JPH09174725A - 車輌シート用表面材およびその製造法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 自動車のシートカバーなどに用いる風合いの
優れた車輌シート用表面材およびこれを安価に量産でき
る車輌シート用表面材の製造法を提供すること。 【解決手段】 高融点繊維フィラメント３ａからなる高
融点ウェブ裏層３と低融点繊維フィラメント４ａからな
る低融点ウェブ表層４とが表面側からの針刺加工により
表面を凹凸面として絡合一体化したワディング材１の表
面に表皮材２を溶融状態とされた前記凹凸面の無数の凸
部を点状接着部５ａとして接着一体化されている車輌シ
ート用表面材と、前記ワディング材に対して高融点繊維
フィラメントは溶融されないが低融点繊維フィラメント
は溶融されるヒートセット温度でヒートセット処理して
前記凹凸面の無数の凸部を点状接着部としてワディング
材の表面に表皮材を接着一体化する車輌シート用表面材
の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のシートカ
バーなどに用いる風合いの優れた車輌シート用表面材お
よびこれを安価に量産できる車輌シート用表面材の製造
法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】車輌シート用表面材としては、例えば実
開平１ー１０３４００号公報などに見られるように、ボ
リューム感とクッション性に優れたポリウレタンフォー
ムの表面に編地や織地などのファブリック表皮材をラミ
ネートした積層表皮材が多く用いられてきたが、この種
積層表皮材においてはポリウレタンフォームの強度が不
十分なため、必然的にファブリック表皮材として強度的
に優れた良質のものが使用されることとなりこれがコス
ト高になるという問題点があるとともに、ポリウレタン
フォームは廃棄公害上或いはリサイクリング上の問題点
もあった。

【０００３】このような問題を解決するため、最近では
ポリウレタンフォームの代わりに繊維ウェブをワディン
グ材としてこれに接着剤を介して表皮材を接着一体化し
た車輌シート用表面材も実開平５ー１５８９９号公報
や、特開平４ー３３２５９０号公報などによって提案さ
れているが、繊維ウェブに表皮材を接着一体化したもの
は繊維ウェブの表面の毛羽立ちのために自動車用として
必要な接着強度を得ることが難しく、また、多量の接着
剤を使用した場合には接着剤により風合いが損なわれる
という問題点があり、更に、ワディング材自体の層間強
度が不足するという問題点もあった。また、このような
車輌シート用表面材を製造する場合、接着剤の塗布工程
や圧着工程などが不可欠で工程数が多くなりコスト高に
なるという問題点があった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような
従来の問題点を解決して、廃棄公害上或いはリサイクリ
ング上の問題があるうえに強度的にも問題のあるポリウ
レタンフォームを使用することなく繊維系のワディング
材を使用し、しかも、車輌用シート表面材として必要な
表皮材との十分な接着強度を有しているうえに、優れた
風合いを確保することができ、また、ワディング材自体
の層間強度も十分確保することができ、更には生産コス
トも極めて安価な車輌シート用表面材と、このような車
輌シート用表面材を少ない工程数でかつ安価に量産でき
る車輌シート用表面材の製造法を提供することを目的と
して完成されたものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するた
めになされた本発明は、高融点繊維フィラメントからな
る高融点ウェブ裏層と低融点繊維フィラメントからなる
低融点ウェブ表層とが表面側からの針刺加工により絡合
一体化されて表面が凹凸面とされているワディング材の
表面に添わせた表皮材がヒートセット処理により溶融状
態とされた前記凹凸面の無数の凸部を点状接着部として
ワディング材の表面に接着一体化されていることを特徴
とする車輌シート用表面材と、高融点繊維フィラメント
からなる高融点ウェブ裏層と低融点繊維フィラメントか
らなる低融点ウェブ表層とを重ねて表側からの針刺加工
により両者を絡合一体化して表面を凹凸面とするワディ
ング材とし、次いで、このワディング材の表面に表皮材
を重ねたうえこのワディング材に対して高融点繊維フィ
ラメントは溶融されないが低融点繊維フィラメントのみ
は溶融されるヒートセット温度でヒートセット処理を行
なうことにより溶融状態とされた前記凹凸面の無数の凸
部を点状接着部としてワディング材の表面に表皮材を接
着一体化することを特徴とする車輌シート用表面材の製
造法とよりなるものである。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下に、図面を参照しつつ本発明
の好ましい実施の形態を示す。図面は本発明を自動車用
シートカバーに用いた場合を示すものであって、図中１
は、高融点繊維フィラメント３ａからなる高融点ウェブ
裏層３と、低融点繊維フィラメント４ａからなる低融点
ウェブ表層４とを積層一体化した２層構造からなる繊維
系のワディング材、２はその表面に接着一体化された表
皮材である。高融点ウェブ裏層３は融点が２００〜２４
０℃で２〜１３デニールの高融点繊維フィラメント３ａ
からなる目付量１００〜５００g/m²のものであり、一
方、低融点ウェブ表層４は融点が１００〜１６０℃で２
〜６デニールの全融タイプの低融点繊維フィラメント４
ａからなる目付量１０〜４０g/m²、好ましくは２０〜３
０g/m²のものである。

【０００７】ワディング材１は低融点ウェブ裏層４の表
側からペネ数を１０〜５０本程度とした針刺加工が施さ
れて高融点ウェブ裏層３を貫通して裏面側まで達する無
数のフィラメント束５を形成し、低融点繊維フィラメン
ト４ａが高融点繊維フィラメント３ａに絡合一体化され
るとともに表面は細かな凹凸状とされている。そして、
ヒートセット処理により低融点繊維フィラメントの無数
のフィラメント束５の高融点繊維フィラメントとの接触
部が溶融固化されて融着部６に形成され層間強度に優れ
たワディング材１となっており、更にまた前記凹凸面を
溶融状態として生じた無数の点状接着部５ａを介して表
皮材２がワディング材１に接着一体化してある。

【０００８】一方、繊維系のワディング材１の表面に接
着一体化されている表皮材２は、編地、織地、不織布な
どのファブリック表皮材その他廃棄公害上問題がないう
えに表皮材として必要なある程度の耐摩耗性と、ヒート
セット処理時における例えば熱風等の流通を妨げない程
度の通気性を備えたものであれば種類を問わない。

【０００９】次に、以上のような車輌シート用表面材の
製造法について説明する。先ず高融点繊維フィラメント
からなる高融点ウェブ裏層と低融点繊維フィラメントか
らなる低融点ウェブ表層とを重ねてニードルパンチ機に
より所定のペネ数となるよう表側からの針刺加工を施し
両者を絡合一体化すると表面は針の刺込みによる凹部な
どで細かな凹凸面とされる。次いで、このワディング材
の表面に表皮材を積層して、ワディング材の裏面側より
熱風式加熱機などで高融点繊維フィラメントが溶融され
ることのない低融点繊維フィラメントのヒートセット温
度、例えば１２０〜１８０℃（ポリエステル系繊維の場
合は１５０〜１６０℃）で若干加圧しつつヒートセット
処理を行うと、前記低融点ウェブ表層の細かな凹凸面が
溶融状態となってこの溶融状態とされた前記凹凸面の無
数の凸部が無数の点状接着部となるから、軽い加圧でこ
の点状接着部を介してワディング材の表面に表皮材が強
固に接着一体化されることとなる。また、ワディング材
自体もフィラメント束５の高融点繊維フィラメントとの
接触部において低融点繊維フィラメントが全融・凝縮し
て融着部６を形成し層間強度が高いものとなる。

【００１０】このような車輌シート用表面材は、自動車
のドアトリムや天井トリムの内張材やシートカバーとし
て従来のこの種車輌シート用表面材として使用した場
合、外観上は従来のこの種車輌シート用表面材と変わる
ことがないものであるが、褥材としてポリウレタンフォ
ームの代わりに用いられている繊維系のワディング材１
は表面側となる低融点繊維フィラメント４ａからなる低
融点ウェブ層４と裏面側となる高融点繊維フィラメント
３ａからなる高融点ウェブ層３とからなるものであっ
て、ベース層としてポリウレタンフォームを用いたもの
に比べても何等遜色のないボリューム感を発揮すること
となり、また、表面側からの針刺加工により無数のフィ
ラメント束５を形成して前記低融点繊維フィラメント４
ａが高融点繊維フィラメント３ａに絡合一体化されるこ
とによりヒートセット処理後に高融点繊維フィラメント
３ａが溶融した低融点繊維フィラメント４ａにしっかり
と固定されたものとなるため、フィラメントのほつれが
なくなり極めて強固な接着強度が得られることとなる。

【００１１】更に、ワディング材１に対する表皮材２の
接着を毛羽立ちの多い不織布構造のものに対する面接着
ではなく、溶融状態とされた前記凹凸面の無数の凸部を
無数の点状接着部とした点接着となるので、両者は十分
な接着強度をもって接着一体化されるうえに、無数の点
状接着部５ａにおける点接着であることによってどのよ
うな種類の表皮材２を用いてもその表皮材２のもつ伸縮
特性や風合いが接着により損なわれることがなく、また
表皮材２がワディング材１に対してある程度の自由度が
保たれた状態で接着一体化されることとなる。

【００１２】

【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明の車輌シート用表面材は廃棄公害上或いはリサイクリ
ング上の問題があるうえに強度的にも問題のあるポリウ
レタンフォームを使用することなく繊維系のワディング
材を使用し、しかも、車輌用シート表面材として必要な
表皮材との十分な接着強度を有しているうえに、優れた
風合いを確保することができ、また、ワディング材自体
の層間強度も十分確保することができ、更には生産コス
トも極めて安価な従来の車輌シート用表面材には見るこ
とのできない種々の利点を有するものであり、また車輌
シート用表面材の製造法はこのような車輌シート用表面
材を少ない工程数でかつ安価に量産できるものである。
よって本発明は従来の問題点を一掃した車輌シート用表
面材およびこれを安価に量産できる車輌シート用表面材
の製造法として、産業の発展に寄与するところは極めて
大である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の車輌シート用表面材の実施例を示す断
面図である。

【符号の説明】

１ ワディング材 ２ 表皮材 ３ 高融点ウェブ裏層 3a 高融点繊維フィラメント ４ 低融点ウェブ表層 4a 低融点繊維フィラメント ５ フィラメント束 5a 点状接着部 ６ 融着部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 荒川 勉 愛知県豊田市清水町５丁目１番地１ 高島 屋日発工業親和寮353号室

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 高融点繊維フィラメント(3a)からなる高
   融点ウェブ裏層(3) と低融点繊維フィラメント(4a)から
   なる低融点ウェブ表層(4) とが表面側からの針刺加工に
   より絡合一体化されて表面が凹凸面とされているワディ
   ング材(1) の表面に添わせた表皮材(2) がヒートセット
   処理により溶融状態とされた前記凹凸面の無数の凸部を
   点状接着部(5a)としてワディング材(1) の表面に接着一
   体化されていることを特徴とする車輌シート用表面材。
2. 【請求項２】 高融点ウェブ裏層(3) は、融点が２００
   〜２４０℃で２〜１３デニールの高融点繊維フィラメン
   ト(3a)からなる目付量１００〜５００g/m²のものであ
   り、低融点ウェブ表層(4) は、融点が１００〜１６０℃
   で２〜６デニールの全融タイプの低融点繊維フィラメン
   ト(4a)からなる目付量１０〜４０g/m²のものである請求
   項１に記載の車輌シート用表面材。
3. 【請求項３】 ワディング材(1) の裏面に表面側からの
   針刺加工により突出された低融点繊維フィラメントの無
   数のフィラメント束(5) の高融点繊維フィラメントとの
   接触部はヒートセット処理により溶融固化された融着部
   (6) に形成されている請求項１または２に記載の車輌シ
   ート用表面材。
4. 【請求項４】 高融点繊維フィラメントからなる高融点
   ウェブ裏層と低融点繊維フィラメントからなる低融点ウ
   ェブ表層とを重ねて表側からの針刺加工により両者を絡
   合一体化して表面を凹凸面とするワディング材とし、次
   いで、このワディング材の表面に表皮材を重ねたうえこ
   のワディング材に対して高融点繊維フィラメントは溶融
   されないが低融点繊維フィラメントのみは溶融されるヒ
   ートセット温度でヒートセット処理を行なうことにより
   溶融状態とされた前記凹凸面の無数の凸部を点状接着部
   としてワディング材の表面に表皮材を接着一体化するこ
   とを特徴とする車輌シート用表面材の製造法。