JPH11253123A - 納豆菌およびそれを用いた納豆の製法並びに納豆 - Google Patents

納豆菌およびそれを用いた納豆の製法並びに納豆

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JPH11253123A
JPH11253123A JP10061421A JP6142198A JPH11253123A JP H11253123 A JPH11253123 A JP H11253123A JP 10061421 A JP10061421 A JP 10061421A JP 6142198 A JP6142198 A JP 6142198A JP H11253123 A JPH11253123 A JP H11253123A
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natto
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tyrosine
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bacillus
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JP10061421A
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Atsuko Sugimoto
亜津子 杉本
Yoshie Kuwana
好恵 桑名
Takenori Okudaira
武則 奥平
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Fujicco Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】「じゃり」ついた食感を抑制し、美味なる納豆
を供することができる納豆菌およびそれを用いた納豆の
製法並びに納豆を提供する。 【解決手段】バチラス・ズブチルス(Bacillus subtili
s) に属する納豆菌であって、下記の培養条件(A)で
生育せず、下記の培養条件(B)で、少なくとも直径
0.8cmのコロニーに生育する納豆菌である。 (A)培養温度:38℃ 培養培地:納豆菌用最少培地成分にチロシン以外のアミノ酸,ビタミン, 核酸を添加した液体培地 培養方法:振とう培養 (B)培養温度:38℃ 培養時間:132時間 培養培地:納豆菌用最少寒天培地成分の窒素源である硫酸アンモニウムを チロシンに置換した寒天平板培地

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な納豆菌およ
びこれを用いた納豆の製法並びにこの納豆菌を用いる納
豆に関するものである。
【0002】
【従来の技術】納豆は、古くから日本人に親しまれてい
る伝統食品であるとともに、最近では、その栄養学的機
能の他に生体調節機能に対する評価が高く、重要な食品
の一つとなっている。このため、納豆の需要は増加傾向
にあり、伝統的な製法の他、工業的手法により生産され
ている。
【0003】ここで、納豆の工業的製法について説明す
ると、まず蒸煮大豆を準備し、これに納豆菌を接種す
る。ついで、上記蒸煮大豆をカップ等の容器に小分けし
て充填後、この状態で、約40℃で15〜20時間発酵
させる。発酵後、10℃以下で1〜2日間冷却して熟成
させ、納豆が製造される。このように、納豆は、大豆の
発酵食品であり、主として、納豆菌が産出するプロテア
ーゼの作用により、大豆タンパク質が分解されて、呈味
成分の一つであるアミノ酸が生じ、特有のうま味成分が
生じるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような工程を経て
製造される納豆には、納豆菌が胞子や栄養細胞の状態で
存在し、また納豆菌により産出されたプロテアーゼ等の
各種酵素が残存している。このため、納豆は、チルド食
品に分類され、10℃以下で流通されている。すなわ
ち、常温下におくと、プロテアーゼの活性が高まって過
度に発酵が進んで、アンモニア臭を生じたり、「じゃ
り」ついた食感を生じたりする納豆となってしまうから
である。しかし、流通段階では、低温条件に保持されて
いても、流通の最終段階である店舗での保管や、市販さ
れた後の消費者による保管では、必ずしも納豆の劣化を
抑制するために充分な低温条件が維持されるとは限らな
い。したがって、納豆の経時的劣化の問題は、納豆製造
業者の重要な課題となっている。
【0005】しかしながら、上記重要な課題のうち、ア
ンモニア臭の低減に関しては種々研究が進められている
が、「じゃり」ついた食感に関しては、原因物質がプロ
テアーゼによって生じたチロシンの白色結晶であるとい
う、田中らの研究報告〔栄養誌,26,第473 頁(1973)〕が
なされているにすぎない。したがって、「じゃり」つい
た食感のない納豆を安定して供給することのできる技術
の開発が強く望まれている。
【0006】本発明は、このような事情に鑑みなされた
もので、「じゃり」ついた食感を抑制し、美味なる納豆
を供することができる納豆菌およびそれを用いた納豆の
製法並びに納豆の提供をその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
め、本発明の納豆菌は、バチラス・ズブチルス(Bacillu
s subtilis) に属する納豆菌であって、下記の培養条件
(A)で生育せず、下記の培養条件(B)で、少なくと
も直径0.8cmのコロニーに生育することを第1の要
旨とする。 (A)培養温度:38℃ 培養培地:納豆菌用最少培地成分にチロシン以外のアミノ酸,ビタミン, 核酸を添加した液体培地 培養方法:振とう培養 (B)培養温度:38℃ 培養時間:132時間 培養培地:納豆菌用最少寒天培地成分の窒素源である硫酸アンモニウムを チロシンに置換した寒天平板培地
【0008】また、本発明は、蒸煮大豆を準備する工程
と、この蒸煮大豆に納豆菌を接種した後上記蒸煮大豆を
発酵させる工程と、発酵させた蒸煮大豆を冷蔵して熟成
させる熟成工程とを備えた納豆の製法であって、納豆菌
として、上記特殊な納豆菌を用いる納豆の製法を第2の
要旨とし、この納豆の製法により得られた納豆を第3の
要旨とし、上記特殊な納豆菌を含有する納豆を第4の要
旨とする。
【0009】すなわち、本発明者らは、納豆の「じゃ
り」ついた食感を抑制することを中心課題として一連の
研究を重ねた。その過程で、まず本発明者らは、「じゃ
り」ついた食感が、前述したとおり、チロシンの白色結
晶によって引き起こされているか否かの追試を行った。
すなわち、市販の納豆菌によって製造された納豆を常温
環境下(25℃)に放置し、その後上記納豆の表面に生
じた白色結晶を採集し、この白色結晶についてアミノ酸
分析を行った。その結果、この白色結晶は、その90重
量%以上がチロシンであることが実証された。この追試
結果に基づき、本発明者らは、大豆タンパク質分解の際
に生じるチロシンの量を低減できる特殊な納豆菌を用い
れば、納豆の「じゃり」ついた食感を抑制できることに
想到した。すなわち、プロテアーゼの作用によってチロ
シンが産出しても、納豆菌に消費させればよいのであ
る。こうすれば、チロシン由来の白色結晶の発生が抑制
され、「じゃり」ついた食感を有する納豆とならないの
である。そこで、本発明者らは、各地の土壌や稲藁等か
ら分離採取した2300種を超える納豆菌をチロシン資
化性を指標としてスクリーニングを行うことにより、本
発明の特殊な納豆菌を得ることに成功した。具体的に
は、チロシンがない培地では生育せず、納豆菌用最少培
地の主たる窒素源である硫酸ナトリウムをチロシンに置
換した寒天平板培地では所定時間の培養によって特定の
大きさのコロニーに生育するものを分離採取したもので
ある。この特殊な納豆菌は、チロシンを旺盛に利用して
生育する菌株であるため、チロシン由来の白色結晶の発
生を低減し、「じゃり」ついた食感を抑制した納豆を得
ることができるという利点がある。
【0010】特に、本発明の納豆菌としてバチラス・ズ
ブチルス・スムース T(Bacillussubtilis SMOOTH T,F
ERM P-16500) を用いた場合には、得られた納豆の「じ
ゃり」ついた食感を抑制できることに加えて、アンモニ
ア臭を抑制し、しかも納豆の経時的劣化が抑制され、長
期間保存しても製造後初期とあまり変わらない納豆を得
ることができるという利点がある。
【0011】また、本発明の納豆の製法は、蒸煮大豆を
準備する工程と、この蒸煮大豆に納豆菌を接種した後上
記蒸煮大豆を発酵させる工程と、発酵させた蒸煮大豆を
冷蔵して熟成させる熟成工程とを備えるという従来の製
法において、納豆菌として上記特殊な納豆菌を用いると
いう構成にしたものであり、新たな装置を必要とせず、
製造コストを低く抑えることができる。また、従前から
積み重ねてきた経験を有効に活用して簡単に高品質の納
豆を製造できるという利点がある。
【0012】そして、上記納豆の製法により得られた納
豆は、従来の製法において上記特殊な納豆菌を用いただ
けで得られるものであるので、製造コストが高くなら
ず、高品質のものを安価に提供できるという利点があ
る。
【0013】さらに、上記特殊な納豆菌を含有する納豆
であれば、食する直前までチロシン由来の白色結晶の発
生を低減することが可能なため、「じゃり」ついた食感
がほとんどないものとなるという利点がある。
【0014】なお、本発明において、「コロニー」と
は、一つの細胞の増殖により形成される円形状のものを
意味し、複数のコロニーによって見かけ上一つのコロニ
ーになったものは含まない。また、「コロニーに生育す
る」とは、一つの細胞が増殖により多数の細胞となりこ
の多数の細胞によって円形状のコロニーが形成されるこ
とを意味する。
【0015】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明の実施の形態につ
いて詳しく説明する。
【0016】本発明の納豆菌は、バチラス・ズブチルス
(Bacillus subtilis) に属する納豆菌であって、チロシ
ン資化性を備えた、特殊な納豆菌である。このような納
豆菌としては、本発明者らが、工業技術院生命工学工業
技術研究所に寄託したバチラス・ズブチルス・スムース
T(Bacillus subtilis SMOOTH T,FERM P-16500) があ
げられる。この納豆菌の菌学的性質を以下に示す。
【0017】〔形態〕 形状:桿菌 大きさ:2〜3×1.0μm 運動性:+ 胞子形成能:+ 胞子形状:楕円形 胞子の大きさ:1.4〜1.6×0.8μm 胞子形成部位:中央 グラム染色:+
【0018】〔培養的性質〕 (1)寒天平板培地での培養 形状:環状 表面:粘質性 隆起状態:断層状,隆起あり 色調:乳白色 光沢:あり (2)液体培地での培養 表面の生育:菌膜形成 混濁:あり 沈殿:+ (3)ゼラチンの突刺培養 生育の状態:+ ゼラチンの液化:+
【0019】〔生理学的性質〕 硝酸塩の還元:+ 脱窒反応:+ VPテスト:+ インドールの生成:− 硫化水素の生成:− デンプンの加水分解:+ クエン酸の利用:+ 色素の生成:− ウレアーゼ:− オキシダーゼ:+ カタラーゼ:+ 生育温度範囲:15〜55℃ 生育pH範囲:pH4.1〜pH9.5 酸素要求性:好気性 糖類からの酸およびガスの生成 アラビノース:+ キシロース:+ グルコース:+ マンノース:+ フルクトース:+ ガラクトース:− 麦芽糖:+ 蔗糖:+ マンニトール:+ デンプン:+ サブロー蔗糖培地での生育:+ カゼインの分解:+ プロテアーゼ活性:+ γ−グルタミルトランスペプチダーゼ活性:+ 枯草菌用最少培地での生育:− ビオチン要求性:+ 抗生物質耐性:− エスクリンの分解:+ 塩化ナトリウム耐性:1.5モル/リットル以下 ファージ感受性:+
【0020】上記菌学的性質から明らかなように、この
寄託された菌は納豆菌に属しているものであるといえ
る。
【0021】上記バチラス・ズブチルス・スムース T
(Bacillus subtilis SMOOTH T,FERMP-16500) を始めと
する特殊な納豆菌は、例えばつぎのようにして得ること
ができる。
【0022】すなわち、まず、納豆菌を準備する。
【0023】上記納豆菌としては、各地の土壌や稲藁等
から、従来公知の方法によって分離採取したものや、分
離採取された納豆菌や市販の納豆菌に対し突然変異処理
を行ったものがあげられる。上記市販の納豆菌として
は、例えば宮城野納豆菌,成瀬納豆菌,高橋納豆菌があ
げられる。上記突然変異処理としては、例えば紫外線照
射,放射線照射(X線,γ線)等の物理的処理や、N−
メチル−N−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NT
G),エチルメタンスルホネート(EMS),亜硝酸,
アクリジン系色素等を用いた薬剤処理があげられる。こ
のような突然変異処理により、本発明の特殊な納豆菌を
得る確率が高くなる。
【0024】つぎに、上記納豆菌の胞子懸濁液を従来公
知の方法により準備するとともに、納豆菌用最少培地成
分にチロシン以外のアミノ酸,ビタミン,核酸が添加さ
れた液体培地(X)を準備する。そして、上記液体培地
(X)中に胞子懸濁液を植菌し、振とう培養する。振と
う培養は、納豆菌の培養条件として一般的に適用されて
いる範囲で行われる。具体的には、培養温度として30
〜45℃程度、培養時間として15〜30時間程度、回
転振とう培養の場合は回転数として50〜500rpm
の条件である。最適には、培養温度が38℃で、培養時
間が24時間で、回転数が200rpmである。したが
って、培養培地が液体培地(X)で培養温度が38℃の
振とう培養で発芽しない胞子は、チロシン要求性株であ
るといえる。
【0025】このようにして得られた培養液を用い、抗
生物質(例えばアンピシリン)による選別法等の従来公
知の選別法によって、発芽しない胞子をチロシン要求性
株として分離し採取する。
【0026】つぎに、上記チロシン要求性株の胞子懸濁
液を、滅菌水に適度に希釈して、よく混合する。この混
合液を、上記納豆菌用最少寒天培地成分の主たる窒素源
である硫酸アンモニウムをチロシンに置換した寒天平板
培地(Y)の表面に、各種の塗布方法によって塗布する
ことにより植菌する。そして、インキュベーター等を用
いて、38℃で132時間培養する。このようにして、
寒天平板培地表面に納豆菌を生育させ、コロニーを形成
させる。この形成されたコロニーが少なくとも直径0.
8cm、好ましくは直径0.8〜1.5cmである菌株
を、チロシン資化性株として分離し採取する。すなわ
ち、コロニーの直径が少なくとも0.8cmであれば、
採取した菌株がチロシンを旺盛に消費して生育する菌株
に他ならないからである。なお、上記コロニーの直径
は、単独コロニーの直径であって、複数の単独コロニー
が重なり合って形成されたコロニーの直径ではない。そ
して、このようにして採取されたチロシン資化性株は、
チロシンがなければ生育できず、しかもチロシンを主た
る窒素源として旺盛に消費して生育する菌株であり、本
発明の納豆菌である。
【0027】つづいて、上記特殊な納豆菌を用いた納豆
の製法について説明する。
【0028】本発明の納豆の製法は、従来の製法におい
て、上記特殊な納豆菌を用いることが特徴である。すな
わち、蒸煮大豆を準備し、この大豆に特殊な納豆菌を接
種した後上記蒸煮大豆を発酵させる。この納豆菌の接種
方法や、発酵条件は従来の製法と同様である。このよう
に、発酵段階で、本発明の特殊な納豆菌を用いることに
より、納豆菌固有のプロテアーゼの作用によって大豆タ
ンパク質が分解されて、呈味成分の一つであるアミノ酸
が生じる。そして、アミノ酸の一つであるチロシンも生
じるが、特殊な納豆菌に消費されるため、得られる納豆
にチロシン由来の白色結晶が発生するのを抑制できる。
発酵段階経過後、発酵させた蒸煮大豆を冷蔵して熟成さ
せ、本発明の納豆を製造することができる。このように
して得られた納豆は、本発明の納豆菌の胞子あるいは栄
養細胞が残存しているため、本発明にかかる納豆か否か
を判断することは容易である。すなわち、納豆から納豆
菌を分離し、前記培養条件(A)で培養させると生育せ
ず、前記培養条件(B)で培養させると少なくとも直径
0.8cmのコロニーに生育すれば、本発明の実施品と
判断できる。
【0029】つぎに、実施例について比較例と併せて説
明する。
【0030】まず、実施例に先立ち、下記に示す培地成
分の各培地を準備した。
【0031】 〔液体培地(X1 )の成分〕 納豆菌用最少培地成分 硫酸アンモニウム〔(NH4)2SO4 〕 2g リン酸水素二カリウム〔K2HPO4〕 14g リン酸二水素カリウム〔KH2PO4〕 6g クエン酸ナトリウム二水和物 1g 蒸留水 1リットル 硫酸マグネシウム七水和物 0.2g グルコース 5g ビオチン 0.1mg アミノ酸 リシン(Lys) 20mg アルギニン(Arg) 20mg メチオニン(Met) 20mg システイン(Cys) 20mg ロイシン(Leu) 20mg イソロイシン(Ile) 20mg バリン(Val) 20mg フェニルアラニン(Phe) 20mg トリプトファン(Trp) 20mg ヒスチジン(His) 20mg トレオニン(Thr) 40mg グルタミン酸(Glu) 20mg プロリン(Pro) 20mg アスパラギン酸(Asp) 20mg アラニン(Ala) 20mg グリシン(Gly) 20mg セリン(Ser) 20mg ヒドロキシプロリン 20mg ビタミン チアミン 0.001mg ニコチン酸アミド 0.1mg リボフラビン 0.5mg ピリドキシン 0.1mg パントテン酸 0.1mg パラアミノ安息香酸 0.1mg コリン 2mg イノシン 1mg 核酸塩基 アデニン 10mg キサンチン 10mg ヒポキサンチン 10mg グアニン 10mg チミン 10mg ウラシル 10mg シトシン 10mg
【0032】 〔寒天平板培地(Y1 )の成分〕 チロシン(Tyr) 2g リン酸水素二カリウム〔K2HPO4〕 14g リン酸二水素カリウム〔KH2PO4〕 6g クエン酸ナトリウム二水和物 1g 蒸留水 1リットル 硫酸マグネシウム七水和物 0.2g グルコース 5g ビオチン 0.1mg 寒天 15g
【0033】
【実施例】まず、納豆の製造に用いる納豆菌をつぎのよ
うにして準備した。すなわち、まずこの出願人が工業技
術院生命工学工業技術研究所に寄託したバチラス・ズブ
チルス・カオリII(Bacillus subtilis KAORI II,FERM P
-14771) を準備し、この納豆菌をL液体培地に接種して
40℃で7日間の振とう培養を行った。その後、遠心分
離(8000rpm×30分間)して、沈殿物を回収
し、この沈殿物を滅菌水で3回洗浄した。そして、この
沈殿物を、1ミリリットル当たり108 〜10 9 個の胞
子数になるように滅菌水に懸濁し、これを90℃で30
分間熱処理して急冷し、納豆菌胞子懸濁液(a)を得
た。ついで、この納豆菌胞子懸濁液(a)をシャーレに
入れた後、照射距離30cmで70秒間の条件で、紫外
線を照射した。この紫外線照射の条件は、納豆菌の生育
数が略1/100になるように決定した。
【0034】つぎに、紫外線照射された上記納豆菌胞子
懸濁液を、上記液体培地(X1 )に植菌するとともに、
培養液1ミリリットルに対して1μgのアンピシリンを
添加し、38℃で72時間振とう培養した(200rp
m)。その後、沈殿物を回収し、滅菌水に懸濁した。懸
濁後、よく混合して、予め作製しておいた上記寒天平板
培地(Y1 )の表面にコンラージ棒で塗布することによ
り、植菌した。そして、インキュべーターを用い、38
℃で132時間培養し、生育した菌のうち、直径が少な
くとも0.8cmであるコロニーから菌株を分離し採取
した。このようにして採取した菌株のうちの一種を、バ
チラス・ズブチルス・スムース T(以下「スムース
T」という)とした。
【0035】上記納豆菌「スムースT」を用い、つぎの
ようにして納豆を製造した。すなわち、まず上記納豆菌
「スムースT」をL液体培地に接種して40℃で7日間
の振とう培養を行った。その後、遠心分離(8000r
pm×30分間)して、沈殿物を回収し、この沈殿物を
滅菌水で3回洗浄した。そして、この沈殿物を、1ミリ
リットル当たり108 〜109 個の胞子数になるように
滅菌水に懸濁し、これを90℃で30分間熱処理して急
冷し、納豆菌胞子懸濁液(b)を得た。
【0036】一方、常法により蒸煮大豆を準備し、この
蒸煮大豆に上記納豆菌胞子懸濁液(b)を接種した。そ
して、常法に従い、40℃で16時間の発酵を行った
後、5℃で72時間の熟成工程を経て、目的とする納豆
を製造した。
【0037】
【比較例】市販の納豆菌として宮城野納豆菌を準備し、
実施例と同様にして納豆を製造した。すなわち、まず上
記市販の納豆菌の胞子懸濁液を実施例と同様にして調製
した。一方、常法により蒸煮大豆を準備し、この蒸煮大
豆に上記市販の納豆菌の胞子懸濁液を上記実施例と同様
にして接種した。そして、常法に従い、40℃で16時
間の発酵を行った後、5℃で72時間の熟成工程を経
て、目的とする納豆を製造した。
【0038】このようにして得られた実施例の納豆およ
び比較例の納豆について、冷蔵保存(5℃)しながら、
じゃりつき感、アンモニア臭、糸引き強さ、硬さについ
て官能試験を行った。また、pHについても測定した。
なお、上記官能試験は、専門パネラー10名により下記
の基準に従って行い、その平均をpH値とともに下記の
表2および表3に明示した。
【0039】〔官能試験〕じゃりつき感およびアンモニ
ア臭に関しては、下記の表1に示す基準に従って評価し
た。糸引きの強さおよび硬さに関しては、数値評価(0
〜5)を行った。なお、この数値評価において、糸引き
の強さについては数字が大きい程強いことを示すが通常
3〜4程度が良好であり、硬さについては数字が大きい
程硬いことを示すが通常3程度が良好である。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】つぎに、上記実施例および比較例におい
て、保存4日目の納豆を用いて、大西らの方法〔日本家
政学会誌,39(1988)の第1頁に記載の「納豆菌による
プロテアーゼ活性測定方法」〕に準じてプロテアーゼ活
性を測定した。具体的には、まず、酵素液(プロテアー
ゼ液)と基質溶液を準備した。プロテアーゼ液の準備と
しては、まず、それぞれの納豆に10倍量(重量比)の
水を入れガラス棒で充分攪拌した後、10〜15分間程
度放置した。このとき、納豆の周囲の粘質物が完全に水
に溶け出していることを確認した。つぎに、得られた粘
質物入り水溶液について、15000rpm×5分間×
4℃の条件で遠心分離を行うことにより、上澄を得、こ
れをプロテアーゼ液とした。一方、基質溶液の準備とし
ては、まず、大豆タンパク質(和光)の1重量%(以下
「%」と略す)水溶液を準備し、これを100℃×10
分間の条件で加熱した後、急冷して室温まで温度を下
げ、その後3000rpm×15分間の条件で遠心する
ことにより、基質溶液(白濁)を得た。つぎに、上記基
質溶液1.0ミリリットルに20mMリン酸緩衝液(p
H7.0)0.3ミリリットルを添加し、37℃で5分
間予備保温後、上記プロテアーゼ液0.2ミリリットル
を添加し、37℃で6時間保温して反応させた。その
後、10%濃度のトリクロロ酢酸(TCA)を1.5ミ
リリットル添加して反応を停止させ、8000rpm×
10分間の条件で遠心分離した後、得られた上澄につい
て、分光光度計(島津製作所社製の島津紫外可視分光光
度計UV−160A)にて280nmの吸光度を測定し
た。このとき、上記プロテアーゼ液に代えてイオン交換
水を用いた以外は同様の手順で得た上澄について、上記
測定と併せて、280nmの吸光度を測定しておいた
(ブランク)。そして、測定された各吸光度を用い、予
め下記の方法で作成しておいた検量線によってチロシン
換算値を求め、これと下記に示す数式(1)とによって
プロテアーゼ活性値を算出した。その結果、実施例のサ
ンプルの中性プロテアーゼ活性値は173 units/リッ
トルであり、比較例のサンプルの中性プロテアーゼ活性
値は125 units/リットルであった。なお、1分間に
チロシン1μg相当量の生成物を与える酵素量を1単位
( units/リットル)とした。
【0044】〔検量線の作成〕まず、L−チロシン(試
薬特級)を、イオン交換水と1N水酸化カリウム溶液と
を用いて溶解する。ついで、得られた混合溶液を数種類
の濃度に希釈し、それぞれについて上記プロテアーゼ活
性の測定に用いる分光光度計にて280nmの吸光度を
測定する。そして、この測定値を用い、検量線を作成す
る。
【0045】
【数1】
【0046】上記表2および表3の結果から、実施例の
納豆は、保存30日目でもじゃりつき感が全くないが、
比較例の納豆は、保存4日目にはじゃりつき感が発生し
た。
【0047】また、実施例の納豆は、アンモニア臭の発
生が抑制されており、不快感を与えないものとなってい
た。このことは、pHがそれほどアルカリになっていな
いことからも明らかである。一方、比較例の納豆は、ア
ンモニア臭の発生が経時的に多くなっており、不快感を
与えるものとなっていた。このことは、pHが経時的に
アルカリ側へ変化していることからも明らかである。
【0048】さらに、実施例の納豆は、糸引きの強さや
硬さといった納豆に一般に要求される特性や、上記じゃ
りつき感およびアンモニア臭の発生といった特性が、保
存30日目でも大きく変動しておらず、経時的劣化が生
じにくいものであった。一方、比較例の納豆は、保存0
日目と保存30日目の比較から明らかなように、全ての
特性に大きな変化が見られ、経時的劣化が生じるもので
あった。こうした結果から、実施例の納豆は、比較例の
納豆に比べ、保存性に優れるものであることが分かっ
た。
【0049】そして、上記官能試験項目以外について
も、専門パネラーの多数の者から、「実施例の納豆は、
比較例の納豆に比べ、旨味が強く、香りもさわやかであ
り、味覚の面からも非常に優れている」という評価を受
け、実施例の納豆は非常に優れた呈味性を有するもので
あった。また、旨味が強いことは、前記プロテアーゼ活
性の測定によって明らかである。すなわち、実施例のサ
ンプル(保存4日目)のプロテアーゼ活性値と比較例の
サンプル(保存4日目)のプロテアーゼ活性値とを比較
すると、実施例の方が約1.4倍高くなっており、納豆
の呈味成分の一つであるアミノ酸が多く生成されている
からである。なお、アミノ酸の生成量が多いということ
は、「じゃり」ついた食感の主原因であるチロシンがプ
ロテアーゼによって多く生成されていることを意味する
が、チロシンは特殊な納豆菌「スムースT」によって消
費されるため、得られる納豆にはチロシンが残存しな
い。したがって、実施例の納豆は、比較例の納豆に比
べ、アミノ酸の一つであるチロシンの残存量は大幅に低
減するにもかかわらず、呈味成分であるアミノ酸(チロ
シン以外)の生成量は増大していることが分かる。
【0050】
【発明の効果】以上のように、本発明の納豆菌は、前記
の培養条件(A)で生育せず、前記の培養条件(B)で
特定の大きさのコロニーに生育する菌株である。したが
って、この納豆菌は、チロシンを栄養分として資化でき
る菌株である。このため、この納豆菌を用いて製造され
た納豆では、チロシンが殆ど残存せず、チロシン由来の
白色結晶が生じない。その結果、得られる納豆には、
「じゃり」ついた食感が生じず、納豆本来の食感を得る
ことができる。特に、本発明の納豆菌として、「スムー
スT」であれば、これを用いて得た納豆の「じゃり」つ
いた食感を抑制できることに加えて、アンモニア臭を抑
制し、しかも納豆の経時的劣化が抑制され、長期間保存
しても製造後初期とあまり変わらない納豆を得ることが
できるという利点がある。
【0051】また、本発明の納豆の製法は、従来の製法
において、納豆菌として上記特殊な納豆菌を用いること
を特徴とするので、新たな装置を必要とせず、製造コス
トを低く抑えることができ、また従前から積み重ねてき
た経験を有効に活用して簡単に高品質の納豆が製造でき
るという利点がある。そして、上記納豆の製法により得
られた納豆は、上記のとおり、従来の製法において上記
特殊な納豆菌を用いただけで得られるものであるので、
製造コストが高くならず、高品質のものを安価に提供で
きるという利点がある。さらに、上記特殊な納豆菌を含
有する納豆であれば、食する直前までチロシン由来の白
色結晶の発生を低減することが可能なため、「じゃり」
ついた食感がほとんどないものになるという利点があ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI C12R 1:125)

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バチラス・ズブチルス(Bacillus subtil
    is) に属する納豆菌であって、下記の培養条件(A)で
    生育せず、下記の培養条件(B)で、少なくとも直径
    0.8cmのコロニーに生育することを特徴とする納豆
    菌。 (A)培養温度:38℃ 培養培地:納豆菌用最少培地成分にチロシン以外のアミノ酸,ビタミン, 核酸を添加した液体培地 培養方法:振とう培養 (B)培養温度:38℃ 培養時間:132時間 培養培地:納豆菌用最少寒天培地成分の窒素源である硫酸アンモニウムを チロシンに置換した寒天平板培地
  2. 【請求項2】 上記バチラス・ズブチルス(Bacillus su
    btilis) に属する納豆菌が、バチラス・ズブチルス・ス
    ムース T(Bacillus subtilis SMOOTH T,FERM P-1650
    0) である請求項1記載の納豆菌。
  3. 【請求項3】 蒸煮大豆を準備する工程と、この蒸煮大
    豆に納豆菌を接種した後上記蒸煮大豆を発酵させる工程
    と、発酵させた蒸煮大豆を冷蔵して熟成させる熟成工程
    とを備えた納豆の製法であって、上記納豆菌として、請
    求項1または2記載の納豆菌を用いる納豆の製法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の製法により得られた納
    豆。
  5. 【請求項5】 請求項1または2記載の納豆菌を含有す
    る納豆。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001238667A (ja) * 2000-02-28 2001-09-04 Marumiya:Kk 血栓溶解酵素及び粘質物を多量に生産する納豆菌株、その取得方法及びそれを用いて製造した納豆
JP2003289853A (ja) * 2002-04-02 2003-10-14 Asahimatsu Shokuhin Kk グルタミン酸高生産性納豆菌株およびそれを用いて作られるグルタミン酸高含有納豆
CN114174524A (zh) * 2019-07-26 2022-03-11 高山股份有限公司 含有短链脂肪酸的发酵液的制造方法

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