JPH099903A - 納豆菌およびそれを用いた納豆の製法並びに納豆 - Google Patents

納豆菌およびそれを用いた納豆の製法並びに納豆

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JPH099903A
JPH099903A JP7165461A JP16546195A JPH099903A JP H099903 A JPH099903 A JP H099903A JP 7165461 A JP7165461 A JP 7165461A JP 16546195 A JP16546195 A JP 16546195A JP H099903 A JPH099903 A JP H099903A
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hemicellulose
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bacillus subtilis
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Yoshie Kuwana
好恵 桑名
Akiko Kawai
晶子 川合
Takenori Okudaira
武則 奥平
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Fujicco Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】大豆種皮が部分的に分解された納豆を提供す
る。 【構成】ヘミセルロース分解能を有する納豆菌を用いて
納豆を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、大豆種皮のヘミセルロ
ースの分解能を有する納豆菌およびこれを用いた納豆の
製法ならびに上記納豆菌を用いた納豆に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】納豆は、大豆の高い栄養価を利用した発
酵食品であり、納豆菌が産出するプロテアーゼを始めと
する各種酵素の作用により、大豆中のタンパク質成分等
が適度に分解されて消化吸収性が向上し、かつ特有のう
ま味成分が生じたものである。また、最近では、納豆中
に血栓溶解酵素が発見されるなど、その栄養学的機能の
他に生体調節機能に対する評価が高まっている。このた
め、納豆の需要は増加傾向にあり、日本人の食生活に欠
かせない重要な食品の一つとなっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように、納豆は、
栄養学的機能および生体調節機能に優れた完成度の高い
食品であるといえる。しかしながら、本発明者らが得た
知見では、納豆の消化吸収率は、約80%といわれてい
る。したがって、納豆を食しても、その全てが消化吸収
されず、納豆の高い栄養価を完全に利用しているわけで
はない。したがって、消化吸収性の向上が、納豆の改善
点としてあげられる。また、上記のような優れた機能を
有する納豆を、多くの人々に利用してもらうため、その
テクスチャー等の改善も所望されている。さらに、大豆
の組織は硬いため、納豆の製造において、大豆の蒸煮工
程を長時間行い、充分に大豆を柔らかくする必要があ
る。しかし、長時間の蒸煮工程を行うと、大豆からドレ
ンが出て、大豆の栄養分が流出してしまう。このため、
大豆の蒸煮工程を短縮するかその条件を穏やかにするこ
とが納豆製造の課題の一つとなっている。
【0004】本発明は、このような事情に鑑みなされた
もので、過酷で長時間の大豆蒸煮工程を必要とせず、納
豆の消化吸収性を向上させ、かつテクスチャーの改善を
図ることが可能な新規納豆菌およびそれを用いた納豆の
製法並びに上記納豆菌を用いた納豆の提供をその目的と
する。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、バチラス・ズブチルス(Bacillu
s subtilis)に属する納豆菌であって、ヘミ
セルロース分解能を有する納豆菌を第1の要旨とする。
【0006】また、本発明は、蒸煮大豆を準備する工程
と、この蒸煮大豆に納豆菌を接種した後上記蒸煮大豆を
発酵させる工程と、発酵させた蒸煮大豆を冷蔵して熟成
させる熟成工程とを備えた納豆の製法であって、納豆菌
として、ヘミセルロース分解能を有する納豆菌を使用す
る納豆の製法を第2の要旨とする。
【0007】そして、本発明は、上記製法により製造さ
れる納豆を第3の要旨とし、上記納豆菌を含有する納豆
を第4の要旨とする。
【0008】
【作用】すなわち、本発明者らは、本発明をするにあた
り、最初に、納豆の消化吸収性の向上、納豆のテクスチ
ャーの改善、大豆蒸煮工程時間の短縮等の問題の原因の
解明を行った。その結果、納豆菌が大豆種皮を分解でき
ないことが、上記3つの問題の共通の原因であると推察
した。周知のように、納豆菌は大豆種皮の主要構成成分
であるセルロースやヘミセルロースを分解する酵素を産
出しない。このため、納豆において、大豆種皮が残存す
ることにより、消化吸収性が阻害されるものと思われ
る。また、納豆菌が、大豆種皮成分を分解するならば、
これを用いて得られる納豆はさらに柔らかくなるものと
期待され、大豆蒸煮工程もその条件を穏やかにしたり時
間を短縮したりすることができるものと思われる。そこ
で、この知見に基づき、本発明者らは、大豆種皮中のヘ
ミセルロースの分解のために、このヘミセルロースの構
成成分であるキシランを分解する納豆菌の開発を行った
のである。この特殊な酵素活性を有する納豆菌は、本発
明者らが、市販の納豆菌に対し、突然変異処理を行い、
キシラン分解酵素であるキシラナーゼ活性を指標にして
スクリーニングを行い得たものである。このように、ヘ
ミセルロースの分解に的を絞ったのは、セルロースはそ
の結合が強固で分解が困難であると予想されるのに対
し、ヘミセルロースは、比較的分解が容易と予想された
からである。さらに、ヘミセルロースの構成成分である
キシランの分解に的を絞ったのは、キシランはヘミセル
ロースの50%以上を占める主要成分だからである。こ
の結果、ヘミセルロース中のキシランを分解するキシラ
ナーゼを産出する納豆菌は、ヘミセルロース分解能を有
し、この納豆菌を用いて製造された納豆は、その大豆種
皮が部分的に分解されることから、消化吸収性が、従来
より向上することが期待される。また、キシランが分解
されてキシロースとアラビノースが生成するが、これら
の還元糖は、納豆菌が利用可能なものであることから、
納豆菌の増殖も促進されるものと思われる。そして、こ
の納豆菌を用いて製造された納豆は、大豆種皮が部分的
に分解されていることから、従来の納豆に比べて柔らか
くなり、テクスチャーが好ましいものとなる。さらに、
納豆菌が大豆種皮を分解して納豆を柔らかくすることか
ら、従来のように、過酷な条件の長時間蒸煮により大豆
を柔らかくする必要がなくなり、短時間の蒸煮あるいは
穏やかな条件の蒸煮で納豆を製造することが可能とな
る。
【0009】つぎに、本発明を詳しく説明する。
【0010】本発明の納豆菌は、バチラス・ズブチルス
(Bacillus subtilis)に属する納豆
菌であって、ヘミセルロース分解能を有するものであ
る。このような納豆菌としては、本発明者らが、生命工
学研究所に寄託したバチラス・ズブチルス・ネオマイル
ド710(Bacillus subtilis NE
O MILD 710,FERM P−14843)が
あげられる。この納豆菌のヘミセルロース分解能以外の
菌学的性質を下記に示す。
【0011】〔形態〕 形状:棹菌 大きさ:2〜3×1.0μm 運動性:+ 胞子形成能:+ 胞子形状:楕円形 胞子大きさ:1.4〜1.6×0.8μm 胞子形成部位:中央 グラム染色:+
【0012】〔培養的性質〕 (1) 寒天平板培養 形状:環状 表面:粘質性 隆起状態:断層状、隆起あり 色調:乳白色 光沢:あり (2) 液体培養 表面の生育:菌膜形成 混濁:あり 沈殿:+ (3) ゼラチンの突刺培養 生育の状態:+ ゼラチンの液化:+
【0013】〔生理学的性質〕 硝酸塩の還元:+ 脱窒反応:+ VPテスト:+ インドールの生成:− 硫化水素の生成:− デンプンの加水分解:+ クエン酸の利用:+ 色素の生成:− ウレアーゼ:− オキシダーゼ:+ カタラーゼ:+ 生育温度範囲:15〜55℃ 生育pH範囲:pH4.1〜pH9.5 酸素要求性:好気性 糖類からの酸およびガスの生成 アラビノース:+ キシロース:+ グルコース:+ マンノース:+ フラクトース:+ ガラクトース:− 麦芽糖:+ 蔗糖:+ マンニトール:+ デンプン:+ サブロー蔗糖培地での生育:+ カゼインの分解:+ プロテアーゼ活性:+ γ−グルタミルトランスペプチターゼ(γ−GTP)活
性:+ 最小培地での生育:− ビオチン要求性:+ 抗生物質耐性:− エスクリンの分解:+ 塩化ナトリウム耐性:1.5モル/L以下 ファージ感受性:+
【0014】上記菌学的性質からも明らかなように、こ
の菌は、納豆菌であるといえる。なお、納豆菌と納豆菌
以外のバチラス・ズブチルスとの相違は、納豆菌がビオ
チン要求性を示し、かつ粘質物産出能を有するのに対
し、納豆菌以外のバチラス・ズブチルスは、これら二つ
の特性を示さないことにある。上記粘質物生産能は、藤
井久雄の方法(農芸化学学会誌,37(6),p346
〜350,1963年)により確認することができる。
具体的には、蒸煮大豆またはグルタミン酸系列のアミノ
酸を窒素源とし炭素源と併用した合成培地(例えば、G
SP培地)で菌を培養し、形成されたコロニーに白金線
の先端を接触させた後これを引き上げて糸引きの長さを
測定するという方法である。納豆菌と判断するための糸
引きの長さは、50cm以上である。なお、納豆菌以外
のバチラス・ズブチルスのなかには、キシラナーゼ活性
を有するものもあるが、上記のように、粘質物生産能を
有しないため、これを用いて納豆を製造することは事実
上不可能である。
【0015】本発明のヘミセルロース分解能を有する納
豆菌は、例えば、市販の納豆菌,公知の納豆菌,自然分
離納豆菌に対し、突然変異処理を行い、キシラナーゼ活
性を指標にしてスクリニーングをすることにより得るこ
とができる。
【0016】すなわち、まず、市販の納豆菌や公知の納
豆菌の胞子懸濁液を調製する。上記市販納豆菌として
は、例えば、宮城野納豆菌、成瀬納豆菌、高橋納豆菌が
あげらる。また、公知納豆菌としては、微生物寄託が行
われた納豆菌等があげられる。この他に、各地の土壌や
稲藁から採取した自然分離納豆菌を使用してもよい。そ
して、上記胞子懸濁液に対し、突然変異処理を行う。こ
の突然変移処理としては、例えば、紫外線照射,放射線
照射(X線,γ線)、N−メチル−N−ニトロ−N−ニ
トロソグアニジンやエチルメタンスルホネート等を用い
た薬剤処理があげられる。つぎに、この突然変移処理を
行った胞子懸濁液を、グルコースをキシランで置換した
スピツァィツェン培地(SpizizenMM培地,以
下「キシラン培地」という)にプレーティングする。そ
して、これを、37℃で1〜3日間培養し、形成された
コロニーを新しいキシラン培地に転写(レプリカ)す
る。この際、変異体の親株となった通常の納豆菌(市販
菌等)も同じキシラン培地に転写(レプリカ)し、37
℃で1〜3日間培養する。そして、親株より早く形成さ
れたコロニーをキシラナーゼ活性が確認された納豆菌と
してスクリーニングする。
【0017】つぎに、スクリーニングしたコロニーをG
SP培地にスポットし、コロニーの粘質物生産能を指標
にし、スクリーニングを行う。この粘質物生産能は、先
にのべた方法により行うことができる。なお、この粘質
物生産能の指標に加え、γ−GTP活性の測定を行え
ば、より正確に納豆菌を選別することが可能となる。そ
して、粘質物生産能が確認された菌を、ヘミセルロース
分解能を有する納豆菌とし、本発明の納豆菌を得ること
ができる。
【0018】本発明の納豆菌のヘミセルロース分解能
は、この納豆菌が産出するキシラナーゼに基づくもので
ある。すなわち、ヘミセルロースの主要成分であるキシ
ランを分解することにより、ヘミセルロースが分解され
るからである。また、本発明の納豆菌において、キシラ
ナーゼ活性は、10units以上であることが好まし
く、特に好ましくは150units以上である。
【0019】納豆菌のキシラナーゼ活性は、例えば、つ
ぎのようにして測定される。すなわち、まずキシラナー
ゼ酵素液を準備する。この酵素液は、納豆菌を酵素活性
測定用培地で48時間振盪培養した培養液を用いる。上
記酵素活性測定用培地の組成の一例を以下に示す。
【0020】〔酵素活性測定用培地組成の例〕 脱脂大豆粉末 : 2.0重量% ポリペプトン : 0.5重量% 肉エキス : 0.5重量% MgSO4 : 0.01重量% NaCl : 0.01重量% KH2 PO4 : 0.05重量% K2 HPO4 : 0.05重量%
【0021】そして、この酵素液により、キシランを分
解し、この分解により生成した還元糖(キシロース,ア
ラビノース)を定量することによりキシラナーゼ活性を
測定することができる。このキシラナーゼ活性測定法の
一例としては、ソモギ−ネルソン法(Somogyi−
Nelson法,「食品分析法,日本食品工業学会食品
分析法編集委員編,昭和59年,光琳社発行」記載の方
法)があげられる。このソモギ−ネルソン法は、糖,銅
試薬の反応で生じた酸化第一銅を硫酸酸性下でリンモリ
ブデン酸と反応させて、モリブデン青として比色すると
いう方法である。
【0022】つぎに、このヘミセルロース分解能を有す
る納豆菌を用いた納豆の製法について説明する。
【0023】本発明の納豆の製法は、従来の製法におい
て、ヘミセルロース分解能を有する納豆菌を使用するこ
とが特徴である。すなわち、蒸煮大豆を準備し、この大
豆に納豆菌を接種した後上記蒸煮大豆を発酵させる。こ
の時、上記ヘミセルロース分解能を有する納豆菌を使用
する。この納豆菌の接種方法や、発酵条件は従来の製法
と同様である。ついで、発酵させた蒸煮大豆を冷蔵して
熟成させ、本発明にかかる納豆を製造することができ
る。
【0024】このようにして得られた納豆は、上記納豆
菌の作用により、大豆中のタンパク質等の分解に加え、
大豆種皮の主要成分の一つであるヘミセルロースが分解
されている。したがって、本発明にかかる納豆であるか
否かの判断は、大豆種皮中のヘミセルロースの分解によ
り判断することが可能である。また、この他に、上記納
豆菌は納豆中に残存するため、納豆から納豆菌を採取
し、この納豆菌が、ヘミセルロース分解能を有すれば、
本発明にかかる納豆であると判断することができる。
【0025】
【発明の効果】以上のように、本発明の納豆菌は、大豆
種皮の主要構成成分の一つであるヘミセルロースを分解
するものである。したがって、この特殊な納豆菌を用い
て製造された納豆では、大豆種皮が部分的に分解されて
いる。このため、本発明の納豆は、従来の納豆に比べ、
消化吸収性の向上が期待できる。また、ヘミセルロース
の分解によってキシロースやアラビノース等の納豆菌自
身が利用可能な還元糖が生成するため、納豆菌の増殖促
進も期待できる。そして、本発明の納豆は、大豆種皮が
部分的に分解しているため、従来の納豆に比べて柔らか
く、歯触りや口どけがよいまろやかなものである。した
がって、従来の納豆の触感が苦手な人であっても、本発
明の納豆であれば抵抗が少なく食することが期待でき
る。さらに、納豆菌が大豆種皮を部分的に分解すること
から、納豆の製造において、大豆蒸煮時間を短縮したり
蒸煮条件を穏やかなものとすることができるようにな
る。この結果、納豆の製造の効率が向上するようにな
り、また大豆の栄養分の流出が低減されることから、栄
養価が向上した納豆を製造することが可能となる。
【0026】つぎに、実施例について比較例と併せて説
明する。
【0027】
【実施例1】前述の方法により、キシラナーゼ分解能を
有する納豆菌を得た。すなわち、まず、市販の納豆菌
(宮城野納豆菌)の胞子懸濁液を調製した。この胞子懸
濁液に対し、紫外線照射および放射線照射(X線,γ
線)や、N−メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニ
ジンやエチルメタンスルホネート等を用いた薬剤処理を
行い、種々の突然変異体を作製した。この突然変異処理
を行った胞子懸濁液を、キシラン培地にプレーティング
し、これを、37℃で3日間培養し、形成されたコロニ
ーを新しいキシラン培地に転写(レプリカ)した。この
際、変異体の親株となった市販の納豆菌も同じキシラン
培地に転写(レプリカ)し、37℃で3日間培養した。
そして、親株より早く形成されたコロニーをキシラナー
ゼ活性が確認された納豆菌としてスクリーニングした。
【0028】つぎに、スクリーニングしたコロニーをG
SP培地にスポットし、コロニーの粘質物生産能を検査
し、粘質物生産能が確認された菌をスクリーニングし、
目的とする納豆菌(バチラス・ズブチルス・ネオマイル
ド710)を得た。
【0029】
【比較例1】納豆菌として、市販納豆菌(三浦納豆菌,
高橋納豆菌,成瀬納豆菌)および分譲可能納豆菌(B.
natto IFO 3013,B.nattoIFO
3336,B.natto IFO 13169)を
準備した。また、納豆菌以外のバチラス・ズブチルス
(B.subtilis IFO 3134,B.su
btilis K 49,B.subtilis A
2,B.subtilis IFO 3108,B.s
ubtilis IFO 12112,B.subti
lis IFO 14132,B.subtilis
IFO 14140)を準備した。
【0030】このようにして得られた実施例の納豆菌
(バチラス・ズブチルス・ネオマイルド710)と、比
較例の納豆菌とについて、キシラナーゼ活性および糸引
き能を測定した。これらの結果を、下記の表1に示す。
なお、上記キシラナーゼ活性および糸引き能は、下記に
示す方法により測定した。
【0031】〔キシラナーゼ活性〕前述の組成の酵素活
性測定用培地(pH6.5)で、菌を37℃で48時間
振盪培養し、8000rpmで20分の遠心分離を行
い、その上清を酵素液とした。そして、この酵素液でキ
シラン(基質)を分解し、生成する還元糖を前述のソモ
ギ−ネルソン法により定量して、キシラナーゼ活性を測
定した。このソモギ−ネルソン法は、具体的には以下の
通りである。
【0032】まず、ソモギ−ネルソン法の各試薬(A
液,B液,C液,D液)およびキシラン基質液を準備し
た。
【0033】A液:無水炭酸ナトリウム25g,ロッシ
ェル塩25g,炭酸水素ナトリウム20g,無水硫酸ナ
トリウム200gを800mlの水に溶解し、これを1
リットルに定容した。
【0034】B液:硫酸銅五水和物30gを4滴の濃硫
酸を含む水200mlに溶解した。
【0035】C液:モリブデン酸アンモニウム四水和物
25gを濃硫酸21mlを含む450mlの水に溶解
し、モリブンデン酸アンモニウム溶液を調製した。そし
て、25mlの水にヒ酸二ナトリウム七水和物3gを溶
かしたものを、上記モリブデン酸アンモニウム溶液に加
え、500mlに定容した。
【0036】D液:酵素活性測定時において、A液25
mlとB液1mlとを混合した。
【0037】キシラン基質液:キシラン(シグマ社製)
を50mMリン酸緩衝液(pH6.8)に懸濁させ、1
重量%キシラン懸濁液を調製した。
【0038】つぎに、上記酵素液,試薬(A液〜D
液),キシラン基質液を用い、以下に示すようにして、
キシラナーゼ活性の測定を行った。
【0039】すなわち、まず、酵素液5mlにキシラン
基質液5mlを加え、37℃で60分の反応を行った。
そして、この反応液1mlに対し、D液1mlを加え、
激しく沸騰している沸騰浴槽中で20分間加熱した。そ
の後、流水で5分間急冷し、C液を1ml加え攪拌した
後、20分間放置した。これに、水を加えて25mlに
定容し、520nmの吸光度を測定した。この吸光度か
ら、予め、キシロースにより作成した検量線により還元
糖の量を算出した。なお、キシラナーゼ活性は、60分
間に1×10-3μmolのキシロースを生成する酵素量
を1単位(units)として表した。
【0040】〔糸引き能〕まず、下記に示す組成のGS
P寒天培地を、常法で調製した。なお、このGSP寒天
培地調製時において、121℃,15分間の滅菌処理を
行った。、そして、このGSP寒天培地に、白金線で菌
をスポットし、これを、37℃で24時間培養した。そ
の後、上記GSP寒天培地上に形成されたコロニーに白
金線の先端を接触させ、これを引き上げて糸引きの長さ
を測定した。
【0041】(GSP培地組成) グルタミン酸ソーダ・1H2 O : 15g サッカロース : 30g Phytone : 15g KH2 PO4 : 2.5g Na2 HPO4 : 1.7g NaCl : 0.5g MgCl2 ・7H2 O : 0.5g ビオチン : 100μg 寒天 : 15g 蒸留水 : 1000ml
【0042】
【表1】
【0043】上記表1から、実施例1の納豆菌(バチラ
ス・ズブチルス・ネオマイルド710)は、高いキシラ
ナーゼ活性を有し、かつ50cm以上の糸引き能を有す
ることがわかる。このことから、この納豆菌(バチラス
・ズブチルス・ネオマイルド710)は、キシラナーゼ
活性を備えた新規の納豆菌であるといえる。これに対
し、通常の納豆菌は、キシラナーゼ活性がまったくなか
った。また、納豆菌以外のバチラス・ズブチルスのなか
には、キシラナーゼ活性が認められたものもあったが、
糸引き能がなく、納豆の製造に使用できるものはなかっ
た。
【0044】
【実施例2】実施例1の納豆菌(バチラス・ズブチルス
・ネオマイルド710)を用い、以下に示すようにして
納豆を試作した。すなわち、まず、大豆を3倍量の水で
一晩浸漬した後よく水を切り、1.8kg/cm2 の条
件で20分間蒸煮した。つぎに、蒸煮大豆1gに対して
上記納豆菌の菌数が103 個となるように納豆菌胞子懸
濁液を噴霧し、よく攪拌した。これを、発泡スチロール
製の容器に所定量充填し、小孔のあるポリスチレン製フ
ィルムで被覆して蓋をした。そして、40℃,湿度80
%で約18時間発酵処理を行った後、10℃で2日以上
冷蔵して熟成させ、目的とする納豆を得た。
【0045】
【比較例2】市販納豆菌(三浦納豆菌)を用い、大豆蒸
煮時間を30分とした他は、実施例2と同様にして納豆
を試作した。
【0046】このようにして得られた実施例品2および
比較例品2の納豆について、破壊強度試験および官能試
験を行った。この結果を、下記の表2に示す。なお、上
記破壊強度試験および官能試験は、下記に示す方法によ
り行った。
【0047】〔破壊強度試験〕破壊強度試験は、「納豆
試験法(納豆試験研究会編,光琳社,平成2年3月8日
発行)」に記載の方法により行った。すなわち、上皿時
計秤(秤量1kgのもの)上に、納豆を一粒のせ、人差
し指で押しつぶし、つぶれた時の重量(g)を破壊強度
とした。なお、この破壊強度試験は、納豆100粒につ
いて行い、その平均値を下記の表2に示した。
【0048】〔官能試験〕毎日納豆を試食して官能試験
の訓練を受けた専門パネラー30名に、納豆を試食して
もらい、下記の表2に示す項目について評価してもらっ
た。また、官能試験の際に出された意見を併せて同表に
示した。
【0049】
【表2】
【0050】上記表2から、本発明の納豆菌(バチラス
・ズブチルス・ネオマイルド710)を用いて作製した
実施例2の納豆は、市販の納豆菌を用いた比較例2の納
豆に比べ、破断強度が低く、柔らかいことがわかる。
【0051】また、官能試験の結果、実施例2の納豆
は、比較例2の納豆と比較して、白粉の張りおよび糸の
強さは同等であった。そして、香りの良さ、豆の固さ、
旨みの強さの三項目については、実施例2の納豆を支持
するパネラーが多く、総合評価についても、実施例2の
納豆を支持するパネラーが多かった。また、実施例2の
納豆については、柔らかくまろやかであり、マイルドで
滑らか、口どけが良いという意見が多数出された。
【0052】そして、実施例2の納豆の製造では、蒸煮
時間は20分であり、比較例2の納豆の製造に比べ、蒸
煮時間を10分間短縮できた。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バチラス・ズブチルス(Bacillu
    s subtilis)に属する納豆菌であって、ヘミ
    セルロース分解能を有することを特徴とする納豆菌。
  2. 【請求項2】 大豆種皮のヘミセルロースのキシラン分
    解能を有する請求項1記載の納豆菌。
  3. 【請求項3】 キシラナーゼ活性が、10units以
    上であり、かつGSP培地上での糸引き能が50cm以
    上である請求項1または2記載の納豆菌。
  4. 【請求項4】 バチラス・ズブチルス(Bacillu
    s subtilis)に属する納豆菌が、バチラス・
    ズブチルス・ネオマイルド710(Bacillus
    subtilis NEO MILD 710,FER
    M P−14843)である請求項1〜3のいずれか一
    項に記載の納豆菌。
  5. 【請求項5】 蒸煮大豆を準備する工程と、この蒸煮大
    豆に納豆菌を接種した後上記蒸煮大豆を発酵させる工程
    と、発酵させた蒸煮大豆を冷蔵して熟成させる熟成工程
    とを備えた納豆の製法であって、上記納豆菌として、請
    求項1〜4のいずれか一項に記載の納豆菌を使用する納
    豆の製法。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の方法により製造された
    納豆。
  7. 【請求項7】 請求項1〜4のいずれか一項に記載の納
    豆菌を含有する納豆。
  8. 【請求項8】 大豆種皮のヘミセルロースが分解された
    請求項6または7記載の納豆。
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