JP2001238667A - 血栓溶解酵素及び粘質物を多量に生産する納豆菌株、その取得方法及びそれを用いて製造した納豆 - Google Patents
血栓溶解酵素及び粘質物を多量に生産する納豆菌株、その取得方法及びそれを用いて製造した納豆Info
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Abstract
高く、賞味期間中もこの活性をほぼ維持するとともに、
粘質物生産量が高くて旨味のある且つ糸引きが強い納豆
と、これを製造する納豆菌株およびその製造方法の提
供。 【解決手段】自然界に存在する稲藁で作った納豆を、生
埋食塩水に懸濁し、適宜希釈液を作製し、希釈液をバル
ビタール−アガロース−フィブリゲル平板培地に塗抹
し、平板に生育したコロニーの中から、コロニー周辺部
のフィブリンゲルを大きく溶解し透明域を形成している
コロニーを血栓溶解酵素高生産株として一次スクリーニ
ングする。次に、選出菌株を粘質物生産培地に塗抹し、
平板に形成されたコロニーの中から、粘質物を多量に生
産する株を血栓溶解酵素・粘質物高生産株として二次ス
クリーニングする。この工程により得られた納豆菌株K
A−145で納豆を製造する。
Description
粘質物を多量に生産する納豆菌株、その取得方法並びに
前記納豆菌株を用いて製造した納豆に関するものであ
る。
きる納豆は、豊富で良質なたんぱく質やビタミン、ミネ
ラルなどの成分を含み、納豆の製造に使用する各種の納
豆菌が、特開平2−65777号公報、特開平6−26
1744号公報、特開平8−80189号公報、特開平
8−275772号公報等で提案されている。そのう
ち、特開平6−261744号公報には、納豆菌の産生
する血栓溶解酵素(ナットウキナーゼ)が血栓症予防に
役立っているということが記載され、納豆の機能性も注
目をされている。従来から、納豆菌の特性である血栓溶
解酵素を多量に産生する納豆株を育種しようとする試み
がなされており、例えば、ヤマダフーズ社製の「おはよ
うキナーゼ納豆(商標)」やパンタス食品社製の「ナッ
トウキナーゼ六倍健康志向」などである。このような安
価で美味しい納豆は日本人にとって欠かせない健康食品
の一つといえる。
出す血栓溶解酵素によって血栓症予防に効果があるが、
納豆によって血栓溶解酵素活性が異なるのは、納豆の酵
素生産能力の違いに負うところが大きいと考えられる。
このことから、従来の市販納豆菌を使用すると、同程度
の血栓溶解酵素を含む納豆しか生産されないことにな
る。
持管理に厳しい温度管理が必要であったり、低温で長時
間醗酵を必要とするなど製造上の問題点があるだけでな
く、納豆製品の賞味期間中に血栓溶解酵素活性値が低下
したり、独特の納豆臭を呈するなどの課題も残されてい
る。
性と強い糸引きがあげられる。納豆菌は、大豆たんぱく
質を分解し、分解物を材料にポリ−γ−グルタミン酸を
合成し、この粘質物により、納豆中の旨味成分が引き出
され、また糸引きが充分な納豆らしい納豆を得ることが
できる。そのため、粘質物生産量の高い納豆菌株が必要
である。
方法の問題点を解消するため、納豆臭が少なく、かつ血
栓溶解酵素活性が高く、賞味期間(10日間)中もこの
活性をほぼ維持するとともに、粘質物生産量が高くて旨
味のあるかつ糸引きが強い納豆と、これを製造する納豆
菌株及びその製造方法を提供するものである。
然界に存在する稲藁で作製した納豆からバチルス・ズブ
チリス(Bacillus subtilis)に属
し、血栓溶解酵素を多量に生産するとともに、粘質物を
多量に生産する納豆菌株KA−145株を特徴とする。
板に生育した多数のコロニーの中から、血栓溶解酵素を
多量に生産するコロニーを一目で判定できる平板を利用
して前記納豆菌株を取得することを特徴とする。さら
に、本発明の納豆は、前記納豆菌株で製造し、血栓溶解
酵素生産量が高く、糸引きも充分で、低温で保蔵しても
血栓溶解酵素活性の低下が少なく、納豆臭の発生も少な
いことを特徴とする。
5株は、FERMP−17659(11生寄文第160
2号)として工業技術院生命工学工業技術院研究所に寄
託されている。
は、バルビタールーアガロースーフィブリンゲル平板培
地の開発により、一段階でフィブリンゲル溶解酵素生産
力の高い菌をスクリーニングすることが可能となった。
この平板に生育した菌は、酵素生産能力に応じてコロニ
ー周辺のフィブリンゲルを溶解し、大きさの異なる透明
域を形成する。試料を同平板に塗抹し、大きな透明域を
形成したコロニーを選抜するだけで、酵素生産能の高い
コロニーを見いだすことができる。
界より納豆菌の分離、(2)血栓溶解酵素高生産株のス
クリーニング、(3)粘質物高生産株のスクリーニング
の手順により酵素及び粘質物高生産株を選抜する。
生産株により納豆を製造し、フィブリン寒天平板法及び
マイクロプレート法の二つの異なる方法で酵素活性を測
定した。また、粘質物の流下量により簡易粘度を測定し
た。
り納豆菌株を分類同定した。
施した。
約100g包み、37℃で30時間醗酵後、4℃にて4
日間熟成した。
ング 上記藁苞納豆15粒を滅菌生埋食塩水100mlに懸濁
させ、懸濁液を適宜に希釈する。次に示すバルビタール
−アガロース−フィブリンゲル(Barbital−A
garose−Fibrin gel)平板培地に滅菌
コンラージ棒で塗抹する。平板を37℃で20時間イン
キュベートし、平板に生育したコロニー周辺部のフィブ
リンゲル溶解面積を測定した。
ル平板培地の組成は表1に示すとおりである。
合し、これに加温溶解したアガロース溶液を1.2質量
%とフィブリノーゲン溶液を0.3質量%(いずれも最
終濃度)となるように添加する。あらかじめトロンビン
溶液(12.5U/ml)0.53mlを入れた滅菌シ
ャーレに上記混合液を13.2ml加え、アガロースが
ゲル化する前に時計方向、逆方向に動かして撹拌、静置
して平板とした。
の中からフィブリンゲルを溶解し、大きな透明域を形成
しているコロニー58個を取得した。
示す粘質物生産培地に、適宜希釈液を滅菌コンラージ棒
で塗抹する。平板を37℃で18時間インキュベート
し、コロニーを形成させた。粘質物生産培地の組成は表
2のとおりである。
質物を蓄積し不定形に隆起したコロニーを選抜した。コ
ロニー内に蓄積した粘質物をパスツールピペットで吸い
出し、その重量から粘質物生産量を簡易的に比較した。
従来から使用している宮城野株より1.8倍以上粘質物
を生産する新規分離株10株を、酵素及び粘質物高生産
株として得た。
について説明する。
5℃の水道水に15時間浸漬し水切り後、1.2kg/
cm2で70分間蒸煮した。これに、選抜した納豆菌の
胞子懸濁液(1×105cells/ml)を蒸煮大豆
に対して1質量%噴霧し、よく混合した後、納豆製造用
容器(ポリスチレン製、50g用)に50gずつ計量し
た。小孔を有するポリエチレン製フィルムで被覆し蓋を
閉め、40℃で18時間醗酵させ、その後4℃で24時
間熟成させた。得られた試料納豆と、市販納豆M社(当
社従来品)、P社、T社、A社の各市販納豆の血栓溶解
酵素活性を測定し比較した。
天平板法とマイクロプレート法の二種類の方法で測定し
た。なお、フィブリン寒天平板法は、太田らの方法にし
たがった{太田、三浦、戸沢、「臨床血液」、13
(5),793〜799(1972)参照}。納豆の血
栓溶解酵素活性の測定方法を以下に示す。なお、二種類
の方法に供する納豆からの粗酵素溶液の取得は、納豆3
gに7倍容の生理食塩水を添加し、30℃で30分間回
転振とうし、酵素を抽出した。抽出液をガーゼで濾過
し、14,000rpmで5分間遠心分離し、上澄みを
粗酵素溶液として活性測定に用いた。
衝液(pH7.8)100mlに懸濁後、121℃で5
分間加熱して溶解する。一方、フィブリノーゲン112
mgを0.1molバルビタール−HCl緩衝液(pH
7.8)42mlに溶解させた後、ガーゼで濾過した。
mlとフィブリノーゲン溶液3mlを滅菌シャーレに加
え、気泡が生じないように撹拌し、静置した。
/1.5ml)1.5mlを流し込み、表面を均一に浸
らせた。次に、気泡が入り込まないように滅菌円形濾紙
をのせ、4℃の冷蔵庫に入れて5時間以上水平に保持し
た平板を活性測定に使用した。
孔をあけ、試料溶液を2μl入れた後、ふたをして37
℃で18時間インキュベートした。
ルが丸く透明に溶解している部分の直径を測定する。径
の2乗値をフィブリンゲル溶解面積とし、酵素活性値と
した。フィブリン平板は半透明であるため、溶解部分と
の境界線が分かり難いので、Coomassie br
illiant blue色素溶液で平板を染色し、判
定しやすくした(図1参照)。また、あらかじめフィブ
リンゲル溶解面積(Clear zone)とプラスミ
ン(Plasmin(U/ml))から作成した検量線
に基づいてプラスミン単位に換算して表示できるように
した(図2及び図3参照)。
従来品に対して血栓溶解酵素活性が2倍高い納豆菌株K
A−145を得た。この納豆菌で製造した納豆は5℃で
10日間保蔵していても、80%の残存活性を示し、当
社従来品及び他社製品の50ないし60%に比べると、
高い残存率であった。各納豆のフィブリンゲル溶解面積
を表3に示す。
U/ml)10μlと0.4%フィブリノーゲン溶液2
00μlを加え、フィブリンゲルを作製する。80℃で
30分間保持し、フィブリンゲル中に混在するプラスミ
ンを失活させた後、一夜室温で放置したものを活性測定
に使用した。
ADER SME3400)を吸光度630nm、37
℃にセットした。5分間プレインキュベーションした
後、フィブリンゲル上に試料溶液を100μl滴下して
酵素反応を開始し、5分毎に60分までの吸光度を経時
的に測定した。横軸に反応時間、縦軸に吸光度をとり、
吸光度が直線的に減少している10分から60分の間の
吸光度の変化を酵素活性値とした。図4は時間と630
nmにおける吸光度をグラフ化したもので、図5は蛋白
量(Protein)と50分間の吸光度減少量(ΔA
630nm)を示すグラフである。
145株は、当社従来品に対してフィブリン平板法の測
定と同様に2倍高い酵素活性を示した。また、5℃で1
0日間保蔵しても80%の残存活性を示した。結果を表
4に示す。
カーに入れ、10倍希釈になるように脱イオン水を加
え、納豆表面の粘質物が完全に取れるまで約10分間ス
ターラーで撹拌した。これを濾し機で濾し、粘質物懸濁
液とした。次に20mlピペットで脱イオン水を計り、
15秒間で流下した液量を測った。同様の操作を4回繰
り返し、平均値を求めた。粘質物懸濁液についても同様
の操作を行った。(脱イオン水の流下量/粘質物懸濁液
の流下量)×100で求めた値を簡易粘度値とし、値に
応じて評価した。測定値の判定は表5のとおりである。
株KA−145株を用いて製造した納豆の測定値は25
8.7、宮城野株で製造した納豆(当社従来品)の17
6.1に比べて高い粘性を示した。
いて説明する。
性状を表6に示す。
動性を有する桿菌であった。オキシダーゼ、カタラー
ゼ、β−ガラクトシダーゼ活性が陽性で、クエン酸を利
用し、アセトインを産生し、ゼラチンを液化した。最小
培地では生育にビオチンを要求し、粘質物生産培地では
粘質物を生産した。KA−145株の性状は、対照とし
て用いた市販納豆菌(宮城野株、弥生株、高橋株、成瀬
株)の性状とはよく一致したが、枯草菌の基準株(Ba
cillus subtilisTMarburg)と
は、硝酸塩の還元、ビオチン要求性、粘質物生産が異な
っていた。これらの結果から、KA−145株は納豆菌
であると同定した。
炭水化物からの酸生成パターンがよく一致したが、枯草
菌とはアミグダリン、サリシン、セロビオース、βゲン
チオビオースが異なっていた。
示したように、従来の生理・生化学的手法で納豆菌を
「株」レベルで分類することはむずかしい。しかし、遺
伝学的手法(RAPD法)を用いると、納豆菌を「株」
レベルで分類できる。
NAを鋳型とし、OPERON社の10−merKit
sをプライマーとしてPCR反応を行った後、増幅産物
を電気泳動することによりDNA断片の確認を行うもの
である。
5株は、市販納豆菌(宮城野株、弥生株、高橋株、成瀬
株)のいずれとも異なる泳動パターンを示し、市販納豆
菌とは遺伝的に異なる株であることが証明できた。図6
及び図7は泳動パターンを示し、オペロン社のプライマ
ーA−5及びプライマーA−8のRAPDパターンを示
す図である。
高い納豆菌株を用いた納豆が市販されている。そこで、
血栓溶解酵素産生能の高い納豆菌株を用いたヤマダフー
ズ社とパンタス食品社の納豆、旭松食品社の低臭化納豆
菌株を用いた納豆、フジッコ社の二段熟成製法納豆から
納豆菌を単離し、同様の方法でDNA断片の確認を行っ
たところ、それぞれ異なる泳動パターンを示した(図7
参照)。この結果から、KA−145株は遺伝的にも異
なる新規分離株であるといえる。
冷蔵後、専門パネラー10名により表7に示す項目につ
いて、 1.優良 2.良 3.普通 4.やや悪い 5.悪い の5段階評価で官能評価を行った。また、比較例として
宮城野株を上記実施例と同様にして納豆を製造し、評価
を行った。評価値は各パネラーの平均で示した。
らず、KA−145株で製造した納豆は、宮城野株で製
造した納豆よりも旨味が著しく増し、粘度も高く、くせ
のないあっさりとした納豆に仕上がった。また、5℃で
10日間保蔵しても、納豆特有の納豆臭が少なく、旨味
のある納豆で、対象として宮城野株で製造した納豆に比
べると優れていた。また、総合評価では、10名のパネ
ラーのうち、8名がKA−145株で作製した納豆が官
能的に優れていると答えた。
ら使用していた宮城野株と比べて、血栓溶解酵素生産力
が2倍、粘質物生産力も1.8倍高かった。
は、当社従来品よりも血栓溶解酵素活性が2倍高く、粘
度も1.5倍高かった。さらに官能的にも高い評価を示
したため、従来の納豆製造方法と同じやり方でも、本発
明の納豆菌株を用いることにより優れた品質の納豆を提
供することが可能となった。
の血栓溶解酵素を摂取するためには、従来の納豆では1
日100gの納豆を食べる必要があるが、多様な食生活
を営む現代では、納豆だけで100g食べることは現実
的でない。しかし、本発明の新規納豆株で製造した納豆
では、I日50g食べるだけで同じ効果が得られる。納
豆1パックの重さが50gであることから、1食のメニ
ューに加えるだけで、血栓症予防に効果があるといわれ
ている量の血栓溶解酵素を容易に摂取することが可能と
なる。
である。
解を示す図である。
面積の相関を示すグラフである。
吸光度の減少を示すグラフである。
である。
ーンを示す図である。
ーンを示す図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 バチルス・ズブチリス(Bacillu
s subtilis)に属する納豆菌であって、血栓
溶解酵素生産量及び粘質物生産量が高い納豆菌株KA−
145株(FERM P−17659)。 - 【請求項2】 高圧滅菌した下記のA液とB液とを同量
混合し、これに加温溶解したアガロース溶液を1.2質
量%とフィブリノーゲン溶液を0.3質量%(いずれも
最終濃度)となるように添加し、あらかじめトロンビン
溶液(12.5U/ml)0.53mlを入れた滅菌シ
ャーレに上記混合液を13.2ml加え、アガロースが
ゲル化する前に撹拌、静置して平板とし、該平板に生育
したコロニー周辺部のフィブリンゲル溶解面積を測定し
て、大きな透明域を形成しているコロニーを取得し、選
抜した株を粘質物生産培地に移植し、コロニーの中か
ら、コロニー内に粘質物を著量蓄積し不定形に隆起した
コロニーを選抜することを特徴とする請求項1記載の納
豆菌株KA−145株(FERM P−17659)の
取得方法。 A液 0.2mol/lバルビタールナトリウム 50ml 0.1mol/lHCl 135ml pH 7.8 B液 ポリペプトン 1.8g 酵母エキス 0.36g MgSO4・7H2O 0.18g 大豆抽出液 36ml 蒸留水 144ml pH 7.0 - 【請求項3】 請求項1記載の納豆菌株KA−145株
(FERM P−17659)を用いて製造された納
豆。
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JP2000051976A JP3822773B2 (ja) | 2000-02-28 | 2000-02-28 | 血栓溶解酵素及び粘質物を多量に生産する納豆菌株及びその取得方法 |
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