【発明の詳細な説明】
漂白剤 発明の分野
本発明は、有機ペルオキシ酸及びその製造に関する。本発明は特に、前記有機
ペルオキシ酸の安定性に関する。発明の背景
有機ペルオキシ酸が洗剤組成物の漂白剤として機能し得ることはよく知られて
いる。かかる使用のために提案された有機ペルオキシ酸には、ペルオキシ安息香
酸、ペルオキシフタル酸、その異性体や置換誘導体、ペルオキシアルカン酸、並
びにジペルオキシアルカン二酸(例えばジペルオキシアゼライン酸及びジペルオ
キシドデカン二酸)が含まれる。前記酸の詳細は、米国特許第4,100,09
5号、米国特許第4,170,453号、米国特許第4,325,828号や他
の多数の文献に見ることができる。提案されている他の一連の酸は、ヨーロッパ
特許出願公開第325288号に開示されているフタルイミド置換のペルオキシ
アルカン酸である。炭化水素鎖に沿って極性アミド結合部分を含むアミドペルオ
キシ酸は米国特許第4,634,551号及び米国特許第4,686,063号
に開示されている。
有機ペルオキシ酸の商業的使用に対して、様々な安定性の問題が障害となる。
米国特許第4,170,453号は、別個のカテゴリーの不安定性の問題を認識
し、議論している。ひとつは熱(又は局所加熱を生じる摩擦もしくは衝撃)を受
けたときのペルオキシ酸の不安定性であり、他は使用前のペルオキシ酸の貯蔵安
定性であり、第3の問題はペルオキシ酸含有洗液の安定性に関する。ペルオキシ
酸が本質的に不安定であり、加熱するか、又は大抵の場合は力を加えることによ
り、例えば摩擦もしくは衝撃の結果として発熱するように取り扱うと、発熱分解
し得る。化合物の有効酸素含有率が高くなれば、この形態の不安定性がより顕著
になる。
WO90/07501号(Interox)は、構造特性に応じたペルオキシ
酸の安定性の変動を記載している。同文献は、フタルイミドペルオキシ酢酸が幾
分爆発性であり、より長鎖の類似体の方が比較的安定であると教示している。
従来技術では、貯蔵安定性は幾分異なる問題として提示されている。勿論、突
然発熱分解する材料は貯蔵安定性を示さないが、このような分解がおきずとも、
ペルオキシ酸
は、該酸と混じった不純物又は他の材料と反応した結果貯蔵中に漸進的に分解し
得る。
遷移金属イオンがペルオキシ酸化合物の望ましくない分解を触媒し得ることは
認識されている。従って、ペルオキシ酸化合物をキレート化剤と混合して、有機
ペルオキシ酸含有組成物の貯蔵安定性を高め及び/又はペルオキシ酸の望ましく
ない分解に対して洗液を安定化させることが提案されている。とりわけ、キレー
ト化剤のこのような使用は、米国特許第4,170,453号及び米国特許第4
,100,095号に開示されている。この内容はヨーロッパ特許第34922
0号でも考察されている。
このような貯蔵安定性の問題とは対照的に、従来技術は、熱により発生するペ
ルオキシ酸の発熱分解を不可避的であるとみなしている。従って、米国特許第4
,100,095号は、自己加速分解温度と呼ばれる温度があり、この温度で有
機ペルオキシ酸の発熱分解が無制御(暴走)反応となって、発火のために十分な
熱が発生し得ると説明している。このような分解は摩擦のような点熱源により生
じ得ると指摘されている。
この危険を制御するために、ペルオキシ酸を、加熱する
と吸熱分解するいわゆる発熱抑制剤と混合すべきであると教示されている。従っ
て、組成物が幾分局所加熱されると、ペルオキシ酸の分解により発散した熱が発
熱抑制剤の吸熱分解によって吸収されて、無制御反応は避けられる。
このような見解と一貫して、従来技術は、ごく少量のペルオキシ酸を含み、更
には遷移金属イオンを封鎖するためのキレート化剤がペルオキシ酸の貯蔵安定性
及び/又は使用中の洗液中でのペルオキシ酸の安定性を促進するために導入され
ている組成物に、有機ペルオキシ酸を導入できると開示している。このような組
成物の例は米国特許第4,091,544号及び米国特許第4,170,453
号に開示されている。
ヨーロッパ特許第349220号は、炭化水素鎖にアミド結合を含むアミドペ
ルオキシ酸に関する。同特許は、過酸をリン酸塩緩衝液で洗浄して、洗浄後に過
酸と接触してリン酸塩を幾らか残留させることによりこれらの過酸の貯蔵安定性
をかなり改善できると教示している。アミドペルオキシ酸は酸感受性であり、リ
ン酸塩緩衝液のこの有利な作用は主に、アミドペルオキシ酸製造のための反応に
おいて残留した強酸が中和されたことによるものであると指摘
されている。使用するリン酸塩はオルトリン酸塩、ピロリン酸塩又はこれら2種
の混合物であり得る。このようなリン酸塩は遷移金属イオンを封鎖し得る。しか
しながら、この従来技術の文献では、緩衝能力についてリン酸塩を重要視し、他
のキレート化剤を導入すれば、貯蔵安定性が更に促進し得ると示唆されている。
従って、従来技術は、有機ペルオキシ酸及び該ペルオキシ酸を含む組成物の貯
蔵安定性が、キレート化剤の導入を含む措置によって促進され得ると教示してい
る。しかしながら、いわゆる発熱抑制剤を導入して局所的な熱分解が無制御反応
とならないようにする以外に、熱又は圧力により発生する発熱不安定性を改善す
る方法は提案されていない。発明の定義
前述の見解とは全く対照的に、従来の方法で製造したペルオキシ酸の熱不安定
性を有利に低減できることが知見されている。包括的に言えば、ペルオキシ酸を
遷移金属イオンに対する結合剤と接触させれば熱分解発生温度を上昇させること
ができることが知見されている。
従って、第1の態様では、本発明は、熱によって発生する発熱分解に対する実
質的に水不溶性の有機ペルオキシ酸
の安定性を高めるための遷移金属イオンに対する結合剤の使用を提供する。
第2の態様では、本発明は、80〜99.9重量%の実質的に水不溶性の有機
ペルオキシ酸と、0.1〜20重量%の遷移金属イオンに対する結合剤とを混合
した組成物を提供する。結合剤及びペルオキシ酸は互いの存在下で安定であるが
、但しペルオキシ酸はアミド結合を含まないものとする。有機ペルオキシ酸が遷
移金属イオンに対する結合剤と接触したときの安定性の改善を、発熱分解発生の
温度又は温度域を示す示差走査熱量測定(DSC)により観察することができる
。一般に、本発明で有機ペルオキシ酸を結合剤と接触させると、組成物の熱分解
温度が上昇した。分解は異なる幅の温度域でも発生し得る。従って、示差走査熱
量測定は、最大分解発生温度の上昇及び/又は分解開始温度の上昇を示し得る。
DSC測定の結論は、これらの結果をそれぞれピーク位置のシフト又は低温側の
ピークベースのシフトとして示している。
有機ペルオキシ酸を様々な方法で遷移金属イオンに対する結合剤と接触させる
ことができる。
ひとつの可能性は、固体形態の2種の材料を単に乾式混
合して、80〜99.9重量%のペルオキシ酸を含む混合物を製造することであ
る。
他の可能性は、実質的に水不溶性のペルオキシ酸を結合剤の溶液又は懸濁液で
洗浄して、ペルオキシ酸及び結合剤の総重量を基準に計算して0.3〜3重量%
、好ましくは1〜2重量%、更に好ましくは1〜1.5重量%の結合剤をペルオ
キシ酸と接触したままにすることである。このようにして得られた材料の最終p
H域は3.5〜6.0、更に好ましくは4〜5である。
従って、本発明の第3の態様は、任意のアミド結合を含まない実質的に水不溶
性の有機ペルオキシ酸の熱安定性を高める方法を提供することであり、本方法は
、結合剤及びペルオキシ酸の総重量を基準に計算して0.3〜1.3重量%の結
合剤がペルオキシ酸と接触したままでありかつ3.5〜6.0の最終pHが得ら
れるような条件下でペルオキシ酸を遷移金属イオンに対する結合剤の水溶液又は
懸濁液で洗浄することからなる。
好ましい可能性は、ペルオキシ酸及び結合剤の総重量を基準に計算して0.3
〜3重量%、好ましくは1〜2重量%、更に好ましくは1〜1.5重量%の結合
剤がペルオキ
シ酸と接触したままであるように有機ペルオキシ酸を結合剤の存在下で沈殿させ
ることである。このようにして得られた材料の最終pH域は、3.5〜6、好ま
しくは4〜5である。これにより安定性に有利な改善が見られ、更には、改善さ
れた安定性を損なわずに更にペルオキシ酸を洗浄することが可能である。従って
、このようにして得られた組成物は、他の方法で得られた組成物よりもしっかり
している。
従って、本発明の第4の態様は、実質的に水不溶性の有機ペルオキシ酸の安定
性を高める方法を提供することであり、本方法は、結合剤及びペルオキシ酸の総
重量を基準に計算して0.3〜3重量%の結合剤がペルオキシ酸と接触したまま
でありかつ3.5〜6.0の最終pHが得られるようにペルオキシ酸を遷移金属
イオンに対する結合剤の存在下で沈殿させることからなる。
この好ましい方法は、従来のペルオキシ酸製造手順の一工程として実施するこ
とができる。この手順は、強酸媒質中で適切なカルボン酸を過酸化水素で酸化し
、次いで反応を停止することからなる。従来、この反応停止は、反応混合物を氷
水中で処理して実施されていた。本発明の好まし
い方法を実施するため、反応混合物を、結合剤用前駆体を含む水溶液中で処理す
る。
本発明を実施するための他の可能な方法は、ペルオキシ酸を有機溶媒(例えば
ジクロロメタン)に溶解し、溶液を結合剤水溶液で洗浄し、その後ペルオキシ酸
を有機溶媒と分離することである。適切な結合剤水溶液はpH約4のリン酸塩緩
衝液である。
結合剤を使用して、有機ペルオキシ酸の安定性を高める他の方法は、結合剤を
有機酸と接触させ、次いで得られた酸を対応するペルオキシ酸の製造用出発材料
として使用することである。
従って、有機ペルオキシ酸の安定性を高める方法は、
(i)0.3〜3重量%の結合剤が酸と接触したままであるような条件下で対応
する酸を遷移金属イオンに対する結合剤の水溶液で洗浄するか、又は
(ii)前記遷移金属イオンに対する結合剤の存在下で対応する酸を沈殿させ、次
いで
(iii)工程(i)又は工程(ii)の酸を酸化して、ペルオキシ酸とする
ことからなり得る。
前述の本発明の方法により、有機ペルオキシ酸の粒子を含み、結合剤が前記粒
子内に捕捉された粒状組成物が効果的に得られる。結合剤
適切な結合剤は、暴露条件下ではペルオキシ酸と実質的に反応すべきでない。
従って例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸はペルオキシ酸溶液で酸化するので
、乾燥固体のペルオキシ酸と混合して使用する以外は適さない。
結合剤は、少なくとも1種の遷移金属との不溶性塩を生成し得るか、又は少な
くとも1種の遷移金属イオンとの配位錯体を生成することにより機能し得る。第
3に、結合剤はコロイド状懸濁液中に存在する不純物粒子内の遷移金属部位と結
合し得る。
結合剤が、1種以上の遷移金属イオン(例えば存在し得る微量汚染物質である
第二鉄イオン)に対して良好な親和性を示すことが一般に望ましい。
金属イオンMに対する錯生成剤Lの親和力は、錯生成反応:
nL+M=MLn
の平衡定数で表すことができる。
平衡定数Kは
K=[MLn]/[L]n[M]
(式中、[MLn]、[L]及び[M]は、規定の温度/イオン強度条件下(例
えば25℃、イオン強度0)での水溶液中の配位錯体、遊離した錯生成剤及び遊
離した金属イオンの濃度である)で表される。
このような平衡定数は、錯体の安定定数とも称される。平衡定数は、一連の幾
つかの工程による錯体生成についての総平衡定数であってもよいし、単一工程の
反応についての平衡定数であってもよい。
本発明では、配位錯体を生成する結合剤が好ましくは、少なくとも1種の遷移
金属イオンとの錯体を生成して25℃、イオン強度0での水溶液中の安定定数K
が少なくとも106となるべきである。
多数の安定定数が科学文献に記録されている。このようなデータを編集した2
種類の文献は、Stability Constants of Metal
Ion Complex,IUPAC Chemical Data Seri
es No.21並びにCritical Stability Consta
nts,Arthur E
Martell及びRobert M Smith著である。
錯生成剤が少なくとも1種の遷移金属イオンと前述の配位錯体を生成すること
が好ましい。遷移金属イオンの代表的な例は、鉄、マンガン、コバルト、ニッケ
ル、亜鉛及び銅のイオンである。錯生成剤が少なくともFe3+との錯体を生成す
ることが更に好ましい。
本発明に適した遷移金属用結合剤には、オルトリン酸二水素塩、ピロリン酸二
水素塩、ポリアクリル酸二水素塩、塩化チタン、第二スズ塩及び第一スズ塩が含
まれる。結合剤の有効性、従って適合性を以下で詳細に説明する示差走査熱量測
定で評価することができる。好ましい結合剤はオルトリン酸二水素である。ペルオキシ酸
本発明は、室温での水中溶解度が0.1〜5mmolで、pHが3.5〜6の
実質的に水不溶性の有機ペルオキシ酸に適用される。前述のごとく、このような
酸は様々なものが知られている。
特に考察するペルオキシ酸は、式:
(式中、Rは10個以下の炭素原子を有するアリーレン又はアルキレン基、特に
2〜7個の炭素原子を有するアルキレンである)で表されるフタルイミド置換の
ペルオキシアルカン酸を包含する。
他の種類のペルオキシ酸は、式:
HO3C−R−CO3H
で表されるジペルオキシアルカン二酸、及び式:
CH3−R−CO3H
で表されるペルオキシアルカン酸であり、いずれの式においても、Rは2〜18
個の炭素原子、特に2〜12個の炭素原子を含み、場合によっては炭素鎖にアミ
ド結合の窒素原子のようなヘテロ原子を含むアルキレン基を示す。
他の種類は、式中のRがアリーレン基(例えば過安息香酸、置換過安息香酸、
及びジペルオキシイソフタル酸)を示す対応する芳香族酸である。
ペルオキシ酸の製造は公知の方法で実施することができる。酸媒質中、特にメ
タンスルホン酸のような有機スルホン酸又は硫酸のような無機酸中で過酸化水素
を用いて対応する有機酸を酸化することが好ましい。
反応媒質が硫酸のような無機酸を含むときには、その全て又は一部分を予め過
酸化水素と混合して、例えばそれ自体が過酸化反応を生起し得る一過硫酸を含ん
だ平衡混合物を生成する。このような予備混合により、過酸化水素と硫酸との間
の発熱希釈/反応を過酸化反応と分離する。
ペルオキシカルボン酸試料の安定性を示差走査熱量測定(DSC)により評価
することができる。この技術では、試料を一様に加熱し、入熱速度を監視する。
融解のような吸熱転移が、融解温度で入熱速度のピークとして出現する。発熱分
解は、入熱低下として出現する。結果は通常、温度に対する入熱のグラフを描く
記録ペンを用いて示す。実施例
添付図面を参照する以下の実施例により本発明を更に詳細に説明する。全ての
図面は、示差走査熱量計からのプリントアウトをまとめたものであり、材料試料
の温度に対する入熱速度のグラフである。実施例1
14gの分析用オルトリン酸二水素ナトリウムを1Lの脱イオン水に溶解して
リン酸塩緩衝溶液を調製した。緩衝溶液の酸性度を測定したところ、pH4.5
であることが判明した。
分析によって実質的に純粋であることが確定した市販のジペルオキシドデカン
二酸の試料をDSCにより検査した。得られたプリントアウトを図1としてまと
めた。図示するように、材料は、約83℃で強い発熱分解を示した。
このペルオキシ酸1gを20mlのリン酸塩緩衝溶液と混合し、60℃で1時
間撹拌した。この後、水不溶性酸を濾去し、20℃で空気乾燥した。次いで、こ
れをDSCにより再度検査し、得られたプリントアウトを図2としてまとめた。
図示するように、顕著な違いがあった。試料は、90℃〜100℃の間で融解に
よる吸熱転移を示し、100℃を超える温度で発熱分解が生起した。実施例2.1−2.4
実施例1で使用したのと同一の試験方法を用いて、他の数種のペルオキシ酸の
熱安定性を検査した。DSC測定を適用して、これらのペルオキシ酸をリン酸塩
緩衝溶液で洗
浄する前及び洗浄した後の発熱分解温度を測定することができた。結果を表1に
示す。
前記全ての場合で、リン酸塩緩衝溶液での洗浄後に分解温度がかなり上昇した
ことが判明した。実施例3
WO90/07501号の実施例1と同様の方法でフタルイミド−6−ペルオ
キシヘキサン酸を調製したが、本発明を具体化するために反応処理手順を以下の
ように変更した:
ビーカー内の撹拌中のメタンスルホン酸(15ml=22.29)にフタルイ
ミド−6−ヘキサン酸(2g)を添加して溶液とした。この混合物を水/氷浴で
5℃以下に冷
却した。温度を5℃以下に維持しながら、カルボン酸1モルに対して総量3.5
モルを、即ち理論量と比較して2,5モル過剰を導入するまで約5〜10分間、
絶えず撹拌しながら85重量%の水性過酸化水素(約80%w/w)を漸進的に
反応混合物に添加した。次いで、反応混合物を更に50分間撹拌した。
撹拌終了後、反応混合物を、750gの脱イオン水に溶解した30gのオルト
リン酸水素二ナトリウムからなる氷冷撹拌溶液に注入した。添加前この溶液のp
Hは約8.0であり、添加後にpHは4.0〜4.5に低下した。
所望のペルオキシ酸が溶液から沈殿し、これを13g/LのNaH2PO4(p
H4.5)を含む水溶液で洗浄し、濾過して収集した。フィルターケークを空気
乾燥し、DSCで検査した。得られたプリントアウトを図3としてまとめた。こ
れは、約90℃で吸熱融解を、その後約165℃でピークに達する発熱分解を示
した。
このようにして製造したペルオキシ酸のいくらかを脱イオン水で洗浄した後、
乾燥してDSC測定した。このDSCからのプリントアウトを図4としてまとめ
た。これは、水で洗浄しなかった酸と殆ど変化がないことを示していた。
これは、ペルオキシ酸が遷移金属用結合剤の存在下で沈殿するときに、安定化作
用が、酸粒子の表面で単に吸収される結合剤に依存しないことを示している。実施例4
市販のフタルイミド−6−ペルオキシヘキサン酸試料をDSCで検査した。得
られたプリントアウトを図5としてまとめた。この試料は、対応するフタルイミ
ドヘキサン酸を約5%含んでいた。この試料が約80〜90℃で吸熱融解を示し
、その後約125℃で最大に達する発熱分解を示すことが判明した。
5gのペルオキシ酸を150mlのジクロロメタンに溶解し、次いでこの溶液
を50mlの量の水性NaH2PO4緩衝溶液(pH8.5)で2度洗浄し、次い
で水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥して、このペルオキシ酸の試料を約98%
の純度まで精製した。この後、有機溶媒を蒸発させて、ペルオキシ酸を回収した
。このようにして精製した酸を再度DSCで検査した。プリントアウトを図6と
してまとめた。図6は、約90℃での融解開始後に突然急速に分解することを示
している。アセトニトリルから再結晶化させると、より純粋であるが、より安定
性に欠けるペルオキ
シ酸が得られた。
1gの市販のペルオキシ酸の試料を、実施例1と同様の方法で20mlのリン
酸塩緩衝液pH4.5で洗浄した。乾燥後、リン酸塩で洗浄した酸をDSCで検
査した。
得られたプリントアウトは図3に類似していた。これも、約90℃で吸熱融解
を、その後発熱分解を示した。これは、図3よりも僅かに低い約155℃でピー
クに達した。
ペルオキシ酸試料を前述したようにリン酸緩衝液で洗浄し、次いで脱イオン水
で再度洗浄し、脱水すると、得られた酸は遥かに不安定で、約90℃で発熱分解
した。これは、オルトリン酸塩が恐らくペルオキシ酸粒子の表面上に吸収されて
ペルオキシ酸と混合したままであったことにより安定化することを示している。実施例5
実施例3と同様に精製したフタルイミド−6−ペルオキシヘキサン酸をリン酸
二水素ナトリウムと8:2の酸:リン酸塩重量比で乾式混合した。次いで、得ら
れた混合物をDSCで検査し、痕跡を図7としてまとめた。図6と比較すると、
図6に示す鋭角的な発熱分解ピークが約100〜160℃の範囲で、約140℃
で最大となるより広範なピ
ークに変化したことが分かる。実施例6
リン酸二水素ナトリウムの代わりにポリアクリル酸を使用して前述の実施例を
繰り返した。得られたDSC痕跡を図8としてまとめた。ここでも、発熱分解は
、図6での100℃未満で見られる鋭角的なピークから温度範囲の広いバンドに
変化した。
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1995年2月27日
【補正内容】
一般に、本発明で有機ペルオキシ酸を結合剤と接触させると、組成物の熱分解温
度が増した。分解は異なる幅の温度域でも発生し得る。従って、示差走査熱量測
定は、最大分解発生温度の上昇及び/又は分解開始温度の上昇を示し得る。DS
C測定の結論は、これらの結果をそれぞれピーク位置のシフト又は低温側のピー
クベースのシフトとして示している。
有機ペルオキシ酸を様々な方法で遷移金属イオンに対する結合剤と接触させる
ことができる。
ひとつの可能性は、固体形態の2種の材料を単に乾式混合して、80〜99.
9重量%のペルオキシ酸を含む混合物を製造することである。
他の可能性は、実質的に水不溶性のペルオキシ酸を結合剤の溶液又は懸濁液で
洗浄して、ペルオキシ酸及び結合剤の総重量を基準に計算して0.3〜3重量%
、好ましくは1〜2重量%、更に好ましくは1〜1.5重量%の結合剤をペルオ
キシ酸と接触したままにすることである。このようにして得られた材料の最終p
H域は3.5〜6.0、更に好ましくは4〜5である。
従って、本発明の第3の態様は、アミド結合を含まない
実質的に水不溶性の有機ペルオキシ酸の熱安定性を高める方法を提供することで
あり、本方法は、結合剤及びペルオキシ酸の総重量を基準に計算して0.3〜3
重量%の結合剤がペルオキシ酸と接触したままでありかつ3.5〜6.0の最終
pHが得られるような条件下でペルオキシ酸を遷移金属イオンに対する結合剤の
水溶液又は懸濁液で洗浄することからなる。
34条補正請求の範囲:
1.実質的に水不溶性の有機ペルオキシ酸の熱によって発生する発熱分解に対す
る安定性を高めるための、完全に中和したポリアクリレートを除く遷移金属イオ
ンに対する結合剤の使用。
2.結合剤を固体形態のペルオキシ酸と乾式混合して80〜99.9重量%のペ
ルオキシ酸を含む混合物を製造することからなる、実質的に水不溶性の有機ペル
オキシ酸の熱によって発生する発熱分解に対する安定性を高めるための遷移金属
イオンに対する結合剤の使用。
3.ペルオキシ酸及び結合剤の総重量を基準に計算して0.3〜3重量%の結合
剤がペルオキシ酸と接触したままでありかつこのようにして処理したペルオキシ
酸の最終pHが3.5〜6.0であるような条件下でペルオキシ酸を遷移金属イ
オンに対する結合剤の水溶液又は懸濁液で洗浄することからなる、実質的に水不
溶性の有機ペルオキシ酸の熱によって発生する発熱分解に対する安定性を高める
ための遷移金属イオンに対する結合剤の使用。
4.ペルオキシ酸及び結合剤の総重量を基準に計算して0.
3〜3重量%の結合剤がペルオキシ酸と接触したままでありかつこのようにして
沈殿したペルオキシ酸の最終pHが3.5〜6.0であるように、遷移金属イオ
ンに対する結合剤の存在下でペルオキシ酸を沈殿させることからなる、実質的に
水不溶性の有機ペルオキシ酸の熱によって発生する発熱分解に対する安定性を高
めるための遷移金属イオンに対する結合剤の使用。
5.硫酸及びスルホン酸の中から選択される強酸の存在下で対応するカルボン酸
を酸化してペルオキシ酸を調製し、次いで反応混合物を、結合剤の前駆体を含む
水溶液と混合する請求項4に記載の使用。
6.カルボン酸を結合剤と接触させ、次いでカルボン酸を対応するペルオキシ酸
に酸化することからなる、実質的に水不溶性の有機ペルオキシ酸の熱によって発
生する発熱分解に対する安定性を高めるための遷移金属イオンに対する結合剤の
使用。
7.結合剤及びペルオキシ酸の総重量を基準に計算して0.3〜1.3重量%の
結合剤がペルオキシ酸と接触したままでありかつこのようにして処理したペルオ
キシ酸の最終pHが3.5〜6.0であるような条件下でペルオキシ酸を
遷移金属イオンに対する結合剤の水溶液又は懸濁液で洗浄することからなる、ア
ミド結合を含まない実質的に水不溶性の有機ペルオキシ酸の、熱によって発生す
る発熱分解に対する安定性を高める方法。
8.結合剤及びペルオキシ酸の総重量を基準に計算して0.3〜3重量%の結合
剤がペルオキシ酸と接触したままでありかつこのようにして沈殿したペルオキシ
酸の最終pHが3.5〜6.0であるようにペルオキシ酸を遷移金属イオンに対
する結合剤の存在下で沈殿させることからなる、実質的に水不溶性の有機ペルオ
キシ酸の、熱によって発生する発熱分解に対する安定性を高める方法。
9.80〜99.9重量%のペルオキシ酸を含む組成物が得られるように、ペル
オキシ酸を遷移金属イオンに対する結合剤と乾式混合することからなる、実質的
に水不溶性の有機ペルオキシ酸の、熱によって発生する発熱分解に対する安定性
を高める方法。
10.本質的に、アミド結合を含まない実質的に水不溶性の有機ペルオキシ酸8
0〜99.9重量%と、遷移金属イオンに対する結合剤0.1〜20重量%とを
混合してなり、結合剤及び酸が互いの存在下で安定である組成物。
11.有機ペルオキシ酸粒子を含み、遷移金属イオンに対する結合剤がペルオキ
シ酸粒子に捕捉されている請求項10に記載の組成物。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C11D 7/56 9546−4H
D06L 3/02 7199−3B
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,G
B,HU,JP,KP,KR,KZ,LK,LU,LV
,MG,MN,MW,NL,NO,NZ,PL,PT,
RO,RU,SD,SE,SK,UA,UZ,VN
(72)発明者 オークス,ジヨン
イギリス国、チエシヤー・シー・ダブリ
ユ・7・1・エル・エイチ、ウインスフオ
ード、ダーンホール、ダーンホール・スク
ール・レーン、フアーム・バンガロー(番
地なし)
(72)発明者 トーンスウエイテ,デビツド・ウイリアム
イギリス国、チエシヤー・エル・64・3・
エス・エフ、サウス・ウイラル、ネスト
ン、レイトン・ロード、ロレン(番地な
し)