JPH08302525A - ポリエステルマルチフィラメント混繊糸 - Google Patents

ポリエステルマルチフィラメント混繊糸

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JPH08302525A
JPH08302525A JP11213195A JP11213195A JPH08302525A JP H08302525 A JPH08302525 A JP H08302525A JP 11213195 A JP11213195 A JP 11213195A JP 11213195 A JP11213195 A JP 11213195A JP H08302525 A JPH08302525 A JP H08302525A
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JP
Japan
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yarn
polyester multifilament
self
less
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JP11213195A
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English (en)
Inventor
Sukehiro Nishida
右広 西田
Yoshihisa Danmoto
佳久 段本
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Toyobo Co Ltd
Original Assignee
Toyobo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 適度なふくらみ感およびソフトなタッチを表
現することの出来る、婦人衣料などに好適に用いられ得
るポリエステルマルチフィラメント混繊糸を提供するこ
と。 【構成】 自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント
糸Aの結晶配向度(fc(A))が0.95以下であ
り、該マルチフィラメント糸Aの非晶配向度(fa
(A))/結晶配向度(fc(A))が0.04以上
0.13以下であり、該マルチフィラメント糸Aの非晶
配向度(fa(A))/複屈折率(△n(A))が1.
1以上2.3以下であり、該マルチフィラメント糸Aの
結晶化度(χc(A))が25.0%未満である自己伸
長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aを含有する、
ポリエステルマルチフィラメント混繊糸。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリエステルマルチフ
ィラメント混繊糸に関し、さらに詳細には、織編物を作
製した後、染色加工を施すことによって、適度なふくら
み感、および、ソフトなタッチを表現することの出来
る、婦人衣料などに好適に用いられ得るポリエステルマ
ルチフィラメント混繊糸に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、市場で使用されているエチレンテ
レフタレート成分を主な繰り返し単位とするポリエステ
ルから構成されるポリエステルマルチフィラメント加工
糸としては、仮撚加工糸がその主流を占めていた。しか
し、この仮撚加工糸を用いて作製した織編物は、ふかつ
き感が強く、安っぽい風合いに仕上がってしまうという
問題があった。
【0003】昨今、上記ポリエステルマルチフィラメン
ト加工糸として、熱収縮性が異なる2種以上のポリエス
テルマルチフィラメント糸条を組み合わせた、熱収縮差
を有するインターレース混繊糸が、数多く提案されてき
ている。上記のように、このインターレース混繊糸は、
異なる熱収縮性のポリエステルマルチフィラメント糸条
で構成されているため、このインターレース混繊糸を用
いて織編物を作製した後、熱加工すると、ふくらみ(嵩
高性)を有する織編物が得られる。次いで、このふくら
みを有する織編物に、アルカリ減量処理を施すことによ
り、繊維間および織編組織がルーズ化し、絹に近い風合
いの織編物(絹様織編物)が得られる。しかし、この絹
様織編物は、単に絹によく似た風合いを有しているに過
ぎず、ふかついたり、ボテ感があったりするなどの問題
があり、適度なふくらみ感やソフトなタッチを有しな
い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ポリエステ
ルマルチフィラメント混繊糸およびこの混繊糸を用いた
織編物に関し、上記のような問題を解決することを課題
とする。さらに詳しくは、織編物を作製した後、染色加
工を施すことによって、適度なふくらみ感およびソフト
なタッチを有するだけでなく、ふかつきやボテ感のな
い、従来とは全く異なる風合いを有する織編物を得るこ
とが出来るポリエステルマルチフィラメント混繊糸を提
供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のポリエステルマ
ルチフィラメント混繊糸は、自己伸長性ポリエステルマ
ルチフィラメント糸Aを含有し、そして、該ポリエステ
ルマルチフィラメント糸Aの結晶配向度(fc(A))
は、0.95以下であり、該ポリエステルマルチフィラ
メント糸Aの[非晶配向度(fa(A))/結晶配向度
(fc(A))]は、0.04以上0.13以下であ
り、該ポリエステルマルチフィラメント糸Aの[非晶配
向度(fa(A))/複屈折率(△n(A))]は、
1.1以上2.3以下であり、該ポリエステルマルチフ
ィラメント糸Aの結晶化度(χc(A))(%)は、2
5.0%未満であり、そのことにより上記課題がを解決
され得る。以下に本発明をさらに詳しく説明する。
【0006】本発明のポリエステルマルチフィラメント
混繊糸は、エチレンテレフタレート成分を主な繰り返し
単位とするポリエステルから構成されるマルチフィラメ
ント混繊糸である。
【0007】上記ポリエステルのカルボン酸成分として
は、主としてテレフタル酸が用いられるが、マロン酸、
マレイン酸、セバシン酸のような脂肪族ジカルボン酸や
そのエステル形成性誘導体、あるいは、フタル酸、イソ
フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、5−ソジ
ウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸やそ
のエステル形成性誘導体なども用いられ、さらにこれら
を1種以上混合して用いてもよい。
【0008】上記ポリエステルのグリコール成分として
は、主としてエチレングリコールが用いられるが、1,
3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオ
ペンチルグリコールなども用いられ、さらにこれらを1
種以上混合して用いてもよい。
【0009】従って、上記ポリエステルとして好適に使
用され得るのは、テレフタル酸のカルボン酸成分とエチ
レングリコールのグリコール成分とが共重合したポリエ
チレンテレフタレートである。
【0010】上記ポリエステルは、必要に応じて、二酸
化チタン、硫酸バリウム、カオリナイトなどの無機微粒
子や顔料などを添加して製造したポリエステルであって
も全く問題ない。
【0011】上記マルチフィラメント糸は、ポリエステ
ルレジンチップを原料として、通常の溶融紡糸方法を用
いて得られる。この際使用するポリエステルレジンチッ
プの極限粘度数(以下[η]とする)は、好ましくは
0.50〜0.65cc/gの範囲、より好ましくは
0.55〜0.65cc/gの範囲である。その理由と
して、上記範囲を有するポリエステルレジンチップから
得られるマルチフィラメント糸を用いて織編物を加工す
る際、紡糸操業性および延伸操業性が良好であり、アル
カリ減量加工による脆化が防止されるなどの点が挙げら
れる。
【0012】極限粘度数([η])は、粘度数ηsp/c
を溶液濃度cに対しプロットし、ηsp/cをc→0に外
挿することによって求められる。このとき、ウベローデ
粘度計を使用し、フェノールとテトラクロロエタンとの
等重量混合物を溶媒とし、20℃±0.5℃の恒温条件
下で粘度数ηsp/cを求める。
【0013】《結晶配向度(fc(A))》本発明のポ
リエステルマルチフィラメント混繊糸に含有される自己
伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの結晶配向
度(fc(A))は、0.95以下である。これは、自
己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの結晶配
向度(fc(A))が0.95を超える場合には、実質
的に自己伸長性を有しなくなり、このようなマルチフィ
ラメント糸を含有するポリエステルマルチフィラメント
混繊糸を用いて織編物を作製しても、ふくらみ感、ソフ
ト感に欠けた、風合いの悪いものに仕上がってしまうか
らである。
【0014】自己伸長性ポリエステルマルチフィラメン
ト糸Aの結晶配向度(fc(A))を求めるためには、
まず、自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸A
の(100)面の配向角(OA(°))を測定する。こ
の測定には、例えば、理学電機社製X線発生装置(RU
−3H)、繊維測定装置(FS−3)、ゴニオメーター
(SG−7)、およびシンチレーションカウンターを使
用する。測定の際には、ニッケルフィルターで単色化さ
れたCuKα線(波長λ=1.5418Å)を用い、
(100)面反射の2θを使用して測定を行う。なお、
X線発生装置は40kV、100mAで運転するものと
し、繊維測定装置に上記試料(自己伸長性ポリエステル
マルチフィラメント糸A)を単糸同士が互いに平行にな
るように取り付ける。試料の厚みは約1.0mmになる
よう調整する。このようにして得た回析強度曲線から繊
維の配向角(OA(°))を求めるには、±180℃で
得られる回析強度の平均値を取り、水平線を引き、ピー
クの頂点から基線に垂線をおろし、その高さの中点を求
め中点を通る水平線を引く。この水平線と回析強度曲線
の交点間距離を測定し、この値を角度(°)に換算し、
自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの(1
00)面の配向角(OA(°))とする。
【0015】そして、この自己伸長性ポリエステルマル
チフィラメント糸Aの(100)面の配向角(OA
(°))を用い、自己伸長性ポリエステルマルチフィラ
メント糸Aの結晶配向度(fc(A))を下式に基づい
て算出する。
【0016】
【数1】
【0017】次いで、自己伸長性ポリエステルマルチフ
ィラメント糸Aの密度(ρs)(g/cm3)を、密度
勾配管法に基づき20±0.5℃の恒温槽内での比重測
定により測定し、自己伸長性ポリエステルマルチフィラ
メント糸Aの結晶化度(χc(A))(%)を、下式に
基づいて算出する。この密度勾配管法による比重測定で
は、軽比重液として公知のn−ペンタン(比重0.68
3)と重比重液として公知の四塩化炭素(比重1.59
9)とを所定の割合で混合し、混合液に密度勾配を持た
せる。この混合液中にポリエステルマルチフィラメント
糸Aを浸漬して密度を測定する。5回の測定を行って得
た密度の平均値を、その自己伸長性ポリエステルマルチ
フィラメント糸Aの密度(ρs)(g/cm3)とす
る。
【0018】
【数2】
【0019】次に、自己伸長性ポリエステルマルチフィ
ラメント糸Aの複屈折率(△n(A))を測定する。こ
の測定には、例えば、ニコン社製偏光顕微鏡POH型お
よびライツ社製ペレックコンペンセータを使用し、光源
としてスペクトル光源用起動装置(東芝SLS−3−B
型)(Na光源)を用いる。そして5〜6mm長の繊維
軸に対し5°の角度に切断した試料(自己伸長性ポリエ
ステルマルチフィラメント糸A)を、切断面を上にして
スライドガラス上に載せる。このスライドガラスを回転
載物台に載せ、試料が偏光子に対し45°になるように
回転載物台を回転させて調節しアナライザーを挿入し暗
視野とした後、コンペンセータを30にして縞数を数え
る(n個)。コンペンセータを右螺子方向にまわして試
料が最初に暗くなる点のコンペンセータの目盛a、コン
ペンセータを左螺子方向にまわして試料が最初に暗くな
る点のコンペンセータの目盛bを測定した後、コンペン
セータを30に戻してアナライザーを外し、試料の直径
dを測定し、下記式の基づき自己伸長性ポリエステルマ
ルチフィラメント糸Aの複屈折率(△n(A))を算出
する。なお、10回の測定により得られた値の平均値を
複屈折率(△n(A))とする。
【0020】
【数3】
【0021】次いで、この複屈折率(△n(A))を用
いて、自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸A
の非晶配向度(fa(A))を、下式に基づいて算出す
る。
【0022】
【数4】
【0023】《非晶配向度(fa(A))/結晶配向度
(fc(A))》本発明のポリエステルマルチフィラメ
ント混繊糸に含有される自己伸長性ポリエステルマルチ
フィラメント糸Aの非晶配向度(fa(A))と結晶配
向度(fc(A))との比(fa(A))/(fc
(A))は、0.04以上0.13以下である。この比
が0.04以上0.13以下のマルチフィラメント糸を
含有するポリエステルマルチフィラメント混繊糸を用い
て作製した織編物は、自己伸長性を有しており、ふくら
み感およびソフト感に富み、風合いに優れる。このよう
な自己伸長性を有するのは、糸条が比較的小さいある一
定の非晶配向をとることによって、糸条の非晶部分子の
加熱による分子運動が活発化され、繊維軸方向に分子が
再配列され易くなることによると考えられる。言い換え
れば、伸び切った非晶鎖分子よりも無秩序性が大きい非
晶鎖分子の方が、ゴーシュ配置からより安定なトランス
配置への移行が生じ易く、従って、実質的に繊維軸方向
に分子が再配列、すなわち結晶化が促進されるので、糸
条は自己伸長するものと考えられる。逆に、伸び切った
非晶鎖分子は、トランス配置を取る割合が大きく、加熱
によって分子の熱運動性が向上しても繊維軸方向への分
子の再配列の程度は小さいものとなり、実質的に糸条は
自己伸長性を示さないものと考えられる。
【0024】一方、上記の比(fa(A))/(fc
(A))が0.04未満の場合には、配向結晶化が進
み、糸条の物性としては強力が大きいものとなり好まし
いが、非晶部の分子配向が極軽度であるために染色加工
時の熱処理による繊維軸方向への分子再配列の程度が小
さく、実質的に自己伸長性を有しなくなる。このような
マルチフィラメント糸を含有するポリエステルマルチフ
ィラメント混繊糸を用いて織編物を作製しても、ふくら
み感、ソフト感に欠けた、風合いの悪いものに仕上がっ
てしまう。
【0025】他方、上記の比(fa(A))/(fc
(A))が0.13を超える場合には、非晶部の分子配
向が大きくなり、染色加工時の熱処理による繊維軸方向
への分子再配列に伴う結晶化は促進されるが、元々非晶
部の配向度が大きいと繊維軸方向に分子鎖が再配列する
ことによる自己伸長効果は極軽度となる。そのために、
このようなマルチフィラメント糸を含有するポリエステ
ルマルチフィラメント混繊糸を用いて織編物を作製して
も、ふくらみ感、ソフト感に欠けた、風合いの悪いもの
に仕上がってしまう。さらに、結晶配向度(fc
(A))が非晶配向度(fa(A))に比べ著しく小さ
いということは、このようなマルチフィラメント糸を含
有するポリエステルマルチフィラメント混繊糸を用いて
織編物を作製しても、力学的性能に乏しく、実用には耐
えられない。
【0026】上記のように、自己伸長性ポリエステルマ
ルチフィラメント糸Aの非晶配向度(fa(A))/結
晶配向度(fc(A))が、0.04以上0.13以下
のマルチフィラメント糸を含有するポリエステルマルチ
フィラメント混繊糸を用いて作製した織編物は、自己伸
長性を有しており、ふくらみ感およびソフト感に富み、
風合いに優れる。
【0027】《非晶配向度(fa(A))/複屈折率
(△n(A))》本発明のポリエステルマルチフィラメ
ント混繊糸に含有される自己伸長性ポリエステルマルチ
フィラメント糸Aの非晶配向度(fa(A))と複屈折
率(△n(A))との比(fa(A))/(△n
(A))は、1.1以上2.3以下である。
【0028】上記の比(fa(A))/(△n(A))
が1.1未満であるときは、糸条の複屈折率が大きく、
非晶配向度が高い場合である。このような糸条は熱処理
を施しても自己伸長性を有さない。従って、このような
マルチフィラメント糸を含有するポリエステルマルチフ
ィラメント混繊糸を用いて織編物を作製すると、その織
編物は、糸条の複屈折率が大きいためにアルカリ減量加
工を施しても充分な力学特性を保持しているが、糸条が
自己伸長性を有していないために、ふくらみ感、ソフト
感に欠け、風合いが悪くなる。
【0029】さらに、上記の比(fa(A))/(△n
(A))が2.3を超える場合は、糸条の複屈折率が小
さ過ぎるか、または非晶配向度(fa(A))が大き過
ぎる場合である。糸条の複屈折率が小さ過ぎるマルチフ
ィラメント糸を含有するポリエステルマルチフィラメン
ト混繊糸を用いて織編物を作製すると、その織編物は、
アルカリ減量加工を施すと極度に脆化してしまい、引裂
強度が低下するなど実用強度を有しなくなる。非晶配向
度(fa(A))が大き過ぎる場合には、非晶鎖分子は
伸び切った状態、すなわちトランス配置を取る割合が大
きくなり、このような糸条を熱処理を施しても自己伸長
性を有さない。
【0030】《結晶化度(χc(A))(%)》本発明
のポリエステルマルチフィラメント混繊糸に含有される
自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの結晶
化度(χc(A))(%)は、糸条に自己伸長性を付与
し得る点から25.0%未満であり、好ましくは7.0
%以上20.0%以下、さらに好ましくは10.0%以
上20.0%以下の範囲である。従って、このような自
己伸長性を有するマルチフィラメント糸を含有するポリ
エステルマルチフィラメント混繊糸を用いて織編物を作
製すると、その織編物は、ふくらみ感およびソフト感を
有し、風合いに優れる。
【0031】上記の結晶化度(χc(A))(%)が2
5.0%以上である場合には、糸条の結晶化が促進され
過ぎているために、熱処理を施しても糸条は自己伸長性
を示さない。このようなマルチフィラメント糸を含有す
るポリエステルマルチフィラメント混繊糸を用いて織編
物を作製すると、その織編物は、糸条が自己伸長性を有
していないために、ふくらみ感、ソフト感に欠ける風合
いの悪いものとなる。 《160℃の乾熱収縮率(SHD(A))(%)》本発
明のポリエステルマルチフィラメント混繊糸に含有され
る自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの1
60℃の乾熱収縮率(SHD(A))(%)は、好まし
くは−10%以上0%未満、さらに好ましくは−10%
以上−4%以下の範囲である。このような自己伸長性を
有するマルチフィラメント糸を含有するポリエステルマ
ルチフィラメント混繊糸を用いて織編物を作製すると、
その織編物は、ふくらみ感およびソフト感を有し、さら
にはバルキー感に富む、風合いの優れたものとなる。自
己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの160
℃の乾熱収縮率(SHD(A))(%)が−10%未満
である場合には、糸条の自己伸長率が大きくなる傾向に
あり、このようなマルチフィラメント糸を含有するポリ
エステルマルチフィラメント混繊糸を用いて織編物を作
製すると、その織編物は、ふかつき気味になり、安っぽ
くなり易い。自己伸長性ポリエステルマルチフィラメン
ト糸Aの160℃の乾熱収縮率(SHD(A))(%)
が0%を超える場合には、糸条は熱収縮して自己伸長し
にくくなり、このようなマルチフィラメント糸を含有す
るポリエステルマルチフィラメント混繊糸を用いて織編
物を作製すると、その織編物は、ふくらみ感およびソフ
ト感が欠け易い。
【0032】上記自己伸長性ポリエステルマルチフィラ
メント糸Aの160℃の乾熱収縮率(SHD(A))
(%)は、以下のようにして5回測定し算出した値の平
均値をいう。まず、試料(自己伸長性ポリエステルマル
チフィラメントA)に1/30(g/d)の荷重を掛
け、その長さL3(mm)を測定する。次いでその荷重を
取り除き、上記試料を乾燥機に入れ、乾熱160℃で3
0分間乾燥する。乾燥後冷却し、再度1/30(g/
d)の荷重を掛けてその長さL4(mm)を測定する。上
記のようにして測定したL3、L4を、下式に代入し
て、160℃の乾熱収縮率(SHD(A))(%)を算
出する。
【0033】
【数5】
【0034】《破断伸度(DE(A))(%)》本発明
のポリエステルマルチフィラメント混繊糸に含有される
自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの破断
伸度(DE(A))(%)は、好ましくは80%以上3
00%以下の範囲である。自己伸長性ポリエステルマル
チフィラメント糸Aの破断伸度(DE(A))(%)が
80%未満である場合には、マルチフィラメント糸の非
晶鎖分子が繊維軸方向に高度に配列されており、ゴーシ
ュ配置よりトランス配置を取る割合が大きくなり易いた
めに、加熱して分子の熱運動性が向上しても繊維軸方向
への分子の再配列の程度は小さいものとなり、従って実
質的に糸条は自己伸長性を示さなくなる。このようなマ
ルチフィラメント糸を含有するポリエステルマルチフィ
ラメント混繊糸を用いて織編物を作製すると、その織編
物は、ふくらみ感およびソフト感に欠け易い。自己伸長
性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの破断伸度(D
E(A))(%)が300%を超える場合には、マルチ
フィラメント糸は繊維軸方向に対し配向度が極端に小さ
くなり易くなるため、熱処理を施しても糸条は実質的に
自己伸長性を示さなくなる。さらに、熱処理の過程にお
いて、マルチフィラメント糸Aにループ、弛みを多数形
成し易く、取扱いにくくなり、後加工の際の操業性が悪
くなる傾向にある。
【0035】上記自己伸長性ポリエステルマルチフィラ
メント糸Aの破断伸度(DE(A))(%)の測定に
は、オリエンテック社製テンシロンUTM−III−10
0型を使用した。試料長200mm、引張速度200mm
/分で引張試験を実施し、試料切断に至るまでの伸度を
5回測定して平均した値を(DE(A))とする。
【0036】《複屈折率(△n(A))》本発明のポリ
エステルマルチフィラメント混繊糸に含有される自己伸
長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの複屈折率
(△n(A))は、好ましくは0.030以上0.05
5以下の範囲であり、より好ましくは0.040以上
0.055以下の範囲である。自己伸長性ポリエステル
マルチフィラメント糸Aの複屈折率(△n(A))が
0.030未満である場合、上述のように、糸条の複屈
折率が小さいマルチフィラメント糸を含有するポリエス
テルマルチフィラメント混繊糸を用いて作製した織編物
は、アルカリ減量加工を施すと極度に脆化し易くなり、
引裂強度が低下するなど実用強度を有しなくなる傾向に
ある。逆に、自己伸長性ポリエステルマルチフィラメン
ト糸Aの複屈折率(△n(A))が、0.055を超え
る場合には、糸条は実質的に自己伸長性を示さず、この
ようなマルチフィラメント糸を含有するポリエステルマ
ルチフィラメント混繊糸を用いて織編物を作製すると、
その織編物は、ふくらみ感およびソフト感が欠け易くな
る。
【0037】《110Hzにおける力学的損失正接(T
anδ)が最大となる温度(Tα(A))(℃)》本発
明のポリエステルマルチフィラメント混繊糸に含有され
る自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの力
学的な温度分散特性を示す値(110Hzにおける測定
値)である損失正接(Tanδ)が最大となる温度(T
α(A))(℃)は、糸条の自己伸長性の点から、好ま
しくは90℃以上125℃以下の範囲であり、より好ま
しくは105℃以上120℃以下の範囲である。このよ
うな自己伸長性を有するマルチフィラメント糸を含有す
るポリエステルマルチフィラメント混繊糸を用いて織編
物を作製すると、その織編物は、ふくらみ感およびソフ
ト感を有する、風合いの優れたものとなる。一方、上記
温度(Tα(A))(℃)が90℃未満である場合に
は、糸条は熱的に不安定な状態であり、少しの熱量の付
与により影響を受け易い。特に、撚糸後の撚止セット条
件やサイジング条件を決める際、通常用いている温度よ
りも更に低温で処理しなければならなくなる。また、後
加工工程で影響されることのないように、撚止セットや
サイジングを行うには、処理時間あるいは乾燥時間を延
長させなければならなくなり、ランニングコストが増加
する。他方、上記温度(Tα(A))(℃)が125℃
より高い場合には、糸条は実質的に自己伸長性を示さな
い。このようなマルチフィラメント糸を含有するポリエ
ステルマルチフィラメント混繊糸を用いて織編物を作製
すると、その織編物は、ふくらみ感およびソフト感に欠
け易い。
【0038】上記温度(Tα(A))(℃)の測定に
は、オリエンテック社製VibronDDV−IICを使
用した。測定周波数(正弦波)110Hz、昇温速度1
℃/分、乾燥空気雰囲気下で、温度変化に対する力学的
損失正接Tanδを測定した。このとき、Tanδの最
大値に対応する温度(Tα(A);主分散を示す温度)
を読み取った。このTα(A)は、無定形領域に内在す
る高分子鎖セグメントによるミクロブラウン運動に密接
に関係した物性値である。
【0039】《110Hzにおける力学的損失正接(T
anδ)の最大値[(Tanδ)max](A)》上記
(Tα(A))(℃)測定の際、Tanδ曲線の最大値
[(Tanδ)max]が読み取られる。この値は、無定
形領域に内在する高分子鎖セグメントが示すミクロブラ
ウン運動のし易さを示し、この値が小さい程、上記高分
子鎖セグメントは動きにくく、糸条は熱的に安定であ
り、この値が大きい程、上記高分子鎖セグメントはミク
ロブラウン運動し易く、糸条は熱的に不安定であるとい
える。本発明のポリエステルマルチフィラメント混繊糸
に含有される自己伸長性ポリエステルマルチフィラメン
ト糸Aの力学的温度分散特性値(110Hzにおける測
定値)である損失正接(Tanδ)の最大値[(Tan
δ)max](A)は、好ましくは、0.230以上0.
290以下である。上記範囲となるように、紡糸条件、
延伸条件、熱処理条件を適性化し、染色加工時の湿熱処
理によって、マルチフィラメントAを自己伸長し得るよ
うにすることが簡単にできる。例えば、紡糸引取速度2
000〜4000m/分で溶融紡糸されて得られたポリ
エステルマルチフィラメント未延伸糸をそのまま熱処
理、あるいは糸条のガラス転移温度以上結晶化温度以下
の温度条件で延伸した後に熱処理を施すことによって、
結晶化度が若干増加し、[(Tanδ)max]値は若干
減少を示す。しかしながら、過度に結晶化度を増加さ
せ、[(Tanδ)max]値を減少させることは無定形
領域、すなわち非晶部を構成する高分子鎖セグメントの
量が実質的に少なくすることを意味する。そして、上記
セグメントの熱運動性も低下するために、無定形領域の
高分子鎖セグメントが結晶領域に取り込まれ、結晶c軸
方向、すなわち繊維軸方向への結晶成長が事実上軽度な
ものに留まり、従って糸条の自己伸長能が低下し、織編
物に充分なふくらみ感およびソフト感を付与することが
できなくなってしまうのである。
【0040】《他のポリエステルマルチフィラメント糸
との混繊》本発明のポリエステルマルチフィラメント混
繊糸は、上記自己伸長性ポリエステルマルチフィラメン
ト糸Aの他に、さらに、熱収縮性ポリエステルマルチフ
ィラメント糸Bを含有し得る。この際、マルチフィラメ
ント糸Aとマルチフィラメント糸Bとの割合は目的に応
じて適宜選定することが出来るが、両者の重量合計に対
しマルチフィラメント糸Aの重量が20%を下回らない
範囲とすることが好ましく、この混繊糸を用いて作製し
た織編物の風合いを考慮すると、マルチフィラメント糸
Aとマルチフィラメント糸Bとの組合せの割合は、重量
比で30/70〜70/30程度であることが好まし
い。さらに、使用目的に応じて、この2種のポリエステ
ルマルチフィラメント糸の他に他のポリエステルマルチ
フィラメント糸を加えても構わない。
【0041】しかし、上記のように熱収縮性ポリエステ
ルマルチフィラメント糸B、および必要に応じて他のマ
ルチフィラメント糸を含有させる際に、ポリエステルマ
ルチフィラメント混繊糸全体の160℃の乾熱収縮率
(SHD)(%)は、好ましくは5%以上30%以下で
あり、さらに好ましくは7%以上20%以下である。こ
のようなポリエステルマルチフィラメント混繊糸を用い
て作製した織編物は、ふくらみ感およびソフト感を有
し、風合いに優れる。一方、上記160℃の乾熱収縮率
(SHD)(%)が5%未満の場合は、低収縮糸とな
り、このポリエステルマルチフィラメント混繊糸を用い
た織編物は、ふくらみ不足、バルキー性不足に仕上がっ
てしまい、メヨレやスリップの問題を生じ易い。他方、
上記160℃の乾熱収縮率(SHD)(%)が30%を
超過すると、得られる織編物のふくらみ感およびバルキ
ー性には富むものの、肌触りがやや固くなり、ドレープ
性が欠如し易くなるなど、風合い的に良く仕上がらない
傾向にある。ここで、上記熱収縮性ポリエステルマルチ
フィラメント糸Bの160℃の乾熱収縮率(SHD
(B))(%)は、特に限定されないが、得られる織編
物全体の風合いを考慮すると、7%以上25%以下の範
囲であることが好ましい。
【0042】なお、上記160℃の乾熱収縮率(SH
D)(%)は、自己伸長性ポリエステルマルチフィラメ
ント糸Aの160℃の乾熱収縮率(SHD(A))
(%)を測定したのと同様に、ポリエステルマルチフィ
ラメント混繊糸全体の値を測定した値である。
【0043】加えて、上記のように熱収縮性ポリエステ
ルマルチフィラメント糸B、および必要に応じて他のマ
ルチフィラメント糸を含有させる際に、ポリエステルマ
ルチフィラメント混繊糸全体の沸水収縮率(SHW)
(%)は、好ましくは2%以上25%以下であり、さら
に好ましくは5%以上20%以下である。このようなポ
リエステルマルチフィラメント混繊糸を用いて織編物を
作製すると、その織編物は、ふくらみ感およびソフト感
を有する、風合いの優れたものとなる。一方、上記ポリ
エステルマルチフィラメント混繊糸全体の沸水収縮率
(SHW)(%)が2%未満の場合は、製織編後の布帛
の精錬工程に於ける糸条の収縮の程度が小さくなり、精
錬後に生機のメヨレやスリップの発生を誘発し易く、外
観品位に劣ることが多い。他方、上記ポリエステルマル
チフィラメント混繊糸全体の沸水収縮率(SHW)
(%)が25%を超過する場合は、高収縮性を示し、作
製した織編物は締まった感じに仕上がってしまい、ドレ
ープ性に乏しくなり易い。ここで、上記熱収縮性ポリエ
ステルマルチフィラメント糸Bの沸水収縮率(SHW
(B))(%)は、特に限定されないが、得られる織編
物全体の風合いを考慮すると、6%以上20%以下の範
囲であることが好ましい。
【0044】上記ポリエステルマルチフィラメント混繊
糸全体の沸水収縮率(SHW)(%)の測定では、枠周
1.125mの検尺機を用い、試料(ポリエステルマル
チフィラメント混繊糸)に0.1g/dの初荷重を掛
け、120回/分の速度で巻き返して巻き回数が20回
の小綛を作り、そして初荷重の40倍の重りを掛け、綛
長L1(mm)を測定する。次いで重りを外し、収縮が
妨げられないような方法で沸騰水(100℃)中に30
分間浸漬した後、取り出して吸取紙または綿布で水を拭
き取り、水平状態で風乾する。風乾後、再度重りを掛け
て綛長L2(mm)を5回測定し、下式より算出した値
を平均する。
【0045】
【数6】
【0046】上記のように自己伸長性ポリエステルマル
チフィラメント糸Aと、熱収縮性ポリエステルマルチフ
ィラメント糸Bとを含む、2種類以上のポリエステルマ
ルチフィラメント糸を組み合わせて本発明のポリエステ
ルマルチフィラメント混繊糸を作製する方法には、引き
揃えあるいは常温の高圧空気流を使用した空気交絡処
理、または壁撚りを含む合撚などを用いることが出来
る。好適には空気交絡処理することが望ましく、特公昭
36−12230号公報に見られるような公知のインタ
ーレースノズルの他、攪乱空気流によってループや弛み
を形成させるタスランノズルなどを使用することが出来
る。タスランノズルを使用する場合には、巻き取ったパ
ッケージの解舒性の悪化を抑制するために、合繊加工糸
用コーニングオイルを適当量付与した後にパッケージと
して巻き取ることが望ましい。なお、インテーレースノ
ズルを使用する際には、混繊糸の交絡個数を20〜10
0個/m程度としておくと、後工程における糸割れなど
の問題が少なく、工程通過性の観点より好ましい。
【0047】本発明のポリエステルマルチフィラメント
混繊糸に含有される上記自己伸長性ポリエステルマルチ
フィラメント糸Aおよび上記熱収縮性ポリエステルマル
チフィラメント糸Bの単糸繊度に関しては特に限定され
ないが、マルチフィラメント糸Aの単糸繊度は、好まし
くは0.1デニール以上3.5デニール以下の範囲、よ
り好ましくは0.5デニール以上2.5デニール以下の
範囲であり、マルチフィラメント糸Bの単糸繊度は、好
ましくは1.0デニール以上20デニール以下、より好
ましくは3.0デニール以上15デニール以下の範囲で
ある。これにより、マルチフィラメントAおよびBを用
いた織編物に、適度なふくらみ感、ソフトタッチ、は
り、腰感などを与えることが可能である。
【0048】上記マルチフィラメント糸Aおよびマルチ
フィラメント糸Bの断面形状に関し、両者は同一である
必要はなく、三角断面糸やその他の多角断面糸、偏平断
面糸、丸断面糸、その他異型断面糸などが、織編物の風
合い、外観品位、表面効果に応じて適宜選択され得る。
中実断面糸の他に、中空断面糸を使用して軽さを表現し
たり、腰感を更に向上させることも可能である。加え
て、構成単糸の断面形状が全て均一である必要はなく、
異型断面を有する混繊糸を用い、織編物の外観、風合い
などに向上したイレギュラリティー効果を与えることも
可能である。すなわち、織編物の使用目的に応じて適切
な断面形状を選択すればよい。
【0049】このようにして得られた本発明のポリエス
テルマルチフィラメント混繊糸を撚糸し、次いで低温撚
糸セット、あるいは低温サイジングを行った後、製織編
して布帛を得、次いで通常の染色加工において熱処理
(110℃〜200℃)を施すことによって、自己伸長
性ポリエステルマルチフィラメント糸Aが伸長し、ふく
らみ感およびソフト感を満足する織編物が得られる。
【0050】
【実施例】以下、実施例によって本発明をより具体的に
説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0051】(実施例1)極限粘度数[η]が0.63
5cc/gであるポリエチレンテレフタレートセミダル
レジンチップを乾燥機内で乾燥させた後、通常の溶融紡
糸法によって、紡糸引取速度3200m/分で巻き取
り、30デニール24フィラメントのポリエステルセミ
ダル丸断面マルチフィラメント未延伸糸を得た。このマ
ルチフィラメント未延伸糸を、雰囲気温度200℃のス
リットヒーター(非接触加熱方式)により、弛緩率45
%、加工速度250m/分、ヒーター滞留時間0.14
秒間の条件で弛緩熱処理を施し、45デニール24フィ
ラメントのポリエステルマルチフィラメント糸A1を得
た。
【0052】このポリエステルマルチフィラメント糸A
1は、非晶配向度(fa(A1))が0.041、結晶
配向度(fc(A1))が0.942、複屈折率(△n
(A1))が0.0362、結晶化度(χc(A1))
が10.6%、160℃の乾熱収縮率(SHD(A
1))が−5.6%、、破断伸度(DE(A1))が1
85%、動的粘弾性法による主分散を示す温度(Tα
(A1))が115.9℃、Tanδ曲線の最大値
[(Tanδ)max](A1)が0.2753、および
沸水収縮率(SHW(A1))(%)が−1.0%、で
あり、実質的に伸長性を示した。
【0053】上記のようにして得られたポリエステルマ
ルチフィラメント糸A1と、沸水収縮率(SHW
(B))が16%、160℃の乾熱収縮率(SHD
(B))(%)が18.5%の50デニール10フィラ
メントのポリエステルセミダル丸断面マルチフィラメン
ト糸Bとを、同率の供給下で、ファイバーガイド社製イ
ンターレースノズルFG4タイプを使用して常温の高圧
空気流で交絡処理を行い、95デニール34フィラメン
トのポリエステルマルチフィラメント混繊糸を得た。こ
のポリエステルマルチフィラメント混繊糸の交絡個数は
82ケ/mであり、糸割れなどの問題のない取扱性に優
れた混繊糸であった。
【0054】上記ポリエステルマルチフィラメント混繊
糸の沸水収縮率(SHW)(%)は10.2%であり、
160℃の乾熱収縮率(SHD)(%)は12.3%で
あった。
【0055】次いで、上記ポリエステルマルチフィラメ
ント混繊糸を、村田機械社製ダブルツイスター(No.
310−C)により製織した。このとき、S撚方向に1
600回/m施撚した糸条を緯糸とし、上記混繊糸をS
撚及びZ撚方向に1600回/m施撚した糸条を経糸と
して作製し、緯糸がS撚糸とZ撚糸の2本交互の構成に
なるように、生機密度が経173本/インチおよび緯9
5本/インチのサテン組織を得た。製織した織物を精
錬、リラックスを施した後、液流染色機を使用して95
℃の水酸化ナトリウム水溶液中で上記製織した織物をア
ルカリ減量し、減量率22%に仕上げた。引き続き、液
流染色機を使用して分散染料で染色を施し、通常のファ
イナルセットを実施し、仕上密度が経204本/イン
チ、緯109本/インチの染色加工布を得た。
【0056】上記染色加工布は、ふかつきのない優しい
感じの風合いであり、適度なソフト感を有し、バルキー
性に富み、かつ適度なはりおよび腰感を兼ね備えてお
り、婦人用ドレス、スラックス、スカート、ジャケット
などの用途に好適な新規な風合いを示すものであった。
【0057】(実施例2)極限粘度数[η]が0.63
5cc/gであるポリエチレンテレフタレートセミダル
レジンチップを乾燥機中で乾燥させた後、通常の溶融紡
糸法によって紡糸取速度3200m/分で巻取り、55
デニール24フィラメントのポリエステルセミダル丸断
面マルチフィラメント未延伸糸を得た。このマルチフィ
ラメント未延伸糸を、延伸機により、延伸温度90℃、
延伸倍率1.75倍の条件で延伸処理を施し、30デニ
ール24フィラメントのマルチフィラメント延伸糸を得
た。上記マルチフィラメント延伸糸を、雰囲気温度19
0℃のスリットヒーター(非接触加熱方式)により、弛
緩率45%、加工速度250m/分、ヒーター滞留時間
0.14秒間の条件で弛緩熱処理を施し、45デニール
24フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸
A2を得た。
【0058】ポリエステルマルチフィラメント糸A2
は、非晶配向度(fa(A2))が0.117、結晶配
向度(fc(A2))が0.922、複屈折率(△n
(A2))が0.0511、結晶化度(χc(A2))
が11.2%、160℃の乾熱収縮率(SHD(A
2))が−4.8%、破断伸度(DE(A2))が10
5%、動的粘弾性法による主分散を示す温度(Tα(A
2))が117.5℃、Tanδ曲線の最大値[(Ta
nδ)max](A2)が0.2745、および沸水収縮
率(SHW(A2))が−0.8%であり、実質的に自
己伸長性を示した。
【0059】ポリエステルマルチフィラメント糸A2を
ポリエステルマルチフィラメント糸A1のかわりに使用
したこと以外は、実施例1と同様の方法により、交絡個
数が85個/m、沸水収縮率(SHW)(%)が11.
3%、160℃の乾熱収縮率(SHD)(%)が13.
2%のポリエステルマルチフィラメント混繊糸を得た。
【0060】そして実施例1と同様にして染色加工布を
得た。得られた染色加工布は、ふかつきのない優しい感
じの風合いであり、適度なソフト感を有し、バルキー性
に富み、かつ適度なはりおよび腰感を兼ね備えており、
婦人用衣料に好適な新規な風合いを示すものであった。
【0061】(比較例1)極限粘度数[η]が0.63
5cc/gであるポリエチレンテレフタレートセミダル
レジンチップを乾燥機中で乾燥させた後、通常の溶融紡
糸法によって紡糸引取速度3200m/分で巻き取り、
70デニール24フィラメントのポリエステルセミダル
丸断面マルチフィラメント未延伸糸を得た。このマルチ
フィラメント未延伸糸を、延伸機により、延伸温度18
0℃、延伸倍率1.56倍の条件で延伸処理を施し、4
5デニール24フィラメントのマルチフィラメント延伸
糸A3を得た。得られたポリエステルマルチフィラメン
ト延伸糸A3は、非晶配向度(fa(A3))が0.6
23、結晶配向度(fc(A3))が0.925、複屈
折率(△n(A3))が0.1583、結晶化度(χc
(A3))が23.4%、160℃の乾熱収縮率(SH
D(A3))が7.5%、破断伸度(DE(A3))が
36.2%、動的粘弾性法による主分散を示す温度(T
α(A3))が143.2℃、Tanδ曲線の最大値
[(Tanδ)max](A3)が0.1286、および
沸水収縮率(SHW(A3))が5.9%であり、実質
的に熱収縮性を示した。
【0062】ポリエステルマルチフィラメント延伸糸A
3をポリエステルマルチフィラメント糸A1のかわりに
使用したこと以外は、実施例1と同様の方法により、交
絡個数が76ケ/m、沸水収縮率(SHW)(%)が1
1.0%、160℃の乾熱収縮率(SHD)(%)が1
2.6%のポリエステルマルチフィラメント混繊糸を得
た。
【0063】上記混繊糸を経糸および緯糸に用い、実施
例1と同様にして染色加工布を得た。得られた染色加工
布は、ふくらみ感、適度なはり、および腰感を有する
が、ソフトタッチを感じることが出来ず、風合いとして
は何ら従来の加工布と変わらなかった。
【0064】
【発明の効果】本発明のポリエステルマルチフィラメン
ト混繊糸を用いて織編物を作製すると、自己伸長性のポ
リエステルマルチフィラメント糸を含有しているので、
その織編物は、ふくらみ感およびソフトな触感を有し、
かつ適度なはりおよび腰感を有する、風合いの優れた織
編物である。このような従来とは全く異なる風合いを有
する織編物は、婦人衣料(例えば婦人用ドレス、スラッ
クス、スカート、ジャケット)に好適である。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 自己伸長性ポリエステルマルチフィラメ
    ント糸Aを含有する、ポリエステルマルチフィラメント
    混繊糸であって、 該自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの結
    晶配向度(fc(A))が、0.95以下であり、 該自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの
    [非晶配向度(fa(A))/結晶配向度(fc
    (A))]が、0.04以上0.13以下であり、 該自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの
    [非晶配向度(fa(A))/複屈折率(△n(A))]
    が、1.1以上2.3以下であり、 該自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの結
    晶化度(χc(A))(%)が、25.0%未満であ
    る、 ポリエステルマルチフィラメント混繊糸。
  2. 【請求項2】 前記自己伸長性ポリエステルマルチフィ
    ラメント糸Aの160℃の乾熱収縮率(SHD(A))
    が、−10%以上0%未満であり、 前記自己伸長性ポリエステルマルチフィラメント糸Aの
    破断伸度(DE(A))が、80%以上300%以下で
    ある、 請求項1に記載のポリエステルマルチフィラメント混繊
    糸。
  3. 【請求項3】 前記自己伸長性ポリエステルマルチフィ
    ラメント糸Aの複屈折率(△n(A))が、0.030
    以上0.055以下である、 請求項1または2に記載のポリエステルマルチフィラメ
    ント混繊糸。
  4. 【請求項4】 前記自己伸長性ポリエステルマルチフィ
    ラメント糸Aの110Hzにおける力学的損失正接(T
    anδ)が最大となる温度(Tα(A))(℃)が、9
    0℃以上125℃以下であり、 該損失正接(Tanδ)の最大値[(Tanδ)max]
    (A)が、0.230以上0.290以下である、 請求項1から3のいずれかに記載のポリエステルマルチ
    フィラメント混繊糸。
  5. 【請求項5】 前記自己伸長性ポリエステルマルチフィ
    ラメント糸Aの結晶化度(χc(A))が10.0%以
    上20.0%以下である、 請求項1から4のいずれかに記載のポリエステルマルチ
    フィラメント混繊糸。
  6. 【請求項6】 前記自己伸長性ポリエステルマルチフィ
    ラメント糸Aの160℃の乾熱収縮率(SHD(A))
    が、−10%以上−4%以下である、 請求項2から5のいずれかに記載のポリエステルマルチ
    フィラメント混繊糸。
  7. 【請求項7】 前記自己伸長性ポリエステルマルチフィ
    ラメント糸Aの複屈折率(△n(A))が、0.040
    以上0.055以下である、 請求項3から6のいずれかに記載のポリエステルマルチ
    フィラメント混繊糸。
  8. 【請求項8】 前記自己伸長性ポリエステルマルチフィ
    ラメント糸Aの110Hzにおける力学的損失正接(T
    anδ)が最大となる温度(Tα(A))(℃)が、1
    05℃以上120℃以下である、 請求項4から7のいずれかに記載のポリエステルマルチ
    フィラメント混繊糸。
  9. 【請求項9】 熱収縮性ポリエステルマルチフィラメン
    ト糸Bをさらに含有する、請求項1から8のいずれかに
    記載のポリエステルマルチフィラメント混繊糸であっ
    て、 160℃の乾熱収縮率(SHD)が5%以上30%以下
    であり、 沸水収縮率(SHW)が、2%以上25%以下である、
    ポリエステルマルチフィラメント混繊糸。
  10. 【請求項10】 前記160℃の乾熱収縮率(SHD)
    が7%以上20%以下である、請求項9に記載のポリエ
    ステルマルチフィラメント混繊糸。
  11. 【請求項11】 前記沸水収縮率(SHW)が5%以上
    20%以下である、請求項9または10に記載のポリエ
    ステルマルチフィラメント混繊糸。
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