JP3882586B2 - 耐食性、成形性に優れた表面処理鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に自動車車体に用いる耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車車体用途の鋼板において、耐食性と加工性の要求がますます厳しくなってきている。特に耐食性については、ドアヘム部とよばれる鋼板と鋼板のあわせ部分における孔食が問題であり、この部分においては通常塗装がつかないことから、鋼板裸での耐食性が要求されている。この耐食性の改善のため、20ないし30g/m2 の薄目付けのZn−Ni系合金めっきを施し、更にその上層にクロメート皮膜、有機皮膜を形成した鋼板が広く使用されている。このような鋼板は、耐食性、加工性とも十分な性能を持つが、上層に有機皮膜の絶縁層を持つがゆえに、電着塗装時にムラが発生し易く、均一な塗装外観が得られ難い問題がある。それに加えて、高価なニッケルを使用することや、有害な6価クロムを含むといった問題もある。また、めっき目付け量を増加した純亜鉛めっき鋼板や、亜鉛鉄めっき鋼板も使用されているが、一般にめっきの目付けを増加させれば耐食性の向上ともに加工性が悪化するため、両性能とも高度にバランスさせることは極めて困難である。
【0003】
特公平3−28509号公報では、亜鉛めっきの上にマグネシウムめっきを施した高耐食性めっき鋼板が、また特開平2−254178号公報においては、亜鉛めっきの上にマグネシウム金属及びその酸化物からなる複合皮膜を有する高耐食性めっき鋼板が、それぞれ示されている。これら鋼板は、耐食性が良好であるため、目付量の低減も可能であり、加工性についてもある程度の改善は見られるが、不十分である。
【0004】
これを改善するために例えば、特開平12−315386号公報においてはMgを必須成分とする非晶質無機系をリン酸亜鉛系皮膜上に塗布し、ポロシティーを被覆することにより、耐食性およびめっき層のフレーキングを向上させた技術が開示されている。しかしながら、このような無機系皮膜では、耐食性の向上効果は認められるものの、連続プレス成形においては無機系皮膜自体が破壊されて剥離し(耐パウダリングに劣る)、金型に堆積するため成形性が劣り、更に成形した鋼板表面に傷がつくなどの問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、上記欠点を解決し、耐食性、成形性を高度にバランスし、かつその他の主に自動車車体用鋼板に求められる基本特性を満足しためっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の構成からなることを特徴とする。
【0007】
(I) 亜鉛系めっき鋼板の表面に複合皮膜形成用処理液を塗布し、直後に板温90〜150℃の範囲で焼き付け、空冷して該鋼板の表面に複合皮膜を0.1〜2.0g/m2形成してなる表面処理鋼板であって、該複合皮膜が、下記(1)を含有することを特徴とする耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板。
【0008】
(1)P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液を用いて形成され、酸性水溶液に可溶で、中性またはアルカリ性水溶液に難溶で、かつMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分。
【0009】
(II) リン酸亜鉛系化成処理が施された亜鉛系めっき鋼板の表面に、複合皮膜形成用処理液を塗布し、直後に板温90〜150℃の範囲で焼き付け、空冷して該鋼板表面にリン酸亜鉛系皮膜を介して複合皮膜を形成してなる表面処理鋼板であって、該複合皮膜の皮膜量が0.1g/m2以上、且つ該複合皮膜と下層のリン酸亜鉛系皮膜との合計皮膜量が2.0g/m2以下であり、さらに該複合皮膜が下記(1)及び(2)を含有することを特徴とする、耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板。
【0010】
(1)P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液を用いて形成され、酸性水溶液に可溶で、中性またはアルカリ性水溶液に難溶で、かつMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分。
(2)前記非晶質無機系成分100質量部に対し1〜80質量部の範囲で含有される固体潤滑剤。
【0011】
(III) 前記複合皮膜が更に下記(2)を、前記非晶質無機系成分100質量部に対し含有することを特徴とする、(I)に記載の耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板。
【0012】
(2)固体潤滑剤 1〜80質量部
(IV) 前記複合被膜が更に下記(3)及び/又は(4)を、前記非晶質無機系成分100質量部に対し含有することを特徴とする、(II)又は(III)に記載の表面処理鋼板。
【0013】
(3)防錆添加剤 1〜100重量部
(4)水溶性または水分散性樹脂 1〜80重量部
(V) リン酸亜鉛系化成皮膜がNi、Mg、Mn、Ca、Co、Cuの1種または2種以上で変性されたリン酸亜鉛皮膜であることを特徴とする(II)又は(IV)に記載の表面処理鋼板。
【0014】
(VI) 非晶質無機系成分が、P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液由来成分以外に、リン酸、またはその塩、重リン酸、またはその塩、各種縮合リン酸、またはその塩、有機リン酸、またはその塩の中から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする(I)〜(V)のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
【0015】
(VII) 固体潤滑剤が、ポリエチレンワックス、4フッ化エチレン樹脂および窒化ホウ素の中から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする(II)〜(VI)のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
【0016】
(VIII) 固体潤滑剤の平均粒子径が、0.05〜25μmであることを特徴とする(II)〜(VII)のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
【0017】
(IX) ポリエチレンワックスの軟化点が、100〜135℃であることを特徴とする(VII)または(VIII)に記載の表面処理鋼板。
【0018】
(X) 防錆添加剤が、イオン交換シリカ、リン酸塩およびリンモリブデン酸塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(IV)〜(IX)のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
【0019】
(XI) 水溶性樹脂の重量平均分子量が2000以上であることを特徴とする(IV)〜(X)のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
【0020】
(XII) 水分散性樹脂の平均粒子径が200nm以下であることを特徴とする(IV)〜(X)のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
【0021】
(XIII) (I)に記載の表面処理鋼板を製造するに際し、清浄な表面を持つ、亜鉛系めっき鋼板、または亜鉛系めっき鋼板の表面に化成皮膜を施した鋼板の表面上に、P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液を塗布して、直後に板温90〜150℃で焼付け、空冷することにより、前記複合皮膜を形成することを特徴とする、耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
【0022】
(XIV) (II)又は(III)に記載の表面処理鋼板を製造するに際し、清浄な表面を持つ、亜鉛系めっき鋼板、または亜鉛系めっき鋼板の表面に化成皮膜を施した鋼板の表面上に、P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液に固体潤滑剤を添加してなる処理液を塗布して、直後に板温90〜150℃で焼付け、空冷することにより、前記複合皮膜を形成することを特徴とする、耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
【0023】
(XV) (IV)に記載の表面処理鋼板を製造するに際し、清浄な表面を持つ、亜鉛系めっき鋼板、または亜鉛系めっき鋼板の表面に化成皮膜を施した鋼板の表面上に、P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液に固体潤滑剤と、防錆添加剤及び/又は水溶性または水分散性樹脂を添加してなる処理液を塗布して、直後に板温90〜150℃で焼付け、空冷することにより、前記複合皮膜を形成することを特徴とする、耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明は、亜鉛系めっき鋼板の上層に、P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸水溶液をMg供給源として用いて形成され、酸性水溶液に可溶で、中性またはアルカリ性水溶液に難溶で、かつMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分を必須成分として含有する複合皮膜が形成されていることを特徴とする。
【0025】
Mgは亜鉛の腐食生成物を安定化し、錆が進行するのを抑制する働きがあり、耐食性のために第一義的に必要である。Mgの存在形態も耐食性に影響し、存在形態が金属の場合には、耐食性上は良好であるが、後に述べるように加工性上の問題があるとともに、製造技術上の、コスト上の課題も大きすぎる。また結晶質を主体とした皮膜では、ポロシティーが大きいため、十分良好な耐食性は得られない。このため、緻密な層を形成しうる非晶質な形態が最も望ましい。非晶質であることは、表面SEMでの結晶有無の観察およびX線回折での回折ピーク有無によって判断できる。
【0026】
加工性上は、非晶質皮膜であることが必須で、金属Mgや、酸化Mg、リン酸Mgのような皮膜では、加工性の向上効果が無く、特にめっき目付量を増加させたような場合には、自動車用の高速プレスに耐えられない。非晶質無機皮膜は、柔らかい亜鉛系めっきの上を覆う、硬いバリア皮膜として作用し、めっき層のフレーキングを抑え、またその皮膜自身が優れた潤滑作用を有するとともに、プレス加工の発熱時にもこの作用を失わないことから、極めて良好な加工性が得られる。Mgを含む非晶質無機皮膜は、腐食因子に対するバリア皮膜となることから耐食性上好ましいが、自動車用の塗装において行われる化成処理(リン酸塩系処理)の反応に対してもバリアとして作用してしまうと、化成皮膜が付着せず、塗装外観、塗料密着性上の問題が発生する。
【0027】
本発明における皮膜は、このような化成処理液(通常pH2〜3程度)の弱酸性水溶液環境で溶解することが必須であり、この点は本発明のポイントでもあって、酸性水溶液に可溶とは、前述の化成処理を行った場合にスケ等の異常を発生させないということを意味する。化成液中で溶けだしたMgの一部は、化成皮膜中に取り込まれ、緻密で耐食性の良い、Mg含有化成皮膜を形成しやすくする。また、化成処理後も一部のMgは溶けずに残り耐食性向上に寄与することは言うまでもない。
【0028】
一方、自動車用の最も高度な耐食性が要求される部位は、ドアヘム部と呼ばれる、鋼板あわせ部であり、この部分においては、化成処理液が十分廻らないことから、本発明の皮膜は、溶解せずにほぼ完全に残存し、高度な耐食性を発現する。酸性水溶液には溶解することが必要であるが、中性またはアルカリ性水溶液には難溶であることが必要である。これら水溶液に溶解しやすいと、保管時の結露耐食性に劣り、また、自動車塗装ラインのアルカリ脱脂液にて溶解してしまって、耐食性向上効果を持たなくなる。中性またはアルカリ性水溶液には難溶とは、前述のようなアルカリ脱脂工程を経ても残存することを意味する。
【0029】
亜鉛系めっきの上に、リン酸亜鉛、変性リン酸亜鉛等のリン酸亜鉛系化成処理を施し、その上に前述の非晶質無機系成分を含有する複合皮膜を形成することは、更に好ましい。リン酸亜鉛結晶の隙間に非晶質無機皮膜が保持され、自動車塗装ラインでの化成処理性は維持されたまま、中性水溶液、アルカリ水溶液への耐性が更に向上する。なお、亜鉛系めっきの上に、リン酸亜鉛系の化成処理を施し、その上に非晶質無機皮膜が形成されている場合の「非晶質である」とは、表面SEMでの観察およびX線回折での回折ピーク観察等の手段によって、無機皮膜(例えば重リン酸Mg)起因の結晶が観察されず、下地の鋼板の結晶、およびまたは亜鉛系めっきの結晶、およびまたはリン酸亜鉛系の化成処理結晶のみが観察されることを意味し、このような手段で判別することが可能である。
【0030】
本発明の非晶質無機皮膜中には、化成処理性を阻害するような化合物、例えば、Crの化合物、Alの化合物等を含有することは好ましくないが、化成性を阻害しないものであれば複合化してもよい。また、非晶質無機皮膜は、Mgを含有する、リン酸、またはその塩、重リン酸、またはその塩、各種縮合リン酸、またはその塩、有機リン酸、またはその塩、等からなることが好ましいが、これに限定されるものではない。なお、シリカゾルや、シリケートからなる皮膜は、弱酸性水溶液への溶解性が不十分であるが、弱酸性水溶液への合成が可能であれば特に問題はない。
【0031】
本発明において、Mgの供給源となる第1リン酸Mg水溶液は、そのモル比がP2O5/MgO=1.1〜1.3(1.2±0.1)であることが必要である。P2O5/MgOが1.1未満では水溶性の安定性に劣り、水溶液中に第1リン酸Mgの結晶が析出するなど、十分な塗布性が得られないといった問題がある。またP2O5/MgOが1.3超では過剰なリン酸成分により耐食性、塗料密着性を劣化させるため好ましくない。
【0032】
本発明の非晶質無機系成分のMg含有率は、複合皮膜の質量を基準として5質量%以上であることが必要で、これ未満では耐食性上好ましくない。リン酸系の非晶質無機系成分では通常10質量%前後になるが、特にこれに限定されるものではない。なお、Mg含有率100質量%は金属Mgに相当し前述のように好ましくないことは言うまでもない。また、この皮膜の付着量としては、0.1〜2.0g/m2 の範囲であることが必要である。0.1g/m2 未満では、耐食性、加工性とも向上効果なく、2.0g/m2 超では、加工性および溶接性が悪化する。
【0033】
本発明においては、複合皮膜中にこのようなMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分と共に固体潤滑剤を含有することが好ましい。固体潤滑剤を加えることにより優れた潤滑性を付与するとともに、硬くて脆い無機系皮膜の耐パウダリング性を改善することができる。本発明における使用に好適な固体潤滑剤としては、例えば以下のようなものを挙げることができる。
【0034】
(1)ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス:例えばポリエチレンワックス、合成パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、塩素化炭化水素等
(2)フッ素樹脂系ワックス:例えばポリフルオロエチレン樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂等)、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等
(3)脂肪酸アミド系化合物:例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド等
(4)金属石けん類:例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム等
(5)金属硫化物:例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステン
(6)その他:例えば、グラファイト、フッ化黒鉛、窒化ホウ素。
【0035】
上述した固体潤滑剤の中から少なくとも1種以上を添加することにより、耐パウダリング性、潤滑性が向上する。
特に優れた潤滑性を必要とする場合には、ポリエチレンワックス、ポリ4フッ化エチレン樹脂及び窒化ホウ素の中から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0036】
固体潤滑剤の平均粒子径は、0.05〜25μmとすることが好ましい。粒子径が0.05μm未満であると潤滑剤の表面濃化により、有機皮膜最表層に占める潤滑剤の占有面積が多くなり塗料密着性を劣化させる。一方で、粒子径が25μmを超えると、有機皮膜から潤滑剤の脱落により所定の潤滑性が得られず、耐食性にも劣る。優れた塗料密着性、耐食性、潤滑性、耐パウダリング性を得るには平均粒子径は1〜15μmがより好ましく、3〜10μmが最も好ましい。また、ポリエチレンワックスの軟化点を100℃〜135℃、さらに好ましくは110〜130℃とすることにより、潤滑性、耐パウダリング性はさらに向上する。
【0037】
複合皮膜中に含まれる固体潤滑剤の含有量は、固形分でMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分100重量部に対して1〜80重量部とすることが好ましい。
【0038】
固体潤滑剤がMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分100重量部に対して1重量部未満では、潤滑性の向上効果が十分ではなく、80重量部を超えると塗料密着性、耐食性が劣化する。塗料密着性、潤滑性、耐食性の観点からより好ましい配合量は3〜50重量部であり、最も好ましくは5〜35重量部である。
【0039】
また、Mgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分と固体潤滑剤を含有する複合皮膜中に、防錆添加剤を配合することにより、さらに腐食生成物(錆)安定化を促進し、更に優れた耐食性を得ることができる。本発明における好適な防錆添加剤の種類としては、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、イオン交換シリカ、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、リン酸塩(例えばリン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛等)、モリブデン酸塩、リンモリブデン酸塩(例えばリンモリブデン酸カルシウム等)等を挙げることができ、これらの中から選ばれる少なくとも1種の防錆添加剤を加えることができる。なお、Cr化合物は代表的なインヒビターであるが、本発明の趣旨にそぐわず除外されることは言うまでもない。また、有機系防錆添加剤としては、タンニン酸、またはその塩、フィチン酸、またはその塩、安息香酸、またはその塩、ヒドラジン誘導体、チオール基含有化合物、チオカルボニル基含有化合物などが挙げられる。
【0040】
本発明においては、これらの中でもイオン交換シリカ、リン酸塩およびリンモリブデン酸塩の中から選ばれる少なくとも1種を使用することが最も好ましい。イオン交換シリカとは、カルシウムやマグネシウムなどの金属イオンを多孔質シリカゲルの表面に固定したものである。イオン交換シリカの中でもカルシウム濃度が1質量%以上のカルシウムイオン交換シリカが好ましい。
【0041】
複合皮膜中に含有され得る防錆添加剤の含有量は、防錆添加剤が、固形分でMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分100重量部に対して1〜100重量部とすることが好ましい。
【0042】
防錆添加剤がMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分100重量部に対して1重量部未満では、耐食性の向上効果が十分ではなく、100重量部を超えると塗料密着性、耐パウダリング性、潤滑性が劣化する。塗料密着性、潤滑性、耐食性の観点からより好ましい配合量は10〜80重量部であり、最も好ましくは20〜70重量部である。
【0043】
また、Mgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分と固体潤滑剤を含有する複合皮膜中に、水溶性または水分散性樹脂を配合することにより、無機系皮膜単独では得られない優れた塗料密着性を得ることができる。本発明における使用に好適な樹脂としては、非晶質無機系成分が水溶性であることから、水溶性または水分散性であることが必要である。このような樹脂であれば、特に制限はないが、水溶性樹脂の場合は重量平均分子量2000以上であることが好ましい。重量平均分子量2000未満では、非晶質無機系成分と複合化した皮膜の耐水性が劣化するため好ましくない。また、水分散性樹脂の場合はその平均粒子径が200nm以下であることが好ましい。平均粒子径200nm超では、耐水性が劣化するため好ましくない。
【0044】
このような樹脂であれば、樹脂種としてはアクリル系、エポキシ系、エチレン系、ウレタン系などの各種樹脂を使用することができる。さらにはMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分が弱酸性水溶液であることから、水分散性樹脂のpHは10以下であることが好ましい。pH10超の場合は、弱酸性水溶液と混合した際に、樹脂自身さらにはリン酸塩成分のゲル化が生じ、処理液の安定性に劣るため好ましくない。また、水溶性樹脂や水分散性樹脂においては、処理液の安定性、発泡性、粘度などを改善するための添加剤などを加えても良い。
【0045】
このような水溶性または水分散性樹脂の配合量は、Mgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分100重量部に対して1〜80重量部とすることが好ましい。前記樹脂の配合量が1重量部未満では、塗料密着性の向上効果が十分でなく、80重量部を超えると耐食性が劣化する。
【0046】
このような複合皮膜の付着量としては、0.1〜2.0g/m2 であることが必要である。皮膜付着量が0.1g/m2 未満では耐食性、耐パウダリング性とも向上効果がない。一方、2.0g/m2 超では、耐パウダリング性が悪化するため好ましくない。
【0047】
本発明のさらに好ましい形態として、亜鉛系めっきの上に、リン酸亜鉛などの化成処理を施し、その上に前述のMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分と固体潤滑剤を必須成分とする複合皮膜が形成されている亜鉛系めっき鋼板を例示することができる。この場合には、リン酸亜鉛結晶の隙間に前記複合皮膜が保持されることにより、耐パウダリング性、耐食性、塗料密着性等とも更に向上する。この場合にも、皮膜中のMg濃度は5質量%以上必要であり、これ未満では良好な耐食性は得られない。また、複合皮膜の皮膜付着量は0.1g/m2以上必要であり、これ未満では、良好な耐食性、耐パウダリング性ともに得られない。更に、皮膜量の上限としては、下層のリン酸亜鉛系化成処理皮膜と前記複合皮膜との合計で2.0g/m2 以下であることが必要であり、これを超えると耐パウダリング性、溶接性が悪化するため好ましくない。
【0048】
また、本発明においては、複合皮膜の下層に施され得る上記化成処理皮膜として、Ni、Mg、Mn、Ca、Co、Cuの1種または2種以上で変性されたリン酸亜鉛化成皮膜を用いることが特に好ましい。このようにすると、耐食性はより一層向上すると共に、塗料密着性が格段と向上する。なお、Ni、Mg、Mn、Ca、Co、Cuで変性されたリン酸亜鉛化成処理皮膜とは、Ni、Mg、Mn、Ca、Co、Cu等のイオンを共存させたリン酸亜鉛処理液で形成された化成処理皮膜を意味し、リン酸亜鉛結晶(ホーパイト;Zn3(PO4)2・4H2O)のZnの一部が他の金属に置き換わっているものと推定されるが、X線回折上の回折ピークはホーパイトと区別できない。Ni、Mg、Mn、Ca、Co、Cuのリン酸亜鉛皮膜中に占める質量割合は、合計で0.1〜9%の範囲内であることが好ましい。特に、優れた塗料密着性や耐食性を必要とする場合、Ni、Mg、Mnの中から選ばれる1種または2種以上で変性されたリン酸亜鉛皮膜において、それらの全含有量が質量割合で3〜6%であることが好ましい。
【0049】
上述したような、(1)酸性水溶液に可溶で、中性またはアルカリ性水溶液に難溶で、かつ、Mgを5質量%以上含有する非晶質無機成分、を必須成分として含有し、好ましくは(2)固体潤滑剤、(3)防錆添加剤、及び/又は、(4)水溶性または水分散性樹脂を含有する複合皮膜は、簡易な方法で、コスト的にも有利に製造することが可能であり、(1)成分として第1リン酸Mgを含む酸性水溶液を塗布して焼付ければよい。
【0050】
塗布方法は、スプレー、浸漬、ロールコーター等特に限定されるものではない。液中の第1リン酸Mgの濃度としては、特に限定されるものではないが、現在入手できる市販の第1リン酸Mg水溶液の濃度は50%であり、これをP2O5/MgO=1.2±0.1になるように調節し、更に所定付着量が得られるように適宜希釈して用いる方法が好適である。溶液の固形分中のMg濃度は5質量%以上必要であり、これよりMg濃度が少ないと、形成された皮膜中のMg濃度が所定値以上得られず、耐食性が不足する。溶液は、第1リン酸Mgに加えて、リン酸、縮合リン酸、有機リン酸、または以上の各種リン酸の塩を添加することも好ましく、これら添加によって水溶液の粘度等の物性を、塗布条件に適した値にコントロールすることも可能である。これらを添加した場合にも、溶液の固形分中のMg濃度は5質量%以上になるように調整することが必要である。なお、Mgを含む他のリン酸塩(例えば、MgHPO4 、Mg3(PO4 )2等)は、水に極めて難溶であるため、これらの塩の水溶液を塗布することは困難であるが、過剰のリン酸等の酸を添加して微量溶解することは可能である。しかしこの場合、形成される皮膜中のMg濃度は5質量%に遙かに達せず、耐食性の向上効果が得られない。また、これら難溶性塩はデンプン、デキストリン等の分散剤を用いて分散調整した水性懸濁液を塗布した場合には、皮膜は結晶質の状態になり、また下地との密着性も劣悪である。
【0051】
また、これらの水溶液は前述した固体潤滑剤を好ましい態様として含有し、必要に応じて防錆添加剤、水溶性または水分散性樹脂を含有する。これら成分を配合した処理液を塗布し、皮膜を形成することにより、優れた耐パウダリング性、潤滑性、耐食性、塗料密着性等を得ることができる。
【0052】
本発明においては、第1リン酸Mgを含む酸性水溶液を塗布した後、焼き付ける条件も極めて重要であり、塗布直後に90〜150℃の範囲になるように焼き付けることが必須である。焼付温度(乾燥温度)が90℃未満では、皮膜の耐水性が劣化し、一方150℃を超えると、弱酸性水溶液に対する溶解性が悪化する。また、塗布した直後に焼き付けを行わないと、溶液中の酸性分とめっき表面のZn等が反応し、結晶質で脆い皮膜が成長するため好ましくない。焼き付け後は、空冷(放置で自然冷却する場合も含む)が必要で、例えば水スプレー等で冷却を行うと、皮膜が一部溶解するなどして外観ムラが発生しやすい。また処理前の表面が清浄であることが必要であり、例えば表面に汚れを含む状態で塗布すると正常な皮膜は得られない。
【0053】
亜鉛系めっき鋼板の表面上にリン酸亜鉛系化成皮膜を介して、前述の皮膜を形成する場合には、まず公知の方法で亜鉛系めっき鋼板上にリン酸亜鉛系化成処理を施し、この上に前述の方法で皮膜を塗布すればよい。また、リン酸亜鉛系化成処理の前に公知の方法による表面調整(チタンコロイドによる処理、およびまたは、酸水溶液による処理、およびまたは、ブラシ研削、等による表面活性化)を行ってもよい。
【0054】
本発明で用いる亜鉛系めっき鋼板の基板となる鋼板としては、一般加工用冷延鋼板(CQ)から深絞り用冷延鋼板(DQ)、高深絞り用冷延鋼板(DDQ)、超深絞り用冷延鋼板(EDDQ)に至る全ての軟質加工用冷延鋼板、焼き付け硬化性を有する比較的強度レベルの低い高張力鋼板から390MPaを超える一般の高張力鋼板に至る全ての高張力鋼板、脱スケールした熱延鋼板等が利用できる。
【0055】
亜鉛系めっき鋼板のめっき層としては、Znめっき、Zn−Ni合金めっき(Ni含有率10〜15質量%)、Zn−Fe合金めっき(Fe含有率5〜25質量%または60〜90質量%)、Zn−Mn合金めっき(Mn含有率30〜80質量%)、Zn−Co合金めっき(Co含有率0.5〜15質量%)、Zn−Cr合金めっき(Cr含有率5〜30質量%)、Zn−Al合金めっき(Al含有率3〜60質量%)等が挙げられる。また、上記各めっき成分にCo、Fe、Ni、Cr等の合金元素、シリカ、アルミナ、難溶性クロム酸塩等の酸化物や塩類、ポリマー等を含有させることもできる。また、上記めっき層のうち同種または異種のものを2層以上めっきした複層めっきとすることもできる。
【0056】
めっき鋼板としては、鋼板面に予めNi等の薄目付けめっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。
【0057】
これらのめっきは、電解法、溶融法、気相法の何れによっても形成することができる。めっき付着量としては10g/m2 以上であることが好ましい。めっき付着量が10g/m2 未満では耐食性が劣るため問題がある。また、Zn−Ni合金めっき、Zn−Fe合金めっき、Zn−Mn合金めっき、Zn−Co合金めっき、Zn−Cr合金めっきの場合は、めっき付着量が60g/m2を超えると耐パウダリング性が劣るため、10〜60g/m2 とすることが好ましい。より高度な耐食性、耐パウダリング性を確保するには、めっき付着量は15〜60g/m2 とすることがより好ましい。
【0058】
また、後述するリン酸亜鉛複合皮膜をめっき皮膜表面に形成した際に皮膜欠陥やムラが生じないようにするため、必要に応じて予めめっき皮膜表面にアルカリ脱脂、溶剤脱脂、表面調整処理(例えば、(1)Niイオン、Coイオン、Feイオンの中から選ばれる少なくとも1種の金属イオンを含有する酸性あるいはアルカリ性水溶液による処理、(2)チタンコロイド水溶液に接触させる処理、(3)めっき鋼板の表面に形成されている金属酸化物の上層を無機酸類、有機酸類、EDTA、NTA等のキレート性化合物を使用しエッチングする処理)等の処理を施しておくことも可能である。以上、本発明の効果は、これらいずれの鋼板を基板とした場合でも得ることができる。
【0059】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。
【0060】
(実施例1)
試料調製
母材としては合金化溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.7mm、めっき付着量45g/m2/片面)を用い、アルカリスプレー脱脂の後、各種処理液をロールコーターにて塗布し、直後に熱風乾燥炉で所定の板温になるように加熱し、放冷した。一部比較例では加熱後、水スプレーで水冷した。処理液は、P2O5/MgO比の異なる第1リン酸Mg50%水溶液(米山化学製)を所定付着量になるように水希釈したものを用いた。また、比較例では、MgO、MgHPO4、Mg3(PO4)2などをリン酸に溶解した水溶液、または分散剤を使用して分散懸濁した水性懸濁液を使用した。また、蒸着によりMg金属を表層にめっきしたものを用いた。各試料の処理条件および皮膜状態は表1−1、1−2に示した。
【0061】
皮膜量は、重量法により測定した。皮膜のMg含有率は、酸により皮膜を溶解して、ICP分析によりMgの定量を行い、皮膜量との比から、含有率を算出した。結晶状態については、表面SEMでめっき以外の結晶の状態の有無観察、およびX線回折により、めっき層以外の回折ピークの有無を判定することにより、結晶質/非晶質を決定した。
【0062】
評価方法
[耐食性]
ビード加工を行った後、アルカリ脱脂液(pH=12.5)スプレーを行い、JIS Z 2371の塩水噴霧試験を行い、赤錆5質量%発生までの日数を測定した。評価基準は以下の通りである。
【0063】
◎:15日超
○+:10〜13日
○:5〜10日
△:2〜5日
×:2日以内
[耐パウダリング性]
供試材を30mm幅に切断し、ビード先端径1.0mm、ビード高さ4mm、押し付け力500kgf、引き抜き速度200mm/min.でドロービードテストを行った後、テストした部位を粘着テープで剥離し、テスト前後の単位面積当たりの皮膜剥離量を測定した。なお、試験時はノックスラスト550HNを1g/m2塗油した。その評価基準は以下の通りである。
【0064】
◎:4g/m2 未満
○:4g/m2 以上6g/m2 未満
△:6g/m2 以上8g/m2 未満
×:8g/m2 超
[潤滑性]
下記の摺動条件での引き抜き力を測定し、摩擦係数=(引き抜き力)/(加圧力)により評価した。なお、試験時はノックスラスト550HNを1g/m2塗油した。
【0065】
(摺動条件)工具接触面積:50×10mm 工具材質:SKD11 加圧力:400kgf、摺動速度:200mm/min.
評価基準は以下の通りである。
【0066】
◎:0.15以下
○:0.15超0.17以下
△:0.17超0.20以下
×:0.20超
[化成性]
日本ペイント製化成処理液(SD2500)を使用し、化成処理外観を目視観察した。その評価基準は以下の通りである。
【0067】
◎:均質な外観
○:ほぼ均質な外観
△:一部スケあり
×:全面スケあり
[耐水性]
アルカリ脱脂液(pH=12.5)スプレー前後の皮膜量を測定して溶出量を算出し、耐水性評価とした。その評価基準は以下の通りである。
【0068】
◎:溶出率10%以下
○:溶出率11%以上40%以下
△:溶出率41%超99%以下
×:溶出率100%
[溶接性]
CuCrのCF型電極チップを使用し、荷重200kgf、通電サイクル13サイクル/60Hzで適正電流範囲を測定した。評価基準は以下の通りである。
【0069】
◎:1.5kA以上
○:1.0kA以上1.5kA未満
△:0.3kA以上1.0kA未満
×:0.3kA未満
[塗料密着性]
供試材をアルカリ脱脂した後、メラミンアルキド系塗料デリコン#700(大日本塗料製)を30μm塗装した後、沸騰水中に120分浸漬し、取出したサンプル塗膜に1mm碁盤目を100個刻み、エリクセン押出加工5mmを行い、押し出し部を粘着テープにて密着・剥離し、塗膜の残存率で評価した。その評価基準は以下の通りである。
【0070】
◎:剥離なし
○:剥離率5質量%未満
△:剥離率5質量%以上15質量%未満
×:剥離率15質量%以上
表1−1、1−2に評価結果を示す。本発明例ではいずれの品質性能においても優れるが、本発明で規定する条件から外れるものは、何らかの性能が悪化していることが認められた。
【0071】
【表1−1】
【0072】
【表1−2】
【0073】
(実施例2)
試料調整
母材としては電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.7mm、めっき付着量30g/m2 /片面)を用い、アルカリスプレー脱脂の後、リン酸亜鉛処理(日本パーカライジング製Bt3307)を施した。リン酸亜鉛皮膜量は、蛍光X線分析により測定した。またSEMによりリン酸亜鉛皮膜の結晶の大きさを観察したところ、80〜20μmであった。更に表2−1に示す処理液をロールコーターにて塗布し、熱風乾燥炉で所定の板温になるように加熱し、放冷した。処理液は、実施例1で用いたもののうち、第1リン酸Mg水溶液を用いた。また、上層の皮膜量は、重量法により測定した。また、上層の結晶状態については、表面SEMでめっき結晶およびリン酸亜鉛結晶以外の結晶の有無観察、およびX線回折により、鋼板およびめっき層およびリン酸亜鉛以外の回折ピーク(塗布している第1リン酸Mg水溶液をビーカー中で蒸発させ、得られる粉末を測定して観察されるピーク)の有無を判定することにより、結晶質/非晶質を決定した。この方法では、表2−1に示す実施例および比較例のいずれも非晶質皮膜と判定できた。
【0074】
表2−2に、評価結果を示す。評価方法は実施例1と同様である。本発明例ではいずれの品質性能においても優れるが、本発明で規定する条件から外れるものは、何らかの性能が悪化していることが認められた。
【0075】
【表2−1】
【0076】
【表2−2】
【0077】
(実施例3)
試料調整
実施例2と同じ電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.7mm、めっき付着量30g/m2/片面)を用い、アルカリスプレー脱脂の後、チタンコロイド系の表面調整(日本パーカー製PL−Zn)を施した後、リン酸亜鉛処理(日本パーカー製PB−3322)を施した。リン酸亜鉛皮膜量は、蛍光X線分析により測定した。また、クロム酸水溶液によりリン酸亜鉛皮膜を溶解して、ICP分析により微量金属元素を測定したところ、Niは3〜5質量%、Mgは0.2〜0.7%(リン酸亜鉛皮膜に対する重量割合)であった。また、SEMによりリン酸亜鉛皮膜の結晶の大きさを観察したところ、1〜9μmであった。このようにして形成したリン酸亜鉛皮膜上に、更に実施例2と同じ処理液をロールコーターにて塗布し、熱風乾燥炉で所定の板温になるように加熱し、放冷した。また、上層の皮膜量は、重量法により測定した。また、上層の結晶状態については、表面SEMでめっき結晶およびリン酸亜鉛結晶以外の結晶の有無観察、およびX線回折により、鋼板およびめっき層およびリン酸亜鉛以外の回折ピーク(塗布している第1リン酸Mg水溶液をビーカー中で蒸発させ、得られる粉末を測定して観察されるピーク)の有無を判定することにより、結晶質/非晶質を決定した。この方法では、表3−1に示す実施例および比較例のいずれも非晶質皮膜と判定できた。
【0078】
評価方法は実施例2と同様である。表3−2にその結果を示す。本発明例ではいずれの品質性能においても優れた特性を有するが、本発明で既定する条件から外れるものは、何らかの性能が劣っていることが認められた。
【0079】
【表3−1】
【0080】
【表3−2】
【0081】
(実施例4)
試料調製
母材としては合金化溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.7mm、めっき付着量45g/m2/片面)を用い、アルカリスプレー脱脂の後、各種処理液をロールコーターにて塗布し、直後に熱風乾燥炉で所定の板温になるように加熱し、放冷した。一部比較例では加熱後、水スプレーで水冷した。処理液は、P2O5/MgO比の異なる第1リン酸Mg50%水溶液(米山化学製)を所定付着量になるように水希釈し、これに表4の固体潤滑剤を配合したものをベースとして用い、さらに表5の防錆添加剤、表6の水溶性または水分散性樹脂を配合したものを用いた。また、比較例では、MgO、MgHPO4、Mg3(PO4)2などをリン酸に溶解した水溶液、または分散剤を使用して分散懸濁した水性懸濁液を使用し、表4〜6の添加剤を配合して使用した。また、蒸着によりMg金属を表層にめっきしたものを用いた。各試料の処理条件および皮膜状態は表7―1、7−2、7−3に示した。
【0082】
皮膜量は、重量法により測定した。皮膜のMg含有率は、酸により皮膜を溶解して、ICP分析によりMgの定量を行い、皮膜量との比から、含有率を算出した。結晶状態については、表面SEMでめっき以外の結晶の状態の有無観察、およびX線回折により、めっき層以外の回折ピークの有無を判定することにより、結晶質/非晶質を決定した。
【0083】
表8―1、8−2に、評価結果を示す。評価方法は実施例1と同様である。本発明例ではいずれの品質性能においても優れるが、本発明で規定する条件から外れるものは、何らかの性能が悪化していることが認められた。
【0084】
【表4】
【0085】
【表5】
【0086】
【表6】
【0087】
【表7−1】
【0088】
【表7−2】
【0089】
【表7−3】
【0090】
【表8−1】
【0091】
【表8−1】
【0092】
(実施例5)
試料調整
母材としては電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.7mm、めっき付着量30g/m2 /片面)を用い、アルカリスプレー脱脂の後、リン酸亜鉛処理(日本パーカライジング製Bt3307)を施した。リン酸亜鉛皮膜量は、蛍光X線分析により測定した。またSEMによりリン酸亜鉛皮膜の結晶の大きさを観察したところ、80〜20μmであった。更に表9に示す各種添加剤を添加した処理液をロールコーターにて塗布し、熱風乾燥炉で所定の板温になるように加熱し、放冷した。処理液は、実施例4で用いたもののうち、第1リン酸Mg水溶液を用いた。また、上層の皮膜量は、重量法により測定した。また、上層の結晶状態については、表面SEMでめっき結晶およびリン酸亜鉛結晶以外の結晶の有無観察、およびX線回折により、鋼板およびめっき層およびリン酸亜鉛以外の回折ピーク(塗布している第1リン酸Mg水溶液をビーカー中で蒸発させ、得られる粉末を測定して観察されるピーク)の有無を判定することにより、結晶質/非晶質を決定した。この方法では、表9に示す実施例および比較例のいずれも非晶質皮膜と判定できた。
【0093】
評価方法
評価方法は実施例1と同様であるが、ここでは、更に「耐水密着性」を評価に加えたその評価方法は以下の通りである。
【0094】
[耐水密着性]
[化成性」で用いたサンプルに更に自動車用カチオン電着塗装(日本ペイント製V20)を行い、更に自動車用中塗り塗料(日本ペイント製OTO−H870)、自動車用上塗り塗料(日本ペイント製OTO−650PZ)を塗装し、50℃のイオン交換水中に10日間浸漬した。このサンプルの塗膜に1mmの碁盤目を100個刻み、粘着テープにて剥離した後の塗膜残存率で評価した。その評価基準は以下の通りである。
【0095】
◎:剥離なし
○:剥離率5質量%未満
△:剥離率5質量%以上50%未満
×:剥離率50%以上
表10にその結果を示すが、本発明例ではいずれの品質性能においても優れた特性を有するが、本発明で既定する条件から外れるものは、何らかの性能が劣っていることが認められた。
【0096】
【表9】
【0097】
【表10】
【0098】
(実施例6)
試料調整
実施例5と同じ電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.7mm、めっき付着量30g/m2/片面)を用い、アルカリスプレー脱脂の後、チタンコロイド系の表面調整(日本パーカー製PL−Zn)を施した後、リン酸亜鉛処理(日本パーカー製PB−3322)を施した。リン酸亜鉛皮膜量は、蛍光X線分析により測定した。また、クロム酸水溶液によりリン酸亜鉛皮膜を溶解して、ICP分析により微量金属元素を測定したところ、Niは3〜5質量%、Mgは0.2〜0.7%(リン酸亜鉛皮膜に対する重量割合)であった。また、SEMによりリン酸亜鉛皮膜の結晶の大きさを観察したところ、1〜9μmであった。このようにして形成したリン酸亜鉛皮膜上に、更に実施例5と同じ処理液をロールコーターにて塗布し、熱風乾燥炉で所定の板温になるように加熱し、放冷した。また、上層の皮膜量は、重量法により測定した。また、上層の結晶状態については、表面SEMでめっき結晶およびリン酸亜鉛結晶以外の結晶の有無観察、およびX線回折により、鋼板およびめっき層およびリン酸亜鉛以外の回折ピーク(塗布している第1リン酸Mg水溶液をビーカー中で蒸発させ、得られる粉末を測定して観察されるピーク)の有無を判定することにより、結晶質/非晶質を決定した。この方法では、表11に示す実施例および比較例のいずれも非晶質皮膜と判定できた。
【0099】
評価方法は実施例5と同様である。表12にその結果を示す。本発明例ではいずれの品質性能においても優れた特性を有するが、本発明で既定する条件から外れるものは、何らかの性能が劣っていることが認められた。
【0100】
【表11】
【0101】
【表12】
【0102】
【発明の効果】
本発明によって、従来に無かった、耐食性と成形性(耐パウダリング性・潤滑性)を高度に両立した亜鉛系めっき鋼板を得ることが可能になる。本発明の鋼板は、溶接性、塗装性などの特性にも優れ、6価クロムなどの有害物質を使用せず、製造方法も簡易でコスト的にも優れ、自動車車体用鋼板として好適なものである。
Claims (15)
- 亜鉛系めっき鋼板の表面に複合皮膜形成用処理液を塗布し、直後に板温90〜150℃の範囲で焼き付け、空冷して該鋼板の表面に複合皮膜を0.1〜2.0g/m2形成してなる表面処理鋼板であって、該複合皮膜が、下記(1)を含有することを特徴とする耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板。
(1)P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液を用いて形成され、酸性水溶液に可溶で、中性またはアルカリ性水溶液に難溶で、かつMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分。 - リン酸亜鉛系化成処理が施された亜鉛系めっき鋼板の表面に、複合皮膜形成用処理液を塗布し、直後に板温90〜150℃の範囲で焼き付け、空冷して該鋼板表面にリン酸亜鉛系皮膜を介して複合皮膜を形成してなる表面処理鋼板であって、該複合皮膜の皮膜量が0.1g/m2以上、且つ該複合皮膜と下層のリン酸亜鉛系皮膜との合計皮膜量が2.0g/m2以下であり、さらに該複合皮膜が下記(1)及び(2)を含有することを特徴とする、耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板。
(1)P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液を用いて形成され、酸性水溶液に可溶で、中性またはアルカリ性水溶液に難溶で、かつMgを5質量%以上含有する非晶質無機系成分。
(2)前記非晶質無機系成分100質量部に対し1〜80質量部の範囲で含有される固体潤滑剤。 - 前記複合皮膜が更に下記(2)を、前記非晶質無機系成分100質量部に対し含有することを特徴とする、請求項1に記載の耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板。
(2)固体潤滑剤 1〜80質量部 - 前記複合被膜が更に下記(3)及び/又は(4)を、前記非晶質無機系成分100質量部に対し含有することを特徴とする、請求項2又は3に記載の表面処理鋼板。
(3)防錆添加剤 1〜100重量部
(4)水溶性または水分散性樹脂 1〜80重量部 - リン酸亜鉛系化成皮膜がNi、Mg、Mn、Ca、Co、Cuの1種または2種以上で変性されたリン酸亜鉛皮膜であることを特徴とする請求項2又は4に記載の表面処理鋼板。
- 非晶質無機系成分が、P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液由来成分以外に、リン酸、またはその塩、重リン酸、またはその塩、各種縮合リン酸、またはその塩、有機リン酸、またはその塩の中から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
- 固体潤滑剤が、ポリエチレンワックス、4フッ化エチレン樹脂および窒化ホウ素の中から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
- 固体潤滑剤の平均粒子径が、0.05〜25μmであることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
- ポリエチレンワックスの軟化点が、100〜135℃であることを特徴とする請求項7または8に記載の表面処理鋼板。
- 防錆添加剤が、イオン交換シリカ、リン酸塩およびリンモリブデン酸塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
- 水溶性樹脂の重量平均分子量が2000以上であることを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
- 水分散性樹脂の平均粒子径が200nm以下であることを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の表面処理鋼板。
- 請求項1に記載の表面処理鋼板を製造するに際し、清浄な表面を持つ、亜鉛系めっき鋼板、または亜鉛系めっき鋼板の表面に化成皮膜を施した鋼板の表面上に、P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液を塗布して、直後に板温90〜150℃で焼付け、空冷することにより、前記複合皮膜を形成することを特徴とする、耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
- 請求項2又は3に記載の表面処理鋼板を製造するに際し、清浄な表面を持つ、亜鉛系めっき鋼板、または亜鉛系めっき鋼板の表面に化成皮膜を施した鋼板の表面上に、P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液に固体潤滑剤を添加してなる処理液を塗布して、直後に板温90〜150℃で焼付け、空冷することにより、前記複合皮膜を形成することを特徴とする、耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
- 請求項4に記載の表面処理鋼板を製造するに際し、清浄な表面を持つ、亜鉛系めっき鋼板、または亜鉛系めっき鋼板の表面に化成皮膜を施した鋼板の表面上に、P2O5/MgO=1.2±0.1(モル比)である第1リン酸Mg水溶液に固体潤滑剤と、防錆添加剤及び/又は水溶性または水分散性樹脂を添加してなる処理液を塗布して、直後に板温90〜150℃で焼付け、空冷することにより、前記複合皮膜を形成することを特徴とする、耐食性、耐パウダリング性、潤滑性、塗料密着性に優れた表面処理鋼板の製造方法。
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