JPH10189354A - トロイダルコイルアレイおよびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明はトロイダルコイルアレイおよびその
製造方法に関し、特に特性の優れたトロイダルコイルア
レイを提供することを目的とする。 【解決手段】 磁性体内あるいは表面に複数ターンから
なり各ターン部の径が一端から他端にかけて徐々に異な
るとともに少なくとも各ターン部が異なる平面内に位置
した導体３を複数個有し、しかも各導体３の２つの端部
はそれぞれ磁性体表面に設けた端面電極１４，１５，１
６，１７に接続されており、さらに各導体３は閉磁路状
の磁性体をそれぞれ有する構成としたものである。この
構成により、小型で低背のものとなり、しかも巻線工程
によらない方法で得るため少ない工数で、容易に製造可
能な構造のトロニダルコイルアレイである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は各種電子機器、通信
機器などに利用されるトロイダルコイルアレイおよびそ
の製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】トロイダルコイルアレイは各種電子機
器、通信機器などに多用されており、近年は小型あるい
は薄型のトロイダルコイルアレイがますます要求されて
いる。

【０００３】従来のこれらの要望を満たすトロイダルコ
イルアレイとしては、リング状のフェライトコアに絶縁
被覆銅線を巻線して得るものであった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】従来のものでは、リン
グ状のコアに巻線を行うため、小型化は困難であり、し
かも生産性にも問題があった。

【０００５】本発明は以上のような従来の欠点を除去
し、生産性に優れ、しかも小型で優れた電気特性のトロ
イダルコイルアレイおよびその製造方法を提供すること
を目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明のトロイダルコイルアレイは、磁性体内あるい
は表面に複数ターンからなり各ターン部の径が一端から
他端にかけて徐々に異なるとともに少なくとも各ターン
部が異なる平面内に位置した導体を複数個有し、しかも
各導体の２つの端部はそれぞれ磁性体表面に設けた電極
に接続されており、さらに各導体は閉磁路状の磁性体を
それぞれ有する構成としたものである。

【０００７】この本発明によれば、小型でしかも生産性
に優れたトロイダルコイルアレイが得られる。

【０００８】

【発明の実施の形態】本発明の請求項１に記載の発明
は、磁性体内あるいは表面に複数ターンからなり各ター
ン部の径が一端から他端にかけて徐々に異なるとともに
少なくとも各ターン部が異なる平面内に位置した導体を
複数個有し、しかも各導体の２つの端部はそれぞれ磁性
体表面に設けた電極に接続されており、さらに各導体は
閉磁路状の磁性体をそれぞれ有する構成としたものであ
り、小型化が可能であり、しかも生産しやすく、導体の
各ターン部間の浮遊容量が小さく電気特性の優れたもの
とすることができる。

【０００９】請求項２に記載の発明は、複数個の導体が
異なる平面に垂直方向に積み重なった位置にあり、しか
も各導体の位置が一部重なる構成としたものであり、よ
り低背のトロイダルコイルアレイとすることができる。

【００１０】請求項３に記載の発明は、複数個の導体が
異なる平面に垂直方向に積み重なった位置にあり、しか
も各導体の位置が重ならないようにしたものであり、歩
留まりよく生産可能な構成となる。

【００１１】請求項４に記載の発明は、複数個の導体が
異なる平面内方向に並べた位置であり、しかも各導体の
位置がほぼ一致した構成でさらなる低背化が可能な構成
となる。

【００１２】請求項５に記載の発明は、円錐形状または
角錐形状の中空部を設けた中空体状の外側磁性体を形成
する工程と、円錐形状または角錐形状の内側磁性体を形
成する工程と、外側磁性体の内面あるいはさらに内側磁
性体の表面に非磁性体を形成する工程と、外側磁性体の
表面、内側磁性体の内面あるいは非磁性体の表面に複数
ターンからなり各ターン部の径が一端から他端にかけて
徐々に異なるとともに少なくとも各ターン部が異なる平
面内に位置するような導体を形成する工程と、外側磁性
体および内側磁性体の上下端面に端面磁性層を形成する
工程と、前記の工程によって形成した特定の導体を内蔵
した磁性体を非磁性体を介して接合する工程からなるト
ロイダルコイルアレイの製造方法であり、高い歩留まり
でしかも生産性に優れた方法である。

【００１３】請求項６に記載の発明は、円錐形状または
角錐形状の中空部を設けた中空体状の外側磁性体を形成
する工程と、外側磁性体の内面あるいはさらに導体の表
面に非磁性体を形成する工程と、非磁性体の表面あるい
は外側磁性体の内面に複数ターンからなり各ターン部の
径が一端から他端にかけて徐々に異なるとともに少なく
とも各ターン部が異なる平面内に位置するような導体を
形成する工程と、非磁性体の表面あるいは導体の表面に
内側磁性体を形成する工程と、外側磁性体と内側磁性体
の上下端面に端面磁性層を形成する工程と、内側磁性体
の表面に非磁性体を形成する工程を繰り返して磁性体内
に複数の導体を形成するトロイダルコイルアレイの製造
方法としたもので、より小型のトロイダルコイルアレイ
を得る方法である。

【００１４】本発明のトロイダルコイルアレイは磁性体
内あるいは表面に複数ターンからなり各ターン部の径が
一端から他端にかけて徐々に異なるとともに少なくとも
各ターン部が異なる平面内に位置した導体を複数個有
し、しかも各導体の２つの端部はそれぞれ磁性体表面に
設けた電極に接続されており、さらに各導体は閉磁路状
の磁性体をそれぞれ有するトロイダルコイルアレイであ
る。トロイダルコイルアレイを構成する導体の形状、つ
まり巻き方の一例としては、複数ターンからなる導体を
有し、この導体は一端から他端にかけて各ターン部の径
が徐々に大きくなる円で形成され、しかも各ターン部の
位置がそれぞれ異なる平面内に位置している。つまり、
導体の一端は小径の円で形成され、他端側になるにつれ
て徐々に径が大きくなる円で形成され、その各ターン部
は終端あるいは始端で立上がってまたは立下がって隣り
のターン部と接続されている。したがって、各ターン部
は同一平面内に位置し、隣接するターン部は立上がりや
立下がり部によって異なった平面部に位置し、かつ、そ
の径が異なるように設定されている。同一平面内には約
１ターンであり、この場合の各ターンは、同一平面内に
存在する導体を意味する。

【００１５】さらに、別の例としては同様に複数ターン
からなる導体を有し、導体を一端から他端にかけて徐々
に径が大きくなるとともにその位置が全て異なる平面内
に位置する立体的うず巻状としたものがある。

【００１６】以下、本発明の実施の形態について図面を
用いて説明する。図１に本発明の代表的なトロイダルコ
イルアレイの断面図を示す。複数ターンからなり各ター
ン部の径が一端から他端にかけて徐々に異なるととも
に、少なくとも各ターン部が異なる平面内に位置した導
体３の外側には外側磁性体１が位置し、導体３の内側に
は内側磁性体２が位置する。しかも、図１の例では導体
３の外側と内側には非磁性体層４が存在する。図１の例
では導体３の両側に非磁性体層４を有する例を示したが
どちらか一方でよい。このように導体３は外側磁性体
１、非磁性体層４と内側磁性体２に囲まれた状態にあ
る。内側磁性体２と外側磁性体１の端面には端面磁性層
１０，１１，１２，１３が存在する。以上の導体３の回
りに存在する内側磁性体２、外側磁性体１および端面磁
性層１０，１１，１２，１３で閉磁路状の磁性体を形成
し、しかもこの磁性体は導体３の磁芯となる。端面磁性
層１１，１２は非磁性体層５を介して結合されている。
導体３の２つの端部はそれぞれ引出電極６，７，８，９
に接続されており、この引出電極６，７，８，９は磁性
体上に設けた端面電極１４，１５，１６，１７にそれぞ
れ接続されている。

【００１７】非磁性体層４，５としては、ガラス、ガラ
スセラミックスあるいはセラミックスなどの無機系の非
磁性材料などの磁気的に透磁率が小さいものであればど
のようなものであってもよい。

【００１８】内側磁性体２、外側磁性体１および端面磁
性層１０，１１，１２，１３を構成する磁性体として
は、ＮｉＺｎ系やＮｉＺｎＣｕ系などの一般に知られる
透磁率が大きいフェライト材料などがある。

【００１９】導体３あるいは引出電極６，７，８，９の
材料としては電気的に良導体であれば何でもよいが、抵
抗率が重要で低抵抗なものがトロイダルコイルアレイに
は要求されるため、銅、銀とパラジウム合金あるいは銀
などの導体材料が有効である。

【００２０】端面電極１４，１５，１６，１７としては
導電性材料であればよいが、一般的には単一層でなく複
数層から構成されることが望ましく表面実装用とした場
合にはプリント配線板への実装時の実装強度あるいは実
装時の半田濡れ性、半田くわれなどを配慮する必要があ
り、具体的には最下層は引出電極６，７，８，９と同じ
導体材料を用い、中間層には半田に対して耐性を有する
ニッケルを用い、最外層には半田に対して濡れ性の良い
半田あるいは錫を用いる。

【００２１】しかしながら、これは一例であり、必ずこ
の構成を採用する必要はなく、金属等の導電性に優れた
材料以外に導電性樹脂材料を含んでもよい。

【００２２】また、アルミナやフェライトなどのセラミ
ック基板に所定の配線パターンを形成し、セラミック基
板に窓を設けてトロイダルコイルアレイを挿入し、配線
パターンとトロイダルコイルアレイの端面電極１４，１
５，１６，１７を接触させ厚膜形成プロセスを用いて焼
成して電気的に接続するため、耐熱性を高め、この厚膜
形成プロセスに対応する構成とすることも考えられる。

【００２３】図２に示したトロイダルコイルアレイは図
１に示したトロイダルコイルアレイの上部を小さくして
下部の芯部に差し込んだような構成である。つまり、構
成は同様であるが、導体３等の位置関係が上下方向に並
べたものか、同心円状に配置したつまり嵌合した状態に
配置したかの差である。

【００２４】図３に示したトロイダルコイルアレイは図
１に示したトロイダルコイルアレイの上下を非磁性体層
５で分離し、左右に非磁性体層５を介して並べた構成で
ある。つまり、構成は同様であるが、導体３等の位置関
係が上下方向に並べたものか、左右に並べたものかの差
である。

【００２５】以上の図１、図２および図３に示したよう
に、外側磁性体１、内側磁性体２、端面磁性層１０，１
１（ないしは１２，１３）で構成した閉磁路状の磁性体
を磁芯とした導体３で構成される１つのコイルを非磁性
体層５を介した配置の内容が異なる。つまり、コイルを
非磁性体層５を介して上下方向に並べたものが図１に示
した例であり、左右に並べたものが図３に示したもの
で、同心円状に配置したものが図２に示した例である。

【００２６】図１、図２あるいは図３に示したトロイダ
ルコイルアレイにおいて、外側磁性体１、内側磁性体２
あるいは端面磁性層１０，１１，１２，１３はそれぞれ
同じ磁性体で構成してもよいし、あるいは特性の異なる
磁性体で構成してもよい。例えば、透磁率、磁束密度な
どの特性が異なるもので１つの部材を構成してもよい。
各部材の磁気的性質を適当に選ぶことにより、トロイダ
ルコイルアレイとしてのインダクタンス値を任意に選ぶ
ことができるとともに、漏洩磁束あるいは直流重畳特性
のコントロールも自由に行えることになる。

【００２７】なお、図３は２つの導体３の大径と小径を
ほぼ同じ位置にし、しかも同じ方向に揃えて配置した場
合の例を示したが必ずしもそのように配置する必要はな
いが、２つの導体３を逆向きに配置することによって、
無効な領域を極力小さくでき、図面上の左右方向に小さ
くすることが可能となる。

【００２８】導体３の断面形状は、偏平な長方形状以外
に、導体３の断面積を大きくして導体抵抗を小さくし、
大電流用としても使用できる。この場合、導体３の断面
形状としては、三角形、円形、楕円形、半円形、多角形
あるいは長円形などの種々のものが可能である。このよ
うな断面形状の導体３を得るには、例えば、外側磁性体
１の内面に階段状の段差部を設け、この段差部に導電ペ
ーストを塗布して乾燥させることによって断面三角形の
導体３を実現することができる。

【００２９】また、導体３の全体的な形状としてはこれ
まで円形状の例を示したが、角形状などでもよい。つま
り、本来、面実装型のトロイダルコイルアレイとしては
角柱状が好まれており、角柱状のトロイダルコイルアレ
イにおいては角形状のターン部で構成しトロイダルコイ
ルアレイの外形いっぱいの角形状のターン部を形成する
ことが可能になる。このような導体３を得るには、例え
ば、外側磁性体１に角錐状の中空部を形成して、この中
空部の傾斜面に導体３を形成することによって外側磁性
体１の内面に角形状のターン部を構成することができ
る。

【００３０】以上いくつかの例で説明した通り、外側磁
性体１および内側磁性体２からなる磁性体内に各ターン
部の径が一端から他端にかけて徐々に異なるとともに少
なくとも各ターン部が異なる平面内に位置した導体３が
連続的に形成される構成のため、従来の積層構造とは異
なり生産しやすく、歩留りの向上を図ることができると
ともに、近隣のターン部が磁性体を介して面対向しない
ため、浮遊容量の発生も最小限に抑えられるため、自己
共振周波数が小さくなってフィルタなどとして用いた場
合広帯域で高い減衰量を得られないといったことが阻止
でき、品質面、性能面で著しく優れたトロイダルコイル
アレイとすることができる。

【００３１】なお、上記実施の形態においては、面実装
タイプとして両端に端面電極１４，１５，１６，１７を
設けたものについてのみ説明してきたが、磁性体にピン
端子を植設したものや、端面電極１４，１５，１６，１
７の代りに端子を有するキャップ状電極を磁性体あるい
は磁性体の両端に嵌合結合したリードタイプのトロイダ
ルコイルアレイとすることもできる。

【００３２】次に、本発明のトロイダルコイルアレイの
製造方法について説明する。本発明のトロイダルコイル
アレイの製造方法は、円錐形状または角錐形状の中空部
を設けた中空体状の外側磁性体１を形成する工程と、円
錐形状または角錐形状の内側磁性体２を形成する工程
と、外側磁性体１の内面あるいはさらに内側磁性体２の
表面に非磁性体層４を形成する工程と、外側磁性体１の
表面、内側磁性体２の内面あるいは非磁性体層４の表面
に複数ターンからなり各ターン部の径が一端から他端に
かけて徐々に異なるとともに少なくとも各ターン部が異
なる平面内に位置するような導体３を形成する工程と、
外側磁性体１および内側磁性体２の上下端面に端面磁性
層１０，１１ないしは１２，１３を形成する工程と、前
記の工程によって形成した特定の導体３を内蔵した磁性
体（外側磁性体１、内側磁性体２および端面磁性層１
０，１１ないしは１２，１３で構成）を非磁性体層５を
介して接合する工程からなるトロイダルコイルアレイの
製造方法としたものである。

【００３３】また、別の方法としては、円錐形状または
角錐形状の中空部を設けた中空体状の外側磁性体１を形
成する工程と、外側磁性体１の内面あるいはさらに導体
３の表面に非磁性体層４を形成する工程と、非磁性体層
４の表面あるいは外側磁性体１の内面に複数ターンから
なり各ターン部の径が一端から他端にかけて徐々に異な
るとともに少なくとも各ターン部が異なる平面内に位置
するような導体３を形成する工程と、非磁性体層４の表
面あるいは導体３の表面に内側磁性体２を形成する工程
と、外側磁性体１と内側磁性体２の上下端面に端面磁性
層１０，１１ないしは１２，１３を形成する工程と、内
側磁性体２の表面に非磁性体層５を形成する工程を繰り
返すトロイダルコイルアレイの製造方法としたものであ
る。

【００３４】前述したように、形成方法によってコイル
の配置に差異はあっても基本的には前述したように、磁
性体内に複数ターンからなり各ターン部の径が一端から
他端にかけて徐々に異なるとともに少なくとも各ターン
部が異なる平面内に位置した導体３を有するトロイダル
コイルアレイを得るものである。つまり、傾斜状あるい
は階段状の面に導体３を形成し、導体３の形成面にほぼ
沿った方向に磁性体あるいは非磁性体を有し、磁性体は
閉磁路状に形成するため優れた生産性で小型あるいは低
背のトロイダルコイルアレイを得ることができる。

【００３５】次に、さらに詳細な本発明のトロイダルコ
イルアレイの製造方法について、図を参照しながら説明
する。

【００３６】図４から図１２は本発明のトロイダルコイ
ルアレイの製造方法を工程順に示した断面図である。ま
ず、図４に示すように円錐形状または角錐形状の中空部
１８を形成した中空体状の外側磁性体１を形成する。次
に、図５に示すように外側磁性体１の中空部１８の内面
全面に導体３を形成し、さらに図６に示すように導体３
を立体的うず巻状にパターンニングする。導体３のパタ
ーンは複数ターンからなり各ターン部の径が一端から他
端にかけて徐々に異なるとともに、少なくとも各ターン
部が異なる平面内に位置するようにする。

【００３７】なお、導体３の形状としては、前述したよ
うに、蚊取り線香状の導体３の中心部を引き下げて、ラ
ッパ形状にしたものあるいは同心円状のものを重ねた形
状などがある。

【００３８】外側磁性体１の内面の形状としては、図に
示したような単純な円錐面状あるいは角錐面状以外に階
段状の斜面であっても導体３を前述したように、複数タ
ーンからなり各ターン部の径が一端から他端にかけて徐
々に異なるとともに少なくとも各ターン部が異なる平面
内に位置するように導体３をこの内面に形成すればよ
い。単純な傾斜面ではなく階段状の斜面の場合には、例
えば、階段面の隅に導体３を形成した場合、全体的には
複数ターンからなり各ターン部の径が一端から他端にか
けて徐々に異なるとともに少なくとも各ターン部が異な
る平面内に位置するように導体３を形成する。

【００３９】前述した階段形状の内面を有する中空体状
の外側磁性体１を形成する方法としては、この内面に噛
み合うことのできる凸部を有する支持体上にスラリー状
の磁性体を流し、乾燥後この支持体から分離することに
よって磁性体に特定の中空部１８を形成することができ
る。また、別の方法としては前記と同様にスラリー状の
磁性体を平坦な支持体上に流し込み平滑なシート状の磁
性体を形成した後、前述した所定の中空部１８を形成す
るための形状を有する金型で磁性体に特定の中空部１８
を形成する方法である。さらには、通常一般に知られた
粉末成型法によって同様に特定の中空部１８を有する中
空体状の外側磁性体１を形成することができる。

【００４０】次に、図７に示すように導体３上に非磁性
体層４を形成する。さらに、図８に示すように導体３を
形成した外側磁性体１の底面に２つの導体３の導体径の
小さい側の導体端部をそれぞれ接合できる引出電極７，
９を予め形成した端面磁性層１１を接合する。さらに、
図９に示すように非磁性体層４の表面に内側磁性体２を
充填する。

【００４１】次に、図１０に示すように、導体３の導体
径の大きい側の導体端部と接合可能な引出電極６，８を
予め形成した端面磁性層１０を外側磁性体１と内側磁性
体２などの端面に接合する。さらに、図１１に示すよう
に導体３を内蔵した磁性体を非磁性体層５を介して接合
する。

【００４２】次に、図１２に示すようにチップ状の部品
の端面に端面電極１４，１５，１６，１７を形成する。
得られたこの積層体を焼成することによって、トロイダ
ルコイルアレイを得ることができる。しかし、焼成は端
面電極１４，１５，１６，１７を形成せずに行ってもよ
い。つまり、端面電極１４，１５，１６，１７を形成し
ていないものを焼成し、焼成後に端面電極１４，１５，
１６，１７を形成する方法である。この場合の形成法の
一例を説明すると、図１２に示した端面電極１４，１
５，１６，１７と同様の形状に導体層を形成し一度焼成
する。その後この導体層を電極にして、ニッケルめっき
および半田あるいは錫めっきを施す。最終的には、端面
電極１４，１５，１６，１７は焼成によって形成した下
地の導体層と電気めっきによって形成したニッケルおよ
び半田ないしは錫の３層構造である。

【００４３】以上の外側磁性体１、内側磁性体２あるい
は端面磁性層１０，１１，１２，１３などは一般に知ら
れているグリーンシート成形法、印刷法、ディッピング
法、粉末成型法あるいはスピンコート法などで形成する
ことができる。導体３あるいは引出電極６，７，８，９
は印刷法が一般的であるが、レーザを用いたパターン形
成、金型等で所定形状に予め形成した導体を転写する方
法、滴下、ポッティングあるいは溶射法などの方法でも
よい。

【００４４】本発明の製造方法で得られるトロイダルコ
イルアレイは耐熱性に優れたトロイダルコイルアレイで
あるためモジュール化することが容易である。例えば、
アルミナ基板あるいはフェライト基板などのセラミック
基板に所定の配線層を形成し、基板の配線とトロイダル
コイルアレイの端面電極１４，１５，１６，１７との結
線を同時に行って、一体化あるいは組立が可能である。
この場合、基板の所定場所に窓をあけてトロイダルコイ
ルアレイの側面の端面電極１４，１５，１６，１７とセ
ラミック基板上の配線に結線することが可能になるた
め、薄型のモジュールが得られる。この場合は、一般に
知られているセラミック基板を用いた通常の厚膜形成プ
ロセスが適用できる。トロイダルコイルアレイの端面電
極１４，１５，１６，１７は半田づけを前提としたもの
でなく、焼成して電気的に接続するものにすればよい。

【００４５】以上のコイルを形成する導体３の２つの端
子は、チップ部品の端面に形成して端面電極１４，１
５，１６，１７と電気的に接続された状態である。つま
り、導体３の最上部および最下部には端面電極１４，１
５，１６，１７と電気的に結線するための引出電極６，
７，８，９を有して、端面電極１４，１５，１６，１７
につながっている。

【００４６】前記の各層を形成するためのペーストは、
各粉末とブチルカルビトール、テルピネオール、アルコ
ールなどの溶剤、エチルセルロース、ポリビニルブチラ
ール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイ
ド、エチレン−酢酸ビニルなどの結合剤、さらに、各種
の酸化物あるいはガラス類などの焼結助剤を添加し、ブ
チルベンジルフタレート、ジブチルフタレート、グリセ
リンなどの可塑剤あるいは分散剤等を添加してもよい。
これらを混合した混練物を用いて各層を形成する。これ
らを前述したような所定の構造に積層したものを焼成し
てトロイダルコイルアレイを得る。グリーンシートを作
製する場合は、前記の溶剤に替えて蒸発性の優れた各種
の溶剤、例えば酢酸ブチル、メチルエチルケトン、トル
エン、アルコールなどが望ましい。

【００４７】焼成温度範囲としては約８００℃から１３
００℃の範囲である。特に導体材料によって異なり、例
えば、導体材料として銀を用いれば９００℃前後にする
必要があり、銀とパラジウムの合金では９５０℃で、さ
らに高温で焼成するには導体材料にニッケル、パラジウ
ムなどを用いる。

【００４８】次に本発明の更に具体的な実施例について
説明する。 （実施例１）アルミナ粉末と結晶化ガラス粉末を混合し
て得られたコンポジット型ガラス粉末１００ｇに対して
エチルセルロースを２ｇおよびα−テルピネオール２０
ｇを混合し、３本ロールを用いて混練して非磁性体ペー
ストを作製した。

【００４９】ＮｉＺｎＣｕ系フェライト粉末１００ｇに
対してブチラール樹脂を８ｇ、ブチルベンジルフタレー
トを４ｇ、メチルエチルケトンを２４ｇおよび酢酸ブチ
ルを２４ｇ混合し、ポットミルを用いて混練してフェラ
イトスラリーを作製した。

【００５０】同様に前記コンポジットガラス粉末１００
ｇに対してブチラール樹脂を８ｇ、ブチルベンジルフタ
レートを４ｇ、メチルエチルケトンを２４ｇおよび酢酸
ブチルを２４ｇ混合し、ポットミルを用いて混練して非
磁性体スラリーを作製した。

【００５１】非磁性体スラリーを使い、コータを用いて
乾燥後厚み０．２mmの非磁性体グリーンシートを作製し
た。なおグリーンシートはＰＥＴフィルム上に形成し
た。

【００５２】同様に、フェライトスラリーを使い、コー
タを用いて乾燥後厚み０．４mmのフェライトグリーンシ
ートを作製した。なおグリーンシートはＰＥＴフィルム
上に形成した。

【００５３】この磁性体グリーンシートを３枚積み重ね
て積層した。磁性体グリーンシートの積層には熱プレス
を用い、熱プレスの定盤温度は１００℃に設定し、圧力
は５００kg／cm²であった。図４に示したような中空体
状の外側磁性体１を作製した。さらに、図５および図６
に示すように中空部１８の内面に導体３を形成した後、
複数ターンからなり各ターン部の径が一端から他端にか
けて徐々に異なるとともに少なくとも各ターン部が異な
る平面内に位置するように導体３をパターンニングし
た。導体３の形成はまず印刷法で内面全面に導体３を形
成した後、導体３のパターンニングは、所定形状を形成
するための形状を有する金型を用いてパンチャーを使用
して行った。

【００５４】次に図７に示すように導体３を覆うよう
に、非磁性体ペーストを用い印刷機を使用して非磁性体
層４を形成した。

【００５５】図８に示すように、先に作製したフェライ
トグリーンシート（厚みが０．４mm）に前記と同じ銀ペ
ーストと印刷機を用いて、引出電極７，９を形成し、端
面磁性層１１を作製した。さらに、端面磁性層１１と導
体３を形成した外側磁性体１を張り合わせた。

【００５６】さらに、図９に示したように、中空部１８
に前述したフェライトスラリーを流し込みほぼ平坦にし
た。つまり、この充填によって内側磁性体２を形成し
た。

【００５７】次に図１０に示すように、先に作製したフ
ェライトグリーンシート（厚みが０．４mm）に前記と同
じ銀ペーストと印刷機を用いて、引出電極６，８を形成
し、端面磁性層１０を作製した。この端面磁性層１０と
内側磁性体２、導体３などを形成した外側磁性体１を張
り合わせた。さらに図１１に示すように、先に作製した
非磁性体シートを介して導体３を内蔵した磁性体を接合
した。

【００５８】さらに、図１２に示すような端面電極１
４，１５，１６，１７を市販の銀ペーストを用いて形成
し、９００℃で２時間保持する条件で焼成した。

【００５９】以上の方法で得られた本発明のトロイダル
コイルアレイには剥離、割れ、反りなどの欠陥は認めら
れなかった。インピーダンスアナライザなどを用いて、
各種の電気特性を測定したところ、優れた特性を有する
トロイダルコイルアレイであった。

【００６０】このように本発明のトロイダルコイルアレ
イは従来のトロイダルコイルアレイと異なり、非巻線型
のものでしかも少ない積層数で優れた電気特性を有する
トロイダルコイルアレイを得ることができる。

【００６１】（実施例２）実施例１と同じ磁性体スラリ
ーを用いて、中空体状の外側磁性体１の内面に複数ター
ンからなり各ターン部の径が一端から他端にかけて徐々
に異なるとともに少なくとも各ターン部が異なる平面内
に位置するような導体３を形成することができる所定の
内面を形成するための形状を有するシート状のポリイミ
ド上にコータを用いて乾燥後厚み０．６mmの磁性体グリ
ーンシートを作製し、外側磁性体１を形成した。

【００６２】次に、実施例１と同様に外側磁性体１の内
面に導体３を形成した後、非磁性体層４を形成した。さ
らに実施例１と同様の方法で内側磁性体２、端面磁性層
１０，１１、引出電極６，７，８，９、端面電極１４，
１５，１６，１７を形成し、９００℃で２時間保持する
条件で焼成した。

【００６３】以上の方法で得られた本発明のトロイダル
コイルアレイには剥離、割れ、反りなどの欠陥は認めら
れなかった。インピーダンスアナライザを用いて、各種
の電気特性を測定したところ、優れた特性を有するトロ
イダルコイルアレイであった。

【００６４】この方法は実施例１に示した方法よりも外
側磁性体１を一工程で形成し工数的にも有利な方法であ
った。

【００６５】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように本発明の
トロイダルコイルアレイは、従来の巻線工法を用いない
方法で形成できる新規の構造のトロイダルコイルアレイ
であり、小型で低背なものとなり、導体のターン部間で
の浮遊容量も殆ど発生せず優れた電気特性を示す。しか
も、生産性に優れた方法であり、産業的価値の大なるも
のである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のトロイダルコイルアレイの一実施の形
態を示す断面図

【図２】他の実施の形態を示す断面図

【図３】さらに別の実施の形態を示す断面図

【図４】本発明のトロイダルコイルアレイの製造方法を
示す模式的な断面図

【図５】本発明のトロイダルコイルアレイの製造方法を
示す模式的な断面図

【図６】本発明のトロイダルコイルアレイの製造方法を
示す模式的な断面図

【図７】本発明のトロイダルコイルアレイの製造方法を
示す模式的な断面図

【図８】本発明のトロイダルコイルアレイの製造方法を
示す模式的な断面図

【図９】本発明のトロイダルコイルアレイの製造方法を
示す模式的な断面図

【図１０】本発明のトロイダルコイルアレイの製造方法
を示す模式的な断面図

【図１１】本発明のトロイダルコイルアレイの製造方法
を示す模式的な断面図

【図１２】本発明のトロイダルコイルアレイの製造方法
を示す模式的な断面図

【符号の説明】

１ 外側磁性体 ２ 内側磁性体 ３ 導体 ４，５ 非磁性体層 ６，７，８，９ 引出電極 １０，１１，１２，１３， 端面磁性層 １４，１５，１６，１７ 端面電極 １８ 中空部

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 磁性体内あるいは表面に複数ターンから
   なり各ターン部の径が一端から他端にかけて徐々に異な
   るとともに少なくとも各ターン部が異なる平面内に位置
   した導体を複数個有し、しかも各導体の２つの端部はそ
   れぞれ磁性体表面に設けた電極に接続され、さらに各導
   体は閉磁路状の磁性体をそれぞれ有するトロイダルコイ
   ルアレイ。
2. 【請求項２】 複数個の導体が異なる平面に垂直方向に
   積み重なった位置にあり、しかも各導体の位置が一部重
   なる請求項１に記載のトロイダルコイルアレイ。
3. 【請求項３】 複数個の導体が異なる平面に垂直方向に
   積み重なった位置にあり、しかも各導体の位置が重なら
   ない請求項１に記載のトロイダルコイルアレイ。
4. 【請求項４】 複数個の導体が異なる平面内方向に並べ
   た位置であり、しかも各導体の位置がほぼ一致する請求
   項１に記載のトロイダルコイルアレイ。
5. 【請求項５】 円錐形状または角錐形状の中空部を設け
   た中空体状の外側磁性体を形成する工程と、円錐形状ま
   たは角錐形状の内側磁性体を形成する工程と、外側磁性
   体の内面あるいはさらに内側磁性体の表面に非磁性体を
   形成する工程と、外側磁性体の表面、内側磁性体の内面
   あるいは非磁性体の表面に複数ターンからなり各ターン
   部の径が一端から他端にかけて徐々に異なるとともに少
   なくとも各ターン部が異なる平面内に位置するような導
   体を形成する工程と、外側磁性体および内側磁性体の上
   下端面に端面磁性層を形成する工程と、前記の工程によ
   って形成した特定の導体を内蔵した磁性体を非磁性体を
   介して接合する工程からなるトロイダルコイルアレイの
   製造方法。
6. 【請求項６】 円錐形状または角錐形状の中空部を設け
   た中空体状の外側磁性体を形成する工程と、外側磁性体
   の内面あるいはさらに導体の表面に非磁性体を形成する
   工程と、非磁性体の表面あるいは外側磁性体の内面に複
   数ターンからなり各ターン部の径が一端から他端にかけ
   て徐々に異なるとともに少なくとも各ターン部が異なる
   平面内に位置するような導体を形成する工程と、非磁性
   体の表面あるいは導体の表面に内側磁性体を形成する工
   程と、外側磁性体と内側磁性体の上下端面に端面磁性層
   を形成する工程と、内側磁性体の表面に非磁性体を形成
   する工程を繰り返して磁性体内に複数の導体を形成する
   トロイダルコイルアレイの製造方法。