JPH1012124A - 電子放出素子およびその製造方法 - Google Patents

電子放出素子およびその製造方法

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JPH1012124A
JPH1012124A JP16150696A JP16150696A JPH1012124A JP H1012124 A JPH1012124 A JP H1012124A JP 16150696 A JP16150696 A JP 16150696A JP 16150696 A JP16150696 A JP 16150696A JP H1012124 A JPH1012124 A JP H1012124A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 冷陰極電子源の電流強度の時間的安定性を改
良すること。 【解決手段】 カーボンナノチューブを電子源とし、該
電子源を規則正しく配列した陽極酸化膜の細孔中に設け
ることにより電子放出素子を構成する。上記の電子放出
素子を、陽極酸化膜の細孔中に金属触媒を析出させる
工程と、該金属触媒の触媒作用を利用して陽極酸化膜
の細孔中にカーボンナノチューブを形成する工程、を有
する方法により製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディスプレイ、陰
極線管、エミッター、ランプ、電子銃等に用いられ、優
れた電流強度安定性を示す電子放出素子およびその製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ディスプレイ装置の薄型化、およ
びその画像の高輝度化、高コントラスト化、広視野角化
に対する要請がますます強まってきている。これにとも
ない、ディスプレイ装置用の電子源についても、従来の
熱電子放出電子源から冷陰極電子源への移行がさかんに
検討されている。例えば、特開平7−220619号公
報や特開平7−94082号公報等に開示されているよ
うに、金属酸化膜に細孔を設け、該細孔内に微小な金属
電極を配置した構造の冷陰極電子源が種々開発されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、ディスプレ
イの薄膜化、高画像化を実現するためには一画素あたり
の電流強度が時間的に安定していることが必須となる。
ところが、従来の電子源においては個々の電子源の電流
値の時間変動率が大きいため、この点を克服することが
必要であった。このため、単位面積あたりの電子源の数
を増やすことにより個々の電子源の特性のばらつきを抑
えるとともに、それぞれの電子源についても先端の曲率
半径を小さくする等により電子放出効率を高めること
が、重要な技術課題となっている。本発明の目的は上記
課題を解決し、電流強度が時間的に安定した電子放出素
子を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明
は、電子源と引き出し電極を備え、引き出し電極によっ
て電子源から電子を引き出し放出させる機能を有する電
子放出素子において、カーボンナノチュ−ブを電子源と
する電子放出素子である。カーボンナノチューブは、そ
の先端の曲率半径が小さく、また化学的安定性が高いた
め、電流強度安定性に優れる。
【0005】請求項2に記載の発明は、ディスプレイ装
置に用いられる請求項1に記載の電子放出素子である。
カーボンナノチューブを用いた電子放出素子は電流強度
安定性に優れるため、ディスプレイ装置に使用したとき
にディスプレイの薄膜化、高画像化を図ることができ
る。
【0006】請求項3に記載の発明は、陽極酸化膜の細
孔中に電子源を有することを特徴とする請求項1または
2に記載の電子放出素子である。電子源の数密度が高い
ため、電流強度安定性に優れる。
【0007】請求項4に記載の発明は、絶縁基板上に金
属薄膜を介して陽極酸化膜が形成され、該陽極酸化膜中
に細孔を有し、該細孔中にカーボンナノチューブが形成
され、該細孔の開口部に電子引き出し電極が設けられた
構造を有する請求項3に記載の電子放出素子である。ま
た、請求項5に記載の発明は、複数の陽極酸化膜の細孔
が規則正しく配列した構造を有する請求項4に記載の電
子放出素子である。これらの構造を有する電子放出素子
は、電子源の数密度を高めるとともにカーボンナノチュ
ーブの持つ優れた特徴を十分に活かし、電流強度安定性
の改善を図ることができる。
【0008】請求項6に記載の発明は、陽極酸化膜の細
孔中に金属触媒を析出させる工程と、該金属触媒の触媒
作用により前記陽極酸化膜の細孔中にカーボンナノチュ
−ブを成長させる工程を有することを特徴とする請求項
3〜5に記載の電子放出素子の製造方法である。このよ
うな方法によればカーボンナノチューブを規則正しく配
列させ、かつ、その先端の方向を揃えることができる。
【0009】請求項7に記載の発明は、1000℃以上
1200℃以下の温度でカーボンナノチュ−ブを形成す
ることを特徴とする請求項6に記載の製造方法である。
このような方法によれば、陽極酸化膜細孔中に配置する
のに適したサイズのカーボンナノチューブを形成するこ
とができる。
【0010】
【発明の実施形態】本発明の電子放出素子は、ディスプ
レイ装置、陰極線管、エミッター、ランプ、電子銃等に
対して適用できるが、以下、ディスプレイ装置を代表例
に挙げて説明する。いずれに用いられる場合も電子源の
構造は実質的に同一である。
【0011】図1に本発明の電子放出素子の一例につい
て断面図を示す。断面構造は、ガラス基板上にアルミニ
ウム層を介し、アルミナ層を有する構造となっており、
アルミナ層にはアルミニウム層まで到達する細孔が設け
られている。それぞれの細孔には、金属触媒を起点とし
て成長したカーボンナノチューブが存在する。このカー
ボンナノチューブにはアルミニウム基板を通して電力が
供給され、電子源として機能する。
【0012】本発明に用いられる金属触媒として、例え
ば、ニッケル、コバルト、鉄等を用いることができる。
【0013】本発明におけるカーボンナノチューブと
は、円筒状に巻いたグラファイト層が入れ子状になった
もので、太さが数十nm以下のものをいう。チューブ状
の形態を有することはTEM観察により確認されてい
る。先端部分の曲率半径は10nm程度である。一般
に、冷陰極電子源の先端部は、曲率半径を小さくして強
電解をその部分に集中させ、電子放出効率を高める必要
がある。このため、従来技術においては先端を尖らせる
工程が不可欠となり、高度な技術とノウハウが必要とさ
れていた。これに対し、カーボンナノチューブは前述の
ようにもともと先端の曲率半径が小さいため、このよう
な工程を特に設ける必要がなく、簡便な工程で電子放出
効率の高く電流強度安定性の優れた電子源を作製するこ
とができる。また、カーボンナノチューブは耐酸化性、
耐イオン衝撃性に優れ、残留ガスのイオン化による電子
源のダメージを抑制できるため、この点からも電流強度
安定性の改良に寄与する。さらに、カーボンナノチュー
ブはサイズが極微小なため、電子源間隔を狭くした構造
とするのに好適である。後述するように、陽極酸化膜の
細孔中にカーボンナノチューブを形成させる等の簡便な
手法により電子源の数密度を高めることができる。これ
により、個々の電子源の特性のばらつきを抑え、一画素
あたりの電流強度の安定性を改善することができる。
【0014】カーボンナノチューブにはこのような利点
があるものの、その形成方法に関し、以下のような問題
点があった。すなわち、従来法により形成した場合、そ
れぞれの先端の方向が不揃いになりやすく、また、束ね
て方向をある程度揃えることができても、適度な間隔を
おいて規則正しく配置することが難しく、このために個
々のカーボンナノチューブに十分な電圧を印加できるよ
うな構造にすることが困難であった。
【0015】これに対し、本発明では、アルミニウム等
の金属を陽極酸化処理することにより規則正しく配列し
た細孔を形成し、該細孔中に金属触媒を埋め込み、ここ
を起点としてカーボンナノチューブを成長させるという
手法をとることにより、上記問題点を解決した。
【0016】本発明の電子放出素子は、例えば以下のよ
うな方法で製造される。まずアルミニウムの陽極酸化処
理を行う。これにより約40nmのアルミナの規則正し
い蜂の巣構造が形成され、それぞれの六角セルの中央に
は15nm程度の直径の細孔が設けられる(図2)。細
孔の大きさや間隔は、電解液の種類、印加電圧、温度等
の処理条件により変動させることもできる。このアルミ
ナ層に対して異方性エッチングを行い、細孔の底を導電
性のアルミニウム基板に到達させる。次に、アルミサッ
シに使われる電解着色技術を用いて金属触媒を析出させ
る。電解着色を行う際の金属塩溶液としては、硫酸塩、
ホウ酸塩等の溶液が使用できる。溶液中には電解に直接
関与しない支持電解質、錯化剤などを添加しても良い。
このようにして埋め込まれた触媒の作用により、炭化水
素ガスを炭化させ、一定の方向と間隔をもったカーボン
ナノチューブをアルミニウム基板上に成長させる。つづ
いて各画素に対応した素子分離のための間隙を作り、グ
リッドを斜め蒸着法で作り各素子毎の配線を設けること
により、極微小な電子源を有する電子放出素子を作製す
ることができる。
【0017】
【実施例】
(実施例1) 本発明の電子放出素子を以下のようにし
て作製した。まず、平坦なガラス基板上にアルミニウム
膜を形成した。形成の方法は、蒸着、貼り合わせのいず
れの方法によっても良い。次に表面を洗浄した。洗浄
は、脱脂、水洗、アルカリエッチング、酸による中和、
水洗の手順により行った。酸で中和する理由は、水洗だ
けではアルカリ液が残存しやすく、スマット(黒い粉状
のもの)ができてしまうためである。
【0018】次に、アルミニウム膜の陽極酸化処理(硫
酸アルマイト)を行った。前記のようにして洗浄した基
板を、10%濃度の硫酸中に浸しこれを陽極とした。対
極にもアルミニウム材を用い、直流15Vにて通電し
た。電流密度150A/m2で20分間通電したところ、約
9μmの厚さの皮膜が得られた。
【0019】処理後、RIE(反応性イオンエッチン
グ)の異方性エッチングにより、陽極酸化処理時に形成
された細孔の底部をアルミニウム基板まで到達させた。
【0020】次に、前記細孔内に金属触媒を析出させる
ため電解着色を行った。電解液として硫酸ニッケル液
(pH=5)を用いた。前述のように陽極酸化処理した
基板を電解液に浸漬し、カーボンを対極として電圧10
V、50Hzの交流で1分間通電し、陽極酸化皮膜細孔
中にニッケルの金属を析出させた。析出量は通電時間、
電圧、溶液濃度等により制御できる。
【0021】以上のようにしてニッケル金属触媒を細孔
中に埋め込んだ後、カーボンナノチューブを図3に示す
ような装置を用いCVD法により成長させた。アルミナ
基板を図3中の管状炉の中央部に置き、メタンガスを
0.05l/min、水素を0.2l/minで供給しながら炉内
の真空度を100Torrに保ち、1150℃で5分間
加熱処理した。水素を用いた理由は、カーボンナノチュ
ーブ以外の相であるアモルファスカーボンの生成を抑え
るためである。なお、反応時間を制御するため不活性ガ
スを加えることもできる。カーボンナノチューブは約1
000℃以上で形成されるが、アルミナの細孔の直径に
適した10nm程度の直径を持つものは1150℃で多
く形成された。なお、1200℃をこえる温度で加熱し
た場合には直径がミクロンオーダーとなってしまい、好
ましくない。
【0022】つづいて、ディスプレイ用の冷陰極電子源
とするため、引出し電極であるグリッドの取り付けを行
い、各画素を分別するために素子分離を行った。素子分
離は、マスクをして異方性エッチングによりアルミニウ
ム層を支持基板であるガラスまでエッチングすることに
よって行い、一つの画素に対応する電子源の素子寸法が
1μm×1μmとなるようにした。その面積中には、約
2500個ものカーボンナノチューブが入っていること
になる。
【0023】以上のようにして本発明の電子放出素子を
作製した。この電子放出素子を評価したところ、従来の
シリコンやモリブデンを用いリソグラフィー技術で微細
加工したものと比較して電流強度の時間的安定度が約5
0倍に改善されていることが確認された。
【0024】(実施例2)実施例1では図1のように細
孔内にカ−ボンナノチューブが収まる構造としたが、カ
ーボンナノチューブをさらに成長させ、細孔から先端が
突き出る形としても良い。
【0025】実施例1に示した電子放出素子の製造方法
において、カ−ボンナノチューブをCVD法により作製
する際、成長時間を15分としたところ、先端が細孔か
ら突き出る形状となった。なお、15分をこえてさらに
長時間成長させた場合にはナノチューブが屈曲する現象
が起こった。成長時間の設定には十分注意する必要があ
る。
【0026】引き出し電極となるグリッドは、ブラウン
管のマスクに使用されているタイプの金属メッシュを用
いることにより容易に設けることができた。また、カー
ボンナノチューブとグリッドの間には絶縁性スペーサー
を設けた。その他については実施例1と同様にして電子
放出素子を作製した。
【0027】
【発明の効果】シリコンやモリブデン等を用いた従来の
冷陰極電子源では、微小加工技術の制約上、電子源の間
隔を1μm程度とするのが限界であった。これに対し本
発明では、陽極酸化膜が有する細孔の中に電子源となる
カーボンナノチューブを形成するという手法により、電
子源の間隔を40nm程度にすることができる。これに
より、電子源の数密度が従来の数千倍となり、電流強度
の時間的安定度が約50倍となる。
【0028】また、カーボンナノチューブは耐酸化性、
耐イオン衝撃性に優れ、残留ガスのイオン化による電子
源のダメージを抑制できることから、電子放出素子の真
空度に対する制約を緩和できるというメリットもある。
【0029】さらに、本発明によれば精密なリソグラフ
ィー技術が不要なため、プロセスの簡便化を図ることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子源アレイの断面図である。
【図2】陽極酸化皮膜の立体構造を示した図である。
【図3】CVD法によりカーボンナノチューブを成長さ
せるために用いる装置を示した図である。
【符号の説明】
1 グリッド 2 カーボンナノチューブ 3 アルミニウム 4 蛍光板 5 金属触媒 6 素子分離のための間隙 7 細孔 8 六角セル 9 アルミナ 10 電気管状炉 11 金属触媒入りアルミナ基板

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子源と引き出し電極を備え、引き出し
    電極によって電子源から電子を引き出し放出させる機能
    を有する電子放出素子において、カーボンナノチュ−ブ
    を電子源とする電子放出素子。
  2. 【請求項2】 ディスプレイ装置に用いられる請求項1
    に記載の電子放出素子。
  3. 【請求項3】 陽極酸化膜の細孔中に電子源を有するこ
    とを特徴とする請求項1または2に記載の電子放出素
    子。
  4. 【請求項4】 絶縁基板上に金属薄膜を介して陽極酸化
    膜が形成され、該陽極酸化膜中に細孔を有し、該細孔中
    にカーボンナノチューブが形成され、該細孔の開口部に
    電子引き出し電極が設けられた構造を有する請求項3に
    記載の電子放出素子。
  5. 【請求項5】 複数の陽極酸化膜の細孔が規則正しく配
    列した構造を有する請求項4に記載の電子放出素子。
  6. 【請求項6】 陽極酸化膜の細孔中に金属触媒を析出さ
    せる工程と、該金属触媒の触媒作用により前記陽極酸化
    膜の細孔中にカーボンナノチュ−ブを成長させる工程を
    有することを特徴とする請求項3〜5に記載の電子放出
    素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 1000℃以上1200℃以下の温度で
    カーボンナノチュ−ブを形成することを特徴とする請求
    項6に記載の製造方法。
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