSK、東芝機械(株)製のTEM、池貝鉄工(株)製のPCM等も本発明の混練の目的に用いられる。
【0037】
これらの連続型混練機を用いるにあたっては、ロータ、ディスクの形状が重要な役割を果たす。特にミキシングチャンバとローターチップあるいはディスクチップとの隙間(チップクリアランス)は重要で狭すぎても広すぎても本発明の良好な分散性を有する組成物は得られない。チップクリアランスとしては1〜5mmが最適である。
【0038】
また、本発明の良好な分散性を有する組成物を得るためには混練機の比エネルギーとして0.1kWh/kg以上、望ましくは0.2〜0.8kWh/kgで混練することが最良であることが判明した。
比エネルギーは混練に使用されるエネルギー(消費電力量;kW)を1時間あたりの混練処理量(kg)で除して求められるものであり、その単位はkWh/kgである。比エネルギーが通常の混練で採用される値より高い値で混練することが本発明の組成物を得るためには必要であり、比エネルギー0.1kWh/kg以上とするためには、単に混練機の回転数をあげるだけでは不十分で、混練中の組成物をジャケットなどにより冷却して温度を下げ、粘度を上昇させることが好ましい。粘度を低くした状態で混練したのでは本発明の目的とする組成物を得ることは難しい。したがって、混練温度は混練部の出口の排出樹脂温度でEVOHの融点〜融点+40℃の範囲であることが効果的である。
【0039】
また、混練機のローターの回転数は100〜1200rpm、望ましくは150〜1000rpm、さらに望ましくは200〜800rpmの範囲が採用される。混練機チャンバー内径(D)は30mm以上、望ましくは50〜400mmの範囲のものが挙げられる。混練機のチャンバー長さ(L)との比L/Dは4〜30が好適である。また混練機はひとつでもよいし、また2以上を連結して用いることもできる。
【0040】
混練時間は長い方が良い結果を得られるが、EVOHの熱劣化変質あるいは経済性の点から10〜600秒、好適には15〜200秒の範囲であり、最適には15〜150秒である。
【0041】
以上のようにして得られた樹脂組成物を用いて、本発明の中空成形容器が製造される。
なお、本発明でいう中空成形容器とは、ダイレクトブロー成形容器のみならず、パイプ法ブロー成形容器、パイプ法延伸ブロー成形容器、射出ブロー成形容器及び射出延伸ブロー成形容器なども包含するものである。
【0042】
また、上記中空成形容器容器においては、容器胴部における樹脂組成物層中の各樹脂の分散形態が、EVOHのマトリックス中のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が容器壁面に平行な2次元方向に引き延ばされた薄板状の形状で分散していることが好ましい。そして容器壁面に垂直な面で切断したときの粒子断面の平均厚みが0.05〜1.0μmであることが望ましく、より好適には0.06〜0.5μmである。平均厚みが0.05μm以下または、1.0μmを越える場合には、耐衝撃性が不十分な場合がある。
【0043】
上記粒子断面の平均厚みの測定は以下のようにして行う。まず、容器胴部の壁面に垂直な面のサンプルの観察を破断面の走査型電子顕微鏡、あるいは薄片の透過型電子顕微鏡観察等によって行う。続いてこれら電子顕微鏡観察等によって得られた写真を画像処理によりその輪郭を特定し、特定された粒子の輪郭の厚みの単純平均の値を平均厚みとした。
【0044】
本発明の中空成形容器は、本発明の目的を充分達成するために、樹脂組成物からなる層の片面又は両面に樹脂組成物以外の熱可塑性樹脂層を積層することが好ましい。かかる熱可塑性樹脂層としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアセタール、ポリウレタン及びエチレン−ビニルアルコール系共重合体等が挙げられる。
【0045】
本発明の目的を充分達成する上で、これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリオレフィン系樹脂又はポリエステル系樹脂の選択が好ましいが、ポリオレフィン系樹脂の選択が最も好ましい。
ここでポリオレフィンとしては、ポリエチレン(高、中、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体及びエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が例示され、またポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等が例示される。
【0046】
積層中空成形容器を得る場合、樹脂組成物層と熱可塑性樹脂層との間に接着性樹脂層を介在させることが両層を強固に接着せしめ、層間剥離を防止し、延いては落下強度を改善できるので好ましい。ここで接着性樹脂としては、両層を強固に接着するものであれば良く、特に限定されるものではないが、不飽和カルボン酸またはその無水物で変成したポリオレフィンが好適である。例えば、無水マレイン酸でグラフト変性したポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂;(メタ)アクリル酸でグラフト変性あるいは主鎖に共重合変性したポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂;水素化スチレン−ブタジエン共重合体、液状ブタジエンおよびエチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のジエン系重合体をマレイン酸等の不飽和カルボン酸またはその無水物でグラフト変性したものが好適なものとして挙げられる。
【0047】
積層構成は特に限定されるものではないが、樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層、樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層、熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層/熱可塑性樹脂層、熱可塑性樹脂層/樹脂組成物層/スクラップ回収層/熱可塑性樹脂層、熱可塑性樹脂層/スクラップ回収層/樹脂組成物層/スクラップ回収層/熱可塑性樹脂層、あるいはこれらの層間に上述の接着性樹脂層を介在させた構成などが挙げられる。
【0048】
こうして得られた中空成形容器は、食品、飲料水、化粧品、薬品、医薬品、農薬、油脂類、灯油類又はガソリン類等の容器として好適に使用される。
【0049】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに説明する。
実施例によって得られた中空成形容器の評価は、以下の方法に従って行った。
【0050】
・中空成形容器胴部の樹脂組成物層中の分散粒子の平均厚み
中空成形容器の胴部を切り取り、液体窒素で冷却してから容器壁面に垂直な面で破断し、その破断面の中央付近を走査型電子顕微鏡で観察し、倍率1000〜10000倍の写真撮影を行った。得られた写真をケイオー電子工業製画像計測ツールシステムASPECTを用いてその輪郭を特定し、特定された粒子の輪郭の厚みの平均の値を平均厚みとした。
【0051】
・酸素透過量
MODERN CONTROLS,INC.製酸素透過率測定装置MOCONOX−TRAN10/50型を用い、中空成形容器の内部に窒素キャリアーガスを流し、中空成形容器の外部を酸素雰囲気下において、20℃、85%RHの条件でJIS K7126(等圧法)に準じてボトルあたりの酸素透過量(cc/bottle・day・atm)を求めた。
【0052】
・落下試験
20℃、65%RHに状態調節した中空成形容器に20℃の水を充填し、コンクリート面に底部を下にして落下させ、ボトルの破壊(容器内部の水が漏れる)する落下高さを求めた。破壊高さは、n=30の試験結果を用いて、JIS試験法(K7211の「8.計算」の部分)に示される計算方法を用いて、50%破壊高さとして求めた。
【0053】
実施例1
酢酸ナトリウムをナトリウム元素の重量換算で65ppm、リン化合物をリン酸塩の形でリン原子当たりの重量で100ppm含有するEVOH{エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=3.1g/10分(210℃、2160g荷重)}90重量%と、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下EMAAと略する){メタクリル酸(MAA)含有量:9重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレル0903HC、MFR=5.7g/10分(210℃、2160g荷重)}10重量%とをドライブレンドした後、ニーディングディスクを有する30mmφの2軸押出機(日本製鋼所製TEX30:L/D=30)を用いてシリンダー温度をフィード下部を190℃、混練部及びノズル付近を210℃に設定し、押出機のローターの回転数は610rpm、フィーダーのモーター回転数250rpmで、溶融混練しペレット化を行った。この時の押出量が1時間当たり20kgでシリンダー内部の樹脂圧力は20kg/cm2であった。このときの比エネルギーは0.6kWh/kgであった。
【0054】
得られた樹脂組成物を中間層に用い、三井石油化学工業(株)製ポリプロピレン「B200」を内外層として用い、更に無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン(三井石油化学工業(株)商品名「アドマーQB540」)を層間に用いて、ダイレクトブロー成形法により容器の胴部厚み構成がPP300μm(外層)/変性PP20μm/樹脂組成物20μm/変性PP20μm/PP340μm(内層)(総厚700μm)となるように押出条件を設定し、3種5層の中空成形容器を成形した。成形機は(有)鈴木鉄工所製TB−ST−6P型ダイレクトブロー多層中空成形機(スクリュー径:45mmφ、40mmφ、35mmφ、35mmφ)を用い、成形時のダイの温度を210℃とし、ブロー金型に50℃の温水を循環して徐冷条件となるようにして、外径70mmφ、胴部厚み700μm、容量500mlの円筒形中空成形容器を成形した。
【0055】
次に、樹脂組成物を中間層に用い、(株)クラレ製ブロー成形用ポリエチレンテレフタレート(商品名「クラペットKS750RCT」)を内外層として用い、更に無水マレイン酸グラフト変性直鎖状低密度ポリエチレン(三井石油化学工業(株)商品名「アドマーSF700」)を層間に用いて、射出延伸ブロー成形法により容器の胴部厚み構成がPET100μm(外層)/変性PE10μm/樹脂組成物30μm/変性PE10μm/PET200μm(内層)(総厚350μm)となるように射出条件を設定し、3種5層の中空成形容器を成形した。成形機は日精ASB機械(株)製ASB−50T型射出延伸ブロー成形機(スクリュー径:38mmφ、19mmφ)を用い、成形時のダイの温度を265℃とし、ブロー金型に50℃の温水を循環して徐冷条件となるようにして、外径65mmφ、胴部厚み350μm、容量500mlの円筒形中空成形容器を成形した。
【0056】
こうして得られた2種類の中空成形容器の評価結果は、表2にまとめて示す。
【0057】
比較例1
実施例1において、樹脂組成物のかわりに実施例1で用いたのと同じEVOH樹脂を単独で用いた以外は、実施例1に同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた中空成形容器の評価結果は表2にまとめて示す。
【0058】
実施例2、3、比較例2
実施例1において使用したものと同じEVOHとEMAAを用い、その混合比をEVOH95重量%、EMAA5重量%(実施例2)、EVOH80重量%、EMAA20重量%(実施例3)、EVOH50重量%、EMAA50重量%(比較例2)に変更した以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた中空成形容器の評価結果は表2にまとめて示す。
【0059】
実施例4、5
実施例1において使用したEVOHをエチレン含量の異なるEVOH{エチレン含量27モル%、ケン化度99.6%、MFR=3.9g/10分(210℃、2160g荷重)}(実施例4)、{エチレン含量44モル%、ケン化度99.7%、MFR=3.5g/10分(210℃、2160g荷重)}(実施例5) に変更した以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた中空成形容器の評価結果は表2にまとめて示す。
【0060】
実施例6〜9
実施例1において使用したEVOH90重量%の代わりに、以下に示す割合で配合した2種類のEVOHを用いた以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた中空成形容器の評価結果は表2にまとめて示す。
実施例6;
エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=3.1g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH85重量部
エチレン含量51モル%、ケン化度96%、MFR=15.1g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH5重量部
実施例7;
エチレン含量38モル%、ケン化度99.7%、MFR=3.8g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH85重量部
エチレン含量51モル%、ケン化度96%、MFR=15.1g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH5重量部
実施例8;
エチレン含量38モル%、ケン化度99.7%、MFR=3.8g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH85重量部
エチレン含量44モル%、ケン化度99.7%、MFR=3.5g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH5重量部
実施例9;
エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=3.1g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH50重量部
エチレン含量51モル%、ケン化度96%、MFR=15.1g/10分(210℃、2160g荷重)のEVOH40重量部
【0061】
実施例10〜12、比較例3〜7
実施例1において用いたEMAA{メタクリル酸含有量:9重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレル0903HC、MFR=5.7g/10分(210℃、2160g荷重)}のかわりに、以下に示す樹脂を用いた以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた中空成形容器の評価結果は表2にまとめて示す。
実施例10;EMAA{メタクリル酸含有量:4重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレルAN4214C」、MFR=12.2g/10分(210℃、2160g荷重)}
実施例11;EMAA{メタクリル酸含有量;12重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレル1207C」、MFR=13.4g/10分(210℃、2160g荷重)}
実施例12;エチレン−アクリル酸共重合体(以下EAAと略する){アクリル酸(AA)含有量:9.0重量%、ダウケミカル「プリマコール1430、MFR=8.7g/10分(210℃、2160g荷重)}
比較例3;エチレンーメチルメタクリレート共重合体{メチルメタアクリル酸(MMA)含有量:18重量%、住友化学「アクリフトWH303、MFR=12.1g/10分(210℃、2160g荷重)}
比較例4;無水マレイン酸変性ポリエチレン{MFR=3.6g/10分(210℃、2160g荷重)、三井石油化学製「アドマーNF500」}
比較例5;アイオノマー{三井デュポンケミカル「ハイミラン1652、MFR=7.6g/10分(210℃、2160g荷重)}
比較例6;LDPE{三井石油化学製「ミラソンB324、MFR=3.4g/10分(210℃、2160g荷重)}
比較例7;ナイロン{ナイロン6(PA−6){MFR=7.2g/10分(230℃、2160g荷重)、宇部興産製「UBEナイロン1022B」}
【0062】
実施例13〜16
以下に示すEVOHとエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を組み合わせて用いた以外は実施例1と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。このとき、用いるEVOHとエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のMFRを変更することで、その比MFR(A)/MFR(B)を調整した。得られた中空成形容器の評価結果は表2にまとめて示す。
実施例13
EVOH{エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=1.2g/10分(210℃、2160g荷重)}、EMAA{メタクリル酸含有量:9重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレルNC0908HG」、MFR=15.3g/10分(210℃、2160g荷重)}
実施例14
EVOH{エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=33.0g/10分(210℃、2160g荷重)}、EMAA{メタクリル酸含有量:9重量%、三井デュポンケミカル「ニュクレル0903HC、MFR=5.7g/10分(210℃、2160g荷重)}
実施例15
EVOH{エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=1.2g/10分(210℃、2160g荷重)}、EAA{アクリル酸含有量:9重量%、ダウケミカル「プリマコール3440」、MFR=18.0g/10分(210℃、2160g荷重)}
実施例16
EVOH{エチレン含量32モル%、ケン化度99.6%、MFR=33.0g/10分(210℃、2160g荷重)}、EAA{アクリル酸含有量:9重量%、ダウケミカル「プリマコール1420」、MFR=5.6g/10分(210℃、2160g荷重)}
【0063】
実施例17
実施例1において、EVOHとEMAAの溶融混練を2軸押出し機を用いる代わりに、1軸押出し機(プラコー製GT−40−A:L/D=26、フルフライトタイプスクリュー使用)を用いてシリンダー温度をフィード下部で190℃、混練部及びノズル付近で210℃に設定し、押出機のローターの回転数は1500rpmで、溶融混練しペレット化を行い、この時の押出量が1時間当たり20kgでシリンダー内部の樹脂圧力は8kg/cm2で、このときの比エネルギーは0.1KWh/Kgであった以外は、実施例1と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。得られた中空成形容器の評価結果は表2にまとめて示す。
【0064】
実施例18
スクリューをフルフライトタイプスクリューから、先端に混練部を有したタイプのスクリューに交換した以外は実施例17と同様にしてサンプルを作製し試験をおこなった。このとき、シリンダー内部の樹脂圧力は10kg/cm2で、このときの比エネルギーは0.15KWh/Kgであった。得られた中空成形容器の評価結果は表2にまとめて示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
【発明の効果】
本発明の中空成形容器は、ガスバリア性および耐衝撃性に優れており、各種包装容器として優秀な性能を有している。
Claims (6)
- エチレン含量20〜60モル%、ケン化度90%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体60〜99重量%および(メタ)アクリル酸含量1〜30重量%のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体40〜1重量%からなり、エチレン−ビニルアルコール共重合体のマトリックス中にエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体粒子が分散している樹脂組成物からなる中空成形容器。
- 請求項1記載の樹脂組成物からなる層と熱可塑性樹脂からなる層を有する積層中空成形容器。
- 熱可塑性樹脂がポリオレフィンまたはポリエステルである請求項2記載の積層中空成形容器。
- 樹脂組成物からなる層と熱可塑性樹脂からなる層の間に接着性樹脂からなる層を有する請求項2または3に記載の積層中空成形容器。
- 接着性樹脂が、不飽和カルボン酸又はその無水物で変性したポリオレフィンである請求項4記載の積層中空成形容器。
- エチレン−ビニルアルコール共重合体が、エチレン含量の異なる2種類のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a)および(b)の混合物からなり、(a)のエチレン含量が20〜45モル%、(b)のエチレン含量が45〜65モル%、(a)と(b)のエチレン含量の差が8モル%以上であり、かつその配合重量比{(a)/(b)}が2/1〜50/1である請求項1〜5のいずれかに記載の中空成形容器。
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