JPH0987169A - 消化管下部放出型被覆カプセル製剤 - Google Patents

消化管下部放出型被覆カプセル製剤

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JPH0987169A
JPH0987169A JP8187952A JP18795296A JPH0987169A JP H0987169 A JPH0987169 A JP H0987169A JP 8187952 A JP8187952 A JP 8187952A JP 18795296 A JP18795296 A JP 18795296A JP H0987169 A JPH0987169 A JP H0987169A
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隆 石橋
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廣祐 吉野
Masakazu Mizobe
雅一 溝邊
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 薬物等を消化管内の任意の部位へ選択的に送
達することが望まれているが、従来の方法は、いずれも
部位選択性が不十分であり、素材が特殊なため実用性に
乏しいことも多く、また製剤化に際して煩雑な工程が必
要であるという難点があった。 【解決手段】本発明の製剤は、少なくとも酸性物質を含
有する硬カプセル、該硬カプセルを覆う低pH溶解性皮
膜、及び低pH溶解性皮膜を覆う腸溶性皮膜を有するこ
とを特徴とする消化管下部放出型被覆カプセル製剤であ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薬物を大腸等へ選
択的に送達し得る消化管下部放出型被覆カプセル製剤に
関する。
【0002】
【従来の技術】薬物療法において、潰瘍性大腸炎やクー
ロン病のような消化管内炎症性疾患に対する局所療法、
消化管内で化学分解や酵素分解を受け易いペプチド性薬
物や吸収部位が限定される薬物等の経口投与療法などで
は、大腸へ選択的に薬物を送達することが望まれる。
【0003】大腸での選択的な薬物放出を効果的に実現
するためには、人の消化管内の物理的・生理的環境およ
び消化管内移動時間を考慮した製剤設計が必要である。
消化管内の物理的・生理的環境については、胃内のpH
は健常人で通常1.8〜4.5、腸内のpHは6.5〜
7.5とされており、デービスらの広範な調査結果で
は、人における製剤の胃内滞留時間は0.5〜10時間
であり、個人差が大きい上に摂食状態や投与される製剤
の大きさによってもかなり影響を受けるが、小腸通過時
間のばらつきは、比較的小さく、一般に3±1時間とさ
れている(ジャーナル・オブ・コントロールド・リリー
ス〔Journal of Controlled R
elease〕、第2巻、27−38頁、1985
年)。
【0004】大腸で選択的に薬物を溶出させる方法につ
いては、これまでも様々な研究がなされており、腸溶性
製剤や徐放性製剤のような従来の方法の他、徐放性製剤
に腸溶性皮膜を被覆した製剤(アナルス・オブ・ザ・ニ
ューヨーク・アカデミー・オブ・サイエンス〔Anna
ls of the New York Academ
y of Science〕、第618巻、428−4
40頁、1991年)や、溶出開始時間を制御する技術
を利用した製剤(ケミカル・アンド・ファーマシューテ
ィカル・ブレティン〔Chemical & Phar
maceutical Bulletin〕、第40
巻、3036−3041頁、1992年;特開平3−7
2417;特開平6−256166)、大腸溶解性アゾ
ポリマー被覆インスリン錠(サイエンス〔Scienc
e〕、第233巻、1081−1084頁、1986
年)などが提唱されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
方法は、いずれも部位選択性が不十分であり、素材が特
殊なため実用性に乏しいことも多く、また製剤化に際し
て煩雑な工程が必要であるという難点がある。
【0006】例えば、腸溶性製剤は小腸上部で急激に薬
物溶出が開始されるため、薬物は大腸に到達するまでに
その大部分が吸収または分解によって失われる。徐放性
製剤は、持続的に薬物が溶出されるため、かなりの薬物
が、製剤が胃内に滞留する時間や小腸を移動する過程に
おいて溶出されてしまう。徐放性製剤に腸溶性皮膜を被
覆することにより、胃内での薬物溶出を抑える試みも、
小腸通過途上での薬物溶出の問題を完全に解決するには
至っていない。
【0007】また、従来の被覆製剤は、薬物と皮膜剤の
組合わせや被覆量の調整、コーティング液の溶媒の選
定、噴霧条件および乾燥条件などを薬物毎に最適化しな
ければならないという問題がある。薬物によっては、加
熱や溶媒により分解し易いものなどがあるため、この最
適化はなかなか手間がかかり、しかも、得られた条件
は、別の薬物に適用できるとは限らず、むしろ適用でき
ない場合の方が多く、汎用性に優れたものとは言い難
い。加えて、通常は被覆の前に、造粒、整粒、打錠など
の製剤化工程処理が欠かせないという問題もある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究
の結果、(a)ゼラチンなどの硬カプセルに酸性物質を
充填し、該カプセルの周囲を低pH溶解性皮膜で被覆
し、ついで腸溶性皮膜でその周囲を被覆した場合には、
該被覆カプセルは、その低pH溶解性皮膜の種類及び被
覆量、並びに酸性物質の種類に応じて、小腸上部から大
腸下部までの任意の部位で、急速にカプセル内容物を放
出せしめ得ること、(b)このカプセルに薬物、医薬製
剤、機能性成分等を充填すれば、これらカプセル内容物
を、小腸上部から大腸下部までの消化管内の所望の部位
に送逹せしめ得る製剤にできることを見いだし、本発明
を完成した。
【0009】即ち、本発明は、少なくとも酸性物質を含
有する硬カプセル、該硬カプセルを覆う低pH溶解性皮
膜、及び低pH溶解性皮膜を覆う腸溶性皮膜を有するこ
とを特徴とする消化管下部放出型被覆カプセル製剤であ
る。
【0010】本発明において、消化管下部なる語は、所
謂小腸上部である十二指腸から、空腸、回腸、盲腸、上
行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸を経て、所謂大
腸下部である直腸に至るまでを意味する。
【0011】本発明の製剤は、上記の如き消化管下部の
任意の部位で、選択的に薬物等のカプセル内容物を放出
させ得るものであるが、本発明の特徴を生かすために
は、空腸から直腸までの任意の部位で薬物等を放出させ
るのが好ましく、更には、回腸から直腸までの任意の部
位で薬物等を放出させるのが好ましく、とりわけ回盲口
から直腸までの大腸内の任意の部位で薬物等を放出させ
ることが好ましい。又、最も好ましくは、上行結腸、横
行結腸、下行結腸、S状結腸の任意の部位を薬物等の放
出対象部位とする製剤である。
【0012】本発明の製剤において、硬カプセルとして
は、経口投与に適するものであれば特に限定はされない
が、市販されているものを用いることが製造を簡便にす
る上で好ましい。かかる硬カプセルとしては、例えば、
ゼラチンカプセル(商品名:CONI−SNAPカプセ
ル、カプスゲル社製)、コーンスターチカプセル(商品
名:CAPILL、ワーナーランバート(株)製)、ヒ
ドロキシプロピルメチルセルロースカプセル(商品名:
HPMCカプセル、日本エランコ(株)製)などがあげ
られる。この内、ゼラチンカプセル、ヒドロキシプロピ
ルメチルセルロースカプセルが好ましい。
【0013】また、硬カプセルの大きさについても特に
限定されないが、2〜4号のカプセルが取扱いが容易で
あり好ましい。
【0014】更に、本発明の製剤では、硬カプセルのボ
ディー部とキャップ部の境界にシールを施してもよく、
例えば、カプセル内に半固形物、液体を含む場合などに
効果的である。
【0015】本発明の製剤において、硬カプセル内に含
有せしめる酸性物質としては、水に溶解後のpHが5以
下を示すものであればよく、結晶、粉末、顆粒等の形状
は特に限定されずに用いることができる。このような酸
性物質としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、酒石
酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸等の有機酸、ホウ酸
等の無機酸を用いることができる。これら酸性物質の
内、有機酸が好ましく、とりわけコハク酸が好ましい。
また、かかる酸性物質を2種以上組み合わせたものでも
よい。
【0016】また、硬カプセル内に含有せしめる薬物等
がそれ自体酸性物質として機能する場合には、更に酸性
物質を加える必要はなく、或いは必要な分だけ酸性物質
を加えればよい。
【0017】硬カプセル中の酸性物質の充填量は、特に
限定されず、カプセル外部に施される低pH溶解性皮膜
を溶解するに充分な量であればよい。このような酸性物
質の量は、当業者であれば溶出試験を行うことによっ
て、容易に最適量を見出すことができる。
【0018】本発明の製剤において、低pH溶解性皮膜
に用いる低pH溶解性高分子には、皮膜形成性を有する
ものであって、pH1〜5の酸性領域において溶解する
が、これよりpHの高い中性〜アルカリ性域では溶解し
ない高分子、すなわち、通常この分野で胃溶性高分子と
して用いられる物質を使用できる。このような高分子と
しては、例えば、ポリビニルアセタールジエチルアミノ
アセテート、メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸ブ
チル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体
(例えば、商品名:オイドラギットE100、ローム・
ファーマ社製)及びポリビニルアミノアセタールから選
ばれる1種又は2種以上があげられる。このうち、ポリ
ビニルアセタールジエチルアミノアセテート、メタアク
リル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸
ジメチルアミノエチル共重合体が好ましい。
【0019】本発明の製剤において、腸溶性皮膜に用い
る腸溶性高分子には、皮膜形成性を有するものであっ
て、pH5以上の水溶液には溶解するが、これよりpH
の低い酸性水溶液には溶解しない高分子物質を使用でき
る。このような腸溶性高分子としては、例えばセルロー
ス誘導体、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系共重合
体、ポリビニル誘導体、シェラック等があげられる。
【0020】このようなセルロース誘導体の具体例とし
ては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート
サクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフ
タレート、ヒドロキシメチルエチルセルロースフタレー
ト、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセ
テートサクシネート、セルロースアセテートマレエー
ト、セルロースベンゾエートフタレート、セルロースプ
ロピオネートフタレート、メチルセルロースフタレー
ト、カルボキシメチルエチルセルロース、エチルヒドロ
キシエチルセルロースフタレート等があげられる。これ
らの内、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテー
トサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース
フタレート、カルボキシメチルエチルセルロースが好ま
しく、とりわけ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース
アセテートサクシネートが好ましい。
【0021】アクリル酸系共重合体としては、スチレン
・アクリル酸共重合体、メチルアクリレート・アクリル
酸共重合体、メチルアクリレート・メタアクリル酸共重
合体、ブチルアクリレート・スチレン・アクリル酸共重
合体、メタアクリル酸・メタアクリル酸メチル共重合体
(例えば、商品名:オイドラギットL100、オイドラ
ギットS、いずれもローム・ファーマ社製)、メタアク
リル酸・アクリル酸エチル共重合体(例えば、商品名:
オイドラギットL100−55、ローム・ファーマ社
製)、メチルアクリレート・メタアクリル酸・オクチル
アクリレート共重合体等があげられる。これらの内、メ
タアクリル酸・メタアクリル酸メチル共重合体が好まし
い。
【0022】マレイン酸系共重合体としては、ビニルア
セテート・マレイン酸無水物共重合体、スチレン・マレ
イン酸無水物共重合体、スチレン・マレイン酸モノエス
テル共重合体、ビニルメチルエーテル・マレイン酸無水
物共重合体、エチレン・マレイン酸無水物共重合体、ビ
ニルブチルエーテル・マレイン酸無水物共重合体、アク
リロニトリル・メチルアクリレート・マレイン酸無水物
共重合体、ブチルアクリレート・スチレン・マレイン酸
無水物共重合体等があげられる。
【0023】また、ポリビニル誘導体としては、ポリビ
ニルアルコールフタレート、ポリビニルアセタールフタ
レート、ポリビニルブチレートフタレート、ポリビニル
アセトアセタールフタレート等があげられる。
【0024】本発明の製剤では、上記腸溶性高分子を1
種で、或いは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】これら腸溶性高分子物質のうち、セルロー
ス誘導体、アクリル酸系共重合体が好ましく、とりわ
け、セルロース誘導体が好ましい。
【0026】本発明の製剤は、胃内滞留中は腸溶性皮膜
によって保護され、腸管内に移行後、腸溶性皮膜が溶
解、消失を始めると、消化液は徐々に低pH溶解性皮膜
を通り、硬カプセル内に到達し、酸性物質を溶解する。
酸性物質が溶解してできた低pHの溶液は、硬カプセル
及び低pH溶解性皮膜を溶解、消失させ、この時点で薬
物等のカプセル内容物が急速に放出するというメカニズ
ムを有する。
【0027】そのため、本発明の製剤は、低pH溶解性
皮膜種類及び被覆量、並びに酸性物質の種類を調節する
ことにより、消化管下部の任意の部位で、選択的に薬物
等のカプセル内容物を放出させることができる。
【0028】即ち、低pH溶解性皮膜の種類及び被覆
量、並びに酸性物質の種類を調節することにより、胃排
出から腸内でのカプセル内容物の放出開始までの時間
(以下、ラグタイムと称する)を設定することができ
る。例えば、低pH溶解性皮膜の被覆量を増加(減少)
させることにより、ラグタイムを長く(短く)設定する
事が可能である。
【0029】また、一般的な小腸内通過時間は3±1時
間とされており、放出開始までラグタイムを約2時間、
約4時間、約7時間前後となるように設定することによ
り、回腸下部、上行結腸、横行結腸付近で薬物等の放出
が見込まれる各製剤を得ることができる。又、より長い
ラグタイムを設定することにより、大腸下部付近で放出
が見込まれる製剤を得ることができる。即ち、第十二改
正日本薬局方(以下日局と称する)の溶出試験法(パド
ル法)に従って溶出試験を行ったとき、日局崩壊試験第
二液(pH6.8)中で、所望のラグタイムに相当する
時間は実質的に薬物等を放出しないように設定すればよ
い。
【0030】低pH溶解性皮膜及び腸溶性皮膜の好まし
い被覆量は、低pH溶解性皮膜ではラグタイムの設定
や、各成分の組み合わせによって変化するが、腸溶性皮
膜は胃内での溶出に耐え得る程度であればよい。これら
は、当業者であれば溶出試験により容易に設定すること
ができ、被覆量は特定されないが、一般的には、低pH
溶解性皮膜が、空カプセルの重量に対して5〜500重
量%、腸溶性皮膜が空カプセル重量に対して10〜40
0重量%となるようにするのが好ましい。
【0031】本発明における低pH溶解性皮膜と腸溶性
皮膜の組合せとしては、上記低pH溶解性高分子及び腸
溶性高分子から任意に選択することができ、設定するラ
グタイムや、カプセルの性状、酸性物質の種類等によ
り、適宜決定することができる。
【0032】本発明のカプセル製剤には、カプセル内部
に薬物、医薬製剤、機能性成分を含有せしめることがで
きる。
【0033】本発明において、硬カプセル内に含有せし
める得る薬物としては、投与可能な薬物であれば特に限
定されず、例えば、化学療法剤、抗生物質、呼吸促進
剤、鎮咳去痰剤、抗悪性腫瘍剤、自律神経用薬剤、精神
神経用薬剤、局所麻酔剤、筋弛緩剤、消化器用薬剤、抗
ヒスタミン剤、中毒治療剤、催眠鎮静剤、抗てんかん
剤、解熱鎮痛消炎剤、強心剤、不整脈治療剤、利尿剤、
血管拡張剤、抗脂血剤、滋養強壮変質剤、抗凝血剤、肝
臓用薬剤、血糖降下剤、血圧降下剤などを用いることが
できるが、とりわけ大腸で局所的に作用する薬物や、小
腸では急速に分解する等の理由で大腸での吸収が望まし
い薬物などを用いることが有用である。
【0034】医薬製剤としては、上記薬物の一種又は二
種以上を、常法により製剤化したものがあげられ、例え
ば、散剤、顆粒剤、錠剤、油性懸濁剤等があげられる。
これら製剤は、常法により薬物放出制御特性(例えば、
徐放性)が付与されていてもよい。
【0035】更に、機能性成分としては、薬理作用は持
たないが生体内で好ましい影響を与えるものであればよ
く、例えば、乳酸菌や大腸で膨潤して排便を促すポリカ
ルボフィルカルシウム等があげられる。この機能性成分
は、単一成分である必要はなく、例えば、前記ポリカル
ボフィルカルシウムには、更にセルロース、カルボキシ
メチルスターチナトリウム(商品名:エキスプロタブ、
木村産業製)、部分α化デンプン(商品名:スターチ1
500、日本カラコン製)等が配合されていても一向に
差し支えない。
【0036】硬カプセル内に薬物と酸性物質を含有せし
める場合、両者が長期間安定に保存できる状態で充填さ
れていればよく、両者の形状、充填法等は特に限定され
ない。例えば、両者を粉末のまま混合した後、硬カプセ
ル内に充填してもよく、両者を混合して造粒し、散剤、
細粒剤、顆粒剤、錠剤の形とした後に硬カプセルに充填
してもよい。また、薬物と酸性物質の配合変化を避ける
ため、両者を粉末のまま接触しないように仕切りを設け
積層してもよく(仕切りとしては、本発明の製剤に悪影
響を与えないものであればよく、例えば、通常この分野
で常用される賦形剤等を用いることができる)、別々の
錠剤とした後に硬カプセルに充填してもよい。機能性成
分を配合する場合も、薬物の場合と同様である。
【0037】本発明の製剤は、所望により、低pH溶解
性皮膜と腸溶性皮膜の間に、薬物(硬カプセル内の薬物
と同じであってもよいし、異なっていてもよい)及び/
又は、水溶性物質からなる中間層を有していてもよい。
薬物からなる中間層を設けることにより、薬物を小腸上
部においても選択的に送達することができる。また、腸
溶性皮膜を被覆する際に、低pH溶解性皮膜の被覆膜の
特性が変化することがまれにあるが、水溶性物質からな
る中間層を設けることにより、それを防ぎ得る場合があ
る。この中間層に用いることができる薬物としては、前
記の投与可能な薬物であれば特に限定されない。また、
水溶性物質としては、水溶性高分子(例えば、メチルセ
ルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ
プロピルメチルセルロース(例えば、商品名:TC−
5、信越化学社製)等の水溶性多糖類エーテル;ポリビ
ニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性ビニ
ル誘導体;プルラン等の多糖類;ポリエチレングリコー
ル;ゼラチン)、糖類(例えば、グルコース等の単糖
類、ショ糖等の二糖類)、低分子電解質(例えば、塩化
ナトリウム等の無機塩)等があげられる。
【0038】この中間層の被覆量は、通常空カプセルの
重量に対して8〜320重量%であり、好ましくは16
〜80重量%である。
【0039】本発明の製剤の製造方法は、当業者に知ら
れた一般的な方法でよく、特に制限されるものではな
い。例えば、薬物含有硬カプセルの調製は、酸性物質及
び薬物に、賦形剤、結合剤、滑沢剤等を添加した後、混
合し、湿式造粒法、乾式造粒法等の常法により内容物を
製した後、硬カプセルに充填することにより製造するこ
とが出来る。
【0040】また、低pH溶解性皮膜、腸溶性皮膜、及
び低pH溶解性皮膜と腸溶性皮膜の中間層の被覆は、パ
ン被覆装置(例えば、商品名:ハイコーター、フロイン
ト産業製)、遠心流動造粒被覆装置(例えば、商品名:
CF−360、CF−1000、CF−1300等、い
づれもフロイント産業製)等この分野で常用される方法
により行うことが出来る。また、被覆は、通常この分野
で使用される水系、非水系いずれの方法も適用可能であ
る。
【0041】コーティング液の溶媒としては、メチルア
ルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコー
ル、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、2−メ
トキシエタノール(商品名:メチルセロソルブ、片山化
学工業社製)、2−エトキシエタノール(商品名:セロ
ソルブ、片山化学工業社製)等のアルコール類、ヘキサ
ン、シクロヘキサン、石油エーテル、石油ベンジン、リ
グロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素
類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジク
ロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、エチレンジク
ロライド、トリクロロエチレン、1、1、1−トリクロ
ロエタン等のハロゲン化炭化水素、酢酸メチルエステ
ル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルエステル等のエス
テル類、イソプロピルエーテル、ジオキサン等のエーテ
ル類、水等があげられる。
【0042】これらの溶媒は、用いる皮膜のそれぞれの
性質に応じて使用すればよく、2種以上を適宜配合して
用いることもできる。この内、とりわけ好ましい溶媒と
しては、アルコール類、ハロゲン化炭化水素、ケトン
類、水等があげられ、更に具体的に好ましい溶媒として
は、エタノール、アセトン、水等があげられる。
【0043】なお、本発明の製剤で、硬カプセルのボデ
ィー部とキャップ部の境界に施すシール剤としては、ボ
ディー部とキャップ部の境界の凹凸を滑らかにするもの
であればよく、例えば、水溶性高分子、水不溶性高分
子、低pH溶解性高分子、腸溶性高分子、糖類、低分子
電解質等が用いられる。
【0044】シール剤として用いる水溶性高分子として
は、前記中間層と同様のものを用いることができ、例え
ば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロー
ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性多
糖類エーテル;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアル
コール等の水溶性ビニル誘導体;プルラン等の多糖類;
ポリエチレングリコール;ゼラチン等があげられる。
【0045】シール剤として用いる水不溶性高分子とし
ては、例えば、アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチ
ル・メタアクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル
共重合体(例えば、商品名:オイドラギットRS、オイ
ドラギットRL、いずれもローム・ファーマ社製)、ア
クリル酸エチル・メタアクリル酸メチル共重合体(例え
ば、商品名:オイドラギットNE、ローム・ファーマ社
製)等の水不溶性アクリル酸系共重合体;エチルセルロ
ース、酢酸セルロース等の水不溶性セルロース誘導体;
ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等の水不溶性ビニル誘
導体;或はこれらを2種以上組み合わせたものがあげら
れる。
【0046】シール剤として用いる低pH溶解性高分子
としては、ポリビニアセタールジエチルアミノアセテー
ト等、本発明の低pH溶解性皮膜で用いられる低pH溶
解性高分子があげられる。
【0047】シール剤として用いる腸溶性高分子として
は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサ
クシネート、メタアクリル酸・メタアクリル酸メチル共
重合体、メタアクリル酸・アクリル酸エチル共重合体
等、本発明の腸溶性皮膜で用いられる腸溶性高分子があ
げられる。
【0048】更に、シール剤として用いる糖類、低分子
電解質としては、前記中間層と同様のものを用いること
ができ、糖類としては、グルコース等の単糖類、ショ糖
等の二糖類があげられ、低分子電解質としては、塩化ナ
トリウム等の無機塩があげられる。
【0049】本発明の製剤において、硬カプセルのボデ
ィー部とキャップ部の境界に施すシールは、シール剤を
溶解した溶液を境界に塗布することにより形成させるこ
とができる。かかる塗布は、カプセルシール機、例え
ば、Mod.SL/M(商品名、MG2 S.p.A社
(イタリア)製)、HICAPSEAL 15(商品
名、日本エランコ社製)を用いて行うか、或いはピペッ
ト(例えば、パスツールピペット)を用いて手作業によ
り行うことができる。
【0050】シール剤を溶解する溶媒としては、低pH
溶解性皮膜等の被覆に用いたのと同じ溶媒を同様に用い
ることができる。
【0051】シール剤の被覆量は、通常空カプセルの重
量に対して、0.16〜16重量%であり、好ましくは
0.8〜3.2重量%である。
【0052】本発明の製剤では、上記シール剤を1種
で、或いは2種以上組合せて用いてもよい。
【0053】硬カプセル内容物、低pH溶解性皮膜、腸
溶性皮膜および低pH溶解性皮膜・腸溶性皮膜の間の中
間層には、必要に応じて、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑
沢剤、凝集防止剤、被覆助剤、着色剤、隠蔽剤、被覆性
および膜成形性等を改善するための可塑剤、界面活性
剤、静電気防止剤、光の透過性を調整する添加剤、な
ど、通常この分野で常用される種々の配合剤を配合して
もよい。
【0054】かかる賦形剤としては例えば、白糖、乳
糖、マンニトール、グルコース等の糖類、デンプン、部
分α化デンプン、結晶セルロース、リン酸カルシウム、
硫酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、含水二酸化ケイ
素などがあげられる。
【0055】結合剤としては例えば、白糖、グルコー
ス、乳糖、麦芽糖、ソルビトール、マンニトールなどの
小糖類もしくは糖アルコール類、デキストリン、デンプ
ン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、グアーガ
ム、アラビアゴム、寒天などの多糖類、トラガント、ゼ
ラチン、グルテンなどの天然高分子類、メチルセルロー
ス、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナ
トリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの
セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニル
アルコール、ポリビニルアセテート、ポリエチレングリ
コール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸などの合成
高分子などがあげられる。
【0056】崩壊剤としてはカルボキシメチルセルロー
スカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、
コーンスターチ、ヒドロキシプロピルスターチ、部分α
化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、
架橋ポリビニルピロリドン、クロスカルメロースナトリ
ウム等があげられる。
【0057】滑沢剤、凝集防止剤としては、タルク、ス
テアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コ
ロイダルシリカ、ステアリン酸、含水二酸化ケイ素、合
成ケイ酸マグネシウム、微粒子性酸化ケイ素、デンプ
ン、ラウリル硫酸ナトリウム、ホウ酸、酸化マグネシウ
ム、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール、安
息香酸ナトリウム等があげられる。
【0058】被覆助剤としては、例えば硬化油(商品
名:K−3ワックス、川研ファインケミカル社製、
等)、ステアリン酸(商品名:NAA−174、日本油
脂製、等)、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ポ
リオキシル(商品名:ノニオンS−154、マツモト交
商製、等)、ステアリン酸マグネシウム、セタノール
(商品名:NAA−44、日本油脂製、等)等があげら
れる。
【0059】着色剤としては、例えば食用色素、レーキ
色素、カラメル、カロチン、アナット、コチニール、二
酸化鉄等のほかレーキ色素とシロップを主体とした不透
明着色剤オパラックス(OPALUX)等があり、具体
的には食用赤色2号、3号、黄色4号、5号、緑色3
号、青色1号、2号、紫1号等の食用アルミニウムレー
キ、アナット(ベニノキ由来の天然色素)、カルミン
(カルミン酸アルミニウム塩)、パールエッセンス(グ
アニンを主成分とする)等があげられる。
【0060】隠蔽剤としては、例えば二酸化チタン、沈
降炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、硫酸カルシ
ウム等があげられ、可塑剤としては、例えばジエチルフ
タレート、ジブチルフタレート、ブチルフタリルブチル
グリコレート等のフタル酸誘導体のほか、シリコン油、
トリアセチン、プロピレングリコール、ポリエチレング
リコール等があげられる。
【0061】界面活性剤としては、ソルビタンセスキオ
レエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエー
ト、ポリオキシエチレンモノステアレート、グリセリル
モノステアレート、プロピレングリコールモノラウリレ
ート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキ
シエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒ
マシ油等の非イオン性界面活性剤、ラウリル硫酸ナトリ
ウム、塩化ベンゼトニウム等のイオン性界面活性剤があ
げられる。
【0062】静電気防止剤としては、含水二酸化ケイ
素、ケイ酸などがあげられ、光の透過性を調節する添加
剤としては、酸化チタン、タルク等があげられる。
【0063】これらの添加物の種類や添加量は、製剤技
術の分野で常用される知見に基づく範囲であれば、何ら
問題なく使用することが出来る。
【0064】本明細書において、低pHとは、pH1〜
5を意味するものとし、好ましくはpH1〜3を意味す
る。
【0065】
【発明の実施の形態】かくして得られる本発明の製剤に
ついて、その典型的なものを模式的に表したものが図1
〜3であり、図1は、カプセルに酸性物質(所望によ
り、薬物、医薬製剤又は機能性成分を含む)を充填した
ものであって、図2は、図1のカプセルにおける接合部
をシールしたもの、更に図3は、カプセルを被覆する低
pH溶解性皮膜と腸溶性皮膜の間に中間層を設けたもの
を表す。
【0066】本発明における低pH溶解性皮膜と腸溶性
皮膜の好ましい組合せを表1に、さらに具体的な例を表
2に非限定的にあげる。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】以下に本発明の実験例を示す。
【0070】実験例1 (1)溶出試験 実施例1で得た製剤について、日局溶出試験法(パドル
法)に従い、日局崩壊試験第一液(pH1.2、以下第
一液と称する)、同第二液(pH6.8、以下第二液と
称する)を用い、溶出液900ml、37℃、パドル回
転数100rpmの条件下で溶出試験を実施した。
【0071】その結果を図4に示す。本発明の製剤は、
第一液中では、長時間に亘って全く薬物の放出は起こら
ず、耐酸性が良く保たれており、また、第二液中では約
4時間のラグタイムの後、急速に薬物を放出しており、
80%放出までに要する時間は約1時間であることがわ
かった。
【0072】(2)インビボでの観察 実施例1の製剤において、胃排出マーカーとしてテオフ
ィリン20mgをオイドラギットE100層とHPMC
−AS層の間に被覆した製剤を調製した。一夜絶食した
ビーグル犬(体重9〜12kg、n=3)にテトラガス
トリンを筋注し、その90分後、上記製剤を精製水50
mlと同時に経口投与した。経口投与後、経時的に血液
をサンプリングし、血中のプレドニゾロンの濃度(μg
/ml)の推移を調べた。
【0073】その結果を図5に示す。薬物(プレドニゾ
ロン)の血中濃度は、胃排出後約3時間経過後から急速
に上昇し、最高血中濃度到達時間は、胃排出後約5時間
経過後であった。消化管下部において、本発明の製剤が
薬物を放出したことがわかる。
【0074】実験例2 (1)製剤の調製 白色2号ゼラチン硬カプセル(カプスゲル社製、カプセ
ル重量:60mg)に、テオフィリン20mgとコハク
酸100mgの混合物を充填し、素カプセルを得た。
【0075】得られた素カプセルに、ハイコーターを用
いてオイドラギットE100(商品名、ローム・ファー
マ社製、成分:メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸
ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエチル共重合
体)をエタノールに5%(w/w)濃度で溶解した溶液
を噴霧し、1カプセル当たりオイドラギットE100の
被覆量を20、30、40、50、60、70、80、
90、100mgと変えて、オイドラギットE100の
被覆量が異なる9種類の低pH溶解性皮膜被覆カプセル
を得た。
【0076】(2)溶出試験 上記で得た9種類の製剤について、第二液を用い、実験
例1(1)と同様の条件下で溶出試験を実施した。
【0077】その結果を図6に示す。また図7に溶出試
験の結果から求めたオイドラギットE100の被覆量と
薬物放出開始時間との関係を示す。本発明の製剤は、低
pH溶解性皮膜の被覆量によりラグタイムを容易に、幅
広く調節できることがわかる。また、いずれの製剤も薬
物放出開始後、80%放出までに要する時間は約1時間
であり、被覆量の増加が薬物放出速度に影響を与えてい
ないことがわかる。
【0078】実験例3 (1)製剤の調製 白色2号ゼラチン硬カプセル(カプスゲル社製)に、テ
オフィリン20mgと、マレイン酸、酒石酸、フマル
酸、またはクエン酸100mgの混合物を充填し、素カ
プセルを得た。得られた素カプセルのキャップとボディ
の境界部分に、エタノールに10%(w/w)濃度で溶
解させたエチルセルロース溶液を用いてシールを施し
た。
【0079】得られたシールを施した素カプセルに対し
て、実施例1(2)と同様に操作し、酸性物質の種類の
異なる4種類の低pH溶解性皮膜被覆カプセルを得た。
【0080】(2)溶出試験 上記で得た4種類の製剤について、第二液を用い、実験
例1(1)と同様の条件下で溶出試験を実施した。
【0081】その結果を図8に示す。本発明の製剤は、
酸性物質の種類によりラグタイムを調節できることがわ
かる。また、いずれの製剤も薬物放出開始後、80%放
出までに要する時間は約1時間であり、酸性物質の種類
が薬物放出速度に影響を与えていないことがわかる。
【0082】実験例4 (1)製剤の調製 白色2号ゼラチン硬カプセル(カプスゲル社製)に、テ
オフィリン20mgとコハク酸の添加量を0、10、2
0、50、100mgと変化させた混合物を充填し、5
種類の素カプセルを得た。
【0083】得られた5種類の素カプセルに対して、そ
れぞれ実施例1(2)、1(3)と同様に操作して本発
明の製剤を得た。
【0084】(2)溶出試験 上記で得た5種類の製剤について、第二液を用い、実験
例1(1)と同様の条件下で溶出試験を実施した。
【0085】その結果を図9に示す。コハク酸の添加量
は、約20mg(1カプセルあたり)以上になるとラグ
タイム及び薬物放出速度に殆ど影響を与えないことがわ
かる。
【0086】実験例5 溶出試験 実施例2で得た製剤(n=6)について、第二液を用
い、実験例1(1)と同様の条件下で溶出試験を実施し
た。
【0087】その結果を図10に示す。
【0088】
【実施例】
実施例1 (1)白色2号ゼラチンカプセル(カプスゲル社製)
に、プレドニゾロン10mgとコハク酸100mgの混
合物を充填し、素カプセルを得た。
【0089】(2)得られた素カプセルに対して、ハイ
コーターを用いてオイドラギットE100(商品名、ロ
ーム・ファーマ社製、成分:メタアクリル酸メチル・メ
タアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミノエ
チル共重合体)をエタノールに5%(w/w)濃度で溶
解した溶液を噴霧し、1カプセル当たりオイドラギット
E100として30mgを被覆することにより低pH溶
解性皮膜被覆カプセルを得た。
【0090】(3)得られた低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルに対して、ハイコーターを用いてHPMC−AS
(商品名、信越化学社製、成分:ヒドロキシプロピルメ
チルセルロースアセテートサクシネート)をエタノール
−水混液(重量比5:3)に5%(w/w)濃度で溶解
し、さらにタルクを2.5%(w/w)添加した溶液を
噴霧して、1カプセル当たりHPMC−ASとして10
0mgを被覆することにより、本発明の製剤を得た。
【0091】実施例2 (1)白色2号ゼラチンカプセル(カプスゲル社製)
に、テオフィリン20mgとコハク酸100mgの混合
物を充填し、素カプセルを得た。得られた素カプセルの
キャップとボディの境界部分に、エタノールに10%
(w/w)濃度で溶解させたエチルセルロース溶液を用
いてシールを施した(空カプセルに対するシールの被覆
量:1.5%(w/w))。シールはエチルセルロース
溶液をパスツールピペットで塗布することにより行なっ
た。
【0092】(2)得られたシールを施した素カプセル
に対して、実施例1(2)、1(3)と同様に操作し、
本発明の製剤を得た。
【0093】実施例3 (1)白色2号ゼラチンカプセル(カプスゲル社製)
に、プレドニゾロン10mgとコハク酸100mgの混
合物を充填し、素カプセルを得た。得られた素カプセル
のキャップとボディの境界部分に、エタノールに10%
(w/w)濃度で溶解させたエチルセルロース溶液を用
いてシールを施した。シールはエチルセルロース溶液を
パスツールピペットで塗布することにより行なった。
【0094】(2)得られたシールを施した素カプセル
に対して、実施例1(2)と同様に操作し、低pH溶解
性皮膜被覆カプセルを得た。
【0095】(3)得られた低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルに対して、ハイコーターを用いてTC−5(商品
名、信越化学社製、成分:ヒドロキシプロピルメチルセ
ルロース)を水に5%(w/w)濃度で溶解した溶液を
噴霧し、1カプセル当たりTC−5として15mgを被
覆することにより中間層被覆カプセルを得た。
【0096】(4)得られた中間層被覆カプセルに対し
て、実施例1(3)と同様に操作し、本発明の製剤を得
た。
【0097】実施例4 (1)白色2号ゼラチンカプセル(カプスゲル社製)
に、テオフィリン20mgと酒石酸100mgの混合物
を充填し、素カプセルを得た。
【0098】(2)得られた素カプセルに対して、実施
例1(2)、1(3)と同様に操作し、本発明の製剤を
得た。
【0099】実施例5 (1)白色2号HPMCカプセル(日本エランコ社製)
に、テオフィリン20mgとコハク酸100mgの混合
物を充填し、素カプセルを得た。
【0100】(2)得られた素カプセルに対して、実施
例1(2)、1(3)と同様に操作し、本発明の製剤を
得た。
【0101】実施例6 (1)白色2号ゼラチンカプセル(カプスゲル社製)
に、テオフィリン20mgとマレイン酸100mgの混
合物を充填し、素カプセルを得た。
【0102】(2)得られた素カプセルに対して、実施
例1(2)、1(3)と同様に操作し、本発明の製剤を
得た。
【0103】実施例7 (1)白色2号ゼラチンカプセル(カプスゲル社製)
に、テオフィリン20mgとクエン酸100mgの混合
物を充填し、素カプセルを得た。
【0104】(2)得られた素カプセルに対して、実施
例1(2)、1(3)と同様に操作し、本発明の製剤を
得た。
【0105】実施例8 (1)白色2号ゼラチンカプセル(カプスゲル社製)
に、テオフィリン20mgとフマル酸100mgの混合
物を充填し、素カプセルを得た。
【0106】(2)得られた素カプセルに対して、実施
例1(2)、1(3)と同様に操作し、本発明の製剤を
得た。
【0107】実施例9 (1)白色2号ゼラチンカプセル(カプスゲル社製)
に、テオフィリン20mgとリンゴ酸100mgの混合
物を充填し、素カプセルを得た。
【0108】(2)得られた素カプセルに対して、実施
例1(2)、1(3)と同様に操作し、本発明の製剤を
得た。
【0109】実施例10 (1)白色2号ゼラチンカプセル(カプスゲル社製)
に、テオフィリン20mgとコハク酸100mgの混合
物を充填し、素カプセルを得た。
【0110】(2)得られた素カプセルに対して、ハイ
コーターを用いてポリビニルアセタールジエチルアミノ
アセテートをエタノールに5%(w/w)濃度で溶解し
た溶液を噴霧し、1カプセル当たりポリビニルアセター
ルジエチルアミノアセテートとして30mgを被覆する
ことにより低pH溶解性皮膜被覆カプセルを得た。
【0111】(3)得られた低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルに対して、実施例1(3)と同様に操作し、本発明
の製剤を得た。
【0112】実施例11 (1)白色2号ゼラチンカプセル(カプスゲル社製)
に、プレドニゾロン10mgとコハク酸100mgの混
合物を充填し、素カプセルを得た。
【0113】(2)得られた素カプセルに対して、実施
例1(2)と同様に操作し、低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルを得た。
【0114】(3)得られた低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルに対して、ハイコーターを用いてヒドロキシプロピ
ルメチセルロースフタレートをエタノール−水混液(重
量比8:2)に5%(w/w)濃度で溶解し、さらにタ
ルクを2.5%(w/w)添加した溶液を噴霧して、1
カプセル当たりヒドロキシプロピルメチセルロースフタ
レートとして80mgを被覆することにより、本発明の
製剤を得た。
【0115】実施例12 (1)白色2号ゼラチンカプセル(カプスゲル社製)
に、プレドニゾロン10mgとコハク酸100mgの混
合物を充填し、素カプセルを得た。
【0116】(2)得られた素カプセルに対して、実施
例1(2)と同様に操作し、低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルを得た。
【0117】(3)得られた低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルに対して、ハイコーターを用いてセルロースアセテ
ートフタレートをエタノール−水混液(重量比8:2)
に5%(w/w)濃度で溶解し、さらにタルクを5%
(w/w)添加した溶液を噴霧して、1カプセル当たり
セルロースアセテートフタレートとして100mgを被
覆することにより、本発明の製剤を得た。
【0118】実施例13 (1)白色2号ゼラチン硬カプセル(カプスゲル社製)
に、プレドニゾロン10mgとコハク酸100mgの混
合物を充填し、素カプセルを得た。
【0119】(2)得られた素カプセルに対して、実施
例1(2)と同様に操作し、低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルを得た。
【0120】(3)得られた低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルに対して、ハイコーターを用いてオイドラギットL
100(商品名、ローム・ファーマ社製、成分:メタア
クリル酸・メタアクリル酸メチル共重合体)をエタノー
ル−水混液(重量比8:2)に5%(w/w)濃度で溶
解し、さらにタルクを5%(w/w)添加した溶液を噴
霧して、1カプセル当たりオイドラギットL100とし
て80mgを被覆することにより、本発明の製剤を得
た。
【0121】実施例14 (1)白色2号ゼラチン硬カプセル(カプスゲル社製)
に、プレドニゾロン10mgとコハク酸100mgの混
合物を充填し、素カプセルを得た。
【0122】(2)得られた素カプセルに対して、実施
例1(2)と同様に操作し、低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルを得た。
【0123】(3)得られた低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルに対して、ハイコーターを用いてオイドラギットS
100(商品名、ローム・ファーマ社製、成分:メタア
クリル酸・メタアクリル酸メチル共重合体)をエタノー
ル−水混液(重量比8:2)に5%(w/w)濃度で溶
解し、さらにタルクを5%(w/w)添加した溶液を噴
霧して、1カプセル当たりオイドラギットS100とし
て90mgを被覆することにより、本発明の製剤を得
た。
【0124】実施例15 (1)白色2号ゼラチン硬カプセル(カプスゲル社製)
に、プレドニゾロン10mgとコハク酸100mgの混
合物を充填し、素カプセルを得た。
【0125】(2)得られた素カプセルに対して、実施
例1(2)と同様に操作し、低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルを得た。
【0126】(3)得られた低pH溶解性皮膜被覆カプ
セルに対して、ハイコーターを用いてオイドラギットL
100−55(商品名、ローム・ファーマ社製、成分:
メタアクリル酸・アクリル酸エチル共重合体)をエタノ
ール−水混液(重量比8:2)に5%(w/w)濃度で
溶解し、さらにタルクを5%(w/w)添加した液を噴
霧して、1カプセル当たりオイドラギットL100−5
5として100mgを被覆することにより、本発明の製
剤を得た。
【0127】又、本発明の実施態様を以下の通り示す。
【0128】第1項:消化管下部の任意の部位で薬物、
医薬製剤及び機能性成分を放出するように、低pH溶解
性皮膜の種類及び被覆量、並びに酸性物質の種類を調節
した本発明の製剤。
【0129】第2項:空腸から直腸までの任意の部位で
薬物、医薬製剤及び機能性成分を放出するように、低p
H溶解性皮膜の種類及び被覆量、並びに酸性物質の種類
を調節した本発明の製剤。
【0130】第3項:回腸から直腸までの任意の部位で
薬物、医薬製剤及び機能性成分を放出するように、低p
H溶解性皮膜の種類及び被覆量、並びに酸性物質の種類
を調節した本発明の製剤。
【0131】第4項:大腸内の任意の部位で薬物、医薬
製剤及び機能性成分を放出するように、低pH溶解性皮
膜の種類及び被覆量、並びに酸性物質の種類を調節した
本発明の製剤。
【0132】第5項:日局溶出試験法に従って溶出試験
を行ったとき、第二液中では所望の時間経過後にカプセ
ル内容物を放出するよう低pH溶解性皮膜の種類及び被
覆量、並びに酸性物質の種類を設定した本発明の製剤。
【0133】第6項:酸性物質が、有機酸である本発明
の製剤。
【0134】第7項:酸性物質が、コハク酸、マレイン
酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸及びリンゴ酸から選ば
れる1種又は2種以上である本発明の製剤。
【0135】第8項:硬カプセルが、市販されているも
のである本発明の製剤。
【0136】第9項:硬カプセルが、ゼラチンカプセ
ル、コーンスターチカプセル又はヒドロキシプロピルメ
チルセルロースカプセルである本発明の製剤。
【0137】第10項:硬カプセルが、ゼラチンカプセ
ル又はヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルで
ある本発明の製剤。
【0138】第11項:硬カプセルが、ゼラチンカプセ
ルである本発明の製剤。
【0139】第12項:低pH溶解性皮膜が、皮膜形成
性を有するもので、pH1〜5の酸性領域において溶解
するが、これよりpHの高い中性〜アルカリ性域では溶
解しない高分子からなる皮膜である本発明の製剤。
【0140】第13項:低pH溶解性皮膜が、ポリビニ
ルアセタールジエチルアミノアセテート及びメタアクリ
ル酸メチル・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジ
メチルアミノエチル共重合体から選ばれる1種又は2種
以上からなる皮膜である本発明の製剤。
【0141】第14項:腸溶性皮膜が、皮膜形成性を有
するものであって、pH5以上の水溶液には溶解する
が、これよりpHの低い酸性水溶液には溶解しない高分
子からなる皮膜である本発明の製剤。
【0142】第15項:腸溶性皮膜が、セルロース誘導
体、シェラック、アクリル酸系共重合体、マレイン酸系
共重合体及びポリビニル誘導体から選ばれる1種又は2
種以上からなる皮膜である本発明の製剤。
【0143】第16項:腸溶性皮膜が、ヒドロキシプロ
ピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロ
キシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシ
メチルエチルセルロース及びメタアクリル酸・メタアク
リル酸メチル共重合体から選ばれる1種又は2種以上か
らなる皮膜である本発明の製剤。
【0144】
【発明の効果】本発明の製剤は、その内容物を消化管下
部に送達するための硬カプセルに関するものである。則
ち、本発明の製剤は、胃内滞留中は腸溶性皮膜によって
保護され、腸管内に移行後、腸溶性皮膜が溶解、消失を
始めると、消化液は徐々に低pH溶解性皮膜を通り、硬
カプセル内に到達し、酸性物質を溶解する。酸性物質が
溶解してできた低pHの溶液は、硬カプセル及び低pH
溶解性皮膜を溶解、消失させ、薬物などのカプセル内容
物が急速に放出するという特徴を有する。したがって、
硬カプセル内容物の放出速度は、硬カプセルの種類、低
pH溶解性皮膜の種類もしくは被覆量、又は酸性物質の
種類にはほとんど影響されず、放出開始から80%放出
までに要する時間は約1時間である。
【0145】また、本発明の製剤の硬カプセルは、酸性
物質が溶解してできた低pHの溶液により速やかに溶解
する。このため、本発明の製剤においては、ラグタイム
(胃排出後から腸内での硬カプセル内容物の放出開始ま
での時間)は、低pH溶解性皮膜の種類及び被覆量、並
びに酸性物質の種類によって、任意に調節することがで
きるという特徴を有する。
【0146】したがって、本発明の製剤は、その硬カプ
セル内容物を消化管下部の任意の部位で急速に放出する
ことができるという利点を有する。
【0147】更に、従来の消化管下部溶出型製剤は、造
粒、打錠等の各種処理、胃や小腸上部での薬物の保護、
大腸における崩壊性や、製剤中の薬物のロス等を考慮し
て、煩雑な条件設定をしてはじめて得られるものであっ
たが、本発明の製剤は、これら煩雑な条件設定を行なう
必要がないという、極めて大きな利点を有する。すなわ
ち、本発明によれば、消化管下部に送達されるべき薬物
などは硬カプセル内に封入されるため、以後の製剤化の
過程においては、薬物等の保護等を目的とした条件設定
が必要ないのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製剤の模式図を示す。
【図2】 本発明の製剤の模式図(シールを施した場
合)を示す。
【図3】 本発明の製剤の模式図(中間層を有する場
合)を示す。
【図4】 実験例1において、溶出試験(第一液、第二
液)の結果を示す。
【図5】 実験例1において、本発明の製剤をビーグル
犬に投与した際の血中濃度推移を示す。
【図6】 実験例2において、オイドラギットE100
の被覆量の異なる製剤を用いた溶出試験(第二液)の結
果を示す。
【図7】 オイドラギットE100の被覆量と薬物放出
開始時間との関係を示す。
【図8】 実験例3において、酸性物質の種類の異なる
製剤を用いた溶出試験(第二液)の結果を示す。
【図9】 実験例4において、コハク酸の添加量の異な
る製剤を用いた溶出試験(第二液)の結果を示す。
【図10】 実験例5において、シールを施した製剤を
用いた溶出試験(第二液)の結果を示す。
【符号の説明】
1:酸性物質、及び所望により薬物、医薬製剤、機能性
成分等 2:硬カプセル 3:低pH溶解性皮膜 4:腸溶性皮膜 5:シール 6:中間層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A61K 47/32 A61K 47/32 D 47/38 47/38 D

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも酸性物質を含有する硬カプセ
    ル、該硬カプセルを覆う低pH溶解性皮膜、及び低pH
    溶解性皮膜を覆う腸溶性皮膜を有することを特徴とする
    消化管下部放出型被覆カプセル製剤。
  2. 【請求項2】 硬カプセル内に薬物、医薬製剤又は機能
    性成分が含有された請求項1記載の製剤。
  3. 【請求項3】 硬カプセルのボディー部とキャップ部の
    境界にシールが施された請求項1又は2記載の製剤。
  4. 【請求項4】 酸性物質が、水に溶解後のpHが5以下
    を示す固形物質である請求項1、2又は3記載の製剤。
  5. 【請求項5】 酸性物質が、有機酸及び/又は無機酸で
    ある請求項1、2、3又は4記載の製剤。
  6. 【請求項6】 低pH溶解性皮膜が、ポリビニルアセタ
    ールジエチルアミノアセテート、メタアクリル酸メチル
    ・メタアクリル酸ブチル・メタアクリル酸ジメチルアミ
    ノエチル共重合体及びポリビニルアミノアセタールから
    選ばれる1種又は2種以上からなる皮膜である請求項
    1、2、3、4又は5記載の製剤。
  7. 【請求項7】 腸溶性皮膜が、ヒドロキシプロピルメチ
    ルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロ
    ピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルエ
    チルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタ
    レート、セルロースアセテートサクシネート、セルロー
    スアセテートマレエート、セルロースベンゾエートフタ
    レート、セルロースプロピオネートフタレート、メチル
    セルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロ
    ース、エチルヒドロキシエチルセルロースフタレート、
    シェラック、スチレン・アクリル酸共重合体、メチルア
    クリレート・アクリル酸共重合体、メチルアクリレート
    ・メタアクリル酸共重合体、ブチルアクリレート・スチ
    レン・アクリル酸共重合体、メタアクリル酸・メタアク
    リル酸メチル共重合体、メタアクリル酸・アクリル酸エ
    チル共重合体、メチルアクリレート・メタアクリル酸・
    オクチルアクリレート共重合体、ビニルアセテート・マ
    レイン酸無水物共重合体、スチレン・マレイン酸無水物
    共重合体、スチレン・マレイン酸モノエステル共重合
    体、ビニルメチルエーテル・マレイン酸無水物共重合
    体、エチレン・マレイン酸無水物共重合体、ビニルブチ
    ルエーテル・マレイン酸無水物共重合体、アクリロニト
    リル・メチルアクリレート・マレイン酸無水物共重合
    体、ブチルアクリレート・スチレン・マレイン酸無水物
    共重合体、ポリビニルアルコールフタレート、ポリビニ
    ルアセタールフタレート、ポリビニルブチレートフタレ
    ート、及び、ポリビニルアセトアセタールフタレートか
    ら選ばれる1種又は2種以上からなる皮膜である請求項
    1、2、3、4、5又は6記載の製剤。
  8. 【請求項8】 低pH溶解性皮膜と腸溶性皮膜の間に、
    薬物及び/又は水溶性物質からなる中間層を有した請求
    項1、2、3、4、5、6又は7記載の製剤。
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