JP2851811B2 - 納豆菌およびそれを用いた納豆の製法並びに納豆 - Google Patents

納豆菌およびそれを用いた納豆の製法並びに納豆

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規な納豆菌およびこ
れを用いた納豆の製法ならびに上記納豆菌を用いた納豆
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】納豆は、古くから日本人に親しまれてい
る伝統食品であるとともに、最近では、その栄養学的機
能の他に生体調節機能に対する評価が高く、重要な食品
の一つとなっている。このため、納豆の需要は増加傾向
にあり、伝統的な製法の他、最近では工業的な手法によ
り生産されている。
【0003】ここで、納豆の工業的な製法について説明
すると、まず、蒸煮大豆を準備し、これに納豆菌を接種
する。ついで、上記蒸煮大豆をカップ等の容器に小分け
して充填後、この状態で、約40℃で15〜20時間発
酵させる。そして、発酵の後、10℃以下で1〜2日間
冷却して熟成させ、納豆が製造される。このように、納
豆は、大豆の発酵食品であり、主として、納豆菌が産出
するプロテアーゼの作用により、大豆タンパク質が分解
されて、特有のうま味成分が生じるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】このような工程を経て製造される納豆に
は、納豆菌が胞子や栄養細胞の状態で存在し、また納豆
菌により産出されたプロテアーゼ等の各種酵素が残存し
ている。このため、納豆は、チルド食品に分類され、1
0℃以下で流通されている。これは、常温下におくと、
アンモニアやチロシン等の不快成分が生成し、納豆が劣
化してしまうからである。しかし、流通段階では、低温
条件にあっても、流通の最終段階である店舗での保管
や、市販された後の消費者による保管では、必ずしも納
豆の劣化を抑制するための充分な低温条件を期待するこ
とは困難である。したがって、納豆の常温における劣化
の問題は、納豆製造業者の重要な課題となっている。
【0006】上記納豆の劣化の問題を解決する手段とし
て、不快成分の一つであるアンモニアの生成が少ない納
豆菌を使用する技術が提案されている(特願昭62−2
45041号公報,特願昭63−14846号公報、特
願平2−300718号公報)。これは、納豆が常温下
におかれることにより、納豆に残存する胞子が発芽して
納豆菌が増殖したり、栄養細胞が再度活発化したりし
て、大豆タンパク質分解物の分解がさらに進むことに起
因するという推察に基づくものである。しかし、このよ
うなアンモニアの生成量が少ない納豆菌を用いても、納
豆の劣化を充分に防止することはできないのが実情であ
る。
【0007】本発明は、このような事情に鑑みなされた
もので、常温での納豆の劣化が防止される納豆菌および
これを用いた納豆の製法ならびに上記納豆菌を用いた納
豆の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、バチラス・ズブチルス(Bacillu
s subtilis)に属する納豆菌であって、下記
の条件(A)での培養において、培養開始後5時間から
12時間の間にプロテアーゼ活性が250units/リットル以
上に上昇し、培養開始後17時間から30時間の間にプ
ロテアーゼ活性が90units/リットル以下に低下する納豆菌
を第1の要旨とする。。 (A)培養温度:30〜45℃ 培養培地:大豆水抽出液(Bx.0.3〜2.0%) 培養方法:振盪培養
【0009】また、本発明は、蒸煮大豆を準備する工程
と、この蒸煮大豆に納豆菌を接種した後上記蒸煮大豆を
発酵させる工程と、発酵させた蒸煮大豆を冷蔵して熟成
させる熟成工程とを備えた納豆の製法であって、納豆菌
として、上記特殊なプロテアーゼ活性を示す納豆菌を使
用する納豆の製法を第2の要旨とし、またこの製法によ
り製造される納豆を第3の要旨とし、上記納豆菌を含有
する納豆を第4の要旨とする。
【0010】
【作用】すなわち、本発明者らは、本発明をするにあた
り、最初に、納豆の劣化機構の解明を行った。その結
果、常温での納豆の劣化は、納豆に残存する胞子や栄養
細胞の再活性化は大きな影響を与えないことを突き止め
た。これは、納豆を常温に放置して、納豆菌の菌数の経
時的変化を調べたところ、納豆の劣化が進んでも、胞子
数や栄養細胞数に大きな変化が見られないことによる。
この事実から、納豆の劣化は、納豆に残存するプロテア
ーゼの再活性化によるものと推察することができた。す
なわち、不快成分であるアンモニアやチロシンは、大豆
タンパク質分解物が、さらに分解して生成するものだか
らである。そして、この有力な知見をもとに、本発明者
らは、発酵初期(培養初期)の段階で高いプロテアーゼ
活性を示し、発酵終期(培養終期)には、プロテアーゼ
活性が低下するという特殊な納豆菌の開発を行った。こ
の特殊な納豆菌は、本発明者らが、各地の土壌や稲藁等
から分離採取した2300種を越える納豆菌をさらにプ
ロテアーゼ活性の挙動を指標にしてスクリーニングを行
い得たものである。この納豆菌は、一定条件の培養にお
いて、培養初期では、一般の納豆菌よりはるかに高いプ
ロテアーゼ活性(250units/リットル以上)を示し、培養
後期には、一般の納豆菌より低いプロテアーゼ活性(9
0units/リットル以下)に低下する。このため、この納豆菌
を用いて納豆を製造すると、発酵初期では、プロテアー
ゼ活性が充分に高いため、大豆タンパク質を充分に分解
して、特有のうま味成分が生じ、発酵後期ではプロテア
ーゼ活性が充分に低下し、納豆に残存するプロテアーゼ
量が従来の納豆より著しく少なくなる。この結果、熟成
工程の段階で、残存プロテアーゼが略完全に消費され
て、納豆が流通段階や市販後の段階で常温に放置された
としても、大豆タンパク質分解物のさらなる分解が抑制
され、遊離アンモニア等の不快成分の生成が防止され
る。
【0011】なお、本発明において、納豆菌のプロテア
ーゼ活性とは、納豆菌が大豆タンパク質を分解する能力
をいう。また、本発明において、大豆水抽出液の濃度
は、屈折計で測定したBrix濃度(Bx.)をいう。
【0012】つぎに、本発明を詳しく説明する。
【0013】本発明の納豆菌は、バチラス・ズブチルス
(Bacillus subtilis)に属する納豆
菌であって、特殊なプロテアーゼ活性を示すものであ
る。このような納豆菌としては、本発明者らが、生命工
学研究所に寄託したバチラス・ズブチルス・カオリ II
(Bacillus subtilis KAORII
I,FERM P−14771)があげられる。この納
豆菌の菌学的性質を下記に示す。
【0014】〔形態〕 形状:棹菌 大きさ:2〜3×1.0μm 運動性:+ 胞子形成能:+ 胞子形状:楕円形 胞子大きさ:1.4〜1.6×0.8μm 胞子形成部位:中央 グラム染色:+
【0015】〔培養的性質〕 (1) 寒天平板培養 形状:環状 表面:粘質性 隆起状態:断層状、隆起あり 色調:乳白色 光沢:あり (2) 液体培養 表面の生育:菌膜形成 混濁:あり 沈殿:+ (3) ゼラチンの突刺培養 生育の状態:+ ゼラチンの液化:+
【0016】〔生理学的性質〕 硝酸塩の還元:+ 脱窒反応:+ VPテスト:+ インドールの生成:− 硫化水素の生成:− デンプンの加水分解:+ クエン酸の利用:+ 色素の生成:− ウレアーゼ:− オキシダーゼ:+ カタラーゼ:+ 生育温度範囲:15〜55℃ 生育pH範囲:pH4.1〜pH9.5 酸素要求性:好気性 糖類からの酸およびガスの生成 アラビノース:+ キシロース:+ グルコース:+ マンノース:+ フラクトース:+ ガラクトース:− 麦芽糖:+ 蔗糖:+ マンニトール:+ デンプン:+ サブロー蔗糖培地での生育:+ カゼインの分解:+ プロテアーゼ活性:+ γ−グルタミルトランスペプチダーゼ活性:+ 最小培地での生育:− ビオチン要求性:+ 抗生物質耐性:− エスクリンの分解:+ 塩化ナトリウム耐性:1.5モル/リットル以下 ファージ感受性:+
【0017】上記菌学的性質からも明らかなように、こ
の寄託された菌は、納豆菌であるといえる。
【0018】上記バチラス・ズブチルス・カオリ II
(以下「カオリII」という)を始めとする特殊なプロテ
アーゼ活性を示す本発明の納豆菌は、以下のようにして
得ることができる。
【0019】すなわち、まず、納豆菌を準備する。この
納豆菌としては、各地の土壌や稲藁等から分離採取した
ものがあげられる。この納豆菌の分離は、一般的な手法
を適用することができる。また、上記自然分離した納豆
菌や市販納豆菌に対し、突然変異処理を行った納豆菌を
準備してもよい。上記市販納豆菌としては、例えば、宮
城野納豆菌、成瀬納豆菌、高橋納豆菌があげらる。ま
た、上記突然変異処理としては、例えば、紫外線照射,
放射線照射(X線,γ線)、N−メチル−N−ニトロ−
N−ニトロソグアニジンやエチルメタンスルホネート等
を用いた薬剤処理があげられる。このような突然変異処
理により、本発明の特殊なプロテアーゼ活性を示す納豆
菌を得る確率が高くなる。
【0020】そして、上記納豆菌を液体培地(大豆水抽
出液)に接種し、30〜45℃の範囲、好ましくは40
℃付近で培養を開始する。なお、上記大豆水抽出液とし
ては、Bx.0.3〜2.0%の大豆水抽出液が使用さ
れ、好ましくは、Bx.0.5〜1.0%程度である。
この大豆水抽出液は、大豆を、その重量の約3倍量の水
(10〜20℃)に15〜30時間浸漬した後、上記大
豆を除いて得られるものである。また、この大豆水抽出
液のBx.は、浸漬時間や浸漬温度を変えること等によ
り調整することができる。そして、培養開始から10時
間後および24時間後において、ハロー比によりプロテ
アーゼ活性を求める。上記ハロー比は、菌培養後の大豆
水抽出液を、例えば大豆粉末が入ったL寒天培地にスポ
ットして一定時間培養することにより、求めることがで
きる。そして、10時間後のハロー比に対し、24時間
後のハロー比が1/3以下となった納豆菌を選択するこ
とにより、特殊なプロテアーゼ活性を有する納豆菌を得
ることができる。
【0021】このようにして得られる本発明の納豆菌
は、一定条件の培養において、培養開始後5時間から1
2時間の間にプロテアーゼ活性が250units/リットル以上
に上昇し、培養開始後17時間から30時間の間にプロ
テアーゼ活性が90units/リットル以下に低下する。
【0022】上記一定の培養条件は、下記に示すとおり
である。
【0023】〔培養条件A〕 培養温度:30〜45℃ 培養培地:大豆水抽出液(Bx.0.3〜2.0%) 培養方法:振盪培養
【0024】上記培養温度は、納豆の製造における発酵
工程の温度と略同じ範囲である。また、大豆水抽出液
は、先に述べたとおりである。そして、振盪培養の条件
は、一般的な条件が適用されるが、例えば、回転振盪培
養の場合は、約200rpmの条件でバッフル付き三角
フラスコを用いた振盪が好ましい。
【0025】そして、納豆菌のプロテアーゼ活性の測定
方法は、例えば、大西らの方法〔家政誌、(39)、1
988年発行〕が適用できる。これを具体的に説明する
と、まず、大豆タンパク質の1重量%(以下「%」と略
す)水溶液を準備し、これを100℃×10分の条件で
加熱した後、急冷して室温まで温度を下げ、pH7.0
に調整する。そして、この大豆タンパク質1%水溶液
を、3000rpmの条件の遠心分離により上清を分離
し、これを基質とする。他方、納豆菌の培養培地(例え
ば、大豆水抽出液)から、15000rpm×5分の遠
心分離により上清を分離して、これを酵素液(プロテア
ーゼ液)とする。そして、上記基質1.0mlに20m
Mリン酸緩衝液(pH7.0)0.3ml加え、40℃
で5分間保温後、これに、上記酵素液0.2mlを添加
し、40℃で6時間保温して反応を行う。その後、10
%濃度のトリクロロ酢酸(TCA)を1.5ml加え、
8000rpmで遠心分離した後、その上清を、分光光
度計を用い、280nmの吸光度を測定する。そして、
この吸光度から、予め、チロシンを標準物質として作成
した検量線から、試料中のプロテアーゼ活性を求め、
O.D.660=1×10-4に対する培地1リットル当
たりの活性を1単位(units/リットル)として表す。
【0026】このようにして、本発明の納豆菌のプロテ
アーゼ活性を測定すると、培養開始後5時間から12時
間の間にプロテアーゼ活性が250units/リットル以上に上
昇し、培養開始後17時間から30時間の間にプロテア
ーゼ活性が90units/リットル以下に急激に低下する。した
がって、本発明の納豆菌は、培養初期において、大豆タ
ンパク質を充分に分解してアミノ酸等のうま味成分を充
分に生成して納豆の風味を略完成させる。そして、培養
後期にはプロテアーゼ活性が急激に低下して、納豆の残
存プロテアーゼ量は少ないものとなり、熟成工程を経る
ことにより、この残存プロテアーゼは、略完全に消失す
る。これに対し、従来の納豆の製造に使用されている市
販納豆菌は、培養開始から、約10時間後に、プロテア
ーゼ活性が最高となるが、その値は、約200units/リッ
トル以下と低いものである。また、培養中期および培養後
期にかけてプロテアーゼ活性は緩やかに低下するため、
培養開始後17時間から30時間の間においても、約1
45units/リットルの高い活性を示す。したがって、市販の
納豆菌を用いた場合は、納豆に多量のプロテアーゼが残
存し、これが、常温における納豆の劣化の原因となるも
のと推察される。
【0027】つぎに、この特殊な納豆菌を用いた納豆の
製法について説明する。
【0028】本発明の納豆の製法は、従来の製法におい
て、本発明の納豆菌を使用することが特徴である。すな
わち、蒸煮大豆を準備し、この大豆に納豆菌を接種した
後上記蒸煮大豆を発酵させる。この時、本発明の特殊な
納豆菌を使用する。この納豆菌の接種方法や、発酵条件
は従来の製法と同様である。ついで、発酵させた蒸煮大
豆を冷蔵して熟成させる。この熟成工程の間に、納豆に
残存するプロテアーゼが略完全に消費される。このた
め、本発明の納豆菌を用いた納豆は、例えば、15℃の
条件で10日放置した後の遊離アンモニア量は10pp
m以下であり、25℃の条件で4日間放置した後の遊離
アンモニア量は50ppm以下の少ない量である。した
がって、本発明の納豆は、15℃の条件では少なくとも
10日間、25℃の条件では少なくとも4日間、不快臭
等の発生が抑制され、納豆本来の風味を味わうことが可
能なものである。また、このようにして得られた納豆
は、本発明の納豆菌の胞子あるいは栄養細胞が残存して
いるため、本発明にかかる納豆か否かを判断することは
容易である。すなわち、納豆から納豆菌を分離して、上
記所定条件でプロテアーゼ活性を測定し、本発明の納豆
菌特有のプロテアーゼ活性を示すものは、本発明の実施
品と判断できる。
【0029】
【発明の効果】以上のように、本発明の納豆菌は、培養
初期において高いプロテアーゼ活性を示し、培養後期に
は、プロテアーゼ活性が急激に低下するものである。し
たがって、この特殊な納豆菌を用いて製造された納豆で
は、プロテアーゼが殆ど残存しない。この結果、本発明
の納豆を常温に放置しても、大豆タンパク質分解物のさ
らなる分解が抑制され、遊離アンモニア等の不快成分の
生成が、納豆の風味等に影響を与えない程の微量なもの
となる。したがって、本発明の納豆は、消費者等の不注
意で常温に放置されたとしても、劣化が防止され、納豆
本来の風味を楽しむことができるものである。
【0030】つぎに、実施例について比較例と併せて説
明する。
【0031】
【実施例1】まず、納豆菌のスクリーニングを行った。
すなわち、各地の田畑の土壌および稲藁を集め、水に懸
濁した後、80℃で30分間の熱処理を行い、耐熱菌を
選抜した。そして、この熱処理後の懸濁液をL寒天培地
にプレートし、37℃で24時間培養を行った。この培
養において形成されたコロニーから、納豆菌と思われる
ものをGSP培地にプレートし、粘質物生成能の有無を
確認して、納豆菌を選抜した。
【0032】つぎに、このようにして得られた納豆菌の
菌株をプロテアーゼテストに供した。すなわち、まず、
試験管に大豆水抽出液培地(Bx.1.0%)を入れ、
滅菌(条件:121℃,15分)を行った。ついで、こ
の大豆水抽出液培地に上記納豆菌を植菌し、バッフル付
き三角フラスコに移して、40℃で振盪培養を開始し
た。この振盪培養の条件は、200rpmである。そし
て、培養開始から10時間後と24時間後に、納豆菌を
含む大豆水抽出液を2ml取り出し、これを8000r
pmで10分間の遠心分離を行い、この上清を大豆粉末
培地入りL寒天培地に5μlスポットした。その後、こ
のL寒天培地を24時間、40℃の孵卵器で培養した。
そして、前述のように、この培養において、培養開始1
0時間後と24後のハロー比を求め、24時間後のハロ
ー比が10時間後のハロー比の1/3以下になっている
ものを選抜し、このなかの一種の納豆菌を「カオリII」
とした。
【0033】
【比較例1】市販の納豆菌として、宮城野納豆菌を準備
した。
【0034】このようにして得られた納豆菌「カオリI
I」(実施例1)と、市販の納豆菌(比較例1)につい
て、前述の方法により、プロテアーゼ活性の経時的変化
について調べた。この結果を、図1のグラフ図に示す。
【0035】図示のように、本発明の納豆菌「カオリI
I」(実施例1)は、培養開始直後から速やかにプロテ
アーゼ活性が上昇し、10時間後には290units/リットル
の最高値となった。その後、急激にプロテアーゼ活性は
低下し、24時間後には約71units/リットルとなり、40
時間後には35units/リットルまでプロテアーゼ活性が低下
した。これに対し、市販納豆菌(比較例1)は、培養開
始すると同時にプロテアーゼ活性が上昇したが、最高値
が約200units/リットルであった。その後、プロテアーゼ
活性は急激には低下せず、徐々に低下した。そして、2
0時間経過後においても約150units/リットル以上の高い
プロテアーゼ活性を示し、40時間経過後においても、
約145units/リットルの活性を示した。
【0036】
【実施例2】実施例1で得られた納豆菌「カオリII」を
用い、以下に示すようにして納豆を作製した。
【0037】最初に、納豆菌の胞子懸濁液を調製した。
すなわち、まず、納豆菌「カオリII」をL液体培地に接
種して40℃で7日間の振盪培養を行った。その後、9
0℃の熱処理を行い、遠心分離(8000rpm,30
分)して、沈殿物を回収し、この沈殿物を滅菌水で3回
洗浄した。そして、この沈殿物を、1ml当たり101
8 〜109 の胞子数になるように滅菌水に懸濁し、こ
れを90℃で30分間熱処理して急冷し、納豆菌胞子懸
濁液を得た。
【0038】他方、常法により蒸煮大豆を準備し、これ
に上記納豆菌胞子懸濁液を接種した。そして、常法にし
たがい、40℃で16時間の発酵を行った後、5℃で7
2時間の熟成工程を経て、目的とする納豆を作製した。
【0039】
【比較例2】市販の納豆菌(宮城野納豆菌)を用いた他
は、実施例2と同様にして納豆を作製した。
【0040】このようにして作製された実施例2の納豆
と比較例2の納豆について、遊離アミノ酸量の測定,官
能試験,常温(15℃,25℃)保存試験を行った。上
記遊離アミノ酸量の測定は、熟成開始5日経過後、高速
液体クロマトグラフィー(東ソー社製)を用いて行い、
上記官能試験は、専門パネラー30名により行った。上
記遊離アミノ酸量の測定結果および官能試験の結果を下
記の表1および表2に示す。なお、下記の表1に示す数
字は、支持者の人数を示し、下記の表2中の数字は、納
豆100g当たりの遊離アミノ酸量(mg)である。ま
た、上記常温保存試験は、上記2種類の温度条件で放置
し、遊離アンモニア量を経時的に測定することにより行
った。なお、上記遊離アンモニア量の測定は、アンモニ
アガス検知管(ガステック社製)により行い、この結果
は、図2および図3のグラフ図に示した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】上記表1から、実施例2の納豆は、比較例
2の納豆に比べ、約2.08倍の遊離アミノ酸が生成し
たことが分かる。また、旨みの指標成分であるグルタミ
ン酸も、実施例2の納豆が、比較例2の納豆に比べて多
かった。また、上記表2から、実施例2の納豆は、白粉
の張りおよび硬さは、比較例2の納豆と同等であり、糸
引きの強さ、香りの良さ、旨みの強さでは、比較例2の
納豆に比べて優れていたことが分かる。そして、図2の
グラフ図から、実施例2の納豆は、25℃の条件で保存
を開始して4日経過後においても、遊離アンモニア量は
50ppm以下であるのに対し、比較例2の納豆は、保
存開始直後から遊離アンモニア量が上昇し、4日経過後
は300ppmを超えた。また、図3のグラフ図から、
実施例2の納豆は、15℃の条件で保存を開始して10
日経過後においても、遊離アンモニア量は10ppm以
下であるのに対し、比較例2の納豆は、保存開始直後か
ら遊離アンモニア量が上昇し、特に、2日経過後から遊
離アンモニア量が急激に上昇し、10日経過後は100
ppm近くまで上昇した。そして、これら2種類の温度
条件の保存試験に際し、実施例2の納豆は、香り,風
味,外観等において異常が確認されなかったが、比較例
2の納豆は、アンモニアに由来する不快臭が確認され
た。また、うま味や粘り等の物性も異常が確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】納豆菌のプロテアーゼ活性の経時的変化を示す
グラフ図である。
【図2】25℃の条件での遊離アンモニア量の経時的変
化を示すグラフ図である。
【図3】15℃の条件での遊離アンモニア量の経時的変
化を示すグラフ図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12N 1/20 A23L 1/20 109

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バチラス・ズブチルス(Bacillu
    s subtilis)に属する納豆菌であって、下記
    の条件(A)での培養において、培養開始後5時間から
    12時間の間にプロテアーゼ活性が250units/リットル以
    上に上昇し、培養開始後17時間から30時間の間にプ
    ロテアーゼ活性が90units/リットル以下に低下することを
    特徴とする納豆菌。 (A)培養温度:30〜45℃ 培養培地:大豆水抽出液(Bx.0.3〜2.0%) 培養方法:振盪培養
  2. 【請求項2】 バチラス・ズブチルス(Bacillu
    s subtilis)に属する納豆菌が、バチラス・
    ズブチルス・カオリ II (Bacillussubti
    lis KAORI II,FERM P−14771)
    である請求項1記載の納豆菌。
  3. 【請求項3】 蒸煮大豆を準備する工程と、この蒸煮大
    豆に納豆菌を接種した後上記蒸煮大豆を発酵させる工程
    と、発酵させた蒸煮大豆を冷蔵して熟成させる熟成工程
    とを備えた納豆の製法であって、上記納豆菌として、請
    求項1または2記載の納豆菌を使用する納豆の製法。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の方法により製造された
    納豆。
  5. 【請求項5】 請求項1または2記載の納豆菌を含有す
    る納豆。
  6. 【請求項6】 15℃の条件で10日間放置した後の遊
    離アンモニア量が10ppm以下であり、かつ25℃の
    条件で4日間放置した後の遊離アンモニア量が、50p
    pm以下である請求項4または5記載の納豆。
JP7081510A 1995-04-06 1995-04-06 納豆菌およびそれを用いた納豆の製法並びに納豆 Expired - Fee Related JP2851811B2 (ja)

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