JPH08319477A - 発熱体組成物の発熱反応制御方法、発熱体組成物、発熱体、貼付剤、香料放散装置、殺虫剤放散装置又は殺菌剤放散装置 - Google Patents

発熱体組成物の発熱反応制御方法、発熱体組成物、発熱体、貼付剤、香料放散装置、殺虫剤放散装置又は殺菌剤放散装置

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JPH08319477A
JPH08319477A JP15215395A JP15215395A JPH08319477A JP H08319477 A JPH08319477 A JP H08319477A JP 15215395 A JP15215395 A JP 15215395A JP 15215395 A JP15215395 A JP 15215395A JP H08319477 A JPH08319477 A JP H08319477A
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container
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Akio Usui
昭男 臼井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、発熱温度を確実に所定値以下に制
限したり、発熱温度が所定値を超えると、吸水剤が吸着
水分を放出してゲル化することにより発熱反応を実質的
に停止させる結果、発熱温度を降下させるようにしたも
のである。 【構成】 本発明は、少なくとも一部が通気性を有する
容器に封入され、且つ空気の存在によって発熱する発熱
体組成物には、発熱温度が所定温度を超えた高温時に、
吸着水分を放出してゲル化する吸水剤を配合し、この吸
水剤からの吸着水分の放出によって発熱反応を実質的に
停止させるものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水を発熱反応に利用す
る発熱体組成物の発熱反応制御方法、発熱体組成物、発
熱体、貼付剤、香料放散装置、殺虫剤放散装置又は殺菌
剤放散装置に関し、特に発熱体組成物の発熱温度を確実
に所定値以下に制限したり、発熱温度が所定値を超える
時間を所定の時間内に制限し、しかも発熱温度が所定値
を超えると事後の温度上昇を抑制するようにした発熱体
の発熱反応制御方法、発熱体組成物、発熱体、貼付剤、
香料放散装置、殺虫剤放散装置又は殺菌剤放散装置に関
する。
【0002】
【従来の技術】日常生活において熱を利用することは非
常に広範囲にわたっており、更にその利用分野が広げら
れる傾向にある。この熱を得る方法もまた多様である
が、近年、金属の酸化反応に伴う反応熱を熱源として利
用する技術が注目されている。特に、少なくとも一部分
に通気性を有する容器に、金属粉、金属の塩化物、水
分、水分を保持する保水剤、発熱反応を促進する発熱反
応助剤を配合した発熱体組成物を封入した発熱体が開発
されてからは、この技術の利用分野が急速に広げられつ
つある。
【0003】この発熱体を熱源として利用する場合、一
方では、発熱温度が低すぎると熱源としての機能を果た
さないので、所要の発熱温度以上に発熱させることが求
められており、他方では、必要以上の発熱を生じさせる
ことはエネルギーの無駄使いになるばかりでなく、場合
によっては、例えば容器の軟化による変形、発熱体組成
物の発熱持続時間の短縮、人体に適用した場合の低温火
傷を含む火傷の危険など、種々の不都合を招くことがあ
るので、所定の温度以上に発熱させないことが求められ
ている。従って、この発熱体において発熱体組成物の発
熱温度を制御することはきわめて重要な問題とされてい
るのである。
【0004】この発熱体組成物の発熱温度を制御するた
めには、発熱体組成物の品質管理及びその充填量の管理
が最も基本的であるが、同時に発熱体組成物に接触させ
る大気中の酸素量を管理することも重要である。発熱体
組成物の発熱温度制御方法としては、まず、この点に着
眼して、発熱体組成物を収容する容器の通気性を制御す
ることにより発熱温度を制御するという方法が採られ
た。
【0005】しかしながら、この方法では発熱反応に伴
い発熱体組成物中の水分が蒸散し、この微細な湿り蒸気
が容器の通気孔に付着して経時的に通気度が変化し、反
応速度が微妙に変化するため、高精度に発熱温度を制御
することが困難であるという問題があることが分かっ
た。
【0006】発熱体組成物の発熱温度の制御方法として
次に提案された方法は、容器の透湿量(度)を制御する
ことにより、通気量(度)を制御する場合に比較して、
一層厳格な温度コントロールを実現するものである。
【0007】具体的に透湿度をどの程度にするかは用
途、発熱体組成物の組成、使用量などに依存して決定す
ればよく、例えば採暖、温罨法などに使用する発熱体や
貼付剤の場合には、発熱温度を37〜43℃にして温熱
効果ないし治療効果と安全性とを両立させるために、こ
の通気面の透湿量は、ASTM法(E−96−80D
法)で特定され、そのバラツキ幅は基準値(プラスマイ
ナス)5〜10%、最大でも基準値(プラスマイナス)
20〜35%程度とバラツキ幅を狭くしたものが用いら
れている。
【0008】ここで、ASTM法(E−96−80D
法)とは、カップ内径6.18cm、高さ1.5cmの
容器内に純水20mlを入れ、該容器の上面を通気性フ
ィルムで閉蓋してロウで固定した後、これを恒温(3
2.2℃)、恒湿(50%)の中に24時間放置してか
ら、容器内の水の減少量を測定し、この水の減少量、す
なわち、蒸散により放出された水の量を(g/m2・2
4hr)に換算して表示する方法である。
【0009】従来、この種の発熱体に使用されている発
熱体組成物としては、上述したように、金属粉、金属の
塩化物、水及び発熱反応を促進する触媒、pH調整剤、
発熱反応助剤などを配合したものが主流を占めており、
金属粉としてはほとんど例外なく鉄粉が用いられてい
る。又、金属の塩化物としては主として塩化ナトリウム
が用いられており、触媒ないし発熱反応助剤としては活
性炭が用いられ、pH調整剤としてはトリポリリン酸ソ
ーダなどが用いられている。
【0010】これらの配合比は、用途に応じて適宜設計
すればよく、例えば、採暖、温罨法などに用いる発熱体
用や貼布材用の発熱体組成物の場合には、発熱温度を3
7〜43℃にして温熱効果ないし治療効果と安全性とを
両立させるために、例えば25〜75重量%、金属の塩
化物1〜10重量%、活性炭1〜15重量%、水分10
〜55重量%、保水剤0.5〜15重量%とすることが
好ましいとされる。
【0011】発熱体は、この発熱体組成物と、発熱体組
成物を封入する容器とからなり、この容器としては、少
なくとも一部に通気性、即ち、容器外の空気を容器内に
導入できるようにしてあれば、外観上特に装飾的に造形
されたものを含んだびん状、缶状、袋体状などおよそ容
器と呼べる態様のものであればよい。
【0012】しかし、この容器の透湿度は上述したよう
に発熱温度の制御に大きな影響を与えているので管理で
きることが必要である。
【0013】例えば、びん状の容器の場合であれば、容
器の口を所定の開口面積に開口させたり、容器の口に開
口を設けた二重蓋を設け、外蓋の回転あるいは緩締状態
によって開口面積ないし通気路断面積を制御できるよう
にしたり、開口率及び開口のアパーチャ比(開口面積と
開口の経路長との比)を管理された蓋で開口を覆ったり
することが必要であり、缶状の容器の場合も同様であ
る。
【0014】袋体状の容器(以下、袋体という。)とし
ては種々の形態が考えられるが、少なくとも一部分が通
気性を有するフィルム、織布、不織布で形成されること
が必要であり、例えば偏平な袋体の場合にはその片面全
体又は両面全体を通気性フィルム、織布、不織布、これ
らのうちの2種以上を積層した積層フィルム、或いはこ
れらのうちの2種以上を重ね合わせた重層構造物にする
ことが、透湿度の管理を厳格化及び製造コストの低減を
図るという観点から推奨される。
【0015】この偏平な袋体に発熱体組成物を封入した
発熱体は、いわゆる、使い捨て型かいろとして採暖に利
用される他、温罨法における温湿布、薬剤の経皮吸収剤
等、温熱治療剤として利用されている。
【0016】又、この発熱体の片面に粘着層を付着させ
て、下着や肌に直接貼付できるようにした貼付剤も提案
されている。
【0017】このような貼付剤を温罨法、特に温熱型の
薬剤経皮吸収剤として利用する場合には、発熱体と粘着
層との間に薬剤担持層を設けたり、粘着層に経皮吸収性
薬剤を含有又は担持させている。
【0018】これら採暖や温罨法に使用されている発熱
体及び貼付剤は、広い意味では生活の快適性を高めるた
めに利用されているといえるが、生活の快適性を高める
という意味では、いわゆる、悪臭を中和したり、感覚的
に隠蔽(マスキング)したりするために快適な芳香を有
する香料を放散させる室内用芳香剤もこの用途に使用さ
れるものであると言える。
【0019】これら室内用芳香剤は一般に低温では芳香
を放散し難いのであるが、生活の快適性を求める風潮が
特に高まっている今日では、例えばげた箱や押入の中な
どの冷所でも快適な芳香を有する適量の香料を放散でき
る室内用芳香剤が求められている。
【0020】低温でも適量の香料を放散できるようにす
るためには、香料を担持する液体、ゲル、樹脂、昇華性
物質に対して多量の香料を担持させたり、揮発性或いは
昇華性の高い香料を用いたり、揮発性或いは昇華性の高
い液体、ゲル、昇華性物質などに香料を担持させるなど
の方法が考えられるが、これらの方法では後述する問題
がある。
【0021】又、広い意味で生活の快適性を高めるとい
う観点からは、香料の一種であり、昆虫や動物の嗅覚に
作用して誘引する物質(以下、誘引物質という。)を用
いて、害虫や動物を選択的に誘引して捕獲し、或いは駆
除する方法や、香料の一種であり、昆虫や動物の嗅覚に
作用して忌避させる物質(以下、忌避物質という。)を
用いて生活環境の中に害虫や動物が侵入することを防止
する方法も良く知られている。これら誘引物質や忌避物
質は撒布という方法で用いられることもあるが、所定の
位置に定置して自然放散させるという方法で用いられる
ことが多い。
【0022】害虫の駆除という観点から、昆虫を死滅さ
せる方法、即ち、種々の殺虫方法も古くから行われてい
るが、近年、殺虫剤を電気ヒータで加熱して有効成分の
揮散を促進するようにした殺虫剤放散装置が市販されて
いる。
【0023】更に、広い意味で生活の快適性を高めると
いう観点からは、かびなどを含めた種々の細菌や微生物
の駆除についても殺虫剤と同列において検討することが
できる。
【0024】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記透湿度
で通気性フィルムを管理して発熱体組成物の発熱温度を
制御する方法は、これまでのところ最も厳格に発熱温度
を管理できる方法であり、又、最も高精度に発熱体組成
物の発熱温度を制御できる方法ではある。
【0025】この通気性フィルムは合成樹脂製フィルム
を延伸して形成したり、或いはこの延伸した合成樹脂製
フィルムに不織布等の通気性補強基材を積層して得られ
る。
【0026】しかしながら、発熱体を製造するにあた
り、常に、前述のように、通気性フィルムにおける透湿
度のバラツキ幅を狭くすることは非常に困難であり、透
湿度のバラツキ幅の狭い通気性フィルムを使用すると、
この通気性フィルムの生産時に不良品が増大して歩留り
が悪くなる結果、通気性フィルムが高価なものとなった
り、資源の無駄にもなる。
【0027】又、このように通気性フィルムとして、透
湿度を特定の範囲(いわゆる納品規格)に制御したもの
を入荷してもその全てがこの範囲のものとは限らず、中
には、容器として、透湿度が前記範囲以外の通気性フィ
ルムで形成されたものが混入したり、或いは発熱体組成
物の組成がばらついたり、更に、外気の温度や湿度等の
環境が異なることもある。
【0028】その結果、最高発熱温度にバラツキが生じ
て、所定温度以上の高温になって種々の弊害が発生す
る。
【0029】具体的には、例えば人体に適用する発熱体
や貼付剤の場合、低温火傷によって、水泡や紅斑等の症
状が生じるなどの弊害が発生し、このため、現実には、
発熱体や貼付剤の使用に際して、例えば適用部位を特定
したり、同じ部位での繰り返し使用を避けたり、発熱体
や貼付剤をベルト等で押えた状態での使用を避けたり、
あつすぎると感じたら直ちに使用を避けることを指示し
たり、就寝中の使用を避けることを指示したりする等、
種々の注意書きがなされることが不可欠になっている。
【0030】又、発熱温度が設計温度よりも高温にな
り、しかも、かなりの長時間にわたり設計温度を上回る
発熱温度が持続されるものが僅かでも混入すると、この
ものは、例えば容器の軟化による変形、悪臭の発生等、
種々の問題が発生する。
【0031】更に、発熱体の使用環境によって、特に気
温が高い時には、発熱反応の反応速度が高くなり過ぎ
て、発熱温度が設計された最高発熱温度を超えることが
あり、安全性を高める上で不利になるという問題があ
り、この問題は極めて深刻である。
【0032】一方、前記芳香剤或いは殺虫用具を用い、
室温で香料や殺虫剤や殺菌剤を蒸散させて、周囲の環境
を快適にしたり、周囲の環境に生息する害虫等を死滅さ
せる場合、これらの物質が室温で蒸散するから、これら
の物質を密閉容器に封入して流通に供する必要が有り、
その取り扱いに相当の注意を要する。
【0033】又、このものは、密閉容器を解放すると、
常に、香料や殺虫剤や殺菌剤が蒸散する結果、不必要な
ときにも蒸散して無駄になる。
【0034】更に、殺虫剤や殺菌剤を電気ヒータで加熱
して有効成分の揮散を促進するようにした殺虫剤・殺菌
剤放散装置の場合、電源の無いところでは使用が不可能
であり、例えば屋外での使用ができない等の問題が有
る。
【0035】そこで、本発明者は、前記技術的課題を解
決するために、空気の存在によって発熱する発熱体を用
い、発熱温度が設計された最高発熱温度を超えた場合、
発熱反応を実質的に停止させると共に、発熱体組成物の
過剰な発熱反応を極力避けて使用可能時間の長期化を図
ることにつき鋭意検討を重ねて来た。
【0036】その結果、使い捨てカイロ等の発熱原理
は、金属粉が酸化される時の発熱を利用するものであ
り、この酸化反応、つまり発熱反応は、特に水分量が、
その速度に大きく影響することが判明した。
【0037】即ち、この酸化反応を促進するためには、
水分が多すぎても少なすぎても反応は著しく遅く、適度
な湿り気が有ることが重要である。この状態が必要な水
分と、空気(酸素)の供給のバランスがとれ酸化反応、
つまり発熱反応の速度が最大になるといわれている。
【0038】水分が少過ぎると、空気は十分であるが反
応に必要な水分が不足し、一方、水分が多過ぎると、こ
の水分がバリヤー層となって空気の供給量が減少するた
め反応は遅くなる。
【0039】そこで、本発明者は、発熱体組成物に用い
られる吸水剤として、所定の温度を超えた際、吸着水分
を放出して金属粉周辺の遊離水分量を増大するものを用
いると、この放出(遊離)水分がバリヤー層となるの
で、空気の供給量が減少して発熱反応を実質的に停止
し、この結果、容器として、透湿度が納品規格以外の通
気性フィルムで形成されたものが混入したり、或いは発
熱体組成物の組成がばらついたり、更に、外気の温度や
湿度等の環境が異なっても、例えば低温火傷や容器の軟
化による変形、悪臭の発生等、の弊害を確実に防止でき
ることを見い出し、本発明を完成するに至ったものであ
る。
【0040】本発明は、前記技術的課題に鑑みて完成さ
れたものであって、まず、発熱温度を確実に所定値以下
に制限したり、発熱温度が所定値を超えると、吸水剤が
吸着水分を放出してゲル化することにより発熱反応を実
質的に停止させる結果、発熱温度を降下させるようにし
た発熱体組成物の発熱反応制御方法及び発熱体組成物を
提供することを目的とする。
【0041】本発明が適用される分野は特に限定される
ものではないが、採暖や温罨法に用いる発熱体及び貼付
剤に適用される場合には、所定温度以上の発熱が長時間
持続すると低温火傷が発生する恐れがあり、この低温火
傷を防止するには、通常の貼付時間内では低温火傷が発
生する恐れがない温度以下に発熱温度を制限するか、所
定の温度を超えると、発熱反応を実質的に停止させて温
度を降下させ、低温火傷が発生しないように制限する必
要がある。
【0042】しかしながら、従来の袋体の通気性ないし
透湿(度)量で通気性を制御する方法では、前記のよう
に温度、湿度などの環境条件や、袋体の透湿(度)量や
発熱体組成物のバラツキが相乗的に作用して、発熱温度
が低温火傷が発生する温度になることがあるのである。
【0043】このため、採暖や温罨法に用いられる発熱
体及び貼付剤の分野では、貼付剤の使用に際して例えば
頭部への貼付を避けるように指示したり、直接肌に貼付
することを避けるように指示したり、就寝中の発熱体や
貼付剤の使用を避けるように指示したりすることが製造
者責任や医師等の療養看護責任を回避するために不可欠
になっている。
【0044】そこで、本発明は、前記技術的課題に鑑み
完成されたものであって、発熱温度を確実に所定値以下
に制限したり、発熱温度が所定値を超えると、発熱反応
を実質的に停止させ、低温火傷の発生を確実に防止でき
るようにした発熱体及び貼付剤を提供することを目的と
する。
【0045】ところで、従来の室内用芳香剤において、
冷所でも適量の芳香を有する香料を放散させるために
は、香料又は香料を担持する揮発性物質の揮発性を高め
るか、液体、ゲル、樹脂、昇華性物質などに含有ないし
担持させる香料の量を多くする方法が挙げられるが、こ
れらの方法では気温が上昇した時に揮散する香料の量が
過大になり、不快感を感じる上、香料が短期間に消耗す
るという問題がある。
【0046】香料として誘引物質や忌避物質を用いる場
合にも同様の問題が生じる。
【0047】そこで、室温では蒸散しない香料を用い、
必要時に加熱して香料を蒸散させることが望ましい。こ
の場合、電源を用いる必要が無く、空気の存在下で発熱
する発熱体を用いることが好ましいが、更に、香料の有
効利用や過熱による弊害を防止して長時間の使用を可能
にすることが一層望ましい。
【0048】本発明は、前記技術的課題に鑑み完成され
たものであり、本発明の発熱体組成物の発熱温度制御方
法及び発熱体組成物を利用して、香料ないし芳香剤を加
熱することにより、必要時に、しかも冷所でも香料を放
散することができるのであり、又、確実に発熱体組成物
の発熱温度を所定値以下に制限したり、発熱温度が所定
値を超えると、発熱反応を実質的に停止させて、高温時
の香料の過剰放散を防止できるようにした香料放散装置
を提供することを目的としている。
【0049】更に、従来の電気ヒータで殺虫剤を加熱し
て放散させる殺虫剤放散装置は、電源設備がないところ
では全く使用できない上、夏期などの高温時には電気ヒ
ータの発熱温度が高くなり過ぎ、殺虫剤が過剰に放散さ
れて不快感を感じると共に、殺虫剤が短期間内に消耗す
るという問題がある。又、種々の細菌や微生物を撲滅す
るための殺菌剤の放散についても殺虫剤と同様の問題が
ある。
【0050】そこで、本発明は、前記技術的課題に鑑み
完成されたものであり、本発明の発熱体組成物の制御方
法及び発熱体組成物を、殺虫剤放散装置又は殺菌剤放散
装置に適用することにより電源設備のないところでも殺
虫剤又は殺菌剤を加熱して放散させることができるので
あり、しかも、殺虫剤又は殺菌剤を加熱する熱源の発熱
温度を確実に所定値以下に制限したり、発熱温度が所定
値を超えると、発熱反応を実質的に停止させて、高温時
の殺虫剤又は殺菌剤の放散量を制限して、過剰放散によ
る不快感及び放散持続時間の短縮を防止できるようにし
た殺虫剤放散装置又は殺菌剤放散装置を提供することを
目的するものである。
【0051】
【課題を解決するための手段】本発明に係る発熱体の発
熱反応制御方法(以下、本発明方法という。)は、前記
の目的を達成するために、少なくとも一部が通気性を有
する容器に封入され、且つ空気の存在によって発熱する
発熱体組成物には、発熱温度が所定温度を超えた高温時
に、吸着水分を放出してゲル化する吸水剤を配合し、こ
の吸水剤からの吸着水分の放出によって発熱反応を実質
的に停止させることを特徴とするものであり、以下、本
発明方法を更に詳細に説明する。
【0052】即ち、本発明方法は、容器として、透湿度
が納品規格以外の通気性フィルムで形成されたものが混
入したり、或いは発熱体組成物の組成がばらついたり、
更に、外気の温度や湿度等の環境が異なっても、例えば
低温火傷や容器の軟化による変形、悪臭の発生等、の弊
害を確実に防止できるようにしたものである。
【0053】本発明方法に用いられる容器は、少なくと
も一部が通気性を有し、しかも後述する発熱体組成物を
封入できる構造であればよく、その形状は特に限定され
るものではないが、具体的には、例えばびん状、缶状、
袋体状など種々の形状に形成したものが用いられる。
【0054】この容器の形状としては、特に、採暖、温
罨法などに用いる場合には、人体などの生体の表面の複
雑な曲面にできるだけ広く接触させることが好ましいの
で、表裏2面のフィルムないしシートからなる偏平な袋
体に形成されることが推奨されるのであり、更に、柔軟
な素材、例えば合成樹脂製フィルム、織布、不織布、こ
れの中の2種以上を積層した積層フィルム、或いはこれ
の中の2種以上を重ね合わせた重層構造物のものなどを
用いることが好ましく、これらの素材のうちでも伸縮性
を有する素材で形成されることが最も好ましい。
【0055】この袋体は、発熱体組成物を投入あるいは
挟入してから開放部をシールすることにより密封したも
のであればよい。シールの形式としては、側面シール
形、2方シール形、三方シール形、封筒形、中央合掌シ
ール形などを採用すればよい。
【0056】又、袋のシール方法としてはヒートシール
が多用されるが、表裏両面のフィルムあるいはシートが
互いにヒートシールできない素材で作られる場合には、
両面の樹脂製フィルムの間にホットメルト系接着剤など
の接着剤、或いは、ホットメルト系の接着フィルムを介
在させて接着させることができる。
【0057】前記容器に通気性(透湿性)を与える方法
は、特に限定されるものではないが、具体的には、例え
ばびん状の容器、缶状の容器などの場合は単に口を開け
たり、口を覆う蓋に通気孔を形成したり、口を通気性フ
ィルムで覆ったりする方法の他に、びん、缶などを通気
性合成樹脂で形成することも挙げられる。
【0058】又、袋体の場合には、任意の一面又は複数
面の一部を通気性フィルム、織布、不織布、これの中の
2種以上を積層した積層フィルム或いはこれの中の2種
以上を重ね合わせた重層構造物で構成することも可能で
あるが、透湿度の管理を厳格化及び製造コストの低減を
図るという観点から、任意の一面又は複数面の全体を通
気性フィルム、織布、不織布、これの中の2種以上を積
層した積層フィルム或いはこれの中の2種以上を重ね合
わせた重層構造物で構成することが推奨される。
【0059】即ち、表裏2面の面を持つ偏平な袋体の場
合には、片面又は両面を通気性フィルム、織布、不織
布、これの中の2種以上を積層した積層フィルム或いは
これの中の2種以上を重ね合わせた重層構造物で構成す
ることが推奨される。
【0060】袋体の片面又は両面に通気性(透湿性)を
与える方法としては、その面を構成する気密性フィルム
に例えばパンチングなどによって多数の微小孔を形成し
たりすることも挙げられるが、容器の製造工程を簡単に
するため、袋体の片面又は両面に、例えば延伸により無
数の微細な通気孔を形成した合成樹脂製フィルム、織
布、不織布或いはこれらの中の2種以上を積層した積層
フィルムを用いることが好ましい。
【0061】ここで使用される通気性合成樹脂製フィル
ム、織布、或いは不織布の素材は特に限定されるもので
はなく、従来から発熱体組成物を封入する袋体の素材と
して使用されている公知のものを用いればよい。
【0062】具体的には、例えばポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニ
ル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレ
ン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン
−酢酸ビニル共重合体、天然ゴム、再生ゴム、合成ゴム
などで形成された通気性フィルムがその例として挙げら
れる。又、織布或いは不織布の場合には更に綿、麻、
絹、羊毛、牛毛、豚毛などの植物性又は動物性天然繊維
を用いたり、これらの天然繊維の中の2種以上又はこれ
ら天然繊維と合成繊維とを混用したりすることができ
る。
【0063】容器の通気性(透湿性)は上述したように
発熱温度の制御に大きな影響を与えているので管理でき
ることが必要であり、例えば、びん状の容器の場合であ
れば、容器の口を所定の開口面積に開口させたり、容器
の口に開口を設けた二重蓋を設け、外蓋の回転あるいは
緩締状態によって開口面積を制御できるようにしたり、
開口率及び開口のアパーチャ比(開口面積と開口の経路
長との比)を管理された蓋で開口を覆ったりすることが
必要であり、缶状の容器の場合も同様である。
【0064】人体に適用する発熱体の場合、通気性フィ
ルムはその透湿度が発熱体の発熱温度及び発熱時間の制
御に影響を与えるのであり、従来は、特に、発熱体の温
度制御を厳格にして、効果的な温熱効果を得ると同時に
低温火傷を防止して安全性を確保するために、透湿度で
通気性フィルムの通気性を管理するのが望ましい。
【0065】通気性フィルムの透湿量は、具体的には、
用途にもよるが、一般に、ASTM法(E−96−80
D法)で50〜2500g/m2・24hrの範囲内に
すべきである。又、この袋体の強度を増大させるため
に、通気面の通気性フィルム、織布、或いは不織布に更
に通気性フィルム、織布、或いは不織布を積層あるいは
重ね合わせることができる。但し、この場合にも、温熱
効果ないし温刺激効果と安全性とを両立させるために、
この通気面の透湿量はASTM法(E−96−80D
法)で50〜2500g/m2・24hrの範囲内にす
べきである。
【0066】通気性フィルムの透湿量が、50g/m2
・24hr未満では発熱量が少なくなり、十分な温熱効
果が得られないので好ましくなく、一方、2500g/
2・24hrを超えると所定の温度を超えて種々の弊
害を発生するから好ましくない。
【0067】ところで、従来、通気性フィルムとして
は、通気面の透湿量がASTM法(E−96−80D
法)で特定され、しかもそのバラツキ幅が基準値(プラ
スマイナス)5〜10%、最大でも基準値(プラスマイ
ナス)20〜35%程度と厳格に管理する必要があった
が、本発明によって、さ程厳格に管理する必要がなく、
通気性フィルムの歩留りを良好にしてコストを廉価にで
きるうえ、歩留りが至極向上するのである。
【0068】前記偏平な袋体の片面のみを通気面とする
場合、他面には気密性を有するフィルムやシートを用い
た気密面とされる。この気密性フィルムないしシートの
素材としては、具体的には、例えばポリエチレン、ポリ
プロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニ
ル、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、ポリスチレ
ン、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、エチレン
−酢酸ビニル共重合体、天然ゴム、再生ゴム、合成ゴム
などが挙げられる。
【0069】又、この袋体の強度を増大させるために、
気密面の気密性フィルムないしシートに別の通気性フィ
ルム、織布、不織布、気密性フィルム或いは気密性シー
トを積層又は重ね合わせることができる。気密面の気密
性フィルムないしシートに積層又は重ね合わされる通気
性フィルム、織布、不織布の素材については上述した通
気面の通気性フィルム、織布、不織布の素材の説明と同
様であり、気密面の気密性フィルムないしシートに積層
又は重ね合わされる気密性フィルムの素材は前述した気
密面の気密性フィルムないしシートと同様である。
【0070】本発明方法に用いる発熱体組成物は、空気
中の酸素と接触して、金属酸化反応を惹起し、且つ所定
の温度を超えると吸着水分を放出してゲル化し、且つこ
の吸着水分の放出によって発熱反応を実質的に停止させ
る吸水剤を必須成分とするものであればよく、具体的に
は、金属粉、金属の塩化物、水及び所定の温度を超える
と吸着水分を放出してゲル化し、且つこの吸着水分の放
出によって発熱反応を実質的に停止させる吸水剤を必須
成分とするものが挙げられる。
【0071】ここで用いる金属粉は、特に限定されず、
鉄粉、銅粉、アルミニウム粉、マグネシウム粉などがそ
の例として挙げられるが、至極安全で、しかも価格的に
安価であり、比較的豊富に得られ、且つ実用に適した反
応速度が得られる鉄粉を用いることが推奨される。
【0072】又、ここで用いる金属の塩化物も特に限定
されるものではなく、使用される金属粉の酸化反応を促
進或いは抑制する触媒作用を有するものであればよく、
例えば鉄粉を使用する場合には塩化ナトリウム、塩化カ
リウムなど鉄粉の酸化反応を促進する触媒作用を有する
ものをその例として挙げることができる。
【0073】発熱反応助剤は、発熱反応を促進する作用
を有するものであればよく、例えばカーボンブラック、
活性炭などの炭素成分をその例として挙げることができ
る。
【0074】前記吸水剤は、所定の温度を超えると吸着
水分を放出してゲル化し、且つこの吸着水分の放出によ
って発熱反応を実質的に停止させるものであり、この吸
水剤を発熱体組成物に配合することにより、発熱体組成
物の発熱温度がある温度を超えると、吸水剤が吸着水分
を放出して金属粉周辺にバリヤー層を形成する結果、発
熱反応を実質的に停止するものをいう。従って、発熱温
度の上昇が次第に鈍化し、やがて停止した後降下しはじ
めることになり、最高発熱温度を所定の温度以下に制限
したり、所定の温度以上の発熱持続時間を所定の時間内
に制限したりできるようになるのである。
【0075】ここで、発熱反応が実質的に停止すると
は、反応速度が低下し、発熱反応によって発生する熱量
が、放熱量より小さくなって徐々に温度が降下すること
を言う。
【0076】本発明に用いる吸水剤としては、所定の温
度を超えると、吸着水分を放出してゲル化し、且つこの
吸着水分の放出によって発熱反応を実質的に停止させる
ものであれば、特に限定されるものではない。
【0077】即ち、吸水剤として、発熱温度が所定の温
度を超えるものは、温度上昇時に、吸着水分を放出して
ゲル化し、且つこの吸着水分の放出によって発熱反応を
実質的に停止させ、その結果、ゲルが金属粉周辺の遊離
水分を吸収して液状化し、再度、発熱した場合、再び発
熱温度が所定の温度を超えて種々の弊害が発生する恐れ
がある。
【0078】そこで、本発明方法では、発熱反応によっ
て、発熱温度が所定の温度を超えるものは、その温度以
上になると、吸着水分を放出して金属粉周辺にバリヤー
層を形成する結果、金属粉と空気の接触を減少させて発
熱反応を実質的に停止するものである。
【0079】本発明方法では、発熱温度が所定値を超
え、吸水剤の水分放出に基づく発熱反応を抑制するにあ
たり、発熱反応によって発生する発熱量を周囲への放熱
量以下に制限して、発熱温度が再び所定の温度以上に昇
温することを防止することが好ましい。
【0080】発熱温度が所定値を超え、吸水剤の吸着水
分放出に基づき発熱温度が低下した場合、その後の金属
粉周辺の水分の状態によって、再度の発熱反応によって
温度上昇が起きると、発熱反応の再活性化により、発熱
温度が最初と同じように急速に上昇したり、徐々に上昇
して、再度安全温度を超えるような発熱をする恐れがあ
る。
【0081】即ち、本発明方法は、容器として、透湿度
が納品規格以外の通気性フィルムで形成されたものが混
入したり、或いは発熱体組成物の組成がばらついたり、
更に、外気の温度や湿度などの環境が異なる等、予想外
の出来事によって、所定の温度を超える場合、この所定
の温度が複数回にわたって超えると、例えば低温火傷や
容器の軟化による変形更に火災等が発生する恐れが極め
て高くなったり、香料或いは殺虫剤又は殺菌剤が異常に
蒸散して悪臭が発生する結果、不快感を感じるなどの弊
害が発生する。
【0082】本発明方法は、このような弊害を確実に防
止できるようにしたものである。
【0083】この吸水剤としては、温度が所定値を超え
ると、吸着水分を放出してゲル化し、且つこの吸着水分
の放出によって発熱反応を実質的に停止するものであれ
ばよく、例えば水溶性セルロースエーテルなどをその例
として挙げることができる。
【0084】この水溶性セルロースエーテルの中では、
単独或いは2種以上の混合物が、吸着水分を放出してゲ
ル化し、且つこの吸着水分の放出によって発熱反応を実
質的に停止するものであればよいが、発熱反応の実質的
な停止に基づき温度が降下してゲルが液状化し、再度温
度上昇が起きる恐れが有る場合には、後述するゲル安定
剤を混合してゲルの液状化を防止するのが望ましい。
【0085】この水溶性セルロースエーテルとしては、
例えばセルローズをメトキシル基でエーテル化したメチ
ルセルロース(信越化学工業株式会社製、商品名:メト
ローズSM15、メトローズSM25、メトローズSM
400、メトローズSM4000など)、セルローズを
ヒドロキシプロポキシル基でエーテル化したヒドロキシ
プロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製、
商品名:メトローズ60SH−50、メトローズ60S
H−4000、メトローズ90SH−4000、メトロ
ーズ90SH−30000、メトローズ90SH−10
0000など)、セルローズをヒドロキシエトキシル基
でエーテル化したヒドロキシエチルメチルセルロースな
どの水溶性セルロースエーテル(信越化学工業株式会社
製、商品名:メトローズ60SH−50、メトローズ6
0SH−4000、メトローズ90SH−4000、メ
トローズ90SH−30000、メトローズ90SH−
100000など)などをその例として挙げることがで
き、もちろん、これらの中の2種類以上を混用してもよ
いのである。
【0086】例えばこの水溶性セルロースエーテルの水
溶液を加熱すると、ある温度(増粘開始温度)までは粘
度が低下するが、更にこの温度以上に加熱すると、水溶
性セルロースエーテルが吸着水分を放出して、粘度が高
まってゲル化する(以下、この現象を熱ゲル化現象と呼
ぶ。)。
【0087】つまり、水溶性セルロースエーテルは、加
熱されると、吸着水分を放出しながらゲルになるという
性質を有しており、換言すれば、高温になると、吸着水
分を放出してゲル化するという性質を備えているのであ
る。
【0088】この場合、水溶性セルロースエーテルに、
後述するように増粘開始温度の調整剤を添加したり、或
いは発熱温度が所定の温度を超えた場合、温度上昇時に
吸着水分を放出し、発熱反応を抑制して降温した時にも
水分の吸着を抑制して、発熱反応を実質的に停止するゲ
ル安定剤を添加しても良いのである。
【0089】従って、この吸水剤を発熱体組成物に配合
することにより、発熱温度が増粘開始温度以上に上昇す
れば、吸水剤が吸着水分を放出して金属粉と空気との接
触を抑制し、その結果、発熱反応が実質的に停止される
のである。
【0090】発熱反応が実質的に停止する温度は、吸水
剤が吸着水分を放出し始める温度と、発熱体組成物の発
熱量のバランスによって設定することができる。
【0091】例えば前記水溶性セルロースエーテルの吸
着水分を放出し始める温度は増粘開始温度であると解さ
れるのであり、この増粘開始温度は、エーテル化剤の種
類、置換率、セルロース分子量、溶液として添加する場
合にはその濃度、他の添加物(増粘開始温度の調整剤及
び/又はゲル安定剤)を添加した場合にはその添加量
(濃度)、昇温速度の影響を受ける。従って、吸水剤と
して水溶性セルロースエーテルを用いる場合には、エー
テル化剤の種類、置換率、セルロース分子量、溶液の濃
度、他の添加物の添加量(濃度)などを適宜選択した
り、発熱体組成物の組成、使用量などを適宜選択して昇
温速度を一定以下に制限したりすることにより、増粘開
始温度を任意に設定することができる。
【0092】ここで、水溶性セルロースエーテルのエー
テル化剤としては、具体的には、例えば塩化メチル、酸
化プロピレン或いは酸化エチレン等をその例として挙げ
ることができる。
【0093】又、吸水剤の増粘開始温度の調整剤として
は、配合することによって増粘開始温度を変化させるも
のであれば特に限定されるものではないが、具体的に
は、例えばFeCl3、MgCl2又は塩化ナトリウム等
の金属の塩化物、水酸化ナトリウム又は水酸化カルシウ
ム等の金属の水酸化物、Na2CO3・10H2OやAl2
(SO43・18H2O等の金属の炭酸塩や硫酸塩等の
他にグルコース、グリセリン、エタノール又はポリエチ
レングリコールなどの有機化合物がその例として挙げる
ことができる。
【0094】又、ゲル安定剤としては、発熱温度が所定
の温度を超ると、吸水剤が吸着水分を放出してゲル化す
ると、この温度近傍でゲル中の官能基と架橋して温度が
低下しても液状化、つまりこのゲルが周囲の遊離水分を
吸着するのを抑制する物質であれば特に限定されるもの
ではなく、このゲル安定剤を配合することによって、温
度が低下しても液状化を抑制する結果、発熱反応を実質
的に停止できるのである。
【0095】具体的には、例えば塩化アルミニウム、多
価イソシアネート、ポリイソシアネート化合物、有機過
酸化物、有機金属塩、金属キレート化合物、多官能性化
合物等の架橋性物質が挙げられるのであり、これらのう
ち、所定の温度で化学的架橋を発生する物質が選択、使
用される。
【0096】前記の増粘開始温度の調整剤又はゲル安定
剤の配合割合としては、所要の増粘開始温度が確保され
る範囲、又は設定温度以上の高温時において、吸水剤が
吸着水分を放出してゲル化し、このゲルの安定化が確保
される範囲、であれば特に限定されるものではないが、
具体的には、用いられる増粘開始温度の調整剤又はゲル
安定剤によっても異なるが、一般に、吸水剤100重量
部に対し、増粘開始温度の調整剤又はゲル安定剤が0.
01〜1000重量部の範囲、好ましくは0.1〜50
0重量部の範囲、特に好ましくは0.5〜300重量部
の範囲とするのが望ましく、吸水剤100重量部に対
し、増粘開始温度の調整剤又はゲル安定剤が0.01重
量部未満では所要の効果が得られない恐れがあり、一
方、吸水剤100重量部に対し、増粘開始温度の調整剤
又はゲル安定剤が1000重量部を超えると、意味がな
いだけでなく、発熱体組成物全体の組成に影響を与え、
所要の発熱時間が得られない恐れがあり、従って、いず
れの場合も好ましくない。
【0097】具体的には、例えば前記水溶性メチルセル
ロース(吸水剤、信越化学工業株式会社製、商品名:メ
トローズSM4000)の2重量%水溶液では、添加物
がない場合には増粘開始温度は55℃であり、採暖、温
罨法などに用いた場合に低温火傷を生じるおそれがある
が、塩化ナトリウム或いはNa2CO3・10H2Oを5
重量%添加した場合などには増粘開始温度は40℃とな
り、低温火傷が発生する恐れを無くすることができる。
【0098】又、ヒドロキシプロピルメチルセルロース
(吸水剤、60SH−4000、2重量%水溶液)の増
粘開始温度は無添加物の場合には75℃であるにも拘わ
らず、Al2(SO4)3・18H2Oを5重量%添加し
た場合には50℃となり、発熱体組成物中の遊離水分を
吸水剤に吸収させ、発熱反応を抑制することができる。
【0099】更に、複数種類の水溶性セルロースエーテ
ルを併用する場合には、その配合比を適宜選択すること
により、増粘開始後の粘度上昇速度、温度上昇率、最高
発熱温度などを制御することができるので、最高発熱温
度を所定の温度以下に制限したり、所定の温度以上の発
熱持続時間を所定の時間内に制限したりすることができ
る。
【0100】ところで、前記水溶性セルロースエーテル
の場合、ゲル化した後に降温すると、ゲルが周囲の遊離
水分を吸収して液状化するのを制御する。この降温時の
吸着開始温度及び単位時間放水量はエーテル化剤の種
類、置換率、セルロース分子量などに依存して変化する
ので、これらエーテル化剤の種類、置換率、セルロース
分子量などを適宜選択することにより最高発熱温度から
任意の単位時間吸着量で吸着させることができる結果、
容易に吸着開始温度と単位時間吸着量を制御して所定の
温度以上での発熱量を周囲への放熱量よりも小さく制限
することかできる。
【0101】この場合、ゲル安定剤を配合し、発熱温度
が所定の温度を超え、吸水剤が吸着水分を放出してゲル
化したとき、この温度近傍でゲル中の官能基と架橋して
温度が低下しても液状化、つまりゲルが周囲の遊離水分
を吸着するのを抑制するように構成してもよいのであ
る。
【0102】なお、前記水溶性セルロースエーテルは特
殊な有機溶媒にも溶解し、一般的には単独溶剤より例え
ばメタノールと塩化メチレンとの混合溶剤などの混合溶
剤の方に良く溶ける。これらの他には、メタノール(あ
るいはエタノール)とクロロホルム、四塩化炭素、ジク
ロロエタン、トリクロロエタン等の塩化物との混合溶
剤、メタノールとエチレンブロマイド混合溶液、ジメチ
ルホルムアミド、酢酸、ベンジルアルコール、エチレン
クロルヒドリン、ピリジン、蟻酸、酪酸、アニリンなど
に可溶である。
【0103】そして、これらに溶解しても、所定の高温
以上になれば吸着水分を放出して、温度を低下させると
いう性質は全く変わらないのであり、これらの有機溶剤
を併用することも妨げない。これらの有機溶剤に溶解し
た場合、特に混合溶剤の場合には溶剤の混合割合により
粘度を変化させて、製造の容易化ないし高速化を図るこ
とが可能である。
【0104】本発明方法において、発熱体組成物に更に
保水剤を配合し、保水剤に吸収させた水分を徐々に遊離
させることが可能であり、この場合には、吸水剤の吸水
により発熱反応を保水剤から徐々に遊離される水分によ
って一定レベル以上に活性化することができる結果、要
求される最低発熱温度を保持させることができると共
に、発熱持続時間を長くし、発熱体組成物の利用率を高
めることができる。
【0105】この保水剤としては、無機質保水剤及び/
又は有機質保水剤が挙げられるが、特に、有機質保水剤
或いは有機質保水剤と無機質保水剤の混合物が保水性が
高く、発熱体組成物のベトツキが無くなって取り扱い性
が良いので望ましい。
【0106】即ち、発熱体組成物に水分を保持する水溶
性セルロースエーテル以外の吸水性ポリマーからなる保
水剤を配合し、この保水剤に吸収させた水分を徐々に遊
離させるのが望ましい。
【0107】前記無機質保水剤としては、例えばパーラ
イト、活性炭等の炭素成分、クリストバライト、バーミ
キュライト、シリカ系多孔質物質、ケイ酸カルシウム、
シリカ粉等が挙げられる。
【0108】前記有機質保水剤としては、有機質で、水
分を吸収し、保持するものであれば特に限定されるもの
ではないが、体積及び重量をできるだけ小さくするため
に、自重の10倍以上、特に50倍以上の水分を吸収す
る吸水性ポリマーを用いることが推奨されるのであり、
特に、架橋結合を導入して水に対する溶解性を制御した
吸水性ポリマーが望ましい。
【0109】具体的には、特公昭49−43395号公
報に開示されている澱粉−ポリアクリルニトリル共重合
体、特公昭51−399672号公報に開示されている
架橋ポリアルキレンオキシド、特公昭53−13495
号公報に開示れているビニルエステル−エチレン系不飽
和カルボン酸共重合体ケン化物、特公昭54−3071
0号公報に開示されている逆相懸濁重合法によんで得ら
れる自己架橋ポリアクリル酸塩、特開昭54−2009
3号公報に開示されているポリビニルアルコール系重合
体と環状無水物との反応生成物、特開昭59−8430
5号公報に開示されているポリアクリル酸塩架橋物、ボ
リアクリル酸ソーダ、CMC、ポリビニルアルコール、
ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、ヒドロキシエチ
ルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ソーダ、
ペクチン、カルボキシビニルポリマー、ゼラチン、ボリ
エチレンオキサイドなどから選ばれた1種又は2種以上
の混合物が挙げられる。
【0110】この吸水性ポリマーの市販品の例として
は、例えば三洋化成社製のサンウェットIM−300、
サンウェットIM−300MPS、サンウェットIM−
1000又はサンウェットIM−1000MPS等、製
鉄化学社製のアクアキープ4Sやアクアキープ4SH
等、住友化学社製のスミカゲルNP−1020、スミカ
ゲルNP−1040、スミカゲルSP−520及びスミ
カゲルN−1040等、クラレ社製のKIゲル201−
KやKIゲル201K−F2等、荒川化学社製のアラソ
ープ800、アラソープ800F等が挙げられるのであ
り、これらのうち、吸水性が高く、加温による粘度低下
が少ないなどの理由により、三洋化成社製のサンウェッ
トIM−300MPSやサンウェットIM−1000M
PS、住友化学社製のスミカゲルNP−1020やスミ
カゲルNP−1040、クラレ社製のKIゲル201K
−F2、荒川化学社製のアラソープ800Fなどが特に
好ましい。
【0111】本発明方法に使用する発熱体組成物の各成
分の配合比は、用途に応じて適宜設計すればよく、例え
ば、採暖、温罨法などに用いる発熱体用や貼布剤用の発
熱体組成物の場合には、発熱温度を37〜43℃にして
温熱効果ないし治療効果と安全性とを両立させるため
に、例えば鉄粉25〜75重量%、金属の塩化物1〜1
0重量%、活性炭やカーボンブラック等の炭素成分1〜
15重量%、水分10〜55重量%、吸水剤0.5〜3
5重量%とすることが好ましく、必要に応じて添加され
る1〜20重量%の保水剤が配合される。
【0112】加えて、本発明方法においては、香料が容
器内に封入され、又は容器中に配合され、若しくは容器
外に担持させることができるのであり、これにより、比
較的低温においても発熱体組成物の発熱によって香料又
はその担持体を加熱して十分に香料を放散させることが
できるのであり、しかも、環境温度あるいは発熱体組成
物の発熱温度が所定値以上になると発熱体組成物の発熱
反応を実質的に停止させて、最高発熱温度を制限した
り、所定の発熱温度以上の発熱持続時間を制限したりし
て、香料が過剰に放散されることを防止することができ
るようになる。
【0113】ここで使用される香料とは、一般に香り
(匂い)を与える物質として用いられるものを言い、特
に環境用香料、誘引物質及び忌避物質が重視される。
【0114】この香料としては、天然香料、合成香料及
びこれらの中の2種以上を調合した合成香料が含まれ
る。又、天然香料の中には原料が植物界から得られる植
物性香料と動物界から得られる動物性香料とが含まれ
る。
【0115】植物性香料のうち、植物の各器官から得ら
れる揮発性の油は精油と呼ばれ、これが最も代表的な香
料である。主な精油としては、アニス油、アビエス油
(針葉油)、アヨワン油、イランイラン油、イリス油
(オリス油)、オークモス、オコチャ油(ブラジリアン
サッサフラス油)オポパナックス油、オレンジ油、カシ
ア油、カナンガ油、キャラウェー油、クローブ油(丁子
油)、コリアンダー油、サッサフラス油、シトロネラ
油、ショウノウ油、シンナモン油、シンナモン葉油、ジ
ャスミン花精油、ジンジャグラス油、スペアミント油、
スターアニス油(大ウイキョウ油)、セダー油、ゼラニ
ウム油、チュベロース油(月下香油)、テレピン油、夏
ミカン油、ナツメグ油(ニクズク油)、ネロリ油、パチ
ュリー油、パルマローザ油、ヒバ油、ビャクダン油、フ
ェンネル油、プチグレン油、ベイ油、ベチパー油、ペッ
パー油(はっか油)、ペパーミント油、ベルガモット
油、芳ショウ葉油、ボアドロース油、ユーカリ油、ライ
ム油、ラベンダー油、リナエロ油、レモン油、レモング
ラス油 ローズ油、ローズマリー油などが挙げられる。
【0116】動物性香料の主なものとしては、いわゆ
る、室内用芳香剤に使用されるじゃ(麝)香、霊びょう
(猫)香、竜ぜん(涎)香、海り(狸)香などの他、各
種昆虫または動物の性フェロモン、集合フェロモンなど
の誘引物質、各種昆虫または動物の警報フェロモンなど
の忌避物質をその例として挙げることができる。
【0117】なお、誘引物質としては、植物性香料であ
るアンゲリカ油、シトロネラ油、カラシ油などの精油や
クワ生葉、アカマツ樹皮、衰弱した樹木の心材、アカマ
ツ、ツガ、イネなどの植物をその例に加えることができ
る。
【0118】又、忌避物質としては、ローズゼラニウム
油、サンダルウッド油、ペッパー油(はっか油)などの
植物性香料をその例として挙げることができる。
【0119】合成香料の種類は非常に多く、しかも、そ
の数が次第に増えてきているが、室内用芳香剤に使用さ
れる代表的なものとしては、ゲラニオール、ネロール、
リナロール、それらのエステル、シトラールなどのテル
ペン系合成香料;ベンジルアルコール及びそのエステ
ル、フェネチルアルコール、ベンズアルデヒド、フェニ
ルアセトアルデヒド、シンナムアルデヒド、α−n−ペ
ンチルシンナムアルデヒド、α−n−ヘキルシンナムア
ルデヒド、シクラメンアルデヒド、リリアール(商品
名)、アニスアルデヒド(オーベピン)、ヘリオトロピ
ン(ピペロナール)、バニリン、サリチル酸メチル、サ
リチル酸イソベンチル、サリチル酸ベンジル、アントラ
ニル酸メチル、N−メチルアントラニル酸メチル、クマ
リン、ニトロベンゼン系ムスク、インダン系及びテトラ
リン系ムスク、ラズベリーケトンなどの芳香族系合成香
料;アルコール及びエステル、アルデヒド及びケトン、
アセタール及びケタール、ラクトン、大環状ケトン、大
環状ラクトン、シクロヘキサン系などの脂肪族系合成香
料の他、精油微量成分として、3−ヘキセノール(青葉
アルコール)、2,4−ノナジエナール(cis-キュウリ
アルデヒド,trans-薫葉アルデヒド)、2−ヘキセナー
ル(青葉アルデヒド)1−オクテン−3−オール(マツ
タケアルコール)などの脂肪族不飽和化合物;ラバンジ
ュロール、ラバンジュロールエステル類などのラベンダ
ー油特有成分;ローズオキシド、フラノイド型あるいは
ピラノイド型のリナロールオキシドなどのテルペン系オ
キシド類;cis-ジャスモン、ジャスモン酸メチル、イン
ドール、ジャスミンラクトン、ジヒドロジャスモン酸メ
チルなどのジャスミン花精油成分及び類似化合物;α−
ダマスコン、β−ダマスコン、β−ダマセノンなどのロ
ーズ油精油成分;α−イロン、β−イロン、γ−イロン
などのイリス油特有成分;α−サンタロール、β−サン
タロールなどのビャクダン(白檀)油特有成分;ヌート
カトンなどのグレープフルーツ油精油成分;メチルアト
ラレートなどのオークモス特有成分など、又、天然フレ
ーバー特有成分としてシクロテン、マルトール、ピラジ
ン類、アセチルピロール、フルフリルメルカプタン、2
−イソブチルチアゾールなどを例として挙げることがで
きる。
【0120】誘引物質として利用される合成香料(合成
誘引剤)としては、2−メチル−4−シクロヘキセンカ
ルボン酸tert- ブチル(Siglure) 、4(又は5)−クロ
ル−2−メチル−シクロヘキサンカルボン酸tert- ブチ
ル(Trimedlure)、メチルイソオイゲノール、ベトロール
酸、メチルオイゲノール、2−アリルオキシ−3−エト
キシベンズアルデヒド、4−(p−アセトキシフェニ
ル)−2−ブタノン(Cue-lure)、4−(p−ヒドロキシ
フェニル)−2−ブタノン(ラズベリーケトン)、アニ
シルアセトン、アンスラニル酸メチル、プロピオン酸フ
ェネチルと酪酸フェネチルとオイゲノールとゲラニオー
ルとの混合物、ゲラニオール、アネトール、ファルネソ
ール、ゲラニオールとアネトールとの混合物、アネトー
ルとオイゲノールとの混合物、α,β−ヨノン、γ−
(4−ペンテニル)−γ−ブチロラクトン、δ−ノニル
ラクトン、バニリン、マルトール、エチルマルトールな
どをその例として挙げることができる。
【0121】更に、忌避物質として利用される合成香料
(忌避剤)としては、シンナミックアルデヒド、γ−ノ
ニルラクトン、メントール、シトラール、シンナミック
アルコール、メチルオイゲノール、ゲラニオール、リナ
ロール、フェニルアセトアルデヒド、ベンズアルデヒ
ド、ギ酸ネリル、アネトールなどをその例として挙げる
ことができる。
【0122】本発明方法において、前記香料は容器内に
封入され、又は容器中に配合され、若しくは容器外に担
持される。
【0123】香料を容器内に封入する方法としては、香
料を直接に発熱体組成物に配合したり、液体、ゲルある
いは固体に担持させて発熱体組成物に配合したり、発熱
体組成物とは分離して容器内に直接、あるいは液体、ゲ
ルあるいは固体に担持させて封入する方法とが挙げられ
る。
【0124】香料を液体に担持させたものは、液状タイ
プ芳香剤と呼ばれ、その液体の種類によって水ベースの
香料又は油ベースの香料と呼ばれる。液状タイプ芳香剤
には室温で揮散する香料が多用され、容器の口の部分に
挿入したフェルトや濾紙などの揮散体に液を吸い上げ、
揮散体と容器の口の開閉調節とにより揮散速度を調節し
ている。
【0125】香料をゲルに含ませたものは、ゲルタイプ
芳香剤と呼ばれ、大半は基材中の約80%以上を水が占
める水ゲルタイプのものであり、他にジベンジリデンソ
ルビトールを使用して油をゲル化させる油ゲルタイプの
芳香剤がある。
【0126】水ゲルタイプのものはパラ剤のような刺激
臭がなく、水がキャリアーとなって香料が一様、かつ、
同時に揮散し易くなるので、かなりデリケートな香りも
使用できる。水ゲルタイプのゲル化剤としては、カラギ
ーナンが最も一般的であるが、カラギーナン、ローカス
トビーンガム、塩化カリウム、CMCの組合せ、銅カラ
ギーナンとイオターカラギーナンとの組合せなどが基本
的なものであり、香気の持続性とゲルの安定性を改良し
たものにカラギーナン、寒天、ローカストビーンガム、
ポリビニルアルコール、シドロキシブロピルセルロー
ス、グアーガム、アラビアガムの組合せ、カラギーナン
と界面活性剤との組合せなどがある。又、油ゲルタイプ
の芳香剤は高濃度に香料を含有させることができる。
【0127】ゲルタイプ芳香剤に望ましい香調として
は、ジャスミン、ローズ、モクセイ、ムゲット、ガーデ
ニア、スミレ、ラベンダー、ライラックなどの花香調と
果実・新鮮・柑橘系の調子を加味したもの、柑橘系でレ
モン中心のさわやかなもの、新鮮さを強調しない青草な
いしミント調の自然の清々しさを想起させるものなどが
挙げられる。
【0128】香料を担持する固体としては、例えばセラ
ミックスなどの多孔質粉粒体、マイクロカプセル、紙、
織布、不織布など昇華性のない物質を用いてもよいが、
香料の放散性を高める上では、昇華性を有する物質(昇
華性物質)を併用することが推奨される。
【0129】この昇華性物質に香料を担持させたものは
昇華性芳香剤と呼ばれており、昇華性物質としてはパラ
ジクロルベンゼン(パラ剤)が多用されている。しか
し、このパラ剤には独特の刺激臭があり、この臭気をカ
バーするために多量の付香が必要になり、場合によって
は鼻に着くほど強力な香気が放散されるという問題があ
る。そこで、このような問題を解消し、快適性を高めら
れるようにするために、香料を担持する昇華性物質とし
て、無臭に近いアダマンタンや無臭のイソプロプルトリ
オキサンを用い、穏やかな香気を醸しだすことが推奨さ
れる。
【0130】本発明方法において、香料を容器中に配合
する場合、容器を合成樹脂で形成することができ、この
場合には、例えばいわゆるプラスチックタイプ芳香剤と
同様に、ガス透過性のよい熱可塑性樹脂を選び、香料を
可塑剤、安定剤、多孔質粉体にブレンドしてプラスチッ
クに混合して、例えば射出成型、ブロー成型など種々の
成型方法によって任意の外観形状に形成することができ
るのであり、インテリア的装飾品に兼用させることがで
きる。
【0131】ただし、成型工程で熱がかかるため、低沸
点のすっきりした感じの香りの香料を配合することは困
難である。使用される熱可塑性樹脂としては、ポリエチ
レン、軟質塩化ビニルなどが選ばれることが多いが、香
料の持続性と安定性を改善するために塩素化ポリエチレ
ン、スチレン及びアクリルニトリルのコーポリマーが用
いられる。
【0132】香料を配合する容器としては、前記の合成
樹脂容器の他に固形パラフィンワックスを主剤とするも
のが解されるのであり、この場合、香料は主剤に溶解す
ることにより配合される。但し、パラフィンと親和性の
悪いアルコール系及び天然香料の一部分については固化
を均一にするために界面活性剤を使用することがある。
この容器も外観を種々に造形することができるので、イ
ンテリア的装飾品として用いられることが多い。
【0133】香料を容器外に担持させる方法としては、
容器の表面に香料を収着ないし含浸させたり、容器の表
面に香料を含むインキ、塗料などで塗装したり、容器の
表面に香料を含ませた紙を貼り付けたりするなど種々の
方法が挙げられるのであり、又、容器に封入した発熱体
組成物、即ち、発熱体と共に別の少なくとも一部分が通
気性を有する容器に収納したりすることも可能である。
【0134】更に、本発明方法においては、殺虫剤又は
殺菌剤を容器内に封入し、又は容器中に配合し、若しく
は容器外に担持させることができる結果、比較的低温の
環境で発熱体組成物を発熱させて殺虫剤又は殺菌剤もし
くはその担持体を加熱し、十分に殺虫剤又は殺菌剤を放
散させることができると共に、環境温度あるいは発熱体
組成物の発熱温度が所定値以上に上昇する時に発熱体組
成物の発熱反応を実質的に停止させて、最高発熱温度を
制限したり、所定値以上の高温の発熱持続時間を所定時
間内に制限したりして、過剰に殺虫剤又は殺菌剤が放散
されることを防止できる。
【0135】殺虫剤としては、一般に殺虫剤として使用
されているものを使用すればよく、特に、人畜に対する
毒性が少なく、殺虫力が強く、特に昆虫に対する即効性
の優秀なものを用いることが好ましい。
【0136】一般に殺虫剤は、天然物系殺虫剤、有機リ
ン系殺虫剤、カルバメート系殺虫剤、有機塩素系殺虫
剤、殺ダニ剤、その他の殺虫剤に分類されており、天然
物系殺虫剤には、ピレトリン類、ロテノン類、アルカロ
イド及びネライストキシンが含まれる。
【0137】ピレトリン類としては、ピレトリンI、ピ
レトリンII、シネリンI、シネリンII、ジャスモリンI、
ジャスモリンIIの6成分を含んでいる天然ピレトリンの
他に、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラ
メトリンなどの合成ピレストロイドをその例として挙げ
ることができ、ロテノン類としては、ロテノン、スマト
ロール、トキシカロール、マラコール、デグエリン、エ
リプトンなどをその例として挙げることができる。又、
アルカロイドとしては、ニコチン、ノレニコチン、アナ
パシンなどをその例として挙げることができる。
【0138】有機リン系殺虫剤は5価のリン原子を化合
物の中心に持っており、チオホスファート型、ジチオホ
スファートのトリエステル型、ホスホノチオアート型、
ホスホナートのジエステル型などがその主流を占めてい
るが、この他にホスホロジチオエート型も用いられる。
代表的な有機リン酸系殺虫剤としては、テップ、パラチ
オン、マラチオン、ダイアジノントリクロルフォン、フ
ェニトロチオン、ジメトエール、ジスルホトンなどの
他、アセフェート、クロルピリホス、サリチオン、ジク
ロルボス、ダイアジノン、トリクロルフォン、フェンチ
オン、フェントエート、メチダチオン、EPN、メチル
パラチオンなどを挙げることができる。
【0139】又、カルバメート系殺虫剤としては、MI
PC、MTMC、MPMC、カリバリール(NAC)、
BPMC、プロポキサー(PHC)などが代表的であ
り、有機塩素系殺虫剤としては、DDT、BHCなどが
有名であり、これらの他に、クロールデン、ヘプタクロ
ール、アルドリン、ディルドリン、エンドリンなどの塩
素環状ジエン系殺虫剤をその例として挙げることができ
る。
【0140】殺ダニ剤としては、2−s−ブチル−4、
6−ジニトロフェニル−3−メチルクロトネートなどの
ジニトロフェノール系のもの、クロロフェニル系のもの
の他に、2−(p−t−ブチルフェキシン)シクロヘキ
シルプロピニルサルファイト(BPPS)、〔2−(p
−t−ブチルフェノキシ)イソプロピルオキシ〕−1−
メチルエチル−2−クロロエチルサルファイト(PPP
S)などがその例として挙げられ、又、これらの他に水
酸化トリシクロヘキシルスズなどのスズ化合物用いられ
る。
【0141】その他の殺虫剤としては、ヒ酸鉛、ヒ酸石
灰、ヒ酸マンガンなどのヒ素剤、クロロピリン、臭化メ
チル、1,3−ジクロロプロパン(D−D)、二臭化エ
チレン(EDB)、ベーバム(N−メチルジチオカルバ
ミン酸ナトリウム)などの殺線虫剤などがある。
【0142】本発明方法に使用される殺菌剤としては、
抗菌性抗生物質、イネイモチ病に有効な抗生物質、その
他の抗カビ性抗生物質などの抗生物質;ボルドー、キノ
リン銅、有機水銀剤、有機スズ剤、有機ヒ素化合物など
の重金属系殺菌剤;無機硫黄剤、ジオカルバメート系殺
菌剤等をその例として挙げることができる。
【0143】本発明において、殺虫剤又は殺菌剤を容器
内に封入する方法としては、殺虫剤又は殺菌剤そのもの
に揮発性ないし昇華性のある場合には、殺虫剤又は殺菌
剤を直接に発熱体組成物に配合したり、発熱体組成物に
は配合はしないがこれと共に容器に封入したりすること
ができる。又、殺虫剤又は殺菌剤その物に揮発性がない
場合には液状あるいはゲル状の揮発性溶剤に含有させた
り、揮発性物質に含有又は担持させたりした上で、発熱
体組成物に配合したり、発熱体組成物には配合はしない
がこれと共に容器に封入したりすることができる。
【0144】この液状あるいはゲル状の揮発性溶剤、揮
発性物質についての詳細な説明は、前記香料の液状ある
いはゲル状の揮発性溶剤、揮発性物質についての詳細な
説明と同様であるので、ここでは重複を避けるために省
略する。
【0145】本発明において、殺虫剤又は殺菌剤を容器
中に配合する場合には、殺虫剤又は殺菌剤は上述した香
料と同様の方法で容器中に配合すればよい。即ち、ガス
透過性のよい熱可塑性樹脂を選び、香料を可塑剤、安定
剤、多孔質粉体にブレンドしてプラスチックに混合し
て、容器に成型したり、主剤としての固形パラフィンワ
ックスを主剤に香料を溶解し、固化させたりすればよい
のである。
【0146】本発明方法において、殺虫剤又は殺菌剤を
容器外に担持させる方法としては、容器の表面に殺虫剤
又は殺菌剤を収着ないし含浸させたり、容器の表面を殺
虫剤又は殺菌剤を含むインキ、塗料などで塗装したり、
容器の表面に殺虫剤又は殺菌剤を含ませた紙を貼り付け
たりするなど種々の方法が挙げられるのであり、又、容
器に封入した発熱体組成物、即ち、発熱体と共に少なく
とも一部が通気性を有する別の容器に収納したりするこ
とも可能である。
【0147】本発明方法において、発熱体組成物を容器
に封入する方法は、容器の形状に適した任意の方法を採
用することができるのであり、例えば偏平な袋体に発熱
体組成物を封入する方法としては、予め発熱体組成物を
調製すると共に袋体を形成した後、発熱体組成物を袋詰
めする方法、予め発熱体組成物を調製し、袋体の表裏を
形成するフィルム、シート、織布、不織布の間に挟んで
から両面のフィルム、シート、織布、不織布などをヒー
トシールなどによって封合する方法等、従来多用されて
きた方法を採用することができる。
【0148】しかしながら、調製された発熱体組成物の
凝固による歩留りの低下を防止すると共に、製造を高速
化するために、袋体の表裏を形成するフィルム、シー
ト、織布、不織布、積層フィルム、積層構造物の一方に
金属粉と水以外の一部分又は全部の成分を転写した後、
その上に水と共に金属粉以外の一部分又は全部分の成分
をインク状に配合して転写し、更に、この後に袋体の他
の一面を形成するフィルム、シート、織布、不織布積層
フィルム、積層構造物を重ねてヒートシール、接着、粘
着などによって封合する方法を採用することが推奨され
る。
【0149】次に、本発明の発熱体組成物は、前記の目
的を達成するために、金属粉、金属の塩化物、水及び所
定の温度を超えると吸着水分を放出してゲル化し、且つ
この吸着水分の放出によって発熱反応を実質的に停止さ
せる吸水剤を必須成分とするものである。
【0150】即ち、本発明の発熱体組成物は、所定の温
度を超えると吸着水分を放出してゲル化し、且つこの吸
着水分の放出によって発熱反応を実質的に停止させる吸
水剤を用いる点、に最も大きな特徴を有する。
【0151】前記吸水剤としては、所定の温度を超える
と吸着水分を放出してゲル化し、且つこの吸着水分の放
出によって発熱反応を実質的に停止させるものであれば
特に限定されるものではないが、特に、本発明方法で説
明した水溶性セルロースエーテルが好ましい。
【0152】これら金属粉、金属の塩化物、水及び所定
の温度を超えると吸着水分を放出してゲル化し、且つこ
の吸着水分の放出によって発熱反応を実質的に停止させ
る吸水剤についての詳細な説明は、上述した本発明方法
の場合と同様なので重複説明を避けるために省略する。
【0153】本発明の発熱体組成物においては、触媒及
び/又はpH調整剤を配合することが可能であり、発熱
反応を促進し、所要の最低発熱温度を得るためには触媒
を配合することが有利であり、又、ガス発生を防止して
保存性を良好にしたり、発熱反応の持続性を良好にする
ために、pH調整剤を配合することが有利である。
【0154】前記触媒としては、金属の塩化物も触媒作
用を有するが、ここでいう触媒は金属の塩化物以外で発
熱反応を促進する作用のものを言い、例えばカーボンブ
ラック、活性炭などの炭素成分がその例として挙げられ
る。又、pH調整剤としてはトリポリリン酸ソーダ等が
代表的であり、又、発熱反応助剤や分散剤としては界面
活性剤等が代表的である。
【0155】又、本発明の発熱体組成物においては、保
水剤を配合し、配合された水分をこの保水剤に保持さ
せ、反応の進行につれて徐々に保水剤から水分を遊離さ
せることが所要の発熱最低温度を確保できる上、発熱持
続時間を延長できるので有利であり、又、この保水剤と
しては吸水性ポリマーが保水力が高い等の理由より特に
好ましい。
【0156】この保水剤としては、前記本発明方法で説
明した保水剤と同様なので、重複説明を避けるために省
略する。
【0157】即ち、本発明の発熱体組成物としては、そ
の用途によって種々のものが用いられるが、例えば、採
暖、温罨法などに用いられる発熱体用や貼着剤用の発熱
体組成物の場合には、発熱温度を37〜43℃にして温
熱効果ないし治療効果と安全性とを両立させるために、
例えば鉄粉25〜75重量%、金属の塩化物1〜10重
量%、活性炭やカーボンブラック等の炭素成分1〜15
重量%、水分10〜55重量%、吸水剤0.5〜35重
量%とすることが好ましく、必要に応じて添加される1
〜20重量%の保水剤が配合される。
【0158】更に、本発明の発熱体組成物においては、
遠赤外線放射物質を配合することが可能であり、この遠
赤外線放射物質の配合により、この遠赤外線放射物質か
ら放射される遠赤外線放射による温熱効果が得られるの
で、至極有益である。
【0159】この遠赤外線放射物質の使用量は温熱効果
を期待できる範囲であれば特に限定されないがその上限
は温熱効果や経済性を考慮して決定すればよい。
【0160】本発明の発熱体は、前記の目的を達成する
ために、前記本発明の発熱体組成物を、少なくとも片面
が通気性を有する偏平な袋体に封入したことを特徴とす
るものである。
【0161】ここでは、本発明の発熱体組成物について
の詳細な説明は既に説明しているので重複説明を避ける
ために省略し、又、少なくとも片面が通気性を有する偏
平な袋体についての詳細な説明は、本発明方法の容器の
説明の中で説明しているので、重複説明を避けるために
省略する。
【0162】本発明の発熱体においては、袋体に遠赤外
線放射物質を配合することができ、この遠赤外線放射物
質の袋体への配合により、この遠赤外線放射物質から放
射される遠赤外線放射によって優れた温熱効果が得られ
る。
【0163】本発明の貼付剤は、前記の目的を達成する
と共に、人体などの生体の表面に効率良く温熱効果を与
え、しかも、人体などの生体の表面に簡単に貼付できる
ようにするために、前記本発明の発熱体と、この発熱体
の袋体の片面に付着させた粘着層とを備えることを特徴
とする。
【0164】本発明で用いられる発熱体及びその袋体の
詳細な説明は、本発明方法の場合と同様なので、重複説
明を避けるために省略し、ここでは主として粘着層につ
いて詳細に説明する。
【0165】本発明で用いられる貼付層としては、人体
の外皮に直接貼着したり、下着などに貼着して、本発明
の貼付剤を当該貼着箇所に保持できるものであれば特に
限定されるものではない。
【0166】前記粘着層としては、粘着剤で形成された
層、或いは水分の有無に関係なく温熱湿布効果を発現す
る湿布剤で形成された層が挙げられる。
【0167】前記粘着剤としては粘着性を有する高分子
材料であれば特に限定されるものではなく、一般に貼付
剤の粘着剤として従来より多用されている各種のゴム系
粘着剤やアクリル系粘着剤等の種々の粘着剤を用いるこ
とができるのであり、更に、ホットメルト系粘着剤を用
いることができる。
【0168】又、この粘着剤としては、2種以上の粘着
剤を混合して形成したものを用いても良いのである。
【0169】前記ホットメルト系粘着剤とは、ホットメ
ルト系高分子物質を含有する粘着剤のことであり、この
ホットメルト系高分子物質としては、A−B−A型ブロ
ック共重合体、飽和ポリエステル系高分子物質、アクリ
ル系高分子物質、ウレタン系高分子物質、ポリアミド系
高分子物質、ポリアミド系高分子物質、ポリオレフィン
系高分子物質、ポリオレフィンケイ共重合体、あるい
は、これらの変性体、もしくはこれらの中の2種類以上
のものを混合したものがその例として挙げられる。
【0170】ここで、変性体とは、ホットメルト型高分
子の性質、例えば粘着性や安定性などを改善するため
に、ホットメルト型高分子物質の一部を他の成分に置き
換えたものをいう。
【0171】また、A−B−A型ブロック共重合体にお
いて、Aブロックはスチレン、メチルスチレン等のモノ
ビニル置換芳香族化合物で、非弾性重合ブロックであ
り、Bブロックはブタジエン、イソプレンなどの共役ジ
エンの弾性重合体ブロックであり、具体的には、例えば
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ス
チレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等が挙
げられるのであり、又、これらを混合して用いてもよい
のである。
【0172】なお、A−B−A型ブロック共重合体の市
販品としてはシェル化学製のカリフレックスTR−11
01、カリフレックスTR−1107、カリフレックス
TR−1111など、フィリップペトロリアム製のソル
プレン418などがその例に挙げられる。
【0173】本発明において使用されるホットメルト系
粘着剤は、ホットメルト型高分子物質を含有するもので
あれば良く、従って、他の成分、例えば他の粘着剤、粘
着賦与剤、老化防止剤、充填剤、粘着調整剤、粘着改良
剤、着色剤、消泡剤、増加粘剤、防黴剤、抗菌剤、殺菌
剤、消臭剤、脱臭剤などが配合されているものも含まれ
る。
【0174】特に、粘着剤の特性として重要な粘着力
は、ホットメルト系高分子物質と例えば脂環族系石油樹
脂などの粘着性賦与剤とを配合することにより、容易に
コントロールできるようになる。
【0175】この脂環族系石油樹脂は、環状骨格を持っ
た石油系樹脂であり、具体的には、ロジン、脱水素ロジ
ン、脱水素ロジンのグリセリンエステル類、ガムロジン
のグリセリンエステル類、水添ロジン、水添ロジンのメ
チルエステル類、水添ロジンのグリセリンエステル類、
水添ロジンのペンタエリトリットロジン類、重合ロジ
ン、重合ロジンのグリセリンエステル類、クマロンイン
デン樹脂、水添石油樹脂、無水マレイン酸変性ロジン、
ロジン誘導体、C5系石油樹脂等がその例として挙げら
れるのであり、これらは単味で使用されたり、これらの
中の2種以上を組み合わせて使用されたりする。
【0176】なお、この脂環族系石油樹脂の市販品の例
としては、荒川化学製のアルコンP−100、アルコン
P−125など、日本ゼオン製のクイントン、エクソン
製のエスコレッツ3000などが挙げられる。
【0177】この粘着賦与剤を用いる場合には、更に軟
化剤を添加してホットメルト系高分子物質を溶解ないし
分散させて軟化し、適度の保形性、柔軟性及び粘着力を
発現させることが好ましい。
【0178】この軟化剤としては、例えばヤシ脂、ひま
し油、オリーブ油、ツバキ油、アーモンド油、パーシッ
ク油、落花生油、ゴマ油、大分油、ミンク油、綿実油、
トウモロコシ油、サフラワー油、オレイン酸、流動パラ
フィンなどが挙げられる。具体的なホットメルト系粘着
剤としては、皮膚への密着性、粘着性、使用感、皮膚か
らの剥離性などを考慮することが好ましく、この観点か
ら、ホットメルト型高分子物質5〜40重量部、脂環族
系石油樹脂5〜55重量部、軟化剤5〜55重量部から
なるものが推奨されるのであり、特に、ホットメルト型
高分子物質10〜30重量部、脂環族系石油樹脂10〜
50重量部、軟化剤15〜45重量部からなるものが推
奨される。
【0179】前記湿布剤としては水分の有無に関係なく
温熱湿布効果を発現するものであれば特に限定されるも
のではなく、具体的には、例えば公知のものが挙げられ
る。
【0180】本発明において、粘着層は袋体の片面の全
面にわたって形成したり、筋状、格子状、点状等、部分
的に形成しても良いのである。
【0181】又、粘着層としては架橋されている必要が
ないが、熱安定性、加温時の粘着力維持及び加温時の保
形性を高め、又、加温時のダレやべた付きを防止し、更
に、剥離時の糊残りを減少させて使用感を高めたり、加
えて、薬物の保持性を高めるという観点から、架橋され
ていることが好ましい。
【0182】粘着剤を架橋する方法は、特に限定される
ものではないが、化学的架橋剤を添加して化学的に架橋
させることもできるが、例えば紫外線照射、電子線照射
によって架橋することもできる。
【0183】この紫外線や電子線の照射による架橋は、
袋体に粘着層を形成した後に行ってもよく、或いは予め
形成された所定形状の粘着層を架橋し、その後、この粘
着層を袋体に例えば転写などにより、担持させてもよ
い。
【0184】この架橋は、具体的には例えば特公昭62
−39184号公報に記載された方法に準じて行えばよ
く、紫外線の場合には通常、波長200〜680nmの
紫外線を5〜30分間照射すればよく、電子線の場合に
は、通常1〜20Mrad で、0.01〜5秒間照射すれ
ばよい。
【0185】ところで、本発明の貼付剤に用いられる粘
着層としては、2種以上の粘着剤を混合して形成された
ものでも良いのである。
【0186】本発明で用いられる粘着層の厚さとして
は、本発明の貼付剤を当該貼着箇所に保持できる粘着力
が発現できるものであれば特に限定されるものではない
が、一般に、5〜3000μmの範囲、特に10〜10
00μmの範囲とするのが望ましく、粘着層の厚さが、
5μm未満では所要の粘着力が得られない場合があり、
一方、3000μmを超えると意味が無いだけでなく、
厚さが厚くなり過ぎて使用感が悪くなり、いずれの場合
も好ましくない。
【0187】又、本発明の貼付剤においては、粘着層若
しくは袋体と粘着層との間に経皮吸収性薬剤を担持さ
せ、全身或いは局所の疾患治癒効果を発現させるのが望
ましい。
【0188】即ち、本発明に係る貼付剤は、全身的或い
は局所的な疾患治癒効果を期待して皮膚を通して薬剤を
持続的に生体内に供給する経皮治療システムに利用する
場合には、粘着層に経皮吸収性の薬剤を配合するという
手法で当該粘着層に経皮吸収性薬剤を担持させたり、袋
体と粘着層との間に薬剤貯蔵層を形成するという手法を
採用すれば良い。
【0189】袋体と粘着層との間に薬剤貯蔵層を設ける
場合には放出制御膜を設けたり、薬剤貯蔵層中の拡散に
より薬効成分の放出が制御されるのであり、又、粘着層
に経皮吸収性の薬剤が配合されている場合には、粘着層
中の薬剤の拡散により薬効成分の放出が制御される。
【0190】前記経皮吸収性薬剤としては経皮吸収性の
薬剤であれば特に限定されるものではないが、具体的に
は、例えば皮膚刺激剤、沈痛消炎剤、中枢神経作用剤
(睡眠鎮静剤、抗癲癇剤、精神神経用剤など)、利尿
剤、血圧降下剤、冠欠陥拡張剤、抗ヒスタミン剤、不整
脈用剤、強心剤、副腎皮質ホルモン剤、局所麻酔剤など
が挙げられるのであり、これらの薬剤の1種又は2種以
上を配合して用いられる。
【0191】この薬剤の使用量は薬効を期待できる範囲
であれば特に限定されるものではないが薬理効果や経済
性を考慮して決定すればよく、更に、粘着層に配合する
場合にはこれらに加えて粘着力を考慮して粘着剤との配
合比が決定される。
【0192】具体的には、粘着剤(固形分)100重量
部に対し経皮吸収性薬剤0.01〜25重量部とすれば
よく、特に粘着剤100重量部に対し経皮吸収性薬剤
0.5〜15重量部とすることが好ましい。
【0193】経皮吸収性薬剤の配合割合が粘着剤(固形
分)100重量部に対し、0.01重量部未満では薬効
が乏しいので好ましくなく、一方、25重量部を超える
と意味が無いだけでなく、不経済であるから望ましくな
い。
【0194】又、本発明の貼付剤においては、発熱体組
成物、袋体又は粘着層の中のうちの少なくとも1箇所及
び/又は袋体と粘着層との間に遠赤外線放射物質を含有
又は担持させて、遠赤外線による一層優れた温熱効果を
発現できるのである。
【0195】具体的には、例えば袋体内に遠赤外線を放
射する遠赤外線放射物質を封入したり、袋体の片面に、
遠赤外線放射物質を配合した塗料を塗工、乾燥したりす
るという手法で袋体に遠赤外線放射物質を担持させた
り、袋体の片面とこの片面に形成される粘着層との間に
遠赤外線を放射する遠赤外線放射物質を挟むことにより
袋体と粘着層との間に遠赤外線放射物質を担持させた
り、袋体の片面に形成される粘着層に遠赤外線を放射す
る遠赤外線放射物質を混入するという手法で粘着層に遠
赤外線放射物質を担持させたりすることができる。
【0196】この場合には、温熱効果により血行促進作
用を高めることができる結果、特に経皮吸収性薬剤を併
用すると、薬剤の経皮吸収性を高め、全身治療効果や局
所治療効果を高めることができる。
【0197】更に、本発明の貼付剤においては、発熱体
組成物、袋体又は粘着層の中のうちの少なくとも1箇所
及び/又は袋体と粘着層との間に磁性体を含有又は担持
させ、磁性体の磁性による磁気治療効果を発現できる。
【0198】即ち、本発明の貼付剤においては、袋体内
に磁性体を封入したり、袋体の片面に磁性体を塗工、乾
燥したり、袋体の片面とこの片面に形成される粘着層と
の間に磁性体を挟んだり、袋体の片面に形成される粘着
層に磁性体を混入したりすることができる。
【0199】本発明の香料放散装置は、前記の目的を達
成するために、前記本発明の発熱体組成物と、これを収
容する少なくとも一部が通気性を有する容器と、この容
器内に収容され、又は容器中に配合され、もしくは容器
外に担持させた香料とからなるものである。
【0200】ここで用いられる発熱体組成物、容器及び
香料は、本発明方法で用いる発熱体組成物、容器及び香
料と同様であるので、その詳細な説明は、重複説明を避
けるために省略する。
【0201】特に、この香料としては、環境用香料、誘
引性香料又は忌避性香料が挙げられる。
【0202】本発明の殺虫剤放散装置は、前記の目的を
達成するために、本発明の発熱体組成物と、これを収容
する少なくとも一部が通気性を有する容器と、該容器内
に収容され、又は容器中に配合され、もしくは容器外に
担持させた殺虫剤とからなる。
【0203】ここで用いられる、発熱体組成物、容器及
び殺虫剤は、本発明方法で用いる発熱体組成物、容器又
は殺虫剤と同様であるので、その詳細な説明は、重複説
明を避けるために省略する。
【0204】本発明の殺虫剤放散装置においては、誘引
物質が前記容器内に収容され、又は容器中に配合され、
もしくは容器外に担持させたものが含まれるのであり、
この場合には、駆除すべき昆虫を放散されている殺虫剤
中に誘引物質で誘引することができるので、駆除効果を
高めることができる。
【0205】本発明の殺菌剤放散装置は、前記の目的を
達成するため、本発明の発熱体組成物と、これを収容す
る少なくとも一部が通気性を有する容器と、該容器内に
収容され、又は容器中に配合され、もしくは容器外に担
持させた殺菌剤とからなる。
【0206】ここで用いられる発熱体組成物、容器又は
殺菌剤は、本発明方法で用いる発熱体組成物、容器、殺
菌剤と同様であるので、その詳細な説明は、重複説明を
避けるために省略する。
【0207】
【作 用】本発明方法においては、少なくとも一部が通
気性を有する容器に封入される発熱体組成物には、発熱
温度が所定温度を超えた高温時に、吸着水分を放出して
ゲル化する吸水剤を配合し、この吸水剤からの吸着水分
の放出によって発熱反応が実質的に停止される。
【0208】即ち、従来では発熱温度が高くなればなる
程活性化していた発熱体組成物の発熱反応が、所定温度
を超えた高温時に、吸着水分を放出してゲル化する吸水
剤を配合し、この吸水剤からの吸着水分の放出によっ
て、金属粉周辺の遊離水分量が増大し、この放出(遊
離)水分が金属粉周辺に付着してバリヤー層となるの
で、金属粉への空気の供給量が減少して発熱反応が実質
的に停止させる。
【0209】このため、発熱反応の際、発熱温度が所定
の温度範囲であれば何等問題無く長時間にわたって使用
できる。一方、例えば使用環境が高温、多湿の場合や、
袋体の透湿度更に発熱体組成物にばらつきがあった場合
等、発熱温度が、不測の理由により、所定温度以上の高
温になると、吸水剤が吸着水分を放出し、この放出(遊
離)水分が金属粉周辺に付着して当該放出(遊離)水分
がバリヤー層となるので、金属粉への空気の供給量が減
少して発熱反応を実質的に停止し、発熱温度を降下させ
る作用を有するのである。
【0210】そして、発熱体組成物の発熱反応に伴い、
その温度が所定温度以上になると、吸水剤が吸着水分を
放出してゲル化し、発熱反応を抑制するが、このように
発熱反応を抑制することによって発熱温度が低下する
と、逆にこのゲル化した吸水剤が金属粉周辺の遊離水分
を吸着して液状化し、再度温度上昇が発生して弊害が生
じることがある。このような弊害を防止するために、本
発明方法は、発熱温度が低下した際のゲル化した吸水剤
の液状化を極力抑制し、発熱体組成物の発熱量を周囲へ
の放熱量以下に制限するようにしたものである。
【0211】更に、本発明方法において、吸水剤として
水溶性セルロースエーテルを用いる場合には、エーテル
化剤の種類、置換率、セルロース分子量、溶液として添
加する場合の濃度、他の添加物(増粘開始温度の調整剤
及び/又はゲル安定剤)を添加する場合の添加量(濃
度)、昇温速度、降温速度などを適宜設定することによ
り、簡単に最高発熱温度や高温発熱持続時間などを任意
に設定できる。
【0212】本発明方法において、発熱体組成物に保水
剤を配合し、保水剤に吸収させた水分を徐々に遊離させ
る場合には、この水分によって発熱反応を制御して長時
間にわたって発熱体組成物の発熱反応を持続させ、発熱
体組成物の利用率を高めることができる。
【0213】加えて、本発明方法において、香料が容器
内に封入され、又は容器中に配合され、若しくは容器外
に担持される場合には、香料が放散され難い低温の環境
中において、電源設備の無いところでも、発熱体組成物
の発熱によって香料を加熱し、周囲に放散させることが
できる。又、この場合には、周囲の温度や湿度などの環
境条件の変化、或いは容器の通気性(透湿性)や発熱体
組成物のばらつきなどの不測の事態が生じても、発熱体
組成物の発熱温度が所定の温度以上になると確実に発熱
体組成物の発熱反応が実質的に停止されるので、最高発
熱温度や高温での発熱持続時間を確実に制限し、過熱に
伴う容器の変形や火災等の弊害を防止したり、香料の過
剰蒸散に伴う不快感を感じたりすることを防止できる作
用を有するのである。
【0214】又、本発明方法において、殺虫剤が容器内
に封入され、又は容器中に配合され、若しくは容器外に
担持される場合には、殺虫剤が放散され難い低温の環境
中において、電源設備の無いところでも、発熱体組成物
の発熱によって、殺虫剤を加熱し、周囲に放散させるこ
とができる。又、この場合には、温度や湿度などの環境
条件の変化、或いは容器の通気性(透湿性)や発熱体組
成物のばらつきなどの不測の事態が生じても、発熱体組
成物の発熱温度が所定の温度以上になると確実に発熱体
組成物の発熱反応が実質的に停止されるので、最高発熱
温度や高温での発熱持続時間を確実に制限し、過熱に伴
う容器の変形や火災等の弊害を防止したり、殺虫剤の過
剰蒸散に伴う不快感を感じたりすることを防止できる作
用を有するのである。
【0215】更に、本発明方法において、殺菌剤が容器
内に封入され、又は容器中に配合され、若しくは容器外
に担持される場合には、殺菌剤が放散され難い低温の環
境中において、電源設備の無いところでも、発熱体組成
物の発熱によって、殺菌剤を加熱し、周囲に放散させる
ことができる。又、この場合には、温度や湿度などの環
境条件の変化、或いは容器の通気性(透湿性)や発熱体
組成物のばらつきなど不測の事態が生じても、発熱体組
成物の発熱温度が所定の温度以上になると確実に発熱体
組成物の発熱反応が実質的に停止されるので、最高発熱
温度や高温での発熱持続時間を確実に制限し、過熱に伴
う容器の変形や火災等の弊害を防止したり、殺菌剤の過
剰蒸散に伴う不快感を感じたりすることを防止できる作
用を有するのである。
【0216】本発明に係る発熱体組成物は、金属粉、金
属の塩化物、水分及び発熱温度が所定温度を超えた高温
時に、吸着水分を放出してゲル化し、且つこの吸着水分
の放出によって発熱反応が実質的に停止させる吸水剤を
必須成分としているので、気温や湿度などの環境条件の
変化、或いは容器の通気性(透湿性)や発熱体組成物の
ばらつきなどの不測の事態が生じても、発熱体組成物の
発熱温度が所定の温度を超えると確実に発熱体組成物の
発熱反応が実質的に停止される。従って、前記本発明方
法を実施できるのであり、発熱温度を所定の温度以下に
制限したり、所定の温度を上回る発熱の持続時間を所定
の時間内に制限したりすることができる。
【0217】本発明の発熱体組成物において、触媒及び
/又はpH調整剤を配合する場合には、金属粉と、水分
と、金属の塩化物と、空気中の酸素との発熱反応が一層
促進される作用を有するのである。
【0218】又、本発明の発熱体組成物において、保水
剤を用いる場合には、この保水剤に水分を吸収させ、徐
々に水分を放出させることができるので、長時間にわた
って所要の最低温度以上の発熱を持続させることが可能
になると共に、発熱体組成物の利用率を高めることがで
きるのであり、しかも発熱体の薄型化が可能になる作用
を有するのである。
【0219】特に、保水剤が吸水性ポリマーである場
合、多量の水分を保水剤に保持させることができるの
で、一層長時間にわたって所要の最低温度以上の発熱を
持続させることが可能になると共に、発熱体組成物の利
用率を一層高めることができる作用を有するのである。
【0220】更に、本発明の発熱体組成物において、発
熱反応を促進させる発熱反応助剤を配合する場合には、
発熱反応助剤により発熱反応が促進され、所要の最低発
熱温度を得る上で有利になる。
【0221】加えて、本発明の発熱体組成物において、
吸水剤が水溶性セルロースエーテルからなる場合には、
エーテル化剤の種類、置換率、セルロース分子量、溶液
として添加する場合の濃度、他の添加物(増粘開始温度
の調整剤及び/又はゲル安定剤)を添加する場合の添加
量(濃度)、昇温速度、降温速度などを適宜設定するこ
とにより、簡単に最高発熱温度や高温発熱持続時間など
を任意に設定することができる。
【0222】本発明の発熱体組成物において、所定温度
を超えた高温時に、吸水剤が吸着水分を放出してゲル化
すると、このゲル化した吸水剤が、発熱反応の実質的な
停止状態によって温度が降下し、当該吸水剤が周辺の水
分を吸収して液状化しようとする。この場合、ゲルの液
状化を抑制するゲル安定剤が配合されていると、高温時
から低温になったとき、このゲル安定剤によってゲル
(吸水剤)が周辺の遊離水分を吸着するのを阻止できる
結果、温度上昇を一層抑制できる作用を有するのであ
る。
【0223】本発明の発熱体は、少なくとも片面が通気
性を有する偏平な袋体に、本発明の発熱体組成物を封入
したので、空気が袋体内に入り、発熱体組成物中の金属
粉、金属の塩化物及び水分と発熱反応を起こす。そし
て、この発熱温度が、原因のいかんを問わず、所定温度
以上に上昇すると、吸水剤が吸着水分を放出し、この放
出(遊離)水分が金属粉周辺に付着して当該放出(遊
離)水分がバリヤー層となるので、金属粉への空気の供
給量が減少して発熱反応を実質的に停止する作用を有す
るのである。又、これにより、発熱温度が所定の温度以
上に上昇することを防止したり、仮に所定の温度を超え
てもその持続時間を所定の時間内に制限したりすること
ができる作用を有するのである。
【0224】特に、本発明の発熱体を採暖や温罨法に適
用する場合には、発熱温度を長時間持続しても低温火傷
が発生する虞れがない安全温度(43℃)以下に制限さ
れるのであり、仮に安全温度を上回ると、その発熱持続
時間を低温火傷が発生するおそれがない安全時間内に制
限したりすることにより、確実に低温火傷の発生を防止
できる作用を有するのである。
【0225】しかも、袋体が偏平であるので、他物の表
面に広範囲にわたって袋体を介して発熱体組成物を配置
することができる結果、この発熱体組成物の発熱を効率
よく他物を加熱することができる作用を有するのであ
る。
【0226】この場合において、発熱体組成物中に遠赤
外線放射物質を封入させると、遠赤外線が生体中の水分
を振動させて生体の自己発熱を誘発することができる結
果、この生体の自己発熱による温熱効果により血行など
の全身作用を高めることができる作用を有する。
【0227】本発明に係る貼付剤は、本発明の発熱体
と、この発熱体の袋の片面に付着させた粘着層とからな
るので、直接人体などの生体の表面や下着に粘着させる
ことができるのであり、従って、包帯などを用いずに簡
単に貼付することができる上、人体に密着して効率良く
温熱効果、温刺激効果などを得ることができると共に施
用中の位置ずれを防止できる作用を有する。
【0228】しかも、本発明の貼付剤においては、温
度、湿度などの環境条件や容器の通気性(透湿性)や発
熱体組成物のばらつきなどの原因を問わずに、安全温度
以下に制限したり、安全温度を超える時間が安全時間内
に制限されたりする結果、低温火傷の発生を確実に防止
できる作用を有するのである。
【0229】更に、本発明の貼付剤において、袋体又は
粘着層もしくは袋体と粘着層との間に経皮吸収性薬剤を
担持させる場合には、温熱効果が相乗的に作用して経皮
吸収性薬剤の吸収効率を高められる上、高温による経皮
吸収性薬剤の過剰吸収を防止できる。
【0230】特に発熱体組成物に保水剤を配合し、水分
を一旦保水剤に保持させた後、発熱反応による発熱体組
成物中の発熱反応に寄与し得る水分の減少を補うように
徐々に保水剤から水分を供給することにより、最低発熱
温度を所定の温度以上に保持することができる結果、低
温による経皮吸収性薬剤の吸収効率の低下を防止でき
る。
【0231】又更に、本発明の貼付剤において、発熱体
組成物、袋体、粘着層のうちの少なくとも1箇所及び/
又は袋体と粘着層との間に遠赤外線放射物質を担持させ
る場合には、遠赤外線が生体中の水分を振動させて生体
の自己発熱を誘発することができる結果、この生体の自
己発熱による温熱効果により血行などの全身作用を高め
ることができる。
【0232】加えて、本発明の貼付剤において、磁性体
を前記発熱体組成物、袋体、粘着層のうち1箇所及び/
又は袋体及と粘着層との間に含有又は担持させた場合に
は、磁性体の磁性による磁気治療効果を得ることができ
る作用を有する。
【0233】本発明の香料放散装置によれば、発熱体組
成物の発熱作用により香料ないしこれを担持する液体、
ゲル、固体が加熱され、香料の揮散が活発になる。従っ
て、冷所においても十分に香料を揮散させることができ
るので、野外、げた箱や押入の中など電源設備が無い所
でも、悪臭の中和、マスキング、昆虫や動物の誘引、昆
虫や動物の忌避を図ることができる作用を有する。
【0234】この場合、常温ではなく、比較的高温で香
料を蒸散させるので、不要時には加熱する必要が無く、
従って、無駄に香料が消費されないから、その管理、保
存が容易になる作用を有するのである。
【0235】しかも、発熱体組成物の最高発熱温度を所
定値以下に制限したり、所定温度以上の発熱持続時間を
所定の短時間内に制限したりすることにより、香料が過
剰に放散されることを防止できるので、香料の過剰放散
による不快感や放散持続時間の短縮化を防止できる。
【0236】本発明の殺虫剤放散装置によれば、発熱体
組成物の発熱作用により殺虫剤ないしこれを担持する液
体、ゲル、固体が加熱され、殺虫剤の揮散が活発にな
る。従って、野外などの電源設備の無い所でも発熱体組
成物の発熱作用により殺虫剤を十分に揮散させることが
できる上、冷所においても十分に殺虫剤を揮散させるこ
とができる。
【0237】しかも、発熱体組成物の最高発熱温度を所
定値以下に制限したり、所定温度以上の発熱持続時間を
所定の短時間内に制限したりすることにより、殺虫剤が
過剰に放散されることを防止できるので、殺虫剤の過剰
放散による不快感や放散持続時間の短縮を防止できる。
【0238】本発明の殺菌剤放散装置によれば、発熱体
組成物の発熱作用により殺菌剤ないしこれを担持する液
体、ゲル、固体が加熱され、殺菌剤の揮散が活発にな
る。従って、野外などの電源設備の無い所でも発熱体組
成物の発熱作用により殺菌剤を十分に揮散させることが
できる上、冷所においても十分に殺菌剤を揮散させるこ
とができる。
【0239】しかも、発熱体組成物の最高発熱温度を所
定値以下に制限したり、所定温度以上の発熱持続時間を
所定の短時間内に制限したりすることにより、殺菌剤が
過剰に放散されることを防止できるので、殺菌剤の過剰
放散による不快感や放散持続時間の短縮を防止できる。
【0240】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明す
るが本発明はこれに限定されるものではない。
【0241】本発明の一実施例に係る発熱体組成物は、
まず、鉄粉97重量部、カーボン粉末(三菱化学株式会
社製、商品名:MA100)3.5重量部、保水剤(信
越化学工業株式会社製、商品名:メトローズSM−40
00)3重量部を配合し、混合してA剤を得る。
【0242】一方、吸水剤(信越化学工業株式会社製、
商品名:メトローズSM−4000)12重量部、カー
ボン粉末(三菱化学株式会社製、商品名:MA100)
75重量部、食塩18.75重量部、塩化アルミニウム
3重量部、水375重量部、界面活性剤(花王石鹸株式
会社製、商品名:EPパウダー)3.75重量部、トリ
ポリリン酸ソーダ1.0重量部を配合し、混合してB剤
を得る。
【0243】次に、図1に示すように、ポリエステル製
不織布からなり、縦130mm、横95mmの第2包材
(3)上に前記B剤(B)2.90gを転写した後、こ
のB剤(B)上に直ちに、前記A剤(A)4.29gを
転写することにより、合計7.19gの発熱体組成物
(2)を転写し、更に、この直後にポリアミド製不織布
付き多孔質フィルム(透湿度350g/m2・day)
からなり、縦130mm、横95mmの第1包材(1)
を重ね、周縁部をヒートシールで封合して、本発明の発
熱体(H1)を得た。
【0244】次に、図2に示すように、35℃の温水
(W)上にステンレス板(P)を敷設し、このステンレ
ス板(P)上に第1ネル(N1)を敷いてからその上に
前記発熱体(H1)を置き、更に、この発熱体(H1)
上に第2〜第4の3枚のネル(N2〜N4)を敷いて、
第1ネル(N1)上における表面温度を擬似皮膚温度と
し、つまり発熱体(H1)と第1ネル(N1)の間の擬
似皮膚温度として測定した結果、図3の線aで示すよう
な温度変化が測定された。なお、この時の雰囲気温度は
22〜23℃である。
【0245】図3の線aに示すように、発熱体(H1)
は、測定開始から約4分程度で43℃に達し、その後、
約14分後に発熱温度は45.7℃程度まで急上昇した
が、その直後から温度が急激に低下し約7分で43℃に
なり、更に約55分経過後、つまり測定開始から80分
後に38℃というように急激に発熱温度が低下してい
る。そして、その後徐々に同図の線bで示す擬似皮膚温
度(約35℃)に近付くことが認められた。
【0246】発熱体(H1)の発熱温度が45.7℃か
ら急激に低下するのは、発熱温度が45℃程度で、吸水
剤が吸着水分を放出してゲル化し、この吸水剤からの吸
着水分の放出によって、金属粉周辺の遊離水分量が増大
し、この放出(遊離)水分が金属粉周辺に付着してバリ
ヤー層となるので、金属粉への空気の供給量が減少して
発熱反応が実質的に停止したためであり、このように、
本発明の発熱体(H1)によれば、発熱温度が低温火傷
を発生する恐れがある温度を超えると温度が急激に低下
するので、この発熱体(H1)を直接に人の皮膚に接触
させて長時間放置しても低温火傷を負う恐れは全くなく
なり、安全性が高くなる。
【0247】以上に説明したように、発熱体組成物に
は、所定温度を超えた高温時に、吸着水分を放出してゲ
ル化する吸水剤を配合し、この吸水剤からの吸着水分の
放出によって、金属粉周辺の遊離水分量が増大し、この
放出(遊離)水分が金属粉周辺に付着してバリヤー層と
なるので、金属粉への空気の供給量が減少して発熱反応
が実質的に停止させる。
【0248】このため、発熱反応の際、発熱温度が所定
の温度範囲であれば何等問題無く長時間にわたって使用
できる。一方、例えば使用環境が高温、多湿の場合や、
袋体の透湿度更に発熱体組成物にばらつきがあった場合
等、発熱温度が、不測の理由により、所定温度以上の高
温になる製品が混入していても、前述のように発熱温度
が所定値を超えると、発熱反応が実質的に停止されるか
ら、安全性や信頼性が高くなるのである。
【0249】
【発明の効果】本発明方法において、発熱体組成物に
は、所定温度を超えた高温時に、吸着水分を放出してゲ
ル化する吸水剤を配合し、この吸水剤からの吸着水分の
放出によって、金属粉周辺の遊離水分量が増大し、この
放出(遊離)水分が金属粉周辺に付着してバリヤー層と
なるので、金属粉への空気の供給量が減少して発熱反応
が実質的に停止させるのである。
【0250】従って、周囲の気温、湿度などの環境条件
や容器の通気性(透湿性)や発熱体組成物のばらつきな
どの原因と関係なく、発熱温度が所定値を超えると、発
熱反応が実質的に停止され、確実に発熱温度の上昇を抑
制することができる結果、発熱温度を所定の温度以下に
制限したり、所定温度以上の発熱持続時間を所定の短時
間内に制限したりすることができるのであり、低温火傷
の発生を防止したり、過熱に伴う容器の軟化や変形更に
火災の発生等の弊害を防止できるのであり、又、香料、
殺虫剤或いは殺菌剤等の有機成分の過剰な揮発による悪
臭の発生等が確実に防止されるのであり、これによっ
て、信頼性が高くなる効果を有するのである。
【0251】本発明方法においては、最高発熱温度が所
定温度を超えると、吸水剤の降温時において、ゲル化し
た吸水剤が周囲の遊離水を吸収して液状化するのを抑制
し、発熱反応の発熱量を周囲への放熱量よりも小さく
し、発熱温度の降下を緩慢にしたりする結果、低温火傷
の発生を防止したり、過熱に伴う容器の軟化や変形更に
火災の発生等の弊害を一層確実に防止できるのであり、
又、香料、殺虫剤或いは殺菌剤等の有機成分の過剰な揮
発による悪臭の発生等が一層確実にに防止されるのであ
り、これによって、信頼性が一層高くなる効果を有する
のである。
【0252】又、本発明方法において、吸水剤が水溶性
セルロースエーテルからなる場合には、エーテル化剤の
種類、置換率、セルロース分子量、溶液として添加する
場合の濃度、他の添加物(増粘開始温度の調整剤及び/
又はゲル安定剤)を添加する場合の添加量(濃度)、昇
温速度、降温速度などを適宜設定することにより、吸水
剤が吸着水分を放出しはじめる温度、ゲル化速度、ゲル
化した吸水剤の温度に対する安定状態などを任意に調整
することができるから、簡単に最高発熱温度や高温発熱
持続時間などを任意に設定できる利点が得られるのであ
り、この結果、応用範囲を格段に増大できるので至極有
益である。
【0253】更に、本発明の発熱体組成物の温度制御方
法において、発熱体組成物に保水剤を配合し、保水剤に
吸収させた水分を徐々に分離させる場合には、長期間に
わたって発熱体組成物の発熱温度を一定以上に保持させ
ることができると共に、発熱体組成物の利用率を高める
ことができるのであり、最低発熱温度を任意に設定でき
るので、至極有益である。
【0254】本発明方法において、香料が容器内に封入
され、又は容器中に配合され、若しくは容器外に担持さ
れた場合には、発熱体組成物の発熱を利用して香料を加
熱し、冷所においても十分に香料を放散できると共に、
周囲の気温や湿度などの環境条件の変化、或いは容器の
通気性(透湿性)更に発熱体組成物のばらつきなどの原
因と関係なく、発熱体組成物の発熱温度が所定の温度を
超えると、発熱反応を実質的に停止する結果、過熱に伴
う容器の変形や火災等の弊害を防止したり、香料の過剰
放散を防止してこの過剰放散による不快感を無くするこ
とができるのであり、これらによって、一層優れた生活
空間が得られる効果を有する。
【0255】加えて、本発明方法において、殺虫剤及び
/又は殺菌剤が容器内に封入され、又は容器中に配合さ
れ、若しくは容器外に担持された場合には、発熱体組成
物の発熱を利用して殺虫剤及び/又は殺菌剤を加熱し、
冷所においても十分に殺虫剤及び/又は殺菌剤を放散で
きると共に、周囲の気温や湿度などの環境条件の変化、
或いは容器の通気性(透湿性)更に発熱体組成物のばら
つきなどの原因と関係なく、発熱体組成物の発熱温度が
所定の温度を超えると、発熱反応を実質的に停止する結
果、過熱に伴う容器の変形や火災等の弊害を防止した
り、高温に伴う殺虫剤及び/又は殺菌剤の過剰放散を防
止してこの過剰放散による不快感を無くすることができ
るのであり、これらによって、一層優れた生活空間が得
られる効果を有する。
【0256】又、以上に説明したように、本発明の発熱
体組成物は、金属粉と、金属の塩化物と、水分と、所定
温度を超えた高温時に吸着水分を放出してゲル化し、且
つこの吸着水分の放出によって発熱反応が実質的に停止
させる吸水剤とを必須成分としているので、周囲の気温
や湿度などの環境条件の変化、或いは容器の通気性(透
湿性)更に発熱体組成物のばらつきなどの原因と関係な
く、発熱温度が所定の温度を超えると、発熱反応が確実
に且つ実質的に停止される。
【0257】この結果、過熱に伴う容器の軟化や変形、
容器に含まれた香料、殺虫剤又は殺菌剤等の有機成分の
過剰な揮発による悪臭の発生、低温火傷を含む火傷など
の発生が確実に防止されるのであり、これによって、信
頼性が高くなる効果を有するのである。
【0258】本発明の発熱体組成物において、触媒及び
/又はpH調整剤が配合されている場合には、この触媒
及び/又はpH調整剤によって発熱反応が促進されるの
で、所要の最低発熱温度を維持したり、反応効率の向上
や発熱時間の長期化を図る上で有利になる。
【0259】又、本発明の発熱体組成物において、保水
剤が配合されている場合には、水分が一旦この保水剤に
吸収された後、徐々に放出されるので、長時間にわたっ
て発熱反応を持続させることができるから、所要の発熱
温度を維持する上で有利になり、しかも発熱体組成物の
利用率が高められる上、未反応の発熱体組成物を処理す
る時に、その発熱に伴う火傷を防止できる結果、安全性
を高めることができるのであり、また最低発熱温度を任
意に設定できるので、至極有益である。
【0260】更に、本発明の発熱体組成物において、保
水剤が吸水性ポリマーである場合には、保水量が大きい
ので、一層長時間にわたって発熱反応を持続させること
ができるのであり、所要の最低発熱温度を維持する上で
一層有利になり、しかも発熱体組成物の利用率が更に高
められる上、未反応の発熱体組成物を処理する時に、そ
の発熱に伴う火傷を一層確実に防止できる結果、安全性
を至極高めることができる。
【0261】又更に、本発明の発熱体組成物において、
発熱反応を促進させる発熱反応助剤を配合した場合に
は、この発熱反応助剤によって発熱反応が促進されるの
で、所要の最低発熱温度を維持する上で有利になる。
【0262】加えて、本発明の発熱体組成物において、
吸水剤が水溶性セルロースエーテルからなる場合には、
エーテル化剤の種類、置換率、セルロース分子量、溶液
として添加する場合の濃度、他の添加物(増粘開始温度
の調整剤及び/又はゲル安定剤)を添加する場合の添加
量(濃度)、昇温速度、降温速度などを適宜設定するこ
とにより、吸水剤が吸着水分を放出しはじめる温度、ゲ
ル化速度、ゲル化した吸水剤の温度に対する安定状態な
どを任意に調整することができるから、簡単に最高発熱
温度や高温発熱持続時間などを任意に設定できる利点が
得られるのであり、この結果、応用範囲を格段に増大で
きるので至極有益である。
【0263】本発明の発熱体組成物において、所定温度
を超えた高温時に吸水して生成したゲルを安定化させ、
しかも温度が低下してもゲルの液状化を抑制するゲル安
定剤が配合されていると、高温時から低温になったと
き、このゲル安定剤によって、ゲル(吸水剤)が周囲の
遊離水分を吸着するのを阻止できる結果、発熱反応を一
層実質的に停止できるのであり、しかもこのゲル安定剤
の選択によってゲル化温度を変化させることができる効
果を有するのである。
【0264】本発明に係る発熱体は、少なくとも片面が
通気性を有する偏平な袋体に、本発明に係る発熱体組成
物を封入したので、空気が袋内に入り、金属粉、金属の
塩化物及び水と化学反応を起こして発熱する。そして、
発熱体組成物を袋体ごしに加熱対象物に広範囲にわたっ
て配置させることができので、発熱体組成物の発熱を効
率良く加熱対象物に伝達することができる。
【0265】しかもこの発熱温度が一定以上に上昇する
と、吸水剤が吸着水分を放出てゲル化し、この吸水剤か
らの吸着水分の放出によって、金属粉周辺の遊離水分量
が増大し、この放出(遊離)水分が金属粉周辺に付着し
てバリヤー層となるので、金属粉への空気の供給量が減
少して発熱反応が実質的に停止する。このため、気温や
湿度などの環境条件の変化、或いは容器の通気性(透湿
性)更に発熱体組成物のばらつきなどの原因と関係な
く、発熱温度が所定の温度を超えると、発熱反応が確実
に且つ実質的に停止するから、発熱体組成物を封入する
容器の軟化やこれによる変形、容器に含まれた香料、殺
虫剤又は殺菌剤等の有機成分の過剰な揮発による悪臭の
発生、低温火傷を含む火傷などの発生が確実に防止され
るのであり、これによって、信頼性が高くなる効果を有
するのである。
【0266】本発明の発熱体において、特に遠赤外線放
射物質を容器内に封入したり、容器中に含有させたり、
容器外に担持させたりする場合には、遠赤外線が生体中
の水分に作用して生体が発熱しで生体を加熱することが
できるから、加熱効果を高めることができる。そして、
この遠赤外線放射物質を用いる発熱体を採暖や温罨法に
使用すると、この遠赤外線により温熱効果を高めること
ができる。
【0267】本発明の貼付剤は、本発明の発熱体と、こ
の発熱体の袋体の片面に付着させた粘着層とを備えるの
で、粘着層の粘着性を利用して人体などの生体の表面や
着衣などに簡単に発熱体を貼付してその発熱体組成物の
発熱による温熱効果や、これに加えられた遠赤外線によ
る温熱効果を得ることができる。しかも、発熱体組成物
の発熱温度を安全温度(43℃)以下に制限したり、仮
に安全温度を一時的に超えても、発熱持続時間を短時間
に制限して、人体などの生体の表面に低温火傷が発生す
ることを確実に防止できるようになり、また貼付剤を直
接肌に粘着させて使用したり、就寝中に使用できるよう
になるのである。
【0268】本発明の貼付剤において、粘着層又は粘着
層と袋体との間に経皮吸収性薬剤を含有又は担持させた
場合には、単に薬剤の経皮吸収投与が可能になるばかり
でなく、温熱効果により血行などの代謝が促進されるこ
とと相まって薬剤の経皮吸収性が高められる結果、全身
治療効果や局所治療効果を著しく高めることができる。
【0269】又、本発明の貼付剤において、発熱体組成
物、袋体、粘着層のうちの少なくとも1箇所及び/又は
袋体と粘着層との間に遠赤外線放射物質を含有又は担持
させた場合には、遠赤外線が生体中の水分に作用して生
体が発熱し、生体を一層加熱することができるから、加
熱効果を高めることができる。特に、経皮吸収性薬剤を
用いている場合には、この遠赤外線により得られる温熱
効果により薬剤の経皮吸収性が一層高められる結果、全
身治療効果や局所治療効果が更に著しく高められる。
【0270】更に、本発明の貼付剤において、磁性体が
袋体に担持される場合には、磁性体の磁性による磁気治
療効果を得ることができる。
【0271】本発明の香料放散装置によれば、前記本発
明の発熱体組成物と、これを収容する少なくとも一部が
通気性を有する容器と、この容器内に収容され、又は容
器中に配合され、もしくは容器外に担持された香料とか
らなるので、冷所においても発熱体組成物の発熱により
十分に香料を放散させることができる一方、発熱体組成
物の発熱温度が所定の温度を超えると、発熱反応を実質
的に停止する結果、過熱に伴う容器の変形や火災等の弊
害を防止したり、香料の過剰放散を防止してこの過剰放
散による不快感を無くするのであり、これらによって、
一層優れた生活空間が得られる効果を有する。
【0272】又、発熱体組成物の発熱によって香料を加
熱するので、電源装置などが不要になり、野外、げた箱
内、押入内などにも使用できるようになる。
【0273】そして、本発明の香料放散装置において、
香料が環境用香料である場合には、生活の中の種々の悪
臭を香料で中和したり、マスキングしたりすることがで
き、生活の快適性を高めることができる。
【0274】又、本発明の香料放散装置において、香料
が誘引物質である場合には、昆虫や動物を選択的に誘き
寄せることができるのであり、昆虫や動物の捕獲、駆除
などに用いることができる。
【0275】更に、本発明の香料放散装置において、香
料が忌避物質である場合には、危険性や有害性を有す昆
虫や動物、あるいは近づけたくない昆虫や動物を選択的
に忌避させることができる結果、生活の安全性ないし快
適性を高めることができる。
【0276】本発明の殺虫剤放散装置は、前記本発明の
発熱体組成物と、これを収容する少なくとも一部が通気
性を有する容器と、この容器内に収容され、又は容器中
に配合され、もしくは容器外に担持させた殺虫剤放散装
置とからなるので、冷所においても発熱体組成物の発熱
により十分に殺虫剤を放散させることができる一方、発
熱体組成物の発熱温度が所定の温度を超えると、発熱反
応を実質的に停止する結果、過熱に伴う容器の変形や火
災等の弊害を防止したり、殺虫剤の過剰放散を防止し
て、過剰に放散された殺虫剤による不快感を無くするの
であり、これらによって、一層優れた生活空間が得られ
る効果を有する。
【0277】又、発熱体組成物の発熱によって殺虫剤を
加熱するので、電源装置などが不要になり、野外、げた
箱内、押入内などにも使用できるようになる。
【0278】本発明の殺虫剤放散装置において、誘引物
質が容器内に収容され、又は容器中に配合され、もしく
は容器外に担持された場合には、誘引物質で昆虫や動物
を選択的に誘き寄せることができる結果、選択的な殺虫
による駆除が効率良く行えるようになる。
【0279】本発明の殺菌剤放散装置は、前記本発明の
発熱体組成物と、これを収容する少なくとも一部分が通
気性を有する容器と、この容器内に収容され、又は容器
中に配合され、もしくは容器外に担持させた殺菌剤放散
装置とからなるので、冷所においても発熱体組成物の発
熱により十分に殺菌剤を放散させることができる一方、
発熱体組成物の発熱温度が所定の温度を超えると、発熱
反応を実質的に停止する結果、過熱に伴う容器の変形や
火災等の弊害を防止したり、殺菌剤の過剰放散を防止し
て、過剰に放散された殺菌剤による不快感を無くするの
であり、これらによって、一層優れた生活空間が得られ
る効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係る発熱体の断面模式
図である。
【図2】第1実施例の発熱温度を測定する要領を示す模
式図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係る発熱体の発熱温度
特性図である
【符号の説明】
1 第1包材 2 発熱体組成物 3 第2包材 A A剤 B B剤 H1 発熱体
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C11B 9/00 C11B 9/00 Z

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも一部が通気性を有する容器に
    封入され、且つ空気の存在によって発熱する発熱体組成
    物には、発熱温度が所定温度を超えた高温時に、吸着水
    分を放出してゲル化する吸水剤を配合し、この吸水剤か
    らの吸着水分の放出によって発熱反応を実質的に停止さ
    せることを特徴とする発熱体の発熱反応制御方法。
  2. 【請求項2】 発熱温度が所定値を超え、吸水剤の水分
    放出に基づく発熱反応を抑制するにあたり、発熱反応に
    よって発生する発熱量を周囲への放熱量以下に制限する
    請求項1に記載の発熱体の発熱反応制御方法。
  3. 【請求項3】 吸水剤が水溶性セルロースエーテルから
    なる請求項1又は2に記載の発熱体の発熱反応制御方
    法。
  4. 【請求項4】 香料が容器内に封入され、又は容器中に
    配合され、若しくは容器外に担持された請求項1ないし
    3のいずれか1項に記載の発熱体の発熱反応制御方法。
  5. 【請求項5】 殺虫剤又は殺菌剤が容器内に封入され、
    又は容器中に配合され、若しくは容器外に担持された請
    求項1ないし4のいずれか1項に記載の発熱体の発熱反
    応制御方法。
  6. 【請求項6】 金属粉、金属の塩化物、水及び所定の温
    度を超えると吸着水分を放出してゲル化し、且つこの吸
    着水分の放出によって発熱反応を実質的に停止させる吸
    水剤を必須成分とする発熱体組成物。
  7. 【請求項7】 触媒及び/又はpH調整剤が配合されて
    いる請求項6に記載の発熱体組成物。
  8. 【請求項8】 保水剤が配合されている請求項6又は7
    に記載の発熱体組成物。
  9. 【請求項9】 保水剤が吸水性ポリマーである請求項8
    に記載の発熱体組成物。
  10. 【請求項10】 発熱反応を促進させる発熱反応助剤を
    配合した請求項6ないし9のいずれか1項に記載の発熱
    体組成物。
  11. 【請求項11】 吸水剤が水溶性セルロースエーテルか
    らなる請求項6ないし10のいずれか1項に記載の発熱
    体組成物。
  12. 【請求項12】 所定温度を超えた高温時に、吸着水分
    を放出して生成したゲルを安定化させ、しかも温度が低
    下してもゲルの液状化を抑制するゲル安定剤が配合され
    ている請求項6ないし11のいずれか1項に記載の発熱
    体組成物。
  13. 【請求項13】 請求項6ないし12のいずれか1項に
    記載した発熱体組成物を、少なくとも片面が通気性を有
    する偏平な袋体に封入したことを特徴とする発熱体。
  14. 【請求項14】 発熱体組成物中に遠赤外線放射物質を
    封入した請求項13に記載の発熱体。
  15. 【請求項15】 請求項13又は14に記載の発熱体
    と、この発熱体における袋体の片面に積層させた粘着層
    とを備えることを特徴とする貼付剤。
  16. 【請求項16】 粘着層又は袋体と粘着層との間に経皮
    吸収性薬剤を含有又は担持させた請求項15に記載の貼
    付剤。
  17. 【請求項17】 発熱体組成物、袋体又は粘着層のうち
    の少なくとも1箇所及び/又は袋体と粘着層との間に遠
    赤外線放射物質を含有又は担持させている請求項15又
    は16に記載の貼付剤。
  18. 【請求項18】 発熱体組成物、袋体又は粘着層のうち
    の少なくとも1箇所及び/又は袋体と粘着層との間に磁
    性体を含有又は担持させている請求項15ないし17の
    いずれか1項に記載の貼付剤。
  19. 【請求項19】 請求項6ないし12のいずれか1項に
    記載の発熱体組成物と、これを収容する少なくとも一部
    が通気性を有する容器と、この容器内に収容され、又は
    容器中に配合され、もしくは容器外に担持させた香料と
    からなる香料放散装置。
  20. 【請求項20】 香料が環境用香料、誘引物質又は忌避
    物質である請求項19に記載の香料放散装置。
  21. 【請求項21】 請求項6ないし12に記載の発熱体組
    成物と、これを収容する少なくとも一部が通気性を有す
    る容器と、この容器内に収容され、又は容器中に配合さ
    れ、もしくは容器外に担持させた殺虫剤とからなる殺虫
    剤放散装置。
  22. 【請求項22】 請求項6ないし12に記載の発熱体組
    成物と、これを収容する少なくとも一部が通気性を有す
    る容器と、この容器内に収容され、又は容器中に配合さ
    れ、もしくは容器外に担持させた殺菌剤とからなる殺菌
    剤放散装置。
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