JP4085327B2 - ポリエステルマルチフィラメント複合糸条 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はソフトな触感とドライな触感を共に満足し、なお且つ適度なふくらみとはり、腰感を兼ね備えた、婦人用衣料用途に好適なポリエステルマルチフィラメント複合糸条を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より布帛にドライ感をソフト感を共に満足させるための試みとして、主にポリエステルマルチフィラメントを用いてなるものに、部分融着型仮撚加工糸や特殊な延伸手法を用いて糸条長手方向に繊度斑、収縮斑をもたせたシックアンドシン糸等からのアプローチが多数提案されている。しかしながら、部分融着型仮撚加工糸は製造コスト的にはかなり改善されてはきているものの、融着の効果によりシャリ味を付与しているがために、融着部分のアルカリ減量加工による脆化の問題やドレープ性に乏しい等々の欠点があった。
【0003】
また繊維軸方向に断面積分布を有するシックアンドシン糸は繊維軸方向に配向度分布を有しており、太い部分は配向度が低く、細い部分は配向度が高い構成となっている。この配向度が低く太い部分、即ち未延伸状態残存部がシックアンドシン糸の特徴となる適度なドライ感と、高収縮率によるふくらみを同時に与えているものと理解されている。この効果によってシックアンドシン糸を布帛に使用すると適度なドライ感と、ふくらみを付与することが可能となるが、シックアンドシン糸のふくらみは糸条の収縮によるものであり、布帛は適当なふくらみ感を有するものの締まった感じに仕上がってしまい、ソフト感やドレープ性を満足し得るものとはならない。
【0004】
また太い部分は配向結晶化が充分に促進されておらず、アルカリ減量加工を施すと選択的にアルカリ加水分解作用を受け、脆化の程度が著しく、引裂強力の低下や抗ピリング性能の低下など布帛の基本特性が悪化する恐れがあった。このために染色加工等の後加工工程に於ける適性条件範囲が限定されてしまい、最終製品の風合いを考慮した場合、バリエーションを容易に拡大できない等の問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の如き従来の欠点を解消し、得られる糸条の物性が良好で、且つ安定した生産が可能であるポリエステルマルチフィラメント糸よりなるポリエステルマルチフィラメント複合糸条を提供することを課題とするものである。更に詳しくは適度な嵩高性とはり、腰を有し、布帛に加工するとソフトな触感とドライな触感を共に満足し、主にドレス、ブラウス、スカート、スラックス等婦人用衣料用途に好適であるポリエステルマルチフィラメント複合糸条を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のポリエステルマルチフィラメント複合糸条は織編物、主にドレス、ブラウス、スカート、スラックス等婦人用衣料用途に好適であり、織編物に加工すると適度なふくらみとはり、腰を与え、なお且つ適度なソフト感、ドライ感を実現させることが可能となる。
【0007】
本発明のポリエステルマルチフィラメント複合糸条は2種以上のポリエステルマルチフィラメント糸よりなり、未延伸糸を延伸することなく弛緩熱処理して得られた結晶化度(Xρ)が20%以下、乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が0%未満で自己伸長を示し、動的粘弾性法による主分散を示す温度(Tα)が90℃以上125℃以下、力学的損失正接の最大値を示す[(Tanδ)max ]が0.20以上0.30以下であるポリエステルマルチフィラメント未延伸糸(A)と沸水収縮率(SHW)が5.0%以上60%以下、乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が7.0%以上80%以下であるポリエステルマルチフィラメント延伸糸(B)とを引揃え或いは混繊し接合されてなることを特徴とする。
【0008】
本発明のポリエステルマルチフィラメント複合糸条を製造するための供給原糸としては芳香族ジカルボン酸を主たる酸成分とし、脂肪族グリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルマルチフィラメント、特にポリエチレンテレフタレートをその主たる対象とするものであるが、テレフタル酸の一部を例えばイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸の如きジカルボン酸やヘキサヒドロテレフタル酸の如き脂環族ジカルボン酸、或いはアジピン酸、セバシン酸の如き脂肪族ジカルボン酸或いはビスフェノールAなど2価フェノール類等で、またエチレングリコールの一部をトリメチレングリコールやテトラメチレングリコールの如き他のグリコール成分で置換したポリエステルであってもよく特に限定を加えるものではない。
【0009】
また必要に応じて二酸化チタン、二酸化珪素、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリナイト等の無機微粒子を含有させたポリエステルであってもよく、用途に応じて適宜選択してよい。特にポリエステルに対しては分散性の良好な二酸化チタン、二酸化珪素を使用することが糸条の品質や紡糸、延伸、後加工操業性の観点からより好ましいと思われる。
【0010】
またポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)、ポリエステルマルチフィラメント延伸糸(B)に使用するポリマーは特に同一である必要はなく、適宜組合わせて使用してもよい。とりわけ、ポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)側のポリマーを無機微粒子含有ポリエステルとすると、アルカリ減量によって繊維表面に微細凹凸が形成され、更にドライな触感を付与することが可能となり使用するに好ましい。
【0011】
本発明のポリエステルマルチフィラメント複合糸条の構成デニールに関しては特に限定を加えるものではないが、ドレス、ブラウス、ジャケット、スカート、スラックス等の婦人向け衣料用途をその主な商品ターゲットとすると大略30デニール〜300デニールの範囲でその目的、用途に応じ適宜選択する必要がある。また構成単糸デニールについても特に限定を加えるものではないが、織編物に適度なソフトタッチを与えるためにはポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)を0.1デニール以上3.5デニール以下の範囲、より好ましくは0.5デニール以上2.5デニール以下の範囲内とし、ポリエステルマルチフィラメント延伸糸(B)の単糸デニールを1.0デニール以上20デニール以下の範囲、更に好ましくは3.0デニール以上15デニール以下の範囲を採用することが好ましい。該延伸糸(B)の単糸デニールが1.0デニール未満の範囲となると、織編物に適度なはり、腰を与えることができず、いわゆるタラッとした感じの布帛になってしまう。逆に該延伸糸(B)の単糸デニールが20デニールを超過すると、アルカリ減量加工時に高減量率条件を採用しないと織編物に充分なドレープ性を与えることができず、該高減量率条件のアルカリ減量によって該未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)側が選択的に強いアルカリ加水分解作用を受けてしまい、脆化の程度が著しく、実用に耐え得る物性を保つことが困難となってしまい好ましくないのである。
【0012】
該未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)及び延伸糸(B)の断面形状に関しては両者同一でなくともよく、特に限定されるものではなく三角断面糸やその他の多角断面糸、扁平断面糸、丸断面糸、その他異形断面糸など織編物の風合い、外観品位、表面効果等を考慮し適宜選択することができる。またその断面形状については中実断面の他に中空断面を使用し軽さを表現したり腰感を更に向上させることも可能である。加えてこの断面形状に関しても、構成単糸が全て均一である必要はなく、異型断面繊維混繊とし布帛の外観、風合い等に与えるイレギュラリティー効果の向上を狙うことも可能であり、目的に応じて適宜組合せを選択すればよい。
【0013】
本発明のポリエステルマルチフィラメント複合糸条は上に述べた如く結晶化度(Xρ)が20%以下、乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が0%未満で自己伸長を示し、動的粘弾性法による主分散を示す温度(Tα)が90℃以上125℃以下、力学的損失正接の最大値を示す[(Tanδ)max ]が0.20以上0.30以下であるポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)と沸水収縮率(SHW)が5.0%以上60%以下、乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が7.0%以上80%以下であるポリエステルマルチフィラメント延伸糸(B)とを引揃え或いは常温の高圧空気流を用いた空気交絡処理による混繊手段にて複合させたものである。該複合糸の取扱性を考慮すると、混繊手段を用いて複合させることがより好ましいと思われる。
【0014】
ここで上記の物性値は以下の測定方法によるものである。
(a) 結晶化度(Xρ)
密度勾配管法により20±0.5℃の恒温槽内で試料の比重を測定し、下記式により結晶化度(Xρ)を算出した。尚、密度勾配管法による比重測定には軽比重液として公知のn−ペンタン(比重0.683)と、重比重液として四塩化炭素(比重1.599)とを調整、混合し、該混合液に密度勾配をもたせた。尚、試験回数5回の平均値を測定値とした。
Xρ=〔dk(d−da)〕/〔d(dk−da)〕×100(%)
Xρ=結晶化度(%)
dk=1.47g/cm3 (PET完全結晶の比重)
da=1.331g/cm3 (PET完全非晶の比重)
D=試料の比重(g/cm3 )
【0015】
(b) 沸水収縮率(SHW)
試料を枠周1.125mの検尺機を用い、0.1g/dの初荷重を掛け、120回/分の速度で巻き返し、巻き回数が20回の小綛を作り、初荷重の40倍の重りを掛けて、綛長L0(mm)を測定する。続いて重りを外し、収縮が妨げられないような方法で沸騰水(100℃)中に30分間浸漬した後、取り出して吸取紙又は綿布で水を拭き取り、水平状態にて風乾する。風乾後、再度重りを掛けて綛長L1(mm)を測定する。上記L0、L1を下記式に代入し、沸水収縮率(SHW)を算出する。尚、試験回数5回の平均値を測定値とする。
SHW[(L0−L1)/L0]×100(%)
【0016】
(c) 乾熱収縮率(SHD)
試料に1/30g/dの荷重を掛け、その長さL0(mm)を測定する。次いでその荷重を取り除き、試料を乾燥機に入れ乾熱160℃で30分間乾燥する。乾燥後冷却し、再度1/30g/dの荷重を掛けてその長さL1(mm)を測定する。上記L0、L1を式3に代入し、乾熱収縮率(SHD)を算出する。尚、試験回数5回の平均値を測定値とする。
SHD=[(L0−L1)/L0]×100(%)
【0017】
(d) 動的粘弾性測定オリエンテック社製Vibron DDV−IIC型を使用し、110Hzの測定周波数、昇温速度1℃/分、乾燥空気雰囲気下の力学的損失正接Tanδ−温度特性を測定し、その測定結果より無定形領域内部に存在する高分子鎖のセグメントが示すミクロブラウン運動に密接に関係した、主分散を示す温度(Tα)及びTanδ曲線の最大値[(Tanδ)max ]を読み取る。
【0018】
本発明のポリエステルマルチフィラメント複合糸条の、実質的に自己伸長を示す部分を構成するポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)の結晶化度(Xρ)は20%以下、より好ましくは15%以下とすることが必要である。過度に結晶化を促進させることは自己伸長性を付与する上で好ましくない。現在のところ詳細な部分は判明していないが推定するに紡糸引取速度が2000〜4000m/min.で溶融紡糸したポリエステルマルチフィラメント糸条はいわゆる高配向状態をもった未延伸糸であり、結晶化の程度が比較的低いことがその特徴であるが、該マルチフィラメント糸条を弛緩熱処理し結晶化度を極力増加させることなく、収縮成分を取り除くことにより織編物に加工した後の、染色加工に於ける湿熱処理による結晶c軸方向、即ち繊維軸方向への結晶成長の割合が糸条の熱収縮率の割合に対して大きくなり実質的に繊維は自己伸長するものと考えられる。
【0019】
上記に示したように、弛緩熱処理に供するポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の紡糸引取速度は2000〜4000m/min.、より好ましくは2600〜3800m/min.、更に好ましくは3200〜3600m/min.の範囲を採用することが好ましい。該紡糸引取速度が2000m/min.未満であれば、糸条は自己伸長性を付与するには配向度が低過ぎ、弛緩熱処理を施しても糸条は自己伸長を示さず、実質的に繊維は収縮してしまい、本発明の目的とするソフトな触感を満足させることができない。
【0020】
また、該紡糸引取速度が4000m/min.を超過するといわゆる配向結晶化が進行しているために結晶化度が高くなり過ぎてしまい、逆に熱収縮能が極端に低下する。このために糸条に充分な弛緩熱処理を付与することができず、熱収縮応力不足による糸揺れ、ひいては供給ローラー部への巻付による糸切れを誘発してしまい、操業性の面で問題があるばかりか、結晶配向が過度に進行しているために無定形領域内部に存在する高分子鎖セグメントが結晶領域に取り込まれる度合、即ち結晶成長する度合が小さいために、実質的に糸条は自己伸長を示さず、糸条の挙動は逆に収縮サイドに移行してしまうために自己伸長による適度なソフト感を織編物に与えることができなくなる。
【0021】
また該ポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)は160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が0%未満で実質的に自己伸長を示し、沸水収縮率(SHW)は3%以下であることが必要である。更に好ましくは2%以下がよい。該沸水収縮率が3%を超過すると織編物を沸水リラックス処理する際に糸条が収縮してしまい、テンターによる巾出しセットや染色機等による高温湿熱処理等、後工程で生じる自己伸長が該収縮作用によって打ち消されてしまう恐れがあり、織編物に充分なソフト感を与えることができない。また、該沸水収縮率の下限としては−2%以上、より好ましくは−1%以上を保つことが好ましい。該沸水収縮率が−2%未満となれば該マルチフィラメント混繊糸条を撚糸し、通常の真空湿熱セットで撚止セットを施す際、或いは経糸サイジング処理の際、該弛緩熱処理(A)が自己伸長を示してしまい、後に続く整経や製織編工程の操業に支障を来す恐れがあるばかりか、織編物が染色加工後に自己伸長を示さないためにソフトな触感を充分に付与することができなくなる。
【0022】
更にポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)の動的粘弾性法による主分散を示す温度(Tα)が90℃以上125℃以下、力学的損失正接の最大値[(Tanδ)max ]が0.20以上0.30以下であることが必要である。これらの値は上記したように110Hzの測定周波数、昇温速度1℃/分、乾燥空気雰囲気下の力学的損失正接Tanδ−温度特性の測定結果から読み取られるもので、無定形領域内部に存在する高分子鎖のセグメントが示すミクロブラウン運動に密接に関係した物性値である。
【0023】
この主分散を示す温度(Tα)が90℃未満の領域であれば、糸条は熱的に非常に不安定な状態であり、多少の熱量の付与にも充分注意を払わねばならない。特に撚糸後の撚止セット条件やサイジング条件を考慮する場合、常用温度より更に低温で処理を施す必要があり、後工程に支障なきよう撚止セットやサイジングを施そうとすれば、処理時間や乾燥時間等を延長させることが必須となり、ランニングコストの増加を誘発してしまい好ましくない。また、125℃を超過する範囲、即ち熱的に非常に安定な領域となれば糸条が自己伸長を示し難くなり、本発明の目的とするソフトな触感を織編物に付与することが困難になる。該主分散を示す温度(Tα)が90℃以上125℃以下、より好ましくは105℃以上120℃以下になるように紡糸条件、弛緩熱処理条件を調整することによって取扱性がよく、且つ自己伸長の効果によるソフト感を実現し得る糸条となるのである。
【0024】
また力学的損失正接の最大値[(Tanδ)max ]は0.20以上0.30以下であることが必要である。この[(Tanδ)max ]は無定形領域に於ける高分子鎖セグメントのミクロブラウン運動のし易さを示すものであり、この数値が小さい程、該高分子鎖セグメントは動き難く、糸条は熱的に安定であり、この数値が大きい程該高分子鎖セグメントはミクロブラウン運動し易く、糸条は構造的、熱的に不安定であるということが知られている。
【0025】
紡糸引取速度2000〜4000m/min.にて得られたポリエステルマルチフィラメント未延伸糸は弛緩熱処理されることによって若干結晶化度が増加し、[(Tanδ)max ]値は若干減少を示す。しかしながら過度に結晶化度を増加させ[(Tanδ)max ]値を減少させることは無定形領域の高分子鎖セグメントの量が実質的に少なくなることであり、該セグメントの熱運動性も低下することから、該無定形領域の高分子鎖セグメントが結晶領域に取り込まれることによる結晶c軸方向への結晶成長の程度が事実上軽度になってしまい、糸条の自己伸長能が低下してし、織編物に充分なソフト感を付与することができなくなる。何故なのか現在のところ充分解明されておらず、詳細な部分は理解できないが、この[(Tanδ)max ]値が0.2以上0.3以下の範囲となるように紡糸条件、弛緩熱処理条件など諸条件を適性化することによって該ポリエステルマルチフイラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)は染色加工等の後加工を通過させることによって実質的に自己伸長を示すのである。
【0026】
またポリエステルマルチフィラメント延伸糸(B)は沸水収縮率(SHW)が5.0%以上60%以下、より好ましくは6.0%以上18%以下の範囲を、更に乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が7.0%以上80%以下、より好ましくは9.0%以上20%以下の範囲とすることが必要である。該延伸糸(B)は通常延伸糸である必要はなく、糸条長手方向に配向度分布を有するシックアンドシン糸であってもよい。この沸水収縮率(SHW)が6.0%未満、或いは乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が7.0%未満の範囲であってもポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)の自己伸長の効果によって織編物にソフト感、ふくらみ感を与え得るが、若干不充分なものとなってしまうため、該弛緩熱処理糸(A)と組み合わせる延伸糸(B)は適当な収縮能をもったものとすることが望ましい。しかしながら沸水収縮率(SHW)が60%を超過、或いは乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が80%を超過する範囲の超高収縮能を有する糸条となれば、撚糸セット条件やサイジング条件を充分吟味しても後工程通過性に支障を来してしまうことが予想され、該ポリエステルマルチフィラメント複合糸条の取扱性を考えると好ましくない範囲であり、使用には適さない。
【0027】
本発明のポリエステルマルチフィラメント複合糸条のための製造方法としては紡糸引取速度が2000〜4000m/min.で紡糸された沸水収縮率(SHW)が50%以上のポリエステルマルチフィラメント未延伸糸を実質的に延伸することなく雰囲気温度が160℃〜230℃の条件にて非接触式熱処理を0.05〜0.2秒間行い、結晶化度(Xρ)が20%以下、乾熱収縮率(SHD)が0%未満で実質的に自己伸長を示し、動的粘弾性法による主分散を示す温度(Tα)が90℃以上125℃以下、力学的損失正接の最大値[(Tanδ)max ]が0.20以上0.30以下であるポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)とし、ポリエステルマルチフィラメント延伸糸(B)とを引揃え或いは混繊手段を用いて複合させることを例示できる。
【0028】
紡糸引取速度が2000〜4000m/min.で紡糸された沸水収縮率(SHW)が50%のポリエステルマルチフィラメント未延伸糸を実質的に延伸することなく雰囲気温度が160℃〜230℃の条件にて非接触式熱処理を0.05〜0.2秒間行い、ポリエステルマルチフィラメント未延伸糸に自己伸長性を付与するものであるが、該熱処理に於ける加熱域への過供給率、即ち弛緩率は0%以上60%以下、より好ましくは20%以上50%以下とすることが自己伸長性を与える上で有効である。該弛緩率が60%を超過すると該ポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の熱収縮不足により糸条が弛み、糸条のバタツキや供給ローラーへの巻き付き断糸を引き起こしてしまう。また該弛緩率が0%未満となると実質的に糸条は延伸されてしまうために糸条に自己伸長性を与えることが出来なくなってしまい好ましくない。該弛緩率が0%以上60%以下、より好ましくは20%以上50%以下とすることによって該未延伸糸に自己伸長性を付与することが可能となり、好ましい条件範囲なのである。
【0029】
該熱処理には雰囲気温度が160℃〜230℃の条件にて非接触式熱処理、より具体的には非接触式スリットヒーター、チューブヒーター等を使用し、該ヒーター滞留時間を0.05〜0.2秒、より好ましくは0.09〜0.18秒間弛緩熱処理を施すことを特徴とする。熱処理に使用する非接触式ヒーターは雰囲気温度が160℃〜230℃の範囲の任意の設定温度条件にて高い精度を保つものが好ましい。該熱処理には雰囲気温度が160℃〜230℃の範囲、より好ましくは180℃〜220℃の範囲とすることが該ポリエステルマルチフィラメント未延伸糸に自己伸長性を付与する上で好ましい。該雰囲気温度が160℃未満の範囲であれば該未延伸糸に自己伸長性を与えるには相当量の滞留時間を稼ぐ必要があり、生産性やコスト面等の観点より好ましくない。また、230℃を超過すると機台停止時、或いは糸掛け時に該未延伸糸がヒーターの熱によって溶断してしまう恐れがあり、スタート切れ等の頻度が大きくなり、好ましい条件とは言い難い。
【0030】
該熱処理に於ける非接触式ヒーターの滞留時間を0.05〜0.2秒、より好ましくは0.09〜0.18秒間とすることが必要である。該熱処理時間が0.05秒未満であれば該ポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の加熱による結晶化を極力抑制することが可能であるが、収縮成分を充分に取り除くことができず、該未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)は事実上、自己伸長を示さない。また0.2秒以上滞留させると収縮成分を充分に取り除くことが可能になるが、逆に結晶化が過度に促進とれてしまう他、滞留時間を稼ぐために処理速度を遅くする必要があり、生産性等も考慮すると最適な条件とは言い難いのである。
【0031】
ポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)とポリエステルマルチフィラメント延伸糸(B)を複合させるには引揃え或いは混繊、更に詳しくは常温の高圧空気流を用いた空気交絡手段を用いる。該空気交絡処理に用いるノズルは特公昭36−12230号公報に見られるような公知のインターレースノズルの他、撹乱空気流によりループや弛みを形成させるタスランノズル等も使用することができる。タスランノズル等を使用して微小なループ、弛みを形成させる時は巻き取ったパッケージの解舒性悪化を抑制するために合繊加工糸用コーニングオイル等を適当量付与した後にパッケージに巻き取ることが望ましい。尚、インターレースノズルを混繊処理に用いた場合の複合糸条1m当たりの交絡個数は20〜100ケ/m程度有することが後工程に於ける糸割れ等の問題が少なく、工程通過性の観点より好適であると思われる。
【0032】
本発明のポリエステルマルチフィラメント複合糸条を構成するポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)とポリエステルマルチフィラメント延伸糸(B)の組合せ割合は、目的に応じて適宜選定することができるが、少なくとも弛緩熱処理糸(A)糸側が20%を切らない範囲とすることが必要で、織編物の風合いを考慮した場合、弛緩熱処理糸(A)と延伸糸(B)の割合は45/55〜70/30程度が望ましいと思われるが勿論これに限定されるものではない。
【0033】
このようにして得られたポリエステルマルチフィラメント複合糸条を撚糸し、次いで低温撚糸セット、或いは低温サイジングを実施した後、製織編し織編物を得、通常の後加工等で熱処理(110℃〜200℃)することにより、自己伸長性を有するポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)が伸長発現し、風合い良好なふくらみ感、ソフト感とドライ感を満足する織編物とすることが可能となるのである。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。勿論、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)紡糸引取速度が3200m/min.にて紡糸された沸水収縮率(SHW)が69%のポリエステルセミダル丸断面マルチフィラメント高配向未延伸糸45デニール18フィラメントを雰囲気温度が210℃の非接触式スリットヒーターで弛緩率45%、滞留時間0.18秒間弛緩熱処理した。弛緩熱処理した後の高配向未延伸糸は結晶化度(Xρ)14.08%、動的粘弾性法による主分散を示す温度(Tα)は116.3℃、力学的損失正接の最大値[(Tanδ)max ]は0.2833であった。また乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)は−10.3%であり実質的に自己伸長を示すことが確認された。
【0035】
該弛緩熱処理した後の高配向未延伸糸、即ち本発明でいうポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸(A)と沸水収縮率(SHW)が16%、乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が18.5%のポリエステルセミダル丸断面マルチフィラメント延伸糸50デニール10フィラメントを公知のインターレースノズルを用い、常温の高圧空気流によって空気交絡し、ポリエステルマルチフィラメント複合糸条を得た。該複合糸条の糸条1m当たりの交絡個数は75ケ/mであり糸割れ等のない、取扱性に優れた糸条となった。
【0036】
該ポリエステルマルチフィラメント複合糸条を村田機械製ダブルツイスター(No.310−C型)にて1800T/m の撚糸を施した後、雰囲気温度65℃で40分間バキュームヒートセッターによる撚止セットを行った。該複合糸条撚糸を経緯糸双方に用い、生機密度が経143本/吋、緯94本/吋のサテン組織に製織した。引き続き通常の染色処理を施し、仕上密度が経160本/吋、緯112本/吋の染色加工布を得た。風合いは適度のはり、腰感を有する全く新しいタイプの風合いを持つカシミヤ調の織物を得ることができた。
【0037】
(比較例1)ポリエステルマルチフィラメント延伸糸(B)として沸水収縮率(SHW)が2.0%、乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が5.5%であるポリエステルセミダル丸断面マルチフィラメント延伸糸50デニールフィラメントを用いた他は実施例1と同様の方法にて染色加工布を得た。該染色加工布はソフト感やドライ感は感じられるものの、暖かみやふくらみ感は不足しており、風合いとしては好ましいものにならなかった。
【0038】
【発明の効果】
本発明のポリエステルマルチフィラメント複合糸条は、自己伸長能を有するポリエステルマルチフィラメント未延伸糸の弛緩熱処理糸とポリエステルマルチフィラメント延伸糸を組合せてなる複合糸条であり、織編物にソフトな触感、ドライな触感を共に満足させ、尚且つ適度なふくらみとはり、腰感を兼ね備えた全く新規の風合いを呈する、婦人用衣料用途に好適なポリエステルマルチフィラメントからなる複合糸条である。

Claims (4)

  1. 未延伸糸を延伸することなく弛緩熱処理して得られた結晶化度(Xρ)が20%以下、乾熱160℃に於ける乾熱収縮率(SHD)が0%未満で、動的粘弾性法による主分散を示す温度(Tα)が90℃以上125℃以下、力学的損失正接の最大値を示す[(Tanδ)max]が0.20以上0.30以下であるポリエステルマルチフィラメント未延伸糸(A)と沸水収縮率(SHW)が5.0%以上60%以下、乾熱160℃に於ける乾熱収縮(SHW)が7.0%以上80%以下であるポリエステルマルチフィラメント延伸糸(B)とを引揃え或いは混繊してなるポリエステルマルチフィラメント複合糸条。
  2. ポリエステルマルチフィラメント未延伸糸(A)の沸水収縮率(SHW)が3%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルマルチフィラメント複合糸条。
  3. ポリエステルマルチフィラメント未延伸糸(A)の結晶化度(Xρ)が15%以下であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルマルチフィラメント複合糸条。
  4. 糸条交絡個数が糸条1m当たり20ケ〜100ケであることを特徴とする請求項1記載のポリエステルマルチフィラメント複合糸条。
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