JP2004197143A - 亜鉛系めっき鋼板 - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供する。
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板は、鋼板の表面に亜鉛系めっき層が形成されている。亜鉛系めっき層の表面には、平均粒子径が3μm以下であり、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなり、MとしてNi,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.01〜20質量%含有する置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有し、且つ付着量が0.05〜2.0g/ m2 の固形潤滑皮膜を有する。
【選択図】 なし
【解決手段】亜鉛系めっき鋼板は、鋼板の表面に亜鉛系めっき層が形成されている。亜鉛系めっき層の表面には、平均粒子径が3μm以下であり、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなり、MとしてNi,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.01〜20質量%含有する置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有し、且つ付着量が0.05〜2.0g/ m2 の固形潤滑皮膜を有する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性に優れた亜鉛系めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融亜鉛めっき鋼板や電気亜鉛めっき鋼板のような亜鉛系めっき鋼板は、優れた耐食性を有することから、自動車、家電、建材等の分野において広くから使用されている。しかしながら、亜鉛系めっき鋼板は、冷延鋼板と比較するとプレス成形性に劣っているため、従来から、亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を改善する方法について種々の提案がなされている。
【0003】
先行技術文献としては、例えば、特許文献1には、亜鉛系めっき層の上層に鉄系の硬質めっきを施し、表面の硬度を上昇させることにより、めっきとダイスのかじりを防止する方法が提案されている。
また、特許文献2には、めっき層の表面にPやBの酸素酸塩と金属酸化物からなる皮膜を形成して、プレス成形における摺動性を改善し、これによりプレス成形性を改善する方法が提案されている。
【0004】
さらに、亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を改善する従来技術としては、特許文献1や特許文献2に開示された技術のほかに、浸漬や塗布などの方法によってリン酸亜鉛皮膜を亜鉛系めっき鋼板の上層に被覆したプレフォス処理鋼板と呼ばれる鋼板が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−192597号公報
【特許文献2】
特開平4−176878号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を改善する方法にあっては、以下の問題点があった。
即ち、特許文献1に開示された方法の場合、亜鉛系めっき層の上層に鉄系硬質めっきを施す必要があるが、この鉄系硬質めっきを施すとコスト高となるため、近年の自動車メーカーにおける材料コストダウン要求を満足しない。
【0007】
また、特許文献2に開示された方法の場合、プレス成形における摺動性は改善するものの、電着塗装後の耐食性の劣化を招くという問題があった。
これを具体的に説明すると、自動車の車体に使用される亜鉛系めっき鋼板の処理工程は、通常、プレス工程、溶接工程、アルカリ脱脂工程、化成処理工程、塗装工程のような順序で行われる。このうちのアルカリ脱脂工程では、自動車メーカーにおける各ラインによって種々の脱脂薬剤が使用されており、その使用条件、すなわち脱脂液の温度、浸漬時間、スプレー時間、pHなどの条件が様々である。また、亜鉛系めっき鋼板が同じラインを通過した場合でも、脱脂液が当たる部位と当たらない部位とが存在する。このため、亜鉛系めっき層の上層にアルカリ可溶性の皮膜が施されていたとしても、皮膜が完全に溶解することはなく、その一部又は大部分が残存するのが実情である。
【0008】
ここで、特許文献2に開示された方法の場合には、残存した皮膜成分が、後の化成処理工程で亜鉛系めっき鋼板の表面に形成される化成処理結晶の成分であるリン酸亜鉛四水和物(ホパイト:Zn3 (PO4 )2 ・4H2 O)とは全く異質の成分であるため、皮膜残存部においては、化成処理工程によって正常な形態を有しかつ均一で緻密な化成処理結晶が生成しない。その結果、特許文献2に開示された方法の場合には、電着塗装後の耐食性の劣化が招かれるのである。
【0009】
さらに、浸漬や塗布などの方法によってリン酸亜鉛皮膜を亜鉛系めっき鋼板の上層に被覆したプレフォス処理鋼板の場合も、電着塗装後の耐食性の劣化を招くという問題があった。
これを具体的に説明すると、プレフォス処理鋼板のリン酸亜鉛皮膜は、亜鉛めっき層との反応をともなって形成されるため、5μm〜10μm程度の粗大な鱗片状のリン酸亜鉛結晶で覆い尽くされており、アルカリ脱脂によってもほとんど溶解し難いものである。従って、自動車メーカーにおける化成処理工程においては、プレフォス処理鋼板のリン酸亜鉛皮膜の表面に新たな化成処理結晶はほとんど形成されない。このため、プレフォス処理鋼板のリン酸亜鉛皮膜の一部がたとえリン酸亜鉛四水和物であったとしても、その結晶サイズ、緻密性、配向性などが化成処理工程において形成される化成処理結晶とは大きく異なる。このため、電着塗装後の耐食性の著しい劣化を招くのである。また、近年では、自動車メーカーで化成処理工程で使用される化成処理剤は、電着塗装後の耐水2次密着性を向上させるために、ニッケルイオンやマンガンイオンなどの成分が適量配合されたものが主流となっている。このため、新たな化成処理結晶が形成されないことが、電着塗装後の耐食性の劣化のみならず、耐水2次密着性の著しい劣化をも招くのである。
【0010】
以上述べたように、従来においては、良好なプレス成形性を有し、かつ電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性に優れた亜鉛系めっき鋼板は知られていなかった。
従って、本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を改善する目的で、摺動性改善効果を有する固形潤滑皮膜について鋭意検討を行ってきた。その結果、亜鉛系めっき鋼板の摺動性を改善する固形潤滑皮膜について種々見出すことができた。
しかし、その一方で、ほとんどの固形潤滑皮膜がアルカリ脱脂後に残存し、正常な化成処理結晶が形成されず、結果的に電着塗装後の耐食性の劣化を招くことを知見した。
【0012】
そこで、本発明者らは、アルカリ脱脂液に対する溶解性の高い固形潤滑皮膜についての検討も行った。実際の自動車メーカーでのアルカリ脱脂処理を考慮した結果、即ち、種々のアルカリ脱脂薬剤について、脱脂液の温度、浸漬時間、スプレー時間、pHなどを変化させ、さらに脱脂液の当たる部位と当たらない部位に相当する条件について調査を行った結果、固形潤滑皮膜を完全に溶解することはほぼ不可能であることが判明した。この理由は、たとえ固形潤滑皮膜が亜鉛系めき層との反応によって形成されたものでなくとも、亜鉛系めっき層の凹部、あるいはプレス成形時に生じたクラック内に入り込んだ皮膜が完全には除去されないためと考えられる。
【0013】
次に、本発明者らは、自動車メーカーでの化成処理工程による化成処理結晶と同種の成分であるリン酸亜鉛を、固形潤滑皮膜として活用することに着目して検討を行った。その結果、従来技術として知られているプレフォス処理では、亜鉛めっき層との反応をともなって皮膜が形成されるため、5μm〜10μm程度の粗大なリン酸亜鉛結晶が亜鉛系めっき鋼板の表面を覆い尽くし、アルカリ脱脂後にもその粗大なリン酸亜鉛結晶が残存し、その後の化成処理において新たな化成処理結晶がほとんど形成されず、このため、電着塗装後の耐食性に劣ることを明らかにした。
【0014】
そこで、本発明者らは、リン酸亜鉛粒子を含有する処理液を、表面に亜鉛系めっき層が形成された亜鉛系めっき鋼板上に塗布、乾燥して皮膜を形成する方法について検討を行った。その結果、リン酸亜鉛粒子の構造や平均粒子径によって電着塗装後の耐食性が著しく異なることを新たに知見した。
すなわち、リン酸亜鉛には、リン酸亜鉛四水和物(ホパイト:Zn3 (PO4 )2 ・4H2 O)、リン酸亜鉛二水和物(Zn3 (PO4 )2 ・2H2 O)、リン酸亜鉛一水和物(Zn3 (PO4 )2 ・H2 O)、リン酸亜鉛無水物(Zn3 (PO4 )2 )の構造のものが存在し、摺動性改善効果についてはいずれの構造のものにも認められるが、リン酸亜鉛四水和物は電着塗装後の耐食性に悪影響を及ぼさないことを知見した。これは、リン酸亜鉛四水和物が、自動車メーカーでの化成処理工程で形成される化成処理結晶の成分と全く同質のものであるため、アルカリ脱脂後に残存したリン酸亜鉛四水和物がその後の化成処理反応における結晶核となり、結晶構造を継承した化成処理反応が進み、均一で緻密な化成処理結晶が形成されるためと考えられる。
【0015】
さらに、本発明者らは、電着塗装後の耐水2次密着性についても検討を行った。その結果、リン酸亜鉛四水和物粒子を含有する固形潤滑皮膜を形成した亜鉛系めっき鋼板では、電着塗装後の耐水2次密着性が不十分であり、電着塗膜の剥離が生じることを知見した。
そこで、本発明者らは、電着塗装後の耐水2次密着性を改善させるべく、固形潤滑皮膜に含有させるリン酸亜鉛四水和物粒子の構造を変化させることを検討した。その結果、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなり、MとしてNi,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.01〜20質量%含有する置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を固形潤滑皮膜に含有させることにより、電着塗装後の耐水2次密着性が著しく改善することを新たに知見し、本発明に至った。
【0016】
この理由は、亜鉛とはイオン半径が異なる金属が亜鉛と置換して結晶中に入り込むことにより結晶の配向性が変化し、具体的には、(020)面が減少し、(151)面が増大したものと考えられる。さらに、この粒子が、その後の化成処理反応における結晶核となり、結晶構造を継承した化成処理反応が進み、その結果、均一で緻密であり、かつ(020)面の比率が少なく、(151)面の比率が多い化成処理結晶が形成されるものと考えられる。一般に、(020)面の比率が少なく、(151)面の比率が多い化成処理結晶ほど、電着塗装後の耐水2次密着性が良好であると同時に、アルカリに対する溶解性も減少するために電着塗装後の耐食性も改善することが知られている。従って、固形潤滑皮膜に含有させるリン酸亜鉛四水和物粒子の構造を変化させて、前記置換型リン酸亜鉛四水和物粒子としたことにより、電着塗装後の耐水2次密着性が著しく改善し、さらには電着塗装後の耐食性をも改善することが可能となった。
【0017】
また、本発明者らは、前記置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径によっても電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が大きく異なり、平均粒子径が3μm以下の場合には、残存した粒子が結晶核として作用するため、均一で緻密であり、しかも配向性が良好な化成処理結晶が形成され、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が良好であるが、平均粒子径が3μmを超えると、結晶核としての作用が消失するため、緻密な化成処理結晶が形成されず、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が不良となることを知見した。
【0018】
以上の知見に基づき、良好な摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性を満足させるために、本発明は、鋼板の表面に亜鉛系めっき層が形成された亜鉛系めっき鋼板であって、前記亜鉛系めっき層の表面に、平均粒子径が3μm以下であり、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなり、MとしてNi,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.01〜20質量%含有する置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有し、且つ付着量が0.05〜2.0g/ m2 の固形潤滑皮膜を有することを特徴としている。
この亜鉛系めっき鋼板によれば、亜鉛系めっき鋼板の摩擦係数を小さく抑制できて摺動性が良好になると共に、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性を良好なものとすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態における亜鉛系めっき鋼板は、鋼板の表面に亜鉛系めっき層が形成されてあり、この亜鉛系めっき層の表面に固形潤滑皮膜を有している。
この固形潤滑皮膜は、平均粒子径が3μm以下であり、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなり、MとしてNi,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.01〜20質量%含有する置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有し、且つ付着量が0.05〜2.0g/ m2 で調整されている。
【0020】
ここで、前記置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有する固形潤滑皮膜としたのは、前述の通り、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子が摺動性を改善する効果のみならず、化成処理反応の結晶核となって電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性を改善する効果を有しているからである。なお、この固形潤滑皮膜は、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有すればよく、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を皮膜中に50質量%以上含有することが好ましい。置換型リン酸亜鉛四水和物粒子は、摺動性改善効果および化成処理反応の結晶核となって電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性を改善する効果を有しているため、皮膜中に50質量%以上含有することが好ましく、皮膜がすべて置換型リン酸亜鉛四水和物粒子から構成されていてもよい。
【0021】
前記置換型リン酸亜鉛四水和物粒子は、リン酸亜鉛四水和物粒子の亜鉛の一部が、亜鉛とはイオン半径が異なる元素によって置換された、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなるものである。また、Mとしては、Ni,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素であることが必要である。これらの、亜鉛とイオン半径が異なる金属が亜鉛と置換して結晶中に入り込むことにより、結晶の配向性が変化し、(020)面が減少し、(151)面が増大する。さらに、この粒子が、その後の化成処理反応における結晶核となり、結晶構造を継承した化成処理反応が進むため、均一で緻密であり、かつ(020)面の比率が少なく、(151)面の比率が多い化成処理結晶が形成される。この結果、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が良好となる。
【0022】
これらの亜鉛と置換する元素の含有量は、合計で0.01〜20質量%である。含有量の合計が0.01質量%未満では、化成処理結晶の配向性の変化が不十分であるため、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が改善しない。一方、含有量の合計が20質量%を超えると、化成処理結晶が元来形成されるべきリン酸亜鉛四水和物の構造を逸脱してしまうため、逆に電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が劣化する。
【0023】
固形潤滑皮膜中に含有される置換型リン酸亜鉛四水和物粒子以外の他の成分としては、何ら限定されるものではないが、例えば、摺動性改善効果を有する無機化合物や有機化合物、皮膜の成膜性及びめっき層との密着性を改善する効果を有する無機化合物や有機化合物、及び処理液の安定性を改善する効果を有する界面活性剤などの有機化合物などが例示される。
【0024】
また、平均粒子径が3μm以下の置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有することとしたのは、前述の通り、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径が3μm以下であれば、アルカリ脱脂後に残存した粒子が化成処理反応の結晶核として作用するため、均一で緻密であり、且つ配向性が良好な化成処理結晶が形成され、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性を良好にすることができるからである。一方、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径が3μmを超えると、結晶核としての作用が消失するため、緻密な化成処理結晶が形成されず、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が不良となる。また、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径の下限値については、摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性に悪影響を与えないため、特に規定されないが、0.001μm未満の粒子を製造する場合には大幅な製造コストの増加となるため、平均粒子径は0.001μm以上が好ましい。より好ましくは、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径は0.01〜3μmの範囲である。なお、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径の測定は、市販の粒子径分布測定装置を用いて行えばよく、例えば、レーザー回析・散乱式粒子径分布測定装置を用いることができる。このとき、粒子径が小さい側からの累積度数分布が50%のときの粒子径を平均粒子径とする。
【0025】
さらに、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有する固形潤滑皮膜の付着量を0.05〜2.0g/ m2 としたのは、前記付着量が0.05g/ m2 未満では摺動性の改善効果が不十分であり、その一方、前記付着量が2.0g/ m2 を超えると摺動性改善効果が飽和して製造コストの増加となるためである。前記付着量は、0.1〜2.0g/ m2 の範囲とすることがより好ましい。
【0026】
なお、本発明の実施形態における亜鉛系めっき鋼板の亜鉛系めっき層は、亜鉛を主成分とするめっき層であればよく、亜鉛系めっき鋼板として、例えば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、Al,Mg,Siなどを1種又は2種以上含有する溶融亜鉛系めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、Ni,Fe,Coなどを1種又は2種以上含有する電気亜鉛合金めっき鋼板などが例示される。
【0027】
次に、亜鉛系めっき鋼板の製造方法について説明すると、先ず、鋼板の表面に亜鉛系めっき処理を行う。その後、亜鉛系めっき処理により形成される亜鉛系めっき層の表面に、平均粒子径が3μm以下の置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有する処理液を、塗布・乾燥後の付着量が0.05〜2.0g/ m2 となる量を塗布した後、所定温度で加熱・乾燥させればよい。
【0028】
なお、亜鉛系めっき鋼板の製造方法は、亜鉛系めっき層の表面に、平均粒子径が3μm以下のリン酸亜鉛四水和物粒子を含有し、付着量が0.05〜2.0g/ m2 の固形潤滑皮膜を形成できるものであれば、これに限定されない。
また、処理液の塗布方法としては、ロールコーターを用いたり、またはスプレーや浸漬処理後にロール絞りを行う方法などが例示される。また、加熱・乾燥は、水分を蒸発させるのに必要な条件で行えばよく、例えば最高到達板温が60〜150℃となるように加熱・乾燥を行えばよい。
【0029】
【実施例】
本発明の効果を以下の実施例によって検証する。
素材である亜鉛系めっき鋼板として、板厚0.8mmの普通鋼を原板として合金化溶融亜鉛めっき(目付量:45g/ m2 、亜鉛めっき層組成 Fe含有率:10質量%、Al含有率:0.2質量%、残部:亜鉛)を形成した合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用い、次の条件でこの合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面(亜鉛系めっき層の表面)に固形潤滑皮膜を形成した。
【0030】
即ち、亜鉛系めっき層の表面に、置換元素の種類と含有量、および平均粒子径を変化させた置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を20質量%、およびノニオン系界面活性剤を0.3質量%含有した水分処理液を、ロールコーターを用いて、塗布し、乾燥温度80℃で乾燥した。
このようして形成した固形潤滑皮膜に含有される置換型リン酸亜鉛四水和物粒子中の置換元素の種類と含有量、平均粒子径および皮膜付着量を表1に示す。
【0031】
以上のように表面に固形潤滑皮膜を形成した亜鉛系めっき鋼板の摺動性、及び電着塗装後の耐食性を以下の方法により評価した。
摺動性は、無塗油状態で平面摺動試験(面圧:9.8MPa、摺動距離:100mm、摺動速度:10mm/ s)を行ったときの摩擦係数(μ)を測定し、以下の基準により評価した。
【0032】
◎:摩擦係数0.13未満
○:摩擦係数0.13以上0.15未満
×:摩擦係数0.15以上
電着塗装後の耐食性は、化成処理及び電着塗装を施した試験板について、塩水噴霧試験により評価した。ここで、化成処理工程は、アルカリ脱脂(日本パーカライジング株式会社製のFC−L4460を用い、温度43℃で、浸漬時間を120秒として行った)、水洗(室温で、スプレー時間を30秒として行った)、表面調整(日本パーカライジング株式会社製のPL−4040を用い、室温で、スプレー時間を30秒として行った)、化成処理(日本パーカライジング株式会社製のPB−L3020を用い、温度43℃で、浸漬時間を120秒として行った)、水洗(室温で、スプレー時間を30秒として行った)、及び熱風乾燥の手順で行った。また、化成処理を施した試験板の表面に、電着塗料として関西ペイント株式会社製のGT−10LFを用いて、クーロン制御により膜厚が20μmとなるように電着塗装を行い、175℃×25分の条件で焼き付け乾燥を行った。このようにして作製した試験板にクロスカットを入れ、塩水噴霧試験(JISZ 2371)を行った。塩水噴霧試験を600時間行った後の試験板について、以下のクロスカット部の電着塗膜のふくれの基準により電着塗装後の耐食性を評価した。
【0033】
◎:片側最大ふくれ幅4mm未満
○:片側最大ふくれ幅4mm以上5mm未満
×:片側最大ふくれ幅5mm以上
また、電着塗装後の耐水2次密着性は、前記と同じ方法により化成処理および電着塗装を施した試験板を、温度40℃の温水に480時間浸漬し、温水から取出した後、1mm角の碁盤目試験を行い、テープ剥離による電着塗膜の残存率から、以下の基準により評価した。
【0034】
◎:電着塗膜残存率100%
○:電着塗膜残存率90%以上100%未満
×:電着塗膜残存率90%未満
摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性の評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、本発明の要件を満たす実施例1〜28にあっては、いずれも摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性について良好な結果が得られている。
一方、置換元素の含有量が0質量%である比較例1にあっては、摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性が良好である。また、比較例2、3および4にあっては、摺動性について良好な結果が得られているが、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性について良好な結果が得られていない。さらに、比較例5にあっては、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性について良好な結果が得られているが、摺動性について良好な結果が得られていない。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る亜鉛系めっき鋼板は、亜鉛系めっき層の表面に、平均粒子径が3μm以下であり、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなり、MとしてNi,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.01〜20質量%含有する置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有し、且つ付着量が0.05〜2.0g/ m2 の固形潤滑皮膜を有するので、摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性に優れものであり、工業的に極めて価値の高いものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性に優れた亜鉛系めっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融亜鉛めっき鋼板や電気亜鉛めっき鋼板のような亜鉛系めっき鋼板は、優れた耐食性を有することから、自動車、家電、建材等の分野において広くから使用されている。しかしながら、亜鉛系めっき鋼板は、冷延鋼板と比較するとプレス成形性に劣っているため、従来から、亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を改善する方法について種々の提案がなされている。
【0003】
先行技術文献としては、例えば、特許文献1には、亜鉛系めっき層の上層に鉄系の硬質めっきを施し、表面の硬度を上昇させることにより、めっきとダイスのかじりを防止する方法が提案されている。
また、特許文献2には、めっき層の表面にPやBの酸素酸塩と金属酸化物からなる皮膜を形成して、プレス成形における摺動性を改善し、これによりプレス成形性を改善する方法が提案されている。
【0004】
さらに、亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を改善する従来技術としては、特許文献1や特許文献2に開示された技術のほかに、浸漬や塗布などの方法によってリン酸亜鉛皮膜を亜鉛系めっき鋼板の上層に被覆したプレフォス処理鋼板と呼ばれる鋼板が知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭62−192597号公報
【特許文献2】
特開平4−176878号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を改善する方法にあっては、以下の問題点があった。
即ち、特許文献1に開示された方法の場合、亜鉛系めっき層の上層に鉄系硬質めっきを施す必要があるが、この鉄系硬質めっきを施すとコスト高となるため、近年の自動車メーカーにおける材料コストダウン要求を満足しない。
【0007】
また、特許文献2に開示された方法の場合、プレス成形における摺動性は改善するものの、電着塗装後の耐食性の劣化を招くという問題があった。
これを具体的に説明すると、自動車の車体に使用される亜鉛系めっき鋼板の処理工程は、通常、プレス工程、溶接工程、アルカリ脱脂工程、化成処理工程、塗装工程のような順序で行われる。このうちのアルカリ脱脂工程では、自動車メーカーにおける各ラインによって種々の脱脂薬剤が使用されており、その使用条件、すなわち脱脂液の温度、浸漬時間、スプレー時間、pHなどの条件が様々である。また、亜鉛系めっき鋼板が同じラインを通過した場合でも、脱脂液が当たる部位と当たらない部位とが存在する。このため、亜鉛系めっき層の上層にアルカリ可溶性の皮膜が施されていたとしても、皮膜が完全に溶解することはなく、その一部又は大部分が残存するのが実情である。
【0008】
ここで、特許文献2に開示された方法の場合には、残存した皮膜成分が、後の化成処理工程で亜鉛系めっき鋼板の表面に形成される化成処理結晶の成分であるリン酸亜鉛四水和物(ホパイト:Zn3 (PO4 )2 ・4H2 O)とは全く異質の成分であるため、皮膜残存部においては、化成処理工程によって正常な形態を有しかつ均一で緻密な化成処理結晶が生成しない。その結果、特許文献2に開示された方法の場合には、電着塗装後の耐食性の劣化が招かれるのである。
【0009】
さらに、浸漬や塗布などの方法によってリン酸亜鉛皮膜を亜鉛系めっき鋼板の上層に被覆したプレフォス処理鋼板の場合も、電着塗装後の耐食性の劣化を招くという問題があった。
これを具体的に説明すると、プレフォス処理鋼板のリン酸亜鉛皮膜は、亜鉛めっき層との反応をともなって形成されるため、5μm〜10μm程度の粗大な鱗片状のリン酸亜鉛結晶で覆い尽くされており、アルカリ脱脂によってもほとんど溶解し難いものである。従って、自動車メーカーにおける化成処理工程においては、プレフォス処理鋼板のリン酸亜鉛皮膜の表面に新たな化成処理結晶はほとんど形成されない。このため、プレフォス処理鋼板のリン酸亜鉛皮膜の一部がたとえリン酸亜鉛四水和物であったとしても、その結晶サイズ、緻密性、配向性などが化成処理工程において形成される化成処理結晶とは大きく異なる。このため、電着塗装後の耐食性の著しい劣化を招くのである。また、近年では、自動車メーカーで化成処理工程で使用される化成処理剤は、電着塗装後の耐水2次密着性を向上させるために、ニッケルイオンやマンガンイオンなどの成分が適量配合されたものが主流となっている。このため、新たな化成処理結晶が形成されないことが、電着塗装後の耐食性の劣化のみならず、耐水2次密着性の著しい劣化をも招くのである。
【0010】
以上述べたように、従来においては、良好なプレス成形性を有し、かつ電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性に優れた亜鉛系めっき鋼板は知られていなかった。
従って、本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性に優れた亜鉛系めっき鋼板を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、亜鉛系めっき鋼板のプレス成形性を改善する目的で、摺動性改善効果を有する固形潤滑皮膜について鋭意検討を行ってきた。その結果、亜鉛系めっき鋼板の摺動性を改善する固形潤滑皮膜について種々見出すことができた。
しかし、その一方で、ほとんどの固形潤滑皮膜がアルカリ脱脂後に残存し、正常な化成処理結晶が形成されず、結果的に電着塗装後の耐食性の劣化を招くことを知見した。
【0012】
そこで、本発明者らは、アルカリ脱脂液に対する溶解性の高い固形潤滑皮膜についての検討も行った。実際の自動車メーカーでのアルカリ脱脂処理を考慮した結果、即ち、種々のアルカリ脱脂薬剤について、脱脂液の温度、浸漬時間、スプレー時間、pHなどを変化させ、さらに脱脂液の当たる部位と当たらない部位に相当する条件について調査を行った結果、固形潤滑皮膜を完全に溶解することはほぼ不可能であることが判明した。この理由は、たとえ固形潤滑皮膜が亜鉛系めき層との反応によって形成されたものでなくとも、亜鉛系めっき層の凹部、あるいはプレス成形時に生じたクラック内に入り込んだ皮膜が完全には除去されないためと考えられる。
【0013】
次に、本発明者らは、自動車メーカーでの化成処理工程による化成処理結晶と同種の成分であるリン酸亜鉛を、固形潤滑皮膜として活用することに着目して検討を行った。その結果、従来技術として知られているプレフォス処理では、亜鉛めっき層との反応をともなって皮膜が形成されるため、5μm〜10μm程度の粗大なリン酸亜鉛結晶が亜鉛系めっき鋼板の表面を覆い尽くし、アルカリ脱脂後にもその粗大なリン酸亜鉛結晶が残存し、その後の化成処理において新たな化成処理結晶がほとんど形成されず、このため、電着塗装後の耐食性に劣ることを明らかにした。
【0014】
そこで、本発明者らは、リン酸亜鉛粒子を含有する処理液を、表面に亜鉛系めっき層が形成された亜鉛系めっき鋼板上に塗布、乾燥して皮膜を形成する方法について検討を行った。その結果、リン酸亜鉛粒子の構造や平均粒子径によって電着塗装後の耐食性が著しく異なることを新たに知見した。
すなわち、リン酸亜鉛には、リン酸亜鉛四水和物(ホパイト:Zn3 (PO4 )2 ・4H2 O)、リン酸亜鉛二水和物(Zn3 (PO4 )2 ・2H2 O)、リン酸亜鉛一水和物(Zn3 (PO4 )2 ・H2 O)、リン酸亜鉛無水物(Zn3 (PO4 )2 )の構造のものが存在し、摺動性改善効果についてはいずれの構造のものにも認められるが、リン酸亜鉛四水和物は電着塗装後の耐食性に悪影響を及ぼさないことを知見した。これは、リン酸亜鉛四水和物が、自動車メーカーでの化成処理工程で形成される化成処理結晶の成分と全く同質のものであるため、アルカリ脱脂後に残存したリン酸亜鉛四水和物がその後の化成処理反応における結晶核となり、結晶構造を継承した化成処理反応が進み、均一で緻密な化成処理結晶が形成されるためと考えられる。
【0015】
さらに、本発明者らは、電着塗装後の耐水2次密着性についても検討を行った。その結果、リン酸亜鉛四水和物粒子を含有する固形潤滑皮膜を形成した亜鉛系めっき鋼板では、電着塗装後の耐水2次密着性が不十分であり、電着塗膜の剥離が生じることを知見した。
そこで、本発明者らは、電着塗装後の耐水2次密着性を改善させるべく、固形潤滑皮膜に含有させるリン酸亜鉛四水和物粒子の構造を変化させることを検討した。その結果、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなり、MとしてNi,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.01〜20質量%含有する置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を固形潤滑皮膜に含有させることにより、電着塗装後の耐水2次密着性が著しく改善することを新たに知見し、本発明に至った。
【0016】
この理由は、亜鉛とはイオン半径が異なる金属が亜鉛と置換して結晶中に入り込むことにより結晶の配向性が変化し、具体的には、(020)面が減少し、(151)面が増大したものと考えられる。さらに、この粒子が、その後の化成処理反応における結晶核となり、結晶構造を継承した化成処理反応が進み、その結果、均一で緻密であり、かつ(020)面の比率が少なく、(151)面の比率が多い化成処理結晶が形成されるものと考えられる。一般に、(020)面の比率が少なく、(151)面の比率が多い化成処理結晶ほど、電着塗装後の耐水2次密着性が良好であると同時に、アルカリに対する溶解性も減少するために電着塗装後の耐食性も改善することが知られている。従って、固形潤滑皮膜に含有させるリン酸亜鉛四水和物粒子の構造を変化させて、前記置換型リン酸亜鉛四水和物粒子としたことにより、電着塗装後の耐水2次密着性が著しく改善し、さらには電着塗装後の耐食性をも改善することが可能となった。
【0017】
また、本発明者らは、前記置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径によっても電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が大きく異なり、平均粒子径が3μm以下の場合には、残存した粒子が結晶核として作用するため、均一で緻密であり、しかも配向性が良好な化成処理結晶が形成され、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が良好であるが、平均粒子径が3μmを超えると、結晶核としての作用が消失するため、緻密な化成処理結晶が形成されず、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が不良となることを知見した。
【0018】
以上の知見に基づき、良好な摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性を満足させるために、本発明は、鋼板の表面に亜鉛系めっき層が形成された亜鉛系めっき鋼板であって、前記亜鉛系めっき層の表面に、平均粒子径が3μm以下であり、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなり、MとしてNi,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.01〜20質量%含有する置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有し、且つ付着量が0.05〜2.0g/ m2 の固形潤滑皮膜を有することを特徴としている。
この亜鉛系めっき鋼板によれば、亜鉛系めっき鋼板の摩擦係数を小さく抑制できて摺動性が良好になると共に、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性を良好なものとすることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態を説明する。
本発明の実施形態における亜鉛系めっき鋼板は、鋼板の表面に亜鉛系めっき層が形成されてあり、この亜鉛系めっき層の表面に固形潤滑皮膜を有している。
この固形潤滑皮膜は、平均粒子径が3μm以下であり、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなり、MとしてNi,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.01〜20質量%含有する置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有し、且つ付着量が0.05〜2.0g/ m2 で調整されている。
【0020】
ここで、前記置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有する固形潤滑皮膜としたのは、前述の通り、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子が摺動性を改善する効果のみならず、化成処理反応の結晶核となって電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性を改善する効果を有しているからである。なお、この固形潤滑皮膜は、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有すればよく、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を皮膜中に50質量%以上含有することが好ましい。置換型リン酸亜鉛四水和物粒子は、摺動性改善効果および化成処理反応の結晶核となって電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性を改善する効果を有しているため、皮膜中に50質量%以上含有することが好ましく、皮膜がすべて置換型リン酸亜鉛四水和物粒子から構成されていてもよい。
【0021】
前記置換型リン酸亜鉛四水和物粒子は、リン酸亜鉛四水和物粒子の亜鉛の一部が、亜鉛とはイオン半径が異なる元素によって置換された、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなるものである。また、Mとしては、Ni,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上の元素であることが必要である。これらの、亜鉛とイオン半径が異なる金属が亜鉛と置換して結晶中に入り込むことにより、結晶の配向性が変化し、(020)面が減少し、(151)面が増大する。さらに、この粒子が、その後の化成処理反応における結晶核となり、結晶構造を継承した化成処理反応が進むため、均一で緻密であり、かつ(020)面の比率が少なく、(151)面の比率が多い化成処理結晶が形成される。この結果、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が良好となる。
【0022】
これらの亜鉛と置換する元素の含有量は、合計で0.01〜20質量%である。含有量の合計が0.01質量%未満では、化成処理結晶の配向性の変化が不十分であるため、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が改善しない。一方、含有量の合計が20質量%を超えると、化成処理結晶が元来形成されるべきリン酸亜鉛四水和物の構造を逸脱してしまうため、逆に電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が劣化する。
【0023】
固形潤滑皮膜中に含有される置換型リン酸亜鉛四水和物粒子以外の他の成分としては、何ら限定されるものではないが、例えば、摺動性改善効果を有する無機化合物や有機化合物、皮膜の成膜性及びめっき層との密着性を改善する効果を有する無機化合物や有機化合物、及び処理液の安定性を改善する効果を有する界面活性剤などの有機化合物などが例示される。
【0024】
また、平均粒子径が3μm以下の置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有することとしたのは、前述の通り、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径が3μm以下であれば、アルカリ脱脂後に残存した粒子が化成処理反応の結晶核として作用するため、均一で緻密であり、且つ配向性が良好な化成処理結晶が形成され、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性を良好にすることができるからである。一方、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径が3μmを超えると、結晶核としての作用が消失するため、緻密な化成処理結晶が形成されず、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性が不良となる。また、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径の下限値については、摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性に悪影響を与えないため、特に規定されないが、0.001μm未満の粒子を製造する場合には大幅な製造コストの増加となるため、平均粒子径は0.001μm以上が好ましい。より好ましくは、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径は0.01〜3μmの範囲である。なお、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子の平均粒子径の測定は、市販の粒子径分布測定装置を用いて行えばよく、例えば、レーザー回析・散乱式粒子径分布測定装置を用いることができる。このとき、粒子径が小さい側からの累積度数分布が50%のときの粒子径を平均粒子径とする。
【0025】
さらに、置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有する固形潤滑皮膜の付着量を0.05〜2.0g/ m2 としたのは、前記付着量が0.05g/ m2 未満では摺動性の改善効果が不十分であり、その一方、前記付着量が2.0g/ m2 を超えると摺動性改善効果が飽和して製造コストの増加となるためである。前記付着量は、0.1〜2.0g/ m2 の範囲とすることがより好ましい。
【0026】
なお、本発明の実施形態における亜鉛系めっき鋼板の亜鉛系めっき層は、亜鉛を主成分とするめっき層であればよく、亜鉛系めっき鋼板として、例えば、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、Al,Mg,Siなどを1種又は2種以上含有する溶融亜鉛系めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、Ni,Fe,Coなどを1種又は2種以上含有する電気亜鉛合金めっき鋼板などが例示される。
【0027】
次に、亜鉛系めっき鋼板の製造方法について説明すると、先ず、鋼板の表面に亜鉛系めっき処理を行う。その後、亜鉛系めっき処理により形成される亜鉛系めっき層の表面に、平均粒子径が3μm以下の置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有する処理液を、塗布・乾燥後の付着量が0.05〜2.0g/ m2 となる量を塗布した後、所定温度で加熱・乾燥させればよい。
【0028】
なお、亜鉛系めっき鋼板の製造方法は、亜鉛系めっき層の表面に、平均粒子径が3μm以下のリン酸亜鉛四水和物粒子を含有し、付着量が0.05〜2.0g/ m2 の固形潤滑皮膜を形成できるものであれば、これに限定されない。
また、処理液の塗布方法としては、ロールコーターを用いたり、またはスプレーや浸漬処理後にロール絞りを行う方法などが例示される。また、加熱・乾燥は、水分を蒸発させるのに必要な条件で行えばよく、例えば最高到達板温が60〜150℃となるように加熱・乾燥を行えばよい。
【0029】
【実施例】
本発明の効果を以下の実施例によって検証する。
素材である亜鉛系めっき鋼板として、板厚0.8mmの普通鋼を原板として合金化溶融亜鉛めっき(目付量:45g/ m2 、亜鉛めっき層組成 Fe含有率:10質量%、Al含有率:0.2質量%、残部:亜鉛)を形成した合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用い、次の条件でこの合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面(亜鉛系めっき層の表面)に固形潤滑皮膜を形成した。
【0030】
即ち、亜鉛系めっき層の表面に、置換元素の種類と含有量、および平均粒子径を変化させた置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を20質量%、およびノニオン系界面活性剤を0.3質量%含有した水分処理液を、ロールコーターを用いて、塗布し、乾燥温度80℃で乾燥した。
このようして形成した固形潤滑皮膜に含有される置換型リン酸亜鉛四水和物粒子中の置換元素の種類と含有量、平均粒子径および皮膜付着量を表1に示す。
【0031】
以上のように表面に固形潤滑皮膜を形成した亜鉛系めっき鋼板の摺動性、及び電着塗装後の耐食性を以下の方法により評価した。
摺動性は、無塗油状態で平面摺動試験(面圧:9.8MPa、摺動距離:100mm、摺動速度:10mm/ s)を行ったときの摩擦係数(μ)を測定し、以下の基準により評価した。
【0032】
◎:摩擦係数0.13未満
○:摩擦係数0.13以上0.15未満
×:摩擦係数0.15以上
電着塗装後の耐食性は、化成処理及び電着塗装を施した試験板について、塩水噴霧試験により評価した。ここで、化成処理工程は、アルカリ脱脂(日本パーカライジング株式会社製のFC−L4460を用い、温度43℃で、浸漬時間を120秒として行った)、水洗(室温で、スプレー時間を30秒として行った)、表面調整(日本パーカライジング株式会社製のPL−4040を用い、室温で、スプレー時間を30秒として行った)、化成処理(日本パーカライジング株式会社製のPB−L3020を用い、温度43℃で、浸漬時間を120秒として行った)、水洗(室温で、スプレー時間を30秒として行った)、及び熱風乾燥の手順で行った。また、化成処理を施した試験板の表面に、電着塗料として関西ペイント株式会社製のGT−10LFを用いて、クーロン制御により膜厚が20μmとなるように電着塗装を行い、175℃×25分の条件で焼き付け乾燥を行った。このようにして作製した試験板にクロスカットを入れ、塩水噴霧試験(JISZ 2371)を行った。塩水噴霧試験を600時間行った後の試験板について、以下のクロスカット部の電着塗膜のふくれの基準により電着塗装後の耐食性を評価した。
【0033】
◎:片側最大ふくれ幅4mm未満
○:片側最大ふくれ幅4mm以上5mm未満
×:片側最大ふくれ幅5mm以上
また、電着塗装後の耐水2次密着性は、前記と同じ方法により化成処理および電着塗装を施した試験板を、温度40℃の温水に480時間浸漬し、温水から取出した後、1mm角の碁盤目試験を行い、テープ剥離による電着塗膜の残存率から、以下の基準により評価した。
【0034】
◎:電着塗膜残存率100%
○:電着塗膜残存率90%以上100%未満
×:電着塗膜残存率90%未満
摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性の評価結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、本発明の要件を満たす実施例1〜28にあっては、いずれも摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性について良好な結果が得られている。
一方、置換元素の含有量が0質量%である比較例1にあっては、摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性が良好である。また、比較例2、3および4にあっては、摺動性について良好な結果が得られているが、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性について良好な結果が得られていない。さらに、比較例5にあっては、電着塗装後の耐食性および耐水2次密着性について良好な結果が得られているが、摺動性について良好な結果が得られていない。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る亜鉛系めっき鋼板は、亜鉛系めっき層の表面に、平均粒子径が3μm以下であり、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなり、MとしてNi,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.01〜20質量%含有する置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有し、且つ付着量が0.05〜2.0g/ m2 の固形潤滑皮膜を有するので、摺動性および電着塗装後の耐食性ならびに耐水2次密着性に優れものであり、工業的に極めて価値の高いものである。
Claims (1)
- 鋼板の表面に亜鉛系めっき層が形成された亜鉛系めっき鋼板であって、
前記亜鉛系めっき層の表面に、平均粒子径が3μm以下であり、Zn(3-X)MX(PO4)2・4H2Oの構造式からなり、MとしてNi,Mn,Co,Fe,Ca,Mg,V,W,Al,Ti,Sn,Moからなる群から選ばれた1種又は2種以上を合計で0.01〜20質量%含有する置換型リン酸亜鉛四水和物粒子を含有し、且つ付着量が0.05〜2.0g/ m2 の固形潤滑皮膜を有することを特徴とする亜鉛系めっき鋼板。
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