JPH09157893A - 潤滑性および耐食性に優れた電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

潤滑性および耐食性に優れた電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法

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JPH09157893A
JPH09157893A JP31512595A JP31512595A JPH09157893A JP H09157893 A JPH09157893 A JP H09157893A JP 31512595 A JP31512595 A JP 31512595A JP 31512595 A JP31512595 A JP 31512595A JP H09157893 A JPH09157893 A JP H09157893A
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chromate
lubricity
steel sheet
corrosion resistance
water
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JP31512595A
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Seiji Nakajima
清次 中島
Kenji Takao
研治 高尾
Nobuo Totsuka
信夫 戸塚
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JFE Steel Corp
Original Assignee
Kawasaki Steel Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 潤滑性および耐食性の両者のいずれにも優れ
た電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼板およびその製造
方法の提供。 【解決手段】 鋼板表面の亜鉛または亜鉛合金めっきの
上層に、平均分子量が200 〜15000 、融点が50〜180
℃、酸価が0〜100mg −KOH/g 、平均粒子径が0.01〜20
μm である水分散性ワックス粒子とNi2+および/または
Co2+を含有するクロメート処理液を電解処理して得られ
たクロメート皮膜を有する潤滑性および耐食性に優れた
電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼板およびその製造方
法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑性および耐食
性に優れた電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼板および
その製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】クロメート処理亜鉛系めっき鋼板は、耐
食性や塗料密着性に優れるため、家電用途などの分野で
従来から用いられている。近年、クロメート処理亜鉛系
めっき鋼板の高機能化の要求が高まっており、耐食性や
塗料密着性以外に、耐指紋性、潤滑性などの機能が要求
されている。特に、クロメート処理亜鉛系めっき鋼板に
潤滑性が付与され、無塗油でプレス加工することができ
ると、脱脂工程の省略が可能となり、またプレス油の飛
散がなくなるため作業環境が改善されるなどの利点があ
る。
【0003】以下、従来技術について記す。 (A) クロメート皮膜の上層への潤滑剤配合樹脂の塗布:
潤滑性が付与されたクロメート処理亜鉛系めっき鋼板と
しては、例えば特開平5-161874号公報に開示されている
ように、クロメート皮膜の上層に、ポリエチレン微粉末
などの潤滑剤を配合した樹脂を塗布して焼き付けた鋼板
が一般的である。
【0004】このタイプの鋼板では、樹脂皮膜中に存在
する潤滑剤の作用により、皮膜表面の摩擦抵抗が減少
し、潤滑性が改善される。しかし、樹脂は潤滑剤と比較
して摩擦抵抗が大きい上に、樹脂皮膜は剥離や金型への
焼き付きなどを起こしやすく、樹脂の存在により潤滑性
がかえって劣化するという問題があった。また、樹脂皮
膜の焼き付けは通常 150℃以上の高温で行われるため、
ポリエチレン微粉末のような低融点の潤滑剤を用いた場
合、樹脂皮膜の焼き付け工程において潤滑剤が溶融、流
動し、樹脂皮膜からの潤滑剤の突出のない平滑な表面と
なってしまい、プレス加工時における潤滑性は不十分で
ある。
【0005】(B) 潤滑粒子含有クロメート処理液の塗
布、乾燥(塗布型クロメート):樹脂を用いずに潤滑性
を付与したクロメート処理亜鉛系めっき鋼板として、特
開平 6-93461号公報に、ワックスなどの潤滑粒子および
シリカを配合したクロメート処理液を鋼板に塗布、乾燥
することにより、耐食性、潤滑性、導電性に優れたクロ
メート処理亜鉛系めっき鋼板が得られることが開示され
ている。
【0006】この鋼板では、クロメート皮膜中に潤滑粒
子を分散させ、樹脂が存在しないため、特開平5-161874
号公報のような、樹脂の存在による潤滑性の劣化の問題
については改善されている。しかし、この鋼板の製造
は、潤滑粒子を配合したクロメート処理液を鋼板に塗布
後、 150℃の高温で乾燥してクロメート皮膜を形成する
ことにより行われるため、乾燥工程において潤滑粒子が
溶融、流動し、クロメート皮膜からの潤滑粒子の突出の
ない平滑な表面となってしまい、プレス加工時における
潤滑性は不十分であり改善の余地が残されていた。
【0007】このように、クロメート皮膜上に潤滑剤を
配合した樹脂を塗布、乾燥する方法、または、潤滑剤を
配合したクロメート処理液を塗布、乾燥する、いわゆる
塗布型クロメート処理による方法は、処理液の成分の自
由度が高く、皮膜成分の設計が自由に行えるという利点
を有する。しかし、樹脂皮膜またはクロメート皮膜を形
成するためには通常 150℃以上の高温での焼き付け乾燥
工程が必要であり、この工程で潤滑剤が溶融、流動し、
潤滑粒子の突出のない平滑な表面となってしまい、プレ
ス加工時における潤滑性はいずれも不十分である。
【0008】高温での焼き付け乾燥工程を必要としない
クロメート処理方法として、反応型クロメート処理、電
解クロメート処理がある。反応型クロメート処理は、ス
プレーまたは浸漬処理により亜鉛系めっき鋼板とクロメ
ート処理液とを反応させて亜鉛系めっきの上層にクロメ
ート皮膜を形成し、水洗、乾燥を行う方法である。しか
し、この方法では、化学反応によりクロメート皮膜を形
成するため、クロメート処理液の成分の自由度が低く、
クロメート皮膜に潤滑性を付与することは極めて困難で
ある。
【0009】電解クロメート処理は、クロメート処理液
中で亜鉛系めっき鋼板を陰極電解処理することによりク
ロメート皮膜を形成し、水洗、乾燥を行う方法である。
この方法では、電解反応によりクロメート皮膜を形成す
るため、塗布型クロメート処理と比較するとクロメート
処理液の成分の自由度が低く、クロメート皮膜の成分設
計を自由に行うことが困難である。
【0010】しかし、無機高分子化合物や有機高分子化
合物をクロメート処理液に添加して電解クロメート処理
を行うことにより、クロメート皮膜の性能を改善する方
法については検討されており、有機高分子化合物を使用
した例として、特公昭 52-3893号公報、特公平 4-30476
号公報、特開平 5-44094号公報、特開平 5-44095号公報
が開示されている。
【0011】(C) 水溶性樹脂含有処理液を用いた電解ク
ロメート:特公昭 52-3893号公報には、無水クロム酸、
金属イオン、フッ素イオンまたは塩素イオン、水溶性樹
脂、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含有する処
理液で金属を陰極電解処理することにより、耐食性、塗
料密着性に優れたクロメート皮膜が得られることが開示
されている。
【0012】この方法では、アクリルアマイド系などの
水溶性樹脂を使用することにより、塗料密着性がさらに
改善される。しかし、塗料密着性が改善されることから
もわかるように、これらの水溶性樹脂は親水性の官能基
密度が高いため、濡れ性および付着性が高く、このため
クロメート皮膜の耐食性、潤滑性はかえって劣化する。
【0013】また、水溶性樹脂は、クロメート処理液中
において分子オーダーで溶解しており、従って、クロメ
ート皮膜中にも分子オーダーで共析し、粒子状の突出の
ない平滑な表面となるため、この点からも潤滑性付与作
用はまったく示さない。 (D) 親水基を有する有機高分子化合物含有処理液による
電解クロメート:特公平 4-30476号公報には、Cr6+、Cr
3+、SO4 2- を含有する処理液に、2価以上の金属塩、無
機高分子化合物、有機高分子化合物などを添加し、この
処理液中で亜鉛系めっき鋼板を陰極電解処理することに
より耐食性に優れたクロメート皮膜が得られることが開
示されている。
【0014】この方法では、有機高分子化合物として、
カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基等の親水基
を有する水溶性、水分散性の高分子化合物、例えばポリ
アクリルアミドを使用するが、これらの有機高分子化合
物は、Cr3+とキレート結合してクロメート皮膜の耐食
性、密着加工性を付与する他、Cr6+を固定する作用を有
する。
【0015】しかし、これらの有機高分子化合物は、カ
ルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基等の親水基を
有するため、濡れ性および付着性が高く、このためクロ
メート皮膜の耐食性は不十分であり、潤滑性はかえって
劣化する。さらに、この方法では、SO4 2- を全Crに対し
て0.01〜 0.1含有する処理液を使用するが、このような
条件で電解クロメート処理を行った場合、クロメート皮
膜中に金属クロムが析出し、耐食性が劣化する。
【0016】(E) ポリエチレングリコール含有処理液に
よる電解クロメート:特開平 5-44094号公報には、C
r6+、Cr3+、Ni2+、シリカ、SO4 2- 、平均分子量が400
〜20000 のポリエチレングリコールを含有する処理液か
ら、亜鉛系めっき鋼板を陰極電解処理することにより、
耐食性、塗料密着性、耐指紋性、表面外観に優れたクロ
メート皮膜が得られることが開示されている。
【0017】この方法では、ポリエチレングリコールの
添加により均一な色調が付与される。しかし、ポリエチ
レングリコールは親水性の水酸基密度が極めて高い水溶
性有機高分子化合物であり、濡れ性および付着性が高い
ため、耐食性、潤滑性ともに劣る。また、ポリエチレン
グリコールは、クロメート処理液中において分子オーダ
ーで溶解しており、従ってクロメート皮膜中にも分子オ
ーダーで共析し、粒子状の突出のない平滑な表面となる
ため、この点からも潤滑性付与作用はまったく示さな
い。
【0018】(F) 水性アクリル系樹脂含有処理液による
電解クロメート:特開平 5-44095号公報には、Cr6+、Cr
3+、Ni2+、シリカ、SO4 2- 、水性アクリル系樹脂を含有
する処理液から、亜鉛系めっき鋼板を陰極電解処理する
ことにより、耐食性、塗料密着性、耐指紋性、表面外観
に優れたクロメート皮膜が得られることが開示されてい
る。
【0019】この方法では、ポリアクリル酸、ポリメタ
クリル酸、ポリアクリルアミド、アクリル樹脂エマルジ
ョンなどの水性アクリル系樹脂を使用することにより、
耐食性、耐指紋性、塗料密着性、表面外観、耐黒変性、
プレス成形性が改善される。しかし、これらの水性アク
リル系樹脂は、いずれもカルボキシル基、アミド基等の
親水性の官能基密度が高く、濡れ性および付着性が高い
ため、耐食性、潤滑性ともに不十分である。また、アク
リル系樹脂は柔軟性が低いためパウダリングを生じる場
合があり、このような場合には潤滑性はさらに劣化す
る。
【0020】上述のように、従来技術では、潤滑性およ
び耐食性の両者に優れたクロメート処理亜鉛系めっき鋼
板の製造方法は知られていなかった。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
問題点を解決した、潤滑性および耐食性の両者のいずれ
にも優れた電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼板および
その製造方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】以上述べたように、前記
(A) 、(B) の潤滑剤配合樹脂液または潤滑剤配合クロメ
ート処理液の塗布方法では、通常150 ℃以上の高温での
焼き付け乾燥工程が必須であり、潤滑粒子が溶融、流動
し、潤滑粒子の突出のない平滑な表面となるため、潤滑
性が不十分である。
【0023】また、前記(C) 、(D) 、(E) および(F) の
電解クロメート法の場合、親水性の官能基を有するた
め、いずれも濡れ性および付着性が高く、このためクロ
メート皮膜の耐食性、潤滑性に劣る。このため、本発明
者らは、高温での焼き付け乾燥工程を必要としない電解
クロメート処理により、潤滑性および耐食性の両者に優
れたクロメート処理亜鉛系めっき鋼板を達成すべく、鋭
意検討を行った。
【0024】その結果、潤滑性および耐食性を改善する
には、有機高分子化合物を添加したクロメート処理液を
用いて電解クロメート処理を行うことが有効であるが、
潤滑性および耐食性の改善効果は、有機化合物の種類や
性質により大きく異なることを知見した。まず、水溶性
の有機高分子化合物を添加した場合と、水分散性の有機
高分子化合物を添加した場合とでは、クロメート皮膜の
表面形状が異なり、このため潤滑性の改善効果に大きな
差異が見られる。
【0025】アクリル系樹脂を例にとると、水溶性アク
リル系樹脂と、水分散性のアクリル系樹脂エマルジョン
とでは、同じアクリル系樹脂であっても潤滑性改善効果
が異なる。すなわち、水溶性アクリル系樹脂は、一般に
分子量が数千〜2万程度であり、0.001 μm 以下の大き
さの分子オーダーで水に溶解している。
【0026】この水溶性アクリル系樹脂をクロメート処
理液に添加して電解クロメート処理を行うと、樹脂はク
ロメート皮膜中にも分子オーダーで共析するため平滑な
クロメート皮膜が得られ、潤滑性改善効果はほとんど見
られない。この現象は、他の水溶性樹脂を用いた場合に
も同様である。これに対して、水分散性のアクリル系樹
脂エマルジョンは、一般に10万以上の分子量を有する分
子が多数集まって0.1 〜1.0 μm 程度の粒子となって水
に分散しており、これを用いて電解クロメート処理を行
った場合、この粒子がクロメート皮膜に共析し、その一
部がクロメート皮膜表面から突出するため潤滑性改善効
果があらわれる。
【0027】しかし、水分散性のアクリル系樹脂エマル
ジョンを用いた場合の潤滑性改善効果は僅かであり、こ
の理由についてさらに詳細に検討したところ、以下の問
題点が判明した。第一の問題点は、アクリル系樹脂エマ
ルジョンを構成する樹脂の分子量が大きいことである。
一般に、有機高分子化合物は分子量が大きくなるほど、
流動性が小さくなり、加工性が劣化する。
【0028】本発明者らの検討によると、分子量の異な
るアクリル系樹脂エマルジョンを用いて電解クロメート
処理を行ったところ、分子量が大きいほど潤滑性改善効
果が小さく、分子量を小さくすると改善効果が増大し
た。しかし、エマルジョンを構成する樹脂の分子量は通
常10万以上であるため、潤滑性改善効果には限界がある
ことが判明した。
【0029】第二の問題点は、アクリル系樹脂の柔軟性
が低いことである。アクリル系樹脂は、有機高分子化合
物の中でも二次転移点(ガラス転移温度)が比較的高
く、「水性コーティングの最新技術」(p.52〜53, 19
90年,シーエムシー) によれば、例えば、ポリアクリル
酸の二次転移点は106 ℃、ポリメタクリル酸では130
℃、ポリアクリルアミドでは153 ℃であり、常温ではい
ずれも硬くて脆いガラス状態である。
【0030】このため、潤滑性改善効果が小さいばかり
でなく、加工時に樹脂がパウダリングを生じ、潤滑性を
かえって劣化させる場合もあることが判明した。第三の
問題点は、アクリル系樹脂が親水性の官能基に富むこと
である。アクリル系樹脂は、カルボキシル基、アミド
基、エステル基等の官能基をその分子内に豊富に有し、
これらいずれも強い水素結合性があるため、接着剤等の
分野においても利用されている。
【0031】しかし、電解クロメート処理によりクロメ
ート皮膜に共析させた場合には、これら親水性の官能基
の作用により、クロメート皮膜の濡れ性および付着性が
著しく増大し、耐食性および潤滑性に悪影響をおよぼす
ことが判明した。本発明者らは、これらの知見に基づい
て、さらに鋭意検討を行ったところ、特定の分子量、融
点、酸価、粒子径を有する水分散性ワックス粒子と、Ni
2+および/またはCo2+をクロメート処理液に添加して電
解クロメート処理を行うことにより、ワックス粒子がク
ロメート皮膜中に共析し、潤滑性および耐食性の両者に
優れたクロメート処理亜鉛系めっき鋼板の製造が可能で
あることを見い出した。
【0032】ワックスの基本構造は飽和脂肪族炭化水素
であり、水に不溶の有機化合物であるが、ワックス粒子
を水に分散させてエマルジョンとすることは可能であ
る。本発明者らの検討によると、この水分散性ワックス
粒子をクロメート処理液に添加して電解クロメート処理
を行うことにより、ワックス粒子がクロメート皮膜に共
析し、その一部がクロメート皮膜表面から突出すること
により潤滑性が著しく向上するのみならず、耐食性につ
いても著しく向上することが判明した。
【0033】また、アクリル系樹脂の場合と異なり、水
分散性ワックス粒子を構成するワックスの分子量とし
て、流動性が高く潤滑性改善効果の大きい、比較的低分
子量範囲のワックスを選定することが可能であり、これ
により潤滑性が著しく向上する。また、ワックスは、常
温において柔軟な性質を有し、さらに30〜 200℃の範囲
に融点を有する有機化合物である。このため、融点を特
定範囲とすることにより、プレス加工時にワックス粒子
の柔軟な性質がより効果的に発揮され、潤滑性が著しく
向上する。
【0034】さらに、ワックスは基本構造が飽和脂肪族
炭化水素であるため、親水性の官能基を有しないか、ま
たは有するとしても僅かである。このため、電解クロメ
ート処理によりワックス粒子がクロメート皮膜に共析す
ることにより、クロメート皮膜の濡れ性および付着性を
著しく減少させ、耐食性および潤滑性が著しく向上す
る。
【0035】本発明者らは、さらに、水分散性ワックス
粒子を効率的にクロメート皮膜に共析させ、潤滑性およ
び耐食性を効果的に発現させるために、クロメート処理
液の組成および処理条件について詳細な検討を行った。
その結果、ワックス粒子を共析させるためには、Ni2+
よび/またはCo2+を処理液中に添加することが必須であ
ることが判明した。
【0036】この理由は、電解クロメート処理により、
Cr3+およびCr6+を主体としたクロメート皮膜が形成され
るが、このとき同時にワックス粒子を吸着したNi2+およ
び/またはCo2+がCr6+と結合する形でクロメート皮膜中
に取り込まれるためである。このためには、Cr3+/全Cr
の比を適正範囲に限定することも必要である。さらに、
クロメート皮膜を造膜するためには、SO4 2- の添加が必
須であるが、SO4 2- /全Crの比が小さい場合には、金属
クロムが生成して耐食性を劣化させるとともに、Cr6+
よびNi2+、Co2+にともなって析出するワックス粒子の共
析量が僅少となり潤滑性、耐食性が不十分であることが
判明した。
【0037】このため、SO4 2- /全Crの比を適正範囲と
することにより、金属クロムの生成を抑制し、潤滑性、
耐食性を向上させるために十分なワックス粒子共析量を
確保する必要がある。さらに、電解クロメート処理、水
洗後、乾燥を行うが、このとき鋼板の温度が150℃以上
またはワックスの融点以上に上昇すると潤滑性が急激に
劣化することも判明した。
【0038】これは、クロメート皮膜表面から突出する
形で共析したワックス粒子が溶融、流動して平滑な表面
となるためである。このため、乾燥時の鋼板の温度は、
これより低い温度に限定する必要がある。本発明は、上
述の知見に基づいてなされたものである。すなわち、第
1の発明は、鋼板表面の亜鉛または亜鉛合金めっきの上
層に、平均分子量が200 〜15000 、融点が50〜180 ℃、
酸価が0〜100mg −KOH/g 、平均粒子径が0.01〜20μm
である水分散性ワックス粒子とNi2+および/またはCo2+
を含有するクロメート処理液を電解処理して得られたク
ロメート皮膜を有することを特徴とする潤滑性および耐
食性に優れた電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼板であ
る。
【0039】また、第2の発明は、少なくとも片面に亜
鉛または亜鉛合金めっきが施された亜鉛系めっき鋼板に
対し、(a) 全Cr量が1〜 100g/lであり、かつ、Cr3+
/全Cr(重量比)が0.01〜0.2 であるCr6+およびCr3+
(b) 0.1 〜50g/lのNi2+および/またはCo2+、(c) SO
4 2- /全Cr(重量比)が 0.1〜10であるSO4 2- 、(d) 平
均分子量が 200〜 15000、融点が50〜 180℃、酸価が 0
〜 100mg-KOH/g、平均粒子径が0.01〜20μm である、
10〜 200g/l(固形分換算)の水分散性ワックス粒
子、を含有し、pHが1〜5の範囲内であり、浴温が30〜
70℃の範囲内かつ水分散性ワックス粒子の融点未満であ
るクロメート処理液中において、電流密度を1〜50A/
dm2 として陰極電解処理を施すことによりクロメート皮
膜を形成した後、水洗し、引き続き鋼板の温度を 150℃
未満かつ水分散性ワックス粒子の融点未満に保ちながら
乾燥することを特徴とする潤滑性および耐食性に優れた
電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法であ
る。
【0040】また、前記第2の発明においては、前記ク
ロメート処理液は、さらに1〜 300g/l(固形分換
算)のシリカを含有してもよい。また、前記第2の発明
においては、前記クロメート処理液は、さらに 0.1〜20
g/lのPO4 3- を含有してもよい。なお、本発明におい
ては、クロメート皮膜中に本発明の目的を損なわない範
囲で、さらに不可避的不純物であるZn2+などが含有され
ていてもよい。
【0041】
【発明の実施の形態】以下、本発明についてさらに詳細
に説明する。本発明における亜鉛系めっき鋼板として
は、電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法などに
よってめっき皮膜が形成された亜鉛めっき鋼板、亜鉛合
金めっき鋼板などが使用される。
【0042】電気めっき法により製造した亜鉛系めっき
鋼板としては、電気亜鉛めっき鋼板、Ni、Co、Fe、
Cr、Mnなどから選ばれる1種または2種以上の元素を含
有する電気亜鉛合金めっき鋼板、前記亜鉛めっき層ま
たは亜鉛合金めっき層が、さらにシリカ、アルミナなど
から選ばれる1種または2種以上の無機化合物および/
または有機化合物を含有する電気亜鉛系分散めっき鋼板
などが挙げられる。
【0043】溶融めっき法により製造した亜鉛系めっき
鋼板としては、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛め
っき鋼板、溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板など
が挙げられ、前記めっき層中にはAl、Pb、Mn、Cr、Si、
Feなどから選ばれる1種または2種以上の元素を含有し
ていてもよい。本発明における亜鉛または亜鉛合金めっ
きは、鋼板の少なくとも一方の表面上に形成される。
【0044】亜鉛または亜鉛合金めっきの表面を清浄化
または活性化する必要がある場合には、電解クロメート
処理に先立ち、脱脂、酸洗、薬剤処理、研磨などの前処
理を行ってもよい。本発明では、亜鉛または亜鉛合金め
っきの上層に、電解クロメート処理によりクロメート皮
膜を形成する。
【0045】以下、本発明におけるクロメート処理液の
組成および処理条件の限定理由について説明する。 〔Cr6+およびCr3+:〕Cr6+およびCr3+は、電解クロメー
ト処理によりクロメート皮膜を形成するための基本成分
であり、形成されたクロメート皮膜のバリア効果と、Cr
6+の自己補修作用によりめっき鋼板の耐食性がさらに向
上する。
【0046】また、ワックス粒子を吸着したNi2+、Co2+
は、Cr6+と結合する形でクロメート皮膜中に取り込まれ
るため、Cr6+は、ワックス粒子を共析させ、潤滑性およ
び耐食性を向上させるためにも必須の成分である。さら
に、Cr3+は耐クロム溶出性を向上させ、かつクロメート
皮膜の黄色味を低減して美麗な外観とするために必須で
ある。
【0047】Cr6+の添加は、無水クロム酸、クロム酸ま
たは重クロム酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩
などを処理液中に添加することにより行われる。Cr3+
添加は、硫酸クロム、硝酸クロムなどのCr3+化合物を処
理液中に添加することにより行ってもよく、または処理
液中に存在するCr6+を還元剤により還元してもよい。還
元剤としては、アルコール類、ブドウ糖、デンプン、タ
ンニン酸などが例示される。
【0048】クロメート処理液中のCr6+およびCr3+を合
計した全Cr量は、 1〜 100g/lとする。 1g/l未満
では、陰極反応が水素発生主体となるため、クロム付着
量が僅少となり、潤滑性、耐食性が不十分である。 100
g/lを超えると、金属クロムが析出し、耐食性が劣化
する。より好ましくは、クロメート処理液中の全Cr量を
5〜50g/lとする。
【0049】クロメート処理液中のCr3+/全Cr(重量
比)は、0.01〜 0.2とする。0.01未満では、形成される
クロメート皮膜中のCr6+が過剰となり、耐クロム溶出性
が劣化し、これに伴いワックス粒子が溶出するため潤滑
性、耐食性が劣化する。0.2を超えると、クロメート皮
膜がCr3+主体となり、Cr6+およびNi2+、Co2+とともに共
析するワックス粒子の共析量が減少するため、潤滑性、
耐食性が劣化する。より好ましくは、クロメート処理液
中のCr3+/全Cr(重量比)を0.02〜 0.1とする。
【0050】〔Ni2+、Co2+:〕Ni2+、Co2+は、ワックス
粒子を吸着し、Cr6+と結合する形でクロメート皮膜中に
取り込まれるため、ワックス粒子をクロメート皮膜中に
共析させるための必須成分である。Ni2+および/または
Co2+の添加は、ニッケルイオン源としては硫酸ニッケ
ル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、硝酸ニッケルなど
を、コバルトイオン源としては硫酸コバルト、炭酸コバ
ルト、塩化コバルト、硝酸コバルトなどをクロメート処
理液中に添加することにより行われる。
【0051】クロメート処理液中のNi2+および/または
Co2+の含有量は、合計量で 0.1〜50g/lとする。 0.1
g/l未満では、ワックス粒子の共析量が僅少であり、
潤滑性、耐食性が不十分である。50g/lを超えると、
金属ニッケルの析出が主体となり、ワックス粒子の共析
量が減少するため、潤滑性、耐食性が劣化する。より好
ましくは、クロメート処理液中のNi2+および/またはCo
2+の含有量を合計量で0.5〜30g/lとする。
【0052】〔SO4 2- :〕SO4 2- は、クロメート皮膜を
造膜するために必須の成分である。SO4 2- の添加は、硫
酸または硫酸アンモニウム、硫酸ニッケル、硫酸コバル
トなどの硫酸塩化合物をクロメート処理液中に添加する
ことにより行われる。クロメート処理液中のSO4 2- /全
Cr(重量比)は、 0.1〜10とする。この範囲において、
耐食性を劣化させる金属クロムが生成せず、健全なクロ
メート皮膜が効率的に形成される。 0.1未満では、金属
クロムが生成し、耐食性が劣化する。
【0053】10を超えるとクロメート処理液の安定性が
劣化し、健全なクロメート皮膜が形成されないため、潤
滑性、耐食性が劣化する。より好ましくは、クロメート
処理液中のSO4 2- /全Cr(重量比)を、 0.2〜 5とす
る。 〔水分散性ワックス粒子:〕水分散性ワックス粒子は、
クロメート皮膜の潤滑性および耐食性を著しく向上させ
る作用を有する。ワックス粒子は、その一部がクロメー
ト皮膜から突出する形で共析することにより、潤滑性を
著しく向上させる。
【0054】本発明では、分子量を所定範囲として、流
動性が高いワックス粒子を使用することにより、潤滑性
をより向上させる。また、本発明では、融点を所定範囲
として、ワックス粒子の柔軟な性質を効果的に発揮させ
ることにより、潤滑性をより向上させる。さらに、本発
明では、親水性の官能基を有しないワックス粒子を使用
するか、または有するとしてもその官能基密度を低い値
に限定することにより、クロメート皮膜の濡れ性および
付着性を著しく減少させ、耐食性および潤滑性を著しく
向上させる。
【0055】本発明における水分散性ワックス粒子とし
ては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス
などの合成ポリオレフィンワックス、パラフィンワック
ス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックス
などのワックス粒子から選ばれた1種または2種以上が
好適に用いられる。これらワックス粒子のクロメート処
理液への添加は、ワックス粒子を予め水に分散させたワ
ックスエマルジョンをクロメート処理液に添加すること
により行うことが好ましい。
【0056】水分散性ワックス粒子の平均分子量は、 2
00〜 15000とする。 200未満では、ワックス粒子の流動
性が高すぎるため、ワックスがプレス加工時に金型に付
着するなどしてかえって潤滑性が劣化する。 15000を超
えると、ワックス粒子の流動性が低く、柔軟性が不十分
となるため潤滑性が劣化する。より好ましくは、水分散
性ワックス粒子の平均分子量を、 300〜 10000とする。
【0057】なお、本発明における前記平均分子量は、
粘度法により測定した粘度平均分子量である。水分散性
ワックス粒子の融点は、50〜 180℃とする。50℃未満で
は、ワックス粒子の流動性が高すぎるため、ワックスが
プレス加工時に金型に付着するなどしてかえって潤滑性
が劣化する。 180℃を超えると、ワックス粒子の流動性
が低く、柔軟性が不十分となるため潤滑性が劣化する。
より好ましくは、水分散性ワックス粒子の融点を、70〜
180℃とする。
【0058】また、水分散性ワックス粒子の二次転移点
(ガラス転移温度)は、特に限定するものではないが、
0℃以下であることが好ましい。ワックス粒子は、二次
転移点以下の温度では硬くて脆いガラス状態となり、そ
の柔軟な性質が失われる。ワックス粒子の二次転移点を
0℃以下とすることにより、プレス加工が行われる常温
においてワックス粒子がその柔軟な性質を効果的に発揮
し、潤滑性がより向上する。
【0059】水分散性ワックス粒子の酸価は、JIS K590
2 による測定において、 0〜 100mg-KOH/gとする。ワ
ックスの酸価は、親水性のカルボキシル基の密度を示す
指標であるが、上述のように、ワックスは、基本的に親
水性の官能基を有しないか、または有するとしても極め
て少ない構造であるため、濡れ性および付着性が低く、
潤滑性および耐食性に優れる。
【0060】一方、本発明で用いるワックス粒子は、ク
ロメート処理液に添加するにあたり、水分散性であるこ
とが必須であり、さらにCr6+、Cr3+、Ni2+および/また
はCo 2+、SO4 2- を含有するクロメート処理液中において
安定に分散していることが必要である。このため、処理
液の安定性を向上させる目的で、ワックスにカルボキシ
ル基などの親水性の官能基を少量付加してもよい。
【0061】親水性の官能基を付加する方法としては、
空気酸化などによるワックスの酸化、マレイン酸変性な
どの酸変性または親水性の官能基を有する有機樹脂をワ
ックスにグラフト重合する方法などによるワックスの変
性などが例示される。ただし、カルボキシル基などの親
水性の官能基密度が必要以上に高いと、潤滑性および耐
食性が劣化するため、本発明では、ワックス粒子の酸価
を 0〜 100mg-KOH/gに限定する。ワックス粒子の酸価
が低いほど潤滑性および耐食性が優れ、 100mg-KOH/g
を超えると潤滑性および耐食性が劣化する。より好まし
くは、水分散性ワックス粒子の酸価を、 0〜80mg-KOH/
gとする。
【0062】本発明では、ワックス粒子の酸価を低い値
に限定するため、クロメート処理液中のCr6+、Cr3+、Ni
2+および/またはCo2+、SO4 2- の含有量によっては処理
液の安定性が不良となる場合がある。このような場合に
は、界面活性剤を少量使用することにより処理液の安定
性を改善することができる。
【0063】界面活性剤としては、非イオン性界面活性
剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両
性界面活性剤、水溶性高分子化合物などを用いることが
できる。本発明の電解クロメート浴において界面活性剤
を用いる場合には、特に非イオン性界面活性剤、アニオ
ン性界面活性剤、水溶性高分子化合物が好適に用いられ
る。
【0064】非イオン性界面活性剤としては、例えば、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエ
チレンアルキルアリルエーテル系、高級アルコール系、
ポリアルキレングリコール系などが、アニオン性界面活
性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩系、ア
ルキルベンゼンスルホン酸塩系などが、水溶性高分子化
合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ
ビニルアルコールなどが挙げられる。
【0065】これらの界面活性剤を使用する場合には、
ワックス粒子の固形分重量 100重量部に対して、固形分
重量で 0.1〜20重量部の範囲で添加するのが好ましい。
0.1重量部未満では処理液の安定性を改善する効果がな
く、20重量部を超えると効果が飽和するばかりでなく、
かえって処理液の安定性を損なう場合がある。また、ク
ロメート処理液中に添加した界面活性剤の一部は、ワッ
クス粒子とともにクロメート皮膜中に共析し、さらにそ
の一部はクロメート処理後の水洗工程でも除去されずに
クロメート皮膜中に残留し、濡れ性および付着性を高く
して、潤滑性および耐食性を劣化させる場合があるの
で、界面活性剤の添加量は必要最小限とするのが好まし
い。
【0066】さらに、界面活性剤は、Cr6+を還元してCr
3+の比率を増大させたり、pHを上昇させる場合があるの
で、界面活性剤を使用する場合には、界面活性剤添加後
のCr 3+/全Cr(重量比)やpHが所定範囲内となるように
注意する必要がある。水分散性ワックス粒子の平均粒子
径は、0.01〜20μm とする。0.01μm 未満では、ワック
ス粒子がクロメート皮膜表面から突出する比率が減少
し、潤滑性、耐食性が不十分である。20μm を超える
と、ワックス粒子のクロメート皮膜からの脱落量が増大
し、潤滑性、耐食性が劣化する。より好ましくは、水分
散性ワックス粒子の平均粒子径を0.05〜10μm とする。
【0067】クロメート処理液中の水分散性ワックス粒
子の含有量は、10〜 200g/l(固形分換算)とする。
10g/l未満では、クロメート皮膜中へのワックス粒子
の共析量が僅少であり、潤滑性および耐食性が不十分で
ある。 200g/lを超えると、クロメート処理液の安定
性が劣化し、健全なクロメート皮膜が形成されないた
め、潤滑性、耐食性が劣化する。より好ましくは、クロ
メート処理液中の水分散性ワックス粒子の含有量を、10
〜 100g/l(固形分換算)とする。
【0068】〔シリカ:〕本発明では、耐食性をさらに
向上させるために、クロメート処理液中にシリカを添加
してもよい。シリカは、クロメート皮膜の耐食性を向上
させるだけでなく、耐指紋性を向上させる作用を有す
る。シリカとしては、水系のコロイダルシリカが好適に
使用され、例えば、日産化学工業(株)社製ST−2
0、ST−40、ST−O、ST−Cなどを用いること
ができる。
【0069】クロメート処理液中のシリカの含有量は、
1〜 300g/l(固形分換算)とすることが好ましい。
1g/l未満では、シリカ共析量が僅少であり、耐食性
および耐指紋性を向上させる効果が不十分である。300g
/1を超えると、クロメート処理液の安定性が劣化し、健
全なクロメート皮膜が形成されないため、潤滑性、耐食
性が劣化する。より好ましくは、クロメート処理液中の
シリカの含有量は、10〜 200g/l(固形分換算)とす
ることが好ましい。
【0070】シリカの平均粒子径は、特に限定するもの
ではないが、3 〜100nm とするのが好ましい。3nm 未満
では、シリカが凝集しクロメート処理液の安定性が劣化
する場合がある。100nm を超えると、耐食性を向上させ
る効果が不十分である。より好ましくは、シリカの平均
粒子径を3〜20nmとすることが好ましい。 〔PO4 3- : 〕本発明では、耐食性をさらに向上させるた
めに、クロメート処理液中にPO4 3-を添加してもよい。P
O4 3- は、クロメート皮膜の耐食性を向上させるだけで
なく、耐指紋性や耐クロム溶出性を向上させる作用を有
する。
【0071】PO4 3- の添加は、リン酸やその多量体、ま
たは第1リン酸アルカリ金属塩、第2リン酸アルカリ金
属塩、第3リン酸アルカリ金属塩などのリン酸塩をクロ
メート処理液中に添加することにより行われる。クロメ
ート処理液中のPO4 3- の含有量は、 0.1〜20g/lとす
ることが好ましい。 0.1g/l未満では、耐食性、耐指
紋性、耐クロム溶出性を向上させる効果が不十分であ
る。20g/lを超えると、クロメート処理液の安定性が
劣化し、健全なクロメート皮膜が形成されないため、潤
滑性、耐食性が劣化する。より好ましくは、クロメート
処理液中のPO4 3- の含有量は、 0.2〜10g/lとするこ
とが好ましい。
【0072】〔pH:〕クロメート処理液の安定性を保
ち、健全なクロメート皮膜を形成するために、本発明で
はクロメート処理液のpHを1〜5の範囲内とする。p
Hの調整は、高pHにする場合には、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物を添加
することにより行い、低pHにする場合には、硫酸を添
加するか、または無水クロム酸などを添加することによ
り行ってもよい。ただし、この場合にはSO4 2- やCr6+
度が所定範囲となるように注意する必要がある。
【0073】pHが1未満では、水分散性ワックス粒子
の分散が不安定になり、処理液の安定性が劣化し、健全
なクロメート皮膜が形成されないため、潤滑性、耐食性
が劣化する。pHが5を超えると、処理液中に水酸化ク
ロムの沈殿物が生成するなどして、処理液の安定性が劣
化し、健全なクロメート皮膜が形成されないため、潤滑
性、耐食性が劣化する。より好ましくは、クロメート処
理液のpHは2〜5とすることが好ましい。
【0074】なお、本発明におけるpHの調整法は特に
前記方法に限定されるものではない。 〔浴温:〕本発明におけるクロメート処理液の浴温は、
30〜70℃の範囲内かつ水分散性ワックス粒子の融点未満
とする。浴温が30℃未満では、クロメート皮膜の外観が
不良となる。浴温が70℃を超えると、水分散性ワックス
粒子の分散が不安定になり、処理液の安定性が劣化し、
健全なクロメート皮膜が形成されないため、潤滑性、耐
食性が劣化する。また、浴温が水分散性ワックス粒子の
融点以上であると、クロメート処理液中においてワック
ス粒子が溶融し、ワックス粒子がクロメート皮膜に共析
せず、潤滑性、耐食性が劣化する。
【0075】〔電流密度:〕本発明においては、電解ク
ロメート処理時の電流密度は1〜50A/dm2 とすること
が好ましい。1A/dm2 未満では、クロメート皮膜が形
成されず、50A/dm 2 を超えると水素発生が激しくな
り、やはりクロメート皮膜が形成されない。 〔乾燥温度:〕本発明では、電解クロメート処理により
クロメート皮膜を形成した後、水洗し、引き続き鋼板の
温度を 150℃未満かつ水分散性ワックス粒子の融点未満
に保ちながら乾燥を行う。ワックス粒子は、クロメート
皮膜から突出する形でクロメート皮膜に共析し、その付
着性が低く柔軟な性質により潤滑性を著しく向上させ
る。このようなクロメート皮膜の形状を保つために、乾
燥温度の管理が重要である。
【0076】本発明において、乾燥の目的は水洗により
付着した水分を除去することにあり、従って乾燥温度は
常温から 150℃未満の範囲の低い温度で十分である。鋼
板の温度が水分散性ワックス粒子の融点以上に上昇する
と、クロメート皮膜から突出する形で共析したワックス
粒子が溶融、流動して平滑な表面となるため、潤滑性が
劣化する。また、融点が 150℃以上の高融点のワックス
粒子を用いた場合でも、鋼板の温度が 150℃以上に上昇
すると、ワックス粒子が部分的に溶融、流動して平滑な
表面となるため、潤滑性が劣化する。
【0077】このため、鋼板の乾燥温度は 150℃未満か
つ水分散性ワックス粒子の融点未満に保つことが必要で
ある。より好ましくは、鋼板の温度を 100℃未満かつ水
分散性ワックス粒子の融点未満に保ちながら乾燥を行
う。
【0078】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説
明する。なお、本実施例中の平均分子量は粘度法により
測定した粘度平均分子量である。また、平均粒子径はコ
ールタ・カウンタ法による測定値を、融点はDSC法に
よる測定値を示す。
【0079】〔実施例1〕(本発明例1〜32、比較例1
〜33) 板厚 0.7mmの冷延鋼板(SPCC)に、付着量20g/m2
の電気亜鉛めっきを施した。水洗、乾燥後、この電気亜
鉛系めっき鋼板に対し、種々の浴組成、pH、浴温のク
ロメート処理液を用い、電流密度を変化させて陰極電解
処理を施すことによりクロメート皮膜を形成した。引き
続き水洗を行い、さらに鋼板の最高到達温度を変化させ
て乾燥を行った。
【0080】クロメート処理液の建浴に使用した薬剤
は、Cr6+源としては無水クロム酸または重クロム酸ナト
リウムを用い、Cr3+源としては40%硫酸クロム(III )
水溶液を添加するか、または還元剤のイソプロピルアル
コールを添加することによりCr 6+を還元してCr3+とし
た。Ni2+源としては硫酸ニッケルまたは塩化ニッケルを
用いた。
【0081】SO4 2+ 源としては硫酸または硫酸ニッケル
を用いた。水分散性ワックス粒子としては、平均分子
量、融点、酸価、平均粒子径の異なる、合成ポリエチレ
ンワックス、合成ポリプロピレンワックス、パラフィン
ワックス、マイクロクリスタリンワックスを水に分散し
たワックスエマルジョンを用いた。
【0082】なお、クロメート処理液をより安定化する
ために、必要に応じてポリオキシエチレンアルキルフェ
ニルエーテル系界面活性剤を添加した。また、比較樹脂
として、水分散性ワックスの代わりに、ポリアクリルア
ミド、アクリル樹脂エマルジョン、ポリエチレングリコ
ールを添加した処理液も用いた。
【0083】シリカを添加する場合には、コロイダルシ
リカ(日産化学工業(株)社製スノーテックス−40、ス
ノーテックス−O、スノーテックス−Cのいずれか)を
添加し、PO4 3- を添加する場合には、リン酸または第1
リン酸ナトリウムを添加した。表1に、クロメート処理
液の浴組成、pH、浴温、陰極電解処理時の電流密度、
乾燥時の鋼板の最高到達温度を示す。
【0084】また、得られたクロメート皮膜の潤滑性、
耐食性、耐クロム溶出性の試験結果を、表1に併せて示
す。なお、潤滑性、耐食性、耐クロム溶出性の試験方法
は下記のとおりである。潤滑性は、平面摺動試験により
摩擦抵抗を測定して判定した。すなわち、両面に電解ク
ロメート処理を行った無塗油の試料を、平面圧子(接触
長10mm)により、押さえ荷重(P)1kgf/mm2 で押さ
え、引き抜き速度500mm/min で50mm引き抜いたときの平
均引き抜き荷重(F)を測定し、摩擦係数μ(F/2
P)を算出した。判定は以下のとおりである。
【0085】 ◎:μ< 0.1 ○:0.1 ≦μ< 0.2 △:0.2 ≦μ< 0.3 ×:0.3 ≦μ 耐食性は、塩水噴霧試験(JIS Z2371 )による白錆発生
迄の時間(白錆発生時間)により評価した。判定は以下
のとおりである。
【0086】 ◎:白錆発生時間≧ 300時間 ○: 300時間>白錆発生時間≧ 200時間 △: 200時間>白錆発生時間≧ 100時間 ×: 100時間>白錆発生時間 耐クロム溶出性は、沸水試験(沸騰した純水中に試料を
30分浸漬)により行った。試験前後のCr付着量を測定
し、クロム固定率α(=試験後のCr付着量/試験前のCr
付着量×100 )を算出し、評価した。判定は以下のとお
りである。
【0087】 ◎:α≧80% ○:80%>α≧70% △:70%>α≧50% ×:50%>α 表1から明らかなように、本発明の電解クロメート処理
亜鉛系めっき鋼板は、いずれも潤滑性および耐食性の両
者に優れ、また、耐クロム溶出性も良好である。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】〔実施例2〕(本発明例33〜64、比較例34
〜66) 実施例1において、Ni2+源として硫酸ニッケルまたは塩
化ニッケルおよびSO4 2 - 源として硫酸または硫酸ニッケ
ルを用いる代わりに、Co2+源として硫酸コバルトまたは
塩化コバルトを用い、SO4 2- 源として硫酸または硫酸コ
バルトを用いた以外は実施例1と同様にして電解クロメ
ート処理亜鉛系めっき鋼板を製造した。
【0091】また、得られた鋼板に関して実施例1と同
様の方法で性能試験を行った。表2に、クロメート処理
液の浴組成、pH、浴温、陰極電解処理時の電流密度、
乾燥時の鋼板の最高到達温度を示す。また、得られたク
ロメート皮膜の潤滑性、耐食性、耐クロム溶出性の試験
結果を、表2に併せて示す。
【0092】表2から明らかなように、本発明の電解ク
ロメート処理亜鉛系めっき鋼板は、いずれも潤滑性およ
び耐食性の両者に優れ、また、耐クロム溶出性も良好で
ある。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】〔実施例3〕(本発明例65〜80、比較例67
〜82) 実施例1において、Ni2+源として硫酸ニッケルまたは塩
化ニッケルおよびSO4 2 - 源として硫酸または硫酸ニッケ
ルを用いる代わりに、Ni2+源として硫酸ニッケルおよび
Co2+源として硫酸コバルトの両者をクロメート処理液に
混合添加し、SO 4 2- 源として硫酸ニッケル、硫酸コバル
トおよび硫酸を用いた以外は実施例1と同様にして電解
クロメート処理亜鉛系めっき鋼板を製造した。
【0096】また、得られた鋼板に関して実施例1と同
様の方法で性能試験を行った。表3に、クロメート処理
液の浴組成、pH、浴温、陰極電解処理時の電流密度、
乾燥時の鋼板の最高到達温度を示す。また、得られたク
ロメート皮膜の潤滑性、耐食性、耐クロム溶出性の試験
結果を、表3に併せて示す。
【0097】表3から明らかなように、本発明の電解ク
ロメート処理亜鉛系めっき鋼板は、いずれも潤滑性およ
び耐食性の両者に優れ、また、耐クロム溶出性も良好で
ある。
【0098】
【表5】
【0099】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の電解クロ
メート処理亜鉛系めっき鋼板は、潤滑性および耐食性の
両者のいずれにも優れ、工業的に極めて価値の高いもの
である。また、本発明の製造方法によれば、亜鉛系めっ
き、クロメート処理のいずれをも電解処理で行うことが
可能となり、亜鉛系めっき、潤滑粒子含有クロメート皮
膜形成を、それぞれに対応する電解槽を直列に接続した
一式(一列)の簡易な設備で行うことが可能となり、イ
ンライン化すなわち同一ラインでの処理が可能となっ
た。
【0100】これに伴い、例えば塗布法による潤滑粒子
含有有機皮膜の形成または塗布型クロメートによる潤滑
粒子含有クロメート皮膜の形成における塗装コータ、焼
き付け炉が不要となり、さらにこれら従来法において電
気亜鉛系めっきライン、有機皮膜塗布ラインまたはクロ
メート塗布ラインの間で各々の処理のために必要であっ
た鋼帯(ストリップ)の切断、コイル化、コイルの運
搬、コイルの溶接が不要となるため、本発明の製造方法
により、潤滑性および耐食性の両者に優れた表面処理鋼
板が生産性に優れた方法で製造可能となった。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板表面の亜鉛または亜鉛合金めっきの
    上層に、平均分子量が200 〜15000 、融点が50〜180
    ℃、酸価が0〜100mg −KOH/g 、平均粒子径が0.01〜20
    μm である水分散性ワックス粒子とNi2+および/または
    Co2+を含有するクロメート処理液を電解処理して得られ
    たクロメート皮膜を有することを特徴とする潤滑性およ
    び耐食性に優れた電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼
    板。
  2. 【請求項2】 少なくとも片面に亜鉛または亜鉛合金め
    っきが施された亜鉛系めっき鋼板に対し、 (a) 全Cr量が1〜 100g/lであり、かつ、Cr3+/全Cr
    (重量比)が0.01〜0.2 であるCr6+およびCr3+、 (b) 0.1 〜50g/lのNi2+および/またはCo2+、 (c) SO4 2- /全Cr(重量比)が 0.1〜10であるSO4 2- 、 (d) 平均分子量が 200〜 15000、融点が50〜 180℃、酸
    価が0〜 100mg-KOH/g、平均粒子径が0.01〜20μm で
    ある、10〜 200g/l(固形分換算)の水分散性ワック
    ス粒子、を含有し、pHが1〜5の範囲内であり、浴温が
    30〜70℃の範囲内かつ水分散性ワックス粒子の融点未満
    であるクロメート処理液中において、電流密度を1〜50
    A/dm2 として陰極電解処理を施すことによりクロメー
    ト皮膜を形成した後、水洗し、引き続き鋼板の温度を 1
    50℃未満かつ水分散性ワックス粒子の融点未満に保ちな
    がら乾燥することを特徴とする潤滑性および耐食性に優
    れた電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 クロメート処理液が、さらに1〜 300g
    /l(固形分換算)のシリカを含有する請求項2記載の
    潤滑性および耐食性に優れた電解クロメート処理亜鉛系
    めっき鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 クロメート処理液が、さらに 0.1〜20g
    /lのPO4 3- を含有する請求項2または3記載の潤滑性
    および耐食性に優れた電解クロメート処理亜鉛系めっき
    鋼板の製造方法。
JP31512595A 1995-12-04 1995-12-04 潤滑性および耐食性に優れた電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法 Pending JPH09157893A (ja)

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JP31512595A JPH09157893A (ja) 1995-12-04 1995-12-04 潤滑性および耐食性に優れた電解クロメート処理亜鉛系めっき鋼板およびその製造方法

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100360536B1 (ko) * 1999-12-29 2002-11-13 대우종합기계 주식회사 경질 크롬 도금과 그 제조방법

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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