JP3159636B2 - 自動車内装用表面材 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のドアトリ
ムや天井、シートカバーなどの自動車の内装に用いる自
動車内装用表面材に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】この種自動車内装用表面材としては、実
開平１ー１０３４００号公報などに見られるように、ボ
リューム感とクッション性に優れたポリウレタンフォー
ムの表面に編地や織地などのファブリック表皮材をラミ
ネートした積層表皮材が多く用いられてきたが、この種
積層表皮材においてはポリウレタンフォームの強度が不
十分なため、必然的にファブリック表皮材として強度的
に優れた良質のものが使用されることとなってこれがコ
スト高となり、しかも、ポリウレタンフォームは廃棄公
害上或いはリサイクリング上の問題もある。

【０００３】このような問題を解決するため、最近では
廃棄公害上或いはリサイクリング上の問題があるうえに
強度的にも問題のあるポリウレタンフォームの代わりに
繊維ウェブをワディング材としてこれに表皮材を接着一
体化した自動車内装用表面材も実開平５ー１５８９９号
公報や特開平４ー３３２５９０号公報などによって提案
されているが、いずれも薄物用であるとともに繊維ウェ
ブに表皮材を接着一体化したものは、少量の接着剤によ
り表皮材を接着しようとすると繊維ウェブの表面の毛羽
立ちのために自動車用として必要な接着強度が得られ
ず、また多量の接着剤を使用するとこの接着剤により風
合いが損なわれるという問題があった。更には、厚物用
として繊維ウェブに高融点繊維フィラメントと低融点繊
維フィラメントを混合したものを用いることも試みられ
ているが、ヒートセット加工の際に低融点繊維フィラメ
ントの融着部分が熱変形してへたりが生じるという問題
点があった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明は上記のような
従来の問題点を解決して、廃棄公害上或いはリサイクリ
ング上の問題があるうえに強度的にも問題のあるポリウ
レタンフォームを使用することなく繊維系のワディング
材を使用し、しかも、自動車用として必要な表皮材との
接着強度を有しているうえに接着剤により風合いやクッ
ション性が損なわれることもなく、また熱変形によるへ
たりの発生も防止して優れた形状保持性を発揮すること
ができ、更には表皮材として低目付のファブリック表皮
材など強度的に問題のある表皮材を使用しても全体とし
て十分な強度を有している安価な自動車内装用表面材を
提供しようとすることにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】前記のような課題を解決
した本発明の自動車内装用表面材は、繊維ウェブ中間層
とスパンポンド型不織布よりなる表面層と繊維ウェブ裏
面層との積層物を針刺加工により絡合してその表面より
突出された繊維ウェブ裏面層の繊維フィラメントよりな
る無数の小隆起をヒートセット加工により溶融固化させ
たワディング材に表皮材を前記小突起の頂部において接
着一体化した自動車内装用表面材において、前記繊維ウ
ェヴ裏面層が繊維ウェヴ中間層に比べて融点が低く且つ
相溶性の悪い樹脂系フィラメントよりなるものとして繊
維ウェブ裏面層の繊維フィラメントが繊維ウェヴ中間層
の繊維フィラメントに接着されずに小隆起のみが表面層
に接着されていることを特徴とするものである。

【０００６】

【発明の実施の形態】以下に、図面を参照しつつ本発明
の好ましい実施の形態を示す。図中１はワディング材、
８は表皮材である。前記ワディング材１は繊維ウェブ中
間層２とスパンポンド型不織布よりなる表面層４と繊維
ウェブ裏面層３との積層物を針刺加工により絡合してそ
の表面より突出された繊維ウェブ裏面層３の繊維フィラ
メントよりなる無数の小隆起６をヒートセット加工によ
り溶融固化させたものである。なお、前記した繊維ウェ
ブ中間層２は、例えば、融点が２２０〜２４０℃で６〜
１３デニール程度のポリエステル繊維などの高融点繊維
フィラメントよりなる厚みが約１０mmの厚手のものであ
るのに対し、繊維ウェブ裏面層３は融点が１００〜１７
０℃で２〜４デニールと前記繊維ウェブ中間層２の高融
点繊維フィラメントより融点が低いうえにかなり細く、
しかも、ポリエステル繊維などの高融点繊維フィラメン
トに対する相溶性に乏しいポリプロピレン繊維などの樹
脂系の低融点繊維フィラメントよりなるものであり、ま
た、表面層４は融点が１６０〜１７０℃程度と前記繊維
ウェブ中間層２の高融点繊維フィラメントより融点が低
いうえにポリエステル繊維などの高融点繊維フィラメン
トに対する相溶性に乏しいが、繊維ウェブ裏面層３の低
融点繊維フィラメントに対する相溶性はあるポリプロピ
レン繊維やポリアミド系繊維などの樹脂系繊維からなる
高強度で耐摩耗性のスパンポンド型不織布である。

【０００７】更に、前記ワディング材１はペネ数が５〜
３０本程度の針刺加工により絡合一体化されて多数のフ
ィラメント束５を形成したうえ、繊維ウェブ裏面層３の
低融点繊維フィラメントの一部を表面層４の表面より無
数の小隆起６として突出させられたうえこの小隆起６を
例えば１３０〜２００℃の低温度域で加圧しながら行う
ヒートセット加工によって先端部を釘頭状に押しつぶし
た状態の点状硬化面６ａとして部分的に融着させたもの
とされている。そして、点状硬化面６ａの頂部に接着剤
を介し点状接着部７として表皮材８がワディング材１の
表面に接着一体化されている。

【０００８】従って、ワディング材１は繊維ウェブ中間
層２と繊維ウェブ裏面層３と表面層４とが針刺加工によ
り絡合一体化されて十分な厚みを確保しているととも
に、層間剥離もなく優れたクッション性を奏することと
なる。また、ヒートセット加工処理後においても、繊維
ウェブ中間層２の高融点繊維フィラメントとフィラメン
ト束５を構成する繊維ウェブ裏面層３の低融点繊維フィ
ラメントとが相溶してヒートセット加工時に接着される
ことがないため、融着部分の変形によるへたりの発生が
防止されることとなり、また、前記フィラメント束５の
橋架構造により形状保持性に優れたワディング材１とな
るとともに、層間剥離の発生も十分に抑制することがで
きる。なお、図２に示されるように、繊維ウェブ裏面層
３の低融点繊維フィラメントを高融点の芯材１０ａの表
面に低融点の鞘材１０ｂを被覆した芯鞘繊維からなるも
のとしておけば、高融点の芯材１０ａの存在によってよ
り強固な橋架構造が得られることとなり好ましい。

【０００９】次に、ワディング材１の表面に接着一体化
されている表皮材８としては、編地、織地、不織布など
のファブリック表皮材その他廃棄公害上問題がないうえ
に表皮材として必要なある程度の耐摩耗性を備えたもの
であれば種類を問わないが、強度的理由で従来は単独で
はあまり使用されることのない質量が２３０〜３６０ｇ
／m²程度の低目付のファブリック表皮材を使用しても前
記したスパンポンド型不織布よりなる表面層４の補強に
より縦、横、バイアス方向共所要の強度が得られるの
で、コスト面を考慮すればこのような低目付のファブリ
ック表皮材が使用できる。

【００１０】また、ワディング材１と表皮材８とを接着
する接着剤は、ワディング材１の表面層４に突出した点
状硬化面６ａと表皮材８とを十分な接着強度で接着する
ものであればその種類は特に限定されるものではない
が、作業環境上の問題を考慮すれば、アクリルー酢酸ビ
ニル共重合物のエマルジョンなどの水溶性接着剤を用い
ることが好ましい。そして、この接着剤を用いてワディ
ング材１と表皮材８とは無数の点状接着部７において接
着一体化するものとし、その使用量は全面接着でないた
めに少なくてよい。

【００１１】このように構成されたものは、従来のこの
種自動車内装用表面材と同様、例えば、周知の手段によ
り任意の大きさに裁断したうえ縫製加工してシートカバ
ーとしてこれをパッド材に被覆した場合、外観上は従来
のこの種自動車内装用表面材と変わることがないもので
あるが、褥材としてポリウレタンフォームの代わりに用
いられている繊維系のワディング材１は、高融点繊維フ
ィラメントよりなる繊維ウェブ中間層２と、前記高融点
繊維フィラメントとは相溶性のない低融点繊維フィラメ
ントよりなる繊維ウェブ裏面層３と、同じく相溶性のな
いスパンポンド型不織布よりなる表面層４との積層体を
針刺加工により絡合一体化したものであって、ワディン
グ材主体２がポリウレタンフォームを用いたものに比べ
ても何等遜色のないボリューム感とクッション性を発揮
することとなる。

【００１２】しかも、ワディング材１のヒートセット加
工処理は１３０〜２００℃の低温度域で加圧しながら行
うものであり、しかも、繊維ウェブ中間層２の高融点繊
維フィラメントと繊維ウェブ裏面層３の低融点繊維フィ
ラメントとは相溶性がないものであるため、針刺加工に
よって形成したフィラメント束５がヒートセット加工時
に受ける熱により溶融されても繊維ウェブ中間層２の内
部において繊維ウェブ中間層２の高融点繊維フィラメン
トに接着することがなく、従って、へたりを生ずること
なく形状保持性に優れ、また、優れたクッション性と風
合いも確保できることとなる。

【００１３】また、このワディング材１に対する表皮材
８の接着は毛羽立ちの多いスパンポンド型不織布よりな
る表面層４に対する面接着ではなく、無数の小突起６の
頂部の点状接着部７における点接着であるから、両者は
十分な接着強度をもって接着一体化されるうえに表皮材
８がワディング材１に対してある程度の自由度が保たれ
た状態で一体化されることとなり、従って、表皮材８と
してどのような種類のものを用いてもその表皮材８のも
つ伸縮特性や風合いが接着により損なわれることがな
い。

【００１４】

【発明の効果】以上の説明からも明らかなように本発明
は、廃棄公害上或いはリサイクリング上の問題があるう
えに強度的にも問題のあるポリウレタンフォームを使用
することなく繊維系のワディング材を使用し、しかも、
自動車用として必要な表皮材との接着強度を有している
うえに接着剤により風合いやクッション性が損なわれる
こともなく、また、熱変形によるへたりの発生も防止し
て優れた形状保持性を発揮することができ、更には表皮
材として低目付のファブリック表皮材など強度的に問題
のある表皮材を使用しても全体として十分な強度を有し
ているものであるとともに、安価に生産することができ
るという利点も有するものである。従って、本発明は従
来のこの種自動車内装用表面材の問題点を解決したもの
で、大幅なコストダウンが可能となる利点と相俟ち業界
の発展に寄与するところ極めて大きいものがある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例を示す断面図である。

【図２】その他の実施例における低融点繊維フィラメン
トの拡大断面図である。

【符号の説明】

１ ワディング材 ２ 繊維ウェブ中間層 ３ 繊維ウェブ裏面層 ４ 表面層 ６ 小突起 ７ 点状接着部 ８ 表皮材 10a 高融点の芯材 10b 低融点の鞘材

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 繊維ウェブ中間層(2) とスパンポンド型
   不織布よりなる表面層(4) と繊維ウェブ裏面層(3) との
   積層物を針刺加工により絡合してその表面より突出され
   た繊維ウェヴ裏面層(3) の繊維フィラメントよりなる無
   数の小隆起(6)をヒートセット加工により溶融固化させ
   たワディング材(1) に対して表皮材(8)を前記小突起の
   頂部において接着一体化した自動車内装用表面材におい
   て、前記繊維ウェヴ裏面層(3) が繊維ウェヴ中間層(2)
   に比べて融点が低く且つ相溶性の悪い樹脂系フィラメン
   トよりなるものとして繊維ウェブ裏面層(3) の繊維フィ
   ラメントが繊維ウェブ中間層(2) の繊維フィラメントに
   接着されずに小隆起(6) のみが表面層(4) に接着されて
   いることを特徴とする自動車内装用表面材。
2. 【請求項２】 繊維ウェブ裏面層(3) の繊維フィラメン
   トが、高融点の芯材(10a) を低融点の鞘材(10b) で被覆
   した芯鞘繊維フィラメントである請求項１に記載の自動
   車内装用表面材。