JPH085540Y2 - エンジンの点火コイル装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 技術分野 本考案は、エンジンの点火コイル装置に関する。

従来技術 最近、ディストリビュータを用いることなく、エンジ
ンの気筒数に応じた複数のコイルユニットを１つのコイ
ルケース内に配設したうえで、そのコイルケース内にエ
ポキシなどの絶縁性の樹脂を注入して、その樹脂の硬化
によってコイルケースと各コイルユニットとが一体に成
形されるようにしたポッティングタイプによるエンジン
の点火コイル装置が開発されている。

従来、この種のエンジンの点火コイル装置にあって
は、コイルケースの内部が比較的大きな１つのスペース
となっており、そのスペースに複数のコイルユニットを
組み込んだうえで、そのスペースの余地部分に樹脂を一
体的にポッティングするようにしている。

しかして、このようにして製造されたエンジンの点火
コイル装置では、環境温度の変化などによるサーマルシ
ョックを受けて、コイルケース内に一体にポッティング
されて硬化した樹脂部分が膨張したり収縮したりして、
その樹脂部分に比較的大きな熱ひずみが加えられると、
その樹脂部分にクラックを生じてしまうおそれが多分に
あるものになっている。

目的 本考案は、以上の点を考慮してなされたもので、複数
のコイルユニットが収納されたコイルケース内に樹脂を
注入して一体化するようにしたエンジンの点火コイル装
置にあって、サーマルショックを受けたときの樹脂部分
に加わる熱ひずみが小さくなるようにして、耐クラック
性を向上させるようにしたエンジンの点火コイル装置を
提供するものである。

構成 本考案は、その目的達成のため、コイルケース内に複
数配設されるコイルユニットの各収納部分をそれぞれ隔
壁によって仕切って、それぞれ独立したコイルユニット
の収納室を形成し、コイルケース内にポッティングされ
る樹脂の部分を複数に分割し、それよりサーマルショッ
クを受けたときの樹脂部分に加わる熱ひずみを分散させ
るようにしている。

そして、本考案では、コイルケース内を複数のコイル
ユニットの収納室に仕切る各隔壁にそれぞれ溶融樹脂が
流通するスリットを設けて、各収納室にそれぞれ注入さ
れる溶融樹脂の液面レベルが一様になるようにしてい
る。

以下、添付図面を参照して本考案の一実施例について
詳述する。

本考案によるエンジンの点火コイル装置にあっては、
第４図および第５図に示すように、その構成部分が、３
つのコイルユニット1,2,3と、その各コイルユニット1,
2,3が並列的に設置されるコイルベース４と、そのコイ
ルベース４の上に装着されるコイルケース５とからなっ
ており、そのコイルケース５内における余地部分に樹脂
が注入されて、各構成部分が一体となるように成形され
ている。

各コイルユニット1,2,3は、それぞれ第６図に示すよ
うに構成されている。

Ｃ型コア61の一辺に、一次コイル７が巻装されている
一次側ボビン８がはめ込まれ、さらにその上から重ねて
二次コイル９が巻装されている二次側ボビン10がはめ込
まれている。

Ｃ型コア61は、一次側ボビン８がはめ込まれる一辺が
裸出するように、コアカバー111によって覆われてい
る。

そして、そのＣ型コア61の開放端の部分に、コアカバ
ー112に覆われたＩ型コア62が圧入によってはめ込まれ
て、１つの閉磁路型のコアが形成されている。

各コアカバー111,112は、コア61,62に生ずる熱ひずみ
を吸収できる比較的柔軟性のあるPP樹脂などによってモ
ールド成形されている。

このように、閉磁路型に形成されるコア61,62が、そ
の一辺に装着される一次側ボビン８およびコアカバー11
1,112によって覆われているので、内部のコア61,62が熱
膨張したり熱収縮しても、その熱応力が周囲のポッティ
ングされた樹脂部分に伝わらず、その樹脂部分にクラッ
クを生じさせるようなことがなくなる。

コアカバー111には、一次コイル７の両端の引出ワイ
ヤをそれぞれからげて止めるワイヤホルダ12が一体に形
成されている。

また、二次側ボビン10の両側の鍔部には、それぞれ端
子ホルダ13が設けられ、その各ホルダ13内には二次端子
14がそれぞれ装着される。

その各二次端子14は、第７図および第８図に示すよう
に、端子ホルダ13内に差し込まれたときに、その端子14
側の切り起し片142がホルダ13側の段部131に係止するこ
とによってホルダ13内に保持される。

コイルケース５には、ボス51の部分に圧入されて先端
のプラグ部151がケース内に突出するように二次端子ピ
ン15が取り付けられている。

そして、二次端子14には、二次端子ピン15のプラグ部
151と共働するバネ性をもったソケット部141が形成され
ており、第１図および第５図に示すように、そのソケッ
ト部141に二次端子ピン15のプラグ部151が差し込まれて
両者間の電気的な接続がとられるようになっている。

また、二次端子14には、二次コイル９からの引出ワイ
ヤ91が電気溶接などによって取り付けられる接続部143
が設けられている。

コイルベース４側には、３つの溝16が形成されてお
り、その各溝16内にコイルユニット1,2,3のコアカバー1
11部分がそれぞれはめ込まれてコイルベース４上に各コ
イルユニット1,2,3が配設される。

コイルベース４には、ポッティング時における溶融樹
脂の注入孔17が設けられている。

また、コイルベース４には、車載のオーディオ・ビジ
ュアル機器などにノイズを与えることがないように、ノ
イズキラー用のコンデンサ18が組み込まれている。

そして、そのコンデンサ18の接地用プレート19がコイ
ルベース４側に形成されたすき間20を通して配されて、
その接続部191がコイルベース４側におけるカラー取付
座21上にのせられて、コイルベース４とコイルケース５
とを結合する導電性を有するカラー22がその取付座21に
圧入される際に、そのカラー22が接続部191を貫通しな
がら接触して、両者の電気的接続がとられるようになっ
ている。なお、そのカラー22は中空状となっており、そ
のカラー22にエンジン部分への取付用の導電性をもった
ボルトが通されて車体アースがとられることになる。

また、そのコンデンサ18のリードワイヤ181が、コイ
ルベース４側に形成されたワイヤホルダ23に止められて
いる。

コイルケース５には、一次端子カプラ24が一体に形成
されている。

そのカプラ24内には、コイルユニット1,2,3にそれぞ
れ応じた４つの一次端子ピン25が取り付けられており、
各端子ピン25にはそれぞれターミナルプレート26が接続
されている。

その各ターミナルプレート26には、第９図に示すよう
に、それぞれ切溝27が形成された噛込部28が二重に設け
られている。その切溝27は、奥方の溝幅が一次コイル７
の引出ワイヤ71よりも若干細くなるように形成されてい
る。

また、コイルユニット1,2,3側の各ワイヤホルダ12に
は、それぞれ一次コイル７の引出ワイヤ71が２つの溝29
をまたぐようにして止められている。

そして、各コイルユニット1,2,3がセットされたコイ
ルベース４にコイルケース５をかぶせたときに、一次側
のターミナルプレート26における各噛込部28がワイヤホ
ルダ12側の各溝29内にそれぞれ差し込まれる。

その際、第10図に示すように、その各切溝27がワイヤ
ホルダ12に止められている一次コイル７の引出ワイヤ71
にそれぞれくい込み、それによりワイヤ71の被膜がはが
れて、両者間の電気的な接続がなされる。

なお、第11図（ａ），（ｂ）に示すように、４つの端
子ピン25（251〜254）およびその各ターミナルプレート
26（261〜264）は、予めベース板30上に配設されてい
る。図中、31はカラー22の通し穴である。そして、その
ベース板30がコイルケース５内の所定箇所に組み込まれ
る。

そのベース板30には、第12図に示すように、ターミナ
ルプレート26の噛込部28が挿入される穴31が設けられて
いる。そして、噛込部28側には突起32が設けられてお
り、穴31に噛込部28が挿入された状態で、その突起32が
ベース板30の下面に係合して、ターミナルプレート26を
ベース板30側に仮固定させるようにしている。

端子ピン251およびそれにつながるターミナルプレー
ト261は各コイルユニット1,2,3に対して共通端子用のも
のとして設けられている。

また、その共通端子用のターミナルプレート261に設
けられた噛込部28における切溝27が、前述と同様に、ワ
イヤホルダ23にからげて止められているコンデンサ18の
リードワイヤ181にくい込んで電気的に接続されるよう
になっている。

本考案では、以上のように構成されたエンジンの点火
コイル装置にあって、特に、第１図に示すように、コイ
ルケース５内に配設される各コイルユニット1,2,3の各
収納部分をそれぞれ仕切る隔壁33をコイルケース５側に
一体に設けて、それぞれ独立した各コイルユニット1,2,
3の収納室34,35,36を形成するようにしている。

このようなものにあっては、第２図に示すように、コ
イルケース５内にポッティングされる樹脂37が隔壁33に
よって各収納室34,35,36ごとに分割される。

したがって、環境温度の変化などによるサーマルショ
ックを受けて、そのポッティングされた樹脂37が膨張し
たり収縮したりしても、そのときの熱ひずみが有効に分
散されて、樹脂37の各分割部分にクラックが生ずるよう
なことがなくなる。

また、本考案では、収納室34,35,36を仕切る各隔壁33
に、収納室34,35,36にそれぞれ注入された溶融樹脂が流
通するスリット38を形成するようにしている。

したがって、各収納室34,35,36がスリット38によって
相互に導通しているので、第３図に示すように、コイル
ケース５にコイルベース４を組み込んだ状態で、A,B,C
の各部分から収納室34,35,36内にそれぞれ溶融樹脂を注
入する際、各収納室34,35,36内にそれぞれ注入される溶
融樹脂の液面レベルを一様にすることができるようにな
る。

なお、コイルベース４側には、溶融樹脂を注入する際
のマーキング用の突起39が各注入部分にそれぞれ設けら
れている。

そして、そのマーキング用の突起39が見えなくなるレ
ベルまで溶融樹脂が注入される。

このように本考案によれば、各収納室34,35,36の容積
がそれぞれ異なっていても、各収納室ごとに注入する溶
融樹脂の液面レベルを一様にすることができるため、溶
融樹脂の注入管理が容易になる。

効果 以上、本考案によるエンジンの点火コイル装置にあっ
ては、コアに一次巻線と二次巻線とが巻装されたコイル
ユニットを、１つのコイルケース内に複数配設したうえ
で、そのコイルケース内に溶融樹脂を注入して、その樹
脂の硬化によってコイルケースと各コイルユニットとが
一体に成形されるようにしたものにおいて、コイルケー
ス内に複数配設されるコイルユニットの各収納部分をそ
れぞれ隔壁によって仕切って、それぞれ独立したコイル
ユニットの収納室を形成するとともに、複数のコイルユ
ニットの収納室の各間における隔壁に、各収納室間で注
入された樹脂が流通するスリットをそれぞれ設けるよう
にしたもので、サーマルショックによる熱ひずみが各収
納室ごとに分割された樹脂部分に分散して加わり、各樹
脂部分における耐クラック性を有効に向上させることが
できるという利点を有している。

また、本考案では、複数のコイルユニットの収納室の
各間における隔壁に、各収納室間で注入された溶融樹脂
が流通するスリットをそれぞれ設けることによって、各
収納室に注入された溶融樹脂の液面レベルを一様にでき
るという利点を有している。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例によるエンジンの点火コイル
装置における樹脂が注入される前の状態を示す正断面
図、第２図は内部に樹脂が注入された状態を示す正断面
図、第３図は同実施例におけるエンジンの点火コイル装
置の斜視図、第４図は同実施例によるエンジンの点火コ
イル装置の分解斜視図、第５図は同実例におけるエンジ
ンの点火コイル装置の側断面図、第６図はコイルユニッ
トの分解斜視図、第７図は二次端子および二次側ボビン
側に一体に設けられた二次端子ホルダを示す斜視図、第
８図は二次端子ホルダ内に二次端子が組み込まれた状態
を示す斜視図、第９図は一次コイルのワイヤホルダおよ
び一次端子ピンにつながるターミナルプレートの先端に
設けられた噛込部を示す斜視図、第10図は一次コイルの
引出ワイヤに噛込部が噛み込んだ状態を示す斜視図、第
11図（ａ），（ｂ）はベース板上に配設されたターミナ
ルプレートを示す平面図および正面図、第12図は噛込部
およびベース板の一部分を示す斜視図である。 1,2,3……コイルユニット、４……コイルベース、５…
…コイルケース、７……一次コイル、９……二次コイ
ル、14……二次端子、15……二次端子ピン、18……コン
デンサ、24……一次端子カプラ、25……一次端子ピン、
26……ターミナルプレート、28……噛込部、33……隔
壁、34,35,36……コイルユニット収納室、37……樹脂、
38……スリット

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】コアに一次巻線と二次巻線とが巻装された
   コイルユニットを、１つのコイルケース内に複数配設し
   たうえで、そのコイルケース内に絶縁性の樹脂を注入し
   て、その樹脂の硬化によってコイルケースと各コイルユ
   ニットとが一体に成形されるようにしたエンジンの点火
   コイル装置において、コイルケース内に複数配設される
   コイルユニットの各収納部分をそれぞれ隔壁によって仕
   切って、それぞれ独立したコイルユニットの収納室を形
   成するとともに、複数のコイルユニットの収納室の各間
   における隔壁に、各収納室間で注入された樹脂が流通す
   るスリットをそれぞれ設けたことを特徴とするエンジン
   の点火コイル装置。